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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124275
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】アルコール性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240905BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q17/04
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032319
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】下田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵悟
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC212
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC552
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083BB13
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD28
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
4C083EE29
4C083FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】5~15質量%の25℃で固体の紫外線吸収剤、25℃で液状の紫外線吸収剤、IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油及び40質量%以上のエタノールを含有し、25℃で固体の紫外線吸収剤と、当該エステル油及びエタノールを特定の比率とするアルコール性組成物において、紫外線防御効果及び固体紫外線吸収剤の析出のなさに優れるアルコール性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】次の成分(A)~(D);
(A)25℃で固体の紫外線吸収剤5~15質量%
(B)25℃で液状の紫外線吸収剤
(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油
(D)エタノール40質量%以上
を含有し、
前記成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60以上であり、
前記成分(A)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(A)が、3.0以上である、
アルコール性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)25℃で固体の紫外線吸収剤 5~15質量%
(B)25℃で液状の紫外線吸収剤
(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油
(D)エタノール 40質量%以上
を含有し、
前記成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60以上であり、
前記成分(A)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(A)が、3.0以上である、
アルコール性組成物。
【請求項2】
前記成分(C)の分子量が300~700であり、かつ有機性値が、300~600である、請求項1に記載のアルコール性組成物。
【請求項3】
前記成分(D)の含有量が、40~70質量%である、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項4】
前記成分(C)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(C)が、1~20である、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項5】
前記成分(C)が、コハク酸ジエチルヘキシルである、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項6】
ミスト状に噴霧して使用する、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項7】
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を含有する、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項8】
前記アルコール性組成物が日焼け止め用途に用いる化粧料である、請求項1又は2に記載のアルコール性組成物。
【請求項9】
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の溶解性を向上させる方法。
【請求項10】
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肌を紫外線から保護するために化粧料に紫外線吸収剤を含有することは、重要な要素の一つである。一方で、常温(25℃)にて固体の紫外線吸収剤を用いる場合は、紫外線防御効果を発揮させるため、また使用性の観点から、それらを液体に溶解させる必要がある。これまで、固体の紫外線吸収剤を溶解するために、液状の紫外線吸収剤やエステル油、または低級アルコール等が効果的であることが知られている。しかしながら、経時や温度変化により結晶性の高い固体の紫外線吸収剤が析出し、外観審美性や紫外線防御効果が損なわれるといった課題があった。
【0003】
これまでに、固体の紫外線吸収剤を含有しながら、透明な外観を維持する組成物の技術として、例えば、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸へキシルエステル、UV-Bを吸収する紫外線吸収剤、30~60質量%のエタノールを含有する、透明液状化粧料(例えば、特許文献1)や、1つ以上の油溶性UVフィルタ、少なくとも約20重量%のエタノール、特定の粘度値を有する2種のシリコーンを含む日焼け止め組成物(例えば、特許文献2)等が開示されている。
【0004】
また、実質的に無水のサンケア製品において、特定の条件でエステル及びアルコールを含有することで、透明な外観を維持し、濡れた皮膚への塗布後実質的に白くならないサンケア製品(例えば、特許文献3)等の技術も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-091260号公報
【特許文献2】特開2021-59535号公報
