(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124248
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240905BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20240905BHJP
F16F 1/37 20060101ALI20240905BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240905BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G09F9/00 324
G09F9/00 302
F16F7/00 F
F16F1/37 A
H05K5/03 A
H05K5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032261
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼西 雄大
【テーマコード(参考)】
3J059
3J066
4E360
5G435
【Fターム(参考)】
3J059AA01
3J059BB01
3J059BC04
3J059GA21
3J066AA14
3J066AA22
3J066BA01
3J066BC05
4E360AB05
4E360CA03
4E360EA03
4E360EA14
4E360EA24
4E360EB01
4E360ED06
4E360ED07
4E360GA12
4E360GA14
4E360GB04
4E360GC02
4E360GC06
4E360GC08
4E360GC12
5G435AA09
5G435BB05
5G435EE02
5G435GG42
5G435HH18
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】ガラスなどで構成された透明カバーの破損抑制と表示品位の確保とを両立可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置1は、表示パネル4が貼り付けられた透明カバー2が、表示パネルと向き合う筐体6に取り付けられると共に、透明カバー2および筐体6よりも剛性が低い材料で構成された衝撃吸収体9を備える。透明カバー2および表示パネル4は、可撓性を有する。透明カバー2は、衝撃吸収体9は、表示パネル4よりも筐体6の側である後方に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.7mm以下のガラスまたは硬質の樹脂材料で構成され、可撓性を有する透明カバー(2)と、
可撓性を有し、前記透明カバーに貼り付けられる表示パネル(4)と、
前記透明カバーが取り付けられ、前記表示パネルと向き合う筐体(6)と、
前記表示パネルよりも前記筐体の側である後方に配置され、前記筐体に取り付けられる衝撃吸収体(9)と、を備え、
前記衝撃吸収体は、前記透明カバーおよび前記筐体よりも剛性が低い材料で構成されている、表示装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収体は、前記筐体のうち前記表示パネルとは反対側の背面(6b)に取り付けられている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収体は、前記表示パネルと前記筐体とを繋ぐように取り付けられている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記衝撃吸収体は、弾力性を有する発泡性樹脂材料で構成されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項5】
前記筐体は、他部材に固定されており、
