(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124360
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20240905BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240905BHJP
C09J 185/00 20060101ALI20240905BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240905BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09J183/04
B32B7/12
C09J185/00
C09J7/30
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025090
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023031503
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000111591
【氏名又は名称】ハニー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小野 凌平
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA12A
4F100AA15A
4F100AA17A
4F100AA20B
4F100AB01A
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4J040KA38
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無機基材に塗布・乾燥し、樹脂と接しさせて、加熱圧着することによって、無機基材の外観を損なわずに、無機基材と樹脂とを優れた接着性で接着する接着剤組成物、積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】無機基材と樹脂とを接着するための接着剤組成物であって、接着剤組成物は、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを含有し、接着剤組成物の固形分中の、加水分解縮合物の含有率は、0.01~50質量%であり、接着剤組成物の固形分中の、無機微粒子の含有率は、50~99.99質量%であり、加水分解縮合物は、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基と、炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基とを有し、該溶剤に可溶である、接着剤組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機基材と樹脂とを接着するための接着剤組成物であって、
該無機基材は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
該接着剤組成物は、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを含有し、
該接着剤組成物に含有される固形分中の、該酸触媒下加水分解縮合物の含有率は、0.01~50質量%であり、
該接着剤組成物に含有される固形分中の、該無機微粒子の含有率は、50~99.99質量%であり、
該酸触媒下加水分解縮合物は、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基と、炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基とを有し、重量平均分子量が、1×103以上、1×105以下であり、該溶剤に可溶であり、
該無機微粒子は、数平均1次粒径が5nm以上、100nm以下であり、最大粒径が10nm以上、500nm以下であり、
該溶剤は、炭素数1~5のアルコールと、炭素数1~10のグリコール系溶剤と、水とを含有し、
該接着剤組成物の、B型粘度計およびLローターを用いて、30℃、回転数100rpmで測定した粘度は、10mPa・s以下である、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記無機微粒子が、鎖状シリカである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接着剤組成物を塗布、乾燥、加熱硬化して得られる接着剤膜であって、
厚さが、50nm以上、5μm以下であり、
表面粗度Raが、1nm以上、20nm以下であり、
ヘイズが、1%以下であり、
重量平均分子量から換算した炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、またはチタノール基の合計の残存率が、20モル%以上、60モル%以下である、
接着剤膜。
【請求項4】
無機基材層と、接着剤層と、樹脂層とを、この順で隣接して有する積層体であって、
該無機基材層は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
該接着剤層は、請求項1または2に記載の接着剤組成物からなり、厚さが、50nm以上、5μm以下であり、
該樹脂層は、接着剤層の表面の一部領域または全領域上に積層されている、
積層体。
【請求項5】
前記樹脂層は、前記接着剤層の表面の一部領域上に積層されており、
該樹脂層が積層されていない領域の前記接着剤層の表面粗度Raが、1~20nmである、
請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記無機基材層が、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、銅、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、および無アルカリガラスからなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
前記樹脂層がポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる、
請求項4に記載の、積層体。
【請求項7】
請求項4に記載された積層体の、製造方法であって、
下記の工程をこの順で有する、積層体の製造方法、
1)請求項1または2に記載の接着剤組成物を、前記無機基材層の表面に、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法からなる群から選ばれるいずれか1種の方法で塗布する工程、
2)塗布された接着剤組成物を乾燥して、前記接着剤層を形成する工程、
3)樹脂層を該接着剤層に圧着して加熱し、該接着剤層および/または樹脂層を溶融して、該樹脂層を接着する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機基材と樹脂とを接着するための接着剤組成物、該接着剤組成物を用いて作製された接着剤膜または積層体、および該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機基材と樹脂とを接着して一体化された複合体は、電気・電子機器分野、自動車機器分野およびOA精密機械分野などの各種産業分野で用いられており、無機基材と樹脂との接着性を向上するために各種手法が提案されている。