【特許文献3】特表2014-513105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、外観の審美性と経時安定性(固体紫外線吸収剤の析出のなさ)には優れるものの、紫外線吸収剤の含有量が少量であり、紫外線防御効果に関して十分でない場合があった。
また、特許文献2及び特許文献3に開示された技術においては、紫外線防御効果には優れるものの、経時安定性(固体紫外線吸収剤の析出のなさ)やべたつきのなさに関して十分でない場合があった。
【0007】
そこで本発明は、高い紫外線防御効果を有しながら、多量の液状の紫外線吸収剤に頼ることなく、経時においても固体紫外線吸収剤の析出のない安定性に優れるアルコール性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、5~15質量%の25℃で固体の紫外線吸収剤、25℃で液状の紫外線吸収剤、IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油及び40質量%以上のエタノールを含有し、25℃で固体の紫外線吸収剤と、当該エステル油及びエタノールを特定の比率で組み合わせることによって、紫外線防御効果に優れ、かつ析出懸念の高い低温下の経時においても固体紫外線吸収剤の析出のない安定性に優れるアルコール性組成物になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下を提供する。
[1]
次の成分(A)~(D);
(A)25℃で固体の紫外線吸収剤 5~15質量%
(B)25℃で液状の紫外線吸収剤
(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油
(D)エタノール 40質量%以上
を含有し、
前記成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60以上であり、
前記成分(A)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(A)が、3.0以上である、
アルコール性組成物である。
[2]
前記成分(C)の分子量が300~700であり、かつ有機性値が、300~600である、[1]に記載のアルコール性組成物である。
[3]
前記成分(D)の含有量が、40~70質量%である、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[4]
前記成分(C)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(C)が、1~20である、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[5]
前記成分(C)が、コハク酸ジエチルヘキシルである、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[6]
ミスト状に噴霧して使用する、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[7]
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を含有する、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[8]
前記アルコール性組成物が日焼け止め用途に用いる化粧料である、[1]又は[2]に記載のアルコール性組成物である。
[9]
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の溶解性を向上させる方法である。
[10]
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出を抑制する方法である。
【0010】
本発明においては、さらに以下を追加採用することができる。
[11]
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を使用する、[9]又は[10]に記載の方法である。
[12]
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を有効成分とする、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出抑制剤として用いることができる。
[13]
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を有効成分とする、[12]に記載の析出抑制剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルコール性組成物は、高い紫外線防御効果を有しながら、経時においても固体紫外線吸収剤の析出のない安定性に優れるものである。
【0012】
さらに、本発明のアルコール性組成物は、べたつきがなく使用性に優れ、また外観の透明性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。また、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。また、各数値範囲(~)の上限値(以下)と下限値(以上)は、所望により、任意に組み合わせることができる。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0014】
本発明における『アルコール性組成物』とは、外相がアルコールである一相系の組成物を指し、アルコール性組成物中のアルコールの含有量が最も多いものがより好ましい。ここで、アルコールとはエタノール等の低級アルコールであり、エタノールであることがより好ましい。
【0015】
本発明のアルコール性組成物は、外観審美性の観点からも、透明の外観であることが好ましい。ここで、外観が透明とは、波長600nmでの透過率が90%であることを指す。透過率は、光路長10mm×光路幅10mmの石英セル、またはプラスティックセルに試料を充填し、分光光度計にて測定される。セルの材質は、特に限定されず、ブランクでセル材質データを差し引くものである。
【0016】
<成分(A):25℃で固体の紫外線吸収剤>
本発明に用いられる成分(A)は、化粧料、医薬部外品、医薬品等に含有され得るものであれば良く、水に不溶性で油に易溶性の紫外線吸収剤から選択するのが好ましい。ここで、25℃で固体とは、25℃において流動性を有さないものである。
【0017】
成分(A)としては、例えば、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ドロメトリゾールトリシロキサン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