前記筐体および前記衝撃吸収体を前記透明カバーと前記他部材とを繋ぐ1つのバネとみなしたとき、前記筐体および前記衝撃吸収体の全体のバネ定数が600N/mm以下である、請求項4に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどのガラスを有する表示装置が知られている。この種の表示装置は、ガラスに何らかの物体が衝突して衝撃を受けた場合にガラスが破損するおそれがあるため、ガラスの破損を抑制する対策が必要となる。このような対策がなされた表示装置としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の表示装置は、耐衝撃性を有する第1の透明樹脂層と、高せん断弾性率を有する第2の透明樹脂層とが積層されてなる保護シートをガラスの外表面に貼り付けた構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の表示装置は、保護シートによりガラスの破損を抑制することができる一方で、保護シートを介して画像を見ることとなるため、保護シートを有しない場合に比べて表示品位が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、ガラスなどの透明カバーを有し、透明カバーの破損抑制と表示品位の確保とを両立可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の表示装置は、厚みが0.7mm以下のガラスまたは硬質の樹脂材料で構成され、可撓性を有する透明カバー(2)と、可撓性を有し、透明カバーに貼り付けられる表示パネル(4)と、透明カバーが取り付けられ、表示パネルと向き合う筐体(6)と、表示パネルよりも筐体の側である後方に配置され、筐体に取り付けられる衝撃吸収体(9)と、を備え、衝撃吸収体は、透明カバーおよび筐体よりも剛性が低い材料で構成されている。
【0008】
これにより、表示パネルが貼り付けられた透明カバーが筐体に取り付けられると共に、透明カバーおよび筐体よりも剛性が低い衝撃吸収体が表示パネルよりも筐体側に配置された表示装置となる。この表示装置は、透明カバーに何らかの物体が衝突したとき、表示パネルよりも筐体側に配置された低剛性の衝撃吸収体が最初に変形することで、透明カバーに衝突した物体と当該透明カバーとの接触時間が大きくなる構成となっている。この結果、透明カバーにかかる衝撃荷重が低減され、透明カバーの破損が抑制されると共に、透明カバーの外表面を保護する保護シートが不要となるため、表示品位を確保することが可能となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の表示装置を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の表示装置の斜視分解図である。
【
図4】表示装置への物体衝突をモデル化したものを示す図である。
【
図5】評価モデルを用いた物体衝突の評価試験の説明図である。
【
図6】
図5の評価試験におけるガラス板、金属板および衝撃吸収体の配置を示す上面レイアウト図である。
【
図7】金属板の厚みとバネ定数との関係を示す図である。
【
図8】衝撃吸収体の厚みとバネ定数との関係を示す図である。
【
図9】衝撃吸収体のピッチ間隔とバネ定数との関係を示す図である。
【
図10】バネ定数とガラス板の割れ確率との関係を示す図である。
【
図11】
図5の評価試験における金属板および衝撃吸収体の条件、バネ定数、並びに評価結果を示す図である。
【
図12】第2実施形態の表示装置を示す図であって、
図3に相当する断面図である。
【
図13】他の実施形態の表示装置の一例を示す図であって、
図3に相当する断面図である。
【
図14】他の実施形態の表示装置の一例を示す図であって、
図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の表示装置1について、図面を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、例えば、自動車等の車両に搭載される車載用表示装置に適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。
【0013】
図1では、表示装置1の構成を分かり易くするため、後述する透明カバー2に覆われた表示パネル4の外郭を破線で示している。
図2では、表示装置1の構成部材のうち
図2の角度から見たとき、各構成部材のうち前方に位置する他の構成部材と重なっている部分の外郭を破線で示している。また、
図2では、表示装置1の構成を分かり易くするため、後述する衝撃吸収体9の1つのみを示し、他の衝撃吸収体9については省略している。
【0014】
〔基本構成〕
本実施形態の表示装置1は、例えば
図1に示すように、透明カバー2と、表示パネル4と、筐体6とを備え、透明カバー2および表示パネル4が筐体6の湾曲形状に追従した曲面形状で保持された構成となっている。表示装置1は、例えば
図2に示すように、透明カバー2および筐体6を接着する接着剤5と、表示パネル4を透明カバー2に貼り付ける光学接着層3とをさらに備える。表示装置1は、例えば
