(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124367
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】炭化ケイ素の層を除去するための方法、並びにエピタキシャル反応器構成要素を洗浄するためのプロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240905BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/205
B08B3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024027390
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】102023000003639
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】524075076
【氏名又は名称】エルピーイー・エッセ・ピ・ア
(71)【出願人】
【識別番号】524075087
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・カターニア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・エレナ・フラガラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・フランコ
【テーマコード(参考)】
3B201
5F045
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB23
3B201BB02
3B201BB93
3B201BB95
3B201BB96
3B201CB15
5F045AB06
5F045EB06
(57)【要約】
【課題】炭化ケイ素の層を除去するための方法、並びにエピタキシャル反応器構成要素を洗浄するためのプロセス及び装置を提供する。
【解決手段】革新的な方法(100)は、炭化ケイ素層をバルク片から除去するためのものであり、バルク片は、炭化ケイ素層の下にある黒鉛基材を含み、方法は、連続して、a)バルク片を硝酸を含有する第一の溶液に浸漬する工程(110)と、b)バルク片をフッ化水素酸及び酸化剤を含有する第二の溶液に浸漬する工程(120)と、典型的には、c)層が片から剥離されるまで、好ましくは、脱イオン水のみ、又は本質的に脱イオン水を含有する第三の溶液中に、バルク片を浸漬する工程(130)と、を含み、本方法は、有利なことに、例えば、炭化ケイ素堆積プロセスにおける反応器における、それらの使用後に、エピタキシャル反応器の構成要素を洗浄するために、使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク片(200)から炭化ケイ素層(220)を除去するための方法(100)であって、前記バルク片(200)が、炭化ケイ素の前記層(220)の下にある黒鉛の基材(210)を含み、前記方法が、
a)前記バルク片(200)を第一の所定の温度で第一の溶液中に浸漬する工程(110)であって、前記第一の溶液が第一の所定の濃度の硝酸を含有し、第一の所定の時間浸漬する工程と、
次に、
b)前記バルク片(200)を第二の所定の温度で第二の溶液中に浸漬する工程(120)であって、前記第二の溶液が第二の所定の濃度のフッ化水素酸及び第三の所定の濃度の酸化剤を含有し、第二の所定の時間浸漬する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、炭化ケイ素の前記層(220)を前記バルク片(200)から剥離することを意図する工程を更に含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記工程が、剥離を引き起こすことが意図され、工程b)と全体的又は部分的に重複する、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
工程a)と工程b)との間に、少なくとも1つの中間工程がある、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
工程b)が工程a)の直後である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記方法が、
