(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124366
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/12 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H02N2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027088
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】202310215792.3
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和彦
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA18
5H681BB01
5H681BC01
5H681DD73
5H681GG18
(57)【要約】
【課題】圧電超音波モータが動作する際に発生する音(ノイズ)が抑制された光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】光学部材駆動装置5は、駆動軸22を軸方向に振動させる圧電素子210を有する圧電超音波モータ20と、光学部材であるレンズ体6を保持するキャリア40と、キャリア40に固定される被固定部と駆動軸22を挟み込んで摩擦係合する摩擦係合部を有してキャリア40を移動可能に支持する2つの板ばねである第1板ばね46及び第2板ばね47と、一端が一方の板ばねである第1板ばね46の摩擦係合部に接触し、他端がキャリア40に接触する防振ゲル49と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を軸方向に振動させる圧電素子を有する圧電超音波モータと、
光学部材を保持するキャリアと、
前記キャリアに固定される被固定部と前記駆動軸を挟み込んで摩擦係合する摩擦係合部とを有して前記キャリアを移動可能に支持する2つの板ばねと、
一端が一方の前記板ばねの前記摩擦係合部に接触し、他端が前記キャリアに接触する防振ゲルと、を備えることを特徴とする光学部材駆動装置。
【請求項2】
前記キャリアにおいて、前記防振ゲルは前記板ばねに対して異なる距離で対向する2つの対向面の間を繋ぐ段差面に設けられている請求項1に記載の光学部材駆動装置。
【請求項3】
前記段差面には前記防振ゲルが充填される溝が設けられている請求項2に記載の光学部材駆動装置。
【請求項4】
前記摩擦係合部は前記被固定部に近いV基端部と遠いV先端部を有するV字状をなし、前記防振ゲルは、前記一端が前記V先端部に接触し、前記他端が前記段差面と接触している請求項2に記載の光学部材駆動装置。
【請求項5】
前記防振ゲルは、前記一端が前記V先端部に接触し、前記他端が前記2つの対向面のうちの距離が近い方の対向面に接触している請求項4に記載の光学部材駆動装置。
【請求項6】
前記防振ゲルは、さらに前記一端が前記V基端部に接触し、前記他端が前記キャリアにおける前記V基端部に対向する対向面に接触している請求項5に記載の光学部材駆動装置。
【請求項7】
さらに前記圧電超音波モータを支持する筐体を備え、前記防振ゲルは、別の前記一端が他方の前記板ばねの前記摩擦係合部に接触し、別の前記他端が前記筐体に接触している請求項6に記載の光学部材駆動装置。
【請求項8】
前記キャリアは、前記キャリアの側面から突き出して形成された基部を有し、
前記基部は、前記板ばねの前記被固定部を固定する固定部と、前記一端が前記板ばねの前記摩擦係合部に接触する前記防振ゲルの前記他端が接触する対向部と、を有する請求項1に記載の光学部材駆動装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光学部材駆動装置を備えたカメラ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のカメラ装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電超音波モータを利用した光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動電圧が与えられることにより変形する圧電素子を含む振動発生部材と、この振動発生部材に一端が固定されて軸方向に微振動する駆動軸とを有する圧電超音波モータが知られている。