(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124376
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/48 20060101AFI20240905BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20240905BHJP
C11D 7/42 20060101ALI20240905BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20240905BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240905BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D7/26
C11D7/42
C11D1/02
C11D3/20
C11D3/386
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028839
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2023032242
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 憲介
(72)【発明者】
【氏名】大村 亮介
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB22
4H003AB31
4H003AC05
4H003AC15
4H003AD04
4H003DA05
4H003EA12
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB16
4H003EB22
4H003EB30
4H003EC01
4H003EC02
4H003ED02
4H003FA12
4H003FA26
4H003FA28
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】殺菌性に優れる殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルを1質量%以上15質量%以下、(b)アルキルグリセリルエーテルを0.5質量%以上、(c)酵素を1質量ppm以上、及び水を含有する殺菌剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔以下、(a)成分という〕を1質量%以上15質量%以下、(b)アルキルグリセリルエーテル〔以下、(b)成分という〕を0.5質量%以上、(c)酵素〔以下、(c)成分という〕を1質量ppm以上、及び水を含有する、殺菌剤組成物。
【請求項2】
(a)成分は、下記一般式(a1)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の殺菌剤組成物。
R1a-O-(AO)n-H (a1)
〔式中、R1aは、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基であり、Aは炭素数2以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上であり、nは1以上5以下の整数である。〕
【請求項3】
(b)成分は、下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
R1b-O-(Gly)r-H (b1)
〔式中、R1bは、炭素数4以上10以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Glyはグリセリン由来の構成単位を示し、rは1以上3以下の数を示す。〕
【請求項4】
(c)成分は、プロテアーゼ、アミラーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項5】
更に、(d)アニオン界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
更に、(e)芳香族アルコール及び芳香族アルコールのアルキレングリコールエーテルから選ばれる1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項7】
硬質表面用、可撓性物品の表面用及び/又は繊維用の殺菌剤組成物である、請求項1又は2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項8】
殺菌成分である(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔以下、(a)成分という〕に対して、(b)アルキルグリセリルエーテルと、(c)酵素と、を組み合わせることで、(a)成分の殺菌性を向上させる方法。
【請求項9】
殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルを1質量%以上15質量%以下、(b)アルキルグリセリルエーテルを0.5質量%以上、(c)酵素を1質量ppm以上、(d)アニオン界面活性剤及び水を含有する、殺菌洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤組成物、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルの殺菌性を向上させる方法、及び殺菌洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、消費者の衛生意識が一段と高まり、食器用や衣料用などの身近な洗浄剤分野においても除菌や抗菌は標準の機能となっている。硬質表面や繊維表面などに存在する細菌は、人体や食品を由来とする脂質やタンパク質などの汚れと共存していることから、細菌の除去と汚れの洗浄を同時にできるものが望まれる。
【0003】
特許文献1には、腐食性なく、皮膚刺激性がない殺菌剤として、(a)1 -(2-エチルヘキシル)グリセロールエーテルと、(b)芳香族アルコールとを含む殺菌剤が開示されている。
また、特許文献2には、1つ以上のグリセロールエーテルと、1つ以上のジオール及び/又はポリオールと共に具備した組成物が、優れた殺菌効果を有することが開示されている。
また、特許文献3には、(a)グリコール系溶剤、(b)アルキルグリコシド型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤及びアルキルグリセリルエーテル型界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤、並びに水を含有することによって、エタノールや陽イオン界面活性剤の含有量が少なくても優れたウイルス不活化効果を有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-99588号公報
【特許文献2】特開2008-266332号公報
【特許文献3】特開2022-26762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硬質表面や繊維製品などの殺菌の重要性と消費者ニーズの高まりに伴い、硬質表面や繊維製品などの殺菌や除菌を手軽に、使い勝手良く行う方法が求められている。
また、硬質表面や繊維表面などに存在する細菌は、人体や食品を由来とする脂質やタンパク質などの汚れと共存することで、殺菌剤組成物の有効成分が効き難くなるおそれがある。
