(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124370
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エチレン重合用触媒の製造方法およびエチレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/69 20060101AFI20240905BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08F4/69
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028070
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2023031065
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】馬場 竜希
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲朗
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC42
4J128AC43
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC32A
4J128CA24A
4J128CA28A
4J128CB91A
4J128DB06A
4J128DB09A
4J128EA01
4J128EA02
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB09
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA04
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分子量分布の広いエチレン系重合体を与えるクロム触媒において、高分子量のエチレン系重合体を与えるエチレン重合用触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物(B)は、前記クロム化合物(b)を還元できる第1イオン化ポテンシャルを有するものであることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物(B)は、第一イオン化ポテンシャルが5.5~8.0eVであることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物(B)は、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIA)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIB)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIIA)で表される有機ケイ素化合物、または下記一般式(IIIB)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【化1】
[式(I)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基であるか、あるいは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、互いに結合して環状構造を形成していても良く、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。
【化2】
[式(IIA)及び式(IIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【化3】
[式(IIIA)及び式(IIIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【請求項5】
前記式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基であり、式(IIA)、式(IIB)、式(IIIA)及び式(IIIB)中、R11、R11’、R11”が、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、R12、R13、R14、R15が、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であり、R16およびR17は、水素原子であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)において前記クロム触媒(A)に含まれるクロム原子に対する、前記有機ケイ素化合物(B)の使用量が、モル比([B]/[Cr])として0.001~100であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエチレン重合用触媒の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とし、
下記工程(2)の後、前記エチレン重合用触媒を非還元性雰囲気において焼成することなく用いる、エチレン系重合体の製造方法。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン重合用触媒の製造方法およびエチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン重合体およびエチレンを主要成分とするエチレンとα-オレフィンの共重合体(以下、両重合体を「エチレン系重合体」と記載する)は、各種の成形品の樹脂材料として、一般に広く用いられている。エチレン系重合体はその成形方法と用途によって要求される特性が異なる。例えば、射出成形法によって成形される製品には分子量が比較的小さく、狭い分子量分布を有する重合体が適しているが、フィルム成形やブロー成形などによって成形される製品には、分子量が比較的大きく、分子量分布が広い重合体が適している。
【0003】
任意のクロム化合物をシリカなどの無機酸化物担体に担持させて、非還元性雰囲気下で焼成することで、6価のクロム種が主成分となり重合活性を示すようになる。この触媒(フィリップス触媒)を用いることで、分子量分布の広いエチレン系重合体を得られることは良く知られており、多くの製品がフィリップス触媒から得られたエチレン系重合体により製造されている。このフィリップス触媒においては、シリカ担体の物理構造の制御や焼成温度条件の調節、その他の無機酸化物担体の混合などにより、分子量分布の形状をコントロールする技術が確立されてきている(非特許文献1)。しかしながら、得られるエチレン系重合体を高分子量化するにあたっては、原料担体の選択や焼成条件といった触媒の製造段階を見直す必要がある。
【0004】
一方、製造したフィリップス触媒の分子量分布を制御する技術として、特定の有機アルミニウム化合物で処理した触媒で物性バランスの良いエチレン系重合体が得られる技術(特許文献1)や、シクロペンタジエニル環を有する特定の化合物を共存させることで、得られるポリマーの分子量分布を広げることが出来る技術(特許文献2)などが開示されている。しかしながら、これらの技術は主にエチレン系重合体の分子量の低下に伴う分子量分布の変化である。従って、製造したフィリップス触媒において、高分子量のエチレン系重合体を得るための、効果的な変性剤の開発が求められている。
【0005】
フィリップス触媒の主成分は6価のクロム種であり高い酸化数を有するため、古くから還元剤として一酸化炭素や一酸化窒素といった化合物を用いることが知られている。この手法では分子量分布が変化することなく誘導時間が短縮され、高い活性を示すクロム触媒を製造できるが、一酸化炭素や一酸化窒素は毒性の高い化合物であることが課題である。一方で、オレフィンメタセシス反応を促進する酸化タングステン触媒において、特定の有機ケイ素化合物(2,3,5,6-tetramethyl-1,4-bis(trimethylsilyl)-1,4-diaza-2,5-cyclohexadiene)で処理することで、6価のタングステン種が還元されることを報告している(非特許文献2)。
【0006】
一方、特許文献3には、(a)クロム化合物および有機珪素化合物を無機酸化物担体に担持し焼成することによって得られた固体と、(b)トリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムハイドライドとからなる触媒の存在下に、エチレンを重合することを特徴とするエチレン重合体の製造法が開示されている。特許文献3では、当該触媒により、水素による生成重合体の平均分子量の制御が可能になったと記載されており、クロム化合物の焼成時に有機珪素化合物を共存させた実施例では、水素量に応じて、平均分子量が低下することが示されている。
特許文献3では、クロム化合物および有機珪素化合物を無機酸化物担体に担持した後に高温条件下で焼成を行っている。そのため、特許文献3の態様では有機珪素化合物が高温焼成時に分解されている可能性が高く、焼成後に得られるクロム触媒の変性剤として有機珪素化合物を用いることを意図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5460140号
【特許文献2】特許第4732444号
【特許文献3】特公昭63-26121号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Adv. Catal., 2010, 53, p.123-606.
