軽鎖可変領域は、配列番号18、及び配列番号115ないし119からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
前記抗体またはその抗原結合断片は、BCMAタンパク質と、BCMAタンパク質に特異的に結合する物質との結合を阻害するものである、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
前記BCMAタンパク質に特異的に結合する物質は、B細胞活性化因子(BAFF)、増殖誘導リガンド(APRIL)、またはそれらの組み合わせである、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合断片。
B細胞成熟抗原(BCMA:B-cell maturation antigen)は、約20KDaのタンパク質であり、腫瘍懐死因子受容体(TNFR:tumor necrosis factor receptor)に属するタンパク質である。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF:B-cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)と増殖誘導リガンド(APRIL:a proliferation inducing ligand)とのリガンドとして知られている。病理的状況において、BCMAは、多発性骨髄腫(MM:multiple myeloma)患者の腫瘍形質細胞(neoplastic plasma cell)で発現し、多発性骨髄腫患者群の生存率は、BCMA発現が高いほど低くなる(Moreaux et al., Eur J Haematol 2009; 83: 119-129)。
多発性骨髄腫は、形質細胞の単クローン性の増殖によって発生する腫瘍性疾患であり、これまで、サリドマイド(thalidomide)、ボルテゾミブ(bortezomib)、レナリドミド(lenalidomide)のような薬剤の開発と、治療方法の発達とにより、初期治療反応率は、上昇したが、いまだに生存期間において、明らかな向上性を示すことができない実情である。最近、多発性骨髄腫の治療剤として、CD38とCS-1/SLAMF7とを標的とするモノクローン抗体がFDAに承認を受けたが、再発性/難治性多発性骨髄腫患者(relapsed/refractory MM patients)を含んだ一部群においては、効果が微々たるものであり、特に、CD38がリンパ球を含む免疫細胞だけではなく、赤血球の表面においても一部発現され、CD38に対する抗体処理時、各種輸血前検査において、偽陽性を示す場合が報告されている。従って、既存薬物対比で副作用が少なく、効能が増大された多発性治療剤の開発が必要である実情である。
正常細胞での制限的な発現と、病理的状況での特異的発現との様相を示すBCMAは、多発性骨髄腫治療剤の主要ターゲット候補物質のうち一つに考慮されている。従って、BCMAを特異的に認識し、その機能を抑制または調節することができる抗体を開発する必要性がある。
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
実施例1.抗BCMA抗体の準備
1.抗原の製造
抗BCMA抗体の製造のために、抗原を次のように製造した。ヒトBCMA(NP_001183.2、配列番号1)のアミノ酸配列において、N末端から、5ないし54番目の残基、1ないし51番目の残基、1ないし54番目の残基、及び4ないし48番目の残基を含む抗原をそれぞれ使用した。
具体的には、ヒトBCMA 5ないし54番目の残基(Genscript(登録商標)、Z02731)を含む抗原(「ヒトBCMA(5-54)」)、ヒトBCMA1-51(自体作製、CHO細胞で発現させる)をヒトIgG1のFc領域に融合させた抗原(「ヒトBCMA-Fc(1-51))、C末端に、Fc領域及びHisタグが融合されたヒトBCMA1-51抗原(10620-H03H、Sino Biological Inc.)(「ヒトBCMA-Fc/His(1-51)」)、及びヒトBCMA4-48(自体作製、HEK293細胞で発現させる)をFc領域に融合させた抗原(「ヒトBCMA-Fc(4-48)」)を準備した。
ヒトBCMA-Fc(4-48)は、下記のように製造した。ヒトBCMA 4ないし48番目の残基を暗号化するポリヌクレオチドを、CMVプローモーターを含む動物細胞発現用ベクターであるpAB1-Fcにクローニングした。クローニングされたベクターを、HEK293E細胞に形質転換させ、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを使用し、ヒトBCMA-Fc(4-48)を精製した。ヒトBCMA-Fc(1-51)も、同じ方法で製造した。
また、種間交差反応性を確認するために、ヒトIgG1のFc領域が融合されたサル(rhesus)BCMA(1-53)(90103-C02H、Sino Biological Inc.)、マウスBCMA(1-49)(50076-M01H、Sino Biological Inc.)及びラットBCMA(1-49)(80156-R01H、Sino Biological Inc.)を使用した。サルBCMA(1-53)、マウスBCMA及びラットBCMAのアミノ酸配列を下記表1に記載した。