また、電子機器に搭載されるカメラ装置の中には、圧電超音波モータによってレンズを駆動する光学部材駆動装置を備えたものがある。この種の光学部材駆動装置は、弾性板材の弾性力と摩擦力により駆動軸に摩擦係合されて可動部材を支持する支持機構を有し、この支持機構を介して圧電超音波モータは可動部材を駆動する。圧電超音波モータが動作する際に音(ノイズ)が発生するという問題が以前からあった。
【0003】
従来、このような音(ノイズ)の低減策として、圧電素子に与える駆動電圧を最適化する方法が採られていた(例えば特許文献1)。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズ移動の高速化、高位置精度化に伴い、上述のような駆動電圧の最適化のみでは限界があり、圧電超音波モータが動作する際に発生する音(ノイズ)を十分に抑制することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、圧電超音波モータが動作する際に発生する音(ノイズ)が抑制された光学部材駆動装置、カメラ装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の好適な態様である光学部材駆動装置は、駆動軸を軸方向に振動させる圧電素子を有する圧電超音波モータと、光学部材を保持するキャリアと、前記キャリアに固定される被固定部と前記駆動軸を挟み込んで摩擦係合する摩擦係合部とを有して前記キャリアを移動可能に支持する2つの板ばねと、一端が一方の前記板ばねの前記摩擦係合部に接触し、他端が前記キャリアに接触する防振ゲルと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この態様において、前記キャリアにおいて、前記防振ゲルは前記板ばねに対して異なる距離で対向する2つの対向面の間を繋ぐ段差面に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記段差面には前記防振ゲルが充填される溝が設けられていてもよい。
【0010】
また、前記摩擦係合部は前記被固定部に近いV基端部と遠いV先端部を有するV字状をなし、前記防振ゲルは、前記一端が前記V先端部に接触し、前記他端が前記段差面と接触していてもよい。
【0011】
また、前記防振ゲルは、前記一端が前記V先端部に接触し、前記他端が前記2つの対向面のうちの距離が近い方の対向面に接触していてもよい。
【0012】
また、前記防振ゲルは、さらに前記一端が前記V基端部に接触し、前記他端が前記キャリアにおける前記V基端部に対向する対向面に接触していてもよい。
【0013】
また、さらに前記圧電超音波モータを支持する筐体を備え、前記防振ゲルは、一端が他方の前記板ばねの前記摩擦係合部に接触し、他端が前記筐体に接触していてもよい。
【0014】
また、前記キャリアは、前記キャリアの側面から突き出して形成された基部を有し、前記基部は、前記板ばねの前記被固定部を固定する固定部と、前記一端が前記板ばねの前記摩擦係合部に接触する前記防振ゲルの前記他端が接触する対向部と、を有してもよい。
【0015】
本発明の別の好適な態様であるカメラ装置は、上記光学部材駆動装置を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の好適な態様である電子機器は、上記カメラ装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光学部材駆動装置は、駆動軸を軸方向に振動させる圧電素子を有する圧電超音波モータと、光学部材を保持するキャリアと、前記キャリアに固定される被固定部と前記駆動軸を挟み込んで摩擦係合する摩擦係合部とを有して前記キャリアを移動可能に支持する2つの板ばねと、一端が一方の前記板ばねの前記摩擦係合部に接触し、他端が前記キャリアに接触する防振ゲルと、を備える。従って、防振ゲルにより減衰されるので、圧電超音波モータが動作する際に発生する音(ノイズ)が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態である光学部材駆動装置5を含むカメラ装置8が搭載されたスマートフォン9の正面図である。
