(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124317
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】水性インク、インク吐出装置、画像記録装置、および印刷方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240905BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240905BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240905BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/165 211
B41J2/165 101
B41M5/00 120
B41M5/00 112
B41M5/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186300
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2023031593
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】栗木 寛文
(72)【発明者】
【氏名】永野 太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA17
2C056EC13
2C056EC14
2C056EC22
2C056EC29
2C056EC57
2C056FA04
2C056FB02
2C056FC01
2C056HA10
2C056HA46
2C056JA13
2C056KB16
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB58
4J039AD09
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC13
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE23
4J039CA06
4J039EA41
4J039EA42
4J039EA47
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクの吐出性およびラギットネス性が確保されるとともに、乾燥性およびデキャップ性が確保される水性インクを提供する。
【解決手段】水性インクは、水と、25℃において蒸気圧が0.07Pa以上となる溶剤群Aと、増粘剤と、バインダーポリマーと、を含む。溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が31.0~55.0重量%である。増粘剤の水性インク全量に対する重量%が13.0重量%以下である。水性インクの25℃における粘度が10~14mPa・sである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
25℃において蒸気圧が0.07Pa以上となる溶剤群Aと、
増粘剤と、
バインダーポリマーと、を含み、
上記溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が31.0~55.0重量%であり、
上記増粘剤の水性インク全量に対する重量%が13.0重量%以下であり、
25℃における粘度が10~14mPa・sである水性インク。
【請求項2】
界面活性剤を更に含み、
上記溶剤群Aは、異なる2種の溶剤を含む請求項1に記載の水性インク。
【請求項3】
上記増粘剤は、25℃において蒸気圧が0.07Pa未満となる溶剤群Bを含み、
上記溶剤群Bの水性インク全量に対する重量%が3.0重量%以下である請求項1に記載の水性インク。
【請求項4】
上記増粘剤は、上記バインダーポリマーが分散した高粘度バインダーポリマー分散液を含み、
上記高粘度バインダーポリマー分散液は、上記高粘度バインダーポリマー分散液において上記バインダーポリマーが38.0重量%となるように高粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたときの25℃における粘度が100mPa・s以上5000mPa・s未満となるものである請求項1に記載の水性インク。
【請求項5】
上記バインダーポリマーの水性インク全量に対する重量%が4.2重量%以下である請求項4に記載の水性インク。
【請求項6】
上記バインダーポリマーは、アクリル系のポリマーである請求項5に記載の水性インク。
【請求項7】
室温25℃、湿度65%の屋内において、上方に開放した直径60mmの容器に5gの上記水性インクを入れて100℃で4時間加熱したときの蒸発率が70%以上である請求項6に記載の水性インク。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の水性インクを吐出するノズルを有するヘッドと、
上記ノズルから吐出された上記水性インクが付着した非吸収性媒体と上記非吸収性媒体に付着した上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱する加熱器と、を備えるインク吐出装置。
【請求項9】
上記加熱器の加熱温度が60℃以上である請求項8に記載のインク吐出装置。
【請求項10】
上記ノズルは、上記水性インクを鉛直方向に吐出する請求項9に記載のインク吐出装置。
【請求項11】
上記ノズルは、上記水性インクを水平方向に吐出する請求項9に記載のインク吐出装置。
【請求項12】
上記ヘッドに当接して上記ノズルを覆うキャップと、
上記キャップ内のインクを吸引する吸引ポンプと、
コントローラと、を更に備えており、
上記コントローラは、上記ノズルから上記水性インクを吐出する画像記録処理時において、上記キャップが上記ノズルを覆った状態で上記吸引ポンプを駆動するパージ処理を定期的に実行する請求項9に記載のインク吐出装置。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載のインク吐出装置と、
非吸収性媒体を搬送方向に搬送する搬送装置と、を備える画像記録装置。
【請求項14】
請求項1から7のいずれかに記載の水性インクをノズルから吐出する第1ステップと、
上記ノズルから吐出された上記水性インクが付着した非吸収性媒体と上記非吸収性媒体に付着した上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱器によって加熱する第2ステップと、を備える印刷方法。
【請求項15】
上記第2ステップにおいて、上記加熱器が上記非吸収性媒体と上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱する温度は、60℃以上である請求項14に記載の印刷方法。
【請求項16】
上記第1ステップにおいて、上記ノズルは、上記水性インクを鉛直方向に吐出する請求項15に記載の印刷方法。
【請求項17】
上記第1ステップにおいて、上記ノズルは、上記水性インクを水平方向に吐出する請求項15に記載の印刷方法。
【請求項18】
上記ノズルから上記水性インクを吐出して非吸収性媒体に画像を記録する画像記録処理時に、キャップが上記ノズルを覆った状態で上記キャップ内のインクを吸引する吸引ポンプを駆動するパージ処理をコントローラが定期的に実行する第3ステップを更に備える請求項14に記載の印刷方法。
【請求項19】
上記第1ステップの前に、搬送装置が上記非吸収性媒体をヘッドと対向する位置へ搬送する第4ステップを更に備える請求項18に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に使用される水性インク、インク吐出装置、画像記録装置、および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に使用される水性インクとしては、特許文献1のインクジェット記録用水性インクが知られている。特許文献1のインクジェット記録用水性インクは、水、水溶性有機溶剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤などを含む。特許文献1では、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出しやすいように、インクの粘度が低粘度に調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インクジェット記録用水性インクでは、インクの吐出性に優れているが、インクの粘度が低粘度であるため、シャープな画質が得られにくい。すなわち、ラギットネス性が低い。そこで、ラギットネス性を向上させるため、上記水性インクの粘度に比べて高粘度にすることが考えられる。しかしながら、この場合、インクの吐出性が悪化するだけでなく、多くの溶剤が使用されることから、溶剤の種類や溶剤比によってはインクの乾燥性が悪化したり、反対に、ノズルに付着したインクが速く乾燥してノズルに目詰まりが生じやすくなる、いわゆるデキャップ性が悪化したりするという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、インクの吐出性およびラギットネス性が確保されるとともに、乾燥性およびデキャップ性が確保される水性インク、インク吐出装置、画像記録装置、および印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る水性インクは、水と、25℃において蒸気圧が0.07Pa以上となる溶剤群Aと、増粘剤と、バインダーポリマーと、を含む。上記溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が31.0~55.0重量%である。上記増粘剤の水性インク全量に対する重量%が13.0%以下である。粘度が10~14mPa・sである。
