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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124324
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】半導体記憶装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240905BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199384
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2023031298
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】満野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】増田 亮二
(72)【発明者】
【氏名】濱田 龍文
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 知博
(72)【発明者】
【氏名】森川 雄介
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP17
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA37
5F083JA39
5F083JA40
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR33
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BE07
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】チャネル部のキャリア移動度を向上させたメモリセルアレイを備える半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体記憶装置は、チップ状の半導体記憶装置である。積層体は、複数の第1絶縁層と、メモリセルトランジスタのコントロールゲートとして機能する複数の第1導電層、とが第1方向に交互に積層されている。第1柱状体は、積層体内を第1方向に延伸する第1半導体部を含む。絶縁膜は、半導体記憶装置の端部に設けられている。第2柱状体は、絶縁膜内を第1方向に延伸し、第1半導体部より第1方向に短い第2半導体部を含む。第2柱状体の底部における第2半導体部の不純物濃度は、第1柱状体の第1導電層との交差部における第1半導体部の不純物濃度よりも高い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体記憶装置であって、
複数の第1絶縁層と、メモリセルトランジスタのコントロールゲートとして機能する複数の第1導電層、とが第1方向に交互に積層された積層体と、
前記積層体内を前記第1方向に延伸する第1半導体部を含む第1柱状体と、
前記半導体記憶装置の端部に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜内を前記第1方向に延伸し、前記第1半導体部より前記第1方向に短い第2半導体部を含む第2柱状体と、を備え、
前記第2柱状体の底部における前記第2半導体部の不純物濃度は、前記第1柱状体の前記第1導電層との交差部における前記第1半導体部の不純物濃度よりも高い、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1および第2半導体部には、ポリシリコン膜が用いられ、
前記ポリシリコン膜の結晶の粒径は、80nm以上である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第2柱状体の底部における前記第2半導体部の不純物濃度は、前記第2柱状体の前記底部と異なる第1部分における前記第2半導体部の不純物濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2柱状体の前記第1部分の不純物濃度は、前記第1柱状体の前記交差部における前記第1半導体部の不純物濃度と等しい、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2柱状体の底部における前記第2半導体部の不純物濃度は、1×1020cm-3以上である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1柱状体の前記第1導電層との交差部における前記第1半導体部の不純物濃度は、5×1019cm-3以下である、請求項5に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
複数の第1絶縁層と複数の第1導電層とが第1方向に交互に積層された積層体と、
第1半導体部と、前記第1半導体部と前記積層体との間に設けられた第2絶縁体部と、を含む柱状体とを備え、
前記複数の第1導電層と前記第1半導体部との交差部分は、トランジスタとして機能し、
前記第1半導体部の第1導電型不純物濃度は、前記交差部分において、1×1020cm-3以上である、半導体記憶装置。
【請求項8】
前記第1半導体部のキャリア濃度は、不純物濃度よりも低い、請求項7に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記第1半導体部は、n型不純物を含み、
前記第1半導体部の可動電子の濃度は、n型不純物濃度よりも低い、請求項7に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
複数の第1絶縁層とメモリセルトランジスタのコントロールゲートとして機能する複数の第1導電層とが第1方向に交互に積層された積層体と、
前記積層体内を前記第1方向に延伸する第1半導体部を含む第1柱状体とを備え、
前記第1柱状体の底部における前記第1半導体部の不純物濃度は、前記第1柱状体の前記第1導電層との交差部における前記第1半導体部の不純物濃度よりも高い、半導体記憶装置。
【請求項11】
第1絶縁層と第1犠牲膜とを第1方向に交互に積層して積層体を形成し、
前記積層体内を前記第1方向に延伸するホールを形成し、
前記ホールの内壁に第2絶縁体部を成膜し、
前記ホール内の前記第2絶縁体部の内側に、第1導電型の不純物がドープされた第1半導体部を成膜し、
第1熱処理によって、前記不純物がドープされた前記第1半導体部を結晶化させ、
第2熱処理によって、結晶化させた前記第1半導体部から前記不純物を拡散させ、
前記第1犠牲膜を除去し、除去後の空間に第1導電層を形成することを具備する、半導体記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記ホールの前記第1半導体部の内側に、不純物がドープされていない材料膜を成膜し、
前記第2熱処理によって前記第1半導体部の前記不純物を前記材料膜に拡散させ、
前記不純物の拡散された前記材料膜を除去することをさらに具備する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記材料膜の成膜から前記材料膜の除去までを複数回繰り返した後に、
前記第1絶縁体部を埋め込む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記材料膜を除去した後の前記第1半導体部の不純物濃度は、5×1019cm-3以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
熱処理後の前記第1半導体部の結晶の粒径は、80nm以上である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第1絶縁層と第1犠牲膜とを第1方向に交互に積層して積層体を形成し、
前記積層体内を前記第1方向に延伸するホールを形成し、