図3に示すように、筐体6のうち透明カバー2と向き合う前面6aに形成された凹部62内の領域に、曲面形状に保持された表示パネル4が収まる配置とされ、透明カバー2の表面2aが凹形状とされた曲面表示装置となっている。表示装置1は、本実施形態では、筐体6の背面6b側に衝撃吸収体9が配置され、筐体6が衝撃吸収体9を介して取付部10に取り付けられている。
【0015】
透明カバー2は、厚みが0.7mm以下の可撓性のある透明基材であり、例えば、ガラスもしくは化学強化ガラス、あるいは剛性および透光性を有する硬質の樹脂材料などが用いられうる。硬質の樹脂材料とは、例えば、局所的な押圧などの外力がかかった際に、当該外力が所定以下では目視できる傷が付かないものの、当該外力が所定値を超えると割れが生じるものを意味する。本明細書では、透明カバー2が厚み0.7mm以下のガラス板で構成された場合を代表例として説明する。透明カバー2は、例えば、筐体6に貼り付けられる前においては平板状であり、筐体6に貼り付けられることで筐体6の湾曲形状に追従した曲面形状とされ、接着剤5により筐体6に接着されている。すなわち、透明カバー2は、後曲げ方式により曲面形状とされ、曲面形状のまま筐体6に保持されている。なお、「後曲げ方式」とは、平板形状の透明カバー2を冷間曲げにより曲面形状にしつつ、接着剤5により筐体6に接着し、透明カバー2を曲面形状に保持することを意味する。透明カバー2は、例えば、筐体6とは反対側の面を表面2aとし、筐体6に向き合う面を裏面2bとして、裏面2b側が凸となる曲面形状となっている。透明カバー2は、裏面2bのうち筐体6の凹部62の内側に位置する領域に光学接着層3を介して表示パネル4が貼り付けられている。透明カバー2は、例えば、筐体6に形成された枠体状の段差部61の内側に位置する前面6aに配置された接着剤5によって筐体6に接着され、筐体6の凹部62を覆っている。
【0016】
透明カバー2は、光学接着層3により表示パネル4が貼り付けられた後、例えば、図示しないロールまたは筐体6の前面6aの湾曲形状に追従した曲面形状を有する治具を用いて、筐体6に貼り合わせされる。これにより、透明カバー2は、透明カバー2の表面2aが凹となる曲げ状態、すなわち「凹曲げ」の状態で接着保持される。透明カバー2は、表面2aが外部に露出している。これにより、表示装置1は、ユーザが表示パネル4の映像を光学接着層3および透明カバー2のみを介して視認できる状態となっており、表示品位を確保できる構成である。
【0017】
光学接着層3は、例えば、OCAやOCRなどの光学接着剤である。なお、OCA、OCRとは、それぞれ、Optical Clear Adhesive、Optical Clear Resinの略称である。光学接着層3は、表示パネル4のうち各種画像を表示する側の面である表示面と透明カバー2の裏面2bとの隙間に配置され、これらを接着している。光学接着層3は、例えば
図2に示すように、表示パネル4と略同一の平面サイズとされ、透明カバー2を筐体6に貼り付ける前に、予め透明カバー2の裏面2bまたは表示パネル4の表示面に配置される。
【0018】
表示パネル4は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)パネルであり、可撓性のあるフレキシブルな構成とされる。OLEDとは、Organic Light Emitting Diodeの略称であり、有機EL(Electro-Luminescenceの略)とも称されうる。表示パネル4は、例えば、OLEDパネルの場合、可撓性のある樹脂材料によりなる基板上に、薄膜トランジスタで構成された回路層と画素を構成するOLED素子とがこの順に積層された構成とされる。表示パネル4は、例えば
図3に示すように、配線8を介して駆動制御用の回路基板7に接続され、各種の表示制御がなされる。
【0019】
なお、表示パネル4は、各種画像を表示でき、透明カバー2の曲げに追従可能なフレキシブルパネルであればよく、OLEDパネルに限定されるものではない。また、OLEDパネルやその他のフレキシブルパネルの構成や使用材料等については、公知のため、本明細書では、その詳細な説明を省略する。
【0020】
接着剤5は、透明カバー2を筐体6に直接接着するために用いられる接着剤であり、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系等の一般的な接着剤を用いることができる。接着剤5は、例えば、透明カバー2または筐体6の前面6aにディスペンサー等により塗布される。接着剤5は、例えば、透明カバー2と筐体6とを貼り合わせた直後においては液状もしくはペースト状であるが、透明カバー2を図示しない貼り合わせ治具等により筐体6に曲面形状で保持している間に硬化し、最終的には固化した状態となる。