例えば、無機基材表面を化成処理やエッチング処理等による粗化処理を行うことによって、無機基材と樹脂との接着性を向上させる試みが提案されており、アルミニウム材を陽極酸化やエッチング等で表面に凹凸形成しアンカー効果により樹脂と複合する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
しかし、この方法の場合、樹脂を熱融着さえできれば無機基材への接着が可能ではあるが、熱融着に大がかりな設備が必要であったり、大量の酸・アルカリ排水の処理を必要とする。また無機基材表面が粗化されることで、無機基材表面が光沢を消失して光散乱する為、外観を損なってしまう。
また、異なる方法として、アミノシランやグリシジルシラン等のシランカップリング剤を用いて無機基材表面をシランカップリング処理し、無機基材表面に有機官能基を形成して、樹脂や接着剤に対する接着性を向上させる方法も提案されている(特許文献3)。
しかし、この方法の場合、無機基材表面へのシランカップリング剤の付着量が少な過ぎると接着性が低下し、付着量が多過ぎるとシランカップリング剤層の凝集破壊により接着性が低下する為、適切な付着量を管理する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-037103
【特許文献2】特開2001-225352
【特許文献3】特開2016-089261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような従来の技術における問題点を解決するものであり、無機基材に塗布・乾燥し、樹脂と接しさせて、加熱圧着することによって、無機基材の外観を損なわずに、無機基材と樹脂とを、優れた接着性で接着する接着剤組成物、該接着剤組成物を用いて作製された接着剤膜、積層体、および該積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく、少なくとも、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを含有する特定の接着剤組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.無機基材と樹脂とを接着するための接着剤組成物であって、
該無機基材は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
該接着剤組成物は、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを含有し、
該接着剤組成物に含有される固形分中の、該酸触媒下加水分解縮合物の含有率は、0.01~50質量%であり、
該接着剤組成物に含有される固形分中の、該無機微粒子の含有率は、50~99.99質量%であり、
該酸触媒下加水分解縮合物は、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基と、炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基とを有し、重量平均分子量が、1×103以上、1×105以下であり、該溶剤に可溶であり、
該無機微粒子は、数平均1次粒径が5nm以上、100nm以下であり、最大粒径が10nm以上、500nm以下であり、
該溶剤は、炭素数1~5のアルコールと、炭素数1~10のグリコール系溶剤と、水とを含有し、
該接着剤組成物の、B型粘度計およびLローターを用いて、30℃、回転数100rpmで測定した粘度は、10mPa・s以下である、
接着剤組成物。
2.前記無機微粒子が、鎖状シリカである、上記1に記載の接着剤組成物。
3.上記1または2に記載の接着剤組成物を塗布、乾燥、加熱硬化して得られる接着剤膜であって、
厚さが、50nm以上、5μm以下であり、
表面粗度Raが、1nm以上、20nm以下であり、
ヘイズが、1%以下であり、
重量平均分子量から換算した炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、またはチタノール基の合計の残存率が、20モル%以上、60モル%以下である、
接着剤膜。
4.無機基材層と、接着剤層と、樹脂層とを、この順で隣接して有する積層体であって、
該無機基材層は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
該接着剤層は、上記1または2に記載の接着剤組成物からなり、厚さが、50nm以上、5μm以下であり、
該樹脂層は、接着剤層の表面の一部領域または全領域上に積層されている、
積層体。
5.前記樹脂層は、前記接着剤層の表面の一部領域上に積層されており、
該樹脂層が積層されていない領域の前記接着剤層の表面粗度Raが、1~20nmである、
上記4に記載の積層体。
6.前記無機基材層が、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、銅、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、および無アルカリガラスからなる群から選ばれる1種または2種以上からなり、
前記樹脂層がポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる、
上記4または5に記載の、積層体。
7.上記4~6からなる群から選ばれる何れかに記載された積層体の、製造方法であって、
下記の工程をこの順で有する、積層体の製造方法、
1)請求項1または2に記載の接着剤組成物を、前記無機基材層の表面に、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法からなる群から選ばれるいずれか1種の方法で塗布する工程、
2)塗布された接着剤組成物を乾燥して、前記接着剤層を形成する工程、
3)樹脂層を該接着剤層に圧着して加熱し、該接着剤層および/または樹脂層を溶融して
、該樹脂層を接着する工程。
【発明の効果】
【0006】
本発明の接着剤組成物は、無機基材と樹脂との接着性に優れる為に、光散乱しない低粗化の無機基材表面、鏡面の無機基材表面、酸化被膜等を有さない無機基材表面への接着性に優れる。
また、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着膜、接着剤層は、幅広い厚みにおいて、優れた接着強度を示す。
さらに、本発明の接着剤組成物を用いて形成された積層体は、接着剤層形成時に、樹脂を積層しない領域の基材層をマスクする必要が無い。
そして、樹脂が積層されていない領域は、接着剤層が薄く透明性が高いことから、無機基材層の質感をそのまま呈することができ、無機基材表面が光沢面、鏡面であった場合には、接着剤層は、光散乱を生じずに、光沢面、鏡面を呈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の積層体の層構成を説明した簡易断面図です。
【
図2】本発明の積層体の別態様の層構成を説明した簡易断面図です。
【
