(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012434
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】O/W型ピッカリングエマルションを生産するための化粧用途の乳化組成物、及びこのエマルションを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240123BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240123BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240123BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240123BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/34
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186222
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2020557335の分割
【原出願日】2019-04-16
(31)【優先権主張番号】1853362
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】レオン メンティンク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ウィルス
(72)【発明者】
【氏名】アン-マリー レリティエ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ピオ
(72)【発明者】
【氏名】マルク ラヴァルド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低温で直接利用可能であり、特に化粧用組成物の分野に用途を見出す植物由来の乳化組成物を提供する。
【解決手段】水中油型エマルション(O/W型)を得ることを可能とする、特に化粧用途の乳化組成物であり、エマルションは、8を超える親水-親油性バランス値(HLB)を有する、少なくとも1つのシクロデキストリン及び少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤を含む。天然由来のO/W型乳化剤は、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、並びに非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステル類から選択できる。本出願はまた、特に化粧用途の、本発明にかかる乳化組成物を含有するピッカリングエマルションタイプの組成物、及びそのようなO/W型ピッカリングエマルションタイプの組成物を、特に低温で調製するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型(O/W型)エマルションを得ることを可能とする、特に化粧用途の乳化組成物であって、前記エマルションは:
a.少なくとも1つのシクロデキストリン、並びに
b.少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤であり、ここで前記O/W型乳化剤は、少なくとも1つの、オクテニルコハク酸ナトリウムエステル類の形態の、デキストリン又は加水分解デンプンの脂肪酸エステル類から選択され、
前記O/W型乳化剤は、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、
乳化組成物。
【請求項2】
前記O/W型乳化剤は、シクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.05~0.5部、より優先的には0.10~0.35部、更にまた良好には0.15~0.30部の比率で、前記乳化組成物中に存在することを特徴とする、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシクロデキストリンは、α-、β-、及びγ-シクロデキストリンから、好ましくは未変性のβ-シクロデキストリンから選択される、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記シクロデキストリンは、結晶、偽晶、又は非晶質粉末の形態で存在する、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記O/W型乳化剤はまた、8~20、好ましくは9~16、更にまた良好には11~14の親水-親油性バランス(HLB)を有する、水和天然培地中で自然に生分解される製品から選択される、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項6】
好ましくは、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、及びグリセロールから選択される少なくとも1つのポリオールを更に含む、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項7】
前記組成物は、重量%で:
a.40%~95%の少なくとも1つのシクロデキストリン、
b.5%~40%の、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、前記O/W型乳化剤であって、少なくとも1つの、オクテニルコハク酸ナトリウムエステル類の形態の、デキストリン又は加水分解デンプンの脂肪酸エステル類から選択される、前記O/W型乳化剤、並びに
c.0%~40%の少なくとも1つのポリオール、
を含有する、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのシクロデキストリンの1重量部当たり、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、少なくとも1つの、オクテニルコハク酸ナトリウムエステル類の形態の、デキストリン又は加水分解デンプンの脂肪酸エステル類から選択される、天然由来のO/W型乳化剤、0.01~1部、好ましくは0.15~0.30部を含有することを特徴とする、特に化粧用途のO/W型ピッカリングエマルションタイプの組成物。
【請求項9】
周囲温度(25℃)で液体である1つ又は複数の油、好ましくは少なくとも1つの不揮発性の液体油を含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
最終的な前記O/W型エマルションの含油量は、10~65重量%、好ましくは20~55重量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