本発明においては、紫外線防御効果等の観点から、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、4-tert-ブチル-4´-メトキシ-ジベンゾイルメタン、2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン及び2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンらなる群から選択される1種以上であることが好ましく、これら成分を2種組合せることがより好ましく、3種組合せることがさらにより好ましい。
【0018】
本発明の成分(A)の含有量は、紫外線防御効果等の観点から、5質量%(以下、単に%と略す)以上であり、6%以上が好ましい。また、固体紫外線吸収剤の析出のなさやべたつきのなさの観点から、15%以下であり、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0019】
本発明の成分(A)の含有量は、5~15%であり、5~12%が好ましく、5~10%がより好ましく、6~10%がさらに好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0020】
<成分(B):25℃で液状の紫外線吸収剤>
本発明に用いられる成分(B)は、化粧料、医薬部外品、医薬品等に含有され得るものであれば特に限定されない。ここで、25℃で液状とは、25℃において流動性を有するものである。
【0021】
本発明に用いられる成分(B)は、例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸エトキシエチル、メトキシケイヒ酸イソプロピル・ジイソプロピルケイヒ酸エステル混合物、トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、ポリシリコーン-15、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。 本発明においては、紫外線防御効果や固体紫外線吸収剤(成分(A))の溶解性に優れ、固体紫外線吸収剤の析出のなさに優れるといった観点から、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル及び/又はポリシリコーン-15であることが好ましく、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルであることがより好ましい。
【0022】
本発明の成分(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、紫外線防御効果や固体紫外線吸収剤の析出のなさ、べたつきのなさの観点から、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましい。また、固体紫外線吸収剤の析出のなさやべたつきのなさの観点から、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0023】
本発明の成分(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、1~20%が好ましく、3~15%がより好ましく、5~15%がさらに好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0024】
<成分(C):IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油>
【0025】
本発明に用いられる成分(C)は、IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油であり、成分(B)を除くものである。IOB値とは、有機化合物の極性の度合いを、無機性(inorganic)と有機性(organic)のバランスで示す指標であり、IOB値=無機性値/有機性値として表され、この値が大きい化合物ほど、より親水性の化合物、値が小さいほど親油性の化合物と言える。ここで、25℃で液状とは、25℃において流動性を有するものである。
【0026】
本発明の成分(C)のIOB値は、成分(A)の溶解性に優れ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、0.28~0.35であり、0.29~0.35が好ましく、0.30~0.33がより好ましい。
【0027】
本発明の成分(C)の有機性値は、特に限定されるものではないが、成分(A)の溶解性に優れ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、有機性値が300~600であることが好ましく、300~500であることがより好ましく、300~400であることがさらに好ましい。
【0028】
また、本発明の成分(C)の分子量は、特に限定されるものではないが、成分(A)の溶解性に優れ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、分子量が300~700であることが好ましく、300~500であることがより好ましい。
【0029】
本発明の成分(C)としては、通常、化粧料や皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、直鎖または分岐鎖の脂肪酸と、直鎖または分岐鎖の1価または多価アルコールからなるエステルが挙げられる。例えば、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB値:0.32)、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール(IOB値:0.29)、トリエチルヘキサノイン(IOB値:0.35)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB値:0.32)、マレイン酸エチルヘキシル(IOB値:0.32)、アジピン酸ジオクチル(IOB値:0.29)、ジノナン酸プロピレングリコール(IOB値:0.29)、フタル酸ジエチルヘキシル(IOB値:0.29)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.33)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値:0.30)等が挙げられ、適宜1種又は2種以上を組み合わせて含有することができる。本発明においては、成分(A)の溶解性に優れ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、コハク酸ジエチルヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、トリエチルヘキサノインからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、コハク酸ジエチルヘキシルであることがより好ましい。
【0030】
