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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124250
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240905BHJP
   G02B 5/04 20060101ALN20240905BHJP
   G02B 5/08 20060101ALN20240905BHJP
   B60R 1/08 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/04 B
G02B5/08 A
B60R1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032264
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 恒
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】辻 真俊
(72)【発明者】
【氏名】舘 鋼次郎
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA16
2H042AA21
2H042CA13
2H042DA11
2H042DB01
2H042DD02
2H042DE01
(57)【要約】
【課題】ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつも、薄型化がされた光学部材を提供する。
【解決手段】導光体2は、平滑入射面2aと反射射出面2bとが対向し、平滑入射面2aに連続する反射面2cと反射射出面2bに連続する平滑射出面2dとが対向している。反射射出面2bは、第1平坦部3と第1反射部4aとが交互に配列されてなる。第1反射部4aは、平滑入射面2aに対して傾いて配置されている。反射面2cは、第1反射部4aでの反射光が入射する部位であって、当該反射光を平滑射出面2d側の異なる方向に反射する複数の第2平坦部5および第2反射部6aを有する。平滑射出面2dは、第2平坦部5での反射光を全反射により反射し、第2反射部6aでの反射光を外部に射出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(実施例1、2の上位概念)
外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する平滑入射面(2a)と、前記平滑入射面からの入射光を外部に射出する第1平坦部(3)と前記入射光を反射する第1反射部(4a、7、11a)とが繰り返し交互に配置されてなり、前記平滑入射面に対して対向する反射射出面(2b)と、前記入射光のうち前記第1反射部で反射した光を反射する第2平坦部(5)および第2反射部(6a、8、12a)を複数有してなる反射面(2c)と、前記反射面に対して対向配置された平滑射出面(2d)とを有する導光体(2)を備え、
前記平滑入射面および前記反射面は、連続して配置されており、
前記反射射出面および前記平滑射出面は、連続して配置されており、
前記第2平坦部および前記第2反射部は、前記第1反射部で反射された光を前記平滑射出面の側であって、それぞれ異なる方向に反射し、
前記平滑射出面は、前記第2平坦部で反射した光を全反射により反射すると共に、前記第2反射部で反射した光を外部に射出する、光学部材。
【請求項2】
前記反射面は、少なくとも、複数の前記第2平坦部および前記第2反射部が交互に配列されてなる第1領域(2ca)と、前記第2反射部を構成するプリズム部(6)または溝部(12)のみが複数配列されてなる第2領域(2cb)とを有してなる、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記第1平坦部は、前記平滑射出面と同一の平面上に位置すると共に、前記平滑入射面と平行であり、
前記第1反射部は、複数の前記第1平坦部のなす面から凹んだ凹部(4)または突出する凸部(11)の一面(4a、11a)であって、当該一面の法線方向が前記反射面の側を向くように傾斜している、請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記平滑入射面、前記第1平坦部、および前記平滑射出面は、平行であり、
前記反射射出面は、前記平滑入射面と前記平滑射出面とを繋ぐ階段状の形状であり、
前記第1反射部は、複数の前記第1平坦部のうち隣接する2つの前記第1平坦部を繋ぐ段差部分をなす一面(7)であって、当該一面の法線方向が前記反射面の側を向くように傾斜している、請求項2に記載の光学部材。
【請求項5】
前記第1領域は、前記反射射出面と対向すると共に、前記平滑入射面と前記第2領域とを繋ぐ階段状の形状であり、
複数の前記第2平坦部、および前記平滑射出面は、平行であり、
前記第1領域における前記第2反射部は、複数の前記第2平坦部のうち隣接する2つの前記第2平坦部を繋ぐ段差部分をなす1つの面(8)であって、当該1つの面の法線方向が前記反射射出面の側を向くように傾斜している、請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記第1反射部および前記第2反射部は、平行であり、
前記導光体の屈折率をn(>1)とし、前記平滑入射面から入射した入射光の前記第1反射部への入射角をXとし、前記第1反射部で反射した光の前記第2平坦部への入射角をYとして、前記導光体は、sinX≧1/n、sinY≧1/nを満たす、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項7】
前記第1反射部および前記第2反射部は、前記導光体とは異なる材料で構成された反射膜(9)で覆われており、前記反射膜により光を反射する、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項8】
前記平滑入射面、前記第1平坦部、および前記平滑射出面のうち少なくとも1つは、前記導光体よりも低屈折率の材料で構成された低屈折率層(10)で覆われている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、外景光が入射する入射面、入射面から入射した外景光が最初に向かう第一の面、および第一の面に対向する第二の面を有する導光体と、第一の面側に配置される半透過ミラーと、第二の面に配置されるミラーとを有する。
【0003】