図3】樹脂/接着剤層せん断剥離強度測定試験片の構成と作成方法を説明した図です。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
【0009】
I.接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、無機基材と樹脂とを接着するための接着剤組成物であり、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを含有する。
本発明の接着剤組成物は、これら以外に、添加剤として、密着性向上剤、硬化促進剤、表面調整剤、可撓剤等を更に含有することができる。
【0010】
接着剤組成物中の固形分(酸触媒下加水分解縮合物及び無機微粒子)の含有率は、0.1~20質量%が好ましく、0.18~1015質量%がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、接着剤層または接着膜を形成する成分濃度が薄い為に接着剤組成物が基材表面で撥かれて塗布性や製膜性が劣り、連続した接着剤層や接着膜を形成し難くなり易く、接着性が不十分になり易い。上記範囲よりも多いと高粘度のために塗布性や製膜性に劣り易い。
【0011】
また、接着剤組成物中の溶剤の含有率は、80~99.9質量%が好ましく、90~99.5質量%がより好ましい。
【0012】
接着剤組成物に含有される固形分中の、酸触媒下加水分解縮合物/無機微粒子の質量比は、0.01/99.99~50/50が好ましく、1/99~30/70がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、接着剤組成物の無機基材層への接着性が不十分になり易く、上記範囲よりも多いと樹脂層への接着性が不十分になり易く、高粘度のために塗布性に劣り易い。
【0013】
B型粘度計およびLローターを用いて、30℃、回転数100rpmで測定した際の、接着剤組成物の粘度は、1.0mPa・s以上、10mPa・s以下が好ましく、1.0
mPa・s以上、5mPa・s以下以下がより好ましい。上記範囲よりも小さいと、接着剤組成物が基材表面で撥かれ易くなって、連続した接着剤層を形成し難くなり易い。上記範囲よりも大きいと、塗布性に劣り易くなる。
【0014】
<接着剤組成物の製造方法>
接着剤組成物は、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物と、無機微粒子と、溶剤とを攪拌して混合することで得ることができる。
得られた接着剤組成物を、さらに、フィルターで濾過することが好ましい。フィルターで濾過することによって、微量の、大きな粒径の、2次凝集した無機微粒子や、その他凝集物を除去でき、接着剤層や接着剤膜の厚みの変動を抑えることができる。
フィルターの篩サイズは、0.5~2.0μmが好ましく、例えば1μm程度が好ましい。
【0015】
I-1.酸触媒下加水分解縮合物
本発明の接着剤組成物が含有する酸触媒下加水分解縮合物は、シラン化合物および/またはチタン化合物を酸触媒下で加水分解および重縮合することによって生成された、溶剤に可溶なオリゴマーやポリマーである。
上記の酸触媒下加水分解縮合物は、1種または2種以上のシラン化合物から生成されていてもよく、1種または2種以上のチタン化合物から生成されていてもよく、1種または2種以上のシラン化合物と1種または2種以上のチタン化合物との混合物から生成されていてもよい。
【0016】
酸触媒下加水分解縮合物は、無機基材に対する接着剤層の密着性や、無機微粒子同士の接合性を向上させ、接着剤層や接着剤膜が厚い場合であっても、接着剤層や接着剤膜中の凝集破壊の発生を抑制することができる。
【0017】
酸触媒下加水分解縮合物の重量平均分子量は、1×103以上、1×105以下が好ましく、2×103以上、8×104以下がより好ましい。上記範囲よりも小さいと、接着剤組成物が基材表面で撥かれ易くなって、連続した接着剤層を形成し難くなり、接着膜が脆くなり易い。上記範囲よりも大きいと、高粘度化し過ぎて塗布性に劣り易く、未反応官能基が少なくなることで接着性が低下し易くなる。
【0018】
酸触媒下加水分解縮合物は、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基と、炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基とを有することが好ましい。
酸触媒下加水分解縮合物がこれらの官能基を有していることによって、接着膜および/または接着剤層は、樹脂との接着性に優れることができる。
また、酸触媒下加水分解縮合物が水酸基を有していることによって、接着膜および/または接着剤層は、無機基材層との接着性に優れることができる。
酸触媒下加水分解縮合物が炭素数1~5のアルコキシ基を有していることによって、接着膜および/または接着剤層は、塗布後や積層体形成後にさらに加水分解や重縮合を進行させて、主材との接着性を高めたり、接着膜および/または接着剤層自身の強度を高めることができる。
【0019】
シラン化合物やチタン化合物の加水分解縮合は、酸触媒下または塩基触媒下で進行する。
一般的には、酸触媒下では、アルコキシ基の酸素に対する求電子反応による加水分解の後、近接するM-OH同士(MはSiまたはTi)が脱水重縮合する。そのため、立体障害の影響で直鎖状に鎖長延長する傾向にある。
一方、塩基触媒下では、Mに対する直接的な求核反応による加水分解後、3次元的に縮合が進む傾向にある。
接着剤組成物中や接着剤層中で、シラン化合物やチタン化合物が3次元的に縮合を進めると、溶剤に不溶な大粒径の凝集物が不均一に形成され、接着性や耐凝集破壊性を低下させる虞がある。
したがって、本発明においては、加水分解縮合は酸触媒下で行うことが好ましい。
【0020】
<酸触媒下加水分解縮合物の製造方法>
シラン化合物やチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物を得る反応は、水と水系溶剤を含有する溶媒中で行われる。
水は、シラン化合物やチタン化合物の加水分解反応時に原料として必要であり、且つ、縮合時の脱水反応を抑制することができる。
したがって、水量が不足すると加水分解の進行が不十分になり易く、水量が過多であると酸触媒下加水分解縮合物の縮合の進行が不十分になり易い。
【0021】
水系溶剤は、原料及び生成物を溶解するもの、アルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基やチタノール基が、逆反応によって再度アルコキシ基に戻ることを抑制できるもの、さらには、接着剤組成物中に溶剤として残留した場合でも、接着剤組成物の塗布・乾燥する際の作業性を低下させないものが好ましい。
このような特徴を有する水系溶剤としては、鎖長が炭素数1~4の短いアルキル基からなり、沸点が60~100℃のアルコール類が好ましい。
上記範囲よりも長いアルキル基のアルコール類やグリコール類の場合には、加水分解で生成したシラノール基が再度アルコキシ基に戻る逆反応が進行し易い傾向がある。
具体的な水系溶剤としては、例えば、メタノール(炭素数1、沸点65℃)、エタノール(炭素数2,沸点78℃)、ノルマルプロパノール(炭素巣3,沸点97℃)、イソプロピルアルコール(炭素数3、沸点82℃)、ターシャリーブタノール(炭素数4,沸点82℃)等が挙げられる。