前記ホールの内壁に第2絶縁体部を成膜し、
前記ホール内の前記第2絶縁体部の内側に、第1導電型の不純物がドープされた第1半導体部を成膜し、
第1熱処理によって、前記不純物がドープされた前記第1半導体部を結晶化させ、
第2熱処理によって、結晶化された前記第1半導体部に水素を拡散し、
前記第1犠牲膜を除去し、除去後の空間に第1導電層を形成することを具備する、半導体記憶装置の製造方法。
【請求項17】
前記ホールの前記第1半導体部の内側に、不純物がドープされていない材料膜を成膜し、
前記第2熱処理によって前記第1半導体部の前記不純物を前記材料膜に拡散させ、
前記不純物の拡散された前記材料膜を除去することをさらに具備する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記材料膜の成膜から前記材料膜の除去までを複数回繰り返した後に、
前記第1絶縁体部を埋め込む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記材料膜を除去した後の前記第1半導体部の不純物濃度は、5×1019cm-3以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
熱処理後の前記第1半導体部の結晶の粒径は、80nm以上である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリ等の半導体記憶装置は、メモリセルを3次元的に配列した立体型メモリセルアレイを備える場合がある。このような立体型メモリセルアレイのセル電流を増大させるために、メモリセルのチャネル部のキャリア移動度を改善することが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Yasuo Wada and Shigeru Nishimatsu 1978 J. Electrochem. Soc. 125 1499
【非特許文献2】Hydrogen in crystalline semiconductors: A review of experimental results Physica B: Condensed Matter Volume 170, Issues 1-4, April 1991, PP. 3-20
【非特許文献3】Microscopic structure of hydrogen-shallow-donor complexes in crystalline silicon Physical review B vol.41 Number 6 p.3882 (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャネル部のキャリア移動度を向上させたメモリセルアレイを備える半導体記憶装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体記憶装置は、チップ状の半導体記憶装置である。積層体は、複数の第1絶縁層と、メモリセルトランジスタのコントロールゲートとして機能する複数の第1導電層、とが第1方向に交互に積層されている。第1柱状体は、積層体内を第1方向に延伸する第1半導体部を含む。絶縁膜は、半導体記憶装置の端部に設けられている。第2柱状体は、絶縁膜内を第1方向に延伸し、第1半導体部より第1方向に短い第2半導体部を含む。第2柱状体の底部における第2半導体部の不純物濃度は、第1柱状体の第1導電層との交差部における第1半導体部の不純物濃度よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置の構成例を示す断面図。
図2】積層体の構成例を示す平面図。
図3】3次元構造のメモリセルを例示する断面図。
図4】3次元構造のメモリセルを例示する断面図。
図5】第1実施形態による半導体記憶装置のアレイチップの構成例を示す概略平面図。
図6】ダミー柱状部の構成例を示す断面図。
図7】1つのダミー柱状部の構成例を示す断面図。
図8】第1実施形態による柱状部およびダミー柱状部の半導体ボディおよびその周辺を示す断面図。
図9】第1実施形態による半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図10A図9に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図10B図9に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図11A図10Aに続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図11B図10Bに続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図12図11Aに続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図13A図12に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図13B図12に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図14図13Aの破線枠Bの部分の断面図。
図15図14に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図16図15に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図17A図16に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図17B図16に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図18】第1実施形態の変形例1に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図19図18に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図20】第1実施形態の変形例2に係る半導体記憶装置の構成例を示す断面図。
図21】第1実施形態の変形例2に係る半導体記憶装置の構成例を示す断面図。
図22】第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図23図22に続く、半導体記憶装置の製造方法の一例を示す断面図。
図24】水素化処理を示す概念図。
図25】水素化処理を示す概念図。
図26】水素化の温度と可動電子の濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものである。明細書と図面において、同一の要素には同一の符号を付す。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の構成例を示す断面図である。以下、積層体20の積層方向をZ方向とする。Z方向と交差、例えば、直交する1つの方向をY方向とする。Z方向およびY方向のそれぞれと交差、例えば、直交する1つの方向をX方向とする。なお、本明細書において、X方向は第3方向の例であり、Y方向は第2方向の例であり、Z方向は第1方向の例である。
【0009】
半導体記憶装置1は、メモリセルアレイを有するアレイチップ2と、CMOS回路を有するCMOSチップ3とを備えている。アレイチップ2とCMOSチップ3とは、貼合面B1において貼合されており、貼合面において接合された配線を介して互いに電気的に接続されている。図1では、CMOSチップ3上にアレイチップ2が搭載された状態を示している。半導体記憶装置1は、ウェハ状態のアレイチップ2とウェハ状態のCMOSチップ3とを貼合させて、チップ状にダイシングされている。
【0010】
CMOSチップ3は、基板30と、トランジスタ31と、ビア32と、配線33および34と、層間絶縁膜35とを備える。
【0011】