【
図5】支持機構45付近を斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】
図5から第1板ばね46と第2板ばね47を取り除いた斜視図である。
【
図7】(a)は
図2のA-A線 断面図、(b)は(a)の拡大図である。
【
図9】支持機構45の他の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態である光学部材駆動装置5を含むカメラ装置8は、スマートフォン9の筐体内に収容される。
【0020】
カメラ装置8は、レンズ体6と、画像センサ7と、光学部材であるレンズ体6を駆動する光学部材駆動装置5とを有する。画像センサ7は、レンズ体6を経由して入射する被写体からの光を画像信号に変換して出力する。光学部材駆動装置5は、レンズ体6を、その光軸と平行な方向に沿って駆動する。
【0021】
以下、レンズ体6の光軸に平行なZ軸と、相互に直交し、かつ、Z軸と直交するX軸及びY軸とからなるXYZ直交座標系を想定し、光学部材駆動装置5の構成を説明する。また、以下では、Z軸の方向をZ方向、X軸の方向をX方向、Y軸の方向をY方向と称し、レンズ体6から見て被写体の側を+Z側、その方向を+Z方向と称し、その反対側(画像センサ7側)を-Z側、その方向を-Z方向と称する。
【0022】
図2及び
図3に示すように、光学部材駆動装置5は、直方体状のカバー10、圧電超音波モータ20、フレーム30、キャリア40、FPC50、及びベース60を有する。カバー10とベース60が組み合わされて筐体を構成し、筐体内に圧電超音波モータ20、フレーム30、キャリア40、及びFPC50が収容される。カバー10、フレーム30、キャリア40、及びベース60は、それぞれ被写体からの光を通過させるための貫通孔10a、30a、40a、及び60aを有する。レンズ体6は、キャリア40の貫通孔40a内に保持される。光学部材駆動装置5は、レンズ体6を保持したキャリア40を圧電超音波モータ20によってZ方向に駆動する。
【0023】
ベース60は、XY方向に板状に広がった略矩形状の底板部61と、底板部61の周辺から+Z側に起立した側板部62とを有する。側板部62の外側には、底板部61よりも低く周縁部が設けられている。貫通孔60aは底板部61に形成されている。底板部61の1対の対角部において、側板部62の内側に孔63及び64が形成されている。孔63及び64には、円柱状の主案内軸65及び副案内軸66の各基端部が固定され、主案内軸65及び副案内軸66は+Z側に向けて立設されている。また、孔63に隣接して底板部61には孔69が設けられているが、孔69は側板部62に遮られて
図3においては見えていない。底板部61の前記1対の対角部とは異なる角部において、側板部62はやや内側に設けられ、その外側の周縁部との間に周縁部よりも高く+Z側に盛り上がった連結部67が設けられている。また、連結部67が設けられた角部とその対角の位置にある角部において、側板部62の頂部から+Z方向に突出した円柱状のピン68が形成されている。
【0024】
ベース60の側板部62の外側は、FPC(Flexible Printed Circuits)50によって囲まれている。FPC50は、外部と接続される端子部と端子部から左右に分かれて帯状に延びる本体部とを有し、この本体部が側板部62を外側から覆う。
【0025】
キャリア40は、略円筒形をなし、筐体内に収容される。レンズ体6は、キャリア40の貫通孔40a内に保持される。キャリア40は、円筒形の側面から側方に突き出したような形状の連結部41及び42を有している。
図5及び
図7(a)、(b)に示すように、連結部41は、Z方向に離れて設けられて主案内軸65が挿通される1対の孔41aを有する。
図3及び
図7(a)に示すように、連結部42は、副案内軸66を収容するZ方向に延びた切り欠き部42aを有する。主案内軸65及び副案内軸66は、キャリア40をZ方向に移動するように案内する。また、孔41aに隣接してキャリア40が圧電超音波モータ20に支持されるための支持機構45が設けられている。