【0022】
酸触媒下加水分解縮合物は、例えば、下記の工程をこの順で含む製造方法によって作製することができる。
1)水系溶剤中にシラン化合物を混合して、水系溶剤/シラン化合物混合液を調製する。2)水と水系溶剤と酸触媒とを混合して酸触媒希釈液を調製する。
3)上記で得た、水系溶剤/シラン化合物混合液を撹拌混合しながら、上記で得た酸触媒希釈液を、水系溶剤/シラン化合物混合液の液温を10~60℃に保つように加水分解・縮合反応を抑制しながら、滴下する。
4)滴下終了後、20~40℃の恒温条件で、1~48時間静置して、加水分解縮合反応を進行させて、反応液を得る。
【0023】
詳細な反応条件は、シラン化合物や酸触媒の種類によって異なり、適宜調節することが好ましい。
上記の製造方法において、用いられる各原材料の比率は、シラン化合物が1~70質量部、水系溶剤が1~100質量部、水が1~60質量部、酸触媒が0.001~4質量部であることが好ましい。
さらに、シラン化合物は30~60質量部がより好ましく、水系溶剤は10~50質量部がより好ましく、水は10~40質量部がより好ましく、酸触媒は0.01~15質量部がより好ましい。
上記の製造方法は、シラン化合物をチタン化合物に代えて行うこともできる。
【0024】
(1)シラン化合物
本発明で用いられるシラン化合物は、珪素原子と、珪素原子に結合した官能基付き有機
基と、珪素原子に結合した加水分解性基および/または縮合性基とを有するアルコキシシラン、または該アルコキシシランのオリゴマーやポリマーである。
官能基付き有機基の官能基としては、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基が好ましい。
加水分解性基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。
縮合性基としては、水酸基(シラノール基)が好ましい。
【0025】
本発明においては、シラン化合物には、シラザン化合物等も含まれる。
シラザン化合物は、シロキサン化合物のSi-O-Si部の酸素原子がNHに置換したSi-N-Si構造を有するシラン化合物である。
【0026】
アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。
アルキル基を有するアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するアルコキシシランの具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するアルコキシシランの具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アクリル基を有するアルコキシシランの具体例としては、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基を有するアルコキシシランの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を有するアルコキシシランの具体例としては、上記の具体的なシラン化合物のアルコキシ基の一部または全部が加水分解によって水酸基になった化合物等が挙げられる。
【0027】
低分子系のシラザン化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。
【0028】
(2)チタン化合物
本発明で用いられるチタン化合物は、チタン原子と、チタン原子に結合した官能基付き有機基と、チタン原子に結合した加水分解性基および/または縮合性基とを有するアルコキシチタン、または該アルコキシチタンのオリゴマーやポリマーである。
官能基付き有機基の官能基としては、アミノ基、エポキシ基、アクリル基、水酸基、ビニル基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基が好ましい。
加水分解性基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。
縮合性基としては、水酸基(チタノール基)が好ましい。
【0029】
(3)酸触媒
酸触媒下加水分解縮合物を生成する際に用いられる酸触媒は、無機酸であっても、有機酸であってもよいが、水溶性のものが好ましい。
無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸等が挙げられる。
【0030】
I-2.無機微粒子
無機微粒子は、接着剤層中で、無機充填材として機能して、接着剤膜や接着剤層の凝集破壊を抑制して強度を高める効果がある。
また、接着剤膜や接着剤層中の表面近傍の無機微粒子は、接着剤膜や接着剤層表面に凹凸を生じさせることによって、接着剤膜や接着剤層表面の表面積を増加し、樹脂層との接着強度を増加させることもできる。
【0031】
無機微粒子の数平均1次粒径は5~100nmが好ましい。上記範囲よりも小さいと2次凝集が激しくなり易く、上記範囲よりも大きいと、接着剤組成物によって形成される接着層または接着剤膜の光散乱が大きくなり易い。
また、無機微粒子の最大粒径は、0.01~0.5μmが好ましい。上記範囲よりも小さいと熱溶着時の樹脂が凹凸に入り込まずに接着性が低下し易く、上記範囲よりも大きいと、ヘイズが1%を超えるために無機基材層表面の接着剤層形成部の外観が劣化し易くなる。
無機微粒子の形状に特に制限は無く、球形、中空、鱗片、針状、鎖状、パールネックレス状等の何れであってもよい。
【0032】
無機微粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子が挙げられる。
上記の中でも、シリカが好ましく、さらには、鎖状シリカであることがより好ましい。
【0033】
鎖状シリカとは、直径が5~40nmのシリカ(酸化珪素)粒子(もしくは、酸化珪素を主成分とする粒子)が数個から数十個連なり、20nm~300nmの平均長さを持った鎖状粒子であり、丸まって、上記の数平均1次粒径や最大粒径を示す。
【0034】
I-3.溶剤
本発明の接着剤組成物が含有する溶剤は、水と水系溶剤とを含有することが好ましい。
そして、水系溶剤は、1種または2種以上の、炭素数1~5のアルコール類、および/または炭素数1~10のグリコール類を含有することが好ましい。
このような溶剤を含有することで、無機微粒子の分散性を向上させ、均一な塗膜を形成することができる。
【0035】
具体的なアルコール類としては、メタノール(炭素数1、沸点65℃)、エタノール(炭素数2、沸点78℃)、ノルマルプロパノール(炭素数3、沸点97℃)、イソプロピルアルコール(炭素数3、沸点82℃)、ターシャリーブタノール(炭素数4、沸点82℃)、ノルマルブタノール(炭素数4、沸点118℃)、イソブタノール(炭素数4、沸点108℃)、第二ブタノール(炭素数4、沸点100℃)、1-ペンタノール(炭素数5、沸点138℃)、2-メチル-1-ブタノール(炭素数5、沸点128℃)、3-メチル-1-ブタノール(炭素数5、沸点131℃)、2-ペンタノール(炭素数5、沸点119℃)、1-エチル-1-プロパノール(炭素数5、沸点116℃)、2-メチル-2-ブタノール(炭素数5、沸点102℃)等が挙げられる。
【0036】
グリコール類としては、アルキレングリコール類、アルキレングリコールエーテル類がある。