基板30は、例えば、シリコン基板等の半導体基板である。トランジスタ31は、基板30の上に設けられたNMOS又はPMOSのトランジスタである。トランジスタ31は、例えば、アレイチップ2のメモリセルアレイを制御するCMOS回路を構成する。トランジスタ31は、複数の論理回路の例である。基板30上には、トランジスタ31以外の抵抗素子、容量素子等の半導体素子が形成されていてもよい。
【0012】
ビア32は、トランジスタ31と配線33との間、あるいは、配線33と配線34との間を電気的に接続する。配線33および34は、層間絶縁膜35内において多層配線構造を構成する。配線34は、層間絶縁膜35内に埋め込まれ、層間絶縁膜35の表面にほぼ面一に露出されている。配線33および34は、トランジスタ31等に電気的に接続される。ビア32、配線33および34には、例えば、銅、タングステン等の低抵抗金属が用いられる。層間絶縁膜35は、トランジスタ31、ビア32、配線33および34を被覆し保護する。層間絶縁膜35には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜が用いられる。
【0013】
アレイチップ2は、積層体20と、柱状体CLと、スリットST(LI)と、半導体ソース層BSLと、金属層40と、コンタクト29と、ボンディングパッド50とを備えている。
【0014】
積層体20は、トランジスタ31の上方に設けられており、基板30に対してZ方向に位置する。積層体20は、Z方向に沿って複数の電極膜21および複数の絶縁膜22を交互に積層して構成されている。積層体20および柱状体CLは、メモリセルアレイを構成する。電極膜21には、例えば、タングステン等の導電性金属が用いられる。絶縁膜22には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜が用いられる。絶縁膜22は、電極膜21同士を絶縁する。すなわち、複数の電極膜21は、相互に絶縁状態で積層されている。電極膜21および絶縁膜22のそれぞれの積層数は、任意である。絶縁膜22は、例えば、ポーラス絶縁膜またはエアギャップであってもよい。
【0015】
積層体20のZ方向の上端および下端の1つまたは複数の電極膜21は、それぞれソース側選択ゲートSGSおよびドレイン側選択ゲートSGDとして機能する。ソース側選択ゲートSGSとドレイン側選択ゲートSGDとの間の電極膜21は、ワード線WLとして機能する。ワード線WLは、メモリセルMCのゲート電極(コントロールゲート)である。ドレイン側選択ゲートSGDは、ドレイン側選択トランジスタのゲート電極である。ソース側選択ゲートSGSは、積層体20の下部領域に設けられる。ドレイン側選択ゲートSGDは、積層体20の上部領域に設けられる。上部領域は、積層体20の、CMOSチップ3に近い側の領域を指し、下部領域は、積層体20の、CMOSチップ3から遠い側(金属層40に近い側)の領域を指す。
【0016】
半導体記憶装置1は、ソース側選択トランジスタとドレイン側選択トランジスタとの間に直列に接続された複数のメモリセル(メモリセルトランジスタ)MCを有する。ソース側選択トランジスタ、メモリセルMC、および、ドレイン側選択トランジスタが直列に接続された構造は“メモリストリング”または“NANDストリング”と呼ばれる。メモリストリングは、例えば、ビア28を介してビット線BLに接続される。ビット線BLは、積層体20の下方に設けられ、X方向(図1の紙面方向)に延在している配線23である。
【0017】
積層体20内には、複数の柱状体CLが設けられている。柱状体CLは、積層体20内において積層体の積層方向(Z方向)に該積層体20を貫通するように延在し、ビット線BLに接続されたビア28から半導体ソース層BSLまで設けられている。柱状体CLの内部構造は後述する。なお、本実施形態においては、柱状体CLは高アスペクト比であるため、Z方向に2段(柱状部T1、T2)に分けて形成している。柱状部T2は、柱状部T1よりも後に形成される。柱状体CLは1段であっても、3段以上であっても問題無い。
【0018】
また、積層体20内には、複数のスリットST(LI)が設けられている。スリットST(LI)は、X方向に延在し、かつ、積層体20の積層方向(Z方向)に該積層体20を貫通している。スリットST(LI)内には、シリコン酸化膜等の絶縁膜が充填されており、絶縁膜は板状に構成される。スリットST(LI)は、積層体20の電極膜21を電気的に分離している。代替的に、スリットST(LI)の内壁にシリコン酸化膜等の絶縁膜を被覆し、さらに絶縁膜の内側に導電材料を埋め込んでもよい。この場合、導電材料は、半導体ソース層BSLに達するソース配線LIとしても機能する。即ち、スリットSTは、メモリセルアレイを構成する積層体20の電極膜21から電気的に分離され、かつ、半導体ソース層BSLに電気的に接続されたソース配線LIであってもよい。スリットは、ST(LI)とも呼ぶ。
【0019】
積層体20の上には、半導体ソース層BSLが設けられている。半導体ソース層BSLは、第1半導体層の例である。半導体ソース層BSLは、積層体20に対応して設けられる。半導体ソース層BSLは、第1面F1と、第1面F1と反対側の第2面F2とを有する。半導体ソース層BSLの第1面F1側には、積層体20(メモリセルアレイ)が設けられており、第2面F2側には金属層40が設けられている。金属層40は、ソース線41と電源線42とを含む。これらソース線41と電源線42とは、後に詳述する。半導体ソース層BSLは、複数の柱状体CLの一端に共通に接続されており、同一のメモリセルアレイ2mにある複数の柱状体CLに共通のソース電位を与える。すなわち、半導体ソース層BSLは、メモリセルアレイ2mの共通ソース電極として機能する。半導体ソース層BSLには、例えば、ドープドポリシリコン等の導電性材料が用いられる。金属層40には、例えば、銅、アルミニウム、または、タングステン等の、半導体ソース層BSLよりも低抵抗の金属材料が用いられる。なお、2sは、各電極膜21にコンタクトを接続するために設けられた電極膜21の階段部分である。階段部分2sについては、図2を参照して後述する。
【0020】
一方、積層体20の上であって、半導体ソース層BSLが設けられていない領域には、ボンディングパッド50が設けられている。ボンディングパッド50は、第1電極の例である。ボンディングパッド50は、金属ワイヤなど(図示せず)に接続され、半導体記憶装置1の外部から電源供給を受ける。ボンディングパッド50は、コンタクト29、配線24および配線34を介して、CMOSチップ3のトランジスタ31に接続される。このため、ボンディングパッド50から供給された外部電源が、トランジスタ31に供給される。コンタクト29は、例えば、銅、タングステン等の低抵抗金属が用いられる。
【0021】
本実施形態では、アレイチップ2とCMOSチップ3とは、個別に形成され、貼合面B1で貼合されている。したがって、アレイチップ2内にはトランジスタ31は設けられていない。また、CMOSチップ3内には、積層体20(メモリセルアレイ)は設けられていない。トランジスタ31および積層体20は、ともに半導体ソース層BSLの第1面F1側にある。トランジスタ31は、金属層40がある第2面F2とは反対側にある。
【0022】
積層体20の下方には、ビア28、配線23、および、配線24が設けられている。配線23および24は、層間絶縁膜25内に埋め込まれ、層間絶縁膜25の表面にほぼ面一に露出されている。配線23および24は、柱状体CLの半導体ボディ210等に電気的に接続される。ビア28、配線23および配線24には、例えば、銅、タングステン等の低抵抗金属が用いられる。層間絶縁膜25は、積層体20、ビア28、配線23および配線24を被覆し保護する。層間絶縁膜25には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜が用いられる。
【0023】