本発明の成分(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、固体紫外線吸収剤の析出のなさ等の観点から、3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。べたつきのなさ等の観点から、20%以下が好ましく、18%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましい。
【0031】
本発明の成分(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、3~20%が好ましく、5~18%がより好ましく、5~14%がさらに好ましい。この範囲とすることで、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0032】
本発明において、成分(A)に対する成分(C)の含有質量割合(C)/(A)は、紫外線防御効果や固体紫外線吸収剤の析出のなさ、また、べたつきのなさや透明性の観点から、0.60以上であり、0.70以上が好ましく、0.80以上がより好ましい。また、含有質量割合(C)/(A)の上限は、特に限定されるものではないが、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明において、成分(A)に対する成分(C)の含有質量割合(C)/(A)は、0.60~5.0が好ましく、0.70~4.0より好ましく、0.80~3.0がより好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、透明性、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0034】
<成分(D):エタノール>
本発明に用いられる成分(D)は、化学式COで表されるアルコールの1種であり、化粧料、医薬部外品、医薬品等に含有され得るものであれば特に限定されない。
【0035】
本発明の成分(D)の含有量は、紫外線防御効果や固体紫外線吸収剤の析出のなさ、また、べたつきのなさや透明性の観点から、40%以上であり、50%以上が好ましい。また、成分(D)の上限は、特に限定されるものではないが、70%以下が好ましい。
【0036】
本発明の成分(D)の含有量は、40~70%が好ましく、50~70%がより好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、透明性、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0037】
本発明において、成分(A)に対する成分(D)の含有質量割合(D)/(A)は、紫外線防御効果や固体紫外線吸収剤の析出のなさ、また、べたつきのなさや透明性の観点から、3.0以上であり、4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましい。また、含有質量割合(D)/(A)の上限は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明において、成分(A)に対する成分(D)の含有質量割合(D)/(A)は、3.0~30が好ましく、4.0~20より好ましく、5.0~15がより好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、透明性、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0039】
本発明において、前記成分(C)及び前記成分(D)を適宜含有することで効果が得られるものではあるものの、前記成分(C)と前記成分(D)の含有質量割合を特定することにより、固体紫外線吸収剤の析出のなさやべたつきのなさ等により優れるため、より好ましい。このような成分(C)に対する成分(D)の含有質量割合(D)/(C)は、下限として、1.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上がさらに好ましい。また、上限として、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。また、含有質量割合(D)/(C)は、1~20が好ましく、3.0~15がより好ましく、5.0~10がさらに好ましい。固体紫外線吸収剤の析出のなさ、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0040】
<成分(E):IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油>
本発明においては、さらに成分(E)を含有し、成分(B)~(D)と組み合わせることによって、成分(A)の溶解性を向上させ、析出抑制効果をより好適に発揮することができるため、より好ましい。また、成分(E)を含有することで、成分(C)に対する成分(A)の溶解性を相乗的に向上させることが期待されるため、より好ましい。ここで、25℃で液状とは、25℃において流動性を有するものである。
【0041】
本発明の成分(E)のIOB値は、成分(B)~(D)と組み合わせることによって、成分(A)の溶解性を向上させ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、0.10~0.20であり、0.13~0.20が好ましい。
【0042】
本発明の成分(E)の有機性値は、特に限定されるものではないが、成分(B)~(D)と組み合わせることによって、成分(A)の溶解性を向上させ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、有機性値が200~600であることが好ましく、300~500であることがより好ましい。
【0043】
本発明の成分(E)としては、本発明の成分(C)としては、通常、化粧料や皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、直鎖または分岐鎖の脂肪酸と、直鎖または分岐鎖の1価または多価アルコールからなるエステルが挙げられる。例えば、安息香酸アルキル(C12-C15)(IOB値:0.18)、イソノナン酸イソノニル(IOB値:0.20)、アジピン酸ジトリデシル(IOB値:0.19)、イソノナン酸イソデシル(IOB値:018)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB値:0.18)、ネオペンタン酸トリデシル(IOB値:0.18)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値:0.18)、エチルヘキサン酸セチル(IOB値:0.13)、オレイン酸デシル(IOB値:0.11)、ミリスチン酸イソトリデシル(IOB値:0.11)、パルミチン酸エチルへキシル(IOB値:0.13)等が挙げられ、適宜1種又は2種以上を組み合わせて含有することができる。本発明においては、成分(A)の溶解性を向上させ、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるといった観点から、安息香酸アルキル(C12-C15)、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチルからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましく、安息香酸アルキル(C12-C15)であることがより好ましい。