【0037】
具体的なアルキレングリコール類としては、エチレングリコール(炭素数2、沸点197℃)、プロピレングリコール(炭素数3、沸点189℃)、ブチレングリコール(炭素数4、沸点207℃)、へキシレングリコール(炭素数6、沸点197℃)、オクチレングリコール(炭素数8、沸点175℃)等が挙げられる。
【0038】
具体的なアルキレングリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエ
ーテル(炭素数3、沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(炭素数4、沸点135℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(炭素数6、沸点121℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(炭素数5、沸点141℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(炭素数6、沸点171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(炭素数4、沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(炭素数5、沸点132℃)、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル(炭素数6、沸点149℃)、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル(炭素数7、沸点171℃)が挙げられる。
【0039】
I-4.添加剤
1)密着性向上剤
密着性向上剤は、本発明の接着剤組成物からなる接着剤膜と被接着物との密着性を向上させるものであり、特に限定は無いが、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂、有機モノマー、シリケート樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましいが、これらに限定されない。
被接着物が、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の樹脂系の基材である場合に、特に密着性を向上させる効果が高い。
密着性向上剤の含有量は、接着剤組成物の固形分中に、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、密着性向上効果が不十分になり易く、上記範囲より多くても、密着性向上効果はさほど変わらない。
【0040】
2)硬化促進剤
硬化促進剤は、接着剤組成物の硬化を促進する触媒等の化合物であってもよく、また接着剤組成物と接触する基材や材料の硬化を促進してもよい。本発明の接着剤組成物が樹脂や有機モノマーを含有している場合に、特に硬化性促進効果が高い。
上記の樹脂や有機モノマーは、密着性向上剤であってもよい。
また、硬化促進剤は、上記の樹脂や有機モノマー、シラン化合物および/またはチタン化合物の酸触媒下加水分解縮合物のそれぞれの架橋反応を促進してもよく、これら間の架橋反応を促進してもよく、更には、これらと無機微粒子との架橋反応を促進してもよい。
接着剤組成物の硬化が進むことによって、接着剤膜の接着性は向上することができる。
硬化促進剤の種類としては、例えば、金属触媒や有機触媒等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、硬化促進する対象物の特性に合わせた種類を選択することが望ましい
金属触媒は、例えば、Ti、Fe、Cu、Pd等の金属元素を含む化合物であり、具体例としては、チタンアルコキシド、酢酸銅、硝酸鉄等が挙げられるが、これらに限定されない。
有機触媒としては、臭化テトラブチルアンモニウム、ジメチルベンジルアミン等が挙げるがこれらに限定されない。
硬化促進剤の含有量は、接着剤組成物の固形分中に、0.001質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上、1質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、硬化性向上効果が不十分になり易く、上記範囲より多くても、硬化性向上効果はさほど変わらない。
【0041】
I-5.表面調整剤
表面調整剤としては、例えば、界面活性剤、はじき防止剤、消泡剤などが挙げられるが、これらに限定されず、必要に応じたものを適宜用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、樹脂型などが挙げられ、樹脂型が好ましいが、これらに限定されない。
はじき防止剤の具体例としては、アクリル系レベリング剤、アクリル系シリコーンレベリング剤が挙げられるが、これらに限定されない。
消泡剤の具体例としては、低起泡性界面活性剤、鉱油系界面活性剤、シリコーン系などが挙げられるが、これらに限定されない。
これら表面調整剤の含有量は、接着剤組成物の固形分中に、0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、3質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、表面調整効果が不十分になり易く、上記範囲より多くても、表面調整効果はさほど変わらない。
【0042】
I-6.可撓剤
可撓剤は、例えば、本発明の接着剤組成物が用いられた積層体の加工を折り曲げ時に、本発明の接着剤組成物からなる接着剤膜の破壊や剥離を抑制することができる。
可撓剤の種類に特に限定はないが、例えば、ポリアルキレンオキサイド系可撓剤や、シリケート系可撓剤が好ましい。
ポリアルキレンオキサイド系可撓剤の具体例としては、PEO(ポリエチレンオキサイド)、PPO(ポリプロピレンオキサイド)、PBO(ポリブチレンオキサイド)等が挙げられ、PEO(ポリエチレンオキサイド)が好ましいが、これらに限定されない。
可撓剤の含有量は、接着剤組成物の固形分中に、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、1質量%以上、10質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、可撓化効果が不十分になり易く、上記範囲より多くても、可撓化効果はさほど変わらない。
【0043】
II.接着剤膜
本発明の接着剤膜は、本発明の接着剤組成物から形成される膜である。
接着剤膜は1層でもよいが、2層以上の多層であってもよい。
接着剤膜においては、接着剤組成物が乾燥し、含有される酸触媒下加水分解縮合物の脱水縮合反応が進行している。
接着剤膜に含有される酸触媒下加水分解縮合物が有する炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基またはチタノール基の合計の残存率は、20モル%以上、60モル%が好ましい。上記範囲よりも低いと接着力が劣り易く、上記範囲よりも高いと含有する無機微粒子の界面結合力が劣り易い。
【0044】