この光学部材は、入射面から入射した外景光の一部が半透過ミラーで第二の面に反射され、残部が半透過ミラーにおいて吸収または透過すると共に、第二の面において半透過ミラーで反射した光を第一の面側に反射させる。そして、この光学部材は、第一の面の側に複数のプリズムを有するプリズムシートが配置されており、半透過ミラーを透過した光が複数のプリズムを介して外部に射出される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6372305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、この種の光学部材は、導光体のうち外景光を外部に射出する射出面において、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつ、薄型化することも求められている。このニーズを満たすには、外景光が導光体の入射面に向かう角度を入射角度とし、入射光が第二の面に向かう角度を導光角度として、導光角度を入射角度よりも大きくし、入射光が第一、第二の面の間での一往復により進む距離をできるだけ大きくする必要がある。
【0006】
しかしながら、入射面における一回の屈折では導光角度を大きくすることに限界がある。また、入射面の傾斜角度を変更することも考えられるが、入射面における外景光の反射が大きくなり、光線の損失により効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつも、薄型化がされた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の光学部材は、外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する平滑入射面(2a)と、平滑入射面からの入射光を外部に射出する第1平坦部(3)と入射光を反射する第1反射部(4a、7、11a)とが繰り返し交互に配置されてなり、平滑入射面に対して対向する反射射出面(2b)と、入射光のうち第1反射部で反射した光を反射する第2平坦部(5)および第2反射部(6a、8、12a)を複数有してなる反射面(2c)と、反射面に対して対向配置された平滑射出面(2d)とを有する導光体(2)を備え、平滑入射面および反射面は、連続して配置されており、反射射出面および平滑射出面は、連続して配置されており、第2平坦部および第2反射部は、第1反射部で反射された光を平滑射出面の側であって、それぞれ異なる方向に反射し、平滑射出面は、第2平坦部で反射した光を全反射により反射すると共に、第2反射部で反射した光を外部に射出する。
【0009】
これによれば、平滑入射面と反射射出面とが対向配置され、反射射出面のうち第1反射部が平滑入射面からの入射光を反射し、当該反射した光が平滑入射面に連続して配置された反射面に向かう構成とされた光学部材となる。この光学部材は、反射面と対向配置された平滑射出面をさらに備え、反射面が第1反射部での反射光を平滑射出面の側であって、それぞれ異なる方向に反射する複数の第2反射部および第2平坦部により構成されている。この光学部材は、平滑入射面からの入射光の一部が、平滑入射面に対して対向する第1平坦部と交互に配置された第1反射部によって反射されるため、平滑入射面における光の表面反射を抑えつつ、第1反射部への入射光の入射角が大きい構成である。そして、第1反射部での反射光が平滑入射面に連続して配置された反射面に向かうため、当該反射光の反射面への入射角度が大きい状態に保たれる。つまり、導光体の内部において、平滑入射面および反射面の側と、反射射出面および平滑射出面の側との一往復で入射光が進む距離が大きくなり、反射射出面の側でユーザに外景を視認させる領域をより広くでき、この分だけ導光体の薄型化が可能となる。このため、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつも、薄型化がされた光学部材となる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の光学部材を示す断面図である。
図2】第1実施形態の光学部材における導光の説明図である。
図3】反射射出面の第1反射部における入射光の反射の説明図である。
図4】反射面の第2反射部における入射光の反射の説明図である。
図5】比較例の光学部材および導光の説明図である。
図6】入射面への光の入射角度と反射率との関係を示す図である。
図7】第1実施形態の光学部材の変形例を示す断面図である。
図8】第2実施形態の光学部材を示す断面図である。
図9】第2実施形態の光学部材の適用例および導光の説明図である。
図10】反射射出面およびこれと対向する面における入射光の反射の説明図である。
図11】平滑射出面および反射面の第2領域における入射光の反射の説明図である。
図12】第1実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
図13】第2実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
図14】第1実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
図15】第2実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
図16】第1実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
図17】第2実施形態の光学部材の他の形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。本明細書では、光学部材1が車両のピラーに取り付けられ、当該ピラーによる死角領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる車両用の死角補助装置とされる場合を代表例として説明するが、勿論、他の用途にも採用されうる。なお、図2では、光学部材1の構成を見易くするため、後述する遮蔽体200の外郭を破線で示している。
【0014】
光学部材1は、例えば図1に示すように、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の任意の透光性材料で構成された略板状の導光体2を備える。導光体2は、外部からの光を内部に入射させる平滑入射面2aと、平滑入射面2aと対向する反射射出面2bと、平滑入射面2aと共に反射射出面2bとは反対側に位置する反射面2cと、反射面2cと対向する平滑射出面2dとを備える。また、導光体2は、平滑入射面2aと反射射出面2bとを繋ぐ入射側面2eと、反射面2cと平滑射出面2dとを繋ぐ終端面2fと、をさらに備える。光学部材1は、例えば図2図3に示すように、光を遮蔽する任意の遮蔽体200に図示しない治具等で取り付けられ、遮蔽体200から突き出た部分に位置する平滑入射面2aから外部の光を導光体2の内部に入射させる。そして、光学部材1は、入射した光の一部が反射射出面2bの一部、反射面2c、平滑射出面2dの順で反射して導光される一方で、反射射出面2bおよび平滑射出面2dの一部で光を外部に射出させる。これにより、光学部材1は、反射射出面2bおよび平滑射出面2dの側にいるユーザに遮蔽体200により生じる死角領域の光景をユーザに視認させる。なお、遮蔽体200は、例えば、車載用途では、ピラーとされるが、これに限定されるものではなく、用途に応じて様々なものとされうる。