レオロジー剤、好ましくは水相用の増粘剤、ゲル化剤、又は沈殿防止剤を更に含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
30μm以下、優先的には10μm以下の液滴サイズを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
特に化粧用途のO/W型ピッカリングエマルションタイプの組成物を生産するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つのシクロデキストリン、並びに、少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤を含む乳化組成物を、水相中に分散させる工程であり、ここで前記O/W型乳化剤は、オクテニルコハク酸ナトリウムエステル類の形態の、デキストリン又は加水分解デンプンの脂肪酸エステル類から選択され、後者は、少なくともこのシクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.15~0.30部の比率で存在し;前記O/W型乳化剤は、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、工程
b)工程a)で得られた混合物に、脂肪相を、10~65重量%の量で、前記脂肪相が前記水相中で微細液滴として分散し、30μm以下、優先的には10μm以下の液滴サイズを有するO/W型エマルションを得ることを可能とするように、十分に機械的撹拌しながら添加する工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すぐに使用でき、且つ低温で直接利用可能であり、特に化粧用組成物の分野に用途を見出す植物由来の乳化組成物に関する。この組成物は、それ自体で十分であり、石油化学由来の共乳化剤を添加する必要なく、エマルションを直接的に安定化することを可能とする。より詳細に、この乳化組成物は、様々な質感の非常に微細なO/W型エマルションを容易に生成すること可能とし、皮膚との親和性が高く、更にエマルションの脂肪相含有量が高い場合でさえ、ドライ且つフレッシュで絹のようなべたつかない感触を示す。この組成物はまた、O/W型エマルションを得るのに必要な天然由来の乳化剤の量を有利に減少させることを可能とする。
【背景技術】
【0002】
エマルションは、液体(又は液体にされた物質)が、別の液体中に微細液滴として分散したものであり、この液体は、前者の液体と混ざらない。それは、巨視的に均質な外観を示すが、顕微鏡でも均質に見える。液滴形状の液体は、分散(又は不連続)相と呼ばれ、他の液体は、分散させる(又は連続)相と呼ばれる。一般的に、エマルションは水及び油から構成され、且つ以下の二相から構成される(単純なエマルション):親水性(水)相及び親油性(脂肪)相。最も一般的に遭遇するエマルションは、連続水相中に親油性相が分散したエマルションであり、油中水型(O/W型)エマルションとは対照的に、水中油型(O/W型)エマルションと呼ばれる。
【0003】
多くの化粧用組成物は、エマルション、典型的には単純なエマルションであり、乳化剤とも呼ばれる界面活性剤によって安定化されている。一例として、文献欧州特許第0685227号明細書は、水溶性連続相、紫外線を遮ることができる保護系、界面活性剤、有機溶媒(低級のポリオール及びアルコール)、並びに少なくとも1つのポリマー、又はより詳細には架橋コポリマー(アクリル酸アルキル類、酢酸ビニル)を含む、化粧用抗日光組成物の非常に複雑な系を提案する。
【0004】
次に、文献仏国特許第2858777号明細書は、少なくとも1つの脂肪性物質(脂肪酸エステル類、ワックス類、バター、天然油-植物、動物、若しくは海産物由来-又は合成油若しくは鉱油、硬化油、及びそれらの混合物)、少なくとも1つの界面活性剤(ポリグリセロールのエトキシル化脂肪酸エステル、アルコールエトキシレート類)、少なくとも1つの共界面活性剤、並びに水を含有する水中油型エマルションを記載する。
【0005】
文献独国特許出願公開第10239647A1号明細書は、その一部で、(a)水相、(b)極性が20~60mN/mである0.5~10重量%の非極性~中極性油の油相、(c)0.005~10重量%のシクロデキストリン誘導体、並びに任意選択的に他の化粧用及び/又は皮膚用剤、補助剤、及び添加剤を含有する、化粧用及び/又は皮膚用油/水(O/W型)エマルションを記載する。
【0006】
文献欧州特許出願公開第3037083A1号明細書は、その一部で、乳化剤を含まない日焼け止め組成物を記載する。
【0007】
文献仏国特許出願公開第2823438A1号明細書は、その一部で、10:1~4:1の重量比の脂肪族アルコール類及び糖脂質の自己乳化の組み合わせに基づく水中油型エマルションを記載し、それは脂肪相中に粘度調整剤も含んでいるという点で優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ヒト又は動物への適用を意図した製品における界面活性剤の使用は、局所、経口、又は別の形態のいずれにせよ問題になることがある。理由は、界面活性剤が細胞膜を損傷させることがあるからである。従って、特に化粧品分野では、界面活性剤の潜在的に有害な影響を低減させる成果、或いは界面活性剤に頼らないようにする成果が承認されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の目的のうちの1つは、水の存在下に置いた時に油性又は脂肪性物質を添加することにより、特に「コールドプロセス」と呼ばれる方法に従って安定したエマルションを形成することができる乳化組成物を提供することである。
【0010】
有利には、本発明にかかるこの乳化組成物は、石油化学由来で非生物分解性の界面活性剤、特にグリコール誘導体、及びエトキシル化又はポリエトキシル化誘導体の使用を著しく低減させることを可能とする。別の変形形態に従って、それは、石油化学由来のこれらの界面活性剤の必要性を排除することを可能とする。
【0011】
この見地から、本発明の組成物はまた、ピッカリングエマルションの生産を可能とする。このタイプのエマルションは、界面活性剤を含まず、典型的には、連続相及び分散相の境界に位置取るシリカなどのコロイド粒子によって安定化されている。本発明の文脈において、これらのコロイド粒子は、少なくとも1つのシクロデキストリンの、少なくとも1つの脂肪性分子との包接複合体からなる有機粒子である。これらの粒子は、非常に有利な皮膚又は毛髪との親和性を有し、動物の細胞膜を損傷させることがない。
【0012】
この結果は、従来の技術において、シクロデキストリンを含有する化粧用途の乳化系を生産しても、エマルションを低温条件下で容易に且つ直接得ることが可能ではなく、高温で作用し且つ通常石油化学由来である慣例の界面活性剤に頼ることが従来必要であったということが示されてきたという事実に対してなおさら注目に値する。これは、特に、水、脂肪性物質、改質多糖、及びシクロデキストリンを含有するO/W型エマルションを記載する文献欧州特許第2091502B1号明細書の教示であり、このO/W型エマルションの基本的な特徴は、5000g/mol未満の分子量の界面活性剤を2重量%未満の量で含有するということである。従って、石油化学由来の通常の界面活性剤に頼ることなく非常に微細で且つ非常に安定したエマルションを生産する、シクロデキストリンを含有する乳化系を生産することは公知でも自明でもなかった。