c)前記バルク片(200)を第三の所定の温度で第三の溶液に浸漬する工程(130)であって、前記第三の溶液が、好ましくは、水のみ、又は本質的に水、特に脱イオン水を含有し、少なくとも炭化ケイ素の前記層(220)が前記バルク片(200)から剥離されるまで、浸漬された状態を保つ工程、を含み、
工程c)が、工程b)に後続する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記方法が、
d)少なくとも炭化ケイ素の前記層(220)が前記バルク片(200)から剥離されるまで、工程b)の後に前記バルク片を超音波に供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
e)前記バルク片を第三の所定の温度で第三の溶液に浸漬する工程であって、前記第三の溶液が、好ましくは、水のみ、又は本質的に水、特に脱イオン水を含有する工程、及び、少なくとも前記炭化ケイ素層が前記バルク片から剥離されるまで、前記第三の溶液に浸漬される間、前記バルク片を超音波に供する工程を含み、
工程e)が、工程b)に後続する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、洗浄工程を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記酸化剤が、酸化塩であり、特に、過マンガン酸カリウム、及び二クロム酸カリウムから選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記第一の所定の温度、及び/又は前記第二の所定の温度、及び/又は前記第三の所定の温度が、10℃~45℃、特に、15℃~40℃の範囲内で選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記第一の所定の時間が、3時間超であり、
及び/又は、
前記第二の所定の時間が、3時間超である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記第一の所定の濃度が、60%超であり、
及び/又は、
前記第二の所定の濃度が、40%超であり、
及び/又は、
前記第三の所定の濃度が、10exp-3~10exp-1のモル濃度である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項14】
エピタキシャル反応器、特に、基材上の炭化ケイ素のエピタキシャル堆積のための反応器の、機械的構成要素を、堆積プロセスにおける前記反応器での使用後に、洗浄するためのプロセスであって、前記プロセスが、機械的構成要素(400)に適用される請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)を含む、プロセス。
【請求項15】
工程a)及びb)の前に、前記機械的構成要素(400)が、前記黒鉛の基材(410)が少なくとも部分的に(430、440)露出されるように処理される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
エピタキシャル反応器、特に、基材上の炭化ケイ素のエピタキシャル堆積のための反応器の、機械的構成要素を、堆積プロセスにおける前記反応器での使用後に、洗浄するための装置(300)であって、前記装置が、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)を実施するように構成される、装置(300)。
【請求項17】
少なくとも1つの槽及び手段であって、前記槽内に前記第一の溶液、又はその後前記第二の溶液を生成するように適合された、少なくとも1つの槽及び手段を備え、少なくとも1つの機械的構成要素を操作するための手段を備える、請求項16に記載の装置(300)。
【請求項18】
第一の槽(310)及び第二の槽(320)と、前記第一の槽(310)内に前記第一の溶液を生成するように適合された手段と、前記第二の槽(320)内に前記第二の溶液を生成するように適合された手段とを備える、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明及び図示される本主題は、炭化ケイ素の層を除去するための方法、並びにエピタキシャル反応器構成要素を洗浄するためのプロセス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素装置の最近の開発は、非常に高い温度(典型的には、1600~1800℃)で動作することができる、炭化ケイ素の堆積及び熱処理のための、エピタキシャル反応器又はオーブンの使用を必要とする。