【0007】
溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が31.0重量%以上なので、溶剤群Aと比べて蒸発しやすい水の重量%が小さくなる。このため、ノズルに付着した水性インクが速く乾燥することが抑制されるので、水性インクが固化しにくい。したがって、固化したインクによってノズルに目詰まりが生じることが抑制される。すなわち、デキャップ性が確保される。溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が55.0重量%以下なので、溶剤群Aと比べて蒸発しやすい水の重量%が大きくなる。このため、インクが速く乾燥しやすいので、乾燥性が確保される。増粘剤によって水性インクの粘度が10mPa・s以上に調整されるので、水性インクによって形成される画像が不鮮明になりにくい。このため、ラギットネス性が確保される。増粘剤によって水性インクの粘度が14mPa・s以下に調整されるので、ノズルからインクが吐出しにくくなることが抑制される。このため、インクの吐出性が確保される。
【0008】
(2)上記水性インクは、界面活性剤を更に含んでもよい。上記溶剤群Aは、異なる2種の溶剤を含んでもよい。
【0009】
溶剤群Aは、異なる2種の溶剤を含み、疎水基を持つ溶剤の場合、疎水性の界面活性剤の溶解性を向上させることもできる。
【0010】
(3)上記増粘剤は、25℃において蒸気圧が0.07Pa未満となる溶剤群Bを含んでもよい。上記溶剤群Bの水性インク全量に対する重量%が3.0重量%以下であってもよい。
【0011】
溶剤群Aよりも蒸発しにくい溶剤群Bの重量%が小さいので、水性インクの乾燥性が向上する。
【0012】
(4)上記増粘剤は、上記バインダーポリマーが分散した高粘度バインダーポリマー分散液を含んでもよい。上記高粘度バインダーポリマー分散液は、上記高粘度バインダーポリマー分散液において上記バインダーポリマーが38.0重量%となるように高粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたときの粘度が100mPa・s以上5000mPa・s未満となるものであってもよい。
【0013】
バインダーポリマーによって形成される皮膜の耐擦性が向上する。
【0014】
(5)上記バインダーポリマーの水性インク全量に対する重量%が4.2重量%以下であってもよい。
【0015】
水性インクが乾燥したときに、ノズル面やノズル内で皮膜化することが抑制されるので、水性インクの吐出不良が抑制される。
【0016】
(6)上記バインダーポリマーは、アクリル系のポリマーであってもよい。
【0017】
バインダーポリマーによって形成される皮膜の耐擦性および安定性が向上する。
【0018】
(7)室温25℃、湿度65%の屋内において、上方に開放した直径60mmの容器に5gの上記水性インクを入れて100℃で4時間加熱したときの蒸発率が70%以上であってもよい。
【0019】
水性インクの乾燥性が高い。
【0020】
(8)本発明に係るインク吐出装置は、水性インクを吐出するノズルを有するヘッドと、上記ノズルから吐出された上記水性インクが付着した非吸収性媒体と上記非吸収性媒体に付着した上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱する加熱器と、を備える。
【0021】
非吸収性媒体に付着した水性インクが乾燥しやすくなる。
【0022】
(9)上記加熱器の加熱温度が60℃以上であってもよい。
【0023】
非吸収性媒体に付着した水性インクがより乾燥しやすくなる。
【0024】
(10)上記ノズルは、上記水性インクを鉛直方向に吐出してもよい。
【0025】
水性インクのラギットネス性を確保するため、水性インクの粘度を10mPa・s以上と高くしているので、ヘッドと非吸収性媒体との間の距離を広くして、ノズルから水性インクを鉛直方向に吐出しても、水性インクが非吸収性媒体において広がりづらいため、水性インクによって形成される画像が不鮮明になりにくい。このため、ヘッドと非吸収性媒体との間の距離を広くすることにより、印刷対象物のサイズ制約を緩和しやすい。
【0026】
(11)上記ノズルは、上記水性インクを水平方向に吐出してもよい。
【0027】
水性インクのラギットネス性を確保するため、水性インクの粘度を高くしているので、水性インクを水平方向に吐出しても、非吸収性媒体に付着した水性インクの液だれが生じにくい。
【0028】
(12)上記インク吐出装置は、上記ヘッドに当接して上記ノズルを覆うキャップと、上記キャップ内のインクを吸引する吸引ポンプと、コントローラと、を更に備えてもよい。
上記コントローラは、上記ノズルから上記水性インクを吐出する画像記録処理時において、上記キャップが上記ノズルを覆った状態で上記吸引ポンプを駆動するパージ処理を定期的に実行してもよい。
【0029】
ノズルが異物によって目詰まりを起こすことがより確実に防止される。
【0030】
(13)本発明に係る画像記録装置は、上記インク吐出装置と、非吸収性媒体を搬送方向に搬送する搬送装置と、を備える。
【0031】
非吸収性媒体に画像が好適に記録される。
【0032】
(14)本発明に係る印刷方法は、上記水性インクをノズルから吐出する第1ステップと、上記ノズルから吐出された上記水性インクが付着した非吸収性媒体と上記非吸収性媒体に付着した上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱器によって加熱する第2ステップと、を備える。
【0033】
非吸収性媒体に付着した水性インクが乾燥しやすくなる。
【0034】
(15)上記第2ステップにおいて、上記加熱器が上記非吸収性媒体と上記水性インクのうちの少なくとも一方を加熱する温度は、60℃以上であってもよい。
【0035】
非吸収性媒体に付着した水性インクがより乾燥しやすくなる。
【0036】
(16)上記第1ステップにおいて、上記ノズルは、上記水性インクを鉛直方向に吐出してもよい。
【0037】
水性インクの粘度が10mPa・s以上と高いので、ヘッドと非吸収性媒体との間の距離を広くして、ノズルから水性インクを鉛直方向に吐出しても、水性インクによって形成される画像が不鮮明になりにくい。このため、ヘッドと非吸収性媒体との間の距離を広くすることにより、印刷対象物のサイズ制約を緩和しやすい。
【0038】
(17)上記第1ステップにおいて、上記ノズルは、上記水性インクを水平方向に吐出してもよい。
【0039】
水性インクの粘度が10mPa・s以上と高いので、水性インクを水平方向に吐出しても、非吸収性媒体に付着した水性インクの液だれが抑制される。
【0040】
(18)上記印刷方法は、上記ノズルから上記水性インクを吐出して非吸収性媒体に画像を記録する画像記録処理時に、キャップが上記ノズルを覆った状態で上記キャップ内のインクを吸引する吸引ポンプを駆動するパージ処理をコントローラが定期的に実行してもよい。
【0041】
ノズルが異物によって目詰まりを起こすことがより確実に防止される。
【0042】
(19)上記印刷方法は、上記第1ステップの前に、搬送装置が上記非吸収性媒体をヘッドと対向する位置へ搬送する第4ステップを更に備えてもよい。
【0043】
非吸収性媒体に画像が好適に記録される。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、インクの吐出性およびラギットネス性が確保されるとともに、乾燥性およびデキャップ性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置100の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、インク回路113を示す模式図である。
【
図4】
図4は、コントローラ130を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、画像記録装置100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口33が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、画像記録装置100を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
【0047】
[画像記録装置100の外観構成]
図1に示される画像記録装置100(インク吐出装置の一例)は、インクジェット記録方式でロール体37(
図2参照)をなすシートSに画像を記録する。
【0048】
図1に示されるように、画像記録装置100は、筐体30を備える。筐体30は、全体として概ね直方体形状である。なお、筐体30の内部には、各部材を支持するためのフレームが適宜設けられてもよい。
【0049】
筐体30の前面30Fには、左右方向9に長いスリット状の排出口33が形成されている。排出口33からは、画像記録済みのシートS(
図2参照)が排出される。前面30Fには、操作パネル44が設けられている。ユーザは、操作パネル44に、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするための入力を行う。
【0050】
筐体30の右面30Rには、右カバー35Aが位置する。右カバー35Aの開閉により、シート収容空間32Cに位置するホルダ35等(
図2参照)が露出したり遮蔽されたりする。
【0051】
筐体30の前面30Fには、前カバー29が位置する。前カバー29は、下端付近において左右方向9に沿って延びる回動軸(不図示)周りに、上端側が前方へ倒れるように開くことができる。前カバー29の開閉により、筐体30の内部空間31に位置するカートリッジ装着部110等(
