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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124270
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フランジ付包装容器用蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B65D43/08 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032309
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 憲明
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵実
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA01
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA14
3E084AA15
3E084BA01
3E084CA01
3E084CA03
3E084CA10
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DA03
3E084DA10
3E084DB09
3E084DB13
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
(57)【要約】
【課題】寸法の安定しないフランジを有する樹脂製容器本体に嵌められるのに適したフランジ付包装容器用蓋を提供する。
【解決手段】樹脂製容器本体1は、側壁3の上端部から外方に延びるフランジ4を有している。蓋10は、頂壁11と、頂壁11から下方に延びる外側壁12と、フランジ4を係止する係止部16とを有している。係止部16は、外側壁12の内面に頂壁11の上面から所定の距離をもって設けられ、内方に突出している。外側壁12の内面は下方に向かって外方に傾斜している。所定の距離の下限値は、フランジ寸法のばらつきを考慮して、フランジ厚さにフランジ先端の下方への変形量を加えたものとされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と、前記側壁の上端部から外方に延びるフランジとを有する樹脂製容器本体に嵌められてフランジ付包装容器を形成する蓋であって、頂壁と、前記頂壁から下方に延びる外側壁と、前記外側壁の内面に前記頂壁から所定の距離をもって内方に突出し、前記フランジを係止する係止部とを有し、前記外側壁の内面は下方に向かって外方に傾斜していることを特徴とする、フランジ付包装容器用蓋。
【請求項2】
前記所定の距離の下限値は、フランジ寸法のばらつきを考慮して、フランジ厚さにフランジ先端の下方への変形量を加えたものとされている、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【請求項3】
前記所定の距離は、前記頂壁の下面から前記係止部におけるフランジ先端固定部までの距離Aであって、前記容器本体の前記側壁上端から前記フランジ先端までのフランジ突出量をx、フランジ厚さをz、フランジ先端の位置のばらつきをy、単純化したモデルに基づいて計算したことに伴う誤差の補正定数をwとして、下記の数式によって求められる、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【数1】
【請求項4】
前記外側壁の内面の鉛直方向からの傾斜角度は、6°~16°の範囲内である、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【請求項5】
前記蓋は、略方形であり、前記係止部は少なくとも前記蓋の4つの隅部を含む部分に形成されている、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【請求項6】
前記フランジは、前記側壁の上端部から外方に水平に延びる第一水平部と、前記第一水平部の外方に全周にわたって設けられた折り曲げ部よりなる、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【請求項7】
前記蓋は樹脂製であり、前記蓋の前記樹脂に、滑り性を向上させる添加剤を0.05%以上配合している、請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【請求項8】
前記蓋の前記外側壁よりも内方の全周に、前記頂壁より下方に延び、高さは3~12mmである内側壁が形成されている請求項1に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のフランジ付包装容器で使用されるフランジ付包装容器用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
フランジを有する容器本体およびこれに嵌められる蓋からなるフランジ付包装容器としては、特許文献1のものが提案されている。
