(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124368
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】精密容量分割型電圧センサに印加される温度勾配を測定する装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20240905BHJP
G01R 15/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01R15/16
G01R15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024027971
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】23305277.8
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】パトリス・ジャッジ
(72)【発明者】
【氏名】レト・クリステン
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA08
2G025AB07
2G025AC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガス絶縁開閉装置(GIS)では容量性センサで測定する電圧の精度を高めることが課題となっている。
【解決手段】本発明は、GISの導体(30)用の、円筒形のコンデンサからなる容量性センサ(2)に関するものであり、前記センサは、少なくとも2つのデジタル又はアナログ温度センサを含む。これにより、前記温度センサは、前記GISの前記ガス中の温度を直接測定することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを含み、少なくとも1つの導体(30、40、50)と、前記導体(30、40、50)の周囲に配置された、円筒形のコンデンサ(2)を含む少なくとも1つの容量性センサ(2)とを備えるGISであって、前記センサは、少なくとも2つのデジタル又はアナログ温度センサ(12、14、16、18、12a、14a、16a、18a)を含み、これにより、前記温度センサは、前記GISの前記ガス中の温度を直接測定することができる、GIS。
【請求項2】
前記少なくとも2つのデジタル又はアナログ温度センサ(12、14、16、18、12a、14a、16a、18a)が、前記円筒形のコンデンサに沿って又は円筒形のコンデンサの周囲に規則的に配置されている、請求項1に記載のGIS。
【請求項3】
4個のアナログ温度センサ(12、14、16、18)を含み、前記センサのうち2個が直列に接続された2つのグループ(22、24)を含み、前記2つのグループは並列に接続されている、請求項1又は2に記載のGIS。
【請求項4】
並列に接続されたn個(n>2)のアナログ温度センサを含む、請求項1又は2に記載のGIS。
【請求項5】
デイジーチェーンで接続されたn個(n>2)のデジタル温度センサを含む、請求項1又は2に記載のGIS。
【請求項6】
前記少なくとも2つの温度センサ間の温度勾配及び/又は前記少なくとも2つの温度センサによって測定された温度の平均値を推定又は計算する手段(28)をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載のGIS。
【請求項7】
前記各温度センサの位置における温度を推定又は計算する手段(28)をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載のGIS。
【請求項8】
前記温度分布のデータセット又はマップを確立するための手段(28)をさらに含む、請求項7に記載のGIS。
【請求項9】
前記コンデンサの前記幾何学的パラメータ、場合によっては少なくとも2つの温度センサの温度測定値、及び/又は前記少なくとも2つの温度センサ間の温度勾配、及び/又は前記少なくとも2つの温度センサで測定された平均温度、及び/又は温度に起因する膨張による前記幾何学的パラメータの変動に基づいて、前記容量性センサによって測定された前記電圧値を補正する手段(28)をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載のGIS。
【請求項10】
前記センサは、少なくとも200mmの外径を有する、請求項1から9のいずれかに記載のGIS。
【請求項11】
単一の導体(30)を含み、前記GISは単相GISであり、前記円筒形のセンサは前記導体の周囲に配置される、請求項1から10のいずれかに記載のGIS。
【請求項12】
3つの導体(30、40、50)を含み、前記GISは3相GISであり、3つの容量性センサを含み、容量性センサは前記導体の各々の周囲に配置される、請求項1から10のいずれかに記載のGIS。