【表1】
2.ライブラリーファージ(library phage)準備及びファージディスプレイパンニング(panning)
多様な抗原に対して結合可能性を有するヒト由来ScFv(single-chain variable fragment)ファージライブラリー細胞(Mol. Cells OT, 225-235, February 28, 2009)を準備した。準備されたファージライブラリーに、ヘルパーファージ(helper phage)を感染させた後、ファージパッキングを誘導した。その後、培養液を、4℃で4,500rpmで15分間遠心分離した後、上澄み液に、4%(w/v)PEG 6000(Fluka、81253)及び3% NaCl(Sigma、S7653)を添加して十分に溶かした後、氷で1時間インキュベーションした。それを、再び4℃で8,000rpmで20分間遠心分離した後、ペレットをPBSに懸濁した後、さらに4℃で12,000rpmで10分間遠心分離し、ライブラリーファージを含む上澄み液を得た。得られたライブラリーファージは、使用時まで4℃で保管した。
ヒトBCMA、ヒトBCMA及びサルBCMAに交差反応性がある抗体をスクリーニングするために、次のような方法で、総3回パンニングを行った。免疫試験管(Immunotube、maxisorp 444202)に、5μgの実施例1.1で準備された抗原を加え、4℃で16時間インキュベーションし、試験管表面にタンパク質をコーティングした。上澄み液を除去し、非特異的結合を遮断するために、BSA(bovine serum albumin)を加えてブロッキングした。
実施例1.2で準備された10
12CFUのファージライブラリーに、1.5%(w/v)のBSAを混合し、抗原タンパク質がコーティングされた免疫試験管に加えた後、37℃で1時間反応させ、BCMA特異的なファージを抗原に結合させた。続いて、PBS-T(phosphate buffered saline;0.05% Tween 20)溶液で多数回洗浄後、100mMトリエチルアミン溶液を使用し、BCMAに結合したファージを回収した。回収されたファージを、1M Tris緩衝液(pH7.4)で中和させた後、K12 ER2738大腸菌に感染させ、さらにファージを回収する過程を4回反復し、ファージをパンニングした。パンニングラウンドが進められるほど、PBS-Tを利用した洗浄回収を増加させ、抗原特異的ファージを増幅及び濃縮した。
3.単一クローンファージ抗体選別(single clone screening)
ファージプール(phage pool)からBCMAに特異的に結合する単一クローン抗体を選別するために、単一クローンファージ抗体選別過程を遂行した。
具体的には、実施例1.2で得たファージプールを順次希釈し、LB-テトラサイクリン/カベニシリンを含む固体培地で培養し、単一コロニーを確保した。各コロニーを、96 deepウェルプレトで培養し、OD600が0.5ないし0.7になるように培養した。前記培養液に、20 MOIヘルパーファージを加え、37℃で1時間反応させた。その後、培養液にカナマイシンを加え、30℃で一晩培養した。翌日、培養液を遠心分離し、上澄み液を取った後、それを利用し、BCMA特異的ファージを選別するためのELISAを遂行した。各ウェル当たり100ngの組み換えBCMAをELISAプレートにコーティングし、非特異的結合を防止するために、3% BSAでコーティングした後、プレートをPBSで洗浄した。準備された単一クローンファージを各ウェルに加えた後、37℃で1時間インキュベーションし、プレートをPBS-Tで3回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が接合された抗HA(hemagglutinin)抗体とTMB(tetramethylbenzidine、Sigma、T0440)を使用してELISAを遂行した。450nmでの吸光度が0.5以上であり、抗HAHRP単独である対照群の吸光度と比べ、5倍以上の吸光度が増大されたクローンを選別した。ヒトBCMAに特異的に結合する抗体クローン11種(B58、5A6、5D5、5B5、2C6、2F8、4H9、1H、2G、5G及び5C3)を選別した。
選別された抗体を暗号化する核酸配列から、抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号5ないし15)、及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号16ないし26)を分析し、Kabat定義により、相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)を決定した。決定された重鎖及び軽鎖のCDRアミノ酸配列(N→C)をそれぞれ表2及び表3に示した。
【表2】
【表3】
重鎖可変領域を暗号化する核酸配列、及び軽鎖可変領域を暗号化する核酸配列は、下記表4に示した。
【表4】
4.選別された抗BCMAPhageから抗BCMA IgG抗体の生産