【0015】
以下、説明の便宜上、例えば図2に示すように、外部から導光体2に入射する光を「外景光L」と称し、外景光Lのうち平滑入射面2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L」と称する。また、反射射出面2bおよび平滑射出面2dから外部に射出される光を「射出光L」と称する。
【0016】
また、図1等に示すように、反射射出面2bのうち複数の第1平坦部3のなす平面に沿った方向であって、入射側面2e側の端部から終端面2f側の端部に向かう方向を「導光方向D1」と称し、当該平面に対する法線方向を「厚み方向D2」と称する。つまり、導光方向D1とは導光体2内における入射光Lの進行方向に沿った方向とも言え、厚み方向D2とは第1平坦部3に対して平行な第2平坦部5に対する法線方向とも言える。また、図3等に示すように、平滑入射面2a、第1平坦部3、第2平坦部5あるいは平滑射出面2dのなす面に対する法線方向を単に「法線方向N1」と称することがある。また、平滑入射面2aに向かう外景光Lの進む方向と厚み方向D2とのなす角度をθとして、θを「入射角」と称することがある。さらに、第1反射部4a、第2平坦部5、第2反射部6a、および平滑射出面2dへの入射光Lのそれぞれ入射角度を「導光角」と称することがある。
【0017】
平滑入射面2aは、外景光Lを導光体2の内部に入射させる1つの平滑面である。平滑入射面2aは、本実施形態では、反射面2cに連続して配置されると共に、反射面2cのうち第2平坦部5と同一平面上に位置している。平滑入射面2aは、反射射出面2bのうち第1平坦部3と対向すると共に、第1平坦部3に対して平行となっている。
【0018】
反射射出面2bは、平滑入射面2aからの入射光Lが最初に到達する面であり、複数の第1平坦部3と、複数の凹部4とを有する。反射射出面2bは、例えば、導光方向D1に沿って第1平坦部3と凹部4とが交互に繰り返し配列された構成となっている。反射射出面2bは、本実施形態では、複数の第1平坦部3が平滑射出面2dと同一平面上に位置している。なお、複数の凹部4および第1平坦部3を有する反射射出面2bは、例えば、図示しない金型などを用いた公知のプラスチック成形方法により形成される。
【0019】
複数の第1平坦部3は、例えば図2に示すように、平滑入射面2aと対向かつ平行に配置された平滑面であり、平滑入射面2aからの入射光Lが臨界角未満で入射する。複数の第1平坦部3に入射した入射光Lは、外部に射出される。
【0020】
複数の凹部4は、複数の第1平坦部3のなす平面から導光体2の内部に向かって設けられている。複数の凹部4は、例えば図2に示すように、断面視にて、互いに対向し、交差する2つの壁面で構成された溝形状とされ、2つの壁面の一方が第1反射部4a、他方が繋ぎ面4bとなっている。
【0021】
第1反射部4aは、例えば、1つの平坦面とされ、凹部4の2つの壁面のうち当該壁面の法線方向が反射面2c側を向く面である。言い換えると、第1反射部4aは、平滑入射面2aに対して反射面2cを向くように傾いた傾斜面である。第1反射部4aは、例えば、平滑入射面2aからの入射光Lを全反射により反射面2cの側に反射する第1反射面として機能する部位である。繋ぎ面4bは、凹部4の2つの壁面のうち第1反射部4aと第1平坦部3とを繋ぐ面であり、例えば、1つの平坦面とされる。なお、第1反射部4aの傾斜角度および入射光Lの反射の詳細については後述する。
【0022】
反射面2cは、平滑入射面2aに隣接する面であって、反射射出面2bからの反射光を反射する部位である。反射面2cは、複数の第2平坦部5およびプリズム部6を有し、例えば、導光方向D1に沿って第2平坦部5とプリズム部6が交互に配列されてなるプリズムアレイとなっている。反射面2cは、複数の第1反射部4aを第一反射面として、第一反射面と対をなす第二反射面、第三反射面に相当する第2平坦部5および第2反射部6aを有する。なお、光学部材1は、例えば、図示しない取付治具等により車両のAピラーなどの外景を遮る任意の遮蔽体に取り付けられ、反射面2cと当該遮蔽体とが所定の隙間を隔てて対向する装着状態で使用される。このとき、平滑入射面2aは、光学部材1が取り付けられる遮蔽体からはみ出した状態となる。
【0023】
複数の第2平坦部5は、本実施形態では、平滑入射面2aと同一平面上に位置し、第1反射部4aで反射した光を全反射により平滑射出面2dに反射する部位である。複数の第2平坦部5は、例えば、平滑射出面2dに対して平行である。これにより、第2平坦部5で反射した光は、平滑射出面2dの側に臨界角以上の導光角で向かい、平滑射出面2dで全反射する。つまり、第2平坦部5は、第1反射部4aで反射した光を平滑射出面2dで全反射する角度で反射する面、すなわち導光体2内部での導光のための反射面であり、いわば「導光反射面」として機能する。この詳細については後述する。
【0024】
複数のプリズム部6は、複数の第2平坦部5のなす平面から外部に突出する突起であって、例えば、断面視にて三角形状とされる。複数のプリズム部6は、互いに対向し、交差する2つの面を有し、一方が第1反射部4aで反射した光を反射する第2反射部6a、他方が隣接面6bとなっている。
【0025】
複数の第2反射部6aは、本実施形態では、第1反射部4aに対して平行な平坦面であり、第1反射部4aでの反射光を全反射により平滑射出面2dに反射する。複数の第2反射部6aは、第1反射部4aでの反射光を平滑射出面2dの側であって、第2平坦部5での反射光とは異なる方向に反射する。複数の第2反射部6aで反射した光は、平滑射出面2dの側に臨界角未満の導光角で向かい、平滑射出面2dから外部に射出される。つまり、第2反射部6aは、第1反射部4aで反射した光を平滑射出面2dで全反射しない角度で反射する面、すなわち平滑射出面2dからの射出のために用いられる反射面であり、いわば「射出反射面」として機能する。この詳細については後述する。
【0026】
平滑射出面2dは、反射射出面2bに連続して配置されると共に、平滑入射面2aおよび第2平坦部5に対して平行な平滑面である。平滑射出面2dは、反射面2cに対して対向配置され、主に反射面2cでの反射光が入射する。平滑射出面2dは、第2平坦部5からの反射光を反射面2c側に反射すると共に、第2反射部6aからの反射光を外部に射出する。
【0027】
入射側面2eは、平滑入射面2aと反射射出面2bとを繋ぐ側面である。入射側面2eは、例えば、入射光Lが入射しないように、厚み方向D2に対する傾斜角度が所定以下となっている。