【請求項13】
少なくとも1つの温度センサが、前記導体(30)の下方、又は各導体(30、40、50)の下方、又は各導体(30、40、50)の底部に配置され、少なくとも1つの温度センサが、導体(30)の上方、又は各導体(30、40、50)の上方、又は各導体(30、40、50)の上部に配置されている、請求項11又は12に記載のGIS。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに記載のGISの導体(30、40、50)の電圧を測定するための方法であって、
前記容量性センサを用いて少なくとも1つの電圧を測定する工程と、
前記少なくとも2つのセンサの各々を用いて少なくとも1つの温度を測定する工程と、
前記少なくとも2つのセンサの各々によって提供される温度に基づいて、前記少なくとも2つのセンサ間の少なくとも1つの温度勾配及び/又は少なくとも1つの平均温度を計算する工程と、
前記温度勾配及び/又は前記平均温度に基づいて、前記測定された電圧を補償及び/又は修正する工程と、を含む方法。
【請求項15】
前記容量性センサで複数の電圧を測定する工程と、
前記少なくとも2つの温度センサ間の複数の温度勾配及び/又は前記少なくとも2つの温度センサによる複数の平均温度を測定する工程と、
前記温度勾配及び/又は前記平均温度と前記測定された電圧とを前記導体(30、40、50)の少なくとも1つの標準電圧と比較する工程と、
温度勾配及び/又は平均温度と電圧との間の関係を確立する工程とを先に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
静電容量式センサ(Capacitive sensors)は、ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgears)の電圧を測定することで知られている。
【背景技術】
【0002】
このようなセンサの例は、R. Christenらによる論文「Optimized LPIT(Low power instrument transformer)applications in GIS using SF6 and climate friendly insulating gas g3」(CIGRE, Session 2022, A3-659)に開示されている。
【0003】
図9A及び
図9Bは、上述の記事によるGIS用の容量性分割器(capacitive divider)を示している。これは、GISのガス区画内の高電圧一次導体(high-voltage primary conductor)の周囲に同心状に配置するためのものである。高電圧導体と電極は、分割器の高電圧容量部(high-voltage capacitance part)C
1を形成する。電極はプリント基板上に配置され、筐体(enclosure)C
3から分離されている。信号増幅と精密コンデンサ(precision capacitor)C
2は、主電子測定経路(main electronic measuring path)に実装することができる。
図9Bは、単相バス(single-phase bus)用の測定電極を示す。
【0004】
容量下部(bottom of the capacity、又は測定電極:measurement electrode)の温度T0が上部の温度T1より低いと、容量の異なる部分(different parts of the capacity)の熱膨張が異なるため、センサによって測定された電圧は正確ではない。このため、GISでは容量性センサで測定する電圧の精度を高めることが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2023/022633号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、まず、少なくとも2つのデジタル又はアナログ温度センサ(at least 2 digital or analogue temperature sensors)を含む、例えばプリント回路基板上の静電容量式センサに関する。
【0007】
本発明により、より正確な温度補償電圧(temperature compensated voltage)を得るために、特に直径200mm又は450mm以上の大口径の容量型電圧センサで平均温度を測定することが可能になる。このようにして、電圧センサによって測定された信号は、温度センサによって測定された温度勾配(temperature gradients)に基づいて補正される。
【0008】
本発明は、GIS用電圧センサの精度を向上させる。
【0009】