【0003】
CVDとして知られる化学気相堆積による、高温での炭化ケイ素層のエピタキシャル堆積は、半導体産業で使用される製造プロセスである。
【0004】
炭化ケイ素エピタキシャル反応器は、多くの場合、薄い炭化ケイ素層で覆われた黒鉛部品からなる。
【0005】
反応器内の基材又はウエハ上への炭化ケイ素のエピタキシャル堆積の間、反応器チャンバの部品はまた、ミリメートルの厚さに達するまで、その上に堆積する炭化ケイ素のスプリアス堆積に供される。
【0006】
これらのスプリアス堆積は、反応器チャンバを比較的短い時間、例えば、数週間又は数か月使用することを可能にする。
【0007】
この時間の後、チャンバを反応器から除去し、典型的には処理して、スプリアス堆積から生じる炭化ケイ素層を除去する必要がある。
【0008】
今日まで、目的に好適な、既知の「ウェット洗浄」プロセス(酸、塩基、又は酸化剤を使用する)はない。
【0009】
現在、特別な研磨紙及び手作業を伴う、機械的研磨プロセスが使用されている。これらのプロセスを使用しても、特に、幾何学的形状が直線状ではない場合、完全に清浄な表面を得ることは不可能である。これは、洗浄後にチャンバ部品が反応器で使用される場合、基材又はウエハ上に堆積されたエピタキシャル層の、粒子欠陥及び品質の問題があることを意味する。
【0010】
マイクロエレクトロニクス装置から様々な材料を除去するためのいくつかの方法は、国際公開第2008/157345号から知られている。数えられないほどの物質が、これらの方法において考慮される。これらの方法の有効性は、記載されていることの不明瞭さ及び範囲を考慮すると、少なくとも疑わしい。純粋な炭化ケイ素又はNドープ炭化ケイ素を、それを含有するマイクロエレクトロニクス装置から除去するように、見かけ的に製剤化された組成物を指す、いわゆる「第六の態様」があるが、炭化ケイ素結晶の結晶化度/種類も、ポリタイプ(特に、3C、又は4H、又は6Hであり得る)も特定されていない。19種の製剤が具体的に考えられており、全てがH2SO4を含有し、多くはHFを含有し、1種の処理浴のみが示されている。「実施例1」は、550オングストロームの厚さ、すなわち、55ナノメートル又は0.055ミクロンの、純粋な炭化ケイ素の層、又はNドープ炭化ケイ素の層を有する、シリコンウエハを処理すること、すなわち、「エッチング」することを伴い、純粋な炭化ケイ素の場合、「エッチング速度」は、0.27~0.87ナノメートル/分であり、ドープ炭化ケイ素の場合、「エッチング速度」は、0.6~4.36ナノメートル/分である。これらの「エッチング速度」値は、少なくとも数百ミクロンである、上記の炭化ケイ素スプリアス堆積の厚さと互換性がなく、実際、わずか100ミクロンを除去するには、最良の場合でも、約23,000分又は約400時間要することになる。
【0011】
中国特許出願公開第10445208号明細書には、多結晶シリコンインゴットのエッジから不純物を除去することが知られている、方法が含まれている。不純物は、特に、炭化ケイ素及び窒化ケイ素から構成される。全ての方法は、(多結晶ケイ素及び不純物の両方を含有する)インゴットエッジ材料を、5~50mmなどの、所定のサイズに粉砕することを含む。方法の1つは、粉砕された材料を、例えば、フッ化水素酸及び硝酸の両方を含み得る溶液に浸漬することを含み、文書は、2つの異なる酸を使用する理由を説明するものではなく、一般に、酸は、表面シリコン分子と反応させるために使用される。こうした方法の一例は、溶液中に強力な酸化剤、特に、過マンガン酸カリウム、又は二クロム酸カリウムも有することであり、文書は、こうした酸化塩を添加する理由を説明するものではない。
【発明の概要】
【0012】
したがって、産業的に製造が簡単であり、複雑な装置を必要としない、炭化ケイ素の層を黒鉛基材から除去するための方法を有することが望ましい。
【0013】
理想的には、この方法は、特に、厚い層(数百ミクロン又はミリメートル)を、迅速に(数時間で、又は数十時間若しくは数百時間よりもはるかに短く)除去するのに好適であるべきである。
【0014】
この一般的な目的、並びにより具体的な目的は、本明細書に記述及び図示されるもの、特に、本明細書に添付される特許請求の範囲の主題のおかげで達成される。
【0015】
本件は、添付図面と併せて考慮されるべき、以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、バルク片から炭化ケイ素層を除去するための方法を作成するための、例示的なフローチャートを示す。