【0003】
フランジを有する容器本体としては、紙製および樹脂製のものがあるが、いずれも寸法の安定しないものとなっている。上記従来の技術では、紙製で寸法の安定しない容器本体に対して、樹脂製の蓋に外方傾斜壁部分および内方傾斜壁部分を設けることで、嵌合時に容器の側壁を周方向に伸縮させ、容器のフランジ部分を蓋の外方係合部と内方係合部の間の定位置に移動させることにより、嵌合を可能にしている。
【0004】
容器本体を樹脂製として、側壁と、側壁の上端部から外方に延びるフランジとを有する樹脂製容器本体と、その容器本体に用いられる蓋からなるフランジ付包装容器とした場合、容器本体が樹脂製である為、側壁の周方向への伸縮に対する抵抗が大きく、容器本体が紙製の場合のようにフランジが自由に移動できないという問題があり、上記従来の技術を適用することができないという問題があった。
【0005】
また、頂壁と、頂壁から下方に垂直に延びる外側壁と、外側壁の垂直な内面に内方に突出し、容器本体のフランジを係止する係止部とを有する蓋が、フランジ寸法の安定しない容器本体に嵌合される場合は、嵌合時に蓋の係止部が係止するフランジ先端を下方に弾性変形させることでフランジ寸法のばらつきを吸収することが考えられるが、フランジ寸法のばらつきが大きいと、フランジ先端の下方への変形量が大きくなって、蓋の頂壁と係止部の間に収まらなくなり、係止部でフランジ先端を係止することが出来なくなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-195410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願の発明者は、フランジ先端の下方への変形量が大きくなってもフランジを係止できるよう、外側壁の垂直な内面に頂壁から所定の距離を取った係止部を有するフランジ付包装容器用蓋を製作した。これにより、フランジ寸法のばらつきが大きい樹脂製容器本体であっても嵌合できるようになったが、フランジの係止位置が上記所定の距離の間で自由に移動でき、固定されない為、蓋が上下に動いたり、蓋の一部だけが浮き上がったりして美粧性に乏しく、嵌合性への不安感を与えるものとなった。
【0008】
この発明は、従来の技術の有する上記課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、寸法の安定しないフランジを有する樹脂製容器本体に嵌められるのに適したフランジ付包装容器用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0010】
1)側壁と、前記側壁の上端部から外方に延びるフランジとを有する樹脂製容器本体に嵌められてフランジ付包装容器を形成する蓋であって、頂壁と、前記頂壁から下方に延びる外側壁と、前記外側壁の内面に前記頂壁から所定の距離をもって内方に突出し、前記フランジを係止する係止部とを有し、前記外側壁の内面は下方に向かって外方に傾斜していることを特徴とする、フランジ付包装容器用蓋。
所定の距離は、フランジ厚さ(フランジの下面から上面までの距離)の設計値だけに基づいて設定するのではなく、樹脂製容器本体の特性である「寸法が安定しないこと」を考慮して設定することが好ましい。
【0011】
2)前記所定の距離の下限値は、フランジ寸法のばらつきを考慮して、フランジ厚さにフランジ先端の下方への変形量を加えたものとされている、上記1)に記載のフランジ付包装容器用蓋。
すなわち、所定の距離の適正値は、容器本体側におけるフランジ厚さおよびフランジ寸法のばらつきに伴うフランジ先端の下方への変形量のばらつきを考慮して設定される。
【0012】
3)前記所定の距離は、前記頂壁の下面から前記係止部におけるフランジ先端固定部までの距離Aであって、前記容器本体の前記側壁上端から前記フランジ先端までのフランジ突出量をx、フランジ厚さをz、フランジ先端の位置のばらつきをy、単純化したモデルに基づいて計算したことに伴う誤差の補正定数をwとして、下記の数式によって求められる、上記1)に記載のフランジ付包装容器用蓋。
【数1】
すなわち、所定の距離は、A=zとするのではなく、ばらつきに対応する調整定数として下記の数式に示すBをフランジ厚さに付加することで設定される。
【数2】
フランジ先端の位置のばらつきyは、複数の容器本体を実測することで求められ、具体的には、フランジ寸法の最大値と最小値との差の半分などとすればよい。zは、設計値を使用してもよく、実測値を使用してもよく、実測値を使用する場合には、中心値でも最大値でもよい。こうして得られた下記の数式は、係止部によるフランジの係止を適正とするための蓋製造時の設計値、特に設計値の下限に近い値として適している。
【数3】
実用的には、設計値の下限値は、上記の数式で得られた値よりも若干小さくすることができる。具体的には、Bについて、このBを単純化したモデルに基づいて計算しているのに対し、実際のフランジは素材の弾性により、しなるように変形する為、この計算値とは誤差が生じ、所定の距離の下限が計算値よりも小さくなる。したがって、この誤差に基づくw分だけ下限値を小さくしても、上記の目的を達成することができる。wについては、3.5(mm)とすることが好ましく、1.0(mm)とすることがより好ましい。
