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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124289
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】管楽器及び管楽器用のキー
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/047 20200101AFI20240905BHJP
   G10D 7/066 20200101ALN20240905BHJP
   G10D 7/08 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
G10D9/047
G10D7/066
G10D7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091011
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】18/176,646
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】足立 啓
(72)【発明者】
【氏名】平形 友二
(57)【要約】
【課題】倍音をより簡単に出すことが可能な管楽器を提供する。
【解決手段】管楽器1は、音孔21を有する管体2と、管体2の表面2aに設けられる管楽器1用のキー3であって、音孔21を覆うためのパッド31、及び、パッド31が音孔21から離れるように操作するための操作部32、を有するキー3と、操作部32の操作に伴ってパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を調整する調整部4と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音孔を有する管体と、
前記管体の表面に設けられる管楽器用のキーであって、前記音孔を覆うためのパッド、及び、前記パッドが前記音孔から離れるように操作するための操作部、を有するキーと、
前記操作部の操作に伴って前記パッドが前記音孔から離れる距離の最大値を調整する調整部と、
を備える管楽器。
【請求項2】
前記キーは、シーソー構造の腕部を有し、かつ、シーソーの支点部において前記管体に取り付けられ、
前記パッドは、前記腕部の第一端部に配置され、
前記操作部は、前記腕部の第二端部に配置され、
前記調整部は、突起部を有し、
前記突起部は、第一位置と第二位置とに切り替え可能に配置され、
前記第一位置は、前記操作部の操作を妨げる位置であり、
前記第二位置は、前記操作部の操作を妨げない位置である請求項1に記載の管楽器。
【請求項3】
前記調整部は、前記突起部が設けられ、かつ、前記操作部に対して取り付けられた調整レバーを有し、
前記調整レバーは、前記突起部を前記第一位置と前記第二位置との間で移動させる請求項2に記載の管楽器。
【請求項4】
前記調整部は、当該管体の表面から窪む窪み部を有し、
前記第二位置に配置された前記突起部は、前記操作部の操作方向において前記窪み部に対向する請求項3に記載の管楽器。
【請求項5】
前記調整部は、前記管体の軸方向を軸線として前記管体に対して回転可能に取り付けられたリング部を有し、
前記突起部は、前記リング部の周方向の一部に取り付けられ、
前記リング部は、前記管体に対する回転移動により、前記突起部を前記第一位置と前記第二位置との間で移動させる請求項2に記載の管楽器。
【請求項6】
前記キーは、シーソー構造の腕部を有し、かつ、シーソーの支点部において前記管体に取り付けられ、
前記パッドは、前記腕部の第一端部に配置され、
前記操作部は、前記腕部の第二端部に配置され、
前記調整部は、前記管体の表面から突出する突起部と、前記操作部に対して取り付けられた調整レバーと、を有し、
前記調整レバーは、第一位置と第二位置との間で移動可能とされ、
前記第一位置は、前記操作部の操作方向において前記調整レバーが前記突起部に対向する位置であり、
前記第二位置は、前記操作方向において前記調整レバーが前記突起部に対向しない位置である請求項1に記載の管楽器。
【請求項7】
前記調整部は、前記管体の表面から突出する前記突起部の突出高さを調整する高さ調整部を有する請求項6に記載の管楽器。
【請求項8】
音孔を有する管体の表面に設けられる管楽器用のキーであって、
前記音孔を覆うためのパッドと、
前記パッドが前記音孔から離れるように操作するための操作部と、
前記操作部の操作に伴って前記パッドが前記音孔から離れる距離の最大値を調整する調整部と、