ダミー柱状部T2dが、カーフ領域KFの層間絶縁膜25内にZ方向に延伸するように設けられている。ダミー柱状部T2dは、柱状部T2と同じ工程で形成され、柱状体CLと同じ構成を有する。しかし、ダミー柱状部T2dは、半導体記憶装置1のアレイチップ2の外縁部(端部)KFに設けられている。外縁部KFは、ダイシング工程において半導体ウェハを切断してアレイチップ2に個片化するときに切断されるダイシング領域の残部である。また、外縁部KFは、例えば、ガードリングやエッジシールより外側の領域、あるいは、ポリイミド(パッシベーション)で覆われていない領域ということもできる。外縁部KFには、フォトリソグラフィ工程のアラインメントマーク、テストパターン等のように、メモリとして機能しないダミーパターンが形成されている場合がある。ダミー柱状部T2dは、このような外縁部KFに形成されたダミーパターンの一部であり、メモリセルとしては用いられない。
【0024】
層間絶縁膜25と層間絶縁膜35とは貼合面B1において貼合しており、配線24および配線34とも貼合面B1において略面一で接合している。これにより、アレイチップ2とCMOSチップ3とは、配線24および配線34を介して電気的に接続される。
【0025】
図2は、積層体20の構成例を示す平面図である。積層体20は、階段部分2sと、メモリセルアレイ2mとを含む。階段部分2sは、積層体20の縁部に設けられている。メモリセルアレイ2mは、階段部分2sによって挟まれ、あるいは、囲まれている。スリットST(LI)は、積層体20の一端の階段部分2sから、メモリセルアレイ2mを経て、積層体20の他縁の階段部分2sまで設けられている。スリットSHEは、少なくともメモリセルアレイ2mに設けられている。スリットSHEは、スリットST(LI)よりも浅く、スリットST(LI)と略平行に延伸している。スリットSHEは、ドレイン側選択ゲートSGDごとに電極膜21を電気的に分離するために設けられている。
【0026】
図2に示す2つのスリットST(LI)によって挟まれた積層体20の部分は、ブロック(BLOCK)と呼ばれる。ブロックは、例えば、データ消去の最小単位を構成する。スリットSHEは、ブロック内に設けられている。スリットST(LI)とスリットSHEとの間の積層体20は、フィンガと呼ばれる。ドレイン側選択ゲートSGDは、フィンガごとに区切られている。このため、データの書込みおよび読み出し時に、ドレイン側選択ゲートSGDにより、ブロック内の1つのフィンガを選択状態とすることができる。
【0027】
図3および図4のそれぞれは、3次元構造のメモリセルを例示する断面図である。複数の柱状体CLのそれぞれは、積層体20内に設けられたメモリホールMH内に設けられている。各柱状体CLは、Z方向に沿って積層体20の上端から積層体20を貫通し、積層体20内および半導体ソース層BSL内にかけて設けられている。複数の柱状体CLは、それぞれ、半導体ボディ210、メモリ膜220、および、コア層230を含む。柱状体CLは、その中心部に設けられたコア層230、該コア層230の周囲に設けられた半導体ボディ(半導体部材)210、および、該半導体ボディ210の周囲に設けられたメモリ膜(電荷蓄積部材)220を含む。半導体ボディ210は、積層体20内において、積層方向(Z方向)に延在している。半導体ボディ210は、コア層230とトンネル絶縁膜223との間に設けられている。半導体ボディ210は、半導体ソース層BSLと電気的に接続されている。メモリ膜220は、半導体ボディ210と電極膜21との間に設けられ、電荷捕獲部を有する。各フィンガからそれぞれ1つずつ選択された複数の柱状体CLは、図1のビア28を介して1本のビット線BLに共通に接続される。柱状体CLのそれぞれは、例えば、メモリセルアレイ2mの領域に設けられている。
【0028】
図4に示すように、X-Y平面におけるメモリホールMHの形状は、例えば、円または楕円である。電極膜21と絶縁膜22との間には、メモリ膜220の一部を構成するブロック絶縁膜21aが設けられてもよい。ブロック絶縁膜21aは、例えば、シリコン酸化物膜または金属酸化物膜である。金属酸化物の1つの例は、アルミニウム酸化物である。電極膜21と絶縁膜22との間、および、電極膜21とメモリ膜220との間には、バリア膜21bが設けられていてもよい。バリア膜21bは、例えば、電極膜21がタングステンである場合、例えば、窒化チタンとチタンとの積層構造膜が選ばれる。ブロック絶縁膜21aは、電極膜21からメモリ膜220側への電荷のバックトンネリングを抑制する。バリア膜21bは、電極膜21とブロック絶縁膜21aとの密着性を向上させる。
【0029】
半導体部材としての半導体ボディ210の形状は、例えば、底を有した筒状である。半導体ボディ210には、例えば、ポリシリコンが用いられる。半導体ボディ210は、例えば、n型シリコンである。半導体ボディ210は、ドレイン側選択トランジスタSTD、メモリセルMC、および、ソース側選択トランジスタSTSのそれぞれのチャネル部となる。同一メモリセルアレイ2m内の複数の半導体ボディ210の一端は、半導体ソース層BSLに電気的に共通に接続される。
【0030】
メモリ膜220は、ブロック絶縁膜21a以外の部分が、メモリホールMHの内壁と半導体ボディ210との間に設けられている。メモリ膜220の形状は、例えば、筒状である。複数のメモリセルMCは、半導体ボディ210と、ワード線WLとなる電極膜21との間に記憶領域を有し、Z方向に積層されている。各メモリセルMCは、電極膜21と柱状体CLとの交差部に対応して設けられている。メモリ膜220は、例えば、カバー絶縁膜221、電荷捕獲膜222、および、トンネル絶縁膜223を含む。半導体ボディ210、電荷捕獲膜222、および、トンネル絶縁膜223のそれぞれはZ方向に延伸している。
【0031】
カバー絶縁膜221は、絶縁膜22と電荷捕獲膜222との間に設けられている。カバー絶縁膜221は、例えば、シリコン酸化物を含む。カバー絶縁膜221は、犠牲膜(図示せず)を電極膜21にリプレースするとき(リプレース工程)、電荷捕獲膜222がエッチングされないように保護する。カバー絶縁膜221は、リプレース工程において、電極膜21とメモリ膜220との間から除去されてもよい。この場合、図3および図4に示すように、電極膜21と電荷捕獲膜222との間には、例えば、ブロック絶縁膜21aが設けられなくなる。また、電極膜21の形成に、リプレース工程を利用しない場合には、カバー絶縁膜221は、なくてもよい。
【0032】
電荷捕獲膜222は、トンネル絶縁膜223と積層体20との間に設けられ、より詳細には、ブロック絶縁膜21aおよびカバー絶縁膜221とトンネル絶縁膜223との間に設けられている。電荷捕獲膜222は、例えば、シリコン窒化物を含み、膜中に電荷をトラップするトラップサイトを有する。電荷捕獲膜222のうち、ワード線WLとなる電極膜21と半導体ボディ210との間に挟まれた部分は、電荷捕獲部としてメモリセルMCの記憶領域を構成する。メモリセルMCの閾値電圧は、電荷捕獲部中の電荷の有無、または、電荷捕獲部中に捕獲された電荷の量によって変化する。これにより、メモリセルMCは、情報を保持する。
【0033】
トンネル絶縁膜223は、半導体ボディ210と積層体20との間に設けられ、より詳細には半導体ボディ210と電荷捕獲膜222との間に設けられている。トンネル絶縁膜223は、例えば、シリコン酸化物、または、シリコン酸化物とシリコン窒化物とを含む。トンネル絶縁膜223は、半導体ボディ210と電荷捕獲膜222との間の電位障壁である。例えば、半導体ボディ210から電荷捕獲部へ電子を注入するとき(書き込み動作)、および、半導体ボディ210から電荷捕獲部へ正孔を注入するとき(消去動作)、電子および正孔が、それぞれトンネル絶縁膜223の電位障壁を通過(トンネリング)する。
【0034】
コア層230は、筒状の半導体ボディ210の内部スペースを埋め込む。コア層230の形状は、例えば、柱状である。コア層230は、例えば、シリコン酸化物を含み、絶縁性である。
【0035】
図1に示すように、柱状体CLは、それぞれ柱状部T1、T2に分けて形成されているが、柱状部T1、T2の構成は、図3および図4に示す構成でよい。ダミー柱状部T2dは、層間絶縁膜25内に設けられるが、柱状部T2と同時に形成され、柱状体CLと同じ構成を有する。