上記の炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基またはチタノール基の残存率は、接着剤組成物に含有される酸触媒下加水分解縮合物の重量平均分子量から、例えば、下記のように算出される。
残存率[%]=(炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基またはチタノール基シラノール基の合計残存モル数)/(原料モノマーの、炭素数1~5のアルコキシ基、シラノー
ル基またはチタノール基シラノール基の合計モル数)×100
例えば、原料モノマーとしてアルコキシシランを用いた場合、アルコキシ基が加水分解してシラノール基(Si-OH)を形成し、次いで、シラノール基同士が縮合してシロキサン結合(Si-O-Si)を生成し、全体のアルコキシ基およびシラノール基が減少する。
アルコキシシランモノマーが縮合重合して生成したポリシロキサン分子は直鎖状であると想定すると、ポリシロキサン分子の構造式は下記のように示される。
SinO(n-1)(OH)(2n+2)
ポリシロキサン分子の分子量は、nを含む一次関数であり、GPCで得られた重量平均分子量からnを算出し、下式から残存率を算出することができる。
残存率[%]=(2n+2)/[(n-1)+(2n+2)]×100
【0045】
接着剤膜の厚さは、50nm以上、5μm以下が好ましく、100nm以上、3μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと、充分な接着性を得ることが困難であり、上記
範囲よりも厚くても接着性はそれほど変わらず、接着剤膜中で凝集破壊を生じ易くなる。
【0046】
接着剤膜のヘイズは、0%以上、1%以下が好ましい。上記範囲よりも大きいと、積層した際に無機基材層等の下地の外観を低下させてしまう。例えば、表面が光散乱を呈さない又は鏡面の無機基材を無機基材層に用いている場合であっても、樹脂層が積層されていない接着剤層の表面は、光散乱を呈したり、マット(梨地)外観を呈することになる。
【0047】
III.積層体
本発明の積層体は、少なくとも、無機基材層と、接着剤層と、樹脂層とを、この順で隣接して有する積層体であって、該接着剤層は本発明の接着剤組成物からなる層である。
接着剤層は、無機基材層の全領域上に積層されていてよく、樹脂層は、接着剤層の片面表面の一部領域または全領域上に積層されていてよい。
すなわち、樹脂層が積層されていない接着剤層表面の領域があってもよい。
表面が光散乱を呈さない又は鏡面の無機基材を無機基材層に用いている場合に、樹脂層が積層されていない接着剤層の表面は、光散乱を呈さない又は鏡面を呈することができる。
【0048】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、例えば、下記の工程をこの順で有する製造方法によって作製することができる。、
1)本発明の接着剤組成物を、無機基材層の表面に、塗布する工程、
2)塗布された接着剤組成物を乾燥して、接着剤層を形成する工程。
3)樹脂層を接着剤層に圧着して加熱し、接着剤層および/または樹脂層を溶融して、樹脂層を接着する工程。
【0049】
接着剤組成物の塗布方法としては、ウェットコーティングが好ましい。
具体的なウェットコーティング法としては、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ダイコート法、カーテンコーティング法、スクリーンコーティング法、インクジェットコーティング法、フローコーティング法、グラビアコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、スリットコーティング法、ロールコーティング法等が挙げられる。
上記の中でも、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法からなる群から選ばれるいずれか1種の方法が好ましい。
【0050】
塗布された接着剤組成物の乾燥は、80~180℃で1分~30分加熱して行うことが好ましい。
接着剤層が多層の場合には、1層目の塗布・乾燥後に再度塗布・乾燥を重ねて多層化することが好ましい。
【0051】
樹脂層を圧着する前の接着剤層に含有される酸触媒下加水分解縮合物の脱水縮合反応の進行の度合いは、樹脂層の熱圧着の加熱によって、接着剤層が溶融できる程度に抑えられていることが好ましい。
樹脂層を圧着する前の接着剤層が含有する酸触媒下加水分解縮合物が有する炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基またはチタノール基の合計の残存率は、20モル%以上、60モル%が好ましい。上記範囲よりも低いと無機微粒子との結合力が劣り易く、上記範囲よりも高いと無機基材層との接着力が劣り易い。
【0052】
樹脂層が圧着温度で溶融する熱可塑性樹脂であり、圧着前の接着剤層が圧着温度で溶融し難い場合、接着剤層中の表面近傍の無機微粒子は接着剤層表面に凹凸を生じさせることによって接着剤層表面の表面積を増加し、樹脂層との接着強度を増加させることができる
。この場合、樹脂層を圧着する前の接着剤層の表面粗度Raが1~20nmよりも小さいと樹脂層との接着性が劣り易くなる。
【0053】
III-1.無機基材層
本発明の積層体が含む無機基材層は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭化物、および金属窒化物からなる群から選ばれる1種または2種以上からなる層である。
無機基材層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、銅等が挙げられる。これらの金属は、単種金属であってもよく、複数の金属の混合物、ステンレス鋼(例えばSUS304)のような合金であってもよい。
無機基材層を構成する金属酸化物としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、アルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等が挙げられる。これらの金属酸化物は、単種であってもよく、複数の金属酸化物の混合物、複数の金属種からなる複合金属酸化物であってもよい。
【0054】
無機基材層を構成する金属水酸化物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。金属水酸化物は、単種であってもよく、複数の金属水酸化物の混合物、複数の金属種からなる複合金属水酸化物であってもよい。
無機基材層を構成する金属炭化物としては、例えば、炭化ケイ素等が挙げられる。金属炭化物は、単種であってもよく、複数の金属炭化物の混合物、複数の金属種からなる複合金属炭化物であってもよい。
無機基材層を構成する金属窒化物としては、例えば、窒化ケイ素等が挙げられる。金属窒化物は、単種であってもよく、複数の金属窒化物の混合物、複数の金属種からなる複合金属窒化物であってもよい。
上記の中でも、無機基材層は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、銅、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、および無アルカリガラスからなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0055】