実施例1.3で選別された抗体を暗号化する核酸配列を有するポリヌクレオチドを合成した。準備されたポリヌクレオチドを、動物細胞培養用ベクター(重鎖発現ベクター:pAB1-HC、軽鎖発現ベクター:pAB1-LC)にクローニングした。前記11種の抗体クローン(B58、5A6、5D5、5B5、2C6、2F8、4H9、1H、2G、5G及び5C3)に対し、それぞれ重鎖及び軽鎖を暗号化するポリヌクレオチドを含む総22個のベクターを製造した。準備されたベクターは、IgG1タイプ配列を含む。
CHO-S細胞をCD-CHO(Gibco、10743)培地で培養し、準備されたベクターは、ポリエチレンイミン(PEI)を使用し、CHO-S細胞に導入した。形質導入されたCHO-S細胞を、CD-CHO培地で、8% CO2、37℃及び110rpmの条件で約7日間培養した。
平衡化緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5、100mM NaCl)で平衡化されたMabSelect SuReカラム(GE Healthcare、5ml)に、準備されたCHO-S細胞培養液を通過させ、発現された抗体をカラムに結合させた。該抗体を、50mM Na-クエン酸塩(pH3.4)及び100mM NaClの溶液で溶出させた後、1M Tris-HCl(pH9.0)で中和させ、最終pHが7.2になるようにした。その後、緩衝液をPBS(pH7.4)で交換し、使用時まで、抗BCMA IgG抗体であるB58、5A6、5D5、5B5、2C6、2F8、4H9、1H、2G、5G及び5C3を4℃で保管した。
5.5A6及び5D5の突然変異の製造
選別された5A6抗体及び5D5抗体の生産性を改善させるために、表4の核酸配列を利用し、抗体の軽鎖CDRにおいて、1個あるいは2個のアミノ酸残基を突然変異させた突然変異抗体を製造した。
5A6突然変異抗体の軽鎖可変領域(配列番号107ないし114)、及び5D5突然変異抗体の軽鎖可変領域(配列番号115ないし119)において、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3のアミノ酸配列を、それぞれ表5及び表6に示した。表5及び6において、下線及び太字で表示されたアミノ酸残基が突然変異された部分である(WT:野生型、LM:軽鎖突然変異)。
【表5】
【表6】
実施例2.抗BCMA IgG抗体の動力学的分析
1.抗BCMA IgG抗体のBCMAに対する結合力の確認
(1)組み換えBCMAに対する結合力の確認
実施例1.4で分離された抗BCMA IgG抗体の組み換えBCMAタンパク質に対する特異的結合力を、ELISA方法で分析した。
抗原としては、組み換えヒトBCMAまたはサルBCMAを使用し、二次抗体として、HRP接合されたFab多重クローナル抗体試薬(Pierce、31414)を使用し、実施例1.3に記載されているようにELISAを遂行した。抗体の濃度による450nmにおける吸光度を、
図1A及び
図1Bに示した。
図1Aは、1H抗体、2G抗体及び5G抗体の、ヒトBCMAまたはサルBCMAに対する結合力を示したグラフでであり、
図1Bは、B58抗体、2C6抗体、5C3抗体、5B5抗体、5A6抗体、5D5抗体、4H9抗体及び2F8抗体の、ヒトBCMAに対する結合力を示したグラフである。
図1Aから分かるように、1H抗体、2G抗体及び5G抗体は、ヒトBCMA及びサルBCMAに対し、濃度依存的に結合した。ヒトBCMAに対する結合力は、2G抗体、1H抗体及び5G抗体の順序で高く、サルBCMAに対する結合力は、1H抗体が最も好ましく、2G抗体と5G抗体は、同等な水準であった。
図1Bから分かるように、8種(B58、2C6、5C3、5B5、5A6、5D5、4H9及び2F8)の抗BCMA抗体が、いずれもヒトBCMAに対し、濃度依存的に結合するということを確認した。
(2)細胞表面のBCMAに対する結合力の確認
選別された抗BCMA IgG抗体が細胞表面に発現されたBCMAに結合する程度を、FACSシステムを介して分析した。
BCMAが発現されると知られている多発性骨髄腫癌細胞であるH929(ATCC、CRL-9068
TM)及びOPM-2細胞株(DSMZ、ACC50)を準備し、ヒトBCMAが過発現されているCHOK1-hBCMA細胞株(ABIBio製)を準備した。比較群として、BCMA発現をしないCHOK1(ATCC、CRL-9618)及びRaji(B-lymphocyte cancer cell line)(ATCC、CCL-86TM)細胞株を使用した。
前記準備された細胞に、実施例1.4で精製された7種(B58、5A6、5D5、5B5、1H、2G及び5G)のIgG抗体10μg/mlを加え、4℃で1時間インキュベーションした後、PBS緩衝液で2回洗浄した。抗ヒトFcFITCを1:400に希釈し、さらに4℃で1時間インキュベーションした後、PBS緩衝液で洗浄する過程を反復した。FACSCalibur機器を利用し、細胞の蛍光強度を測定し、
図2A及び
図2Bに示した(MFI:平均蛍光強度)。
図2A及び
図2Bから分かるように、選別された抗体は、いずれも細胞表面に発現されたBCMAに特異的に結合し、BCMAが発現されない細胞には、結合しないということを確認した。従って、選別された抗体は、組み換えBCMAタンパク質だけではなく、細胞表面に発現されたBCMAの細胞外ドメインに対して特異的な結合能があり、その抗BCMA抗体を利用し、BCMA発現癌細胞株を選択的にターゲッティングすることができるということを確認した。