【非特許文献2】ACS Cent. Sci. 2016, 2, p.569-576.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、分子量が比較的大きく分子量分布が広いエチレン系重合体が求められている中、製造したクロム触媒において、高分子量のエチレン系重合体を得るための効果的な変性剤の開発が求められている。
したがって、本発明では、上記従来技術の問題点に鑑み、分子量分布の広いエチレン系重合体を与えるクロム触媒において、効果的な変性剤を組合せることにより、高分子量のエチレン系重合体を与えるエチレン重合用触媒の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、クロム触媒に対して、不活性炭化水素溶媒中で、還元性を有する有機ケイ素化合物を接触処理すると高分子量のエチレン系重合体を製造できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0011】
[1] 下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
[2] 前記有機ケイ素化合物(B)は、前記クロム化合物(b)を還元できる第1イオン化ポテンシャルを有するものであることを特徴とする、前記[1]に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
[3] 前記有機ケイ素化合物(B)は、第一イオン化ポテンシャルが5.5~8.0eVあることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
[4] 前記有機ケイ素化合物(B)は、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIA)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIB)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIIA)で表される有機ケイ素化合物、または下記一般式(IIIB)で表される有機ケイ素化合物であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【0012】
【化1】
[式(I)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基であるか、あるいは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、互いに結合して環状構造を形成していても良く、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。
【0013】
【化2】
[式(IIA)及び式(IIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【0014】
【化3】
[式(IIIA)及び式(IIIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【0015】
[5] 前記式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基であり、式(IIA)、式(IIB)、式(IIIA)及び式(IIIB)中、R11、R11’、R11”が、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、R12、R13、R14、R15が、それぞれ独立して水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であり、R16およびR17は、水素原子であることを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
[6] 前記工程(2)において前記クロム触媒(A)に含まれるクロム原子に対する、前記有機ケイ素化合物(B)の使用量が、モル比([B]/[Cr])として0.001~100であることを特徴とする、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のエチレン重合用触媒の製造方法。
【0016】
[7] 前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のエチレン重合用触媒の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
[8]下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とし、
下記工程(2)の後、前記エチレン重合用触媒を非還元性雰囲気において焼成することなく用いる、エチレン系重合体の製造方法。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分子量分布の広いエチレン系重合体を与えるクロム触媒において、効果的な変性剤を組合せることにより、高分子量のエチレン系重合体を与えるエチレン重合用触媒の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1,2及び比較例1で用いられた各固体触媒のUV-Vis-NIR測定結果を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例2と比較例1で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例3と比較例2で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例4と比較例3で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例9と比較例4で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、“x~y”という範囲を示す表記は、特に断りが無い限り、当該範囲にxとyが入るものとする。
【0020】
I.エチレン重合用触媒の製造方法
本発明のエチレン重合用触媒の製造方法は、下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
【0021】
本発明のエチレン重合用触媒の製造方法によれば、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒(A)に対して、不活性炭化水素溶媒中で、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を接触することにより、分子量分布が広く、高分子量のエチレン系重合体を与えるエチレン重合用触媒を製造することができる。
本発明によれば、焼成後のクロム触媒に、変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物を用いて変性したエチレン重合用触媒を用いることにより、エチレン系重合体の分子量が増加するため、剛性に優れる高密度エチレン系重合体を製造することができる。
【0022】
本発明の製造方法における上記組み合わせの作用効果については、未解明であるが、以下のように推定できる。
無機酸化物担体(a)としてシリカを、クロム化合物(b)として酢酸クロムを用いて無機酸化物担体表面にクロム化合物を担持した後、焼成活性化することによりシリカ表面で起きる反応を下記Scheme1に示した。
シリカと酢酸クロム(水溶液)とを混合するとシリカ中のシラノール基と酢酸クロムが反応し、シリカ上に酢酸クロムが担持される。これを焼成活性化することにより、有機物由来の構造(酢酸構造)は焼却除去され、クロム酸エステル構造が形成され、少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒(A)となる。
【0023】
【0024】
通常のクロム触媒においては、下記Scheme2に示すように、このクロム酸エステル体とエチレンとを混合すると、クロム酸エステル構造がエチレンによって還元され、活性点前駆体が形成される。この還元に要する時間(クロム酸エステル体から活性点前駆体が生成するまでの時間)を誘導時間という。このようにクロム化合物を無機酸化物担体上へ担持後、還元反応により活性点前駆体になることで、エチレンの重合が開始されると考えられている。
【0025】
【0026】
それに対して、本発明のエチレン重合用触媒の製造方法においては、エチレンと混合する前に、少なくともクロム原子の一部が6価であるクロム触媒(A)に、不活性炭化水素溶媒中で、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する。その場合、下記Scheme3に示すように、クロム酸エステル構造が還元性を有する有機ケイ素化合物(B)によって還元され、2価のクロム種を形成することがUV-Vis-NIRの分析結果から示されている。その際に、副生成物として配位性化合物であるジシロキサン化合物が生じると推定される。この配位性化合物が触媒活性点に作用することで、高分子量成分の増加に至ったと考えられる。
【0027】
【0028】
なお、前記Scheme3では、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)として、典型的な還元剤であるケイ素-ケイ素結合を有する化合物のうち最も構造がシンプルなヘキサメチルジシランで例示しているが、その他の還元剤であるケイ素-ケイ素結合を有する化合物や、ケイ素-窒素結合を有する化合物、または、ケイ素-炭素結合を有する化合物も、6価のクロムを還元する際に、副生成物として同様にジシロキサン化合物が配位した活性点前駆体を形成し得ることを理解できる。
【0029】
1.工程(1)
本発明の工程(1)は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程である。
【0030】
[無機酸化物担体(a)]
本発明に用いられる無機酸化物担体(a)としては、クロム触媒に用いられる従来公知の無機酸化物担体を用いることができ、例えば、周期表第2、4、13又は14族の金属の酸化物を用いることができる。具体的には、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、マグネシア、トリア、シリカ-チタニア、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア又はこれらの混合物が挙げられ、その中でも好ましくは、シリカである。
本発明に係る無機酸化物に適する担体の製法、物理的性質及び特徴は、例えば、以下の文献に記載されているものが挙げられる。
(i)C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers
(ii)C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年,Elsevier Science Publishers
【0031】
本発明に係る無機酸化物担体(a)としては、比表面積が好ましくは100m2/g~900m2/gであるものが用いられる。より好ましくは100m2/g~850m2/g、さらに好ましくは150m2/g~850m2/gとなるように選択することが好ましい。比表面積が100m2/g~900m2/gの範囲にあると、得られるエチレン系重合体の耐久性、耐衝撃性ともにバランスがよいものとなる。
【0032】
本発明に係る無機酸化物担体(a)の細孔体積としては、一般的なクロム触媒に用いられる無機酸化物担体の場合と同様に、好ましくは0.5cm3/g~5.0cm3/g、より好ましくは1.0cm3/g~3.0cm3/g、さらに好ましくは1.2cm3/g~2.5cm3/gの範囲のものが用いられる。細孔体積が0.5cm3/g~5.0cm3/gの範囲の場合は、重合活性が良好で、無機酸化物担体の製造も、容易になる。
また、本発明に係る無機酸化物担体(a)の平均粒径としては、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは20μm~150μm、さらに好ましくは30μm~100μmの範囲のものが用いられる。
【0033】
[クロム化合物(b)]
本発明に用いられるクロム化合物(b)としては、無機酸化物担体(a)に担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となる化合物が好ましく、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、クロムのオキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、クロムの硝酸塩、クロムのカルボン酸塩、クロムの硫酸塩、クロム-1,3-ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。