【0044】
本発明の成分(E)の含有量は、特に限定されるものではないが、固体紫外線吸収剤の析出のなさ等の観点から、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。また、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。
【0045】
本発明の成分(E)の含有量は、特に限定されるものではないが、0.5~15%が好ましく、1~10%がより好ましく、2~8%がさらに好ましい。この範囲とすることで、紫外線防御効果、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、透明性、べたつきのなさにより優れるためより好ましい。
【0046】
本発明において、前記成分(C)と前記成分(E)の含有質量割合を特定することにより、固体紫外線吸収剤の析出のなさやべたつきのなさ等により優れるため、より好ましい。このような成分(E)に対する成分(C)の含有質量割合(C)/(E)は、下限として、0.10以上が好ましく、0.50以上がより好ましい。また、上限として、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。また、含有質量割合(C)/(E)は、0.10~5.0が好ましく、0.50~3.0がより好ましい。固体紫外線吸収剤の析出のなさ等により優れるためより好ましい。
【0047】
本発明においては、前記成分(E)を必須とせずとも、成分(A)~(D)を適宜含有することで効果が得られるものではあるものの、前記成分(C)と前記成分(E)の極性バランス(IOB値の加重平均)を特定することにより、成分(A)の溶解性が向上し、固体紫外線吸収剤の析出のなさにより優れるため、より好ましい。本発明においては、成分(C)及び成分(E)のIOB値の加重平均は、0.20~0.40が好ましく、0.20~0.30がよりに好ましい。
【0048】
前記IOB値の加重平均を特定することが好ましい理由としては、特に限定されるものではないが、1つの可能性として以下が想定される。
従来、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル等の液状の紫外線吸収剤は、固体の紫外線吸収剤の溶媒としても用いられている。成分(C)及び成分(E)の極性バランス(IOB値の加重平均)を、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値:0.28)のIOB値と同等又はその近しい範囲とすることが、本発明のアルコール性組成物においては好適である可能性が示唆された。
【0049】
本発明のアルコール性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される成分を含有できる。すなわち、本発明のアルコール性組成物には、上記成分以外である、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、皮膜形成剤、樹脂、保湿剤、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、キレート剤、pH調整剤、清涼剤、植物抽出物、ビタミン類、美容成分等を含有できる。
【0050】
本発明のアルコール性組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、成分(A)~(E)、その他の任意成分を混合することによる製造などが挙げられる。混合する機器としては、ディスパーションや、パドルミキサー等の分散機器を用いることができる。
【0051】
本発明のアルコール性組成物は、アルコール及び油剤を主成分とするものであり、水の含有量が好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下のものである。本発明において、アルコール性組成物中の水の含有量は、常圧加熱乾燥法によって測定される値を意味する。
【0052】
本発明のアルコール性組成物の性状としては、特に限定されるものではないが、液状、ゲル状、乳液状、クリーム状、半固形状、固形状のものが挙げられる。本発明においては、塗布のしやすさ、べたつきが小さいという使用性の点から、25℃において液状であることが好ましく、25℃において液状であるとは、25℃で流動性を有することを指す。
【0053】
本発明のアルコール性組成物は、最終形態の製剤としてそのまま用いてもよいし、当該組成物を他の成分として混合して最終形態の製剤としてもよい。ここで、最終形態の製剤としては、化粧料や皮膚外用剤、医薬品等の製剤が挙げられ、具体的には、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪料等の毛髪用の化粧料;化粧水、乳液、クリーム、美容液、リップクリーム、ハンドクリーム、洗顔料、クレンジング料等のスキンケア化粧料;ファンデーション、メイクアップ下地、ほほ紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅、リップグロス等のメイクアップ化粧料;香水、練り香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、ライトコロン、フレッシュコロン、パヒュームローション等の芳香化粧料;分散液、軟膏剤、ローション剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の皮膚外用剤;うがい薬、点鼻薬、感冒薬等の医薬品等を例示することができる。本発明においては、最終形態の製剤として、化粧料又は皮膚外用剤であることが好ましく、本発明の効果をより効果的に実感できるという観点から、日焼け止め用途に用いる化粧料であることが好ましい。ここで、日焼け止め用途として、日焼け止め料(化粧水、クリーム、乳液、美容液等)、下地、ファンデーション等の紫外線防御効果を発揮するものであれば適用可能である。また、その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法、噴霧剤、エアゾール剤として使用する方法等が挙げられ、本発明においてはミスト状に噴霧して使用することで、簡便に使用できるためより好ましい。
【0054】
前記化粧料又皮膚外用剤中に含まれる本発明のアルコール性組成物の含有量は、特に限定されるものではないが、20~100%であることが好ましい。
【0055】
化粧料又は皮膚外用剤には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常の化粧料や皮膚外用剤等に使用される成分を配合することができる。各成分については、適宜省略するが、前述したアルコール性組成物での説明が、化粧料又は皮膚外用剤にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0056】