なお、設計値の上限値は、係止部によるフランジの係止を適正とするためには、限定されるものではなく、省資源などの他の要素を考慮して適宜な値とすることができる。具体的には、下記の数式において、uを13(mm)とすることが好ましく、uを5(mm)とすることがより好ましい。
【数4】
【0013】
4)前記外側壁の内面の鉛直方向からの傾斜角度は、6°~16°の範囲内である、上記1)から3)までに記載のフランジ付包装容器用蓋。
【0014】
5)前記蓋は、略方形であり、前記係止部は少なくとも前記蓋の4つの隅部を含む部分に形成されている、上記1)から4)までのいずれかに記載のフランジ付包装容器用蓋。
係止部は、円弧状とされた4つの隅部だけに形成されて、長方形の辺部には形成されていなくてもよく、円弧状とされた4つの隅部と長方形の辺部との両方に形成されてもよく、全周に形成されてもよい。
【0015】
6)前記フランジは、前記側壁の上端部から外方に水平に延びる第一水平部と、前記第一水平部の外方に全周にわたって設けられた折り曲げ部よりなる、上記1)から5)までのいずれかに記載のフランジ付包装容器用蓋。
フランジの折り曲げ部は、例えば、第一水平部の外方で下方に折れ曲がる垂下部と、垂下部の下端で外方に折れ曲がる第二水平部とよりなるものとされる。
【0016】
7)前記蓋は樹脂製であり、前記蓋の前記樹脂に、滑り性を向上させる添加剤を0.05%以上配合している、上記1)から6)までのいずれかに記載のフランジ付包装容器用蓋。
【0017】
8)前記蓋の前記外側壁よりも内方の全周に、前記頂壁より下方に延び、高さは3~12mmである内側壁が形成されている上記1)から7)までのいずれかに記載のフランジ付包装容器用蓋。
【発明の効果】
【0018】
上記1)のフランジ付包装容器用蓋によれば、容器本体のフランジ寸法にばらつきがある場合でも係止部で係止できるとともに、フランジの係止位置が固定される。
【0019】
上記2)のフランジ付包装容器用蓋によれば、フランジ先端の下方への変形量を考慮することで、容器本体のフランジ寸法にばらつきがある場合でも係止部で係止できるためのより好ましい所定の距離の設定が可能となる。
【0020】
上記3)のフランジ付包装容器用蓋によれば、容器本体のフランジ寸法にばらつきがある場合でも係止部で係止できるようにするに際し、所定の距離を適切な値に設定することができる。
【0021】
上記4)のフランジ付包装容器用蓋によれば、フランジ先端を係止位置に誘導する効果が確実に得られる。
【0022】
上記5)のフランジ付包装容器用蓋によれば容器の剛性が高い4つの隅部においてフランジを係止することで、より確実に蓋を固定できる。
【0023】
上記6)のフランジ付包装容器用蓋によれば、フランジ先端に折り曲げ部を設けることで、フランジ先端部全周が補強され、係止位置がより安定する。
【0024】
上記7)のフランジ付包装容器用蓋によれば、外側壁内面の滑り性が向上し、フランジ先端をより確実に係止位置に誘導できる。
【0025】
上記8)のフランジ付包装容器用蓋によれば、蓋スタック性が向上するとともに、蓋の保形性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明のフランジ付包装容器用蓋の1実施形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図2の要部の拡大図である。
図4図2のフランジ付包装容器用蓋を重ね合わせた状態を示す部分断面図である。
図5】容器本体のフランジ寸法にばらつきがある場合に、フランジ付包装容器用蓋とフランジとの係止状態がどのようになるかを説明する断面図である。
図6】フランジ先端部の下方への変形を説明する断面図である。
図7】この発明のフランジ付包装容器用蓋が嵌められる容器本体の1例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図8とは異なる容器本体のフランジ断面形状の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図7は、この発明によるフランジ付包装容器用蓋(以下、単に「蓋」とする)(10)が使用される包装容器の容器本体(1)の形状を示している。
【0029】
容器本体(1)は、底壁(2)と、底壁(2)の周縁部から立ち上がる側壁(3)と、側壁(3)の周縁部から外方に延びるフランジ(4)とからなる。容器本体(1)は、平面略長方形であり、符号(D)で示す対角線を有している。側壁(3)は、上方に向かって広がるテーパ状になっており、底壁(2)、側壁(3)およびフランジ(4)それぞれの4つの隅部(C)は円弧状とされ、それぞれの4辺(S)は外方にやや膨らんで形成されている。なお、この発明による蓋(10)が使用される容器本体(1)の形状は、平面略長方形に限らず、平面略正方形、平面略多角形、平面略円形でも構わない。
【0030】