【0028】
終端面2fは、導光方向D1における終端に位置し、反射面2cと平滑射出面2dとを繋ぐ側面である。入射光Lのうち終端面2fに到達した光は、例えば、外部に射出されるが、終端面2fを図示しない光吸収膜で覆うことで、外部に射出されなくてもよい。
【0029】
以上が、導光体2の基本的な構成である。導光体2は、例えば金属材料あるいは誘電体材料によりなる半透過ミラーを有さずとも、内部で入射光Lを導光可能であり、第1平坦部3および平滑射出面2dにおいて入射光Lの吸収による損失が生じない構成となっている。
【0030】
〔光学部材における導光〕
次に、反射射出面2b、反射面2c、および平滑射出面2dにおける導光について説明する。
【0031】
導光体2は、入射光Lが第1反射部4a、反射面2cの第2平坦部5および第2反射部6aで全反射すると共に、第2平坦部5で反射した光が平滑射出面2dで全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光体2の構成材料の屈折率をn(>1)とし、導光体2の外部が空気(屈折率:1)とする。また、第1反射部4aにおける導光角をX、第2平坦部5における導光角をYとする。このとき、導光体2は、以下の(1)、(2)式を満たす設計となっている。
【0032】
sinX≧1/n・・・(1)
sinY≧1/n・・・(2)
なお、導光体2は、第1反射部4aおよび第2反射部6aが厚み方向D2を法線方向とする水平面に対する傾斜角度が同一、すなわち平行である。また、導光体2は、平滑入射面2aと第2平坦部5が同一平面上に位置すると共に、平滑入射面2aおよび平滑射出面2dが平行である。このため、第2反射部6aにおける導光角がX、第2平坦部5における導光角がY、第2反射部6aで反射した光の平滑射出面2dにおける導光角がXとなっている。
【0033】
これにより、導光体2は、導光体2とは異なる材料で構成された半透過ミラーおよびミラーを有さずとも、平滑入射面2aからの入射光Lを全反射により内部で導光させつつ、第1平坦部3および平滑射出面2dから外部に射出することができる。
【0034】
例えば図3に示すように、外景光Lが入射角θで平滑入射面2aに入射したときにおいて、入射光Lの第1平坦部3への導光角をφとする。導光角φは、外部の空気層(屈折率:1)から屈折率nの導光体2に外景光Lが入射する場合、スネルの法則により、1×sinθ=n×sinφが成立し、入射角θと導光体2の屈折率により決まる。例えば、導光体2が屈折率1.49のポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂で構成され、入射角θ=30°であるとき、導光角φは、1×sin30°=1.49×sinφから約19.6°となる。入射光Lのうち導光角φで第1平坦部3に到達した光は、平滑入射面2aと第1平坦部3とが平行であるとき、入射角θと等しい角度で外部に射出される。これにより、ユーザが直接視認できる外景と、導光体2を介して視認できる外景との連続性が保たれる。
【0035】
第1反射部4aは、例えば図3に示すように、傾斜面であり、第1平坦部3のなす平面とのなす角度がα(単位:°)とされている。また、入射光Lのうち第1反射部4aに入射する光を第1入射光L21とし、第1入射光L21が第1反射部4aで反射されたものを第2入射光L22として、第2入射光L22の進む方向と法線方向N1とのなす角度をφとする。このφは、平滑入射面2aおよび第2平坦部5と、第1平坦部3とが平行であるとき、例えば図2および図4に示すように、第2平坦部5への導光角Yに等しくなる。また、第1反射部4aの傾斜角度がαであるとき、法線方向N1と第1反射部4aのなす面に対する法線方向N2とのなす角度は、図3に示すように、αとなる。このため、第1反射部4aに対する第1入射光L21の導光角Xは、φ+αとなる。そして、法線方向N2と第2入射光L22の進む方向とのなす角度が反射の法則によりφ+αとなることから、導光角φは、φ+α+α、すなわちφ+2αとなる。このように、平滑入射面2aと第1平坦部3とが対向かつ平行とされ、平滑入射面2aに対して第1反射部4aが傾斜した構成であることで、導光角φ(=Y)を大きくすることが可能となる。
【0036】
第2入射光L22は、例えば図4に示すように、反射面2cのうち第2平坦部5または第2反射部6aに到達する。第2反射部6aは、第1反射部4aに対して平行、すなわち第2平坦部5に対する傾斜角度がαの傾斜面とされる。このとき、第2入射光L22の一部は、第2反射部6aで全反射され、導光角φで平滑射出面2dに向かうこととなる。第2入射光L22のうち第2反射部6aで反射された第3入射光L23は、臨界角未満で平滑射出面2dに到達し、入射角θと同じ角度で外部に射出される。なお、第1反射部4aと第2反射部6aとが平行、すなわち傾斜角度が同一であるとき、第2反射部6aに対する法線方向N3は、法線方向N2と平行になる。このとき、第2入射光L22の第2反射部6aへの導光角βは、Xに等しく、φ+αとなる。
【0037】
一方、第2入射光L22のうち第2平坦部5に到達したものは、導光角φで入射し、導光体2が上記(2)式を満たす設計であることから、全反射により反射される。第2入射光L22のうち第2平坦部5で反射された第4入射光L24は、臨界角以上である導光角φで平滑射出面2dに向かい、平滑射出面2dで全反射により反射される。平滑射出面2dで反射された第4入射光L24は、第2入射光L22と同じ導光角φで再度反射面2cに向かうため、第2反射部6aに到達した場合には平滑射出面2dから射出され、第2平坦部5に到達した場合には平滑射出面2dで再度反射される。
【0038】
〔光学部材の薄型化〕
第1反射部4aの傾斜角度αは、導光体2の厚みT低減の観点から、例えば、第2平坦部5への導光角φが70°以上、すなわちφ+2α≧70を満たすように設計されることが好ましい。この理由について、図5に示す比較例の光学部材100と対比して説明する。
【0039】
まず、比較例の光学部材100について、光学部材1との差異を主に説明する。比較例の光学部材100は、透光性のある所定の屈折率材料により構成された導光体101を有し、他の材料によりなる半透過ミラーやミラーを有さずに、全反射により外景光Lを導光する構成となっている。光学部材100は、入射面101a、射出面101b、反射面101cおよび終端面101dを備え、射出面101bと反射面101cとが平行かつ対向して配置され、入射面101aと終端面101dとが対向している。射出面101bは、入射光Lを外部に射出する面を有するプリズム部102と、入射光Lを全反射により反射する平坦部103とが繰り返し配列されてなる。プリズム部102は、入射光Lを外部に射出する射出部102aと、入射面101a側の平坦部103に隣接する隣接面102bとを有してなる。光学部材100は、射出面101bと交差する入射面101aから入射光Lが入射し、入射光Lが平坦部103にて導光角φで入射および反射した後、反射面101cにおいて導光角φで入射および反射し、射出面101bに戻る構成となっている。