【0036】
図5は、第1実施形態による半導体記憶装置1のアレイチップ2の構成例を示す概略平面図である。メモリセルアレイ2m等がアレイチップ2の中央部に設けられている。ダミー柱状部T2dは、アレイチップ2の外縁部KFに設けられ、メモリ領域MEMの周囲に設けられている。
【0037】
図6は、ダミー柱状部T2dの構成例を示す断面図である。図7は、1つのダミー柱状部T2dの構成例を示す断面図である。
【0038】
図6に示すように、ダミー柱状部T2dは、外縁部KFに設けられており、柱状部T1、T2と同じ構成を有する。ただし、柱状部T2の下部は、図1に示すように、半導体ソース層BSLに達しており、柱状部T2の下部の周囲には、半導体ソース層BSLが接触している。これに対し、ダミー柱状部T2dは、図6に示すように、層間絶縁膜25内に設けられており、ダミー柱状部T2dには、層間絶縁膜25が接触している。
【0039】
ダミー柱状部T2dの下部における半導体ボディ210の不純物濃度は、柱状部T1、T2におけるメモリセルMCの半導体ボディ210の不純物濃度よりも高い。ダミー柱状部T2dの底部(例えば、ダミー柱状部T2dのメモリホールMHが半導体ボディ210の堆積によって閉塞した部分、すなわち、コア層230の存在しない部分)における半導体ボディ210の不純物濃度は、例えば、1×1020cm-3以上である。ダミー柱状部T2dの底部以外の不純物濃度は、例えば、5×1019cm-3以下であり、ダミー柱状部T2dの底部より低い。柱状部T1、T2におけるメモリセルMCの半導体ボディ210の不純物濃度は、例えば、5×1019cm-3以下である。不純物は、例えば、n型不純物(燐、ヒ素)である。不純物濃度は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX)により測定することができる。柱状部T1、T2におけるメモリセルMCの半導体ボディ210は、ソース側選択ゲートSGSおよびドレイン側選択ゲートSGD以外のワード線WLとして機能する電極膜21と交差する半導体ボディ210の領域である。
【0040】
柱状部T1、T2およびダミー柱状部T2dの半導体ボディ210全体は、当初、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度不純物を含むアモルファスシリコン膜として形成される。半導体ボディ210がポリシリコン膜に結晶化された後、半導体ボディ210から不純物が引き抜かれる。この過程において、ダミー柱状部T2dの下部には、半導体ボディ210が充填されているため、半導体ボディ210の不純物は、あまり引き抜かれない。従って、ダミー柱状部T2dの底部における半導体ボディ210の不純物濃度は高いままであり、柱状部T1、T2の半導体ボディ210の不純物濃度よりも高い。
【0041】
図7に示すように、ダミー柱状部T2dの構成は、柱状体CLと同じでよい。従って、ダミー柱状部T2dは、コア層230と、半導体ボディ210と、メモリ膜220をメモリホールMH内に備えている。
【0042】
コア層230は、層間絶縁膜25内をZ方向に延伸する。半導体ボディ210は、コア層230と層間絶縁膜25との間に設けられ、コア層230の周囲に設けられている。メモリ膜220は、半導体ボディ210と層間絶縁膜25との間に設けられ、半導体ボディ210の周囲に設けられている。メモリ膜220は、トンネル絶縁膜223および電荷捕獲膜222を備える。メモリ膜220の周囲には、層間絶縁膜25が設けられている。コア層230は、例えば、円柱状に形成されている。半導体ボディ210およびメモリ膜220は、例えば、円筒状に形成されている。
【0043】
半導体ボディ210は、柱状体CLの柱状部T1、T2の半導体ボディ210と同様に、例えば、結晶の粒径の比較的大きなポリシリコンが用いられる。
【0044】
図8は、第1実施形態による柱状部T1、T2およびダミー柱状部T2dの半導体ボディ210およびその周辺を示す断面図である。図8は、図3および図7の破線枠Bに示す部分を示す。
【0045】
半導体ボディ210は、ドレイン側選択トランジスタSTD、メモリセルMC、および、ソース側選択トランジスタSTSのそれぞれのチャネル部である。半導体ボディ210は、上述のとおり、例えば、n型シリコンで構成されている。半導体ボディ210に含まれる不純物濃度は、ダミー柱状部T2dの底部における半導体ボディ210に含まれる不純物濃度より低い。不純物は、n型不純物(例えば、燐、ヒ素)である。
【0046】
例えば、半導体ボディ210は、成膜当初、アモルファスシリコン膜で形成されており、800度以上の温度でアニール処理することによってポリシリコン膜に結晶化される。このとき、半導体ボディ210のアモルファスシリコン膜にn型不純物が高濃度(例えば、1×1020cm-3以上)で導入されている場合、ノンドープドアモルファスシリコン膜と比較して、アニール処理後のポリシリコン膜の結晶の粒径が大きくなる。半導体ボディ210にノンドープドアモルファスシリコン膜を用いた場合と比べて、ドープドポリシリコン膜を用いた場合のポリシリコン膜の結晶の粒径は、40%程度拡大する。例えば、半導体ボディ210にノンドープドアモルファスシリコン膜を用いた場合にはアニール処理後のポリシリコン膜の粒径は、例えば、約50nm以下である。これに対し、半導体ボディ210にn型不純物を導入したアモルファスシリコン膜を用いた場合には、アニール処理後のポリシリコン膜の粒径は、例えば、約80nm以上になる。
【0047】
結晶間の粒界は、キャリアをトラップして電位障壁となり、キャリア移動度を低下させる原因となる。半導体ボディ210のポリシリコン膜の結晶の粒径が大きいほど、粒界の密度が小さくなるので、半導体ボディ210のキャリア移動度は向上する。
【0048】
よって、半導体ボディ210にn型不純物を導入したアモルファスシリコン膜を用いた場合、ノンドープドアモルファスシリコン膜を用いた場合と比較して、アニール処理後の半導体ボディ210のキャリア移動度は高くなる。
【0049】
一方、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度不純物が半導体ボディ210内に存在する場合、半導体ボディ210内のキャリア濃度も高くなる。この場合、半導体ボディ210が低抵抗となり、チャネル部として機能することができない。
【0050】
そこで、本実施形態では、アニール処理によってポリシリコン膜の結晶の粒径を増大させた後、半導体ボディ210内の不純物濃度を低下させる。半導体ボディ210内の不純物濃度は、アニール処理による拡散によって低下させる。半導体ボディ210内に存在する不純物濃度を、例えば、5×1019cm-3以下に低減させる。これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコンで構成されながら、メモリセルMCのチャネル部として正常に機能することが可能となる。つまり、半導体ボディ210のキャリア移動度を向上させ、メモリセルMCのセル電流を増大させることができる。
【0051】
半導体ボディ210の不純物濃度が5×1019cm-3以下である場合、半導体ボディ210の抵抗率は、1.5×10-3オーム・cm以上である。即ち、第1実施形態によるメモリセルMCのチャネル部の抵抗率は、1.5×10-3オーム・cm以上となる。
【0052】
尚、結晶等の粒径は、ACOM-TEM(Automated Crystal Orientation Mapping in TEM)分析によって粒径解析を用いて行う。双晶は粒界として取り扱う。また、方位角差(5°)以内の測定点が2点以上連続して存在する場合を同一粒として扱う。平均粒径dは、粒子の総数をN、個々の粒子の面積比と粒径(円相当径)をそれぞれAi、diとしたとき、次式により算出する。
【数1】
【0053】
次に、本実施形態による半導体記憶装置1の製造方法について説明する。