【0026】
フレーム30は、略矩形状の枠体であり、ベース60の連結部67が形成されている角部に対応する角部から-Z方向に延びた連結部31を有する。連結部31の-Z側の端部は、ベース60の連結部67に固定される。フレーム30において、ベース60の孔63及び64に対応した位置に孔33及び34が形成されている。これらの孔33及び34には、主案内軸65及び副案内軸66の先端部が固定される。また、ピン68、68に対応した位置に孔38、38が形成されており、フレーム30は、ピン68、68が孔38、38に挿通され、側板部62の頂部に固定される。また、孔38、38が設けられたのと同じ角部に孔38、38に隣接して+Z方向に突出した円柱状のピン37、37が設けられている。また、孔33が設けられた角部には、孔33に隣接して-Z側に退行した凹部35が設けられている。この凹部35の中央に孔35aが設けられている。
【0027】
圧電超音波モータ20は、キャリア40をZ方向に駆動する。圧電超音波モータ20は、
図4に示すように、XY平面に平行な円盤状の振動発生部材21と、振動発生部材21の-Z側の面の中心にその一端が固定された円柱状の駆動軸22と、振動発生部材21に接続されたFPC23とを有する。FPC23は、さらにFPC50と接続される。振動発生部材21は、金属の弾性板体211を1対の圧電素子210間に挟んで構成される。各圧電素子210の表裏面には電極が形成されており、表面側の電極はFPC23に電気的に接続され、裏面側の電極は弾性板体211に電気接続され、さらに弾性板体211はFPC23に電気的に接続される。なお、圧電素子210は弾性板体211の一方の側面にのみ設けてもよい。また、振動発生部材21は、正方形の板状等の他の形状でもよい。
【0028】
圧電素子210と弾性板体211との間に数十kHzの繰り返しパルスの駆動電圧が印加されると、圧電素子210は伸縮するが弾性部材211は伸縮しないので、振動発生部材21は全体として碗形状とその反転形状となる変形を繰り返す。これによって駆動軸22はその軸方向であるZ方向に微小な往復移動、即ち微振動する。繰り返しパルスの位相を変えることで、駆動軸22の往復移動中行きの速度と戻りの速度を異ならせることができる。ここでいう繰り返しパルスの位相とは、パルスのオン・オフの時間比率のことである。例えば、繰り返しパルスにおけるオン時間とオフ時間が等しい場合、駆動軸22の往復移動中の行きの速度と戻りの速度は等しく、オン時間がオフ時間より長い場合、行きの速度は速く戻りの速度は遅く、オン時間がオフ時間より短い場合、行きの速度は遅く戻りの速度は速い。
【0029】
圧電超音波モータ20は、それぞれゴムブッシュ(図示せず)を嵌めたベース60の孔69及びフレーム30の孔35aに駆動軸22が挿通され、凹部35に振動発生部材21が収容された状態で、ベース60及びフレーム30に支持される。キャリア40は孔35aと孔69の間の駆動軸22に支持機構45を介して支持される。支持機構45については後述する。
【0030】
カバー10はベース60の略矩形状に対応した略矩形状の天板部11と天板部11の周縁から-Z方向に延びる側板部12とを有する。カバー10は、フレーム30のピン37、37と対応する位置に孔17、17を有する。カバー10は、この孔17、17にピン37、37を挿通させ、フレーム30を+Z側から覆う。側板部12の-Z側の端部はベース60の周縁部に固定される。このようにして、光学部材駆動装置5は、
図2に示すように、略直方体形状に一体化される。
【0031】
ベース60の側面部62の内側にはヨーク及びホールICが配置されている(図示略)。キャリア40における側面部にはこのヨーク及びホールICと対向して磁石が配置されている(図示略)。ベース60のホールICは、キャリア40の磁石の磁界を検出することにより、キャリア40のZ軸方向の位置を検出する。ヨークと磁石は、相互に吸引し合い、キャリア40が側面部62側に引き寄せられる。この吸引力によってキャリア40の孔41aの内壁及び切り欠き部42aの内壁が主案内軸65及び副案内軸66に適度な圧力で押し当てられ、キャリア40の姿勢及びZ軸方向の駆動が安定したものになる。
【0032】