を備える管楽器用のキー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管楽器及び管楽器用のキーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レジスターキーを備えた木管楽器が開示されている。レジスターキーは、木管楽器の演奏者によって操作されることで、パッド(タンポ)を管体の所定の音孔(トーンホール)から離すように構成されている。レジスターキーは、木管楽器から倍音を出すために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52-159215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジスターキーのように倍音を出すためのキーを備える管楽器には、倍音をより簡単に出すことが求められている。例えば、音域によっては、キーを押した時にパッドが音孔から離れる距離を小さくした方が倍音をより簡単に出す事ができる。しかしながら、パッドを音孔から離す距離を速くかつ正確に調整するための運指操作は困難であり、また、このような運指操作には高度な演奏技量が求められる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、倍音をより簡単に出すことが可能な管楽器及び管楽器用のキーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、音孔を有する管体と、前記管体の表面に設けられる管楽器用のキーであって、前記音孔を覆うためのパッド、及び、前記パッドが前記音孔から離れるように操作するための操作部、を有するキーと、前記操作部の操作に伴って前記パッドが前記音孔から離れる距離の最大値を調整する調整部と、を備える管楽器である。
【0007】
本発明の第二の態様は、音孔を有する管体の表面に設けられる管楽器用のキーであって、前記音孔を覆うためのパッドと、前記パッドが前記音孔から離れるように操作するための操作部と、前記操作部の操作に伴って前記パッドが前記音孔から離れる距離の最大値を調整する調整部と、を備える管楽器用のキーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、倍音をより簡単に出すことが可能な管楽器及び管楽器用のキーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る管楽器を示す平面図である。
図2図1の管楽器に備える管体の要部及びレジスターキーを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る管楽器において、レジスターキーの操作部に設けられた調整レバーが第二位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図4図3に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る管楽器において、レジスターキーの操作部に設けられた調整レバーが第一位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図6図5に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第二位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図8図7に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第一位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図10図9に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図11】本発明の第三実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第二位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図12図11に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図13】本発明の第三実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第一位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図14図13に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図15】本発明の第四実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第二位置に配置された状態を示す拡大平面図である。
図16図15に示す状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図17】本発明の第四実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第一位置に配置された状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
図18】本発明の第五実施形態に係る管楽器において、調整レバーに設けられた突起部が第二位置に配置された状態を管体の軸方向から見た拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、図1図6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1図2に示すように、第一実施形態の管楽器1は、クラリネットであり、管体2と、レジスターキー3(管楽器用のキー)と、調整部4と、を備える。