容器本体(1)は、シート成型により製造される。シート成型とは、加熱して軟化させたプラスチックシートを圧力によって引き伸ばし、型に密着させる成型方法である。成型後は二次加工としてトリミング工程があり、フランジ(4)外形をカッター刃で打ち抜き、型から取り出すことで容器本体(1)を製造する。
【0031】
材料は、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化して形を変えることができ、冷やすと硬化する特徴がある。シート成型は、樹脂ペレットを熱で溶融しシート状にして一度硬化した材料を再加熱して軟化させることで成型するもので、熱可塑性樹脂の繰り返し変形させることができる特性を活かした成型方法である。本実施形態の蓋(10)が適用される容器本体(1)では、樹脂として、ポリプロピレンが使用されている。容器本体(1)は、樹脂製とされていることで、比較的小さな力で弾性変形させることができる。
【0032】
なお、容器本体(1)の製造方法は、上記に限らず、射出成型、コンプレッション成型、ブロー成型等でも構わない。また、容器本体(1)の材料は、上記に限らず、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、またはバリア層やリサイクル層を含む複合素材等でも構わない。
【0033】
シート成型の場合、側壁(3)の肉厚は0.2~0.5mmである。フランジ(4)の肉厚は0.5~1.0mmである。この肉厚の違いは容器本体(1)の形状の影響が大きい。すなわち、開口部表面積に対して容器深さが深くなるほど、深さ(高さ)方向へシートが引き延ばされてしまうため、フランジ(4)に対して側壁(3)の肉厚が薄くなり、その差が大きくなる。
【0034】
本実施形態の蓋(10)が適用される容器本体(1)では、フランジ(4)は、図8(a)に示すように、側壁(3)の上端部から外方に水平に延びる第一水平部(6)と、第一水平部(6)の外方に全周にわたって設けられた断面略L字状の折り曲げ部(7)とよりなる。
【0035】
フランジ(4)の折り曲げ部(7)は、第一水平部(6)の外方で下方に折れ曲がる垂下部(7a)と、垂下部(7a)の下端で外方に折れ曲がる第二水平部(7b)とよりなる。折り曲げ部(7)は、力が作用していない状態では、図8(a)に示すように、垂下部(7a)が下方に向かって広がるテーパ状になっており、径方向内向きの力が第二水平部(7b)に作用した際には、弾性変形するようになっている。
【0036】
フランジ(4)の形状は、上記に限らず、折り曲げ部(7)を断面円弧状としてもよく、また、図8(b)に示すように、折り曲げ部(7)の無いもの(図8(a)に示す第一水平部(6)のみからなるもの)でもよい。
【0037】
折り曲げ部(7)を設けなければ、フランジ厚さ(フランジ(4)の上面と下面との距離)を小さくすることができるが、折り曲げ部(7)を設けることで、フランジ(4)の先端部(外周縁部)全周が補強され、蓋(10)を嵌め合わせた際の係止位置がより安定する。
【0038】
平面略長方形である容器本体(1)の対角線(D)は、容器本体(1)を上から見て、容器本体(1)中心とフランジ(4)の先端部(外周縁部)の隅部(C)の円弧の中点を通る直線とされている。
【0039】
プラスチックは、加熱後、冷却することによって熱収縮を生じる。シート成型では、供給されるシートの幅方向に複数の容器本体(1)を成型するが、シートを溶融させる熱板は固定の位置に設置され、容器本体(1)の数よりも少ないことが多い。そのため、容器本体(1)と熱板の距離や向きは一定ではなく、これにより熱のかかり方がばらつくことでシートの溶融具合も異なり、成型品の厚さのばらつきの要因となる。さらに、型から引き抜かれる際には、容器本体(1)への引張り力のかかり方の違いが発生する。またプラスチック製品の生産において、一般的には生産性を考慮して成型サイクルを短くする傾向にある。シート成型においても、成型後十分に成型品が冷却されない状態で次工程へと進むため、これが収縮のばらつきの要因となる。このように、シート厚さや引張り力のかかり方の違い等、複合的な要因によって、容器本体(1)の収縮が変化し、寸法のばらつき発生につながると考えられる。なお収縮率は、樹脂の種類、グレード、添加物によっても異なる。
【0040】
本発明の蓋(10)を得るに際しては、容器本体(1)のばらつきを考慮することが重要となる。そこで、本実施形態の蓋(10)が適用される容器本体(1)について、対角線(D)上でのフランジ先端間の長さ(以下フランジ寸法と言う)を測定したところ、205.2mm~206.9mmの範囲でばらついていた(測定数=25個×2対角)。この実測平均値+3σを最大値、この実測平均値-3σを最小値とする。σとは標準偏差のことで、データの平均値からのばらつき具合を表す指標の一つである。実測値のみからばらつきを求めるためには、膨大な量の実測作業が必要となり、現実的には対応が難しい。そこで、測定数の少なさを計算式にて補うために、標準偏差の考え方を用いる。3σとは、確率変数による品質管理の際の考え方である。ある製品の値に着目しデータを解析した場合、平均値±3σの範囲に99.7%のデータが入るという性質を活用している。つまり、平均値+3σを最大値、平均値-3σを最小値とし、この最大・最小値にて問題なければ、99%の値はこの範囲内に入るため問題ないと考えられる。この考えに基づくと、最大値が207.1mm、最小値が205.0mmとなる。