図2参照)が露出されたり遮蔽されたりする。
【0052】
[画像記録装置100の内部構成]
図2に示されるように、筐体30の内部空間31には、ホルダ35、テンショナ45、搬送ローラ対36、搬送ローラ対40、ヘッド38、プラテン51、ヒータ39、CIS25、カッターユニット26、カートリッジ装着部110などが配置されている。なお、
図2には示されていないが、内部空間31には、定着ユニット、画像センサ、メンテナンス機構等が位置してもよい。
【0053】
内部空間31には、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間31の後下部を仕切って、シート収容空間32Cを区画する。シート収容空間32Cは、隔壁41、下筐体32により包囲され、ヘッド38などから隔離された空間である。
【0054】
シート収容空間32Cには、ロール体37が収容される。ロール体37は、芯管と、長尺のシートSとを有している。シートSは、芯管の軸芯の周方向にロール状に芯管に巻回されている。シートSは、水吸収性が低い表面を有する非吸収性媒体である。具体的には、シートSは、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下であるシートをいう。また、「非吸収性」とは、ASTM D570に準拠して測定された24時間での吸水率が0.5%未満であることを指してもよい。より詳細には、「非吸収性」とは、上記吸水率が0.2%未満であることを指してもよい。なお、吸水率の単位である「%」は、質量基準である。シートSの材質としては、例えば、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等)などを挙げることができる。
【0055】
テンショナ45は、内部空間31の後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、下筐体32の外側を向いている外周面45Aを有している。外周面45Aは、左右方向9においてシートの最大幅以上の大きさであり、通紙中心(シートSの左右方向9における中心)に対して互いに対称な形状を有している。外周面45Aの上端は、上下方向7において搬送ローラ対36のニップ位置と概ね同じ上下位置にある。
【0056】
外周面45Aには、ロール体37から引き出されたシートSが掛けられ当接する。シートSは、外周面45Aに沿って前方に湾曲して、搬送向き8Aに延びて搬送ローラ対36に案内される。搬送向き8Aは、前後方向8に沿う前向きである。テンショナ45は、周知の手法により、シートSにテンションを与える。
【0057】
テンショナ45の前方には、搬送ローラ対36が位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Aとピンチローラ36Bとを有する。搬送ローラ36A、及びピンチローラ36Bは、外周面45Aの上端と概ね同じ上下位置で当接する。搬送ローラ対36は、搬送装置の一例である。
【0058】
搬送ローラ対36の前方には、搬送ローラ対40が位置する。搬送ローラ対40は、搬送ローラ40Aとピンチローラ40Bとを有する。搬送ローラ40A、及びピンチローラ40Bは、外周面45Aの上端と概ね同じ上下位置で当接する。
【0059】
搬送ローラ36A,40Aは、不図示のモータから駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対36は、テンショナ45から搬送向き8Aに延びるシートSをニップしつつ回転することにより、搬送面43Aに沿う搬送向き8Aに送り出す。搬送ローラ対40は、搬送ローラ対36から送り出されたシートSをニップしつつ回転することにより搬送向き8Aに送り出す。また、搬送ローラ対36,40の回転により、シートSは、シート収容空間32Cから隙間42を通ってテンショナ45に向けて引き出される。
【0060】
図2に示されるように、内部空間31には、外周面45Aの上端から排出口33に至る搬送路43が形成されている。搬送路43は、搬送向き8Aに沿ってほぼ直線的に延びており、シートSが通過可能な空間である。なお、
図2では、搬送面43Aは、搬送路43を示す二点鎖線で示されている。搬送路43は、上下方向7に離れて位置するガイド部材(不図示)や、ヘッド38、プラテン51などによって区画されている。
【0061】
ヘッド38は、搬送路43の上方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流側に位置する。ヘッド38は、フレーム48と、複数のノズル38Aを有する吐出モジュール49と、を有する。吐出モジュール49は、フレーム48によって支持されている。
吐出モジュール49は、流入ポート22と流出ポート23とを有する。流入ポート22および流出ポート23は、マニホールド24とそれぞれ接続されている。マニホールド24は複数のノズル38Aと接続されている(
図3参照)。複数のノズル38Aは、インクサブタンク181
図3参照)から供給された水性インクを搬送ベルト101に支持されたシートSへ向かって下方へ吐出する。これにより、シートSに画像が記録される。
【0062】
プラテン51は、搬送路43の下方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。プラテン51は、ヘッド38の下方に、ヘッド38と対向している。プラテン51は、搬送ベルト101と支持部104を有する。搬送ベルト101は、搬送ローラ対36によって搬送向き8Aに搬送されてヘッド38の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト101は、支持しているシートSを搬送向き8Aに搬送する。
【0063】
ヒータ39は、搬送路43の下方においてヘッド38よりも搬送向き8Aの下流であって搬送ローラ対40よりも搬送向き8Aの上流に位置する。ヒータ39は、搬送路43を搬送されるシートSを加熱する。
【0064】
CIS25は、搬送路43の上方において搬送ローラ対40よりも搬送向き8Aの下流に位置する。CIS25は、シートの印刷面の画像を読み取る。
【0065】
カッターユニット26は、搬送路43の上方においてCIS25よりも搬送向き8Aの下流に位置する。カッターユニット26は、カッターキャリッジ27にカッター28が搭載されたものである。カッター28の移動によって、搬送路43に位置するシートSが左右方向9に沿って切断される。
【0066】
カートリッジ装着部110は、筐体30の前端および下端付近に位置しており、前方を向いて開口する箱形状である。カートリッジ装着部110には、後向きへインクカートリッジ34が挿入される。カートリッジ装着部110の後向きの終面111には、前方へ向かって延びるインクニードル112が位置する。インクニードル112は、流路182を通じてインクサブタンク181と連通している(
図3参照)。
【0067】
終面111には、接点114が位置する。接点114は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ34が装着された状態において、インクカートリッジ34が有するIC基板70と電気的に接続される。コントローラ130は、接点114を通じてIC基板70の記憶領域にアクセス可能である。また、接点114は、カートリッジ装着部110に保存液カートリッジ11が装着された状態において、保存液カートリッジ11が有するIC基板12と電気的に接続される(
図3参照)。コントローラ130は、接点114を通じてIC基板12の記憶領域にアクセス可能である。
【0068】
インクカートリッジ34は、水性インクを貯留している。インクカートリッジ34は、水性インクが消費されるとカートリッジ装着部110から取り外され、水性インクを貯留している新しいインクカートリッジ34と交換される。インクカートリッジ34の後面には、IC基板70が位置する。IC基板70は、記憶領域にインクカートリッジ34であることを示す識別情報を記憶している。
【0069】
カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ34に代えて保存液カートリッジ11(第2カートリッジ)が挿入される。保存液カートリッジ11は、保存液を貯留している。保存液カートリッジ11は、画像記録装置100が使用されずに長期に保管されるときに、インクカートリッジ34に代えてカートリッジ装着部110に装着される。保存液カートリッジ11の後面には、IC基板12が位置する。IC基板12は、記憶領域に保存液カートリッジ11であることを示す識別情報を記憶している。
【0070】
[インク回路113]
図3に示されるように、カートリッジ装着部110とヘッド38の吐出モジュール49とはインク回路113によって接続されている。インク回路113は、インクサブタンク181、流路182、183、184、大気流路185、補給バルブ187、大気開放バルブ190、正圧ポンプ191、および液面センサ192を有する。
【0071】
インクサブタンク181は、筐体30の内部空間31においてカートリッジ装着部110の上方に位置する。インクサブタンク181は、内部空間に水性インクを貯留する。インクサブタンク181の内部空間は、流路182によりカートリッジ装着部110のインクニードル112と連通されている。カートリッジ装着部110にインクカートリッジ34が装着された状態において、インクカートリッジ34が貯留するインクが流路182を通じてインクサブタンク181に流入可能である。また、カートリッジ装着部110に保存液カートリッジ11が装着された状態において、保存液カートリッジ11が貯留する保存液が流路182を通じてインクサブタンク181に流入可能である。流路182には、補給バルブ187が位置する。補給バルブ187は、コントローラ130により制御されて、流路182を開閉する。