2.抗BCMA IgG抗体の、ヒトBCMA及びサルBCMAに対する親和度分析
選別された11種の抗BCMA抗体の、ヒトBCMA及びサルBCMAに対する親和度を分析した。
バイオセンサトレイケースに、96ウェルブラックマイクロプレートを装着し、8個ウェルそれぞれに、1XKB 200μlを入れた後、Ni-NTAバイオセンサ(Fortebio)8個を差し入れ、水和反応(hydration)を10分間行った。抗原固定のために、5μg/mlの組み換えヒトBCMA-His(Sino Biological Inc.)1XKBを使用して希釈した。閾値0.5ないし1.0nmに固定して実験し、Octet Data Acquisition 9.0ソフトウェアを活性化させ、Octetプログラムテンプレートを作成した。最初段階は、基線(baseline)1、2番目段階は、積載(loading)段階であり、閾値を0.5ないし1.0nmに固定した。3番目段階は、基線(baseline)2であり、5分間結合(association)過程及び20分間解離(dissociation)過程を遂行した。プレート温度は、30℃に固定し、Octetプログラムテンプレートに合わせ、新たな96ウェルブラックマイクロプレートに準備された緩衝液を、順序に合うように入れた。基線(baseline)1として使用される1XKB 200μlに、積載される抗原として、組み換えヒトBCMA-Fc/Hisを5μg/mlに希釈し、200μl入れた。基線(baseline)2として使用される1XKBを200μl入れた後、抗原と反応させる抗体を200μlずつ分注し、機器を作動させた。実験終了後、Octet Analysis 9.0ソフトウェアで、各抗体に対する吸着率定数(kon:association constant)、分離率定数(kdis:dissociation constant及び平衡分離定数(KD:equilibrium dissociation constant)を分析して算出し、その内容は表7に示した。
【表7】
表7から分かるように、B58抗体及び5A6抗体の親和度は、約10
-11のKD値を有し、2C6抗体、5B5抗体及び5D5抗体が、約10
-10のKD値を有し、選別された抗体が、ヒトBCMAタンパク質に対し、高い結合力を有するということを確認した。それらのうち、細胞表面のヒトBCMAに対する結合力が微々たる2C6抗体と、サルBCMAに対する親和力がないB58抗体とを除いた3種の抗体(5A6、5B5、5D5)を利用し、サルBCMAに対する親和度を追加して確認して、その結果を表8に示した。
【表8】
表8から分かるように、5A6抗体、5B5及び5D5抗体が、ヒトBCMAだけではなく、サルBCMAに対しても、高い親和力を有するというということを確認した。
3.抗BCMA抗体の種間交差反応性分析
選別された抗体において、B58抗体、5A6抗体、5D5抗体及び5B5抗体の種間交差結合いかんをELISA方法で分析した。
実施例1.1で準備されたヒト、サル、マウス及びラットのBCMA抗原100ngをプレート底にコーティングした後、3% BSAでコーティングし、非特異的な結合を遮断した。一次抗体として選別された抗BCMA IgG抗体、及び二次抗体として抗ヒトFab HRP(1:20,000希釈)を使用し、実施例1.3に記載されているように、ELISA分析法を遂行した。
マイクロプレートリーダで測定された450nmでの吸光度を
図3に示し、50%最大有効濃度(EC
50:half maximal effective concentration)(nM)を表9に示した。
【表9】
図3及び表9から分かるように、B58抗体は、ヒトBCMAにだけ結合力を有し、5A6抗体は、ヒトBCMA及びサルBCMAに結合力を有している。5D5抗体と5B5抗体は、分析され全種のBCMA(ヒト、サル、マウス及びラット)に結合力を有するということを確認した。
4.抗BCMA IgGのBCMAの特異度確認
BCMAは、B細胞の成熟化過程に関与すると知られており、該成熟化過程に、TACI受容体及びBAFF受容体が関与すると知られている。選別された抗体が、BCMA関連タンパク質に結合される否かということを、ELISA技法を介して分析した。
具体的には、ヒトBCMA-Fc(R&D Systems、193-BC-050)、TACI-Fc(R&D Systems、174-TC)及びBAFF-受容体(R&D Systems、1162-BR)を、PBSバッファを利用して希釈した後、ELISAプレートに、ウェル当たり100ngずつコーティングした。一次抗体として、選別された抗BCMA IgG抗体を使用し、二次抗体として、抗ヒトFab HRP(1:20,000希釈)を使用し、実施例1.4(1)に記載されているように、ELISA分析法を遂行した。比較群として、抗BCMAモノクローン抗体J6MO(GSK)を使用した。マイクロプレートリーダで測定された450nmでの吸光度を
図4に示した。
図4から分かるように、B58抗体、5A6抗体、5D5抗体及び5B5抗体は、TACI受容体及びBAFF受容体には結合しないが、BCMAにだけ結合した。従って、選別された4種の抗BCMA抗体であるB58抗体、5A6抗体、5D5抗体及び5B5抗体は、BCMAに特異的に結合するということを確認した。