【0013】
本発明の別の目的は、天然由来の組成物を提供することである。化粧用組成物などの日用の製品を配合するために使用される成分が天然由来であるということは、環境の保証及び保護だけでなく、消費者の幸福にも関係して、今日では主要な問題である。この点に関して、本発明の組成物は、環境問題(乏しい生物分解性)及び安全性(エチレンオキシドは毒性且つ可燃性である)のために置き換えることが最近望ましいとされている、慣例の乳化剤、特にエトキシル化乳化剤を低減させる、又は置き換えることさえも可能とする。
【0014】
本発明の別の目的は、配合者が、特に単一の容器又は反応器へと成分の全てを導入すること(いわゆる「ワンポット」配合)により、最小限のエネルギーの入力で、極めて簡単に採用でき、すぐに使用できる乳化組成物を提供することである。その使用の見地から、本発明が関する組成物は、ワックスなどの多くの固形又はペースト状の慣例の乳化剤とは対照的に、「コールドプロセス」に従って、言い換えれば周囲温度でさえ有利に利用可能であり、ワックスなどを使用するには、温度を上昇させる必要がある(溶かす必要があり、「ホット」で利用可能な成分)。コールドプロセスの概念は、入熱が機械的撹拌により
引き起こされるエネルギー散逸によるもののみである乳化方法を含む。「コールドプロセス」は、乳化組成物を、45℃未満、なお良いのは35℃未満、更にまた良好には周囲温度の水温で、水中で分散させることにより直接使用できることを意味する。
【0015】
本発明の別の目的は、広い範囲の化粧用途の乳化組成物を提供することであり、これは、予見される最終製品の観点から汎用性があるという意味であり:この見地から、本発明にかかる組成物は、ローション、クリーム、ゲル、乳液等などの多様な製品に使用できる。更に、前記組成物は、有利には、皮膚に対して非刺激性、且つ非アレルギー性である。それは、更に、pH、又は電解質の存在に依存せず:言い換えれば、その乳化力は、培地のpH、又は1価、2価、又は3価の塩の存在に影響されないという長所を提示する。この基準は、一般的に、化粧用途、特に局所適用のための製品がpHの変化を受けがちであるか、又はさらされがちである(例として、皮膚のpHは、弱酸性であり、4~6の範囲である)ため、なおさら重要である。従って、pHの観点から使用に対するいかなる特有の制限もない製品を有することは、化粧用組成物に関する非常に大きな技術的利点を示す。
【0016】
最後に、本発明の別の目的は、特に皮膚上のフレッシュな感覚、又はなめらかな質感などの、広範囲の対象の知覚特性を提供する化粧用途の組成物を提供することである。具体的には、本発明の乳化組成物は安定しており、分散脂肪相の含有量が高い場合でさえ、非常に微細且つ調整可能な質感を有し、フレッシュで絹のようなべたつかない感触を示すO/W型エマルションを容易に生産することを可能とする。従って、皮膚に対する良好なエモリエント効果、更に表皮の上部層に対する良好な保湿効果を有するエマルションを得ることが可能である。
【0017】
解決するべき複雑な技術的問題を構成するこれらの目的の全ては、最終的に、本発明の主題によって達成され、これは、以下のものを含む水中油型(O/W型)エマルションを生産することを可能とする特に化粧用途の乳化組成物であり:
1)少なくとも1つのシクロデキストリン、及び
2)少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤、
を含み、O/W型乳化剤は、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する。
【0018】
HLBの計算は、親水性部分の分子量、及び問題の分子の分子量を考慮し、以下の方程式に従って求めることができる:
【数1】
【0019】
本出願では、「シクロデキストリン」という用語は、1~4個の炭素の共有結合により結合された6~12個のグルコース単位を含む非置換の未変性シクロデキストリン、特にそれぞれ6、7、及び8個のグルコース単位を含むα、β、及びγ-シクロデキストリンなどの他の公知のあらゆるシクロデキストリンを表し、且つそれを含む。
【0020】
この用語は、同様に「シクロデキストリン誘導体」を含み、これらは、ヒドロキシル基OHのうちの少なくともいくつかがOR基へと変えられた分子であり、ここで、Rは、全体的にアルキル基を表す。この見地から、シクロデキストリン誘導体は、特に、メチル化及びエチル化シクロデキストリンであるが、ヒドロキシプロピル化及びヒドロキシエチル化シクロデキストリンなどの、ヒドロキシアルキル基で置換されているものも含む。
【0021】
本発明の好ましいシクロデキストリンは、α、β、及びγ-シクロデキストリンであり、未変性のβ-シクロデキストリンが最も好ましい。
【0022】
シクロデキストリンは、特に結晶、偽晶、又は非晶質粉末の形態をとる。
【0023】
本出願では、「天然由来のO/W型乳化剤」という用語は、再生可能資源から得られるあらゆる分子、特に、植物、微生物、又は藻類から抽出又は分泌され、物理的、化学的、酵素学的に改質した後に、油中水型O/W型エマルションの生産、又はそのようなエマルションの安定性の促進を可能とする分子を表す。従って、この定義には、天然由来のO/W型共乳化剤と呼ばれる製品も含まれる。
【0024】
本出願人は、多数の試験及び実験計画を行った後に、非常に驚くべきことに、且つ予期せずに、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する天然由来の乳化剤をシクロデキストリンと組み合わせることにより、それ自体公知である様式でO/W型エマルションを得ることが可能であり、O/W型エマルションの安定性及び品質に対する逆効果があるどころか、これに反して非常に好ましい効果があることを観察できた。従って、有利には、満足で安定したエマルションを得るために必要とされる天然由来の乳化剤の量を減少させること、更にエマルションの質感及び知覚プロファイルを細かく調節することが可能である。
【0025】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、非常に少量の天然由来のO/W型乳化剤が存在することで、油と水の界面に位置取る、シクロデキストリンと、分散脂肪相中にコロイド状、固体状、又は半流動体の粒子の形状で存在する特定の分子との間の包接複合体を、その場で形成することが大幅に容易となるように見える。これらの粒子は、非常に、物理的及び知覚的に、皮膚又は毛髪との親和性が高く、動物の細胞膜を損傷させることがない。
【0026】