【0040】
ここで、光学部材100の射出面101bのうち平坦部103と反射面101cとの対向部分の厚みをTとする。このとき、光学部材100において、入射光Lが全反射によって平坦部103および反射面101cの間の一往復で導光方向D1に沿って進む距離を往復幅Wとして、往復幅Wは、2Ttanφとなる。射出面101bにおいてユーザに外景を視認させる領域を広く確保するためには、往復幅Wを大きくする必要がある。そして、往復幅Wを大きくするためには、厚みTを大きくするか、導光角φを大きくしなければならない。
【0041】
しかしながら、厚みTを大きくすることは、薄型化のニーズに反する。また、導光角φを大きくするため(好ましくは70°以上)には、入射面101aに対する法線方向と外景光Lの入射方向とのなす角度、すなわち入射光角度が大きくなるように、入射面101aの傾斜角度を調整する必要がある。ここでいう入射面101aの傾斜角度とは、入射面101aのなす平面と平坦部103のなす平面とのなす角度である。例えば、導光体101が屈折率1.49のPMMA樹脂で構成され、入射光角度が60°である場合、入射面101aからの入射光Lの進行方向と入射面101aに対する法線方向とのなす角度は、スネルの法則により約24.5°となる。また、平坦部103に対する法線方向と外景光Lとのなす角度、すなわち入射角θ=30°であるとき、導光角φは、30°+約24.5°=約54.5°となり、70°には達しない。このため、導光角φを70°以上とするためには、外景光Lの入射光角度が60°よりも大きくなるように、入射面101aの傾斜角度を設計する必要がある。しかしながら、このように入射面101aの傾斜角度を設計すると、導光角φを大きくできる一方で、入射面101aにおいて外景光Lの反射率が大きくなってしまい、光線の損失が生じる。
【0042】
本発明らの検討によれば、入射面に対する光の入射角と当該入射面における光の反射率との関係は、例えば図6に示すとおりであった。具体的には、入射面に入射する光のうち当該入射面に対して振動方向が平行であるP波の成分と、振動方向が垂直なS波の成分とについて、入射角を変えたときの反射率の変化について確認した。図6に示す「P偏光」とは、上記したP波の成分に相当し、図6に示す「S偏光」とは上記したS波の成分に相当する。反射率は、S偏光のほうがP偏光よりも大きいものの、入射角が60°以下の場合には、P偏光およびS偏光のいずれも30%未満である一方で、入射角が60°を超えると、急激に上昇した。この結果は、入射面への光の入射角が60°を超えると、当該入射面から透光体の内部への光の取込効率が低下することを意味する。つまり、比較の光学部材100では、入射面101aへの外景光Lの入射角が60°を超えるように入射面101aの傾斜角度を調整すると、入射面101aでの外景光Lの反射率が大きくなり、入射面101aからの光の取込効率が低下してしまう。このように、比較例の光学部材100は、往復幅Wを広く確保しつつ、厚みTの低減のために導光角φを大きくすると、入射面101aからの光の取込効率が下がり、光の損失が大きくなる。このため、比較例の光学部材100では、射出面101b側におけるユーザの外景光の視認領域、すなわち表示視域の確保と厚みTの低減とを両立すると、射出光Lの光量が低下する新たな課題が生じてしまう。
【0043】
これに対して、本実施形態の光学部材1は、外景光Lの取込部位である平滑入射面2aと、入射光Lを外部に射出する部位である第1平坦部3および平滑射出面2dとが対向かつ平行とされている。また、光学部材1は、入射光Lを最初に反射する部位である第1反射部4aが平滑入射面2aのなす平面に対してαだけ傾いた構成となっている。このため、第1反射部4aで反射した入射光Lは、上記したように、第2平坦部5に導光角Y=φ=φ+2αで導光され、傾斜角度αの調整により導光角φの制御が可能である。言い換えると、光学部材1は、平滑入射面2aにおける外景光Lの入射角を調整せずとも、導光角φの調整が可能なため、平滑入射面2aにおける外景光Lの反射率を低くしつつ、導光角φを大きくできる。例えば、平滑入射面2aでの外景光Lの入射角θ=30°、かつ導光体2の屈折率が1.49である場合、導光角φが約19.6°となり、導光角φを70°にするためには、傾斜角度αは、70°=19.6°+2αにより、約25.2°とすればよい。
【0044】
また、入射光Lが全反射により反射射出面2bの側と反射面cの側との一往復において導光方向D1に沿って進む距離を往復幅Wとして、往復幅Wは、2Ttanφとなる。光学部材1は、導光角φがφよりも大きくなるように設計されても、平滑入射面2aにおける反射率が小さく、光損失が抑制される。このため、W=Wの場合、2Ttanφ=2Ttanφとなり、φ<φであるとき、tanφ<tanφ、およびT>Tが成立する。つまり、光学部材1は、比較例の光学部材100の往復幅Wと同じ往復幅Wとしたとき、厚みTが比較例の厚みTよりも薄くなる。
【0045】
本実施形態によれば、平滑入射面2aと反射射出面2bとが対向かつ平行、かつ反射面2cと平滑射出面2dとが対向かつ平行な光学部材1となっている。光学部材1は、反射射出面2bのうち平滑入射面2aからの入射光Lを反射する第1反射部4aが平滑入射面2aに対して傾いており、平滑入射面2aの傾斜を調整せずとも、第1反射部4aで反射した光の第2平坦部5への導光角φが大きくなる。このため、光学部材1は、入射光Lの導光方向D1における往復幅を所定以上にし、ユーザへの外景光の視認領域を広く確保しつつも、薄型化がなされた構成となる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の光学部材1は、例えば図7に示すように、反射面2cが第2平坦部5とプリズム部6との比率が異なる複数の領域で構成されていてもよい。例えば、反射面2cは、複数の第2平坦部5およびプリズム部6により構成された第1領域2caと、複数のプリズム部6のみにより構成された第2領域2cbとを有した構成とされうる。言い換えると、この場合、光学部材1のうち平滑入射面2a側の面は、平滑入射面2a、第1領域2caおよび第2領域2cbの3つの領域に区画されている。以下、説明の便宜上、光学部材1のうち平滑入射面2a側の面を構成する領域の数を「区画領域数」という。
【0047】
第2領域2cbは、導光方向D1における終端面2f側の端部に形成される。また、本変形例において、反射射出面2bは、第1平坦部3および第1反射部4aの導光方向D1における幅の比率が区画領域数に合わせて設計される。このような構成とされることで、光学部材1は、反射射出面2bのうち第1平坦部3が占める領域、平滑射出面2dのうち第1領域2caと対向する領域、および第2領域2cbと対向する領域の3つの領域における射出光Lの光量が略均一化される。なお、略均一とは、完全に均一である場合に加えて、ほぼ均一である場合を含む。