【0072】
インクサブタンク181の内部空間と、吐出モジュール49とは流路183、184により連通されている。流路183は、吐出モジュール49の流入ポート22と接続されている。流路184は、吐出モジュール49の流出ポート23と接続されている。インクサブタンク181の内部空間に貯留された水性インクまたは保存液は、流路183を通じて吐出モジュール49に供給可能である。流路183には、正圧ポンプ191が位置する。
正圧ポンプ191は、コントローラ130がポンプモータ138(
図4参照)の駆動を制御することにより動作する。流路184には、パージ遮断バルブ188が位置する。パージ遮断バルブ188は、コントローラ130により制御されて、流路184を開閉する。
【0073】
流路183における正圧ポンプ191と流入ポート22との間と、流路184におけるパージ遮断バルブ188とインクサブタンク181との間と、はバイパス流路186により接続されている。バイパス流路186には、バイパスバルブ189が位置する。バイパスバルブ189は、コントローラ130により制御されて、バイパス流路186を開閉する。
【0074】
インクサブタンク181の内部空間と外部とは大気流路185により連通されている。
大気流路185には、大気開放バルブ190が位置する。大気開放バルブ190は、コントローラ130により制御されて、大気流路185を開閉する。
【0075】
インクサブタンク181には、液面センサ192が位置する。液面センサ192は、インクサブタンク181の内部空間の補充液面高さにおいて水性インクの有無を検知する。
液面センサ192は、検知信号をコントローラ130に出力する。液面センサ192は、水性インクを検知したときに検知信号としてON信号を出力し、水性インクを検知しないときに検知信号としてOFF信号を出力する。コントローラ130は、液面センサ192が出力する検知信号に基づいて、インクサブタンク181の内部空間において液面が補充液面高さに到達したかを判定する。
【0076】
インクサブタンク181には、減圧ポンプ193が接続されている。減圧ポンプ193は、インクサブタンク181の内部空間の気体を外部へ排出することにより、インクサブタンク181の内部空間を減圧する。
【0077】
図3に示されるように、各吐出モジュール49の下方にはキャップ62が位置する。なお、
図3においては、1つの吐出モジュール49のみが示されている。キャップ62は、ゴムやシリコンなどの弾性体で構成されている。キャップ62は、上方が開放された箱形形状である。 キャップ62は、水性インクなどがキャップ62の内部空間67から流出する排出ポート21を有している。排出ポート21は、流路178を通じて廃液タンク77に接続されている。流路178には、吸引ポンプ74が設けられている。吸引ポンプ74は、吸引ポンプモータ58(
図4参照)によって駆動される。
【0078】
[コントローラ130]
図4に示されるように、コントローラ130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ、水性インク供給日時、経過時間に対応した給排回数などが格納される。給排回数は、例えば、経過時間が時間単位で増えるにつれて給排回数が増えるように予め設定されている。
【0079】
ASIC135には、搬送モータ53、吸引ポンプモータ58、ポンプモータ138,139が接続されている。また、ASIC135には、補給バルブ187、パージ遮断バルブ188、および大気開放バルブ190が接続されている。なお、各バルブは、バルブを駆動するための駆動回路を介してASIC135と接続されている。
【0080】
ASIC135は、各モータを回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号を元に各モータを制御する。各モータは、ASIC135からの駆動信号によって正転又は逆転する。コントローラ130は、搬送モータ53の駆動を制御して、ホルダ35、搬送ローラ36A、搬送ローラ40Aを回転させる。コントローラ130は、吸引ポンプモータ58の駆動を制御して、吸引ポンプ74を駆動させる。コントローラ130は、ポンプモータ138の駆動を制御して、正圧ポンプ191を駆動させる。コントローラ130は、ポンプモータ139の駆動を制御して、減圧ポンプ193を駆動させる。
【0081】
ASIC35には、操作パネル44、表示部44A、接点114、液面センサ192、および圧電素子(不図示)が接続されている。操作パネル44は、ユーザによる操作に応じた操作信号をコントローラ130に出力する。操作パネル44は、例えば、押ボタンを有していてもよいし、ディスプレイに重畳されたタッチセンサを有していてもよい。コントローラ130は接点114を通じて、インクカートリッジ34のIC基板70または保存液カートリッジ11のIC基板12の記憶領域に対して読み出しまたは書き込みを行う。コントローラ130は、液面センサ192から検知信号を受信する。圧電素子は、不図示のドライブ回路を介してコントローラ130により給電されることで動作する。コントローラ130は、圧電素子への給電を制御し、複数のノズル38Aから選択的にインク滴を吐出させる。
【0082】
[水性インク]
以下、水性インクの詳細が説明される。水性インクは、水、溶剤群A、バインダーポリマー、増粘剤、色材、および界面活性剤を含む。水性インクは、溶剤群A、バインダーポリマー、増粘剤、色材、および界面活性剤が水に溶解もしくは分散したものである。水性インクは、粘度が10~14mPa・sの範囲内のものである。10mPa・sおよび14mPa・sは、上記範囲に含まれる。また、10mPa・s未満の粘度は、上記範囲に含まれない。14mPa・sを越える粘度は、上記範囲に含まれない。水性インクの粘度は、例えば、コーンプレート型回転式粘度計により測定できる。水性インクは、室温25℃、湿度65%の屋内において、上方に開放した直径60mmの容器に5gの上記水性インクを入れて100℃で4時間加熱されたときの蒸発率が70%以上となるのが好ましい。加熱は、上記容器をヒータ39に載置し、上記容器内の温度が100℃になるように上記容器をヒータ39によって加熱することにより行った。
【0083】
水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。水のインク全量に対する重量%は、30.0~60.0重量%の範囲内である。なお、水の重量%は、例えば、他の成分の残部であってもよい。30.0重量%および60.0重量%は、上記範囲に含まれる。また、30.0重量%未満の重量%は、上記範囲に含まれない。60.0重量%を越える重量%は、上記範囲に含まれない。
【0084】
溶剤群Aは、水性インクのデキャップ性および乾燥性を調整するために添加される。デキャップ性は、ノズルに付着した水性インクによってノズルに目詰まりが生じにくい性質を言う。乾燥性は、水性インクの乾燥しやすさを言う。溶剤群Aは、25℃において蒸気圧が0.07Pa以上となる溶剤である。例えば、溶剤群Aとしては、トリプロピレングリコール(TPG)(蒸気圧:0.7Pa)、プロピレングリコール(PG)(蒸気圧:10.6Pa)、1、5-ペンタンジオール(蒸気圧:0.52Pa)、1、3-プロピレングリコール(4.5Pa)、1、2-ブタンジオール(蒸気圧:10.0Pa)、1、3-ブタンジオール(蒸気圧:8.0Pa)、1、4-ブタンジオール(蒸気圧:1.0Pa)、3-メチル-1、5-ペンタンジオール(MPD)(蒸気圧:0.072Pa)を挙げることができる。溶剤群Aは、これらの溶剤のうち1つ以上(例えば、2つ)の溶剤を含む概念である。本実施形態では、溶剤群Aは、トリプロピレングリコールおよびプロピレングリコールを含む。溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%は、31.0~55.0重量%の範囲内である。31.0重量%および55.0重量%は、上記範囲に含まれる。また、31.0重量%未満の重量%は、上記範囲に含まれない。55.0重量%を越える重量%は、上記範囲に含まれない。
【0085】
バインダーポリマーは、水性インクが乾燥するときに、シートS上に皮膜を形成するものである。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂であることが好ましい。本実施形態では、バインダーポリマーは、アクリル酸をモノマーとして含むアクリルポリマーである。
【0086】
アクリルポリマーは、例えば、低粘度バインダーポリマー分散液(ジャパンコーティングレジン株式会社製、モビニール6969D)や高粘度バインダーポリマー分散液(ジャパンコーティングレジン株式会社製のモビニール6775、モビニール6960、モビニール6899D、RA-071B1、RA-071B2)から入手可能である。低粘度バインダーポリマー分散液は、低粘度バインダーポリマー分散液においてアクリルポリマーが38.0重量%となるように低粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたときの粘度が10mPa・s以上100mPa・s未満となるものである。なお、以下では、低粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたアクリルポリマーを便宜的に低粘度アクリルポリマーということがある。
【0087】