シクロデキストリンの、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する少量の天然由来のO/W型乳化剤との組み合わせにより、サイズが30μm未満、更にはサイズが10μm未満の液滴を含む非常に安定したエマルションを得ることが可能であることが示されてきた。この添加により、O/W型エマルションの最終粘度を調節することが可能となることも示されてきた。この粘度の調節では、30μm、更には10μm未満の液滴サイズを組み合わせることにより、エマルションの質感を有利に調節できる。
【0027】
8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する天然由来のO/W型乳化剤は、好ましくは、シクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.05~0.5部、より優先的には0.10~0.35部、更にまた良好には0.15~0.30部の比率で、乳化組成物中に存在する。
【0028】
この天然由来のO/W型乳化剤はまた、特に8~20、好ましくは9~16、更にまた良好には11~14の親水-親油性バランス(HLB)を有する、水和天然培地中で自然に生分解される製品から選択されてもよい。
【0029】
一例として、この天然由来のO/W型乳化剤は、HLBに関する上記の条件を満たす場合に限って、以下の製品:アルキルポリグルコシド;少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物;ポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択され、特に、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、ソルビタン、アンヒドロヘキシトール類、例えば、より詳細には、イソソルビド、マンニ
トール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スクロース、グルコース、ポリデキストロース、水素化グルコースシロップ、デキストリン、及び加水分解デンプンの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択されてもよい。
【0030】
天然由来のO/W型乳化剤は、好ましくは、水和した自然環境において自然に生分解されるように選択される。それは、特に脂肪酸から、又はエステル交換反応によって油若しくは油の混合物から得られる、ポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類を含んでもよい。使用される脂肪酸類は、8~22個の炭素原子、好ましくは10~18個の炭素原子、より詳細には12~18個の炭素原子を含む。これらの酸は、直鎖状又は分枝鎖状であっても、飽和又は不飽和であってもよく、1つ又は複数のペンダントヒドロキシル官能基を有してもよい。油は、飽和又は不飽和であってもよく、周囲温度で液体~固体であってもよく、任意選択的に、ヒドロキシル官能基を有してもよく、好ましくは1~145、より詳細には5~105のヨウ素指数を有し得る。
【0031】
天然由来のO/W型乳化剤は、より詳細には、ポリグリセロールエステル類から、好ましくは、2~12個のグリセロール単位、好ましくは3~10個のグリセロール単位を含むポリグリセロールと、ヨウ素インデックスが1~15、より詳細には5~10の少なくとも1つの未水添又は部分的水添植物油との反応から得られるエステル類から選択される。それらは、特に、ポリグリセロールのオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ジイソステアリン酸、及びカプリル酸エステル類であってもよく、特に、以下の製品であってもよい:おおよそ8のHLBを有するジオレイン酸ポリグリセリル-5(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)G 5 DOなど)、おおよそ9のHLBを有するカプリン酸ポリグリセリル-2(HydriorのHydriol(登録商標)PGC.2など)、おおよそ9のHLBを有するステアリン酸ポリグリセリル-3(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)PSなど)、おおよそ9のHLBを有するラウリン酸ポリグリセリル-2(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)G2Lなど)、おおよそ10のHLBを有するパルミチン酸ポリグリセリル-3(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)PPなど)、おおよそ11のHLBを有するジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)G10 DIなど)、おおよそ11.5のHLBを有するカプリル酸ポリグリセリル-6、おおよそ13のHLBを有するラウリン酸ポリグリセリル-5(Evonik Dr.Straetmans GmbHのDermofeel(登録商標)G5Lなど)、おおよそ14のHLBを有するカプリン酸ポリグリセリル-3(HydriorのHydriol(登録商標)PGC.3など)、おおよそ14のHLBを有するカプリン酸ポリグリセリル-4(MassoのMassocare PG4 Cなど)、おおよそ14.8のHLBを有するモノラウリン酸ポリグリセリル-10、おおよそ15のHLBを有するカプリル酸ポリグリセリル-6(Dr.Straetmans GmbH/EvonikのDermofeel(登録商標)G 6 CYなど)、おおよそ16のHLBを有するラウリン酸ポリグリセリル-10(Dr.Straetmans
GmbH/EvonikのDermofeel(登録商標)G 10Lなど)。
【0032】
天然由来のO/W型乳化剤は、好ましくはアルキルポリグルコシド類から選択され、時折アルキルポリグリコシド類と呼ばれ、頭字語APGで示される。これらの乳化剤は、それ自体が周知の非イオン界面活性剤である。仏国特許第2948285号明細書は、構造体の観点からそれらを提示し、それらを調製する方法を説明する。それらは、以下の一般式(I):
R1-O-(R2-O)p-(S)n
によって示すことができ、式中:
・Sは、還元糖を示し、5~6個の炭素原子を含んでもよく、
・R1は、おおよそ8~24個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖アルキル及び/若しくはアルケニル基、又は直鎖若しくは分岐鎖アルキル基がおおよそ8~24個の炭素原子を含むアルキルフェニル基を表し、
・R2は、2~4個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、
・nは、1~15の範囲の値を表し、
・pは、0~10の範囲の値を表す。
【0033】