【
図3】
図3は、エピタキシャル反応器の機械的構成要素を洗浄するための装置を作成する実施例を示す。
【
図4A】
図4Aは、洗浄前の2つの別個の段階で洗浄される、機械的構成要素の例を示す。
【
図4B】
図4Bは、洗浄前の2つの別個の段階で洗浄される、機械的構成要素の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実装の特定の実施例に関連して以下に例示される技術的特徴は、添付の特許請求の範囲によってその主な態様で定義され、本発明を限定するものとみなされるべきではないことに留意すべきである。
【0018】
また、実装の特定の実施例に関連して以下に例示される技術的特徴は、互いに密接に連結され、したがって、相互に結合するとみなされるべきではないことに留意すべきである。
【0019】
革新的な方法は、バルク片から炭化ケイ素層を除去するように機能する。
図1は、方法の実施のための例示的なフローチャート100を示す。
【0020】
図2Aに例として示すように、処理されるバルク片200は、炭化ケイ素の層220の下にある黒鉛の基材210を備える。この実施例では、層220は、炭化ケイ素の薄い(例えば、20~200nm=ナノメートル)下層222と、下層222の上に重なる、すなわち隣接する、炭化ケイ素の厚い(例えば、20~200μm=マイクロメートル)下層224とを含み、副層222は、例えば基材210の前処理に由来し、副層224は、例えば複数のスプリアス堆積に由来する(したがって、複数の重なり合う、すなわち隣接する副層を含むと考えられ得る)。
【0021】
用途に応じて、炭化ケイ素層が2つ以上の炭化ケイ素副層から形成される場合、それらは同一であっても異なってもよい。例えば、副層222及び副層224は、異なるプロセスから生じるため、異なる。例えば、副層224を形成する任意の副層は、エピタキシャル反応器で作製された基材上の、炭化ケイ素のエピタキシャル堆積プロセスなど、同一又は少なくとも類似のプロセスに由来するため、同一である。
【0022】
図1の実施例による革新的な方法は、
a)バルク片200を第一の所定の温度で第一の溶液中に浸漬する工程(図式100のブロック110)であって、前記第一の溶液が第一の所定の濃度の硝酸を含有し、第一の所定の時間浸漬する工程と、
次に、
b)バルク片200を第二の所定の温度で第二の溶液中に浸漬する工程(プロット100のブロック120)であって、前記第二の溶液が第二の所定の濃度のフッ化水素酸及び第三の所定の濃度の酸化剤を含有し、第二の所定の時間浸漬する工程とを含む、方法である。
【0023】
当分野の経験を有する人が理解し得るように、これらの2つの工程のいずれも、炭化ケイ素層を攻撃又は腐食させることは意図していないが、本質的に基材上で動作すること、及び基材からの層の剥離を引き起こすこと、又は少なくとも促進することを意図している。実際に、硝酸、フッ化水素酸、又は酸化剤(個別に、又はそれらの任意の組合わせ)のいずれも、炭化ケイ素を著しく攻撃又は腐食させることができない。更に、目標が、炭化ケイ素を攻撃又は腐食させることである場合、層の除去時間は、その厚さに大きく依存することになる。
【0024】
第一の工程は、「インターカレーション」として知られる現象を引き起こし、インターカレーションは、黒鉛(硝酸は、黒鉛において、特に良好にインターカレーションする)において、特に、炭化ケイ素層に接する黒鉛の領域で本質的に生じる。この現象は、黒鉛網のサイズの増加、したがって、黒鉛と炭化ケイ素との間の界面での張力の生成につながる。
【0025】
その後、第二の工程は、以前の「インターカレーション」によって許容される、黒鉛と炭化ケイ素との間の界面に酸化を伸長させ、それ故に形成される酸化物は、フッ化水素酸によって攻撃され得る。
【0026】
本出願人は、硝酸、フッ化水素酸、及び強酸化剤(特に、過マンガン酸カリウム、又は二クロム酸カリウム)を単一溶液中で組み合わせて処理を単純化しようと試みたが、所望の結果を達成しなかった。明らかに、3つの化合物は、特に、個々の試薬の濃度を変化させ、それ故に、インターカレーション及び/又は酸化プロセスを変化させることによって、相互に反応する。
【0027】
特に、工程a)及び工程b)は、上述の現象を引き立て、利用するような方法で実施される。
【0028】
工程b)は、工程a)に直接、すなわち、中間処理なしで後続してもよく、いずれの場合でも、工程a)と工程b)との間には、例えば、1秒又は1分又は1時間など、多かれ少なかれ時間も要し得る。代替的に、工程a)と工程b)との間には、少なくとも1つの中間工程があってもよい。