高粘度バインダーポリマー分散液は、高粘度バインダーポリマー分散液においてアクリルポリマーが38.0重量%となるように高粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたときの粘度が100mPa・s以上5000mPa・s未満となるものである。好ましくは、高粘度バインダーポリマー分散液の粘度は、2000~5000mPa・sの範囲内である。2000mPa・sおよび5000mPa・sは、上記範囲に含まれる。また、2000mPa・s未満の粘度は、上記範囲に含まれない。5000mPa・sを越える粘度は、上記範囲に含まれない。なお、以下では、高粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたアクリルポリマーを便宜的に高粘度アクリルポリマーということがある。高粘度アクリルポリマーは、低粘度アクリルポリマーと同じものである。高粘度アクリルポリマーの水性インク全量に対する重量%は、4.2重量%以下であることが好ましい。
【0088】
増粘剤は、水性インクの粘度を高めるために添加される。増粘剤とは、水に80.0重量%混和させた時、粘度が44mPa・s以上となる液体である。増粘剤は、高粘度バインダーポリマー分散液および溶剤群Bを含む。高粘度バインダーポリマー分散液は、アクリルポリマーを含むため、バインダーポリマーとしての役割もある。一方、低粘度アクリルポリマー分散液は、増粘剤として機能しない。
【0089】
溶剤群Bは、25℃において蒸気圧が0.07Pa未満となる溶剤である。例えば、溶剤群Bとしては、グリセリン(蒸気圧:0.01Pa)、ジグリセリン(蒸気圧:0.01Pa未満)を挙げることができる。溶剤群Bは、これらの溶剤のうち1つ以上(例えば、1または2つ)の溶剤を含む概念である。増粘剤の水性インク全量に対する重量%は、13.0%以下である。溶剤群Bの水性インク全量に対する重量%は、3.0重量%以下である。
【0090】
色材は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能な顔料である。色材としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料系レーキ顔料、酸性染料系レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等が挙げられる。樹脂分散剤は、例えば、一般的な高分子分散剤(顔料分散用樹脂)を用いてもよく、自家調整してもよい。
【0091】
水性インク全量における色材の重量%は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度又は彩度等により、適宜決定できる。色材の重量%は、例えば、0.1重量%以上20.0重量%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは1.0重量%以上15.0重量%以下の範囲内である。色材の重量%は、顔料のみの重量であり、バインダーポリマーの重量は含まない。色材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0092】
界面活性剤は、さらに、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を含んでもよい。これらの界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1006」、「オルフィン(登録商標)E1004」、「シルフェイスSAG503A」、及び「シルフェイスSAG002」等が挙げられる。水性インク全量における界面活性剤の重量%は、例えば、5.0重量%以下、3.0重量%以下、0.1重量%~2.0重量%である。
【0093】
水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、ノズル乾燥防止剤、エマルジョンなどのポリマー成分、染料等が挙げられる。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等が挙げられる。
【0094】
水性インクは、例えば、水、溶剤群A、バインダーポリマー、増粘剤、色材、および界面活性剤と必要に応じて他の添加剤とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0095】
以下に、コントローラ130が、画像記録装置100を用いてシートSに画像を記録するときの処理(画像記録処理)を実行する印刷方法について説明する。
【0096】
[画像記録処理]
コントローラ130は、操作パネル44や、画像記録装置100とLANなどによって接続された情報処理装置などの外部から、シートSに画像を記録する旨の命令を受け取ると、画像記録処理を実行する。具体的には、コントローラ130は、搬送モータ53を駆動することにより、ホルダ35、搬送ローラ36A、および搬送ローラ40Aを駆動させる。これにより、ロール体37からシートSが引き出されて搬送向き8Aに搬送される。
シートSがヘッド38の直下に到達すると、コントローラ130は、ノズル38Aから水性インクを吐出させる(第1ステップの一例)。これにより、シートSに画像が記録される。シートS上に付着した水性インクは、ヒータ39を通過する際に加熱されることによって乾燥する(第2ステップの一例)。その結果、バインダーポリマーによる皮膜が形成されて水性インクがシートSに定着する。ヒータ39を通過したシートSは、搬送ローラ対40によって更に搬送向き8Aに搬送される。搬送ローラ対40によって搬送向き8Aに搬送されるシートSは、CIS25によって記録された画像をチェックされた後、カッターユニット26によって所定のサイズに切断されて排出される。シートSが切断された後、コントローラ130は、搬送モータ53を逆回転することにより、シートSの先端を搬送ローラ対36の位置まで戻す。コントローラ130は、記録すべき画像がシートSに記録されるまで、上記処理を繰り返し行う。
【0097】
[パージ処理]
一方、コントローラ130は、画像記録処理時において、パージ処理を定期的(例えば、100枚のシートSに画像が記録されたとき)に実行する(第3ステップの一例)。具体的には、まず、コントローラ130は、
図3に示されるように、キャップ62がノズル面50を覆った状態で、パージ遮断バルブ188およびバイパスバルブ189を開き、かつ、補給バルブ187、大気開放バルブ190を閉じる。次いで、コントローラ130は、吸引ポンプモータ58を駆動することにより、吸引ポンプ74を駆動させる。これにより、ノズル38A内の水性インクが吸引されて、キャップ62の内部空間67から排出ポート21および流路178を通って水性インクが廃液タンク77に排出される。
【0098】
[実施形態における作用効果]
上記水性インクでは、溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が31.0重量%以上なので、溶剤群Aと比べて蒸発しやすい水の重量%が小さい。このため、ノズルに付着した水性インクが速く乾燥することが抑制されるので、水性インクが固化しにくい。したがって、固化したインクによってノズルに目詰まりが生じることが抑制される。すなわち、デキャップ性が確保される。溶剤群Aの水性インク全量に対する重量%が55.0重量%以下なので、溶剤群Aと比べて蒸発しやすい水の重量%が大きくなる。このため、インクが速く乾燥しやすいので、乾燥性が確保される。増粘剤によって水性インクの粘度が10mPa・s以上に調整されるので、水性インクによって形成される画像が不鮮明になりにくい。このため、ラギットネス性が確保される。増粘剤によって水性インクの粘度が14mPa・s以下に調整されるので、ノズル38Aから水性インクが吐出しにくくなることが抑制される。このため、水性インクの吐出性が確保される。
【0099】
上記水性インクは、異なる2種の溶剤を含み、疎水基を持つ溶剤を選択した場合、疎水性の界面活性剤の溶解性が高い。
【0100】
上記水性インクでは、溶剤群Bの水性インク全量に対する重量%が3.0重量%以下である。このため、溶剤群Aよりも蒸発しにくい溶剤群Bの重量%が小さいので、水性インクの乾燥性が高い。
【0101】
上記水性インクは、高粘度バインダーポリマー分散液においてアクリルポリマーが38.0重量%となるように高粘度バインダーポリマー分散媒に添加されたときの粘度が100mPa・s以上5000mPa・s未満となる高粘度バインダーポリマー分散液を含む。このため、バインダーポリマーによって形成される皮膜の耐擦性が高い。
【0102】
上記水性インクでは、高粘度アクリルポリマーの水性インク全量に対する重量%が4.2重量%以下であるので、水性インクが乾燥したときに、ノズル面50やノズル38A内において、高粘度アクリルポリマーが皮膜化することが抑制される。このため、水性インクの吐出不良が抑制される。
【0103】
上記水性インクでは、バインダーポリマーは、アクリル系のポリマーであるので、バインダーポリマーによって形成される皮膜の耐擦性および安定性が高い。
【0104】
上記水性インクは、室温25℃、湿度65%の屋内において、上方に開放した直径60mmの容器に5gの上記水性インクを入れて4時間加熱したときの蒸発率が70%以上となるものなので、乾燥性が高い。
【0105】
画像記録装置100および印刷方法では、シートS上に付着した水性インクは、ヒータ39を通過する際に加熱されるので、シートSに付着した水性インクが乾燥しやすい。
【0106】
画像記録装置100および印刷方法では、ヒータ39の加熱温度が60℃以上であるので、シートSに付着した水性インクが乾燥しやすい。
【0107】
画像記録装置100および印刷方法では、水性インクの粘度が10mPa・s以上と高い。このため、ヘッド38とシートSとの間の上下方向7に沿った距離を広くして、ノズル38Aから水性インクを下向きに吐出しても、水性インクがシートSにおいて広がりづらいため、水性インクによって形成される画像が不鮮明になりにくい。したがって、ヘッド38とシートSとの間の上下方向7に沿った距離を広くすることにより、印刷対象物のサイズ制約を緩和しやすい。