「還元糖」という用語は、以下の参考マニュアルで定義されるように、式(I)において、それらの構造で、アセタール基のアノマー炭素と酸素との間に確立されるグリコシド結合を示さない糖誘導体を表す:Biochemistry,Daniel Voet/Judith G.Voet,p.250,John Wyley & Sons,1990。オリゴマー構造(S)nは、それが光学異性、幾何異性、又は位置異性かどうかに関わらず、あらゆる形態の異性であってもよく;異性体の混合物を表すこともできる。
【0034】
本発明の1つの特定の態様に従って、式(I)の化合物の定義では、Sは、グルコース、デキストロース、スクロース、フルクトース、イドース、グロース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、ラクトース、セロビオース、マンノース、リボース、キシロース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、デキストラン、又はタロースから選択される還元糖を示し、より詳細にはグルコース、キシロース、又はアラビノースから選択される還元糖を示す。
【0035】
本発明のアルキルポリグルコシドの第1の好ましい変形形態は、C12~C20アルキルグルコシドであり、ここで:
・R1が、より詳細には、おおよそ12~20個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖アルキル及び/又はアルケニル基であり、
・pが、0~3の範囲の値、及び優先的にはゼロに等しい値をとり、
・Sが、グルコース、フルクトース、又は、ガラクトースであり、より優先的にはグルコースを表す、
式(I)の化合物である。
【0036】
本発明のアルキルポリグルコシドの第2の好ましい変形形態は、第1の好ましい変形形態のC12~C20アルキルグルコシドであって、式中:
・R1は、より詳細には、おおよそ12~20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を表し、
・pは、ゼロに等しく、
・Sは、グルコースを表す。
【0037】
式(I)のアルキルポリグルコシドは、特に、以下の名前で市販されている:BASF社により販売されている、Plantacare(登録商標)810 UP(R1がC8~C10である/INCI:カプリリル/カプリルグルコシド)、Plantacare(登録商標)818 UP(R1がC8~C16である/INCI:ココ-グルコシド)、Plantacare(登録商標)2000 UP(R1がC8~C16である/INCI:デシルグルコシド)、及びPlantacare(登録商標)1200 UP(R1がC12~C16である/INCI:ラウリルグルコシド);FCI Technology社により販売されている、Macanol(登録商標)810(R1がC8~C10である)、Macanol(登録商標)1200(R1がC12~C14である)、Macanol(登録商標)816(R1がC8、C10、C12、C14、C16である混合物);Neochem社により販売されている、Neocare MF 0718(R1がC8~C10である/INCI:カプリリル/カプリルグルコシド)、Neoca
re MF 0012(R1がC12~C14である/INCI:ラウリルグルコシド)、Neocare MF 0002(R1がC8~C16である/INCI:デシルグルコシド)、Neocare MF 818(R1がC8~C16である/INCI:ココ-グルコシド);Evonik Healthcare社により販売されているTego
Care CG 90(R1がC14~C16である/INCI:セテアリルグルコシド)。
【0038】
天然由来のO/W型乳化剤は、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド、及び少なくとも1つの脂肪族アルコールからなる混合物であってもよい。これらの混合物では、アルキルポリグルコシドは、上記している本発明で有用な全てのアルキルポリグルコシドから選択できる。炭素原子の総数が8~24個の範囲である直鎖又は分枝鎖脂肪族アルコール類は、アルキルグルコシドと混合するための有用な脂肪族アルコール類として使用できる。
【0039】
本発明で有用で、且つ市販されているアルキルグルコシド及び脂肪族アルコール類の混合物は、SEPPIC社により販売されている以下のものである:Montanov(商標)14(INCI:ミリスチルアルコール&ミスリチルグルコシド)、Montanov(商標)202(INCI:アラキジルアルコール、及びベヘニルアルコール、及びアラキジルグルコシド)、Montanov(商標)68(INCI:セテアリルアルコール&セテアリルグルコシド)、Montanov(商標)82(INCI:セテアリルアルコール及びココ-グルコシド)、Montanov(商標)S(INCI:ココ-グルコシド&ココナッツアルコール)、Montanov(商標)L(INCI:C14~C22アルコール&C12~C20アルキルグルコシド)。
【0040】
アルキルポリグルコシド及び脂肪族アルコールの好ましい混合物は、SEPPICにより、Montanov(商標)Lの名前で販売されているものであり、これは、C14~C22脂肪族アルコール類、及びC12~C20アルキルポリグルコシドの混合物である(INCI:C14~C22アルコール&C12~C20アルキルグルコシド)。アルキルポリグルコシド及び脂肪族アルコールのより好ましい混合物は、SEPPICにより、Montanov(商標)68の名前で販売されているものである(INCI:セテアリルアルコール&セテアリルグルコシド)。
【0041】
天然由来のO/W型乳化剤はまた、特にオクテニルコハク酸ナトリウムエステル類の形態の、デキストリン又は加水分解デンプンの脂肪酸エステル類から選択できる。これらは、例えば、Cleargum(登録商標)という名前で出願人により販売されている製品、特にCleargum(登録商標)CO 01、及びCleargum(登録商標)CO 03という製品であってもよい。
【0042】
本発明の乳化組成物は、使用される割合に応じて、特定の質感又はフレッシュな感覚などの、有利な知覚的効果を得ることを可能とする。
【0043】
前記乳化組成物の有利な特性は、使用される2つの化合物の組み合わせから生じ、これは、乳化安定度及び知覚特性の観点から高い相乗効果を示す。これらの化合物をどのような割合で組み合わせても非常に満足な結果が得られたにもかかわらず、得られる結果は、化合物を非常に特異的な割合で組み合わせた場合に特に圧倒的である。
【0044】
より詳細に、本発明にかかる本乳化組成物の様々な成分の各々は、乳化前に異なる相へと統合されてもよい。代替的に、本発明の本組成物の様々な成分は、互いに混合されて、以下に「乳化系」と表されるものを形成し;前記乳化系を、O/W型エマルションの形成を可能とするために、2つの不混和相のいずれかに添加することが可能である。本発明は
、有利には、これらの2つの実施形態を同じ化合物を用いて可能とし、これにより、操作性の余地が広がり、使い勝手の良さがもたらされる。
【0045】