【0041】
また、容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端までのフランジ突出量を測定したところ、9.7mm~11.1mmの範囲でばらついていた(測定数=10個×4対角)。この値に関しても、前述と同様に平均値±3σを最小値と最大値とすると、最小値が9.4mm、最大値が11.4mmとなる。
【0042】
1つの容器本体(1)の中でも、部分によってばらつくことがあり、このばらつきは、フランジ(4)の第二水平部(7b)の長さの違いによってできる場合が多く、抜きずれと呼ばれる。抜きずれ要因は複数あり、一つは容器本体(1)の成型工程後、トリミング工程へと送られて打ち抜かれる際に、送りの動作によるカッター刃とシートの位置ずれが考えられる。また、前述の通り容器本体(1)の肉厚は不均一であるため、フランジ(4)部分の肉厚についてもばらつきが発生するため、これも抜きずれ要因の一つとなる。
【0043】
ここで、フランジ寸法は、容器本体(1)の対角線(D)上での2つの側壁(3)上端間の距離(以下側壁(3)の寸法と言う)に、2か所の容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端までのフランジ突出量を足したものである。
【0044】
図1から図3までに示すように、この発明による1実施形態である蓋(10)は、頂壁(11)と、頂壁(11)の外周縁部から下方に延びる外側壁(12)と、外側壁(12)の下端から延びる折り曲げ部(13)と、頂壁(11)の外周縁部よりも内側から下方に延びる内側壁(14)とからなる。
【0045】
頂壁(11)は、容器本体(1)の形状に対応して平面略長方形であり、外側壁(12)、折り曲げ部(13)および内側壁(14)は、頂壁(11)の形状に対応して平面略長方形の環状とされている。頂壁(11)、外側壁(12)、折り曲げ部(13)および内側壁(14)のそれぞれの4つの隅部(C)は円弧状に、それぞれの4辺(S)は外方にやや膨らんで形成されている。蓋(10)の形状は、平面略長方形に限らず、容器本体(1)に対応させた平面略正方形、平面略多角形、平面略円形でも構わない。
【0046】
外側壁(12)は、頂壁(11)の外方で折れ曲がり下方に伸びるように形成されている。外側壁(12)(したがってその内面および外面も)は下方に向かって外方に傾斜している。なお、外側壁(12)の内面が下方に向かって外方に傾斜していることは必須であるが、外側壁(12)の外面については、傾斜が無くても構わない。
【0047】
内側壁(14)は、外側壁(12)よりも内方の全周に、頂壁(11)から下方に向かって延びるように形成されている。内側壁(14)は下方に行くにつれて細くなるように形成されている。内側壁(14)の下端は、折り曲げ部(13)の下端よりも上方に位置させられている。内側壁(14)を全周に設けることによって、蓋(10)の保形性向上の効果が得られる。内側壁(14)は、容器本体(1)の側壁(3)に接しない程度に内方に位置するようになされている。こうすることで、容器本体(1)の側壁(3)の寸法にばらつきがあっても、内側壁(14)は蓋(10)の嵌合に影響しない。
【0048】
図1(a)に示すように、4つの隅部(C)のうちの対角線(D)上で互いに対向する2か所(図の右上と左下)には、ツマミ部(15)が形成されている。
【0049】
図3に示すように、外側壁(12)の内面には、折り曲げ部(13)の上端部に連なる位置に、容器本体(1)のフランジ(4)を係止する断面円弧状の係止部(16)が内方に突出して設けられている。
【0050】
蓋(10)に設けられている折り曲げ部(13)は、外側壁(12)下端より外方に向かって伸びる第一水平部(13a)と、第一水平部(13a)の外方で下方に折れ曲がる垂下部(13b)と、垂下部(13b)の下端で外方に折れ曲がる第二水平部(13c)よりなる略Z字状に形成されている。折り曲げ部(13)は設けなくても構わないが、折り曲げ部(13)を設けることで、蓋(10)の保形性を高めることができる。
【0051】
図1(a)に示したツマミ部(15)は、第二水平部(13c)の先端の円弧寸法を大小の2種類とし、これによって、円弧が小さい方の第二水平部(13c)の長さが長くなることで、ツマミ部(15)としての機能を果たすことができるようになされている。
【0052】
係止部(16)は、フランジ(4)の先端部を下側から受け止めることができるように形成されており、係止部(16)の直上がフランジ先端固定部(16a)とされている。係止部(16)は、4つの隅部(C)の円弧状部分に形成され、略長方形の辺部(S)には形成されていない。係止部(16)は略長方形の辺部(S)に形成しても構わないが、少なくとも容器本体(1)の剛性が高い4つの隅部(C)を含む部分においてフランジ(4)を係止することで、より確実に蓋(10)を固定できる。なお、係止部(16)を全周に設けるようにしても構わない。