【0048】
例えば、平滑入射面2aからの入射光Lの全光量を100%とする。そして、区画領域数が3である場合、光学部材1は、反射射出面2bのうち第1平坦部3が占める領域、平滑射出面2dのうち第1領域2caと対向する領域、および第2領域2cbと対向する領域がそれぞれ射出光Lの光量が約33%となるように設計される。以下、説明の簡便化のため、平滑射出面2dのうち第1領域2caと対向する領域を「第1対向領域2da」、平滑射出面2dのうち第2領域2cbと対向する領域を「第2対向領域2db」という。
【0049】
具体的には、反射射出面2bにおける入射光Lの外部への射出率は、導光方向D1における反射射出面2bの幅に対する第1平坦部3の幅の比率で決まる。また、反射射出面2bにおける入射光Lの反射面2cへの反射率は、導光方向D1における反射射出面2bの幅に対する第1反射部4aの幅の比率で決まる。そこで、導光方向D1における反射射出面2bの幅に対して、第1平坦部3の幅の比率を約1/3、第1反射部4aの幅の比率を約2/3とすれば、反射射出面2bのうち第1平坦部3が占める領域における射出光Lの光量は100%×1/3≒33%となる。また、第1対向領域2daにおける射出光Lの光量は、第1反射部4aでの反射光の光量に、導光方向D1における第1領域2caの幅に対する第2反射部6aの幅の比率を乗じたものとなる。そこで、第1領域2caは、例えば、導光方向D1における第1領域2caの幅に対する第2反射部6aの幅の比率が約1/2、第2平坦部5の幅の比率が約1/2となるように設計される。この場合、第1対向領域2daにおける射出光Lの光量は、66%×1/2≒33%となる。一方、第1領域2caに到達した残りの光(約33%)は、第2平坦部5で反射された後、平滑射出面2dで反射され、第2領域2cbに到達する。そして、第2領域2cbでは第2反射部6aによる反射が主に生じるため、第2対向領域2dbにおける射出光Lの光量は、約33%となる。上記の設計により、反射射出面2b、第1対向領域2daおよび第2対向領域2dbは、いずれも射出光Lの光量が約33%となって、輝度が略均一となる。
【0050】
なお、上記では、反射面2cが2つの領域で構成された例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、反射面2cは、第2平坦部5とプリズム部6との比率が異なる3つ以上の領域で構成されてもよい。反射面2cがn(n:3以上の整数)個の領域で構成される場合、区画領域数についてはn+1となり、光学部材1のうち反射射出面2b側の領域数についてはn+1となる。このとき、光学部材1は、反射射出面2bおよび各区画領域における射出光Lの光量が約100/(n+1)%となるように、第1平坦部3と第1反射部4aとの幅の比率、第2平坦部5と第2反射部6aとの幅の比率を調整すればよい。
【0051】
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、反射射出面2bおよび平滑射出面2dの全域における射出光Lの光量が略均一となり、表示視域における外景の輝度が略均一化される効果も得られる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0053】
本実施形態の光学部材1は、例えば図8に示すように、反射射出面2bが平滑入射面2aと平滑射出面2dとを繋ぐ階段状の形状となっている。また、光学部材1は、反射面2cが反射射出面2bと同様の階段形状である第1領域2caと、複数のプリズム部6で構成された第2領域2cbとにより構成されている。本実施形態の光学部材1は、上記した点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0054】
反射射出面2bは、本実施形態では、複数の第1平坦部3と、隣接する2つの第1平坦部3または平滑入射面2aとこれに隣接する第1平坦部3とを繋ぐ複数の第1段差部7とを有してなる。複数の第1平坦部3は、本実施形態では、例えば、導光方向D1および厚み方向D2においてそれぞれ異なる位置に配置され、平滑入射面2aに対して対向かつ平行となっている。複数の第1平坦部3は、例えば、平滑射出面2d側に近いものほど、終端面2fに近い配置とされ、導光方向D1において他の第1平坦部3とは重ならない状態となっている。他の複数の第1段差部7は、例えば、1つの平坦面とされ、当該平坦面の法線方向が反射面2cの側を向くように同一角度で傾斜している。つまり、反射射出面2bは、本実施形態では、導光方向D1および厚み方向D2においてそれぞれ異なる位置に配置された第1平坦部3と段差部7とが交互に配列され、全体として反射面2c側を向くように傾斜した階段状となっている。
【0055】
反射射出面2bは、例えば図9に示すように、平滑入射面2aからの入射光Lが入射する部位である。平滑入射面2aからの入射光Lのうち第1平坦部3に到達した光は、外部に射出される。ここで、入射光Lのうち第1段差部7に到達する光を第1入射光L21とする。複数の第1段差部7は、例えば図10に示すように、第1入射光L21の第1段差部7への入射角が臨界角以上となるように、平滑入射面2aのなす平面と平行な面に対して傾斜角度αで傾斜している。これにより、第1入射光L21は、第1段差部7で全反射により反射される。そして、この第1段差部7での反射光である第2入射光L22は、反射射出面2bと対向する第1領域2caに向かうこととなる。つまり、複数の第1段差部7は、上記第1実施形態における第1反射部4aに相当する。
【0056】
なお、平滑入射面2aにおける外景光Lの入射角をθ、第1入射光L21の第1平坦部3のなす平面に対する導光角をφ、第1入射光L21と第2入射光L22とのなす角度を導光角φとすると、上記第1実施形態と同様に、φ=φ+2αとなる。
【0057】
第1領域2caは、本実施形態では、導光方向D1および厚み方向D2にてそれぞれ異なる位置にある複数の第2平坦部5と、平滑入射面2aとこれに隣接する第2平坦部5または隣接する2つの第2平坦部5を繋ぐ複数の第2段差部8とにより構成されている。複数の第2平坦部5は、第2領域2cbに近いものほど終端面2fに近い位置に配置されている。第1領域2caは、平滑入射面2aと、平滑入射面2aよりも厚み方向D2において平滑射出面2dに近い位置に配置された第2領域2cbとを繋ぐ階段形状である。つまり、第1領域2caは、導光方向D1および厚み方向D2にてそれぞれ異なる位置にある第2平坦部5と第2段差部8とが交互に配列されてなり、全体として反射射出面2bと対向する階段形状となっている。これにより、光学部材1は、例えば図9に示すように、AピラーAPのように段差を有する任意の遮蔽体への取り付けが容易となる。この場合、平滑入射面2aには、ウィンドシールドWSからの外景光Lが入射する。複数の第2平坦部5は、例えば、第1平坦部3に対して平行とされ、平滑射出面2dに対して対向かつ平行とされている。複数の第2段差部8は、例えば、1つの平坦面とされ、当該平坦面の法線方向が反射射出面2bの側を向くように傾斜している。