【0011】
管体2は、筒状に形成されている。管体2には、その表面2aから内側まで貫通する音孔21が形成されている。
【0012】
レジスターキー3は、管体2の表面2aに設けられる。レジスターキー3は、パッド31と、操作部32と、シーソー構造の腕部33と、を有する。パッド31は、管体2の音孔21を覆う。操作部32は、パッド31が音孔21から離れるように管楽器1のユーザ(例えば演奏者)によって操作される。腕部33は、概ね棒状に形成され、シーソーの支点部34において管体2に取り付けられる。腕部33の第一端部には、パッド31が配置される。腕部33の第二端部には、操作部32が配置される。腕部33は、パッド31が音孔21に近づくように、かつ、操作部32が管体2の表面2aから離れるように、不図示の付勢部材によって付勢される。
【0013】
このレジスターキー3では、管楽器1のユーザが付勢部材の力に抗って操作部32を管体2の表面2aに向けて押すことで、パッド31が音孔21から離れる。
図3図6に示すように、操作部32のうち管体2の表面2aに対向する部位には、緩衝材35が設けられている。緩衝材35は操作部32よりも柔らかい素材によって構成されている。緩衝材35は、例えばコルクによって構成されてよい。緩衝材35は、ユーザが操作部32を管体2の表面2aに向けて押した際に、操作部32が管体2に直接衝突することを防ぐ。
【0014】
調整部4は、ユーザによる操作部32の操作に伴ってパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を調整する。第一実施形態の調整部4は、突起部41と、調整レバー42と、高さ調整部43と、を有する。
【0015】
突起部41は、管体2の表面2aから突出する。突起部41は、図3図5に示すように管体2と操作部32とが重なる方向から見て、少なくとも操作部32及び緩衝材35と重ならないように位置すればよい。図3図5において、突起部41は操作部32及び緩衝材35の近くに位置しているが、これに限ることはない。
【0016】
調整レバー42は、レジスターキー3の操作部32に対して取り付けられる。調整レバー42は、図5図6に示す第一位置P11と、図3図4に示す第二位置P12との間で移動可能とされている。図5図6に示すように、調整レバー42の第一位置P11は、操作部32の操作方向D1(操作部32が管体2の表面2aに近づく方向)において調整レバー42が突起部41に対向する位置である。図3図4に示すように、調整レバー42の第二位置P12は、操作部32の操作方向D1において調整レバー42が突起部41に対向しない位置である。
以下、第一実施形態の調整レバー42について、具体的に説明する。
【0017】
第一実施形態の調整レバー42は、棒状に形成されている。調整レバー42は、主に操作部32のうち管体2の表面2aに対向する部位に配置されている。調整レバー42は、その第一端部421を中心として操作部32に対して回転可能に取り付けられる。調整レバー42の回転軸45は、概ね操作部32の操作方向D1、あるいは、管体2の径方向に延びている。
【0018】
調整レバー42の第二端部422は、管体2と操作部32とが重なる方向(操作部32の操作方向D1)から見て、操作部32によって覆われないように位置する。図3図5では、調整レバー42の第二端部422が操作部32の側部に形成された切欠321に位置することで操作部32に覆われずに露出しているが、これに限ることはない。管楽器1のユーザは、露出する調整レバー42の第二端部422を操作することで、調整レバー42を回転移動させることができる。
【0019】
図示例において、調整レバー42の第二端部422は、操作部32に対する調整レバー42の回転に伴って、管体2の軸方向(図3図5において上下方向)及び管体2の周方向(図3図5において左右方向)の両方に対して傾斜する方向に移動する。なお、調整レバー42の回転に伴う調整レバー42の第二端部422の移動方向は、例えば管体2の軸方向であってもよいし、管体2の周方向であってもよい。
【0020】
図5図6に示すように調整レバー42が第一位置P11に位置した状態では、操作部32の操作方向D1において調整レバー42の第二端部422が突起部41に対向する。一方、図3図4に示すように調整レバー42が第二位置P12に位置した状態では、操作部32の操作方向D1において調整レバー42の第二端部422が突起部41に対向しない。
【0021】
図4図6に示すように、高さ調整部43は、管体2の表面2aから突出する突起部41の突出高さを調整する。具体的に、高さ調整部43は、突起部41に形成された雄ねじ431と、管体2に形成されて突起部41の雄ねじ431に噛み合う雌ねじ孔432と、を有する。突起部41を雌ねじ孔432に対して適宜回転させることで、管体2から突出する突起部41の高さを連続的に調整することができる。
【0022】