本発明のそのような乳化組成物は、特に、完全に天然由来であり、且つコールドプロセスによって、より詳細には周囲温度で利用可能であるという長所を有する。本発明の前記組成物は、化粧用途のものであり、この文脈では、pH、又は培地の塩度の理にかなう変化に影響を受けにくく、刺激性でもなく、アレルギー、特に皮膚アレルギーも引き起こしやすいこともない。更に、本発明の組成物は、あらゆるタイプのエマルション、特にピッカリングエマルションを生産するために使用されてもよく、従って、多種多様な用法:クリーム、乳液、セラム、ローション等に適切である。
【0046】
本発明の乳化組成物は、ピッカリングエマルションの生産を可能とし、有利には、皮膚又は毛髪との親和性が高い有機粒子によって安定させられてもよい。それは、補完的に、カルシウム又はアルミニウム塩の形態の、シリカ及び粒状オクテニルコハク酸デンプンなどのピッカリングエマルションを形成又は安定させることが可能な他の製品を含んでもよい。
【0047】
乳化組成物は、好ましくは、少なくとも1つのポリオールも含む。
【0048】
本出願で扱うポリオール類は、他に公知の全てのポリオール類であり、特にマルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、及びグリセロールであり、グリセロール及びソルビトールが好ましいポリオールである。好ましくは、このポリオールは、結晶化するか、そうでなければ粉体の形状で存在する。
【0049】
本発明に従って、特に化粧用途の、水中油型(O/W型)タイプのエマルションを得ることを可能とする乳化組成物は、重量%で:
1)40%~95%の少なくとも1つのシクロデキストリン、
2)好ましくは、5%~40%の、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、及びポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択される少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤、並びに
3)0%~40%の少なくとも1つのポリオール、
を含有する。
【0050】
本発明のこの乳化組成物は、好ましくは、重量%で:
1)45%~85%の少なくとも1つのシクロデキストリン、
2)好ましくは、5%~30%の、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、及びポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択される、少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤、並びに
3)10%~40%の少なくとも1つのポリオール、
を含有することを特徴とする。
【0051】
本発明のこの組成物は、最も好ましくは、重量%で:
1)40%~80%の少なくとも1つのシクロデキストリン、
2)好ましくは、10%~20%の、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、及びポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択される、少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤、並
びに
3)10%~30%の少なくとも1つのポリオール、
を含有することを特徴とする。
【0052】
好ましくは、8を超える親水-親油性バランス(HLB)を有する天然由来のO/W型乳化剤は、水和天然培地中で自然に生分解される製品であり、最も優先的には少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物である。
【0053】
本発明の別の主題は、特に化粧用途のピッカリングO/W型エマルション組成物に関し、それは、少なくとも1つのシクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.05~0.5部、0.10~0.35部、更にまた良好には0.15~0.30部の少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤を含有し、後者は、好ましくは8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、アルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、並びにポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステル類から選択されることを特徴とする。
【0054】
本発明のO/W型ピッカリングエマルション組成物はまた、例えば植物油などの周囲温度(25℃)で液体であるか、そうでなければワックスの場合のような固体の脂肪相を含んでもよい。この液体脂肪相は、由来が鉱物、動物、植物、又は合成であってもよく、炭化水素系油、又は更に場合によってはシリコーン油から構成されていてもよい。炭化水素系油は、炭素及び水素原子、任意選択的に酸素及び窒素原子から本質的に形成される、又は更にそれらからなる油であり、この油は、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン、及び/又はアミド基を含むことが可能である。
【0055】
この組成物は、好ましくは、周囲温度(25℃)で液体である1つ又は複数の油、好ましくは少なくとも1つの不揮発性の液体油を含有する。不揮発性の液体油は、周囲温度及び大気圧で、少なくとも1時間皮膚に留まることが可能な油を指す。
【0056】
液体脂肪相は、有利には、皮膚に対してエモリエント効果を付与する1つ又は複数の不揮発性の油を含む。イソノナン酸セテアリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸又は乳酸2-オクチルドデシル、コハク酸2-ジエチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリルなどの脂肪酸エステル類、トラセチン、トリクプリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、トリイソステアリン酸グリセロール、酢酸トコフェロール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、又はイソステアリン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコールなどの高級脂肪族アルコール類、アボカド油、カメリア油、ヘーゼルナッツ油、椿油、カシューナッツ油、アルガン油、大豆油、ブドウ種油、ゴマ油、トウモロコシ油、麦芽油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、ピーナッツ油、オリーブ油、及びそれらの混合物などの植物油、カリテバター及びカメリアバターなどの植物性バターを挙げることができる。
【0057】