本発明は、殺菌性に優れる殺菌剤組成物及び殺菌洗浄剤組成物、並びに1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルの殺菌性を向上させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔以下、(a)成分という〕を1質量%以上15質量%以下、(b)アルキルグリセリルエーテル〔以下、(b)成分という〕を0.5質量%以上、(c)酵素〔以下、(c)成分という〕を1質量ppm以上、及び水を含有する殺菌剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、殺菌成分である(a)成分に対して、(b)成分と、(c)成分と、を組み合わせることで、(a)成分の殺菌性を向上させる方法に関する。
【0008】
また、本発明は、殺菌成分として(a)成分を1質量%以上15質量%以下、(b)成分を0.5質量%以上、(c)成分を1質量ppm以上、(d)アニオン界面活性剤及び水を含有する殺菌洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、殺菌性に優れる殺菌剤組成物及び殺菌洗浄剤組成物、並びに1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルの殺菌性を向上させる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の殺菌剤組成物及び殺菌洗浄剤組成物が、殺菌性に優れる、更には1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルの殺菌性を向上させる理由は必ずしも定かではないが以下のように推察される。
(a)成分である、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテルと、(b)成分であるアルキルグリセリルエーテルとを併用することで、(a)成分あるいは(b)成分と菌体膜との親和性が相乗的に高まり、本発明の殺菌剤組成物が菌体内部にまで浸透することで、高い殺菌性能を示すものと考えられる。
更に、(a)成分と(b)成分を含む殺菌剤組成物が(c)成分である酵素を含むことで、(a)成分の菌への吸着効率が向上し、相乗的に(a)成分の殺菌効果が向上したものと推察される。また、(c)成分により殺菌性を阻害する汚れが除去されることで、(a)成分及び(b)成分の殺菌効果が相乗的に向上したものと推察される。
なお、本発明の殺菌剤組成物、殺菌洗浄剤組成物及び(a)成分の殺菌性を向上させる方法は、上記の作用機構に限定されるものではない。
また、本発明では、殺菌とは、硬質表面や繊維製品などに付着した菌を殺菌すること又は除菌することだけでなく、硬質表面や繊維製品などに付着した菌に対して殺菌剤組成物が作用しダメージを与えることで菌の増殖を抑制する抗菌も含む。
【0011】
<殺菌剤組成物>
本発明の殺菌剤組成物は、殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔以下、(a)成分という〕、(b)アルキルグリセリルエーテル〔以下、(b)成分という〕、(c)酵素〔以下、(c)成分という〕、及び水を含有する。
本発明の殺菌剤組成物は、殺菌成分として(a)成分を含有する。
【0012】
<(a)成分>
(a)成分は、(a1)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する1価アルコール〔以下、(a1)成分という場合がある〕及び(a2)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキレングリコールエーテル〔以下、(a2)成分という場合がある〕から選ばれる1種以上である。
【0013】
(a)成分の1価アルコールは、殺菌性と原料調達容易性の観点から、炭素数1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、そして、殺菌性と配合安定性の観点から、6以下、好ましくは5以下の1価のアルコールである。
1価アルコールは、直鎖アルコール、分岐鎖アルコールのいずれであってもよく、直鎖アルコールが好ましい。
1価アルコールは、1級アルコール、2級アルコールであってよく、1級アルコールが好ましい。
【0014】
(a)成分の1価アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及び1-ヘキサノールから選ばれる1種以上が好ましく、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール及び1-ペンタノールから選ばれる1種以上がより好ましく、1-ブタノール及び1-ペンタノールから選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0015】
(a)成分のアルキレングリコールエーテルは、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有するアルキレングリコールエーテルから選ばれる1種以上である。脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であってよく、炭素数1以上6以下の直鎖のアルキル基が好ましい。
【0016】
(a)成分は、殺菌性と配合安定性の観点から、下記一般式(a1)で表される化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
R1a-O-(AO)n-H (a1)
〔式中、R1aは、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基であり、Aは炭素数2以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上であり、nは1以上5以下の整数である。〕
【0017】
一般式(a1)中、R1aは、殺菌性能の観点から、炭素数1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、そして、殺菌性能の観点から、6以下、好ましくは5以下の脂肪族炭化水素である。脂肪族炭化水素は、炭素数が上記範囲のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、殺菌性能の観点から、アルキル基は、直鎖のアルキル基が好ましい。
【0018】
一般式(a1)中、Aは、炭素数2以上4以下のアルキレン基から選ばれる1種以上、より好ましくはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上、更に好ましくはエチレン基である。Aが異なる複数のアルキレン基を含む場合、異なるAO基は、ブロック結合でもランダム結合であってもよい。
【0019】
一般式(a1)中、nは、殺菌性能の観点から、1以上、好ましくは2以上、そして、殺菌性能の観点から、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、最も好ましくは2である。
【0020】
一般式(a1)で表される化合物としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
一般式(a1)で表される化合物は、殺菌性能の観点から、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0022】
(a)成分は、殺菌性能の観点から、1-ブタノール、1-ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、1-ペンタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0023】
<(b)成分>