【0034】
具体的には、酸化クロム(III)、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2-エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert-ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも酸化クロム(III)、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には酸化クロム(III)を用いた場合と同様に、無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている((i)J. Phys. Chem. 1996, 100, 26, p.11062-11066.、(ii)J. Mol. Catal. 1991, 66, p.59-71.)。
【0035】
[無機酸化物担体(a)へのクロム化合物(b)の担持]
無機酸化物担体(a)へのクロム化合物(b)の担持は、クロム化合物中の少なくとも一部のクロム原子が6価となる状態で担持されることが好ましく、これを達成できれば特に限定されず、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム原子として担体に対して、好ましくは0.2~2.0重量%、より好ましくは0.3~1.7重量%、さらに好ましくは0.5~1.5重量%である。
【0036】
本発明では、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)が担持されたクロム触媒(A)に、さらにフッ素化合物を含有させることもできる。
フッ素化合物の含有方法(フッ素化)は、溶媒中でフッ素化合物溶液を含浸させた後、溶媒を留去する方法、あるいは溶媒を用いずにフッ素化合物を昇華させる方法等、公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって、適宜好適な方法を用いればよい。無機酸化物担体にクロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させてもよいし、フッ素化合物を含有させてからクロム化合物を担持してもよいが、クロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させる方が好ましい。
フッ素化合物の含有量は、フッ素原子の含有量として担体に対して、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.3~8重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%である。
【0037】
フッ素化合物としては、フッ化水素HF、フッ化アンモニウムNH4F、ケイフッ化アンモニウム(NH4)2SiF6、ホウフッ化アンモニウムNH4BF4、一水素二フッ化アンモニウム(NH4)HF2、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムNH4PF6、テトラフルオロホウ酸HBF4等のフッ素含有塩類が用いられ、なかでも、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムが好ましい。
これらを、水又はアルコール等の有機溶媒に溶解させた後、クロム触媒に含浸させるのが均一性の観点から好ましいが、固体のままクロム触媒と混合するだけでもよい。溶解して含浸させる場合は、表面張力による細孔体積の縮小(shrinkage)を抑えるために、アルコール等の有機溶媒を用いるのがより好ましい。また、溶媒を用いた場合は、風乾、真空乾燥、スプレードライ等、既知の方法によって、溶媒を飛ばして乾燥させる。
【0038】
後述する非還元性雰囲気での焼成活性化(賦活)により、これらのフッ素化合物は、熱分解することによって、無機酸化物担体をフッ素化する。例えば、無機酸化物担体としてシリカを用い、フッ素化合物としてケイフッ化アンモニウムを用いた場合は、ケイフッ化アンモニウムが以下のように熱分解して、フッ化水素HF及びフッ化ケイ素SiF4を発生する。
(NH4)2SiF6 → 2NH3 + 2HF + SiF4
【0039】
さらに、HF及びSiF4がシリカ表面のシラノ-ル基と反応してフッ素化することが知られている(J. Mol. Catal. 1991, 66, p.59-71.、A.Noshayら著,「Transition Metal Catalyzed Polymerizations-Ziegler・Natta and Metathesis Polymerizations」p.396頁,1988年,Cambridge University Pressを参照。)。
Si-OH + HF → Si-F + H2O
Si-OH + SiF4 → Si-O-SiF3 + HF
2Si-OH + SiF4 → (Si-O)2SiF2 + 2HF
【0040】
したがって、フッ素含有塩類のようなフッ素化合物の固体とクロム触媒を混合しただけの場合でも、結局はフッ素化合物が熱分解するので、同様の反応が起こってクロム触媒はフッ素化される。あるいは、焼成活性化(賦活)工程の間にフッ素化合物を投入する方法でもよい。ただし、その場合、フッ素化合物の固体をガス中で流動化させるので、均一性の観点からできるだけ微細な粒子状のフッ素化合物固体を用いることが好ましい。
【0041】
[非還元性雰囲気における焼成活性化]
無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持した後、場合によっては、さらにフッ素化合物を担持した後、焼成活性化を行い、クロム触媒(A)を得る。焼成活性化は、好ましくは300℃~950℃、より好ましくは325℃~800℃、さらに好ましくは350℃~650℃の温度で行う。焼成活性化を300℃~950℃の範囲で行うと、触媒は重合活性の観点で良好な性能を示すと考えられる。焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば、酸素又は空気下で行うことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行う焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム原子が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。
クロムの価数は固体生成物の色変化(一般的には、6価は黄色からオレンジ色、3価は緑色、2価は青色)を肉眼観察することにより概略を知ることができる。
【0042】
2.工程(2)
本発明の工程(2)は、不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程である。
【0043】
[還元性を有する有機ケイ素化合物(B)]
還元性を有する化合物とは、電子を与える能力が高い化合物を指す。有機ケイ素化合物(B)は、前記クロム化合物(b)を還元できる第1イオン化ポテンシャルを有するものが好ましい。還元力の指標として標準電極電位E(V)や電子エネルギー準位(eV)が一般的に用いられる。
標準電極電位Eの場合、負の値で絶対値が大きいほど強い還元性を示す。例えば、Chem. Rev. 1996, 96,p. 877-910.では、還元剤の標準電極電位(VvsFC)が-0.5よりも大きい(負の値で絶対値が小さい)化合物は弱い還元剤、-0.5~-1.5の化合物は穏和な還元剤、-1.5~-2.5の化合物は強い還元剤、-2.5よりも小さい(負の値で絶対値が大きい)化合物は非常に強力な還元剤と分類している。
電子エネルギー準位で表す場合、最高被占準位(HOMO)から電子を取り除くことが酸化であり、最低空軌道(LUMO)に電子を加えることが還元であり、真空中に電子が放出される際のエネルギーを表す仕事関数(eV)が用いられる。すなわち、HOMOから電子を取り除きやすい化合物ほど強い還元性を有し、その仕事関数が小さいほど還元剤として作用しやすい。また、分子から電子が放出される際のエネルギーは、エネルギーの最も高い分子軌道にある電子から取り出されるため、HOMOのエネルギー値がイオン化ポテンシャルに該当し、還元剤の指標としてイオン化ポテンシャルで表すこともできる。
還元性を示す代表的な有機ケイ素化合物として、次のような化合物が挙げられる。典型的な還元剤としては、ケイ素-ケイ素結合を有する化合物があり、中でも最も構造がシンプルなヘキサメチルジシランは、白金電極を用いた測定でのピーク電位が1.67VvsSCE(New J. Chem. 1999, p.287-290.)であって、第一イオン化ポテンシャルが6.1eVである(Sci. Tech. Adv. Mater. 2005, 6, p.443-446.)。
またChem. Eur. J. 2019, 25, p.913-919.や国際公開第2014/210512号公報などにあるように、ケイ素-窒素結合を有するジアザシクロヘキサジエン構造の有機ケイ素化合物やケイ素-炭素結合を有するシクロヘキサジエン構造の有機ケイ素化合物が、還元剤としての効果を示すことが知られている。例えば、1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジンの第一イオン化ポテンシャルは、6.16eVであり、3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエンの第一イオン化ポテンシャルは、7.70eVである(J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, p.4429-4438.)。
すなわち、第一イオン化ポテンシャルが5.5~8.0eVの有機ケイ素化合物であれば、還元剤として作用することが期待される。中でも、第一イオン化ポテンシャルが6.0~8.0eVの有機ケイ素化合物が好ましい。
【0044】
本発明に用いられる前記有機ケイ素化合物(B)としては、第一イオン化ポテンシャルが5.5~8.0eVの、ケイ素-ケイ素結合を有する有機ケイ素化合物、ケイ素-窒素結合を有するジアザシクロヘキサジエン構造の有機ケイ素化合物、または、ケイ素-炭素結合を有するシクロヘキサジエン構造の有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0045】
本発明に用いられる前記有機ケイ素化合物(B)としては、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIA)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIB)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(IIIA)で表される有機ケイ素化合物、または下記一般式(IIIB)で表される有機ケイ素化合物であってよい。
【0046】
【化7】
[式(I)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基であるか、あるいは、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、互いに結合して環状構造を形成していても良く、前記炭化水素基は、ハロゲン原子、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。
【0047】
【化8】
[式(IIA)及び式(IIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【0048】
【化9】
[式(IIIA)及び式(IIIB)中、
R
11、R
11’、R
11”、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。]
【0049】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6で表されるハロゲン原子としては、例えば、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基が挙げられる。