これらの油は、流動パラフィン、スクアラン油、ワセリン、ジメチルシロキサン類、及びそれらの混合物などの炭化水素油又はシリコーン油であってもよい。
【0058】
液体脂肪相はまた、任意選択的に揮発性油を含んでもよい。揮発性油は、周囲温度及び大気圧で、1時間未満で皮膚から蒸発することが可能な油である。揮発性油は、べたつく
感触を低減させるために、例えば、シリコーン油又は短い脂肪酸のトリグリセリドから選択されてもよい。
【0059】
本発明のO/W型ピッカリングエマルション組成物は、好ましくは、再生可能由来の油のみ、特に、好ましくは精製された植物由来の油又はバターのみを含有する。これらの油及びバターは、それらが、高白色度及び容易に調節可能な粘度を備える非常に安定したエマルションを得ることを可能とするという意味で、本発明の主題である乳化剤系と理想的に調和している、
【0060】
本発明の乳化組成物は、有利には、非常に高い含油量のO/W型エマルションを調製することを可能とする。このタイプの油に富んだO/W型エマルションは、一般的に、慣例の乳化剤では経時的に安定な形態で得ることが難しい。最終的なO/W型エマルションの含油量は、好ましくは、10~65重量%、好ましくは約20~55重量%である。例えばヒマワリ油及びパルミチン酸イソプロピルなどの植物油又は植物由来の油は、クリーム分離又は相分離を生じさせない安定したエマルションの生産を可能とする、より特有の効果を有する。
【0061】
本発明の組成物は更に、特に、例えばアラビアガム、コンニャクガム、グアーガム、又はそれらの誘導体などの植物から得られるガム類;アルギン酸塩類又はカラギーナン類などの藻類から抽出されるガム類;キサンタン類、マンナン類、スクレログルカン類、又はそれらの誘導体などの微生物発酵から得られるガム類;カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース及びそれらの誘導体;より詳細には、加工デンプン、特にアセチル化、カルボキシメチル化、オクテニルコハク酸、又はヒドロキシプロピル化デンプンなどのデンプン及びその誘導体;並びに、ポリアクリル酸類又はカルボマー類などの合成ポリマーなどの、水相用の増粘剤、ゲル化剤、又は沈殿防止剤などのレオロジー剤を含んでもよい。
【0062】
本発明の組成物は、好ましくは、任意選択的に改質される、植物又は発酵から得られた天然多糖類から選択されるレオロジー剤を含む。キサンタン及びその誘導体は、より詳細には、エマルション全体の1重量%未満の含有量で使用される場合でさえ、非常に微細な液滴サイズを有するO/W型エマルションを得ることを可能とする。
【0063】
本発明にかかる乳化組成物を使用することにより得られるエマルションは、好ましくは、30μm以下、優先的には10μm以下の液滴サイズを有する。「エマルションの液滴サイズ」という用語は、水相に懸濁した状態で分散した脂肪相の液滴の平均径を意味することが意図される。液滴サイズが小さいと、エマルションの凝集の速度が減少することによりエマルションの安定性が増大し、それ故相分離の速度が増大する。液滴サイズは多数のパラメーターに依存し、この点で、モニタリングすることが適切であり、且つ乳化系の配合に固有でない特徴を示す。液滴サイズは、LEICA DMLS光学顕微鏡を使用して、×10倍率で測定される。
【0064】
本発明の組成物は更に、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、及びそれらの混合物から選択される防腐剤を含んでもよい。
【0065】
本発明の組成物は、好ましくは、25℃で3000mPasを超える、好ましくは25℃で5000mPasを超えるブルックフィールド粘度を有する。粘度は、製品試料に接した状態で20毎分回転数の速度で回転させられるブルックフィールドDV-II+Pro粘度計を使用して測定される。この回転運動に対する製品の抵抗は、1分間記録され、ミリパスカル秒へと変換される。各試料に対して、粘度は3回測定され、3つの値の算術平均が保持される。測定される粘度に適切なスピンドルは、以下の範囲に従って選択され
る:選択されるスピンドルは、粘度が5000mPa・s以下である場合のスピンドルSP3、粘度が5000mPa・s~7000mPa・sである場合のSP4、並びに粘度が7000mPa・s以上である場合のSP5である。
【0066】
本発明の乳化剤系の知覚特性を特徴付けるために、知覚の記述子、及び対応する5段階の知覚評価プロトコルが使用される。これらの5つの段階は、以下のケア用品の塗布の様々な局面に対応する:外観、取り上げ時、伸ばす時、1分後、2分後。これらの5つの局面の間に、いくつかの知覚の記述子は、評価者のパネルにより評価され、評価者は、0~10点の範囲のスコアを与える。
【0067】
本発明の組成物は、好ましくは8を超える白さの記述子を示す。白さの記述子は、
図1の色のパレットにより定義される。製品は、評価者のパネルによりランプ下で調査され、色パレットと比較される。
【0068】
本発明の組成物は、好ましくは8を超える明るさの記述子を示す。明るさは、製品の光を反射する傾向により定義される。
【0069】
本発明の組成物は、好ましくは8を超える伸びの記述子を示す。伸びは、50~100μlの製品を手の上に置いた後、10回転させて伸ばしながら、ランプ下で製品を調査することにより評価される。5~10回転目の手の上での動きに対する抵抗が少ないほど、伸びは大きい。
【0070】
本発明の組成物は、好ましくは8を超える膜形成の記述子を示す。膜形成の記述子は、製品が、10回回転させた後2分にわたって皮膚上を滑らせた場合に連続膜を形成する傾向に対応する。
【0071】
本発明のさらなる主題は、特に化粧用途のO/W型ピッカリングエマルション組成物を生産するための方法であって、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つのシクロデキストリン及び少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤を含む乳化組成物を、水相中に分散させる工程であり、後者は、少なくともこのシクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.05~0.5部、より優先的には0.10~0.35部、更にまた良好には0.15~0.30部の比率で存在し;この天然由来のO/W型乳化剤は、特に、8未満、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの少なくとも1つの混合物、並びにポリオールの少なくとも1つの非エトキシル化脂肪酸エステルから選択され、より優先的には、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物から選択することが可能である、工程、
b)工程a)で得られた混合物に、脂肪相を、エマルションの最終的な重量に対して、好ましくは、10~65重量%、好ましくは約20~55重量%の量で、脂肪相が水相中で微細液滴として分散し、30μm以下、優先的には10μm以下の液滴サイズを有するO/W型エマルションを得ることを可能とするように、十分に機械的撹拌しながら添加する工程。