【0029】
典型的には、方法は、工程b)で言及される溶液中に単に浸漬することが、こうした剥離を引き起こす可能性が低いため、炭化ケイ素層をバルク片から少なくとも部分的に剥離させる工程を、更に含む。剥離を引き起こすこの段階は、例えば、バルク片を音波、特に、超音波又はメガサウンドに供することによって、又はバルク片を気泡、特に、不活性ガスの流れに供することによって、実施されてもよい。実装のいくつかの実施例によると、剥離を引き起こすことを目的としたこうした段階は、段階b)と、全体的又は部分的に重複し得ることは除外されるべきではない。
【0030】
典型的には、及び工程b)の後、方法はまた、
c)バルク片200を第三の所定の温度で第三の溶液中に浸漬する工程(図式100のブロック130)であって、前記第三の溶液が、炭化ケイ素の層220がバルク片200から剥離されるまで(少なくとも部分的に)、好ましくは、水のみ、又は本質的に水、特に、脱イオン水を含有する、浸漬する工程、を含む。
【0031】
工程b)の後の結果は、例えば、
図2Bに示されており、層220が、基材210から剥離されている(この場合、完全に)。
【0032】
炭化ケイ素の層220の剥離は、いくつかの事例では、基材210からの黒鉛の部分的な剥離、例えば、小さな黒鉛の断片を引き起こし得ることは除外されるべきではない。
【0033】
以下に記載するように、工程d)又は工程e)などの、工程c)の代替が、層を基材から剥離するために存在してもよい。
【0034】
工程d)は、工程b)の後、炭化ケイ素層がバルク片から剥離されるまで(少なくとも部分的に)、バルク片を超音波に供することを伴う。
【0035】
工程e)は、工程b)の後、バルク片を第三の所定の温度で第三の溶液に浸漬すること(第三の溶液は、好ましくは、水のみ、又は本質的に水、特に脱イオン水を含有する)、及びバルク片を超音波に供する一方で、バルク片から炭化ケイ素層の(少なくとも部分的に)剥離まで、第三の溶液に浸漬することを伴う。
【0036】
前の段落で使用した言語を、明確にする価値がある。明らかに、溶液が1つの化学物質(例えば、水)のみを含有する場合、厳密には、それは溶液ではなく、「溶液」という用語は、概念の定式化を容易にするためにのみ使用された。更に、「本質的に含有する」という用語は、残りの含有量が処理に無関係な量であることを意味する。
【0037】
典型的には、方法は、洗浄工程を更に含む。二回以上の洗浄、例えば、工程a)の直後の洗浄、及び/又は工程b)の直後の洗浄、及び/又は炭化ケイ素層の剥離後のバルク片の洗浄もあり得る。
【0038】
酸化剤は、好ましくは、酸化塩であり、特に、過マンガン酸カリウム、及び二クロム酸カリウム、並びに他の類似の酸化塩から選択される。シリコン又は黒鉛の処理に従来使用されている全ての酸化剤が、剥離プロセスに有効であるわけではないことに留意すべきである。
【0039】
第一の所定の温度、及び/又は第二の所定の温度、及び/又は第三の所定の温度は、10℃~45℃、特に、15℃~40℃の範囲内で選択されてもよい。特に、これらの温度は、「室温」に対応してもよい。
【0040】
第一の時間、すなわち、工程a)の持続時間は、典型的には、時間単位、特に、3時間超である。
【0041】
第二の時間、すなわち、工程b)の持続時間は、典型的には、時間単位、特に、3時間超である。
【0042】
こうした浸漬時間は、バルク部品のサイズ及び幾何学的形状、並びに使用される酸の濃度に依存し得る。
【0043】
第一の所定の濃度、すなわち硝酸は、好ましくは、60%超である。
【0044】
第二の所定の濃度、すなわちフッ化水素酸は、好ましくは、40%超である。
【0045】
第三の所定の濃度、すなわち酸化剤は、好ましくは、10exp-3(=10-3)~10exp-1(=10-1)のモル濃度である。
【0046】
本明細書に記載及び特許請求される革新的な方法は、堆積プロセスにおける反応器での使用後の、エピタキシャル反応器、特に、基材上の炭化ケイ素のエピタキシャル堆積のための反応器の、機械的構成要素の洗浄において特に有利な用途を見出す。
【0047】
これらの用途では、バルク部品は、黒鉛で作製され、例えば、反応器で使用する前に薄い炭化ケイ素層によって覆われた、エピタキシャル反応器の機械的構成要素であり、この薄いシリコン炭素層の厚さは、1ミクロン未満(又は、更に小さく)でなければならない。これは、例えば、反応器チャンバ若しくは反応器ヒーターの一部、又はエピタキシャル炭化ケイ素堆積プロセス中にスプリアス堆積に供され得る別の構成要素であってもよく、典型的には、このようなスプリアス堆積は、数十~数百ミクロンの厚さの範囲であり得る、厚い炭化ケイ素層を生成する(そして、数ミリメートル[ほど薄]くてもよい)。
