(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124281
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ラコサミド錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/165 20060101AFI20240905BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240905BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240905BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K9/32
A61K47/32
A61K47/34
A61P25/08
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023043584
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】稲坂 翔麻
(72)【発明者】
【氏名】田村 優樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076CC01
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD41
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF36
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA04
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206NA03
4C206ZA06
(57)【要約】
【課題】保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されたラコサミド錠剤を提供する。
【解決手段】ラコサミドを含有する素錠と、該素錠に設けられたコーティング層とを有するラコサミド錠剤であって、前記コーティング層が、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含むことを特徴とするラコサミド錠剤により解決される。前記ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーの含有量は、前記コーティング層100質量%中、60質量%以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラコサミドを含有する素錠と、該素錠に設けられたコーティング層とを有するラコサミド錠剤であって、
前記コーティング層が、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含むことを特徴とするラコサミド錠剤。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーの含有量が、前記コーティング層100質量%中、60質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のラコサミド錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラコサミド錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラコサミド、すなわち、(2R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロパンアミドは抗てんかん薬であり、これを含む錠剤、ドライシロップ剤、注射剤が「ビムパッド(登録商標)」という名称で販売されている。
【0003】
ラコサミドは苦味を有することが知られている。苦味を有する有効成分を含む製剤においては、患者の服薬アドヒアランスを向上させることを目的とし、有効成分を含む顆粒や錠剤にコーティング層を設けることが行われている(例えば特許文献1参照)。その他、コーティング層を形成する目的としては、湿気等の遮断、錠剤の艶出し等も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラコサミドを含有する素錠にコーティング層を形成した場合、得られた錠剤の保存安定性が低下し、類縁物質の増加が認められる場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されたラコサミド錠剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、コーティング層に用いる基剤として、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを使用することにより、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されたラコサミド錠剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕ラコサミドを含有する素錠と、該素錠に設けられたコーティング層とを有する錠剤であって、前記コーティング層が、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含むことを特徴とするラコサミド錠剤。
〔2〕前記ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーの含有量が、前記コーティング層100質量%中、60質量%以上であることを特徴とする〔1〕に記載のラコサミド錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されたラコサミド錠剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のラコサミド錠剤(以下、単に錠剤という場合もある。)は、ラコサミドを含有する素錠と、この素錠の表面に設けられたコーティング層とを有する。
本発明の錠剤においては、コーティング層が、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを基剤として含む。
【0010】
<素錠>
素錠は、ラコサミドと必要に応じて配合される各種添加剤とを含有する。
ラコサミドとしては、特に制限はなく、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
素錠中のラコサミドの含有量は適宜設定できるが、素錠を100質量%とした場合、素錠中のラコサミドの含有量は例えば25~55質量%とすることができ、好ましくは30~50質量%、より好ましくは35~45質量%である。
【0011】
添加剤としては、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤等の添加剤をいずれも必要に応じて使用できる。
【0012】
賦形剤としては、例えば、結晶セルロース、D-マンニトール、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、他の成分との反応性が低い等、賦形剤として優れている結晶セルロースを使用することが好ましい。