5.抗BCMA抗体の抗体別エピトープの相対比較
選別された4種の抗体(IgG)を使用し、BCMAに結合する部位を相対比較するために、選別された抗体間のヒトBCMAに対する競争的結合能を分析した。
実施例2.2に記載されているように、Octet分析システムを利用し、抗体間の結合能を分析した。Octetプログラムテンプレートにおける最初段階は、基線(baseline)1であり、2番目段階は、積載とし、閾値を0.3nmに固定した。3番目段階は、基線(baseline)とした。4番目及び5番目の段階は、それぞれの抗体を反応させ、時間は10分に設定した。Octetプログラムテンプレートに合わせ、新たな96ウェルブラックマイクロプレートに準備された緩衝液を、順序に合うように入れた。基線(baseline)1として使用される1XKBを、200μl入れた。積載する抗原である組み換えヒトBCMA(Fcタグ及びHisタグを融合)を5μg/mlに希釈し、200μlずつ入れた。基線(baseline)2として使用される1XKB 200μlを入れた。抗原と最初に結合する抗体を200μlずつ入れた。2番目抗体を200μlずつ入れた。実験プレートの温度は、30℃に固定した。試料をいずれも入れた後、機器を作動させた。実験終了後、Octet analysis 9.0ソフトウェアで、最初抗体と2番目抗体との競争を分析し、その結果を、
図5Aないし
図5Dに示した(Ref.Ab:J6MO抗体)。
図5Aないし
図5Dから分かるように、B58抗体と5A6抗体は、抗原に対する結合部位、すなわち、エピトープが異なっており、5B5抗体と5D5抗体は、エピトープが同一であると確認された。また、5B5抗体と5D5抗体とのエピトープは、B58のエピトープと部分的に同一であると確認された。従って、選別された4種の抗体は、抗原であるBCMAに結合する部位が多様であるということを確認した。
実施例3.抗BCMA IgG抗体の癌細胞に対する効果
1.抗BCMA IgG抗体の中和効果
選別された抗BCMA抗体が、BCMAとリガンド(APRIL及びBAFF)との結合を妨害することができるか否かということを、ELISA基盤溶液競争試験で確認した。
具体的には、ヒトBCMA-Fc(R&D Systems、193-BC-050)を、PBSバッファを利用して希釈した後、ELISAプレートに、ウェル当たり100ngずつコーティングした。コーティング後、プレートを空にし、1% BSAが含まれたPBSTを、各ウェル当たり100μlずつ加え、37℃で2時間インキュベーションした。50μg/mlないし0.00028μg/mlの濃度に希釈された抗体と、10ng/mlのAPRILタンパク質(R&D、5860-AP-010/CF)、または200ng/mlのBAFF(R&D、2149-BF-010/CF)とを混合した。陰性対照群として、IgG1抗体を使用し、比較群として、J6MO抗体を使用した。
二次抗体として、抗HA-HRP(Roche、12013819001)または抗His-HRP(Roche、11965085001)を使用し、実施例1.4(1)に記載されているように、ELISA分析法を遂行した。比較群として、抗BCMAモノクローン抗体J6MO(GSK)を使用した。450nmでの吸光度を測定し、その結果を
図6A及び
図6Bに示した。
図6A及び
図6Bから分かるように、B58抗体は、BCMAとBAFFとの結合を効果的に阻害し、BCMAとAPRILとの結合も妨害するということで確認した。5A6抗体、5B5抗体及び5D5抗体は、BCMAに対するAPRILの結合能を阻害することができないが、BAFFの結合能は、一部阻害すると確認された。従って、選別された抗体は、ターゲット抗原BCMAに対する結合部位が異なっており、BCMAリガンド結合能阻害程度に違いがあるが、リガンド結合を調節して抑制し、癌細胞成長を効果的に抑制する可能性があるということが確認された。
2.抗BCMA IgG抗体の抗体依存性細胞毒性評価(ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)
ADCC bioassay core kit(Promega、G0718)を使用し、選別された抗体の抗体依存性細胞毒性を測定した。
具体的には、ヒトBCMAを多く発現しているH929(ATCC、CRL-9068
TM)と、少なく発現するRaji(ATCC、CCL-86
TM)とを標的細胞として使用した。抗BCMA抗体として、B58抗体、5A6抗体、5D5抗体及び5B5抗体を準備した。
また、抗体依存性細胞毒性に関与するFc部分に機能阻害を誘発し、陰性対照群として使用するために、5A6Fc部分の265番のアスパラギン酸のアミノ酸残基をアラニンで置換(「D265A」)し、297番のアスパラギン残基をアラニンで置換(「N297A」)した5A6 DANA突然変異抗体を準備した(Cancer Cell, vol.19, issue 1, pp. 101-113)。