【0054】
図9図17Bは、第1実施形態による半導体記憶装置1の製造方法の一例を示す断面図である。図9図10A図11A図12図13Aおよび図17Aは、柱状部T1、T2の断面を示す。図10B図11B図13Bおよび図17Bは、ダミー柱状部T2dの断面を示す。尚、図9図17Bは、図1に対して構造体の上下方向(Z方向)を逆に表示している。
【0055】
まず、図9に示すように、基板SUB上に、絶縁膜22と犠牲膜121とをZ方向に交互に積層し積層体20_1を形成する。基板SUBは、例えば、シリコン基板等の半導体基板でよく、半導体ソース層BSLでよい。絶縁膜22には、例えば、シリコン酸化膜等の絶縁膜が用いられる。犠牲膜121には、例えば、シリコン窒化膜等の絶縁膜が用いられる。犠牲膜121は、後の工程において電極膜21と置換されるために、絶縁膜22に対して選択的にエッチング可能な材料である。
【0056】
一方、図示しないが、外縁部KFでは、基板SUB上に積層体20_1は形成されていない。
【0057】
次に、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、積層体20_1および層間絶縁膜25にメモリホールMH1を形成する。メモリホールMH1は、積層体20_1内をZ方向に延伸するように形成され、基板SUBに達するように形成される。
【0058】
次に、図10Aに示すように、メモリホールMH1内に犠牲膜26を埋め込む。犠牲膜26には、例えば、ポリシリコン等の絶縁膜22および犠牲膜121に対して選択的にエッチング可能な材料が用いられる。
【0059】
次に、積層体20_1および犠牲膜26上に中間層70を形成する。リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、中間層70を加工し、犠牲膜26の中間層70を除去し、その犠牲膜26上に犠牲膜71を埋め込む。
【0060】
次に、中間層70および犠牲膜71上に、絶縁膜22と犠牲膜121とをZ方向に交互にさらに積層し積層体20_2を形成する。これにより、図10Aに示す構造が得られる。
【0061】
一方、図10Bに示すように、外縁部KFでは、基板SUB上に層間絶縁膜25が形成される。層間絶縁膜25には、例えば、シリコン酸化膜が用いられる。
【0062】
次に、図11Aに示すように、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、積層体20_2にメモリホールMH2を形成する。メモリホールMH2は、積層体20_2内をZ方向に延伸するように形成され、メモリホールMH1上の犠牲膜71に達するように形成される。犠牲膜71は、メモリホールMH2の形成工程におけるエッチングストッパとして機能する。
【0063】
このとき、図11Bに示すように、外縁部KFでは、層間絶縁膜25内に同様にメモリホールMH2を形成する。メモリホールMH2は、層間絶縁膜25内をZ方向に延伸するように形成される。しかし、外縁部KFでは、メモリホールMH1は形成されていないので、メモリホールMH2は、層間絶縁膜25内に形成され、基板SUBには達しない。
【0064】
次に、図12に示すように、メモリホールMH2を介して犠牲膜26を選択的に除去する。これにより、メモリホールMH1、MH2が積層体20_1、20_2内において、Z方向に延伸する1つのメモリホールとして形成される。
【0065】
次に、図13Aおよび図13Bに示すように、メモリホールMH1、MH2の内壁に、電荷捕獲膜222、トンネル絶縁膜223および半導体ボディ210をこの順に堆積する。外縁部KFのメモリホールMH2内にも、電荷捕獲膜222、トンネル絶縁膜223および半導体ボディ210が形成される。電荷捕獲膜222には、例えば、シリコン窒化物が用いられる。トンネル絶縁膜223には、例えば、シリコン酸化膜が用いられる。半導体ボディ210には、例えば、n型不純物がドープされたアモルファスシリコン膜が用いられる。半導体ボディ210のアモルファスシリコン膜は、n型不純物として燐またはヒ素を含む。半導体ボディ210のn型不純物濃度は、例えば、1×1020cm-3以上であり、比較的高濃度となっている。
【0066】
次に、図14に示す構造体をアニール処理する。尚、図14図16は、図13Aの破線枠Bの部分の断面を示す。外縁部KFにおけるダミー柱状部T2dの半導体ボディ210も同様にかつ同時に処理される。
【0067】
図14に示すように、半導体ボディ210は、成膜当初、アモルファスシリコン膜として形成される。
【0068】
次に、図15に示すように、アニール処理によって、半導体ボディ210のアモルファスシリコン膜は結晶化し、ポリシリコン膜に変質する。このとき、半導体ボディ210は1×1020cm-3以上の高濃度n型不純物を含むため、比較的粒径の大きなポリシリコン膜に変質する。例えば、半導体ボディ210が、1×1020cm-3以上の燐濃度を有するアモルファスシリコン膜であり、約800度以上の温度でアニール処理を行った場合、アニール処理後のポリシリコン膜の粒径は、例えば、約80nm以上になる。半導体ボディ210の粒径が大きいと、粒界の密度が低下するため、半導体ボディ210のキャリア移動度が向上し、メモリセルMCのセル電流を増大させることができる。
【0069】
次に、図15および図16に示すように、アニール処理によって、半導体ボディ210のポリシリコン膜に含まれる不純物を拡散させる。例えば、約800度以上の温度でアニール処理する。アニール処理によって、例えば、半導体ボディ210のリンは、リン化水素(PHx(xは、正整数))となって外部へ拡散(脱離)する。不純物の拡散により、半導体ボディ210内に存在する不純物濃度を、例えば、1×1020cm-3以上から5×1019cm-3以下に低減させることができる。(但し、半導体ボディ210内に存在する不純物濃度は、検出限界以下まで低減される訳ではない。)これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコン膜で構成され、かつ、比較的低い不純物濃度を有する。その結果、半導体ボディ210は、キャリア移動度を向上させつつ、メモリセルMCのチャネル部として正常に機能することが可能となる。
【0070】
一方、図13Bに示すように、外縁部KFでは、メモリホールMH1は形成されておらず、メモリホールMH2は、層間絶縁膜25内において深く(長く)形成され、底部において柱状部T2の底部よりも細くなっている。従って、外縁部KFのメモリホールMH2では、その底部に半導体ボディ210が埋め込まれ易くなっている。従って、上記アニール処理において、外縁部KFのメモリホールMH2の底部では、半導体ボディ210のポリシリコン膜に含まれる不純物は、あまり拡散せず、高濃度のまま残る可能性が高い。よって、図17Bに示すように、外縁部KFのメモリホールMH2の底部では、半導体ボディ210のポリシリコン膜には、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度の不純物が残っている。
【0071】
次に、図17Aおよび図17Bに示すように、メモリホールMH1、MH2内の半導体ボディ210の内側にコア層230を埋め込む。このようにして柱状体CLが形成される。図17Bに示すように、外縁部KFのメモリホールMH2の底部では、半導体ボディ210のポリシリコン膜には、高濃度不純物が残っている。
【0072】
次に、図1のスリットSTを形成し、スリットSTを介して、図17Aの犠牲膜121を除去する。さらに、犠牲膜121が除去された後の空間に電極膜21の材料(例えば、タングステン)を埋め込む。これにより、積層体20_1、20_2の犠牲膜121が電極膜21に置換され、図1の積層体20が形成される。
【0073】
スリットSTの内壁にシリコン酸化膜等の絶縁膜を形成し、スリットST内の絶縁膜の内側にタングステン等の導電材料を埋め込む。これにより、図1のソース配線LIが形成される。ソース配線LIは、半導体ソース層BSLに電気的に接続される。
【0074】