前記化粧料又は皮膚外用剤の性状としては、特に限定されるものではなく、液状、ゲル状、乳液状、クリーム状、半固形状、固形状のものが挙げられる。
【0057】
また、本発明の別の側面として、
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の溶解性を向上させる方法として用いることができる。
【0058】
また、本発明の別の側面として、
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出を抑制する方法として用いることができる。
【0059】
上記いずれの方法の説明において、成分(A)~(E)、各含有量、各含有質量割合、製造方法、各構成、各方法、各用語などの説明については適宜省略するが、前述したアルコール性組成物での説明が、本剤にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0060】
また、本発明の別の側面として、
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を有効成分とする、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出抑制剤として用いることができる。
【0061】
上記析出抑制剤の説明において、成分(A)~(E)、各含有量、各含有質量割合、製造方法、各構成、各方法、各用語などの説明については適宜省略するが、前述したアルコール性組成物での説明が、本剤にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0062】
また、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
〈1〉
次の成分(A)~(D);
(A)25℃で固体の紫外線吸収剤 5~15質量%
(B)25℃で液状の紫外線吸収剤
(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油
(D)エタノール 40質量%以上
を含有し、
前記成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60以上であり、
前記成分(A)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(A)が、3.0以上である、
アルコール性組成物である。
〈2〉
前記成分(C)の分子量が300~700であり、かつ有機性値が、300~600である、〈1〉に記載のアルコール性組成物である。
〈3〉
前記成分(D)の含有量が、40~70質量%である、〈1〉又は〈2〉に記載のアルコール性組成物である。
〈4〉
前記成分(C)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(C)が、1~20である、〈1〉~〈3〉のいずれか1つに記載のアルコール性組成物である。
〈5〉
前記成分(C)が、コハク酸ジエチルヘキシルである、〈1〉~〈4〉のいずれか1つに記載のアルコール性組成物である。
〈6〉
ミスト状に噴霧して使用する、〈1〉~〈5〉のいずれか1つに記載のアルコール性組成物である。
〈7〉
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を含有する、〈1〉~〈6〉のいずれか1つに記載のアルコール性組成物である。
〈8〉
前記アルコール性組成物が日焼け止め用途に用いる化粧料である、〈1〉~〈7〉のいずれか1つに記載のアルコール性組成物である。
〈9〉
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の溶解性を向上させる方法である。
〈10〉
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を使用する、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出を抑制する方法である。
〈11〉
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を使用する、[9]又は[10]に記載の方法である。
〈12〉
成分(D)エタノールを含有するアルコール性組成物において、
成分(B)25℃で液状の紫外線吸収剤及び成分(C)IOB値が0.28~0.35である25℃で液状のエステル油を有効成分とする、
成分(A)25℃で固体の紫外線吸収剤の析出抑制剤として用いることができる。
〈13〉
さらに、成分(E)IOB値が0.10~0.20である25℃で液状のエステル油を有効成分とする、[12]に記載の析出抑制剤である。
【0063】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0064】
<実施例1~15及び比較例1~8:日焼け止め料>
下記表1及び2に示す処方の日焼け止め料を調製した。得られた日焼け止め料について、(a)固体紫外線吸収剤の析出のなさ、(b)紫外線防御効果、(c)べたつきのなさ、(d)透明性の各評価項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1及び2に示す。なお、実施例1の成分(C)及び成分(E)のIOB値の加重平均は、0.26であった。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
(注1)ユビナール A PLUS GRANULAR (BASF社製)
(注2)UVINUL T150(日光ケミカルズ社製)
(注3)TINOSORB S (BASF社製)
(注4)UVINUL MC80 (BASF社製)
(注5)PARSOL SLX(DSM社製)
【0067】
(製造方法)
A:成分1~8、10~13を加熱混合し、室温まで冷却する。
B:Aに成分9を混合し、アルコール性組成物を得た。
C:Bをミスト容器(三谷バルブ社製 Z-155)に充填し、日焼け止め料を得た。
【0068】
(評価方法1:(a)固体紫外線吸収剤の析出のなさ(0℃/1M))
各試料を、ガラス製の規格瓶に入れ、0℃の恒温槽に1ヶ月間(1M)保管した。その後、室温(25℃)に戻し、各規格瓶を振ることで各試料の凝集物(モヤ)の有無を観察し、下記3段階判定基準にて判定した。なお、凝集物の確認が困難である場合は、可視光を照射し凝集物(モヤ)の有無を観察し判定してもよい。
[3段階判定基準]
(判定) : (評価)
◎(優) : 凝集物(モヤ)が確認されない
〇(良) : わずかに凝集物(モヤ)が確認されるが、振ると消える
×(不可) : 凝集物(モヤ)が確認され、振っても消えない
【0069】
(評価方法2:(b)紫外線防御効果)
各試料を、PMMA板(Labsphere社製 HELIOPLATE HD6)に2mg/cmとなるように塗布した後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、前記PMMA板上を10点測定し、得た平均値から、紫外線防御効果を下記3段階判定基準にて判定した。