一般的に、無機基材層表面と接着剤層との接着性を高める為には、無機基材層の表面を光散乱やマット(梨地)を呈する程度に租化させたり、アルマイト等の金属酸化物層を形成する必要がある。
しかし、本発明の積層体に用いられる無機基材層の接着剤層と接する表面は、鏡面であってもよく、光散乱またはマット(梨地)を呈していてもよく、アルマイト等の金属酸化物層が形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。
但し、接着剤組成物を塗布する前の無機基材層の表面は、有機汚れを洗浄除去して清浄化されていることが好ましい。
洗浄除去方法としては、例えば、アセトン脱脂、アルカリ性洗剤を用いた洗浄、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられるが、特に制限はない。
【0056】
III-2.接着剤層
本発明の積層体が含む接着剤層は、本発明の接着剤組成物から形成される層である。
接着剤層は1層でもよいが、2層以上の多層であってもよい。
接着剤層においては、接着剤組成物が乾燥し、含有される酸触媒下加水分解縮合物の脱水縮合反応が進行している。
樹脂層が圧着され、完成された積層体中の接着剤層に含有される酸触媒下加水分解縮合物が有する炭素数1~5のアルコキシ基、シラノール基またはチタノール基の合計の残存率は、0モル%以上、5モル%がより好ましく、実質的に0モル%であることがより好ましい。上記範囲よりも高いと、無機基材層との接着力や、含有する無機微粒子の界面結合力が劣り易い。
【0057】
接着剤層の厚さは、50nm以上、5μm以下が好ましく、100nm以上、3μm以
下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと、充分な接着性を得ることが困難であり、上記範囲よりも厚くても接着性はそれほど変わらず、接着剤層中で凝集破壊を生じ易くなる。
【0058】
接着剤層のヘイズは、0%以上、1%以下が好ましい。上記範囲よりも大きいと、無機基材の外観を低下させてしまう。例えば、表面が光散乱を呈さない又は鏡面の無機基材を無機基材層に用いている場合であっても、樹脂層が積層されていない接着剤層の表面は、光散乱を呈したり、マット(梨地)外観を呈することになる。
【0059】
樹脂層が積層されていない部分の接着剤層の樹脂層側の表面は、表面粗度Raが1~20nmであることが好ましい。上記範囲よりも大きいと接着剤層が光散乱によって白色を呈し、無機基材層表面の光沢や鏡面性を劣化させる虞がある。
【0060】
III-3.樹脂層
本発明の積層体が含む樹脂層が含有する樹脂に特に制限は無く、有機樹脂および無機樹脂の何れであってもよく、また、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂硬化物および熱可塑性樹脂の何れであってもよい。さらに、圧着温度で溶融する樹脂であっても、溶融しない樹脂であってもよいが、接着剤層が圧着温度で溶融しない場合には、樹脂層は圧着温度で溶融する樹脂を用いることが好ましい。
本発明の積層体が含む樹脂層は、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)系樹脂、およびポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0061】
ポリエチレン(PE)系樹脂とは、エチレンの単独重合体、またはエチレンと他の共重合性モノマーとの共重合体である。
ポリエチレン(PE)系樹脂の具体例としては、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)等が挙げられる。
【0062】
ポリプロピレン(PP)系樹脂とは、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと他の共重合性モノマーとの共重合体である。
ポリプロピレン(PP)系樹脂の具体例としては、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレン1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体等が挙げられる。
【0063】
ポリカーボネート(PC)系樹脂とは、(-O-R-O(CO)-)nの構造式で表さ
れるポリマーであり、-R-は脂肪族または芳香族の二価の有機基である。
ポリカーボネート(PC)系樹脂の具体例としては、(-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O(CO)-)nが挙げられる。式中、Phはベンゼン環を表す。
【0064】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)系樹脂とは、アクリロニトリルモノマーと、ブタジエンモノマーと、スチレンモノマーとの共重合体である。
【0065】
ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂とは、エチレングリコールまたはその誘導体と、テレフタル酸またはその誘導体とから生成したポリエステルであるが、合成経路に制限は無い。
【0066】
樹脂層は薄い膜状であってもよく、厚い物品であってもよく、樹脂層の厚さに特に制限は無い。
【0067】
接着剤組成物に圧着される前の樹脂層の表面は、有機汚れを洗浄除去して清浄化されていることが好ましい。
洗浄除去方法としては、例えば、アセトン脱脂、アルカリ性洗剤を用いた洗浄、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられるが、特に制限はない。
【0068】
IV.めっき下地層
本発明の接着剤組成物は、無機基材層にめっき処理する際のめっき下地層を形成することができる。
一般に、ガラス等の無機基材にめっき処理を施す場合には、無機基材層表面へのエッチング等の前処理が必要であるが、本発明の接着剤組成物を用いて無機基材の表面にめっき下地層を形成しておくことによって、無機基材層表面へのエッチング等の前処理をすること無しに、容易にめっき処理を施すことができる。
形成されためっき下地層上には遷移金属等をめっきすることが容易であり、パラジウム等の触媒を担持させた無機基材を容易に作成することができる。
本発明のめっき下地層は、本発明の接着剤層と同様に形成することができる。
【実施例0069】
1.実施例で用いた原材料
・テトラエトキシシラン:信越化学工業(株)社製、KBE-04。
・3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)社製、KBE-403。
・3-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)社製、KBE-903。・無機微粒子分散液1:日産化学社(株)製IPA-ST。NV30%、球状、粒径10nm。IPA溶液。
・無機微粒子分散液2:日揮触媒化成(株)製スルーリア1110。NV20.5%、中空、粒径50nm。IPA溶液。
・無機微粒子分散液3:日産化学社(株)製IPA-ST-UP。NV15%、鎖状、粒径10nm。IPA溶液。
【0070】
2.バインダー液の調製
(バインダー液1の調製)
先ず、下記を混合して、酸触媒水溶液1を調整した。