【0108】
画像記録装置100および印刷方法では、画像記録処理時において、キャップ62がノズル38Aを覆った状態で吸引ポンプ74を駆動するパージ処理が定期的に実行されるので、ノズル38Aが異物によって目詰まりを起こしにくい。
【0109】
画像記録装置100および印刷方法では、シートSは、搬送ローラ対36によってヘッド38と上下方向7に対向する位置へ搬送されるので、シートSに画像が好適に記録される。
[変形例]
画像記録装置100および印刷方法では、ノズル38Aから水性インクを下向きに吐出したが、ノズル38Aから水性インクを水平方向に吐出してもよい。この場合、ヘッド38は、ノズル面50が水平方向と直交する向きとなるように設置される。ノズル38Aから水性インクを水平方向に吐出するようにしても、水性インクの粘度が10mPa・s以上と高いので、シートSに付着した水性インクの液だれが生じにくい。
【0110】
画像記録装置100では、シートSは、水吸収性が低い表面を有する非吸収性媒体であったが、水吸収性が高い表面を有する吸収性媒体であってもよい。例えば、吸収性媒体としては、普通紙、光沢紙、マット紙などを挙げることができる。
【0111】
画像記録装置100では、画像記録処理時においてパージ処理が定期的に実行されたが、パージ処理は実行されなくてもよい。
【0112】
画像記録装置100では、インクカートリッジ34と保存液カートリッジ11とが別であり、カートリッジ装着部110に対して交換されていたが、インクカートリッジ34と保存液カートリッジ11とが一体に構成されてカートリッジ装着部110に装着されてもよい。
【実施例0113】
以下、本発明の実施例が示される。
【0114】
(実施例1)
水として37.6重量%の純水と、色材として3.7重量%のカーボンブラックと、溶剤群Aとして3.0重量%のトリプロピレングリコールおよび48.0重量%のプロピレングリコールと、バインダーポリマーとして5.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、界面活性剤として1.4重量%のオルフィン(登録商標)E1004(日信化学工業株式会社製)と、1.2重量%の顔料分散剤と、を含むものを水性インクとして用いた。水性インクの粘度は、25℃で13.2mPa・sである。低粘度アクリルポリマーは、低粘度アクリルポリマー分散液(ジャパンコーティングレジン株式会社製、モビニール6969D)から入手した。
【0115】
(実施例2)
水として39.1重量%の純水と、溶剤群Aとして3.0重量%のトリプロピレングリコール、25.0重量%のプロピレングリコールおよび21.5重量%の1、5-ペンタンジオールを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.2mPa・sである。
【0116】
(実施例3)
水として33.6重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%のプロピレングリコールを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.9mPa・sである。
【0117】
(実施例4)
水として38.6重量%の純水と、溶剤群Aとして50.0重量%のプロピレングリコールを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で11.4mPa・sである。
【0118】
(実施例5)
水として33.6重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.0mPa・sである。
【0119】
(実施例6)
水として35.6量%の純水と、溶剤群Aとして50.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.1mPa・sである。
【0120】
(実施例7)
水として51.7重量%の純水と、バインダーポリマーとして4.2重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールと、増粘剤として11.0重量%の高粘度バインダーポリマー分散液(ジャパンコーティングレジン株式会社製、モビニール6775)を用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.8mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの4.2重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の6.8重量%とを足した値である。表1では、合計して100重量%となることを分かりやすくするため、高粘度アクリルポリマー分散媒の重量%を示した。
【0121】
(実施例8)
水として49.7重量%の純水と、バインダーポリマーとして3.8重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンと、増粘剤として10.0重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.3mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの3.8重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の6.2重量%とを足した値である。
【0122】
(実施例9)
水として45.4重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%のトリプロピレングリコールと、バインダーポリマーとして1.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、色材として3.0重量%のカーボンブラックを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.5mPa・sである。
【0123】
(実施例10)
水として49.6重量%の純水と、溶剤群Aとして31.0重量%のトリプロピレングリコールと、バインダーポリマーとして10.0重量%の低粘度アクリルポリマーを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.3mPa・sである。
【0124】
(実施例11)
水として38.4重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%の1、5-ペンタンジオールと、バインダーポリマーとして1.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、色材として3.0重量%のカーボンブラックを用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.9mPa・sである。
【0125】
(実施例12)
水として51.8重量%の純水と、バインダーポリマーとして3.0重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%の1、5-ペンタンジオールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンと、増粘剤として7.9重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.8mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの3.0重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の4.9重量%とを足した値である。
【0126】
(実施例13)
水として37.6重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で11.4mPa・sである。
【0127】
(実施例14)
水として37.6重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.0重量%の低粘度のポリエチレン(ユニチカ製アローベース SB-1030N)と、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で11.9mPa・sである。
【0128】
(実施例15)
水として33.6重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%の1、3-プロピレングリコールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.1mPa・sである。
【0129】
(実施例16)
水として40.6重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%の1、2-ブタンジオールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で11.7mPa・sである。
【0130】
(実施例17)
水として41.6重量%の純水と、溶剤群Aとして47.0重量%の1、3-ブタンジオールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.6mPa・sである。
【0131】
(実施例18)
水として40.6重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%の1、4-ブタンジオールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.3mPa・sである。
【0132】
(実施例19)