次に、柱状体CL上に図示しない多層配線層等を形成する。これにより、アレイチップ2が完成する。
【0075】
次に、図1に示すように、別工程で形成されたCMOSチップ3をアレイチップ2に貼合する。
【0076】
次に、CMP法を用いて、半導体ソース層BSLを露出させる。半導体ソース層BSL上に金属層40およびボンディングパッド50を形成する。これにより、本実施形態による半導体記憶装置1が完成する。
【0077】
本実施形態によれば、半導体ボディ210の成膜工程において、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度のn型不純物を含むアモルファスシリコン膜を形成し、アニール処理において粒径の大きな結晶で構成されたポリシリコン膜に変質する。さらに、アニール処理によって、半導体ボディ210内のポリシリコン膜のn型不純物を外方拡散させる。これにより、半導体ボディ210内に存在する不純物濃度を、例えば、5×1019cm-3以下に低減させる。よって、半導体ボディ210は、粒径の大きなポリシリコン膜で構成され、かつ、メモリセルMCのチャネル部として正常に機能することが可能となる。その結果、半導体ボディ210のキャリア移動度を向上させ、メモリセルMCのセル電流を増大させることができる。
【0078】
一方、図17Bに示すように、外縁部KFでは、メモリホールMH2は、層間絶縁膜25内において深く(長く)形成され、底部において柱状部T2の底部よりも細くなっている。従って、外縁部KFのメモリホールMH2の底部では、半導体ボディ210のポリシリコン膜には、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度の不純物が残る。
【0079】
(変形例1)
図18および図19は、第1実施形態の変形例1に係る半導体記憶装置1の製造方法の一例を示す断面図である。本変形例1では、半導体ボディ210のポリシリコン膜に含まれる不純物を、犠牲膜300を用いて低減させる。
【0080】
図9図15に示す工程を経た後、図18に示すように、半導体ボディ210の内側に、犠牲膜300を形成する。犠牲膜300には、不純物をドープされていない材料膜、例えば、ノンドープドアモルファスシリコン等が用いられる。犠牲膜300の不純物濃度は、このとき半導体ボディ210に含まれている不純物濃度よりも低い。
【0081】
次に、アニール処理によって、半導体ボディ210のポリシリコン膜に含まれる不純物を犠牲膜300に拡散させる。例えば、約800度以上の温度でアニール処理する。これにより、図18に示すように、不純物が、半導体ボディ210のポリシリコン膜から犠牲膜300のノンドープドアモルファスシリコン膜に拡散する。
【0082】
次に、図19に示すように、エッチング法により、犠牲膜300を除去する。これにより、犠牲膜300に拡散された不純物を半導体ボディ210から取り除くことができる。
【0083】
半導体ボディ210に含まれる不純物濃度が依然として高い場合には、新しい犠牲膜300を半導体ボディ210の内側に形成し、同様に、アニール処理およびエッチング処理を繰り返して、半導体ボディ210から不純物を取り除いてもよい。つまり、犠牲膜300の成膜から犠牲膜300の除去までを複数回繰り返してもよい。その後、コア層230が埋め込まれる。
【0084】
これにより、図19に示すように、半導体ボディ210内に存在する不純物濃度を、例えば、1×1020cm-3以上から5×1019cm-3以下に低減させることができる。これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコン膜で構成され、かつ、比較的低い不純物濃度を有する。その結果、半導体ボディ210は、キャリア移動度を向上させつつ、メモリセルMCのチャネル部として正常に機能することが可能となる。
【0085】
その他、本変形例1の構成および製造方法は、第1実施形態の構成および製造方法と同様でよい。これにより、本変形例1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(変形例2)
図20および図21は、第1実施形態の変形例2に係る半導体記憶装置1の構成例を示す断面図である。本変形例2では、積層体20_1を基板SUB上に直接形成するのではなく、基板SUBと積層体20_1との間に、絶縁膜503と、例えば、ポリシリコン膜で構成される半導体ソース層BSLとを設ける。半導体ソース層BSLは、図21に示すように、下から順に、例えば、ポリシリコン膜でそれぞれ構成される半導体膜502、半導体膜501、および半導体膜500で構成される。
【0087】
変形例2の製造方法は以下のとおりである。図20に示すように、積層体20_1、20_2の形成前において、半導体膜501の形成領域に犠牲膜130を形成しておく。犠牲膜130には、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜が用いられる。次に、積層体20_1、20_2および柱状体CLを形成する。柱状体CLは、第1実施形態または変形例1と同様に形成される。よって、半導体ボディ210は、1×1020cm-3以上の高濃度の不純物を有するアモルファスシリコン膜で形成され、その後、5×1019cm-3以下の不純物濃度またはキャリア濃度を有するポリシリコン膜に変質される。コア層230がメモリホールMH1、MH2内に埋め込まれた後、コア層230をエッチバックし、コア層230上にシリコンキャップ層CAPが埋め込まれる。シリコンキャップ層CAPは、半導体ボディ210と電気的に接続され、かつ、その上方にあるビット線BL(図1の配線23)にも電気的に接続されている。シリコンキャップ層CAPは、ビット線BLと半導体ボディ210(メモリセルMCのチャネル部)とを電気的に接続するために設けられている。従って、シリコンキャップ層CAPには、導電性のドープドポリシリコン膜等が用いられる。
【0088】
その後、図2に示すスリットSTを介して犠牲膜130を除去し、犠牲膜130の除去によって露出された電荷捕獲膜222およびトンネル絶縁膜223も除去する。これにより、半導体ボディ210の側面を露出させる。図21に示すように、犠牲膜130が存在していた領域に半導体膜501の材料(例えば、ドープドポリシリコン等の導電材料)を埋め込む。これにより、半導体膜501は、半導体ボディ210の側面に直接接触する。このように、本変形例2では、犠牲膜130の材料を半導体膜501の材料に置換することによって、半導体ボディ210に電気的に接続された半導体膜501が形成される。
【0089】
半導体膜501は、例えば、n型不純物であるリンを含むドープドポリシリコン膜である。この場合、半導体膜501の不純物が半導体ボディ210へ拡散し、柱状部T1の底部における半導体ボディ210の不純物濃度が1×1020cm-3以上の高濃度になる場合がある。この場合、柱状部T1の底部における半導体ボディ210の不純物濃度は、ソース側選択ゲートSGSおよびドレイン側選択ゲートSGD以外の電極膜21と交差する半導体ボディ210の不純物濃度よりも高くなる。
【0090】
一方、図2に示すスリットSTから遠い領域Aにおいて、犠牲膜130は、半導体膜501に置換されずに残置されることがある。領域Aは、隣接する2つのスリットST間の中心位置あるいはその近傍である。この場合、図20に示す構造が一部に残置される。本変形例2では、図17Bに示すように、第1柱状部T1の底部に、不純物が1×1020cm-3以上の高濃度で残る場合がある。この場合、半導体膜501の不純物は半導体ボディ210へ拡散しないものの、第1柱状部T1の底部において不純物濃度は1×1020cm-3以上の高濃度である。したがって、この場合も、柱状部T1の底部における半導体ボディ210の不純物濃度は、ソース側選択ゲートSGSおよびドレイン側選択ゲートSGD以外の電極膜21と交差する半導体ボディ210の不純物濃度よりも高くなる。
【0091】
(第2実施形態)