【0050】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6で表される炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、および、アリールアルキル基などのこれらの組み合わせが挙げられる。この中で好ましい炭素数1~30の炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基であり、さらに好ましくはアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ペンタコシル基、n-トリアコンチル基などがあげられる。好ましくは炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基およびシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としてはアルキル基が置換されていてもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、n-ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、n-オクチルフェニル基、n-デシルフェニル基、n-ドデシルフェニル基、n-テトラデシルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基およびフェナントリル基などが挙げられる。好ましくは炭素数6~20のアリール基であり、より好ましくは炭素数6~15のアリール基である。さらに好ましくはフェニル基である。アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基およびフェニルプロピル基などが挙げられる。
【0051】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6で表される酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基としては、例えば、アルコキシ基、アシル基、アルキルチオ基、アミノ基、ホスフィノ基、シリル基、複素環基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基である。アシル基としては、例えば、アセチル基、オキソプロピル基、ベンゾイル基などが挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基などが挙げられる。好ましくは、メチルチオ基である。アミノ基としては、例えば、アミノ基(-NH2)、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基などが挙げられる。好ましくは、アミノ基(-NH2)、ジメチルアミノ基である。ホスフィノ基としては、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジイソプロピルホスフィノ基、ジtert-ブチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基などが挙げられる。好ましくは、ジtert-ブチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基である。シリル基としては、例えば、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピル基、tert-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。好ましくは、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基である。当該ヘテロ原子を含む置換基において、ヘテロ原子に結合して含まれる炭化水素基は炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であってよい。
複素環基としては、少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基であってよく、例えば、ピロール基、ピラゾール基、ピリジン基等の含窒素複素環基、フラン基などの含酸素複素環基、チオフェン基などの含硫黄複素環基、及びこれらの複素環基に炭素数1~30のアルキル基又はアルコキシ基などの置換基が置換した基などを挙げることができる。
【0052】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が互いに結合して環状構造を形成している構造としては、R1、R2、R3、R4、R5およびR6で表される炭素数1~30の炭化水素基が任意の位置で架橋し環状構造を形成している構造であってよく、隣接基同士で架橋し環状構造を形成している構造であってよく、式(I)中のSi-Siと一緒に環状構造を形成してもよい。当該環状構造としては、例えば、シラシクロペンタン、シラシクロヘキサン、シラインデン、シラフルオレン、ジシラシクロブタン、ジシラシクロペンタン、ジシラシクロヘキサン、ジシラシクロヘプタン、ジシラインデン、ジシラアセナフタレンである。
【0053】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6で表される炭素数1~30の炭化水素基は、ハロゲン原子、または、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含む置換基は、前記と同様であって良く、さらにチオ基(-SH)であってもよい。
炭素数1~30の炭化水素基の置換基は、好ましくは、アルコキシ基、アシル基、チオ基、アミノ基、ホスフィノ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シリル基などが挙げられる。この中で好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、ホスフィノ基、クロロ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シリル基であり、より好ましくはアルコキシ基、クロロ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シリル基であり、さらに好ましくは、アルコキシ基、クロロ基、シリル基である。
【0054】
本発明に係る一般式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、以下の化合物:
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、
1-エチル-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,1-ジエチル-1,2,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジエチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1-トリエチル-2,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,2-トリエチル-1,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,1,2-テトラエチル-2,2-ジメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1,2,2-ペンタエチル-2-メチルジシラン、
1-メチル-1,1,2,2,2-ペンタフェニルジシラン、
1,1-ジメチル-1,2,2,2-テトラフェニルジシラン、
1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、
1,1,1-トリメチル-2,2,2-トリフェニルジシラン、
1,1,2-トリメチル-1,2,2-トリフェニルジシラン、
1,1,1,2-テトラメチル-2,2-ジフェニルジシラン、
1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジフェニルジシラン、
1,1,1,2,2-ペンタメチル-2-フェニルジシラン、
ジシラン、1-メチルジシラン、1,1-ジメチルジシラン、1,2-ジメチルジシラン、1,1,1-トリメチルジシラン、1,1,2-トリメチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,1,1,2-テトラメチルジシラン、1,1,1,2,2-ペンタメチルジシラン、
【0055】
1,2-ジシクロプロピル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジシクロブチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジシクロペンチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジシクロヘキシル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,1,1-トリエテニル-2,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,1-トリエチニル-2,2,2-トリメチルジシラン、
1-エテニル-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジエテニル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1-エチニル-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジエチニル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-メチルフェニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(3-メチルフェニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(4-メチルフェニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(1-ナフタレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-ナフタレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(1-インデニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-インデニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(1-アントラセニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-アントラセニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(1-アズレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-アズレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(1-ピレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ビス(2-ピレニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
【0056】
1-クロロ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,1-ジクロロ-1,2,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,1,2-テトラクロロ-2,2-ジメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1,2,2-ペンタクロロ-2-メチルジシラン、
ヘキサクロロジシラン、
1-フルオロ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジフルオロテトラメチルジシラン、
1-ブロモ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジブロモテトラメチルジシラン、
1-ヨード-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジヨードテトラメチルジシラン、
1-(トリフルオロメチル)-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
【0057】
1-メトキシ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,1-ジメトキシ-1,2,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラメトキシ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1-トリメトキシ-2,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,2-トリメトキシ-1,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,1,2-テトラメトキシ-2,2-ジメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラメトキシ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1,2,2-ペンタメトキシ-2-メチルジシラン、