【0053】
頂壁(11)の中央部は窪まされ、頂壁凹部(17)が形成されている。頂壁凹部(17)の外周面(17a)は、上方に向かって外方に傾斜している傾斜面となっている。また、頂壁(11)の外周縁部は窪まされて、外周凹部(18)が形成されている。
【0054】
図4に示すように、蓋(10)を重ね合わせると、内側壁(14)の下端部が頂壁凹部(17)の外周面(17a)に案内される形で、頂壁凹部(17)に挿入され、係止部(16)は、外周凹部(18)が形成されていることにより、頂壁(11)には干渉しない。これにより、上側にある蓋(10)の係止部(16)が下側にある蓋(10)の頂壁(11)の上面に干渉することなく、蓋(10)同士を重ね合わせることができる。蓋(10)同士が重ね合わせられたスタック状態において、上の蓋(10)の折り曲げ部(13)は、下の蓋(10)の外側壁(12)の上端部の外側に位置させられている。
【0055】
内側壁(14)の高さは3~12mmとされ、蓋(10)同士が重ね合わせる際に、下の蓋(10)の頂壁凹部(17)に内側壁(14)が嵌まることで安定するようになっている。頂壁凹部(17)外周面(17a)は傾斜面となっている為、内側壁(14)が頂壁凹部(17)にはまり易くなっている。こうして、内側壁(14)は、蓋(10)の保形性向上の効果だけでなく、スタック性向上の効果も有している。なお、美粧性および嵌合性の点からは、内側壁(14)は設けなくても構わない。
【0056】
蓋(10)は、樹脂製とされることが好ましく、例えば、射出成型により製造され、材料は直鎖状低密度ポリエチレンとされる。
【0057】
蓋(10)の製造方法は上記に限らず、 シート成型等でも構わない。また、蓋の材料は上記に限らず、 ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等でも構わない。
【0058】
上記の蓋(10)において、係止部(16)(フランジ先端固定部(16a))の位置は、容器本体(1)のフランジ(4)の形状および寸法によって決定される。ここで、樹脂製の容器本体(1)は、上述したように、ばらつきがあって、フランジ(4)の寸法が安定しないものとなっている。
【0059】
そこで、この発明の蓋(10)では、以下のような手法によって、係止部(16)(フランジ先端固定部(16a))の位置を設定している。
【0060】
蓋(10)と容器本体(1)との嵌め合いを確実にするための重要な寸法は、蓋(10)の対角線(D)上での2つのフランジ先端固定部(16a)間の距離である。
【0061】
なお、容器本体(1)のフランジ厚さは、フランジ(4)の下面から上面までの距離であって、図8(a)に示す実施形態では、第二水平部(7b)の下面からフランジ(4)の頂面(第一水平部(6)の上面)までの距離であり、図8(b)に示す折り曲げ部(7)が無い場合には、フランジ(4)の肉厚(第一水平部(6)の肉厚そのもの)となる。
【0062】
蓋(10)の対角線(D)は、蓋(10)を上から見て、蓋(10)の中心を通り、フランジ先端固定部(16a)が設けられている隅部(C)の円弧の中点同士をつなぐ直線とする。
【0063】
容器本体(1)は、樹脂で形成されており、したがって、そのフランジ(4)は弾性を有しており、蓋(10)の係止部(16)に係止された際に、フランジ(4)の先端部(図8(a)に示す実施形態では、第二水平部(7b)の先端部)がしなるように下方に弾性変形する。
【0064】
図5(a)(b)(c)は、フランジ(4)の寸法がばらついた際の容器本体(1)の対角線(D)上での係止状態の例を示している。
【0065】
図5(a)は、嵌合の緩い例を示しており、容器本体(1)のフランジ(4)は、ほとんど変形することなく、折り曲げ部(7)の垂下部(7a)が下方に向かって広がるテーパ状のまま、その先端部が係止部(16)によって下側から受けられている。
【0066】
図5(b)は、容器本体(1)の側壁(3)の寸法が大きく、嵌合がきつい例を示しており、容器本体(1)のフランジ(4)は、折り曲げ部(7)の第二水平部(7b)の先端部が係止部(16)によって下側から受けられている状態で、側壁(3)の上端部が上方に移動させられる。このように、容器本体(1)の側壁(3)の寸法が大きく、蓋(10)との嵌合がきつい程、フランジ(4)の変形量は大きくなり、フランジ(4)の先端から側壁(3)上端までの高さであるフランジ高さも大きくなる。
【0067】
図5(c)は、図5(b)に比べて、さらに、容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端(第二水平部(7b)の先端)までのフランジ突出量が大きい場合を示しており、フランジ(4)の変形量が大きくなって、フランジ(4)の先端から側壁(3)上端までの高さであるフランジ高さも大きくなる。
【0068】