以上のように構成される第一実施形態の管楽器1において、図3図4に示すように調整レバー42が第二位置P12に位置した状態では、操作部32の操作方向D1において調整レバー42の第二端部422が突起部41に対向しない。このため、ユーザは、操作部32に設けられた緩衝材35が管体2の表面2aに接触するまで、操作部32を管体2の表面2aに向けて押すことができる。すなわち、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が比較的大きくなる。
【0023】
一方、図5図6に示すように調整レバー42が第一位置P11に位置した状態では、操作部32の操作方向D1において調整レバー42の第二端部422が突起部41に対向する。このため、ユーザが操作部32を管体2の表面2aに向けて押した際には、操作部32の緩衝材35が管体2の表面2aに接触する前に、調整レバー42の第二端部422が突起部41に接触する。ユーザは、調整レバー42の第二端部422が突起部41に接触した位置よりも、操作部32を管体2の表面2aに近づけることはできない。すなわち、調整レバー42が第二位置P12に位置する場合と比較して、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が小さくなる。
【0024】
以上説明したように、第一実施形態の管楽器1によれば、ユーザによるレジスターキー3の操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を、調整部4によって簡単に変えることができる。これにより、管楽器1において倍音をより簡単に出すことが可能となる。
【0025】
また、第一実施形態の管楽器1では、操作部32に対して取り付けられた調整レバー42を第一位置P11と第二位置P12との間で移動させるだけで、パッド31が音孔21から離れる距離の最大値を簡単に変更することができる。
【0026】
また、第一実施形態の管楽器1では、高さ調整部43によって管体2の表面2aから突出する突起部41の高さを変えることで、調整レバー42が第一位置P11に配置された状態において、パッド31が音孔21から離れる距離の最大値を調整することができる。
特に、第一実施形態の高さ調整部43は、管体2から突出する突起部41の高さを連続的に調整することができる。したがって、操作部32を操作した際にパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を微調整することができる。
【0027】
第一実施形態において、調整部4は、例えば高さ調整部43を含まなくてもよい。すなわち、突起部41は、例えば、管体2の表面2aからの突出高さが変化しないように管体2に固定されてもよい。
【0028】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図7図10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0029】
図7図10に示すように、第二実施形態の管楽器1Cは、第一実施形態と同様のクラリネットであり、管体2と、レジスターキー3と、調整部4Cと、を備える。
第二実施形態の調整部4Cは、突起部41Cと、調整レバー42Cと、窪み部46Cと、を有する。突起部41Cは、操作部32の操作を妨げる第一位置P21(図9図10参照)と、操作部32の操作を妨げない第二位置P22(図7図8参照)とに切り替え可能に配置される。調整レバー42Cは、操作部32に対して移動可能に取り付けられている。突起部41Cは、当該調整レバー42Cに設けられている。調整レバー42Cは、操作部32に対して移動することで、突起部41Cを第一位置P21と第二位置P22との間で移動させる。窪み部46Cは、管体2の表面2aから窪んで形成されている。窪み部46Cには、操作部32の操作方向D1において第二位置P22に配置された突起部41Cが対向する。
以下、第二実施形態の調整部4Cについて、具体的に説明する。
【0030】
第二実施形態の調整レバー42Cは、第一実施形態の調整レバー42と同様である。すなわち、調整レバー42Cは、棒状に形成されている。また、調整レバー42Cは、その第一端部421を中心として操作部32に対して回転可能に取り付けられる。調整レバー42Cの回転軸45は、概ね操作部32の操作方向D1、あるいは、管体2の径方向に延びている。ただし、第二実施形態の調整レバー42Cでは、その第二端部422に突起部41Cが設けられている。突起部41Cは、調整レバー42Cから管体2の表面2aに向けて突出する。
【0031】
図示例において、調整レバー42Cの第二端部422は、第一実施形態と同様に、操作部32に対する調整レバー42Cの回転に伴って、管体2の軸方向及び管体2の周方向の両方に対して傾斜する方向に移動する。なお、調整レバー42Cの回転に伴う調整レバー42Cの第二端部422の移動方向は、例えば管体2の軸方向であってもよいし、管体2の周方向であってもよい。
【0032】