【0058】
複数の第2段差部8は、例えば、第1段差部7と同一の傾斜角度α、すなわち第1段差部7と平行になっている。第2段差部8の傾斜角度αとは、平滑入射面2aのなす平面に対して平行な面と第2段差部8のなす平面とのなす角度である。これにより、第2段差部8は、第2入射光L22のうち一部の光が臨界角以上の導光角φで入射するため、当該一部の光を全反射により平滑射出面2dに向けて反射する。また、第2入射光L22のうち第2段差部8で反射した光を第3入射光L23として、第3入射光L23は、平滑入射面2aと平行な平滑射出面2dに臨界角未満の導光角φで入射する。このため、第3入射光L23は、平滑射出面2dから入射角θと同じ角度で外部に射出される。つまり、複数の第2段差部8は、第2領域2cbにおける第2反射部6aと同じ役割を果たし、いわば「射出反射面」に相当する。
【0059】
複数の第2平坦部5は、第2入射光L22のうち一部の光が臨界角以上の導光角φで入射するため、全反射により当該一部の光を平滑射出面2d側に反射する。このため、第2入射光L22のうち第2平坦部5で反射した光を第4入射光L24として、第4入射光L24は、平滑射出面2dに臨界角以上の導光角φで入射することとなる。なお、複数の第2平坦部5の導光方向D1における幅は、本実施形態では、第2領域2cb側において隣接する第2段差部8によって第4入射光L24が遮られにくくするため、当該隣接する第2段差部8の厚み方向D2における高さに応じて適宜設計される。
【0060】
第4入射光L24は、例えば図11に示すように、導光角φで平滑射出面2dに入射し、平滑射出面2dにおいて全反射により第2領域2cbの側に反射される。第2領域2cbは、平滑射出面2dで反射された第4入射光L24が主に入射する。第4入射光L24のうち第2反射部6aに入射した光は、全反射により平滑射出面2dに臨界角未満の導光角φで反射された後、平滑射出面2dから入射角θと同じ角度で外部に射出される。
【0061】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、反射射出面2bが平滑入射面2aと反射射出面2bとを繋ぐ階段形状とされることで、反射射出面2bにおいて光学的に寄与しない部位がなくなり、光の利用効率を向上させる効果が得られる。また、反射面2cが階段形状の第1領域2caと第2領域2cbとを有する構成であることで、光学部材1は、所定の段差や曲率を有する遮蔽体への取り付けがより容易となり、取り付け状態における意匠性が向上する効果も得られる。
【0062】
(他の実施形態)
(1)本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0063】
(2)例えば、上記第1実施形態では、光学部材1は、図12に示すように、第1反射部4aおよび第2反射部6aをなす傾斜面に反射膜9を形成し、導光体2とは異なる反射性材料で構成された反射膜9により入射光Lを反射する構成であってもよい。この場合、導光体2は、第1反射部4aで反射した入射光Lが入射する第2平坦部5で全反射すると共に、第2平坦部5で反射した入射光Lが平滑射出面2dで全反射する構成とされればよい。このような構成であっても、例えば誘電体多層膜で構成される半透過ミラーが不要であるため、製造コストが従来よりも低減される。なお、反射膜9は、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)などの金属材料や合金材料などの反射性材料で構成され、蒸着などの任意の方法で形成される。
【0064】
(3)上記第2実施形態では、光学部材1は、例えば図13に示すように、第2反射部6aおよび段差部7、8の外表面が反射膜9で覆われ、反射膜9により入射光Lを反射する構成であってもよい。この場合、導光体2は、第1段差部7の反射膜9で反射した入射光Lが入射する第2平坦部5で全反射すると共に、第2平坦部5で反射した入射光Lが平滑射出面2dで全反射する構成とされればよい。このような構成であっても、半透過ミラーが不要であるため、製造コストが従来よりも低減される。
【0065】
(4)上記第1実施形態では、光学部材1は、例えば図14に示すように、光を透過させる面、すなわち平滑入射面2a、第1平坦部3および平滑射出面2dが導光体2よりも低屈折率材料で構成された低屈折率層10で覆われた構成であってもよい。これにより、外景光Lの平滑入射面2aへの入射、入射光Lの第1平坦部3への入射、第2反射部6aで反射された入射光Lの平滑射出面2dへの入射において、光の反射が抑制される。この結果、光学部材1は、平滑入射面2aからの導光体2への光の取込効率、並びに第1平坦部3および平滑射出面2dからの光の射出効率が向上し、導光体2の全体における光の利用効率が向上する効果が得られる。
【0066】
低屈折率層10は、透明かつ導光体2よりも低屈折率の材料で構成され、例えば、スプレー塗布などの任意のコーティング方法で形成される。低屈折率層10は、特に、平滑入射面2aにおける外景光Lの透過率T1と、第1平坦部3および平滑射出面2dの全域における入射光Lの外部への透過率T2とを乗じて得られる値が所定以下(例えば0.8以下)である場合に設けられることが好ましい。透過率T1は、外景光Lの平滑入射面2aへの入射角度をθ、平滑入射面2aから入射した入射光Lの進む方向と平滑入射面2aに対する法線方向とのなす角度をφ、導光体2の屈折率をnとして、フレネルの式により、(3)式で表される。
【0067】
【数3】
(3)式におけるt1S、t1Pは、それぞれ、平滑入射面2aにおける外景光L1のS波の振幅透過率、P波の振幅透過率であり、(4)式、(5)式で表される。
【0068】
【数4】
【数5】
また、平滑入射面2aからの入射光Lが第1平坦部3または平滑射出面2dに直接入射するとき、および第2反射部6aで反射した入射光Lが平滑射出面2dに入射するときの入射角度をφとする。そして、導光体2の屈折率をnとし、φの入射角度で第1平坦部3または平滑射出面2dに到達した入射光Lが外部に射出される角度をθとすると、透過率T2は、フレネルの式により、(6)式で表される。
【0069】
【数6】
(6)式におけるt2S、t2Pは、それぞれ、第1平坦部3および平滑射出面2dにφの角度で入射する入射光LのS波の振幅透過率、P波の振幅透過率であり、(7)式、(8)式で表される。
【0070】
【数7】
【数8】