この実施形態の蓋(10)では、容器本体(1)の寸法がばらついて、側壁(3)の寸法が大きく、容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端までのフランジ突出量が大きく、フランジ高さが大きい場合でも、フランジ(4)を係止できるよう、頂壁(11)の下面から係止部(16)上面(すなわち、フランジ先端固定部(16a)の位置までの距離(以下、「所定の距離」と称す)の適正な設計値が規定されている。これにより、図5(a)(b)(c)いずれの場合であっても、フランジ(4)の先端部は、係止部(16)直上のフランジ先端固定部(16a)に適切に係止される。
【0069】
この適切な係止状態においては、フランジ(4)の先端部が蓋(10)の頂壁(11)と係止部(16)の間の外側壁(12)の内面に、容器本体(1)の弾性力によって押し付けられるように密着する。ただし、頂壁(11)と係止部(16)の問には所定の距離がある為、この間でフランジ先端が自由に移動できてしまうと、係止位置が定まらないことになり、容器本体(1)に対して蓋(10)が傾いたり、個々の蓋付容器ごとに高さが異なったりする場合がある。
【0070】
ここで、所定の距離からフランジ高さを引いた距離が蓋(10)の上下動可能な距離になり、嵌合が緩く、フランジ高さが小さい程、蓋(10)の上下動可能な距離は大きくなる。
【0071】
資源節約等の目的で蓋(10)の材料使用量を削減したり、開封性の調整の為に蓋(10)の剛性を低くすると、反りや捩じれが起こり易くなる。特に上記のような剛性の低い蓋(10)の場合、係止位置が定まらないと蓋(10)の部位によって浮き沈みが起こり、美粧性が大きく損なわれる。
【0072】
そこで、本発明の実施形態の蓋(10)においては、外側壁(12)(したがって外側壁(12)の内面)が下方に向かって外方に傾斜するテーパ状となるように形成されている。フランジ(4)の先端部は、容器本体(1)の弾性力によって外側壁(12)の内面に押し付けられるので、上記傾斜に沿って滑り、係止部(16)に当たり固定される。係止位置が固定されれば蓋(10)の傾きも無くなり、蓋(10)の高さも安定し、美粧性が向上する。
【0073】
また、本発明の実施形態の蓋(10)においては、上記所定の距離について、フランジ厚さ(フランジ(4)の下面から上面までの距離)だけに基づいて設定するのではなく、フランジ寸法のばらつきを考慮して、フランジ先端の下方への変形量に相当する調整定数をフランジ厚さに付加することで設定される。
【0074】
すなわち、図6(a)において、x:側壁上端からフランジ先端までのフランジ突出量、y:フランジ先端の位置のばらつき、z:フランジ厚さ、B:フランジ先端の下方への変形量であり、所定の距離Aは、A=B(フランジ先端の下方への変形量)+z(フランジ厚さ)として求められており、これにより、適正な係止部(16)の位置を得ることができる。
【0075】
上記の変形量Bは、図6(b)に示すように、斜辺の長さx、2辺の長さがそれぞれx-yとBとである直角三角形におけるBの長さとみなすことができ、三平方の定理によって、下記の数式により求められる。
【数5】
したがって、所定の距離Aは、下記の数式により求めることができる。
【数6】
【0076】
フランジ寸法がばらつき内で最小の容器本体(1)に合わせて蓋(10)を製作すると、フランジ寸法がばらつき内で最大の容器本体(1)にこの蓋(10)を嵌合した時、フランジ(4)先端の位置のばらつきyの分だけフランジ先端が容器本体(1)内方に向けて変形する。フランジ先端の位置のばらつきyは、換言すると、フランジ寸法のばらつきの半分(片側分)である。
【0077】
以下に、ばらつきを実測した容器本体(1)に対応させるために製作した蓋(10)の1実施例を示す。この容器本体(1)においては、上述のように、フランジ寸法が最大値207.1mm~最小値205.0mmの範囲でばらついている。
【0078】
本実施例の外側壁(12)の内面の鉛直方向(V)からの傾斜角度は、11°である。外側壁(12)の内面の鉛直方向(V)からの傾斜角度は、5°以下にするとフランジ先端を係止位置に誘導する効果が小さくなり、17°以上にするとフランジ(4)の第一水平部(6)が外側壁(12)の内面に干渉する恐れがある為、6°~16°の範囲内とするのが好ましい。
【0079】
蓋(10)に使用する樹脂には、滑り性を向上させる添加剤として、オレイン酸アミドが0.05%配合されており、外側壁(12)の内面の滑り性が向上することで、フランジ先端をより確実に係止位置に誘導できるようになっている。この効果を得るには、添加剤を0.05%以上配合するのが好ましい。
滑り性を向上させる添加剤としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸モノグリセライドなども使用できる。
【0080】
容器本体(1)と蓋(10)の嵌め合いを確実にする為重要となるのは、蓋(10)の対角線(D)上での2つのフランジ先端固定部(16a)間の距離である。
【0081】
本実施例では、蓋(10)の対角線(D)上での2つのフランジ先端固定部(16a)間の距離は最大でも205.0mmとなるように蓋(10)を製作している。このように設定することにより、フランジ寸法がばらつき内最小205.0mmの場合でも蓋(10)の位置が決まり、ガタが無く、密閉性が得られる。
【0082】