本発明は、電圧センサが大きな温度勾配が存在し得る環境に設置され、精度の制約が高い場合に特に有用である。本発明により、温度勾配が存在しても測定精度クラス0.2(accuracy class 0.2)を達成することができる。これは、勾配が存在する環境よりも温度が均一な環境の方が達成しやすい。顕著な温度勾配が存在する場合、本発明による分散した温度測定(distributed temperature measurement)は、より良い精度に寄与し、より厳しい精度クラスに到達することを可能にする条件の1つである。
【0010】
静電容量式センサは、1つ又は2つの電極を含み、各電極は、その電圧を測定するために導体の周囲に配置することができる。
【0011】
一実施形態では、本発明による静電容量式センサは複数のアナログ温度センサを含み、これは平均センサに相当し得る。
【0012】
別の実施形態では、本発明による静電容量式センサは、複数のデジタル温度センサを含む。
【0013】
いずれの場合も、温度センサは容量性センサの周囲360°に、好ましくは規則的に配置することができる。
【0014】
温度センサの1つ又は複数は、
コンデンサの他の部分の機械的な制約に影響されないように、センサの他の部分、例えばコンデンサが作られた基板から、好ましくは横方向の2つの側面にある隙間によって分離され得る、及び/または、
金属スクリーンによって電界から保護されて得る。
【0015】
本発明による静電容量式センサは、
- 少なくとも2つの温度センサ間の温度勾配、及び/又は少なくとも2つのセンサによって測定された平均温度を推定又は計算するため、及び/又は、
- 各温度センサの位置における温度を推定又は計算するため、及び/又は、
- 温度分布のデータセット又はマップを作成する、及び/又は、
- 分周器の幾何学的及び/又は物理的パラメータに基づいて、及び/又は、場合によっては、少なくとも2つの温度センサの温度測定値に基づいて、及び/又は、前記少なくとも2つの温度センサ間の温度勾配に基づいて、及び/又は、前記少なくとも2つの温度センサで測定された平均温度に基づいて、及び/又は、温度に起因する膨張による前記幾何学的パラメータの変動に基づいて、容量性センサで測定された電圧値を補正又は補償するために、例えば計算機、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コンピュータなどの手段を備えることができる。このような補正又は補償は、温度データの測定値が提供され、それに応じて前記補正又は補償を実行するようにプログラムされた、計算機又は計算手段、例えば計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータによって実行することができる。
【0016】
本発明は、単相導体、又は複数、例えば3相を有するシステムの各相に適用される。
【0017】
本発明はまた、導体と、前記導体の周囲に設けられた本発明による容量性センサとを含む単相GISにも関する。
【0018】
また、3本の導体と、各導体の周囲に設けられた本発明による容量性センサを含む3相GISにも関する。
【0019】
本発明によるGISでは、少なくとも1つの温度センサを、導体の下方、又は導体の底部(below, or at the bottom of, the conductor)、又は各導体の下方、又は導体の底部に配置することができ、少なくとも1つの温度センサを、導体の上方、又は導体の頂部、又は各導体の上方、又は導体の頂部に配置することができる。
【0020】
本発明は、GISにおいて、内部の熱放散が多い定格電流負荷(rated current load with a lot of internal thermal dissipation)時や、日射を受ける屋外使用時の電圧センサの精度保証に寄与する。
【0021】
負荷電流、すなわちGIS導体内部を循環する永久電流(permanent currents)は、ゼロから数千アンペア、例えば5000A(場合によってはそれ以上、例えば6000Aまで)になる。これらの電流は、所定の長さで、両端の接続によって抵抗がオーム単位で測定される導体内を循環する。消費電力は、抵抗に電流の2乗を掛けたものに等しい。例えば、4000Aの電流と30マイクロオームの抵抗の場合、0,000030オーム×4000×4000=480Wの加熱電力(ワット)が得られる。主に対流現象により、バーの高さで発生した熱により、高温のガスはエンベロープの上部に向かって上昇する。このエンベロープの周囲にある電圧センサは、数度の温度差(temperature difference of several degrees)に耐えることを余儀なくされる。
【0022】
本発明は、より正確なエネルギー計測に貢献する。
【0023】
本発明はまた、本発明による電圧センサと、計算手段又は計算手段、例えば計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータとを含む電圧測定システムにも関する。温度データの測定値が提供され、それに応じてプログラムされた、電圧センサによって提供された測定値に基づいて導体内の電圧を推定又は計算し、場合によっては上記で説明したように電圧を補正又は補償する。