【0048】
いくつかのこうした用途によると、エピタキシャル反応器の機械的構成要素を洗浄するためのプロセスは、こうした革新的な方法を含むが、他の工程も含んでもよい。
【0049】
いくつかのこうした用途によると、エピタキシャル反応器の機械的構成要素を洗浄するための装置は、こうした革新的な方法を達成するように構成される。
【0050】
こうした装置の例を、
図3に示し、参照300で集合的に参照する。
【0051】
装置300は、第一の槽310、第二の槽320、及び第三の槽330を備える。第一の槽310には、第一の溶液314を保持するように適合された、第一の空洞312が提供される。第二の槽320には、第二の溶液324を保持するように適合された、第二の空洞322が提供される。第三の槽330には、第三の溶液324を保持するように適合された、第三の空洞332が提供される。
【0052】
装置300は、本明細書に記載の革新的な方法に従って、特定の溶液を作成するための手段(
図3には図示せず)を備えてもよい。
図3の実施例では、各溶液用に槽があり、そのため、第一の溶液は第一の槽内に生成され、第二の溶液は第二の槽内に生成され、第三の溶液は第三の槽内に生成される。代替的に、例えば、1つの槽のみが存在してもよい。したがって、第一の溶液は槽内に生成され、次いで、構成要素の第一の処理、次いで、槽を空にし、次いで、第二の溶液は槽内に生成され、次いで、構成要素の第二の処理、次いで、槽を空にし、次いで、第三の溶液は槽内に生成され、次いで、構成要素の第三の処理、次いで、槽を空にする。
【0053】
装置300は、洗浄される構成要素を操作するための手段(
図3には図示せず)を更に備えてもよく、特に、処理前に浸漬し、処理後に溶液(複数可)に、及び溶液(複数可)から、構成要素を抽出するための手段を、更に備えてもよい。
【0054】
図4は、洗浄処理の前の、洗浄される機械的構成要素400の実施例を概略的に示す。こうした構成要素の心臓部410は黒鉛で作製され、炭化ケイ素層420によって(この場合、完全に)包囲される。これは、特に、基材上への炭化ケイ素のエピタキシャル堆積のための反応器の構成要素であり、このような構成要素の黒鉛は多結晶性であるため、HOPG(=高配向性熱分解黒鉛)ではなく、このタイプの反応器に堆積した炭化ケイ素は結晶性であり、4H、又は6H、又は3C型であり、したがって、構成要素から除去される炭化ケイ素層(スプリアス)も、4H、又は6H、又は3C型である。
【0055】
特に、
図4Aでは、層の厚さは、底面、右側側面、及び左側面上ではるかに低く、例えば、この層は、「元の」炭化ケイ素の薄い層に対応し得ることに留意されたい。特に、
図4Aでは、層の厚さは、上面で非常に高く、例えば、この上層は、「元の」炭化ケイ素と、スプリアス堆積による炭化ケイ素との重複に対応し得ることに有意されたい。
図4Aは、例として、上で論じた最大片200に対応し得る、構成要素400の一部分を示す。
【0056】
例えば、
図4の構成要素400を考慮すると、工程a)及びb)の前に、構成要素400は、有利には、黒鉛基材の少なくとも一部が露出するように処理されてもよい。
図4Bは、炭化ケイ素層410を通過し、黒鉛基材410に到達する、2つの(しかし、それ以上であってもよい)掘削430及び440を示す。この実施例によると、掘削は、炭化ケイ素の厚さが高い上層、すなわち、スプリアス堆積が発生した上層に存在する。
【0057】
構成要素400の黒鉛内のインターカレーション(前述)は、黒鉛自体を浴物質に曝露する、掘削の存在による曝露によって促進されることが、
図4Bから明らかである。
【0058】
本明細書に記載及び特許請求される方法はまた、下にある黒鉛基材を含むバルク片から炭化ケイ素層を除去する必要がある任意の場所で、マイクロエレクトロニクス産業の外部でも、適用してもよいことに留意すべきである。
【0059】
有利なことに、こうした方法による分離によって得られる炭化ケイ素は、例えば、マイクロエレクトロニクスの元のものとは異なる領域でも、リサイクルすることが可能である。
【0060】
有利なことに、こうした方法による分離によって得られた黒鉛は、例えばマイクロエレクトロニクスの元のものとは異なる領域でも、リサイクルすることが可能である。
【0061】
こうしたリサイクル手順は、本明細書に記載の主題の、有利かつ独立して特許請求可能な態様である。
【外国語明細書】