本実施例では、さらに、蓋(10)の対角線(D)上での2つのフランジ先端固定部(16a)間の距離は最小で203.2mmとなるように蓋(10)を製作している。このように設定することにより、フランジ寸法がばらつき内最大207.1mmの場合でも、蓋(10)が容易に脱着できるように設定している。
【0083】
このフランジ寸法が最大の組み合わせ、かつ容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端までのフランジ突出量がばらつき内最大11.4mmの場合に、嵌合する際のフランジ先端の下方への変形量およびフランジ高さが最大となる。
【0084】
上記所定の距離の計算式について、本実施例では、xについては、容器本体(1)の対角線(D)上での側壁(3)上端からフランジ先端までのフランジ突出量の最大値=11.4mm、yについては、フランジ寸法のばらつきの半分であることから、y=(フランジ寸法の最大値一最小値)/2=(207.1-205.0)/2=1.05mm、zについては、ばらつきを考慮し実測結果の最大値3.7mmとする。
【0085】
以上を上記所定の距離の計算式に代入し、計算した結果から所定の距離は8.5mmが適切であることが分かった。本実施例の蓋(10)は、上記計算結果から所定の距離を8.5mmとしている。このようにして所定の距離を設定された蓋(10)によると、フランジ寸法がばらつく容器本体(1)に嵌め合わされた際には、全ての容器において、蓋(10)の傾きが無く、蓋(10)の高さが安定し、美粧性に優れていることが確認された。
【0086】
すなわち、上記実施例によると、上記所定の距離について、この距離が、フランジ寸法のばらつきを考慮して、フランジ厚さにフランジ先端の下方への変形量を加えたものとされていることにより、全ての蓋(10)をフランジ寸法がばらつく容器本体(1)に適合させられることができた。
【0087】
ここで、上記所定の距離Aを下記の数式により求めるに際し、フランジ突出量xおよびフランジ厚さzについては、実測によって得られた最大値が使用されているが、これに限定されるわけではなく、設計値を使用することもできる。
【数7】
要するに、外側壁(12)の内面を下方に向かって外方に傾斜させるとともに、フランジ寸法のばらつきを考慮することにより、係止部(16)による最適な係止が実現される。
【0088】
フランジ厚さは、図8の(a)の場合と(b)の場合とで求め方やその値が相違しているが、いずれのフランジ厚さに対しても、上記数式を適用することができる。
【0089】
上記実施例の場合、容器本体(1)は平面略方形であり、上記距離x、yは容器本体(1)の対角線(D)上での寸法を用いて計算するが、円形の容器であっても上記数式は適用できる。円形の容器の場合、上記距離x、yは容器本体(1)の中心を通る直線上での寸法とすることができる。
【0090】
上記した最大の変形量だけフランジ(4)の先端部を下方に変形させる力=14N程度で嵌合が可能となる。
【0091】
上記実施例の係止部(16)は、断面円弧状となっているが、断面形状を台形や三角形等にしても構わない。
【0092】
上記実施例の係止部(16)の外側壁(12)の内面からの突出量は、0.5mmである。蓋(10)の係止を確実にするため、この突出量は0.3mm以上必要で、蓋(10)の脱着を容易にする為、0.6mm以下とするのが好ましい。
【0093】
なお、上記実施例における所定の距離A=8.5mmは、蓋(10)の形状に起因する不良を確実にゼロとするための蓋製造時の設計値、特に設計値の下限に近い値として適している。実用的には、蓋(10)の形状に起因する不良をほぼゼロとするための設計値の下限値は、上記の計算式で得られた値よりも若干小さくすることができる。
【0094】
具体的には、上記所定の距離Aを求めるための下記の数式において、Bについて、このBを単純化したモデルに基づいて計算しているのに対し、実際のフランジは素材の弾性により、しなるように変形する為、この計算値とは誤差が生じ、所定の距離の下限が計算値よりも小さくなる。
【数8】
したがって、この誤差に基づくw分だけ下限値を小さくしても、上記の目的を達成することができる。
【0095】
結局、所定の距離Aは、下記の数式によって求めることが好ましい。wについては、好ましくは、3.5(mm)、より好ましくは、1(mm)とされる。
【数9】
【0096】
また、設計値の上限値は、係止部(16)によるフランジ(4)の係止を適正とするためには、限定されるものではなく、省資源を考慮して適宜な上限値とすることができる。下記の数式により求められる所定の距離Aを基準としたときの蓋製造時の設計値としては、好ましくは、上限値=A+13(mm)、より好ましくは、A+5(mm)とされる。
【数10】
【符号の説明】
【0097】
(1):容器本体
(3):側壁
(4):フランジ
(6):第一水平部
(7):折り曲げ部
(10):蓋
(11):頂壁
(12):外側壁
(14):内側壁
(16):係止部
(16a):フランジ先端固定部
(C):隅部
(V):鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9