【0021】
筐体6は、透明カバー2が接着剤5により接着されると共に、透明カバー2に貼り付けられる表示パネル4との干渉を避けるための凹部62を有する部材である。筐体6は、例えば、Al(アルミニウム)やMg(マグネシウム)などの熱伝導率が高い金属材料やその合金材料、もしくは軽量な樹脂材料などにより構成され、表示パネル4の熱を外部に放出する放熱部材としての役割を果たす。筐体6は、例えば、透明カバー2と向き合う前面6aに表示パネル4の平面サイズよりも大きい平面サイズの凹部62が形成されており、少なくとも前面6aが一方向に沿って湾曲した湾曲面となっている。
【0022】
筐体6は、例えば、凹部62を正面視したとき、凹部62よりも外側に透明カバー2の外郭に沿った枠体状の段差部61が形成されている。段差部61は、例えば、透明カバー2の厚み以上の高さとされる。筐体6は、例えば、段差部61と凹部62との間に位置する前面6aに接着剤5が配置される。筐体6は、例えば
図3に示すように、凹部62の底面に開口部63が形成されており、前面6aとは反対側の背面6b側に回路基板7を配置したとき、開口部63に配線8を通し、表示パネル4と回路基板7とを配線8で接続可能となっている。筐体6は、本実施形態では、背面6bに1つまたは複数の突起部64が形成されており、突起部64が衝撃吸収体9を介して取付部10に接続されている。突起部64は、筐体6を背面6b側から見て、例えば、1つの枠体状とされるか、あるいは複数個が島状に等間隔で配置された構成とされる。この詳細については、後述する。
【0023】
回路基板7は、例えば、配線基板に電源回路、冷却ファン、CPU、ROM、RAMやI/Oが搭載されてなる電子制御ユニットであり、筐体6の背面6b側に配置される。CPU、ROM、RAM、I/Oとは、それぞれ、Central Processing Unit、Read Only Memory、Random Access Memory、Input/Outputの略称である。回路基板7は、例えば、ネジなどの図示しない締結部材により取付部10などの任意の箇所に接続固定される。
【0024】
配線8は、例えば、FPCなどのフレキシブルな配線が用いられ、筐体6の開口部63を通るように配置される。FPCとは、Flexible printed circuitsの略称である。なお、回路基板7および配線8の配置等については、適宜変更されうる。
【0025】
衝撃吸収体9は、筐体6に接着された透明カバー2に何らかの物体が衝突した際に最初に変形し、透明カバー2への衝撃荷重を緩和するものである。衝撃吸収体9は、透明カバー2および筐体6よりも剛性が低い材料、例えば、ポリウレタン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの弾力性を有する任意の発泡性樹脂材料で構成される。衝撃吸収体9は、例えば、筐体6の背面6bに形成された突起部64に配置され、筐体6と取付部10とを繋いでいる。衝撃吸収体9は、例えば、1つまたは複数の突起部64に複数配置され、それぞれ同じ厚みおよび面積で均等配置される。衝撃吸収体9は、透明カバー2を錘とし、透明カバー2を含む表示装置1の主部から取付部10の固定端までを1つの直列バネと捉えたとき、全体のバネ定数が所定の条件を満たす設計とされる。この詳細については、後述する。
【0026】
取付部10は、透明カバー2、光学接着層3、表示パネル4、接着剤5、筐体6、回路基板7および配線8までの表示装置1の主部を、衝撃吸収体9を介して他部材に取り付けて固定するための部材である。他部材は、例えば、車体などの被取付部材が挙げられる。取付部10は、例えば、任意の金属材料や合金材料等によりなる板金とされ、回路基板7を覆う基板カバーとされる。取付部10は、表示装置1の主部を任意の被取付部材に固定可能な構成であればよく、例えば、形状等については筐体6の背面6b側の形状等に応じて適宜変更されうる。
【0027】
以上が、本実施形態の表示装置1の基本的な構成である。
【0028】
〔衝撃吸収体による効果〕
次に、衝撃吸収体9の設計およびこれによる効果について、
図4~
図10を参照して説明する。
図6では、後述する評価試験において、上面視では目視できない衝撃吸収体9の外郭を破線で示している。
【0029】
ガラスの表面や内部には目視できない不可避の微小クラックが存在しており、ガラスに他の物体が衝突すると、グリフィス理論によれば、この微小クラックに引張応力が集中することで、微小クラックが伸展し、ガラスのひび割れや破断などの破損に至る。
【0030】