ヘキサメトキシジシラン、
1-エトキシ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,1-ジエトキシ-1,2,2,2-テトラメチルジシラン、
1,2-ジエトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラエトキシ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1-トリエトキシ-2,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,2-トリエトキシ-1,2,2-トリメチルジシラン、
1,1,1,2-テトラエトキシ-2,2-ジメチルジシラン、
1,1,2,2-テトラエトキシ-1,2-ジメチルジシラン、
1,1,1,2,2-ペンタエトキシ-2-メチルジシラン、
ヘキサエトキシジシラン、
1,2-ジブトキシ-テトラメチルジシラン、
【0058】
1-アセチル-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ジアセチル-テトラメチルジシラン、
1-(オキソプロピル)-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-(オキソプロピル)-テトラメチルジシラン、
1-ベンゾイル-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-(ベンゾイル)-テトラメチルジシラン、
1-メチルチオ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン
1,2-(メチルチオ)-テトラメチルジシラン、
1-ジエチルアミノ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-(ジエチルアミノ)-テトラメチルジシラン、
1-ピロール-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1-ピラゾール-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1-ジメチルホスフィノ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1-ジフェニルホスフィノ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、
1,2-ビス(2-メトキシフェニル)-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
1-[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、1,2-ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、
【0059】
テトラキス(トリメチルシリル)シラン、
トリス(トリメチルシリル)シラン、
クロロトリス(トリメチルシリル)シラン、
テトラキス(ジメチルシリル)シラン、
【0060】
1-フェニル-1-(トリメチルシリル)シラシクロペンタン、
1-(ジメチルフェニルシリル)-1-メチルシラシクロペンタン、
1,1’-ジメチル-1,1’-ビシラシクロペンタン、
1-メチル-1-(トリメチルシリル)シラシクロヘキサン、
1,1’-ジメチル-1,1’-ビシラシクロヘキサン、
1,1’-ジフェニル-1,1’-ビシラシクロヘキサン、
2,3-ジヒドロ-2-メチル-2-(トリメチルシリル)-1H-2-シラインデン、
9-メチル-9-(トリメチルシリル)-9H-9-シラフルオレン、
1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロブタン、
1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロペンタン、
1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロヘキサン、
1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロヘプタン、
7,7,8,8-テトラメチル-ビシクロ[4.2.0]ジシル-1,3,5-トリエン、
2,3-ジヒドロ-1,1,2,2-テトラメチルl-1H-1,2-ジシラインデン、
1,2-ジヒドロ-1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジシラアセナフタレン
などが挙げられる。
【0061】
本発明に係る一般式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、ジメチルシリル基、または、トリメチルシリル基であり、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに結合して5~6員環の環状構造を形成していても良い構造であって、R1、R2、R3、R4、R5およびR6のうち4つ以上が、炭素数1~6の炭化水素基、ジメチルシリル基、または、トリメチルシリル基である構造が挙げられ、より好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5およびR6が、それぞれ独立して、炭素数1~6の炭化水素基である構造が挙げられる。前記炭素数1~6の炭化水素基は、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であってよく、炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であってよく、炭素数1~2のアルキル基またはフェニル基であって良い。
【0062】
本発明に係る一般式(I)で表される有機ケイ素化合物の具体例として、好ましくは、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、1,2-ジエチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジメチルジシラン、1-メチル-1,1,2,2,2-ペンタフェニルジシラン、1,1-ジメチル-1,2,2,2-テトラフェニルジシラン、1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、1,1,1-トリメチル-2,2,2-トリフェニルジシラン、1,1,2-トリメチル-1,2,2-トリフェニルジシラン、1,1,1,2-テトラメチル-2,2-ジフェニルジシラン、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジフェニルジシラン、1,1,1,2,2-ペンタメチル-2-フェニルジシラン、1-クロロ-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,2-ジエトキシ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,2-ジブトキシ-テトラメチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロペンタン、1,1,2,2-テトラメチル1,2-ジシラシクロヘキサン、トリス(トリメチルシリル)シラン、テトラキス(ジメチルシリル)シランであり、より好ましくは、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、1,2-ジエチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジメチルジシラン、1-メチル-1,1,2,2,2-ペンタフェニルジシラン、1,1-ジメチル-1,2,2,2-テトラフェニルジシラン、1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、1,1,1-トリメチル-2,2,2-トリフェニルジシラン、1,1,2-トリメチル-1,2,2-トリフェニルジシラン、1,1,1,2-テトラメチル-2,2-ジフェニルジシラン、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジフェニルジシラン、1,1,1,2,2-ペンタメチル-2-フェニルジシランであり、さらに好ましくは、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、1,2-ジエチル-1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,1,2,2-テトラエチル-1,2-ジメチルジシラン、1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、1,1,2,2-テトラメチル-1,2-ジフェニルジシランである。最も好ましくは、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシランである。
【0063】
式(IIA)及び式(IIB)中、R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。炭素数1~14の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、および、アリールアルキル基などのこれらの組み合わせが挙げられる。
式(IIA)及び式(IIB)中、R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、または炭素数4~14の芳香族複素環基であってよい。
R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、およびR15において、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ノニル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、およびR15において、炭素数6~14のアリール基としてはアルキル基等の炭化水素基が置換していてもよく、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、スチリル基、シンナミル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、およびR15において、炭素数4~14の芳香族複素環基としてはアルキル基等の炭化水素基が置換していてもよく、フラン基、ピロール基、チオフェン基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピラン基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基等が挙げられる。
【0064】
式(IIA)及び式(IIB)中、R11、R11’、R11”は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子または炭素数1~10のアルキル基である。
【0065】
本発明に係る一般式(IIA)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン、
2-メチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン、
2,3-ジメチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン、
2,5-ジメチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン、
2,6-ジメチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジン、
2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,4-ジヒドロピラジンなどが挙げられる。
【0066】
また、本発明に係る一般式(IIB)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
3-メチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
4-メチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
5-メチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