水として43.6重量%の純水と、溶剤群Aとして45.0重量%の3-メチル-1、5-ペンタンジオールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.8mPa・sである。
【0133】
(実施例20)
水として45.2重量%の純水と、バインダーポリマーとして8.4重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして11.0重量%のトリプロピレングリコールおよび29.0重量%のプロピレングリコールを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で11.1mPa・sである。
【0134】
(実施例21)
水として37.6重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.0重量%のポリウレタンと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.2mPa・sである。
【0135】
(実施例22)
水として51.4重量%の純水と、バインダーポリマーとして4.3重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールと、増粘剤として11.3重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で13.5mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの4.3重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の7.0重量%とを足した値である。
【0136】
(実施例23)
水として51.6重量%の純水と、バインダーポリマーとして8.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%のトリプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で10.4mPa・sである。
【0137】
(実施例24)
水として54.4重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.0重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%の1、5-ペンタンジオールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンと、増粘剤として5.3重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で10.2mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの2.0重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の3.3重量%とを足した値である。
【0138】
(実施例25)
水として53.9重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.2重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%の1、5-ペンタンジオールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンと、増粘剤として5.8重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で10.6mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの2.2重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の3.6重量%とを足した値である。
【0139】
(実施例26)
水として54.4重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.2重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%の1、5-ペンタンジオールと、溶剤群Bとして1.5重量%のグリセリンおよび1.0重量%のジグリセリンと、増粘剤として5.8重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で10.8mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの2.2重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の3.6重量%とを足した値である。
【0140】
(比較例1)
水として39.1重量%の純水と、溶剤群Aとして3.0重量%のトリプロピレングリコールおよび25.0重量%のプロピレングリコールを用いたほかは、溶剤群Bとして21.5重量%のグリセリンを用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.7mPa・sである。
【0141】
(比較例2)
水として51.9重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.5重量%の低粘度アクリルポリマーおよび2.6重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Bとして8.6重量%のグリセリンと、増粘剤として6.9重量%の高粘度バインダーポリマー分散液を用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で12.0mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの2.6重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の4.3重量%とを足した値である。
【0142】
(比較例3)
溶剤群Bとして21.5重量%のジグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で15.4mPa・sである。
【0143】
(比較例4)
水として32.6重量%の純水と、溶剤群Aとして56.0重量%のプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で14.6mPa・sである。
【0144】
(比較例5)
水として58.6重量%の純水と、溶剤群Aとして3.0重量%のトリプロピレングリコールおよび27.0重量%のプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で5.8mPa・sである。
【0145】
(比較例6)
水として28.5重量%の純水と、溶剤群Aとして56.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして4.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で17.8mPa・sである。
【0146】
(比較例7)
水として54.6重量%の純水と、溶剤群Aとして30.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして4.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で6.0mPa・sである。
【0147】
(比較例8)
水として28.6重量%の純水と、溶剤群Aとして56.0重量%のトリプロピレングリコールと、溶剤群Bとして4.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で34.3mPa・sである。
【0148】
(比較例9)
水として54.6重量%の純水と、溶剤群Aとして30.0重量%のトリプロピレングリコールと、溶剤群Bとして4.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で8.2mPa・sである。
【0149】
(比較例10)
水として38.4重量%の純水と、バインダーポリマーとして1.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして55.0重量%のトリプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で17.8mPa・sである。
【0150】
(比較例11)
水として48.4重量%の純水と、バインダーポリマーとして1.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして45.0重量%のトリプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で10.6mPa・sである。
【0151】
(比較例12)
水として48.7重量%の純水と、バインダーポリマーとして4.2重量%の高粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールと、増粘剤として11.0重量%の高粘度バインダーポリマー分散液と、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で15.1mPa・sである。なお、高粘度バインダーポリマー分散液の重量%は、高粘度アクリルポリマーの4.2重量%と高粘度アクリルポリマー分散媒の6.8重量%とを足した値である。
【0152】
(比較例13)