表示装置1に他の物体が衝突した際における透明カバー2の破損を抑制するためには、透明カバー2を厚肉化して剛性を高くする、または透明カバー2への衝撃荷重を低減する構造とすることが挙げられる。前者の方法は、透明カバー2の破損を防ぐことができるものの、透明カバー2を曲面にすることが難しくなり、意匠の自由度が低下すると共に、表示装置1全体の重量が増大するため、好ましくない。
【0031】
そこで、本発明者らは、鋭意検討により、衝撃吸収体9を設けることで、透明カバー2とこれに衝突する物体との衝突時における接触時間を大きくし、衝撃荷重を低減する構造を考案した。
【0032】
表示装置1は、例えば
図4に示すように、透明カバー2に物体Mが衝突するとき、透明カバー2が錘、筐体6が第1のバネ、衝撃吸収体9が第2のバネ、筐体6が固定される被取付部材が固定端となる1つの直列バネとみなせる。
【0033】
ここで、物体Mによる衝撃荷重をFとし、物体Mの重量をm、透明カバー2への衝突時の物体Mの速度をvとし、物体Mと透明カバー2との接触時間をΔtとすると、衝撃荷重Fは、以下の(1)式で表される。
【0034】
F=mv/Δt・・・(1)
(1)式によれば、Δtが大きくなるほど、単位時間における透明カバー2への衝撃荷重Fが低減されることとなる。ここで、筐体6および衝撃吸収体9の全体のバネ定数をkとし、透明カバー2の変位量をXとすると、フックの法則により、F=kXが成り立つ。また、変位量Xは、v/Δtで表される。そして、物体Mの速度v、質量mおよび衝撃荷重Fについては調整することができない。このため、表示装置1におけるバネ定数kを大きく調整することで、変位量Xが相対的に小さくなり、Δtを大きくすることができる。
【0035】
そこで、本発明者らは、
図5に示すように、被取付部材に相当する金属ブロック100上に、衝撃吸収体9、筐体6に相当する金属板110、および透明カバー2に相当するガラス板120をこの順に積み上げた評価モデルを作製した。そして、ガラス板120の表面から高さ100mmの位置から衝突物体として落錘治具Jを落下させ、ガラス板120に割れが生じるか否かについてn=3での評価試験を行った。
【0036】
金属板110については、アルミニウム(Al)またはステンレス(SUS)であって、2mm~4mmの範囲内において厚みを変えたものを複数用いた。ガラス板120については、厚み0.33mm、サイズ70mm×130mmの化学強化ガラスを用い、
図6に示すように、全域が金属板110の外郭内側に位置するように配置し、四隅を図示しないテープで金属板110に固定した。衝撃吸収体9については、密度0.5g/cm
3、25%圧縮荷重0.076MPaの発砲性のアクリル系樹脂材料で構成された2mm角サイズの衝撃吸収シートを用いた。また、衝撃吸収体9については、
図6に示すように、金属板110と金属ブロック100との間であって、落錘治具J側から見て、ガラス板120の外郭内側において正方形を描くように等間隔で4つ配置した。
【0037】
落錘治具Jは、工具のドライバー形状のものであって、重量が110g以下、先端部分J1がクロムバナジウム鋼で構成され、先端部分J1の直径が10mm以下かつ曲率半径Rが3mm以上の卑金属鋭利物を用いた。また、落錘治具Jは、
図6に示すように、ガラス板120のうち4つの衝撃吸収体9が描く正方形の中心位置Cに先端部分J1が衝突するように落下させた。
【0038】
上記した評価条件は、表示装置1を車載用途に採用した場合において、通常の使用で考えられうる透明カバー2への物体衝突を想定して設定したものである。落錘治具Jの重量およびガラス板120からの高さ位置については、ガラス板120への衝突時における落錘治具Jの速度、すなわち衝突速度が1.45m/s以下となるように設定したものである。
【0039】
なお、評価試験の落錘条件については落錘治具Jの重量100g、かつ高さ位置T100mmと設定し、この場合の衝突速度は、約1.4m/sである。また、衝突速度が1.45m/sとなる落錘の条件は、例えば、落錘治具Jの重量110g、かつ高さ位置T107mmとした場合などが挙げられる。
【0040】
また、評価試験においては、金属板110の材質および厚みt1、衝撃吸収体9の厚みt2、衝撃吸収体9のピッチ間隔Pの4つのパラメータ条件を変えてバネ定数k(単位:N/mm)の調整を行った。そして、パラメータ条件別にガラス板120のn=3における割れ確率(%)を評価基準とした。金属板110の厚みt1については、2mm、3mm、3.5mm、4mmの4水準とした。衝撃吸収体9の厚みt2については、1mm、1.5mm、2mmの3水準とした。衝撃吸収体9のピッチ間隔Pは、