[3段階判定基準]
(判定) : (平均SPF値)
◎(優) : 40以上
〇(良) : 30以上40未満
×(不可) : 30未満
【0070】
(評価方法3:(c)べたつきのなさ)
べたつきのなさについては、化粧品評価専門パネル20名による官能評価を行った。各試料を前腕に2回噴霧して使用してもらい、仕上がりのべたつきのなさに関して、下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各試料のパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
[5絶対評価基準]
(評点) : (評価)
5 : 非常に良好
4 : 良好
3 : 普通
2 : やや不良
1 : 不良
[4段階判定基準]
(判定) : (評点の平均点)
◎(優) : 4.5点以上
〇(良) : 3.5以上4.5点未満
△(やや不可) : 2.0点以上3.5点未満
×(不可) : 2.0点未満
【0071】
(評価方法4:(d)透明性)
透明性については、光路長10mm×光路幅10mmのガラスセルに各試料を充填し、空のセルを対照として分光光度計UV-2500PC(島津製作所社製)で透過率を測定し、波長600nmの光の透過率を下記2段階判定基準により評価し、判定した。
[2段階判定基準]
(判定) : (透過率)
◎(優) : 90%以上
×(不可) : 90%未満
【0072】
表1及び2の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~15の日焼け止め料は、比較例1~8に比べ、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、紫外線防御効果、べたつきのなさ、透明性に優れていた。
【0073】
一方で、成分(A)の含有量が、5%未満である比較例1では、紫外線防御効果において満足のいくものが得られなかった。
成分(A)の含有量が、15%を超え、前記成分(A)に対する前記成分(D)の含有質量割合(D)/(A)が、3.0未満であり、成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60未満である比較例2、成分(B)を含有しない比較例3、成分(A)に対する前記成分(C)の含有質量割合(C)/(A)が、0.60未満である比較例4では、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、紫外線防御効果、べたつきのなさ、透明性において満足のいくものが得られなかった。
成分(C)の代わりに、安息香酸アルキル(C12~C15)、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチルを用いた比較例5~7では、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、紫外線防御効果、べたつきのなさ、透明性において満足のいくものが得られなかった。
成分(D)の含有量が40%未満である比較例8では、固体紫外線吸収剤の析出のなさ、紫外線防御効果、べたつきのなさ、透明性において満足のいくものが得られなかった。
【0074】
実施例16:日焼け止め料
(成分) (質量%)
1.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル (成分(A))
注1 3
2.2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン (成分(A))
注3 5
3.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル (成分(B)) 注4 10
4.コハク酸ジエチルヘキシル (成分(C)) 6
5.ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール (成分(C)) 5
6.安息香酸アルキル(C12~C15) (成分(E)) 4
7.エタノール (成分(D)) 50
8.(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー 注6 1
9.ジメチコン 注7 残量
(注6)信越工業化学社製 シリコン KP-545
(注7)信越工業化学社製 KF-96L-2CS
【0075】
(製造方法)
A:成分1~6を加熱混合し、室温まで冷却する。
B:Aに成分7~9を添加混合し、ボトル容器に充填し日焼け止め料を得た。
【0076】
実施例16の日焼け止め料は、固体紫外線吸収剤の析出がなく、紫外線防御効果に優れるものであった。また、べたつきのなさ及び透明性にも優れたものであった。
【0077】
実施例17:制汗日焼け止め料
(成分) (質量%)
1.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル (成分(A))
注1 3
2.2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン (成分(A))
注3 5
3.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル (成分(B)) 注4 10
4.コハク酸ジエチルヘキシル (成分(C)) 10
5.イソプロピルメチルフェノール 0.02
6.エタノール (成分(D)) 50
7.ジメチコン 注7 残量
【0078】
(製造方法)
A:成分1~5を加熱混合し、室温まで冷却する。
B:Aに成分6~7を添加混合し、ミスト容器(三谷バルブ社製 Z-155)に充填し制汗日焼け止め料を得た。
【0079】
実施例17の制汗日焼け止め料は、固体紫外線吸収剤の析出がなく、紫外線防御効果に優れるものであった。また、べたつきのなさ及び透明性にも優れたものであった。
【0080】
実施例18:ヘアミスト
(成分) (質量%)
1.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル (成分(A))
注1 3
2.2,4-ビス{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン (成分(A))
注3 5
3.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル (成分(B)) 注4 10
4.コハク酸ジエチルヘキシル (成分(C)) 10
5.PEG-10ジメチコン 2
6.エタノール (成分(D)) 50
7.イソドデカン 残量
8.アスタキサンチン 0.1
【0081】
(製造方法)
A:成分1~5を混合加熱し、室温まで冷却する。
B:Aに成分6~8を添加混合し、ミスト容器(三谷バルブ社製 Z-155)に充填しヘアミストを得た。
【0082】
実施例18のヘアミストは、固体紫外線吸収剤の析出がなく、紫外線防御効果に優れるものであった。また、べたつきのなさ及び透明性にも優れたものであった。