、計算手段又は計算手段、例えば計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータとを含む電圧測定システムにも関する。
【0024】
本発明はまた、導体、例えばGISにおける電圧を測定するための方法にも関する。方法は、本発明による電圧センサを用いて前記導体内を循環する電圧を測定する工程と、前記電圧センサの前記少なくとも2つの温度センサのそれぞれを用いて温度を測定する工程と、前記温度に基づいて、及び/又は前記2つの温度センサ間の温度勾配に基づいて、及び/又は前記少なくとも2つの温度センサを用いて測定された平均温度に基づいて、前記測定された電圧を補正する工程とを含む。
【0025】
本発明による方法は、一組のデータ又は温度分布のマップを確立する工程と、前記一組のデータ又はマップに基づいて1つ又は複数の温度勾配を計算又は推定する工程とを含むことができる。
【0026】
本発明による方法は、電圧センサを用いて前記導体内の複数の電圧を測定する前工程と、前記少なくとも2つの温度センサを用いて前記少なくとも2つの温度センサ間の複数の温度勾配及び/又は複数の平均温度を測定する工程と、前記温度勾配及び/又は前記平均温度と前記測定された電圧とを前記導体内の少なくとも1つの標準電圧と比較する工程と、温度勾配及び/又は平均温度と電圧との間の関係を確立する工程とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本発明による電圧センサの一実施形態を示す。
【
図1B】本発明による電圧センサの一実施形態を示す。
【
図2】本発明による電圧センサのGIS導体周りの実施形態を示す。
【
図3】本発明による電圧センサの温度センサのブリッジ接続を示す。
【
図4】本発明による電圧センサの温度センサの別のブリッジ接続を示す。
【
図5】本発明による電圧センサの温度センサの直列接続を示す。
【
図6】本発明による電圧センサの温度センサのデイジーチェーン接続を示す。
【
図7】3本の導線を含む3相システムを示しており、各導線は本発明による電圧センサと関連付けられている。
【
図8】本発明による電圧センサに関連する測定システムを示す。
【
図10】GISにおける電圧センサのパラメーターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態を
図1A及び
図1Bに示す。この実施形態は、二重静電容量式センサ(double capacitive sensor)2用の電極3、5を含む。これらの電極は、
図2に示されているように、導体の周囲に同心状に配置することができる。本発明は、1つの電極(3又は5)のみを含む単純な容量性センサにも適用される。GISでは、メイン回路用とバックアップ回路用の2つの電圧センサが必要な場合があり、したがって
図1A及び1Bの2つの電極3、5が必要である。
【0029】
2つの電極3、5は、例えば、銅又は銅と金の混合物で作ることができる。電極は、例えばPCBなどの基板上に形成することができる。
【0030】
図2において、参照番号30は、電流が流れる導体、例えばGIS導体である。
図1Aの静電容量式センサ(capacitive sensor)は、前記導体内の電圧を測定するために導体30の周囲に配置することができる。
図9A及び
図10の図に基づき、一次電圧U
1は次式で与えられる。
U
2/U
1 = C
1/C
2
一次コンデンサの値C
1は次式で与えられる。
C
1 = 2πε
0ε
rl(1+α(T-T
0))/(ln(R
2/R
1)
l = 電極の長さ
R
1 = 導体30の直径(mm)
R
2 = 電極の直径(mm)
ε
0 = 真空中の誘電率
ε
r = ガスの誘電率
U
2 = 測定電圧
U
1 = 一次電圧
α=電極材料の熱膨張係数
【0031】
l、半径R1、半径R2、ガス比誘電率εrは温度に影響される。
【0032】
したがって、C1は電極3、5の2つの異なる部分、特にコンデンサの下部と上部の間の温度差T-T0の影響を受ける。これは容量C1/C2の比に影響し、最終的に分圧器の感度(sensitivity of the voltage divider.)に影響する。
【0033】
C2はしばしば別のチャンバに設置され、C1よりも温度の影響を受けにくい。
【0034】
静電容量センサ2(C
1)は、その横方向の側面の少なくとも1つ、好ましくは電極の各側面に、複数の温度センサ、例えば少なくとも4つの温度センサ12、12a、14、14a、16、16a、18、18aを備える(
図1Aの例のように)。好ましくは、前記センサは抵抗器(resistors)である。
【0035】