図6の平面における左右方向およびこれに直交する上下方向における2つの衝撃吸収体9同士の距離であり、0mm、20mm、40mmの3水準とした。
【0041】
ここで、上記の評価試験の各条件において、衝撃吸収体9のバネ定数k1、金属板110のバネ定数k2、およびこれらの合成バネ定数ktの算出結果について説明する。
【0042】
ピッチ間隔Pを40mm、厚みt2を1mmでそれぞれ固定し、Alの金属板110の厚みt1を上記した4水準で変えたときにおける衝撃吸収体9のバネ定数k1および金属板110のバネ定数k2を算出したところ、
図7に示す結果となった。なお、
図7および後述する
図8、
図9におけるktとは、衝撃吸収体9および金属板110の合成バネ定数である。衝撃吸収体9のバネ定数k1は、厚みt1が2mmでは36N/mm、厚みt1が3mm、3.5mm、4mmでは0N/mmであった。金属板110のバネ定数k2は、厚みt1が2mm、3mm、3.5mm、4mmにて、それぞれ299、585、638、681N/mmであった。合計のバネ定数ktは、厚みt1が2mm、3mm、3.5mm、4mmにて、それぞれ334、585、638、681N/mmであった。
【0043】
ピッチ間隔Pを40mm、Alの金属板110の厚みt1を2mmでそれぞれ固定し、厚みt2を上記した3水準で変えたときにおける衝撃吸収体9のバネ定数k1および金属板110のバネ定数k2を算出したところ、
図8に示す結果となった。衝撃吸収体9のバネ定数k1は、厚みt2が1mm、1.5mm、2mmにて、それぞれ36、0、0N/mmであった。金属板110のバネ定数k2は、厚みt2が1mm、1.5mm、2mmにて、それぞれ299、106、71N/mmであった。合計のバネ定数ktは、厚みt2が1mm、1.5mm、2mmにて、それぞれ334、106、71N/mmであった。
【0044】
Alの金属板110の厚みt1を2mm、厚みt2を1mmでそれぞれ固定し、ピッチ間隔Pを上記した3水準で変えたときにおける衝撃吸収体9のバネ定数k1および金属板110のバネ定数k2を算出したところ、
図9に示す結果となった。衝撃吸収体9のバネ定数k1は、ピッチ間隔Pが0mm、20mm、40mmにて、それぞれ0、16、36N/mmであった。金属板110のバネ定数k2は、ピッチ間隔Pが0mm、20mm、40mmにて、それぞれ614、363、299N/mmであった。合計のバネ定数ktは、ピッチ間隔Pが0mm、20mm、40mmにて、それぞれ614、379、334N/mmであった。
【0045】
そして、評価試験の結果、
図10に示すように、合成バネ定数ktが600N/mm以下である場合、ガラス板120の割れ確率が0%であった。この結果は、合成バネ定数ktが600N/mm以下となるように金属板110の厚みt1、衝撃吸収体9の厚みt2およびピッチ間隔Pを調整することで、ガラス板120がむき出しであっても割れを防ぐことができることを示している。金属板110の厚みt1は、筐体6のうち衝撃吸収体9が配置される突起部64の厚み、すなわち背面6bからの突出高さに相当する。このため、合成バネ定数ktが600N/mm以下となるように、突起部64の厚み、衝撃吸収体9の厚みおよびピッチ間隔を調整することで、透明カバー2が露出した構成であっても透明カバー2での割れ発生を抑制することが可能となる。重量110g以下の卑金属鋭利物を速度1.45m/s以下で衝突させる上記の評価試験では、ガラス板120は、厚みが0.33mmであるため、これ以上の厚みの場合には割れがより生じないこととなる。
【0046】
このため、合成バネ定数ktが600N/mm以下となる設計の場合、透明カバー2は、厚み0.33mm~0.7mmの範囲内のガラスで構成することで、曲面形状とされることを可能としつつ、物体衝突時の割れが抑制される。例えば、筐体6をAlで構成し、衝撃吸収体9のピッチ間隔Pを40mmとした場合、少なくとも、突起部64の厚みについては2~3mmの範囲内、衝撃吸収体9の厚みについては1~2mmの範囲内では、透明カバー2の物体衝突時の割れが抑制される。例えば、筐体6をAlで構成し、突起部64の厚みを2mmとし、衝撃吸収体9の厚みを1mmとしたときには、少なくとも、衝撃吸収体9のピッチ間隔Pについては0~40mmの範囲内では、透明カバー2の物体衝突時の割れが抑制される。このように、合成バネ定数ktが600N/mm以下となるように、筐体6の突起部64の厚み、衝撃吸収体9の厚みおよびピッチ間隔を適宜設計することで、透明カバー2が曲面形状とされることと、物体衝突時の割れを抑制することが両立可能となる。
【0047】