ADCC分析緩衝液は、RPMI/1640(Promega、G708A)及び4%低IgG血清(Promega、AX20A)を添加して製造した。ADCC分析緩衝液に再懸濁したH929細胞株とRaji細胞株とを、96ウェルプレート(白、平底、Corning、CLS3917)に、ウェル当たり5,000個の細胞(25μl)で添加した。抗BCMA抗体は、ADCC分析緩衝液で、133.3nM(20μg/ml)から1/8ずつ順次希釈して準備した。準備された抗体を、各ウェル当たり25μlずつ添加した。3.6mlのADCC分析緩衝液を15mlチューブに入れた後、液化窒素タンクから、ADCC Bioassay Effector cell(Promega、G701A)を取り出し、37℃槽で迅速に溶かした後、ADCC分析緩衝液が入れられた15mlチューブに流し込んだ。Effector cellを十分に混ぜた後、25μlずつチューブに慎重に加え、37℃、5% CO
2の条件で、細胞を約6時間培養した。その間、Bio-Glo
TMルシフェラーゼ分析緩衝液(Promega、G720A)を常温で溶かした後、Bio-Glo
TMルシフェラーゼ分析基質(Promega、G719A)に入れて十分に混ぜ、Bio-Glo
TMルシフェラーゼ分析試薬を製造した。細胞培養後、96ウェルプレートを、常温で約10分間放置した後、各ウェルに、25μlのBio-Glo
TMルシフェラーゼ分析試薬を慎重に加えた。常温で5分間放置した後、PHERAstar FS BMG LABTECH機器で発光強度を測定した。結果値は、GraphPad Prismを利用し、非線形回帰分析法(curve fit)で分析し、その結果を
図7に示した。
図7から分かるように、BCMAの発現が高いH929細胞において、選別された抗BCMA抗体が、濃度依存的に抗体依存性細胞毒性を誘発した(B58>5A6=5D5>5B5)。Fc領域の機能阻害を誘発した5A6 DANA突然変異抗体の場合、ADCCが誘発されず、ADCCは、抗体のFc領域によって引き起こされるということを確認した。一方、BCMA発現が観察されていないRajiについては、ADCCが誘発されなていない。従って、選別されたB58抗体、5A6抗体、5D5抗体及び5B5抗体は、BCMAが発現された癌細胞にだけ特異的に結合し、Fc機能による抗体細胞毒性を誘発することができるということを確認した。
3.抗BCMA IgG抗体の癌細胞株移植マウスモデルでの腫瘍成長抑制評価
(1)多発性骨髄腫癌細胞株H929-移植マウスモデルでの腫瘍成長抑制評価
6週齢雄CB17-SCIDマウスを、7日間馴化期間を通過させた後、動物実験に使用した。細胞移植前、マウス細胞移植部位の除毛を進め、耳には、個体識別のための耳タグを付着させた。
細胞移植日、条件に合うように培養された多発性骨髄腫癌細胞株H929を収集し、PBSで、ベックマン・コールター(Beckman coulter)で細胞数/生存度を測定した。最終的に、100μlの、PBS当たり投与細胞数(1x10
7細胞/匹)になるように準備した。細胞懸濁液と同一体積でマトリゲル(Matrigel)(BD)を加え、ピペットで混合した。マウスに対して、イソフルラン吸入麻酔を施した後、除毛されている右側背中側皮下に、200μlの細胞懸濁液を投与した。マウスをケージに入れ、麻酔から覚めた後、活動に問題がないか否かということを最終確認した。腫瘍サイズは、ノギス(callipers)を使用し、腫瘍の長軸と短軸とを測定した、下記数式1を利用し、最終腫瘍サイズを計算した。
(数1)
腫瘍サイズ(mm
3)=(0.5)x(長軸)x(短軸)
2
薬物投与は、腫瘍サイズが平均269mm
3であるときから投与を始めた。投与薬物は、対照群(PBS)及び抗BCMA IgG抗体4種(B58、5A6、5D5及び5B5)の5グループ(各n=7)で進めた。薬物は、2mg/ml(20g基準:100μl/head)で準備した。投与用量は、10mg/kgであり、週2回ずつ総5回、尾に静脈投与した。体重は、動物用体重計を使用して測定した。体重及び腫瘍サイズは、週2回測定した。薬物投与後の21日目、体重及び腫瘍サイズの測定後、安楽死させた後、各個体別腫瘍を摘出し、重さを測定した。
腫瘍注射後、経時的(時間:日)な腫瘍サイズ(mm
3)、抗体別腫瘍サイズ(mm
3)、及び抗体別腫瘍の重さ(g)を示したグラフを、
図8Aないし
図8Cに示した(矢印:薬物投与時点)。各抗体の対照群対比の体積減少率(%)及び重さ減少率(%)を表10に示した(p<0.001)。
【表10】
図8Aないし
図8C、及び表10から分かるように、H929移植マウスモデルにおいて、対照群(PBS)に比べ、抗BCMA IgG抗体4種(B58、5A6、5D5及び5B5)を投与した群において、腫瘍成長抑制効果が示された。各群の腫瘍サイズを最終分析した結果、対照群の腫瘍サイズ対比での、本願抗体処理群の腫瘍が、約51.7%ないし約67.4%減少した。一元配置分散分析結果、対照群(PBS)対比の、抗BCMA IgG抗体4種における統計学的有意性が示された(p<0.001)。従って、多発性骨髄腫に選別された抗体を処理する場合、有意的に、腫瘍成長を抑制することができるということを証明した。また、5D5と5A6との場合、抗体依存性細胞毒性評価ないしBCMA関連リガンド結合妨害結果において、B58抗体対比で、低活性を示したが、生体内(in vivo)活性評価において、B58と同等以上の効果を示した。それは、前記2つの抗体が、腫瘍成長阻害に有利なエピトープを認知するか、あるいは抗体自体の物性にすぐれているということを意味する。
(2)多発性骨髄腫癌細胞株OPM-2-移植マウスモデルにおける腫瘍成長抑制評価