【0072】
一変形形態に従って、特に化粧用途のO/W型ピッカリングエマルション組成物を生産するための本発明の方法は、以下の工程を含む:
a)少なくとも1つのシクロデキストリン及び少なくとも1つの天然由来のO/W型乳化剤を含む乳化組成物を、脂肪相中に分散させる工程であり、後者は、少なくともこのシクロデキストリンの1重量部当たり、0.01~1部、好ましくは0.05~0.5部、より優先的には0.10~0.35部、更にまた良好には0.15~0.30部の比率で
存在し;この天然由来のO/W型乳化剤は、特に、8を超える、優先的には9以上の親水-親油性バランス(HLB)を有する、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物、並びにポリオールの非エトキシル化脂肪酸エステルから選択され、より優先的には、少なくとも1つのアルキルポリグルコシド及び少なくとも1つの脂肪族アルコールの混合物から選択することが可能であり;脂肪相は、優先的には、エマルションの最終的な重量の10~65重量%、好ましくは約20~55重量%を示す、工程、並びに
b)工程a)で得られた混合物を、水相に、脂肪相が、水相中で微細液滴として分散し、30μm以下、優先的には10μm以下の液滴サイズを有するO/W型エマルションを得ることを可能とするように十分に機械的撹拌しながら添加する工程。
【0073】
以下に記載した非限定的な例示的実施形態により、本発明をより明確に理解することが可能であろう。
【0074】
実施例1
以下に記載した非限定的な例示的実施形態により、及び添付された図面を検討することにより、本発明をより明確に理解することが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】白さの記述子を評価するために使用した色の範囲を示す。
【
図2】本発明の乳化組成物から得た6つのO/W型エマルションの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
O/W型エマルションの形態の6つの組成物を、本発明に従って、以下のプロトコルを使用して生産する。これらの6つの組成物の組成を、表1に報告する。
【実施例0077】
まず、ゲル化剤を、水中に、解膠ブレードを使用して1000毎分回転数で撹拌しながら分散させる。水の温度を、ゲル化剤がキサンタンガムである場合は40℃、ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロースである場合は70℃に設定した。
【0078】
その後、β-シクロデキストリンを、グリセロールで濡らし、β-シクロデキストリン/グリセロール混合物を、水/ゲル化剤混合物に、1000毎分回転数で撹拌しながら添加して、水相を得る。
【0079】
β-シクロデキストリンの量を、場合に応じて、組成物の2質量%又は5質量%で設定する。
【0080】
個別に、SEPPIC社のアルキルポリグルコシドMontanov 68(INCI:セテアリルアルコール&セテアリルグルコース)を、ヒマワリ油又はパルミチン酸イソプロピルに、40℃で磁気撹拌しながら添加して、油相を得る。
【0081】
その後、油相を、40℃で、1500毎分回転数で15分間撹拌しながら、水相中で乳化させる。
【0082】
防腐剤を添加する(ベンジルアルコール及びデヒドロ酢酸をベースとした混合物)。
【0083】
【0084】
図2は、表1に示した配合に従って得られた6つのO/W型エマルションの写真である。
【0085】
1%のMontanov(商標)68(セテアリルアルコール及びセテアリルグルコース)、及び2又は5%のβ-シクロデキストリンを含む、本発明にかかるエマルションの全ては、1重量%の慣習的なO/W型乳化剤を使用するだけで、安定したO/W型エマルションを得ることを可能とすることに留意されたい。
【0086】
これらの組成物の各々に対して、測定を、粘度、液滴サイズ、白さ、伸び、べたつき特性、及び浸透特性について行う。組成物は、本発明を実施するための形態の残りの部分において、試料又は製品という用語を使用して無差別に指定されるであろう。
【0087】
粘度を、ブルックフィールドDV-II+Pro粘度計を使用して測定する。固定サイズのスピンドル(器機の設定値に応じて、粘性レベルに従って使用されるスピンドルSP2~SP7)を、20毎分回転数の速度で、製品試料に接した状態で回転させる。この回転運動に対する製品の抵抗を、1分間記録し、mPa・sと表されるミリパスカル秒に変換する。各試料に対して、粘度を3回測定し、3つの値の算術平均を保持する。
【0088】
白さの記述子を、
図1の色のパレットにより定義する。製品を、評価者のパネルによりランプ下で調査し、色パレットと比較する。
【0089】
伸びを、50~100μlの製品を手の上に置いた後、10回転させて伸ばしながら、ランプ下で製品を調査することにより評価する。5~10回転目の手の上での動きに対する抵抗が少ないほど、伸びは大きい。
【0090】
組成物のべたつき特性を、皮膚上で製品を10回回転させた1分後に、製品をランプ下で検査することにより評価する。その後、評価者のパネルが、製品を塗布した皮膚を親指及び人差し指の間に挟み、こする動きをした場合の製品の耐性を評価する。評価者のパネルはまた、皮膚に与えられた油性又は非油性の外観を考慮する。
【0091】
最後に、製品の浸透特性を、製品を、皮膚上で滑らせることにより皮膚上で10回回転させた2分後に、製品をランプ下で検査することにより評価する。その後、評価者のパネルが、回収した製品残留物の量を評価する。
【0092】
6つのO/W型エマルション組成物に対して得られた結果を、表2に提示する。
【0093】
【0094】
エマルションの粘度は、β-シクロデキストリンの濃度が上昇する場合に、わずかに上昇し:2%のβ-シクロデキストリンでの3900~4900mPa・sから、5%での12000mPa・s超までになる。同様に、粘度は、使用した増粘剤がキサンタンではなくセルロースである場合により高く:4500~12000mPa・sになる。本発明の乳化組成物は、有利には非常に幅広い粘度範囲を実現することを可能とし、乳液及び粘性クリームの両方を調製することを可能とする。
【0095】
本発明の乳化組成物を使用して得たO/W型エマルションの全てが、優れた知覚特性(白さ、伸び、べたつき、及び浸透の基準の6~10点の範囲のスコア)を示すことに留意
されたい。
【0096】
エマルションは、使用される油がヒマワリ油である場合に、使用される油がパルミチン酸イソプロピル(IPPと表される)である場合よりも白くなく:記述子は、パルミチン酸イソプロピルの場合の平均10点中9.33点と比較して、ヒマワリ油の場合には10点中10点である。しかしながら、パルミチン酸イソプロピルの白さは満足のいく状態に留まる。
【0097】
伸びは、セルロースを用いるよりも、キサンタンを用いる方が著しく容易であり、セルロースでの7.33点からキサンタンの10点までになる。