なお、上記の評価試験では、衝撃吸収体9を4つ配置した評価モデルとしたが、衝撃吸収体9の数が4つでなくとも、複数の衝撃吸収体9を等間隔で均等に配置した場合にも同様の結果が得られると考えられる。
【0048】
一方、評価試験の結果、
図10や
図11に示すように、合成バネ定数ktが600N/mmを超えると、ガラス板120の割れ確率が0%でないことが多くなり、n=3のうち少なくとも1回以上の頻度でガラス板120の割れが発生した。例えば、衝撃吸収体9の厚みt2を1mm、ピッチ間隔Pを40mmでそれぞれ固定し、Alの金属板110を厚み3.5mmの場合には割れ確率が約67%(n=2)、厚み4mmの場合には割れ確率が約33%(n=1)であった。また、衝撃吸収体9の厚みt2が1mm、ピッチ間隔Pが40mm、SUSの金属板110の厚みt1が3mmの場合には、割れ確率が100%(n=3)であった。このため、合成バネ定数ktが600N/mmを超える設計とした場合において、透明カバー2が厚み0.33mmのガラスであるとき、物体衝突時の割れを抑制することができない。
【0049】
本実施形態によれば、厚み0.7mm以下のガラス等で構成された透明カバー2が筐体6に凹曲げ状態で接着保持され、筐体6が背面6bにおいて衝撃吸収体9を介して被取付部材に固定されてなる表示装置1となる。表示装置1は、衝撃吸収体9が透明カバー2および筐体6よりも剛性が低い材料で構成されており、透明カバー2に何らかの物体が衝突したとき、衝撃吸収体9が最初に変形することで透明カバー2の破損を抑制することができる。また、表示装置1は、透明カバー2のうち筐体6側の裏面2bに表示パネル4が光学接着層3により貼り付けられると共に、透明カバー2の表面2aを保護シート等で覆う必要がなく、表面2aが外部に露出している。このため、表示パネル4の画像光が光学接着層3および透明カバー2のみを透過することとなり、透明カバー2の表面2aが保護シートに覆われる場合に比べて、表示品位が高くなる。よって、表示装置1は、表示品位を確保しつつ、透明カバー2の破損を抑制可能な構成となっている。
【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の表示装置1について説明する。
【0051】
本実施形態の表示装置1は、例えば
図12に示すように、衝撃吸収体9が表示パネル4と筐体6との間に配置されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0052】
衝撃吸収体9は、本実施形態では、筐体6の凹部62の底面62aに配置され、表示パネル4と接触している。衝撃吸収体9は、例えば、表示パネル4の裏面4bと凹部62の底面62aとを繋ぐように複数個が均等に配置されている。この場合、表示装置1は、透明カバー2を錘としたとき、衝撃吸収体9が第1のバネ、筐体6が第2のバネとして機能し、衝撃吸収体9の厚み・ピッチおよび筐体6の厚みによりバネ部分全体のバネ定数が調整された構成となっている。なお、本実施形態では、筐体6は、例えば、衝撃吸収体9を介さず、図示しない締結部材などにより取付部10に接続固定される。
【0053】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる表示装置1となる。
【0054】
(他の実施形態)
(1)本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0055】
(2)表示装置1は、例えば
図13に示すように、透明カバー2が平板状で筐体6に接着保持された構成であってもよい。また、表示装置1は、例えば
図14に示すように、透明カバー2の表面2aが凸となる曲げ状態、すなわち凸曲げの状態で接着保持されてもよい。凸曲げの状態で透明カバー2を接着保持する場合、筐体6は、例えば、凹部62の外側かつ前面6aの外郭内側において突出する突出部65を有する構成とされる。そして、表示装置1は、突出部65で透明カバー2の裏面2bを支持しつつ、突出部65の外側に配置された接着剤5により凸曲げ状態の透明カバー2を筐体6に接着保持する構成とされる。また、表示装置1は、凹曲げされた部分と凸曲げされた部分とが存在する曲面状態で接着保持されてもよい。このように、透明カバー2は、筐体6に接着保持されたときの曲げ形状については適宜変更されうる。このとき、筐体6の形状や衝撃吸収体9の配置等については、透明カバー2の接着保持状態における形状に応じて適宜変更されうる。
【0056】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
2 透明カバー
4 表示パネル
6 筐体
6b 背面
9 衝撃吸収体