実施例3.3(1)に記載されているように、マウスに、多発性骨髄腫癌細胞株OPM2を移植し、抗体投与による腫瘍成長抑制を評価した。
薬物投与は、腫瘍サイズが平均172mm
3であるときから投与を始めた。投与薬物は、対照群(PBS)及び抗BCMA IgG抗体4種(B58、5A6及び5D5)の4グループ(各n=9)で進めた。投与用量が10mg/kgになるように、投与薬物を2mg/ml(20g基準:100μl/head)で準備した。投与用量は、10mg/kgであり、週2回ずつ総5回、尾に静脈投与した。薬物投与後の27日目、体重及び腫瘍サイズを測定して安楽死させた後、各個体から腫瘍を摘出して重さを測定した。
腫瘍注射後、経時的(時間:日)な腫瘍サイズ(mm
3)、抗体別腫瘍サイズ(mm
3)、及び抗体別腫瘍の重さ(g)を示したグラフを、
図9Aないし
図9Cに示した(矢印:薬物投与時点)。各抗体の対照群対比の腫瘍の体積減少率(%)及び重さ減少率(%)を表11に示した(p<0.001)。
【表11】
図9Aないし
図9C、及び表11から分かるように、OPM-2移植マウスモデルにおいて、対照群(PBS)に比べ、抗BCMA IgG抗体3種(B58、5A6及び5D5)を投与した群において、腫瘍成長抑制効果が示された。各群の腫瘍サイズを最終分析した結果、各群の対照群対比の腫瘍抑制程度は、それぞれB58 42.5%、5A6 35.4%、5D5 38.5%と測定され、重さ測定時、対照群対比で、それぞれB58 41.4%、5A6 35.1%、5D5 40.5%の重さ減少率を示した。一元配置分散分析結果、対照群対比の、抗BCMA IgG3種の抗腫瘍効果は、統計的に有意性が示され(p<0.001)、3種抗体間の腫瘍サイズ及び腫瘍重さの差は、統計学的に有意的な差が観察されていない。
図6及び
図7から分かるように、5D5と5A6との場合、抗体依存性細胞毒性評価ないしBCMA関連リガンド結合妨害分析結果において、B58抗体対比で低い活性を示したが、生体内(in vivo)効能評価において、B58と同等程度の効果を示した。それは、前記2つの抗体が腫瘍成長阻害に有利なエピトープを認知するか、あるいは抗体自体の物性すぐれている可能性があるということを意味する。
4.突然変異導入5A6と5D5のターゲット抗原に対する結合力確認
(1)野生型5A6,5D5と突然変異5A6,5D5との組み換えBCMAに対する結合力確認
実施例1.5に記載された内容のように、抗BCMA抗体5A6と抗BCMA抗体5D5とに突然変異を導入し、5A6からの8種突然変異抗体、及び5D5からの5種突然変異抗体を製造して精製した。それらに対して、それぞれの野生型抗体と共に、組み換えタンパク質に対する結合力を分析し、その結果を
図10A及び
図10Bに示した。
図10A及び
図10Bから分かるように、5A6からの8種突然変異抗体のうち6種の抗体(5A6 LM1、5A6 LM3、5A6 LM4、5A6 LM5、5A6 LM7及び5A6 LM8)は、野生型に比べ、結合活性が同等であるか、それよりも低くなったが、2種の抗体(5A6 LM2及び5A6 LM6)は、野生型に比べ、上昇された抗原結合力を示した。5D5の場合、5種の突然変異抗体のうち2種の抗体(5D5 LM1及び5D5 LM2)は、野生型5D5に比べ、抗原結合活性が低下したが、残り3種(5D5 LM3、5D5 LM4及び5D5 LM5)は、野生型5D5と同等な抗原結合活性を示した。各抗体の50%最大有効濃度(EC
50:half maximal effective concentration)(nM)を表12に示した。
【表12】
(2)野生型5A6、野生型5D5、及びそれらの突然変異の細胞表面BCMAに対する結合力確認
野生型抗体とその突然変異抗体との細胞表面抗原に対する結合力を比較した。
BCMAが高発現された多発性骨髄腫癌細胞H929(ATCC、CRL-9068TM)に、野生型5A6抗体、野生型5D5抗体、及びそれらの突然変異抗体を加え、抗体の細胞表面結合レベルを、FACS分析を介して測定した。細胞表面の蛍光強度を測定し、その結果を
図10C及び
図10Dに示し、各抗体の平均蛍光強度(MFI:mean fluorescence intensity)価格は表13に示した。
【表13】
図10C、
図10D及び表13から分かるように、5A6の場合、5種の突然変異抗体(5A6 LM1、5A6 LM3、5A6 LM4、5A6 LM5及び5A6 LM6)の細胞結合力は、野生型5A6抗体の細胞結合力に比べ、上昇された細胞結合力を示した。また、5D5の2種の突然変異抗体(5D5 LM4及び5D5 LM5)の細胞結合力は、野生型5D5抗体の細胞結合力に比べ、確実に上昇した。従って、野生型抗体のCDRアミノ酸の一部変更により、組み換えBCMA及び細胞表面BCMAに対する結合力が一部改善されているということを確認した。
(3)5A6 LM6と5D5 LM4とのヒトBCMAに対する親和度分析
単量体(monomer)ヒトBCMA抗原に結合する5A6 LM6及び5D5 LM4と、それぞれの野生型抗体との標的抗原結合親和度を分析した。