図22および図23は、第2実施形態に係る半導体記憶装置1の製造方法の一例を示す断面図である。第2実施形態では、半導体ボディ210に含まれるキャリア濃度(可動電子濃度)を水素処理によって低減させる。半導体ボディ210に含まれるキャリア濃度は、水素処理によって低減させる。水素処理は、半導体ボディ210の不純物濃度をほとんど変化させない(水素処理前と同レベル)が、キャリア濃度を低減させることができる。尚、図22および図23は、図3および図7の破線枠Bに示す部分を示す。
【0092】
半導体ボディ210は、ドレイン側選択トランジスタSTD、メモリセルMC、および、ソース側選択トランジスタSTSのそれぞれのチャネル部である。半導体ボディ210は、上述のとおり、例えば、n型シリコンで構成されている。半導体ボディ210に含まれるキャリア濃度は、n型不純物(例えば、燐、ヒ素)の濃度よりも低い。不純物は、n型不純物(例えば、燐、ヒ素)である。
【0093】
キャリアは、半導体ボディ210内において可動な電子または可動なホールであり、導入された不純物がアニール処理等によって活性化されることによって生成される。キャリア濃度は、このように活性化された不純物の濃度、あるいは、可動電子または可動ホールの濃度である。不活性状態の不純物は、半導体ボディ210内において可動電子または可動ホールを供給しない。従って、不純物を不活性化すると、不純物濃度は高いが、キャリア濃度は低くなる。本実施形態では、キャリアは電子である。
【0094】
例えば、半導体ボディ210内においてn型不純物(例えば、燐、ヒ素)が、水素処理によって不活性化(中和)された場合、半導体ボディ210内のn型不純物濃度は高くても、キャリア濃度を比較的低く抑えることができる。例えば、半導体ボディ210にn型不純物を1×1020cm-3以上の高濃度で導入し、その後、PIO(・・・)酸化等で半導体ボディ210を水素処理することによって、半導体ボディ210内のキャリア濃度(可動電子濃度)を5×1019cm-3以下の低濃度にすることができる。
【0095】
例えば、半導体ボディ210は、成膜当初、アモルファスシリコン膜で形成されており、800度以上の温度でアニール処理することによってポリシリコン膜に結晶化される。このとき、半導体ボディ210のアモルファスシリコン膜にn型不純物が高濃度(例えば、1×1020cm-3以上)で導入されている場合、ノンドープドアモルファスシリコン膜と比較して、アニール処理後のポリシリコン膜の結晶の粒径が約40%程度大きくなる。例えば、半導体ボディ210にノンドープドアモルファスシリコン膜を用いた場合には、アニール処理後のポリシリコン膜の粒径は、例えば、約50nm以下である。これに対し、半導体ボディ210にn型不純物を導入したアモルファスシリコン膜を用いた場合には、アニール処理後のポリシリコン膜の粒径は、例えば、約80nm以上になる。
【0096】
これにより、半導体ボディ210にn型不純物を導入したアモルファスシリコン膜を用いた場合、ノンドープドアモルファスシリコン膜を用いた場合と比較して、アニール処理後の半導体ボディ210のキャリア移動度は高くなる。
【0097】
一方、例えば、1×1020cm-3以上の高濃度不純物が半導体ボディ210内に存在する場合、半導体ボディ210内のキャリア濃度も高くなる。この場合、半導体ボディ210が低抵抗となり、チャネル部として機能することができない。
【0098】
そこで、第2実施形態では、半導体ボディ210内の不純物を水素処理によって、不活性化させる。n型不純物の場合、PIO酸化法等を用いてn型不純物(例えば、燐、ヒ素)を不活性化(中和)させる。これにより、半導体ボディ210内に存在するキャリア濃度を、例えば、5×1019cm-3以下に低減させることができる。これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコンで構成されながら、チャネル部として正常に機能することが可能となる。即ち、半導体ボディ210のキャリア移動度を向上させ、メモリセルMCのセル電流を増大させることができる。
【0099】
半導体ボディ210のキャリア濃度が5×1019cm-3以下である場合、半導体ボディ210の抵抗率は、1.5×10-3オーム・cm以上である。即ち、第2実施形態によるメモリセルMCのチャネル部の抵抗率は、1.5×10-3オーム・cm以上となる。
【0100】
次に、第2実施形態による半導体記憶装置1の製造方法について説明する。
【0101】
図9図14の工程を経た後、図14に示す構造体に、原子状水素によるラジカル処理(以下、水素処理ともいう)を施す。ウェット酸化を用いて、半導体ボディ210を水素処理することによって、図22および図23に示すように、n型不純物を不活性化(中和)させる。これにより、半導体ボディ210内に存在するキャリア濃度を、例えば、1×1020cm-3から5×1019cm-3以下に低減させることができる。これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコン膜で構成され、かつ、比較的低いキャリア濃度を有する。その結果、半導体ボディ210は、キャリア移動度を向上させつつ、メモリセルMCのチャネル部として正常に機能することが可能となる。
【0102】
図24および図25は、水素化処理を示す概念図である。図24は、水素処理前の半導体ボディ210の状態を示す。図25は、水素処理後の半導体ボディ210の状態を示す。図24に示すように、ポリシリコン膜のシリコンSiに不純物P(燐)が導入されている。水素処理前において、不純物Pは、活性化されており、シリコンSiと結合している。図25に示すように、PIO酸化法等によって水素処理されると、不純物Pは、一部のシリコンSiと切断され、そのシリコンSiが水素Hと結合される。これにより、不純物Pは不活性化される。不純物Pが不活性化されることによって、不純物Pの濃度は比較的高いままで、キャリア濃度が低下する。これにより、半導体ボディ210のポリシリコン膜の粒径を大きくしつつ、半導体ボディ210内のキャリア濃度を低くすることができる。
【0103】
その後、図17A図17Bおよび図1を参照して説明した工程を経て、第2実施形態による半導体記憶装置が完成する。
【0104】
第2実施形態によれば、半導体ボディ210内の不純物を水素処理によって不活性化させ、キャリア濃度を低下させる。これにより、半導体ボディ210は、比較的大きな粒径のポリシリコンで構成されながら、チャネル部として正常に機能することができる。即ち、半導体ボディ210のキャリア移動度を向上させ、メモリセルMCのセル電流を増大させることができる。
【0105】
図26は、水素化の温度と可動電子の濃度との関係を示すグラフである。
【0106】
図26によれば、水素処理によって、可動電子の濃度が低下することが分かる。特に、約150度の温度で水素処理したときに、可動電子の濃度が最も低下する。即ち、約150度の温度で水素処理したときに、半導体ボディ210内の不純物を最も不活性化させることができる。
【0107】
さらに、水素処理によって、半導体ボディ210に水素が導入されるため、半導体ボディ210の水素濃度が高くなる。例えば、半導体ボディ210の水素濃度は、半導体ボディ210よりも後で形成される図20および図21の半導体ソース層BSLおよびシリコンキャップ層CAPの水素濃度よりも高い。
【0108】
実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【符号の説明】
【0109】
1 半導体記憶装置
2 アレイチップ
3 CMOSチップ
20 積層体
BSL 半導体ソース層
MH1,MH2 メモリホール
MC メモリセル
CL 柱状体
T1,T2 柱状部
T2d ダミー柱状部
ST(LI) スリット
2m メモリセルアレイ
25 層間絶縁膜
210 半導体ボディ
220 メモリ膜
221 カバー絶縁膜
222 電荷捕獲膜
223 トンネル絶縁膜
230 コア層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26