次に、支持機構45の詳細について説明する。
図3及び
図5~
図7(a)、(b)に示すように、支持機構45は、キャリア40の側面から突き出して形成された基部48と、基部48に固定されて駆動軸22を挟み込む2枚の板ばねである第1板ばね46及び第2板ばね47と、一端が第1板ばね46に接触し、他端が基部48に接触する防振ゲル49と、を有する。基部48は、キャリア40の側面から側面とほぼ直交する方向に広がって第1板ばね46及び第2板ばね47を固定する固定部481と、第1板ばね46に対向して固定部481から連結部41に至る対向部482と、を有する。防振ゲル49は対向部482に接触する。
【0033】
第1板ばね46は略L字状をなしており、L字の縦棒部分が被固定部を構成して基部48の固定部481に固定される。このL字状の横棒部分は基部48の対向部482から離隔して設けられており、この横棒部分の先端部分は、対向部482側に凹むV字状をなしている。被固定部に近くV字状における凹んでいく部分をV基端部461、被固定部から遠く凹んだ位置から元の位置に戻る部分をV先端部462とする。第2板ばね47も略L字状をなしており、L字の縦棒部分が第1板ばね46の縦棒部分に重ね合わされて基部48の固定部481に固定される被固定部である。第2板ばね47の横棒部分は第1板ばね46の横棒部分から離隔して真っ直ぐにI字状に延びたI字部471を構成している。第1板ばね46のV基端部461、V先端部462及び第2板ばね47のI字部471は略三角形状の摩擦係合部を構成し、駆動軸22をその内側に挟み込んで第1板ばね46と第2板ばね47の弾性力で駆動軸22を三方から加圧する。第1板ばね46と第2板ばね47は、その摩擦力によってキャリア40を移動可能に支持する。
【0034】
第1板ばね46のV基端部461及びV先端部462に対向している対向部482は、本実施形態において固定部481に近い側から第1対向面483、第2対向面484、第3対向面485、段差面486、第4対向面487の5つの面を有している。即ち、第1対向面483はV基端部461に対向しV基端部461に略平行な面である。第2対向面484はV基端部461とV先端部462の境目に対向し第1対向面483と第3対向面485とを繋いでいる。第3対向面485はV先端部462に対向しV先端部462に略平行な面である。第4対向面487は第3対向面485よりもV先端部462から遠い位置でV先端部462に対向しV先端部462に略平行な平面である。段差面486は第3対向面485と第4対向面487の間を繋ぐ平面である。
【0035】
段差面486には、Z方向に直交する方向に延びて段差面486を貫く2つの溝488、488がZ方向に並んで形成されている。溝488は、十分な量の防振ゲル49を保持し、且つ防振ゲル49が他の場所に移動してしまわないようにするために設けられる。従って、溝を設けない場合に比べて上記効果を奏することができるのであれば、数や形状は問わない。
【0036】
第1板ばね46と第2板ばね47を基部48の固定部481に固定後、溝488に防振ゲル49が充填されるように段差面486に防振ゲル49を供給する。第4対向面487と段差面486とV先端部462とでコ字状の形状を形成しているので、防振ゲル49を供給するのは容易である。防振ゲル49は一方で溝488だけでなく第4対向面487に接触し、他方で溝488を超えて対向する第1板ばね46のV先端部462の面に接触する。すなわち、これにより、防振ゲル49は一端が第1板ばね46のV先端部462に接触し、他端がキャリア40に接触する。防振ゲル49は、シリコーン系、エポキシ系、ウレタン系等、粘弾性を有するゲルであればよく、分類あるいは種類は限定されない。
【0037】
以上の構成において、FPC50及び23を介して圧電超音波モータ20に所定の位相の繰り返しパルスの駆動電圧が与えられると、例えば、駆動軸22は所定の閾値未満の速度で-Z方向へ移動する動作と閾値以上の速度で+Z方向へ戻る動作を交互に繰り返す。前者の行きの場合、キャリア40は駆動軸22の動きに追従するが、後者の戻りの場合、キャリア40は追従しない。これによって、キャリア40は-Z方向に駆動される。また圧電超音波モータ20に、逆の位相の繰り返しパルスの駆動電圧が与えられると、キャリア40は+Z方向に駆動される。