具体的には、1x HPS-EP緩衝液(GE Healthcare、BR-1006-69)を使用して準備された抗体を希釈した。標的抗原結合親和度分析は、Biacore T200(GE Healthcare)を使用した。接触時間60秒、安定化時間30秒、及び30μl/分の流速で、タンパク質Aチップに流し、キャプチャレベルが128RU(response unit)に逹するようにし、抗体がキャプチャされたタンパク質Aチップを準備した。
抗原は、1x HPS-EP緩衝液を使用し、100nMから6.25nMまで、2倍ずつ順次に希釈し、総6個の試料を準備し、陰性対照群(blank)として、1x HPS-EP緩衝液を利用した。
抗体がキャプチャされたタンパク質Aチップに準備された抗原を、30μl/分の流速で、結合時間60秒及び解離時間180秒で流した。再生(regeneration)は、10mMグリシン-HCL、pH1.5緩衝液(GE Healthcare、BR-1003-54)を使用し、流速30μl/分、接触時間30秒で行った。
反応時間(秒)による反応(RU:response unit)を示したグラフを
図11に示し、そこから算出された抗体の標的抗原結合親和度を表14に示した。
【表14】
図11及び表14から分かるように、5A6 LM6は、野生型5A6に比べ、BCMAに結合した後で解離される速度(dissociation rate)が低くなった。5D5 LM4は、野生型5A6に比べ、BCMAに結合する速度(association rate)が上昇した。従って、5A6 LM6抗体と5D5 LM4抗体は、それぞれの野生型抗体に比べ、改善された標的抗原親和度を有するということを確認した。
5.5A6 LM6と5D5 LM4との抗体依存性細胞毒性評価(ADCC)
5A6 LM6と5D5 LM4との抗体依存性細胞毒性評価を、それぞれの野生型抗体と比較測定するために、実施例3.2に記載された方法で測定し、測定された抗体依存性細胞毒性(ADCC)結果を
図12に示した。
図12から分かるように、5A6 LM6抗体と5D5 LM4抗体は、BCMA高発現細胞株であるH929に対し、野生型抗体より上昇された抗体依存性細胞毒性程度を示した(
図12左側)。一方、5A6WT抗体及び5D5WT抗体だけではなく、それらの突然変異抗体も、BCMA未発現Jurkat細胞株については、抗体依存性細胞毒性を引き起こすことができなかった(
図12右側)。
また、野生型抗体からFc領域の機能阻害を誘発した突然変異抗体である5A6NA突然変異及び5D5NA突然変異の場合、BCMA高発現H929細胞株に対し、抗体依存性細胞毒性が引き起こされていない(
図12左側)。
従って、5A6 LM6抗体及び5D5 LM4抗体は、それぞれの野生型抗体に比べ、上昇されたBCMA依存的な細胞毒性誘発能を示しながら、それは、実施例3.4で証明された抗原結合改善による上昇と一致する結果である。それにより、突然変異5A6 LM6抗体と5D5 LM4抗体は、それぞれの野生型抗体に比べ、効果的な癌細胞成長阻害能を引き起こすことができるということを示す。
6.5A6 LM6抗体または5D5 LM4の癌細胞株移植マウスモデルにおける腫瘍成長抑制評価
重症免疫複合免疫欠乏症(SCID:severe combined immunodeficiency)マウスモデルに、BCMAを高発現するヒト骨髄腫NIH-H929細胞株を、マウスのわき腹に、1x10
7細胞/headずつ移植し、ヒト癌移植腫瘍マウスを作製した。移植後、腫瘍サイズが平均180mm
3に逹したとき、群分離を実施した(初日)。
突然変異が導入された5A6 LM6抗体及び5D5 LM4抗体と、それぞれの野生型抗体5A6WT,5D5WT、陰性対照群であるヒトIgG1(InVivo Plus human IgG1 isotype control、BioXCell)の総5種抗体を、週2回、10mg/kgずつ、総4回1mLシリンジを利用し、尾静脈に投与した(初日、第4日、第7日及び第11日)。マウスに移植された腫瘍サイズと、体重は、初投与後、週2回、デジタルノギスと動物用秤とを利用して測定した(初日、第4日、第7日、第11日、第18日、第22日及び第25日)。
実験物質投与終了2週間後(第25日)、マウスを、CO
2ガスを利用して犠牲にし、腫瘍を摘出した後、摘出された腫瘍の体積及び重さを測定した。経時的な腫瘍体積を、
図13に示し、陰性対照群対比の投与群の腫瘍体積減少率(%)及び腫瘍重さ減少率(%)を表15に示した。
【表15】
図13から分かるように、抗BCMA抗体4種(5A6WT、5A6 LM6、5D5WT及び5D5 LM4)は、陰性対照群であるヒトIgG1抗体対比で、腫瘍成長を顕著に低下させた。また、表15から分かるように、投与された抗BCMA抗体4種は、陰性対照群対比で、癌細胞成長阻害率(TGI%:% of tumor growth inhibition)について、統計学的有意性を示した(一元配置分散分析、P値<0.05)。ただし、野生型抗体とその突然変異抗体との間(5A6WT対5A6 LM6、及び5D5WT対5D5 LM4)には、腫瘍サイズ減少が同等な程度であると分析され、群間に統計学的有意性は、なかった。
それにより、突然変異5A6 LM6抗体と5D5 LM4抗体は、それぞれの野生型抗体に比べ、上昇された試験管内(in vitro)活性(標的抗原結合能及び抗体依存性細胞毒性誘発)を示したが、生体内(in vivo)活性評価については、それぞれの野生型抗体と同一レベルの癌細胞成長阻害能があるということを確認した。