温度センサは、例えば100Ω又は1000Ωの白金抵抗器(platinum resistor)、及び/又はSMDタイプ(Surface Mounted Detector)を含むことができる。抵抗器に基づくセンサは温度に依存し、特に「PT100」又は「PT1000」タイプでは、100Ω及び1000Ωの値は通常0℃Vで与えられる。
【0036】
図1Bは、
図1Aのセンサ12の実施形態、すなわちSMDタイプの温度センサの詳細を示す。これは、コンデンサの残りの部分、例えば基板の機械的な制約の影響を受けないように、好ましくは2つの側面で、部分的に隙間7、9に囲まれている。すべてのセンサ12~18、12a~18aは、例えば
図1Bのように、同一又は類似の実装を有することができる。
【0037】
さらに、センサ12、12a、14、14a、16、16a、18、18aの1つ以上は、センサの上方に、センサからある程度離れた位置に保たれた金属スクリーン(図示せず)によって電界から保護されることがある。
【0038】
図1A及び
図1Bの例から理解できるように、温度センサはGISのガス中の温度を直接測定することができる。
【0039】
温度センサ12~18(12a~18a)は、
図3又は
図4に示すように接続することができ、並列に配置された2つのレッグ(脚部)22(22')、24(24')を含むブリッジ20、20'に配置され、各レッグは、実際には抵抗器である前記温度センサの2つを含む。すべての抵抗器が同じ値を持つ場合、このブリッジは、1つの抵抗器(例えば0℃で100Ω、例えば「PT100」抵抗器)と等価なインピーダンス値を持つシステムで、4つの異なる場所で平均温度の測定を実施することを可能にする。電圧測定の補正に使用される単一の温度プローブは、センサの平均温度ではない1カ所だけの温度値を示すことになる。これは補償誤差(compensation error)をもたらし、したがって測定誤差(measurement error)をもたらす。
【0040】
あるいは、4つのセンサの代わりに3つのセンサを実装することもできるが、少なくとも4つのセンサが望ましい。
【0041】
センサのもう一つの電気的接続は、
図5に示すようなもので、数個のセンサ、例えば各1000Ωの抵抗器(0℃で、例えば「PT1000」抵抗器)が並列に接続されている。例えば、このようなセンサを10個、
図1Aの電極の両側に沿って一定の間隔で配置する。
【0042】
センサーの別の電気接続が
図6 に示されており、この例では4つのセンサーが「デイジーチェーン:daisy chain」または「並列」に接続されている。この場合、各温度センサはデジタル・アドレスを持ち、測定ユニットとセンサ間の通信はデジタルで行われる。そして、高度なモニタリング機能のために温度勾配を測定することが可能である。従って、各センサの位置の温度と、全センサによって測定された平均温度を測定することができる。例えば、このようなセンサを
図1の電極3、5の両側に沿って一定の間隔で10個配置することができる。各センサは、接地線(アースライン)23、電圧供給ライン27(例えば+5V)、信号ライン25に接続することができる。
【0043】
好ましくは、導体の下部と上部の間の温度勾配を推定又は測定できるように、少なくとも1つの温度センサが導体30の下に、少なくとも1つの温度センサが前記導体30の上に配置される(高温ガスは導体の下部から上部に向かって上昇するため、導体の上部の温度は導体の下部よりも高くなりやすい)。”下”と”上”は、導体の位置の垂直方向を意味し、高温ガスはその垂直方向に沿って、導体の下又は導体の下から導体の上又は導体の上へと上昇する。
【0044】
本発明によるいずれの実施形態においても、各センサからの信号は、制御ユニット、例えばコンピュータ又はマイクロプロセッサに供給され、サンプリング及び/又は処理され、温度情報を提供することができる。
【0045】
図7は、3つの導体30、40、50(例えば、3相システムの導体)を含む筐体(enclosure)を示し、本発明による容量性センサ2、42、52は、前記導体のそれぞれの周囲に実装される。前記各導体の一次電流による内部放散の結果として、及び/又は筐体への太陽光輻射(sun radiation)のために、筐体60内に温度勾配が存在する可能性がある。例えば、筐体の底部は約40℃、中間部は例えば47℃、上部は約55℃の温度でありえる。
【0046】