水として33.6重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%のトリプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で26.6mPa・sである。
【0153】
(比較例14)
水として54.6重量%の純水と、溶剤群Aとして31.0重量%のトリプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で8.4mPa・sである。
【0154】
(比較例15)
水として33.6重量%の純水と、溶剤群Aとして55.0重量%の1、5-ペンタンジオールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で20.9mPa・sである。
【0155】
(比較例16)
水として36.6重量%の純水と、バインダーポリマーとして2.0重量%の低粘度アクリルポリマーと、溶剤群Aとして55.0重量%の1、5-ペンタンジオールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で14.6mPa・sである。
【0156】
(比較例17)
水として40.5重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%の1、3-プロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で9.6mPa・sである。
【0157】
(比較例18)
水として40.6重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%の1、3-ブタンジオールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で14.1mPa・sである。
【0158】
(比較例19)
水として40.6重量%の純水と、溶剤群Aとして48.0重量%の3-メチル-1、5-ペンタンジオールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で14.9mPa・sである。
【0159】
(比較例20)
水として57.6重量%の純水と、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールを含み、溶剤群Bが省略されたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で5.3mPa・sである。
【0160】
(比較例21)
水として54.6重量%の純水と、溶剤群Aとして31.0重量%のプロピレングリコールと、溶剤群Bとして3.0重量%のグリセリンを用いたほかは、比較例1と同様の組成とした。水性インクの粘度は、25℃で5.9mPa・sである。
【0161】
[デキャップ性試験]
ノズル面50をキャップ62によって被覆しない状態でヘッド38を30分間放置した後、ノズル38Aから水性インクを吐出してシートSにプリントできるかどうかを以下の評価基準で目視判定した。シートSとしては、非吸収性媒体、例えば、ポリプロピレンによって形成された樹脂フィルムが用いられた。
A:ピン抜けやヨレが全く見られない
B:若干のピン抜けやヨレが見られる
C:多数のピン抜けやヨレが見られる
【0162】
[乾燥性試験]
解像度600×600dpi、液滴量約17pLにてノズル38Aから水性インクを吐出してシートSに水性インクを付着させた後、赤外線ヒータで約60℃で10分間加熱した後、以下の評価基準で目視判定した。シートSとしては、非吸収性媒体、例えば、ポリプロピレンによって形成された樹脂フィルムが用いられた。
A:指で塗膜を擦った際、乱れがない
B:指で塗膜に触れた際、ベタツキがない
C:指で塗膜に触れた際、ベタつく
D:指で塗膜に触れた際、乱れる
【0163】
[ラギットネス性試験]
ノズル38Aから水性インクを吐出してシートSに画像を記録し、以下の評価基準で画質を目視判定した。シートSとしては、非吸収性媒体、例えば、ポリプロピレンによって形成された樹脂フィルムが用いられた。
A:画像がシャープであった
B:画像の一部がぼやけた
C:画像が全体的にぼやけた
【0164】
[第1吐出性試験]
ノズル38Aから水性インクを吐出して100枚のシートSに画像を記録し、以下の評価基準で画質を目視判定した。シートSとしては、非吸収性媒体、例えば、ポリプロピレンによって形成された樹脂フィルムが用いられた。
A:ピン抜けやヨレが全く見られない
B:若干のピン抜けやヨレが見られる
C:多数のピン抜けやヨレが見られる
【0165】
[耐擦性試験]
ノズル38Aから水性インクを吐出してシートSに水性インクを付着させた後、水性インクをヒータ39で60℃の温度で10分間加熱することにより、バインダーポリマーによる皮膜をシートSに形成した。この皮膜を綿棒で擦って以下の評価基準で目視判定した。
A:皮膜の剥がれが全く生じなかった
B:皮膜の剥が僅かに生じた
C:皮膜の剥がれが生じた
【0166】
[第2吐出性試験]
ノズル38Aから水性インクを吐出した後、ノズル面50をキャップ62によって被覆しない状態でヘッド38を30分間放置し、その後、ノズル38Aから水性インクを吐出してシートSに画像を記録し、以下の評価基準で画質を目視判定した。
A:ピン抜けやヨレが全く見られない
B:若干のピン抜けやヨレが見られる
C:多数のピン抜けやヨレが見られる
【0167】
[デキャップ性試験結果]
表1から表8に示されるように、実施例1~25は評価A、Bであるのに対して、比較例1~3、5、7、9は評価Cであり、実施例1~25のデキャップ性が優れていることが分かる。実施例1~25では、水性インクに含まれる溶剤群Aが31.0重量%以上あることから、溶剤群Aよりも蒸発しやすい水の重量%が小さくなり、ノズル38Aに付着している水性インクがあまり固化しなかったためと考えられる。一方、比較例1~3、5、7、9では、水性インクに含まれる溶剤群Aが30.0重量%以下であることから、溶剤群Aよりも蒸発しやすい水の重量%が大きくなり、ノズル38Aに付着している水性インクの多くが乾燥によって固化したためと考えられる。
【0168】
[乾燥性試験結果]
表1から表8に示されるように、実施例1~26は評価A、Bであるのに対して、比較例4、6、8は評価Dであり、実施例1~26の乾燥性が優れていることが分かる。実施例1~26では、水性インクに含まれる溶剤群Aが55.0重量%以下に制限されていることから、溶剤群Aよりも蒸発しやすい水の重量%が大きかったためと考えられる。一方、比較例4、6、8では、水性インクに含まれる溶剤群Aが56.0重量%であることから、溶剤群Aよりも蒸発しやすい水の重量%が小さかったためと考えられる。
【0169】
実施例5と比較例6とを比較すると、実施例5では、水性インクに含まれる溶剤群Bが3.0重量%あるのに対して、比較例6では、溶剤群Bが4.0重量%であった。溶剤群Aよりも蒸発しにくい溶剤群Bの重量%について実施例5の方が小さいため、乾燥性の評価が実施例5の方が高くなったものと考えられる。
【0170】
[ラギットネス性試験結果]
表1から表8に示されるように、実施例1~26は評価A、Bであるのに対して、比較例5、7、9、14、17、20、21は評価Cであり、実施例1~26のラギットネス性が優れていることが分かる。実施例1~25では、水性インクの粘度が10.2mPa・s以上と高かったため、シャープな画像が得られたものと考えられる。比較例5、7、9、14、17、20、21では、水性インクの粘度が9.6mPa・s以下と低かったため、画像が全体的にぼやけたものと考えられる。
【0171】
[第1吐出性試験結果]
表1から表8に示されるように、実施例1~25は評価A、Bであるのに対して、比較例3、4、6、8、10、12、13、15、16、18、19は、評価Cであり、実施例1~26の第1吐出性が優れていることが分かる。実施例1~26では、水性インクの粘度が13.9mPa・s以下と低かったことから、ノズル38Aから水性インクがスムーズに吐出されたためと考えられる。一方、比較例3、4、6、8、10、12、13、15、16、18、19では、水性インクの粘度が14.1mPa・s以上と高かったことから、ノズル38Aから水性インクがスムーズに吐出されず、予定されていた量の水性インクがシートSに付着しなかったためと考えられる。
【0172】
[耐擦性試験]
表1から表8に示されるように、実施例7、8、12、22、24、25は評価Aであるのに対して、これらの実施例以外の実施例は評価Bであり、実施例7、8、12、22、24、25の皮膜の耐擦性が優れていることが分かる。実施例7、8、12、22、24、25、26は、バインダーポリマーとして高粘度アクリルポリマーが用いられているのに対して、実施例2、17以外の実施例は、バインダーポリマーとして低粘度アクリルポリマーが用いられたためと考えられる。
【0173】
[第2吐出性試験]
実施例7、8、12、24、25と実施例22とを比較すると、実施例7、8、12、24、25は評価Aであるのに対して、実施例22は評価Bであり、実施例7、8、12、24、25の第2吐出性が優れていることが分かる。実施例22では、高粘度アクリルポリマーが4.3重量%水性インクに含有されているのに対して、実施例7、8、12、24、25では、高粘度アクリルポリマーが4.2重量%以下水性インクに含有されているため、水性インクが乾燥したときに、ノズル面50やノズル38A内において高粘度アクリルポリマーによる皮膜化が抑制されたためと考えられる。言い換えると、バインダーポリマーとして高粘度アクリルポリマーが用いられた場合、高粘度アクリルポリマーの重量%が4.2重量%以下であると、第2吐出性が確保されるものと考えられる。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】