【0038】
圧電超音波モータ20が動作し、キャリア40が駆動されると、第1板ばね46と第2板ばね47の摩擦係合部と駆動軸22との間で音(ノイズ)が発生する。しかし、本実施形態では、防振ゲル49の一端が摩擦係合部に接触し、他端がキャリア40に接触しているために、防振ゲル49により減衰されるので、発生する音(ノイズ)が抑制される。
【0039】
以上のように、本実施形態による光学部材駆動装置5は、駆動軸22を軸方向に振動させる圧電素子210を有する圧電超音波モータ20と、光学部材であるレンズ体6を保持するキャリア40と、キャリア40に固定される被固定部と駆動軸22を挟み込んで摩擦係合する摩擦係合部を有してキャリア40を移動可能に支持する2つの板ばねである第1板ばね46及び第2板ばね47と、一端が一方の板ばねである第1板ばね46の摩擦係合部に接触し、他端がキャリア40に接触する防振ゲル49と、を備えている。従って、防振ゲル49により減衰されるので、圧電超音波モータ20が動作する際に摩擦係合部と駆動軸22との間で発生する音(ノイズ)が抑制される。
【0040】
なお、防振ゲル49は、一端が第1板ばね46の摩擦係合部に接触し、他端がキャリア40に接触するように設ければよく、特にV先端部462に接触するように設けることが望ましい。また、
図7(a)、(b)において防振ゲル49はキャリア40側において溝488内にのみあるように見えるが、第3対向面485にはみ出しても構わない。さらに、
図8に示す変形例のように、防振ゲル49は、第1板ばね46側がV基端部461とV先端部462の両方と接触し、キャリア40側が溝488に加えて第1対向面483、第2対向面484、第3対向面485の全てに接触するように設けられてもよい。この場合、第1板ばね46と第2板ばね47を基部48の固定部481に固定した後では防振ゲル49をうまく供給するのは簡単ではないので、固定前に予め防振ゲル49を供給しておいてもよい。また、当然
図7(a)、(b)と
図8の中間の状態であっても構わない。また、第1対向面483、第2対向面484、及び第3対向面485のうち、防振ゲル49に接触する面については、溝488と同様の溝を設けてもよい。
【0041】
また、
図9に示す他の変形例のように、防振ゲル49は、一端が第2板ばね47の摩擦係合部であるI部471に接触し、他端が筐体を構成するベース60の側板部62の対向面620に接触するように設けてもよい。対向面620には溝488と同様の溝を設けてもよい。
図9においては、第1板ばね46-キャリア40側の防振ゲル49は
図8と同じ状態であるが、
図7(a)、(b)と同じ状態のものであってもよいし、その中間の状態のものであってもよい。
【0042】
図8に示す変形例であっても
図9に示す変形例であっても、摩擦係合部と駆動軸22との間で発生する音(ノイズ)が抑制される。
【0043】
また、防振ゲル49は、第1板ばね46のV先端部462、V基端部461及び第2板ばね47のI部471の、対向部482や対向面620に対向している面にのみ接触すべきである。駆動軸22に摩擦係合している面には接触しないようにすることが望ましい。また、本実施形態による光学部材駆動装置5を従来の駆動電圧の最適化と組み合わせることにより、更なる音(ノイズ)の低減が期待できる。
【符号の説明】
【0044】
5 光学部材駆動装置;6 レンズ体;7 画像センサ;8 カメラ装置;9 スマートフォン;10 カバー;11 天板部;12 側板部;20 圧電超音波モータ;21 振動発生部材;210 圧電素子;211 弾性板体;22 駆動軸;23,50 FPC;30 フレーム;31,67 連結部;35 凹部;37,68 ピン;40 キャリア;41,42 連結部;42a 切り欠き部;45 支持機構;46 第1板ばね;461 V基端部;462 V先端部;47 第2板ばね;471 I部;48 基部;481 固定部;482 対向部;483 第1対向面;484 第2対向面;485 第3対向面;486 段差面;487 第4対向面;488 溝;49 防振ゲル;60 ベース;61 底板部;62 側板部;620 対向面;65 主案内軸;66 副案内軸;10a,30a,40a,60a 貫通孔;17,33,34,35a,38,41a,63,64,69 孔