6-メチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
3,4-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
3,5-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
3,6-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
4,5-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
4,6-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
5,6-ジメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジン、
3,4,5,6-テトラメチル-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1,2-ジヒドロピラジンなどが挙げられる。
【0067】
式(IIIA)及び式(IIIB)中、R11、R11’、R11”、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基である。
式(IIIA)及び式(IIIB)中、炭素数1~14の炭化水素基、または炭素数4~14の芳香族複素環基は、前記式(IIA)及び式(IIB)で説明したものと同様であってよい。
【0068】
式(IIIA)及び式(IIIB)中、R11、R11’、R11”は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、R16およびR17は、好ましくは水素原子である。
【0069】
本発明に係る一般式(IIIA)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエン、
1-メチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエン、
1,2-ジメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエン、
1,4-ジメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエン、
1,5-ジメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエン、
1,2,4,5-テトラメチル-3,6-ジ(トリメチルシリル)-1,4-シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0070】
本発明に係る一般式(IIIB)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、5,6-ジ(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1-メチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
2-メチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
3-メチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
4-メチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1,2-ジメチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1,3-ジメチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1,4-ジメチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1,5-ジメチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエン、
1,2,4,5-テトラメチル-5,6-ビス(トリメチルシリル)-1,3-シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0071】
[クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)の混合]
工程(2)においては、不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する。不活性炭化水素溶媒中で、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)とを混合する方法は特に限定されない。
用いられる不活性炭化水素溶媒としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0072】
不活性炭化水素溶媒の使用量は、混合時に少なくともスラリー状態で攪拌を行うことができる量であることが好ましい。このような量であれば、不活性炭化水素溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば焼成活性化後のクロム触媒(A)1g当たり溶媒2~20gを使用することもできる。
【0073】
混合する方法は、不活性炭化水素溶媒にクロム触媒(A)を混合して、スラリー状態とし、これに溶液の還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を添加する方法が好ましい。添加する還元性を有する有機ケイ素化合物(B)は、上記不活性炭化水素溶媒で希釈してもよいし、希釈せずに添加してもよい。希釈用溶媒と混合する際に用いられる溶媒は同じでも異なってもよい。
前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)が固体物質であれば、クロム触媒(A)と有機ケイ素化合物(B)混合した後、不活性炭化水素溶媒を加えて反応を行ってもよい。
前記焼成活性化した後のクロム触媒(A)に、前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を不活性炭化水素溶媒中で混合して接触させることにより、クロム触媒(A)の少なくとも一部が6価のクロム原子は、前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)により還元される。
【0074】
前記クロム触媒(A)に、前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する量としては、前記クロム触媒(A)に含まれるクロム原子に対する、前記有機ケイ素化合物(B)の使用量が、モル比([B]/[Cr])として、0.001~100であってもよく、0.005~50であってもよく、0.01~10であってよく、0.01~4が好ましく、0.05~4であることがより好ましく、0.1~1であることがさらに好ましい。このモル比が前記範囲であれば、前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を用いた効果が十分に発現されるため好ましい。前記クロム触媒(A)に対する前記有機ケイ素化合物(B)の使用量によって、エチレン系重合体の製造時の高分子量の重合体成分の存在量を適宜調整することができる。
【0075】
前記クロム触媒(A)と前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)との混合時の濃度としては、クロム触媒(A)の濃度が、好ましくは0.01g/mL~0.3g/mL、より好ましくは0.05g/mL~0.2g/mL、さらに好ましくは0.1g/mL~0.2g/mLである。また、前記還元性を有する有機ケイ素化合物(B)の濃度が、好ましくは1.0mM~5.0M、より好ましくは2.0mM~1.0M、さらに好ましくは5.0mM~0.5Mである。
また、混合時の温度は、好ましくは-20℃~150℃、より好ましくは-10℃~100℃、さらに好ましくは0℃~80℃であり、混合時間は、好ましくは5分~12時間、より好ましくは30分~10時間、さらに好ましくは1~8時間である。
【0076】
3.その他の工程
前記工程(2)において、混合操作を終了した後は、速やかに前記不活性炭化水素溶媒を除去することが好ましい。溶媒の除去は窒素などの不活性ガスを流通させて除去することも出来るし、減圧により除去することも出来る。これらのうち減圧乾燥が好ましく、この際、ろ過を併用してもよい。減圧乾燥では、得られるエチレン重合用触媒(前記有機ケイ素化合物(B)で変性されたクロム触媒)が、粘性、湿り気のない流動性を有する粉末として得られるように乾燥させることが好ましい。
物性的な目安としては、溶媒の残存質量が、得られたエチレン重合用触媒の細孔体積に溶媒の密度を掛けて得られた質量の1/2以下、好ましくは1/5、さらに好ましくは1/10以下になっていることが好ましい。なお、ここで細孔体積は窒素吸着によるBET法によるものであり、溶媒の残存質量は以下の式により求めることができる。
溶媒の残存質量=(乾燥後のエチレン重合用触媒の質量)-{(前記有機ケイ素化合物(B)の質量)+(前記クロム触媒(A)の質量)}
触媒を溶媒と分離せずに長時間保管すると、触媒が経時劣化し、エチレン重合活性が低下する恐れがある。したがって、担持反応の際の溶媒との接触時間をも含めて、溶媒との接触時間を極力短縮し、速やかに溶媒を除去、乾燥することが好ましい。
【0077】
担持反応終了後、溶媒を分離し乾燥終了するのに要する時間は、20時間以内が好ましく、さらに15時間以内が好ましい。
【0078】
II.エチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、前記本発明の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法である。
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、前記本発明の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いることにより、高分子量のエチレン系重合体を生成可能である。
【0079】
また、本発明のエチレン系重合体の製造方法は、下記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とする、エチレン重合用触媒の製造方法で得られるエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合を行うことを特徴とし、
下記工程(2)の後、前記エチレン重合用触媒を非還元性雰囲気において焼成することなく用いる、エチレン系重合体の製造方法であってよい。
工程(1):無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、非還元性雰囲気において焼成活性化し、クロム触媒(A)を得る工程。
工程(2):不活性炭化水素溶媒中、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する工程。
前記工程(1)~工程(2)を有することを特徴とするエチレン重合用触媒の製造方法は、前記本発明のエチレン重合用触媒の製造方法である。
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては、前記クロム触媒(A)と、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)を混合する前記工程(2)の後には、得られたエチレン重合用触媒を、非還元性雰囲気において焼成することなくエチレン単独重合又はエチレンとα-オレフィンとの共重合に用いてよい。なお、ここでの非還元性雰囲気における焼成は、前記工程(1)において説明した「非還元性雰囲気における焼成活性化」と同様に、非還元性雰囲気下において300℃~950℃程度で焼成される工程をいう。
【0080】
前記エチレン重合用触媒を用いて、エチレン系重合体の製造を行なうに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法も採用することができる。
液相重合法は通常炭化水素溶媒中で行なう。炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独または混合物が用いられる。
気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、撹拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
【0081】