図8は、導体30の周囲に実装された本発明による静電容量式センサ2を示す。前記静電容量式センサからの信号は、前記信号を光信号(optical signals)に変換するためのコンバータ32に送ることができる。1つ又は複数の他のセンサ、例えばロゴスキーコイル34(導体30内を循環する電流を測定するためのもの)からの他の信号も、コンバータ36によって光信号に変換することができる。光信号は、マージユニット28でマージすることができる。マージユニットは、データを処理するためのマイクロプロセッサで構成することができ、少なくとも、温度勾配情報から、及び/又は、複数の温度センサによって提供されるデータから推定される平均温度から、及び/又は、複数の温度センサによって提供される温度情報から推定される平均温度から、電圧補償及び/又は測定補償を実行することを可能にする計算機能を有する。例えば、温度勾配及び/又は平均温度及び/又は複数の温度センサによって提供される温度情報と、測定された電圧への影響との間の関係は、リアルタイムで測定することができ、その後、例えば、正確な電圧測定を得るために、記録されるかソフトウェアからアクセス可能な数学的法則に変換することができる。
【0047】
同じ測定システムを、例えば
図7のように、複数の容量性センサに対して実施することができる。本発明による1つ又は複数の容量性センサによって測定された電圧値は、温度センサの温度測定値に基づいて、及び/又は前記センサによって測定された平均温度に基づいて、及び/又は少なくとも2つのセンサ間の温度勾配に基づいて補償することができる。この補正は、測定された電圧に温度に依存するゲインを乗算することによって行うことができる。このゲインは、1つ又は複数の試験測定によって計算又は測定することができる。あるいは、本発明による方法又はプロセスを実施するようにプログラムされた、計算機又はプロセッサ又はマイクロプロセッサ又はコンピュータを、マージユニットの代わりに実装することもできる。
【0048】
電圧に対する温度の影響は、試験中に測定することができる。複数の温度勾配及び/又は複数の平均温度及び/又は少なくとも2つの温度センサによって提供される複数の温度データについて、複数の電圧を測定することができる。測定値は、1つ又は複数の電圧標準と比較することができる。これにより、電圧と平均温度又は温度勾配(温度勾配よりも平均温度の方が実施しやすいため好ましい)との間に、例えば数学的法則のような関係を推論することが可能になる。この関係は、測定された電圧を補正するために使用することができ、この補正は例えばソフトウェアによって実行される。
【0049】
平均温度は、センサの異なるゾーンの間の平均温度である。
【0050】
好適にはデジタルセンサを使って、異なるポイントやゾーン(different points or zones)で温度を測定することで、温度分布のデータセットやマップを作成し、温度勾配を特定することができる。また、異常に高温になっている可能性のあるポイントを検出するのにも役立つ。
【0051】
しかし、静電容量式センサは温度に敏感であるため、測定電圧U1を温度の関数として補正することが、より良い精度を得るためには望ましい。
【0052】
したがって、容量性センサの両側で異なる温度t1及びt2が測定された場合、センサ内の電圧U1の測定値を補正するためにt1及びt2の一方のみを使用すると、誤った補正が行われる(電圧が過剰補正又は過小補正(overcompensated or undercompensated)される)。容量性センサの上部と下部の温度差も感度に影響を与えるが、これは上記のC1の式に基づいて理解することができる。
【0053】
従って、容量性センサの異なる部分の間に温度差がある場合、単一の温度センサでは不十分である。一実施形態では、本発明は、測定電圧U1を補正するために平均温度を測定することを実装し、その結果、より正確な補正又は修正が行われる。デジタルセンサの場合、前記平均温度は、測定された温度の合計をセンサの数で割ったものに等しくすることができる。
【0054】
例えば、測定される電圧は、-40℃と+80℃との間で約何ppm/℃の傾きをもって、温度に応じてほぼ直線的にドリフト又は変化し得る。このような勾配は、例えば、マージユニット28によって、又はより一般的には、例えば、温度データの測定値が提供され、それに応じてプログラムされる計算機、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コンピュータなどの手段によって補正することができる。
【0055】
例えば、ある地点の温度が、本発明によるセンサに使用される材料に関して過剰な値(excessive value)に達した場合、アラーム閾値(alarm threshold)を実装することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
2、42、52:静電容量センサ 3、5:電極 7、9:隙間 12、14、16、18、12a、14a、16a、18a:温度センサ 20:ブリッジ 22、24:レッグ 23:接地線 25:信号線 27:電圧供給線 28:マージユニット 30、40、50:導体 32、36:コンバータ 34:ロゴスキーコイル 60:筐体 l:電極の長さ R1:導体30の直径 R2:電極の直径 T0:コンデンサ下部の温度 T1:コンデンサ上部の温度
【外国語明細書】