管体2の表面2aから窪む窪み部46Cの深さは、少なくとも調整レバー42Cから突出する突起部41Cの突出高さ以上であればよい。図7図9に示す窪み部46Cは、操作部32の操作方向D1から見て、第一位置P21から第二位置P22に至る突起部41Cの移動領域のうち、第一位置P21を除く領域に形成されている。なお、窪み部46Cは、少なくとも突起部41Cの第二位置P22に対応する領域に形成されていればよい。
【0033】
図8図10に示すように、第二実施形態の調整レバー42Cは、高さ調整部43Cをさらに有する。高さ調整部43Cは、調整レバー42Cから管体2の表面2aに向けて突出する突起部41Cの突出高さを調整する。具体的に、高さ調整部43Cは、突起部41Cに形成された雄ねじ431Cと、調整レバー42Cに形成されて突起部41Cの雄ねじ431Cに噛み合う雌ねじ孔432Cと、を有する。突起部41Cを雌ねじ孔432Cに対して適宜回転させることで、調整レバー42Cから突出する突起部41Cの高さを連続的に調整することができる。
【0034】
以上のように構成される第二実施形態の管楽器1Cにおいて、図7図8に示すように突起部41Cが第二位置P22に位置した状態では、操作部32の操作方向D1において突起部41Cが管体2に形成された窪み部46Cに対向する。このため、ユーザは、操作部32に設けられた緩衝材35が管体2の表面2aに接触するまで、操作部32を管体2の表面2aに向けて押すことができる。すなわち、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が比較的大きくなる。
【0035】
一方、図9図10に示すように突起部41Cが第一位置P21に位置した状態において、突起部41Cは操作部32の操作方向D1において窪み部46Cに対向せず、管体2の表面2aに対向する。このため、ユーザが操作部32を管体2の表面2aに向けて押した際には、操作部32の緩衝材35が管体2の表面2aに接触する前に、突起部41Cが管体2の表面2aに接触する。ユーザは、突起部41Cが管体2の表面2aに接触した位置よりも、操作部32を管体2の表面2aに近づけることはできない。すなわち、突起部41Cが第二位置P22に位置する場合と比較して、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が小さくなる。
【0036】
第二実施形態の管楽器1Cによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の管楽器1Cでは、レジスターキー3の操作部32に設けられた突起部41Cを第一位置P21と第二位置P22とに切り替えるだけで、パッド31が音孔21から離れる距離の最大値を簡単に変更することができる。
【0037】
また、第二実施形態の管楽器1Cによれば、突起部41Cが第二位置P22に配置された状態では、操作部32の操作方向D1において突起部41Cが管体2に対向していても、操作部32の操作に伴って突起部41Cが窪み部46Cに入り込み、当該突起部41Cは管体2の表面2aに接触しない。このため、第二位置P22に配置された突起部41Cは操作部32の操作を妨げない。これにより、突起部41Cを第一位置P21と第二位置P22との間で移動させる調整レバー42Cの回転角度(あるいは移動長さ)を小さく抑えることができる。したがって、キーの操作部32の操作に伴ってパッド31が音孔21から離れる距離の調整をスムーズに行うことができる。
【0038】
第二実施形態において、調整部4Cは、例えば高さ調整部43Cを含まなくてもよい。すなわち、突起部41Cは、例えば、調整レバー42Cからの突出高さが変化しないように調整レバー42Cに設けられてもよい。
【0039】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、図11図14を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図11図14に示すように、第三実施形態の管楽器1Dは、第一実施形態と同様のクラリネットであり、管体2と、レジスターキー3と、調整部4Dと、を備える。第三実施形態の調整部4Dは、第二実施形態と同様の突起部41D及び調整レバー42Dを有するが、窪み部46C(図7図10参照)を有さない。
【0041】
第三実施形態において、突起部41Dが配置された調整レバー42Dの第二端部422は、図12図14に示すように管体2の軸方向から見て、断面円形である管体2の表面2aの接線方向D2(図12図14において左右方向)に移動する。また、調整レバー42Dの第二端部422は、図11図13に示すように操作部32の操作方向D1から見て、主に管体2の周方向に沿う方向(図11図13において左右方向)に移動する。第三実施形態においては、第一位置P21から第二位置P22に至る突起部41Dの移動長さが長くなるように、調整レバー42Dの長さを長くすることが好ましい。
【0042】
図12図14に示すように、第三実施形態の突起部41Dは、調整レバー42Dからの突出高さが変化しないように、調整レバー42Dの第二端部422に固定されている。なお、突起部41Dは、例えば第二実施形態と同様に、調整レバー42Dからの突出高さが変化するように調整レバー42Dに取り付けられてもよい。
【0043】