液相または気相重合法における重合温度は、一般的には0~300℃であり、実用的には20~200℃、好ましくは50~180℃、さらに好ましくは70~150℃である。反応器中の触媒濃度およびエチレン濃度は、重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合、反応器内容物の質量を基準にして、約0.0001~約5質量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1~10MPaの範囲とすることができる。
【0082】
本発明に係る重合方法としては、反応器を一つ用いてポリエチレンを製造する単段重合だけでなく、分子量分布を広げるために少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合であってよい。第一段の反応器から第二段の反応器への移送は、差圧により連結管を通して、第一段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行われる。
【0083】
本発明の方法により、エチレンの重合を行うに際し、コモノマーとして、α-オレフィンを共重合しても良い。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどを単独または2種類以上反応器に導入して共重合を行う。好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、さらに好ましくは1-ヘキセンがコモノマーとして好適に用いられる。得られるエチレン系共重合体中のα-オレフィン含量は、15モル%以下、好ましくは10モル%以下が望ましい。
【0084】
本発明の製造方法で得られるエチレン重合用触媒により得られるエチレン系重合体は、さらに混練してもよい。混練することにより一層均一化されたエチレン系重合体となる。均一化操作は単軸もしくは二軸の押出機または連続式混練機を用いて行うことができる。混練の際には従来公知の添加剤等を配合することができる。
【0085】
本発明の製造方法で得られるエチレン重合用触媒により得られるエチレン系重合体は、分子量分布が広く、実用的に使用するのに適した高分子量のエチレン系重合体を得ることができる。
本発明に係るエチレン重合用触媒の製造方法により得られたエチレン重合用触媒を用いることで、HLMFRが好ましくは0.1g/10分~200g/10分、より好ましくは0.3g/10分~100g/10分、密度が好ましくは0.935g/cm3~0.970g/cm3、より好ましくは0.940g/cm3~0.960g/cm3のエチレン系重合体を得ることができる。フィリップス触媒においてHLMFRは一般に重合温度で制御される。重合温度を高くするとHLMFRが上昇し、重合温度を下げるとHLMFRは低下する。また、密度はコモノマー濃度で制御される。コモノマー濃度が高いと密度が低くなり、コモノマー濃度が低いと密度が高くなる。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量Mwが、好ましくは100,000~800,000、より好ましくは200,000~500,000、分子量分布(Mw/Mn)が好ましくは10以上60以下、より好ましくは15以上40以下のエチレン系重合体を得ることができる。
得られるエチレン系重合体は、耐衝撃性、耐久性が高く、バランスに優れるので、特にブロー成形製品で大きな効果を発揮し得る。
得られたエチレン系重合体から、常法によりブロー成形して容易にブロー成形品を得ることができ、大型のブロー成形品も同様に得ることができる。
【実施例0086】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の方法に従ったものである。
また、室温とは、特に断りがない限り、25℃である。
【0087】
(I)各種測定方法
実施例及び比較例において、使用した測定方法は以下の通りである。
(i)物性測定のためのポリマー前処理:
得られたポリマーに、添加剤として、BASFジャパン社製の酸化防止剤とリン系安定剤のブレンド物である「IRGANOX B225」を0.2重量%添加し、単軸押出機にて混練しペレタライズした。
(ii)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K7210(2004年版)の付属書A表1-条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgにおける測定値をHLMFRとして示した。
(iii)密度:
JIS K7112(2004年版)に従い、測定した。
【0088】
(iv)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を以下に示す条件で実施し、保持容量から分子量へ換算することにより数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を計算した。
[GPC装置、測定条件]
装置:Agilent Technologies社製GPC(PL-GPC220)
検出器:IR検出器
カラム:昭和電工(株)製AT806MS(3本直列)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
試料を、140℃で約1時間を要してODCB(0.24mg/mLの2,4,6-トリメチルフェノール(TMP)を含む)中に溶解させ、濃度0.25mg/mLの試料溶液を調製した。
[保持容量から分子量への換算]
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々の標準ポリスチレンが0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.24mg/mLのTMPを含む)に溶解した溶液を0.3mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10-4、α=0.700
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
PP:K=1.03×10-4 、α=0.780
【0089】
(v)固体触媒のUV-Vis-NIR分析
各固体触媒について、UV-Vis-NIR測定を、以下に示す条件で実施した。
[UV-Vis-NIR装置、測定条件]
紫外可視分光光度計(製品名「UV-2600」、島津製作所(株)製)を用いて、固体触媒のスペクトル分析を実施した。
近赤外領域を検出するために、紫外可視分光光度計に積分球付属装置ISR-2600Plusを設置した。測定条件は、波長範囲を300~1400nmとし、リファレンスとして硫酸バリウムを用いた。固体触媒サンプルは光路長1mmの石英セルに導入し、分析を実施した。
B.M.Weckhuysen et al,. Chem.Rev.1996,96,p.3327-3349によれば、以下の通り帰属される。
Chromate CT遷移:243-277nm,333-370nm
Polychromate CT遷移:243-277nm,435-476nm
pseudo-octahedral Cr3+(Cr2O3を含む)d-d遷移:588-666nm
pseudo-octahedral Cr2+ d-d遷移:770-1000nm
pseudo-tetrahedral Cr2+ d-d遷移:1000-1430nm
【0090】
(II)実施例および比較例
[実施例1]
1.工程(1):クロム触媒(A1)の調製
無機酸化物担体(a)としてシリカ10gを、クロム化合物(b)として酢酸クロム0.44gをエタノール50mlに溶解させた酢酸クロムエタノール溶液に添加し、10分間攪拌した後、エタノールを留去することによりクロム原子担持量が1.0重量%のクロム含有シリカを得た。このクロム含有シリカは、比表面積380m2/g、細孔体積1.55cm3/gであった。その後、このクロム含有シリカを、多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速3cm/s、500℃で18時間焼成活性化を行った。その結果,6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒(A1)が得られた。
【0091】
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-1)の調製
予め窒素置換した100mLのフラスコに、上記工程(1)で得られたクロム触媒(A1)2.0gを入れ、そこに蒸留精製したヘキサン14mLを加えてスラリー化した。ここに、有機ケイ素化合物(B)であるヘキサメチルジシラン溶液(0.2Mのヘキサン溶液)を0.2mL([B]/Crモル比=0.1)を加え40℃で1時間撹拌した。撹拌終了後直ちに減圧化で30分かけて溶媒を除去し、粘性、粘り気のない自由流動性(free flowing)のクロム触媒(触媒-1)を得た。得られた触媒-1について、UV-Vis-NIR測定を行った結果を
図1に示す。
なお、ヘキサメチルジシランは第一イオン化ポテンシャルが6.1eVである。
【0092】
3.エチレン重合評価
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記工程(2)で得られた触媒-1を175.4mgおよびイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒(g)あたりのエチレン重合体に収量(g)が、700程度となるまで重合を行った(重合時間79分)。重合は、内容ガスを系外に放出することにより停止した。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0093】
[実施例2]
1.工程(1):クロム触媒(A1)の調製
実施例1の工程(1)により得られたクロム触媒(A1)を用いた。
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-2)の調製
実施例1の工程(2)において、ヘキサメチルジシラン溶液(0.2M)を1.9mL([B]/Crモル比=1.0)用いた以外は、実施例1の工程(2)と同様の操作を行い、クロム触媒(触媒-2)を得た。得られた触媒-2について、UV-Vis-NIR測定を行った結果を
図1に示す。
3.エチレン重合評価
実施例1のエチレン重合評価において、触媒-1の代わりに触媒-2を197.8mg、重合時間を235分とした以外は、実施例1と同様に重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0094】
[比較例1]
1.工程(1):クロム触媒(A1)の調製
実施例1の工程(1)により得られたクロム触媒(A1)を用いた。クロム触媒(A)について、UV-Vis-NIR測定を行った結果を
図1に示す。
2.工程(2)は実施しなかった。
3.エチレン重合評価
実施例1の工程(1)により得られたクロム触媒(A1)を74.1mg使用し、実施例1のエチレン重合評価において、重合時間を63分とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0095】
[実施例3]
1.工程(1):クロム触媒(A2)の調製
クロム含有シリカとしてクロム原子担持量1.0wt%、比表面積250m2/g、細孔体積1.6cm3/gを準備した。このクロム含有シリカを、多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速4cm/s、820℃で18時間焼成活性化を行った。その結果,6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒(A2)が得られた。
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-3)の調製
予め窒素置換した100mLのフラスコに、上記工程(1)で得られたクロム触媒(A2)2.0gを入れ、そこに蒸留精製したヘキサン14mLを加えてスラリー化した。ここに、有機ケイ素化合物(B)であるヘキサメチルジシラン溶液(0.1Mのヘキサン溶液)を0.77mL([B]/Crモル比=0.2)を加え40℃で1時間撹拌した。撹拌終了後直ちに減圧化で30分かけて溶媒を除去し、粘性、粘り気のない自由流動性(free flowing)のクロム触媒(触媒-3)を得た。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記工程(2)で得られた触媒-3を91mgと1-ヘキセンを3.2gおよびイソブタン0.7Lを仕込み、内温を100℃まで昇温した。次いでエチレンを圧入し、エチレン分圧を1.4MPaとなるように保ちながら、触媒(g)あたりのエチレン重合体に収量(g)が、1700程度となるまで重合を行った(重合時間51分)。重合は、内容ガスを系外に放出することにより停止した。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0096】
[比較例2]
1.工程(1):クロム触媒(A2)の調製
実施例3の工程(1)により得られたクロム触媒(A2)を用いた。