水 130質量部
10%硝酸 26質量部
次に、下記の割合で、テトラエトキシシランとエタノールとをフラスコに入れてディスパーで攪拌混合し、攪拌しながら、内温が30℃を超えないように温度調整しながら酸触媒水溶液1を滴下した。
滴下終了後、攪拌を停止し、30℃で6時間静置して、バインダー液1を500質量部得た。
テトラエトキシシラン 227質量部、
エタノール 117質量部
酸触媒水溶液1 156質量部
【0071】
(バインダー液2~4の調製)
表1に記載された配合及び条件に従って、バインダー液1と同様に操作して、バインダー液2~4を調整した。
【0072】
【0073】
3.接着剤組成物の調製及び評価
[実施例1]
上記で得たバインダー液1、無機微粒子溶液1、IPA(イソプロピルアルコール)、PNP(プロピレングリコールn-プロピルエーテル)、EG(エチレングリコール)を、下記の割合で、ディスパーで攪拌混合した。
バインダー液1 0.35質量部
無機微粒子分散液1 5.8質量部
IPA 61.1質量部
PNP 16.3質量部
EG 16.3質量部
さらに、篩径1μmのフィルターで濾過して、接着剤組成物1(固形分2.1質量%)を得た。
そして、得られた接着剤組成物1を用いて、各種評価を実施した。
【0074】
[実施例2~7、比較例1~6]
表2、表3に記載された配合及び条件に従って、実施例1と同様に操作して、接着剤組成物を調製し、同様に各種評価を実施した。
【0075】
[比較例7]
アルミニウム(Al)からなる無機基材を10%硫酸水溶液中で陽極酸化(液温20℃、電圧14V、40分)して、無機基材表面にアルマイト層を形成した。
表3に記載された配合及び条件に従って、バインダー液4を接着剤組成物として用いて、実施例1と同様に操作して、同様に各種評価を実施した。
【0076】
4.評価方法
【0077】
1)接着剤組成物の粘度
以下の機器および測定条件で、接着剤組成物の粘度を測定した。
粘度計:TVM-15(東機産業社製B型粘度計)
回転ローター:Lローター
接着剤組成物温度:30℃
ローター回転数:100rpm
【0078】
2)接着剤膜の透過ヘイズ値
50mm×100mm×0.2mm厚のソーダ石灰ガラス板をアルカリ性洗剤で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
次いで、洗浄後のソーダ石灰ガラス板の片面に接着剤組成物を、乾燥後の層厚が120
nmになるようにスプレーコーティング法で塗布し、80℃5分間乾燥して接着剤層を形成した。
そして、下記装置によって、接着剤膜の透過ヘイズ値を測定した。
透過ヘイズ測定機:ヘイズメーターNDH-7000(日本電子工業社製)
リファレンス:空気/ソーダ石灰ガラス板(0.2mm厚)
合否基準:透過ヘイズ値1%以下を合格とした。
【0079】
3)接着剤層付き無機基材の光沢
50mm×100mm×0.2mm厚のソーダ石灰ガラス板をアルカリ性洗剤で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
次いで、洗浄後のソーダ石灰ガラス板の片面に接着剤組成物を、乾燥後の層厚が120nmになるようにスプレーコーティング法で塗布し、80℃5分間乾燥して接着剤層を形成した。
そして、接着剤層付きソーダ石灰ガラス板を黒色フェルト布上に置き、接着剤層表面の光沢を測定した。
光沢値測定機:光沢計(BYK-Gardner社製)
反射角度:60°
【0080】
4)無機基材/接着剤層密着性
50mm×100mm×0.2mm厚のステンレス(SUS304)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、またはソーダ石灰ガラス(ガラス)からなる無機基材をアルカリ性洗剤で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
そして洗浄後の無機基材の片面に接着剤組成物を、乾燥後の層厚が120nmになるように塗布し、80℃5分間乾燥して接着剤層を形成した。塗布は、スプレーコーティング法またはディップコーティング法で行った。
次に、形成された接着剤層の表面に、ニチバンテープを接着面積50mm×50mmになるように張り付けて、引張試験機を用いて下記条件でテープ剥離試験を実施した。
引張試験機:精密万能試験機 AG-20kNXDplus型(島津製作所社製)
試験方法:180°テープ剥離試験
試験条件:引張速度100mm/min
合否判定 合格:塗膜剥がれ無し
不合格:塗膜剥がれ有り
【0081】
5)樹脂/接着剤層せん断剥離強度
25mm×100mm×2mm厚のステンレス(SUS304)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、またはソーダ石灰ガラス(ガラス)からなる2枚の無機基材をアルカリ性洗剤で洗浄し、エアブローで乾燥させた。
また、下記の樹脂フィルムを準備した。
25mm×12.5mm×0.04mm厚のPPフィルム
25mm×12.5mm×0.05mm厚のPETフィルム
そして洗浄後の各無機基材の片面に接着剤組成物を、乾燥後の層厚が120nmになるように塗布し、80℃5分間乾燥して接着剤層を形成して、接着剤層付き無機基材を作製した。塗布は、スプレーコーティング法またはディップコーティング法で行った。
次に、2枚の接着剤層付き無機基材を、形成された接着剤層同士が対抗するように、上記の樹脂フィルムを挟んで、220℃に加熱したホットプレート上で1kg重の加重にて1分間圧着し、積層された試験片を作製した(
図3参照)。
なお、2枚の接着剤層付き無機基材の各1端部の25mm×12.5mmの部分のみが重なって、25mm×12.5mmの樹脂フィルムの全体が丁度挟まれるようにして重ねた。(
図2参照)。
そして、引張試験機を用いて下記条件でせん断剥離強度測定を実施した。
引張試験機:精密万能試験機 AG-20kNXDplus型(島津製作所社製)
試験方法:180°テープ剥離試験
試験条件:引張速度100mm/min
【0082】
6)接着剤層の表面粗度
Raが0.5nm~0.9nmのガラス板の片面上に、接着剤組成物をスピンコーティング法(100~1000rpm,10秒)で塗布し、100℃10分で乾燥して、120nm厚の接着剤層を形成した。
そして、表面粗さ計で、接着剤層表面の表面粗度Raを測定した。
表面粗さ計:原子力間顕微鏡 SHIMADZU SPM-9600(島津製作所社製)
【0083】
5.評価結果まとめ
本発明の接着剤組成物は、ヘイズ値、光沢、無機基材との密着性、樹脂とのせん断剥離強度、表面粗度の良好なバランスを示した。
一方、酸触媒下で生成されなかったシラン化合物および/またはチタン化合物の加水分解縮合物を含有する比較例の組成物は、ヘイズ値、光沢、無機基材との密着性、樹脂とのせん断剥離強度、表面粗度の良好なバランスをとれなかった。
【0084】
【0085】
本発明の接着剤組成物は、金属または金属酸化物からなる基材の表面に塗布、乾燥させて接着剤層を形成し、樹脂に加熱圧着することで、基材の外観を維持したままで、優れた接着性を示しことができるため、産業上極めて有用である。
また、本発明の接着剤組成物は、無機基材層にめっき処理する際のめっき下地層の形成に用いることができ、めっき処理が困難な無機基材層へのめっき処理を容易にするため、産業上極めて有用である。