以上のように構成される第三実施形態の管楽器1Dでは、図13図14に示すように突起部41Dが第一位置P21に位置した状態で、突起部41Dは操作部32の操作方向D1において管体2の表面2aの近くに位置する。図14では、操作部32の操作方向D1において、第一位置P21に位置する突起部41Dから管体2の表面2aまでの距離が、緩衝材35から管体2の表面2aまでの距離よりも短い。このため、ユーザが操作部32を管体2の表面2aに向けて押した際には、操作部32の緩衝材35が管体2の表面2aに接触する前に、突起部41Dが管体2の表面2aに接触する。すなわち、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が比較的小さくなる。
【0044】
そして、突起部41Dを図13図14に示す第一位置P21から図11図12に示す第二位置P22に移動させる際、突起部41Dは、図12図14に示すように管体2の軸方向から見て、断面円形である管体2の表面2aの接線方向D2に移動する。このため、突起部41Dが第二位置P22に位置した状態において、突起部41Dは、第一位置P21と比較して、操作部32の操作方向D1において管体2の表面2aから離れて位置する。図12では、操作部32の操作方向D1において、第二位置P22に位置する突起部41Dから管体2の表面2aまでの距離が、緩衝材35から管体2の表面2aまでの距離よりも長い。これにより、ユーザは、操作部32に設けられた緩衝材35が管体2の表面2aに接触するまで、操作部32を管体2の表面2aに向けて押すことができる。すなわち、突起部41Dが第一位置P21に位置する場合と比較して、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が大きくなる。
【0045】
第三実施形態の管楽器1Dによれば、第二実施形態と同様の効果を奏する。
また、第三実施形態の管楽器1Dによれば、突起部41D及び当該突起部41Dを第一位置P21と第二位置P22との間で移動させる調整レバー42Dがレジスターキー3に設けられている。さらに、第三実施形態の管体2には、調整部4Dの構成要素(例えば第一実施形態の突起部41、第二実施形態の窪み部46C)が設けられていない。これにより、突起部41D及び調整レバー42Dを含むレジスターキー3を管体2に取り付けるだけで、調整部4Dを簡単に管楽器1Dに設けることができる。
【0046】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態について、図15図17を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
図15図17に示すように、第四実施形態の管楽器1Eは、第一実施形態と同様のクラリネットであり、管体2と、レジスターキー3と、調整部4Eと、を備える。第四実施形態の調整部4Eは、第二、第三実施形態と同様の突起部41E及び調整レバー42Eを有する。
【0048】
第四実施形態の調整レバー42Eは、第二、第三実施形態と同様に、操作部32に対して回転可能に取り付けられている。ただし、第四実施形態において、調整レバー42Eの回転軸45は、概ね操作部32の操作方向D1あるいは管体2の径方向に直交する方向に延びている。図15において、調整レバー42Eの回転軸45は、管体2の軸方向(腕部33の長手方向)に延びている。このため、調整レバー42Eのうちユーザが触れる部分は、管体2の周方向に沿う方向に移動可能となっている。なお、調整レバー42Eの回転軸45は、例えば管体2の周方向に沿う方向に延びてもよい。この場合、調整レバー42Eのうちユーザが触れる部分は、管体2の軸方向に移動可能となる。
【0049】
図16図17に示すように、第四実施形態の突起部41Eは、第二、第三実施形態と同様に、調整レバー42Eに設けられている。ただし、第四実施形態と突起部41Eは、調整レバー42Eの回転位置に応じて、操作部32のうち管体2の表面2aに対向する部位から管体2の表面2aに向けて突出する長さが変化する。図17に示すように突起部41Eが第一位置P21に位置した状態では、突起部41Eが操作部32から管体2の表面2aに向けて突出する突出高さが最も大きくなる。一方、図16に示すように突起部41Eが第二位置P22に位置した状態では、突起部41Eが操作部32から管体2の表面2aに向けて突出する突出高さが最も小さくなる、あるいは、操作部32から管体2の表面2aに向けて突出しない。
【0050】
以上のように構成される第四実施形態の管楽器1Eでは、図16に示すように、突起部41Eが第二位置P22に位置した状態において、操作部32から突出する突起部41Eの突出高さが小さい、あるいは操作部32から突出しない。このため、ユーザは、操作部32の緩衝材35が管体2の表面2aに接触するまで、操作部32を管体2の表面2aに向けて押すことができる。すなわち、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が比較的大きくなる。
【0051】