なお、低屈折率層10は、平滑入射面2a、第1平坦部3および平滑射出面2dの少なくとも1つの面に形成されることで、導光体2の光の利用効率を向上させる。このため、低屈折率層10は、平滑入射面2a、第1平坦部3および平滑射出面2dのすべてに形成されてもよいし、一部のみに形成されてもよい。
【0071】
(5)上記第2実施形態では、光学部材1は、例えば図15に示すように、平滑入射面2a、第1平坦部3および平滑射出面2dに低屈折率層10が形成されていてもよい。これにより、光学部材1は、平滑入射面2aにおける導光体2への光の取込効率、第1平坦部3および平滑射出面2dからの入射光Lの射出効率が向上し、導光体2全体の光の利用効率が向上する効果が得られる。
【0072】
(6)上記第1実施形態では、光学部材1は、例えば図16に示すように、反射射出面2bが凹部4に代わって凸部11を有し、第1平坦部3から突出する凸部11の傾斜面11aが第1反射部をなす構成であってもよい。また、光学部材1は、反射面2cがプリズム部6に代わって溝部12を有し、第2平坦部5から凹んだ溝部12の傾斜面12aが第2反射部をなす構成であってもよい。この場合、凸部11の傾斜面11aは、平滑入射面2aもしくは第1平坦部3のなす平面に対してαだけ傾いた構成とされる。また、溝部12の傾斜面12aは、平滑入射面2aのなす平面に対してαだけ傾いた構成、すなわち傾斜面11aと平行な構成とされる。なお、凸部11は、例えば、プリズム部6と同様に、傾斜面11aとこれに隣接する他面11bとを有し、断面視にて三角形状の突起とされる。また、溝部12は、例えば、凹部4と同様に、傾斜面12aとこれに隣接する他面12bとを有し、断面視にて三角形状の溝とされる。凸部11および溝部12は、例えば、プリズム部6および凹部4と同様の方法で形成される。さらに、光学部材1は、凸部11が第1反射部を構成し、かつプリズム部6が第2反射部を構成する構造であってもよいし、凹部4が第1反射部を構成し、かつ溝部12が第2反射部を構成する構造であってもよい。また、光学部材1は、凸部11や溝部12を有する構成において、上記した反射膜9あるいは低屈折率層10またはこれら両方を有していてもよい。
【0073】
(7)上記第2実施形態では、光学部材1は、例えば図17に示すように、第2領域2cbがプリズム部6に代わって溝部12のみにより構成され、溝部12の傾斜面12aが射出反射面として機能する構造であってもよい。この場合、溝部12の傾斜面12aは、例えば、第1段差部7および第2段差部8に対して平行、すなわち平滑入射面2aのなす面に対して同一の角度αで傾斜した構成とされる。また、光学部材1は、上記した反射膜9あるいは低屈折率層10またはこれら両方を有していてもよい。
【0074】
(6)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0075】
(本開示の観点)
[観点1]
外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する平滑入射面(2a)と、前記平滑入射面からの入射光を外部に射出する第1平坦部(3)と前記入射光を反射する第1反射部(4a、7、11a)とが繰り返し交互に配置されてなり、前記平滑入射面に対して対向する反射射出面(2b)と、前記入射光のうち前記第1反射部で反射した光を反射する第2平坦部(5)および第2反射部(6a、8、12a)を複数有してなる反射面(2c)と、前記反射面に対して対向配置された平滑射出面(2d)とを有する導光体(2)を備え、
前記平滑入射面および前記反射面は、連続して配置されており、
前記反射射出面および前記平滑射出面は、連続して配置されており、
前記第2平坦部および前記第2反射部は、前記第1反射部で反射された光を前記平滑射出面の側であって、それぞれ異なる方向に反射し、
前記平滑射出面は、前記第2平坦部で反射した光を全反射により反射すると共に、前記第2反射部で反射した光を外部に射出する、光学部材。
[観点2]
前記反射面は、少なくとも、複数の前記第2平坦部および前記第2反射部が交互に配列されてなる第1領域(2ca)と、前記第2反射部を構成するプリズム部(6)または溝部(12)のみが複数配列されてなる第2領域(2cb)とを有してなる、観点1に記載の光学部材。
[観点3]
前記第1平坦部は、前記平滑射出面と同一の平面上に位置すると共に、前記平滑入射面と平行であり、
前記第1反射部は、複数の前記第1平坦部のなす面から凹んだ凹部(4)または突出する凸部(11)の一面(4a、11a)であって、当該一面の法線方向が前記反射面の側を向くように傾斜している、観点1または観点2に記載の光学部材。
[観点4]
前記平滑入射面、前記第1平坦部、および前記平滑射出面は、平行であり、
前記反射射出面は、前記平滑入射面と前記平滑射出面とを繋ぐ階段状の形状であり、
前記第1反射部は、複数の前記第1平坦部のうち隣接する2つの前記第1平坦部を繋ぐ段差部分をなす一面(7)であって、当該一面の法線方向が前記反射面の側を向くように傾斜している、観点2に記載の光学部材。
[観点5]
前記第1領域は、前記反射射出面と対向すると共に、前記平滑入射面と前記第2領域とを繋ぐ階段状の形状であり、
複数の前記第2平坦部、および前記平滑射出面は、平行であり、
前記第1領域における前記第2反射部は、複数の前記第2平坦部のうち隣接する2つの前記第2平坦部を繋ぐ段差部分をなす1つの面(8)であって、当該1つの面の法線方向が前記反射射出面の側を向くように傾斜している、観点4に記載の光学部材。
[観点6]
前記導光体の屈折率をn(>1)とし、前記平滑入射面から入射した入射光の前記第1反射部への入射角をXとし、前記第1反射部で反射した光の前記第2平坦部への入射角をYとして、
前記第1反射部および前記第2反射部は、平行であり、
前記導光体は、sinX≧1/n、sinY≧1/nを満たす、観点1ないし観点5のいずれか1つに記載の光学部材。
[観点7]
前記第1反射部および前記第2反射部は、前記導光体とは異なる材料で構成された反射膜(9)で覆われており、前記反射膜により光を反射する、観点1ないし観点5のいずれか1つに記載の光学部材。
[観点8]
前記平滑入射面、前記第1平坦部、および前記平滑射出面のうち少なくとも1つは、前記導光体よりも低屈折率の材料で構成された低屈折率層(10)で覆われている、観点1ないし観点7のいずれか1つに記載の光学部材。
【符号の説明】
【0076】
2…導光体、2a…平滑入射面、2b…反射射出面2b…反射面、2ca…第1領域
2cb…第2領域、2d…平滑射出面、3…第1平坦部、4…凹部
4a、7、11a…第1反射部、5…第2平坦部、6…プリズム部
6a、8、12a…第2反射部、9…反射膜、10…低屈折率層、11…凸部
12…溝部
図1
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