素錠を100質量%とした場合、素錠中の賦形剤の含有量は例えば20~50質量%とすることができ、好ましくは25~45質量%、より好ましくは30~40質量%である。
【0013】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、ヒドロキシプロピルセルロースを使用すると、ラコサミド錠剤の保存安定性が優れ、類縁物質の生成をより抑制できる点で好ましい。
素錠を100質量%とした場合、素錠中の結合剤の含有量は例えば1~20質量%とすることができ、好ましくは1~15質量%、より好ましく2~8質量%である。
【0014】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
素錠を100質量%とした場合、素錠中の崩壊剤の含有量は例えば5~35質量%とすることができ、好ましくは10~30質量%、より好ましく15~20質量%である。
【0015】
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
素錠を100質量%とした場合、素錠中の流動化剤の含有量は例えば0.1~5質量%とすることができ、好ましくは0.1~3質量%である。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
素錠を100質量%とした場合、素錠中の滑沢剤の含有量は例えば0.1~5質量%とすることができ、好ましくは0.1~3質量%である。
その他、必要に応じて、上記以外の添加剤も使用できる。
【0016】
素錠の製法については特に制限はなく、公知の製造方法を採用できる。
例えば、ラコサミドと添加剤の全量とを混合し、必要に応じて造粒を経て打錠する方法でもよいが、均質性に優れた素錠を安定に製造できる製造性の観点等から、ラコサミドと添加剤の一部とを混合して造粒し、得られた造粒物に残りの添加物を加えて打錠する方法が好適である。
造粒方法、打錠方法としても公知の方法を採用でき、流動層造粒、攪拌造粒等で造粒し、打錠成形機を用いて打錠する方法が挙げられる。
【0017】
<コーティング層>
本発明において、素錠の表面上に設けられるコーティング層は、基剤として、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを少なくとも含有する。これにより、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されたラコサミド錠剤とすることができる。
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーの含有量は、コーティング層100質量%中、60質量%以上であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、80~90質量%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、均一に素錠をコーティングでき、かつ、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制された錠剤とすることができる。
ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なものを使用でき、例えば市販のコリコート(登録商標)IR等を好適に使用できる。
【0018】
基剤としては、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーに加えて、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール部分けん化物等の他の成分を併用してもよいが、好ましくはポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーのみを用いる。
【0019】
コーティング層は、遮光、艶出し等の目的に応じ、必要に応じて添加物を含有することができる。具体的には、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、ポリエチレングリコール、タルク、カルナウバロウ等が挙げられる。
【0020】
コーティング層は、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーと、必要に応じて使用される添加剤や他の基剤とを水、エタノール等から選ばれる1種以上の溶媒に溶解し、得られた液を素錠に噴霧、乾燥することにより形成できる。
【0021】
素錠とコーティング層の質量割合は、素錠を100質量部とした場合に、例えば1~10質量部であり、好ましくは1~8質量部である。
【0022】
本発明の錠剤は、即放性錠剤、徐放性錠剤、口腔内速崩壊錠等のいずれでもよいが、即放性錠剤の場合に好適である。
【0023】
以上説明したように、本発明の錠剤は、ラコサミドを含有する素錠と、該素錠に設けられたコーティング層とを有し、コーティング層がポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを含むため、保存安定性、特に熱安定性に優れ、類縁物質の生成が抑制されている。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[例1~3]
下記の表1および2の処方に従い、素錠にコーティング層が形成された即放性錠剤を製造した。
具体的には、まず、表1の造粒物の欄に記載の各成分を混合して造粒用組成物とし、精製水を造粒用組成物に噴霧して攪拌造粒し、造粒物を得た。ついで、造粒物に対し、表1の後添加物の欄に記載の各成分を混合して打錠用組成物とし、これを打錠機で打錠し、素錠を得た。
その後、得られた素錠に対して、表2のコーティング層の欄に記載の成分を精製水(例1および例3)、または、精製水とエタノールとの混合液(例2)に溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、表1および表2に示す割合で各成分を含有する例1~3の即放性錠剤(質量250mg、12.5mm×5.8mmの異形錠)を得た。
なお、各即放性錠剤において、素錠とコーティング層との質量比は、素錠:コーティング層=240:10とした。
得られた各即放性錠剤について、以下の方法により、純度試験(熱安定性の評価)を行った。
結果を表3に示す。
【0025】
<純度試験(熱安定性)>
熱苛酷条件(60℃、開放系)での保存前後の各即放性錠剤について、総類縁物質量を測定することにより、純度試験を実施した。なお、総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で測定、定量した複数種の総類縁物質量の総和であり、表3に記載した総類縁物質量の数値は、ラコサミド由来のピーク面積に対する、観測された複数の類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
表3に示すように、コーティング層に基剤としてポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを用いた例1の即放性錠剤は、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール(部分けん化物)を用いた例2、例3の即放性錠剤に比べて、熱苛酷条件での総類縁物質量の増加が抑制されており、熱安定性に優れていた。