一方、図17に示すように突起部41Eが第一位置P21に位置した状態では、突起部41Eが第二位置P22に位置する場合と比較して、操作部32から突出する突起部41Eの突出高さが大きい。このため、ユーザが操作部32を管体2の表面2aに向けて押した際には、操作部32の緩衝材35が管体2の表面2aに接触する前に、突起部41Eが管体2の表面2aに接触する。すなわち、突起部41Eが第二位置P22に位置する場合と比較して、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が小さくなる。
【0052】
第四実施形態の管楽器1Eによれば、第二、第三実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態について、図18を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0054】
図18に示すように、第五実施形態の管楽器1Fは、第一実施形態と同様のクラリネットであり、管体2と、レジスターキー3と、調整部4Fと、を備える。第五実施形態の調整部4Fは、突起部41F及びリング部47Fを有する。
【0055】
リング部47Fは、管体2の軸方向を軸線として管体2に対して回転可能に取り付けられている。図18における符号D3は、リング部47Fの回転方向を示している。リング部47Fは、管体2の表面2aに形成された環状の溝22Fに挿入されている。これにより、リング部47Fが管体2の表面2aから突出することを抑制又は防止している。リング部47Fの周方向の一部は、操作部32の操作方向D1において操作部32と重なる。
このリング部47Fの周方向の一部に、突起部41Fが取り付けられている。リング部47Fに取り付けられた突起部41Fは、管体2の表面2aから突出する。
【0056】
第五実施形態の調整部4Fでは、リング部47Fが管体2に対して回転移動することで、突起部41Fが、操作部32の操作を妨げる第一位置P21と操作部32の操作を妨げない第二位置P22との間で移動可能である。具体的に、第一位置P21は、突起部41Fが管体2の表面2aと操作部32との間に介在する位置である。第二位置P22は、突起部41Fが管体2の表面2aと操作部32との間に介在しない位置である。
【0057】
以上のように構成される第五実施形態の管楽器1Fにおいて、第一位置P21に位置する突起部41Fは、管体2の表面2aと操作部32との間に介在する。このため、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が比較的小さくなる。
一方、第二位置P22に位置する突起部41Fは、管体2の表面2aと操作部32との間に介在しない。これにより、突起部41Fが第一位置P21に位置する場合と比較して、ユーザによる操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値が大きくなる。
【0058】
第五実施形態の管楽器1Fによれば、第二~第四実施形態と同様の効果を奏する。
また、第五実施形態の管楽器1Fによれば、レジスターキー3の操作部32に触れることなく、突起部41Fを第一位置P21と第二位置P22との間で移動させることができる。
【0059】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
本発明において、調整部は、上記実施形態のように腕部33の第二端部側(操作部32側)に設けられることに限らず、例えば腕部33の第一端部側(パッド31側)に設けられてもよい。この場合、調整部は、例えば管体2に取り付けられた規制部によって構成されてよい。規制部は、管体2の表面2aとの間に腕部33の第一端部(パッド31)が位置するように配置される。管体2の表面2aと規制部との間隔は、調整可能であってもよい。管体2の表面2aから規制部に至る距離が長くなることで、操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を長くすることができる。また、管体2の表面2aから規制部に至る距離が短くなることで、操作部32の操作に応じてパッド31が音孔21から離れる距離の最大値を短くすることができる。
【0061】
本発明は、レジスターキーを備えるクラリネットに限らず、例えばオクターブキーを備えるサクソフォン、ファゴットなど、倍音を出すためのキーを備える管楽器に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1C,1D,1E,1F…管楽器、2…管体、2a…表面、3…レジスターキー(管楽器用のキー)、4,4C,4D,4E,4F…調整部、21…音孔、31…パッド、32…操作部、33…腕部、34…支点部、41,41C,41D,41E,41F…突起部、42,42C,42D,42E…調整レバー、43,43C…高さ調整部、46C…窪み部、47F…リング部、D1…操作方向、P11…調整レバー42の第一位置、P12…調整レバー42の第二位置、P21…突起部41C,41D,41E,41Fの第一位置、P22…突起部41C,41D,41E,41Fの第二位置
図1
図2
図3
図4
図5
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