2.工程(2)は実施しなかった。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
実施例3の工程(1)により得られたクロム触媒(A2)を90mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を29分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0097】
[実施例4]
1.工程(1):クロム触媒(A3)の調製
クロム含有シリカとしてクロム原子担持量1.0wt%、比表面積500m2/g、細孔体積1.5cm3/gを準備した。このクロム含有シリカを、多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速4cm/s、820℃で18時間焼成活性化を行った。その結果,6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒(A3)が得られた。
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-4)の調製
予め窒素置換した100mLのフラスコに、上記工程(1)で得られたクロム触媒(A3)2.0gを入れ、そこに蒸留精製したヘキサン14mLを加えてスラリー化した。ここに、有機ケイ素化合物(B)であるヘキサメチルジシラン溶液(0.1Mのヘキサン溶液)を0.54mL([B]/Crモル比=0.14)を加え40℃で1時間撹拌した。撹拌終了後直ちに減圧化で30分かけて溶媒を除去し、粘性、粘り気のない自由流動性(free flowing)のクロム触媒(触媒-4)を得た。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
工程(2)により得られたクロム触媒(触媒-4)を99mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を28分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0098】
[比較例3]
1.工程(1):クロム触媒(A3)の調製
実施例4の工程(1)により得られたクロム触媒(A3)を用いた。
2.工程(2)は実施しなかった。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
工程(1)により得られたクロム触媒(A3)を79mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を19分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0099】
[実施例5~8]
実施例4で使用した有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-4)を用い、実施例4の3.エチレン/ヘキセン共重合評価に示す手順で重合評価を行った。ただし、触媒量、重合温度、ヘキセン量、重合時間を表1に示す条件で行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0100】
[実施例9]
1.工程(1):クロム触媒(A4)の調製
米国特許第5232883号に準拠してシリカゲルを調製した。このシリカゲルは、表面積800m2/g、細孔体積2.0cm3/g、平均粒径100μmを有していた。さらに、米国特許第4119773号の「EXAMPLES I.Catalyst Prepar ation Procedure」に準拠した方法に準拠した方法により、Cr、Alの含量がそれぞれ1重量%、2重量%になるように、酢酸クロム(III)、アルミニウムsec-アルコキシドのジクロロメタン溶液とシリカゲルを反応させ乾燥させることにより、緑白色を呈した流動性のよいクロム含有シリカを得た。このクロム含有シリカを、多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速4cm/s、820℃で18時間焼成活性化を行った。その結果,6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒(A4)が得られた。
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-5)の調製
予め窒素置換した100mLのフラスコに、上記工程(1)で得られたクロム触媒(A4)2.0gを入れ、そこに蒸留精製したヘキサン14mLを加えてスラリー化した。ここに、有機ケイ素化合物(B)であるヘキサメチルジシラン溶液(0.1Mのヘキサン溶液)を0.54mL([B]/Crモル比=0.14)を加え40℃で1時間撹拌した。撹拌終了後直ちに減圧化で30分かけて溶媒を除去し、粘性、粘り気のない自由流動性(free flowing)のクロム触媒(触媒-5)を得た。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
工程(2)により得られたクロム触媒(触媒-5)を82mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を24分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0101】
[比較例4]
1.工程(1):クロム触媒(A4)の調製
実施例9の工程(1)により得られたクロム触媒(A4)を用いた。
2.工程(2)は実施しなかった。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
工程(1)により得られたクロム触媒(A4)を80mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を17分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0102】
[実施例10~11]
実施例9で使用した触媒-5を用い、実施例3の3.エチレン/ヘキセン共重合評価に示す手順で重合評価を行った。ただし、触媒量、重合温度、ヘキセン量、重合時間を表1に示す条件で行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0103】
[実施例12]
1.工程(1):クロム触媒(A3)の調製
実施例4の工程(1)と同様に行い、クロム触媒(A3)を得た。
2.工程(2):有機ケイ素化合物(B)処理したクロム触媒(触媒-6)の調製
実施例4の工程(2)において、ヘキサメチルジシラン溶液(0.1M)を0.54ml添加した代わりに、ヘキサフェニルジシラン溶液(0.4μmol/mlのヘキサン溶液)を5ml添加([B]/Crモル比=0.005)したこと以外は、実施例4の工程(2)と同様に行い、クロム触媒(触媒-6)を得た。触媒の色はオレンジ色から緑色へ変化した。なお、ヘキサフェニルジシランは第一イオン化ポテンシャルが約6eV(Science and Technology of Advanced Materials 6 (2005) 443-446参照による推定値)である。
3.エチレン/ヘキセン共重合評価
工程(2)により得られたクロム触媒(触媒-6)を97mg使用し、実施例3のエチレン重合評価において、重合時間を25分とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、重合を行った。重合結果およびポリマー物性については表1に示した。
【0104】
[評価結果]
図1は、実施例1,2及び比較例1で用いられた各固体触媒のUV-Vis-NIR測定結果を示す図である。各固体触媒のUV-Vis-NIR測定を比較すると、6価のクロム種が主成分である比較例1で用いられたクロム触媒(A1)では、chromateおよびpolychromateのCT遷移の吸収(248nmおよび467nm)を有し、600nmよりも長波長領域での吸収は観測されなかった。
それに対して、ヘキサメチルジシランで処理した実施例1及び2で用いられた触媒-1及び触媒-2では、6価のクロム種の吸収が減少するとともに、2価のクロム種に由来する770~1000nmおよび1000~1430nmで吸収が観測されたことから、6価のクロム種から2価のクロム種への還元反応の進行が示された。
なお、660nmに観測される吸収ピークは、3価のクロム種ならびにCr
2O
3も該当するd-d遷移に由来する吸収であるため判別が難しいが、クロム触媒(A1)に存在しない還元反応物に由来するといえる。
【0105】
【0106】
表1からわかるように、実施例1と比較例1を比べると、実施例1では同等のプロダクに到達するまでの時間が遅くなり、触媒活性としては低下する傾向にあるものの、HLMFRが減少しており、高分子量の重合体成分の増加が示された。また、実施例2において、変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)の処理量を[B]/Crモル比=1.0に増やすことで、さらにHLMFRが減少していることから、還元性を有する有機ケイ素化合物(B)の処理量によって高分子量の重合体成分の存在量を調整できることを見出した。
さらに、実施例3と比較例2との比較から、触媒-1および触媒-2で使用したクロム触媒(A1)とは異なるクロム触媒(A2)を用いても、変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理された触媒を用いた実施例3の方が、同じ重合条件でHLMFRが減少しており、高分子量の重合体成分の増加が示された。同様に、実施例4と比較例3との比較、および実施例9と比較例4との比較からも、変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理された触媒を用いた実施例の方が、HLMFRが減少しており、高分子量の重合体成分の増加が示された。本願の焼成後のクロム触媒(A)に対して変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理する効果は、クロム触媒(A)の種類によらないことが示されている。
また、実施例12は、比較例3のクロム触媒(A3)に対して、変性剤として実施例4とは異なる有機ケイ素化合物(ヘキサフェニルジシラン)で処理した例であるが、比較例3に比べてHLMFRが減少する効果があることが示された。すなわち、変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)の種類によらず、本願の焼成後のクロム触媒(A)に対して変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理する効果が示されている。
実施例5~8は同じ触媒-4を用いて重合温度やヘキセン量を変えて実施した結果であるが、重合温度を下げるとHLMFRが減少し、ヘキセン量を多くするとHLMFRが上昇するとともに密度が低下することが示された。また、実施例10および実施例11は同じ触媒-5を用いて重合温度を変化させた例であるが、重合温度を下げるとHLMFRが減少することが示された。これらの現象は、一般的なフィリップス触媒で観察されることであり、焼成後のクロム触媒(A)に対して変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理してもフィリップス触媒の特性を維持していることが示されている。
【0107】
また、
図2は、実施例2と比較例1で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図、
図3は、実施例3と比較例2で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図、
図4は、実施例4と比較例3で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図、
図5は、実施例9と比較例4で製造されたエチレン系重合体の分子量分布測定結果を示す図である。
図2~5によっても、焼成後のクロム触媒(A)に対して変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)で処理された触媒を用いた実施例では、高分子量の重合体成分の増加が示されている。
【0108】
以上から、本発明で開示する製造方法により得られるクロム担持触媒では、高分子量のエチレン系重合体を与えるための変性剤として還元性を有する有機ケイ素化合物(B)が効果的であり、エチレン系重合体の製造において有用であることが示された。
本発明によれば、分子量分布が広く、高分子量のエチレン系重合体を生成可能なエチレン重合用触媒の製造方法およびエチレン系重合体の製造方法を提供することができる。それにより、本発明によれば、分子量分布が広く高分子量のエチレン系重合体を製造することができ、従来に比べてより目的に適したエチレン系重合体を製造できることから、産業上の意義が高いものである。