(b)成分は、アルキルグリセリルエーテルである。(b)成分としては、殺菌性能を向上させる観点から、具体的には下記一般式(b1)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
R1b-O-(Gly)r-H (b1)
〔式中、R1bは炭素数4以上10以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Glyはグリセリン由来の構成単位を示し、好ましくはグリセリンから1つの水酸基と1つの水素原子を除いた残基を示し、rは1以上3以下の数を示す。〕
【0024】
一般式(b1)において、R1bは、殺菌性能を向上させる観点から、好ましくは炭素数4以上、より好ましくは炭素数6以上、更に好ましくは炭素数8以上、そして、殺菌性能を向上させる観点から、好ましくは炭素数10以下のアルキル基である。アルキル基は、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基を用いることができるが、本発明では殺菌性能の観点から、分岐鎖を有するアルキル基が好ましく、R1bの分岐鎖を有する具体的なアルキル基として、2-エチルヘキシル基、2-プロピルへプチル基、sec-オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2-エチルヘキシル基又は2-プロピルへプチル基が更に好ましい。
【0025】
一般式(b1)において、殺菌性能を向上させる観点から、rは好ましくは1以上、そして、好ましくは2以下である。殺菌性能を向上させる観点から、rが1の化合物がより好ましい。殺菌性能を向上させる観点から、R1bが2-エチルヘキシル基又は2-プロピルへプチル基で、かつ、rが1の化合物が更に好ましい。
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位の水酸基が結合している-CH2CH(OH)CH2-O-で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位の水酸基が結合している-CH(CH2OH)CH2-O-で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0026】
一般式(b1)の化合物を得るには、例えば炭素数4以上10以下のアルコールとしてR1b-OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物とを、BF3等の酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。例えば、2-エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2-エチルヘキシルグリセリルエーテルは、特開2001-49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。
【0027】
(b)成分は、殺菌性能を向上させる観点から、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、デシルグリセリルエーテル、2-プロピルへプチルグリセリルエーテル及びイソデシルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル及び2-プロピルヘプチルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0028】
<(c)成分>
(c)成分は、酵素である。(c)成分としては、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、キシラナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ及びラッカーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
(c)成分としては、殺菌性能向上と原料調達容易性の観点から、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及びセルラーゼから選ばれる1種以上が好ましく、更に、リパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0029】
リパーゼとしては、E.C.3.1.1.3のトリアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.13のコレステロールエステラーゼ、E.C.3.1.23のモノアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.34のリポプロテインリパーゼが好ましい。リパーゼの由来は限定されないが、動物由来、植物由来、又は微生物由来のリパーゼが挙げられる。微生物由来リパーゼとしては、リゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のものが挙げられる。
(c)成分のリパーゼは、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼAY「アマノ」30SD、リパーゼGS「アマノ」250G、リパーゼR「アマノ」、リパーゼDF「アマノ」15、リパーゼMER「アマノ」(以上、天野エンザイム(株)製)、オリパーゼ(長瀬産業(株))、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼPLC、リパーゼQLM、リパーゼQLC、ホスホリパーゼD(以上、明糖産業(株)製)、リポプロテインリパーゼ(オリエンタル酵母(株)製)、リパーゼ(東洋醸造(株)製)、Lipex、Lipolase、リパーゼSP-225(ノボザイムズ社製)、リパーゼ(ギスト社製)、リパーゼA、リパーゼB(以上、サッポロビール(株)製)などの市販品を用いることができる。
本発明では、Lipex、Lipolase(何れもノボザイムズ社製)が好適である。
【0030】
プロテアーゼとしては、中性又はアルカリ性の水溶液中で作用できるプロテアーゼが挙げられる。好ましいプロテアーゼの具体例としては、国際公開第99/018218号に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくは配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列の70%以上が保存されているもの、特開平5-25492に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくはアルカリプロテアーゼK-16又はアルカリプロテアーゼK-14等が挙げられる。その他に、ノボザイムズ社製のサビナーゼ(登録商標)、カンナーゼ(登録商標)、エバラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)、ポラーザイム(登録商標)、エスペラーゼ(登録商標)の商品名で販売されているバチルス属ズブチリシン類が生産するプロテアーゼ、デュポン社製のFN2(登録商標)、FN3(登録商標)及びFN4(登録商標)、プラフェクト(登録商標)、プラフェクトプライム(登録商標)の商品名で供給されるプロテアーゼ類又はその変異型等が挙げられる。これらの中でも、国際公開第99/018218号に記載されている配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列の80%以上が保存されている酵素、ノボザイムズ社製のサビナーゼ、エバラーゼ、アルカラーゼ、プログレス、デュポン社製のプラフェクト、プラフェクトプライムがより好ましい。
【0031】
アミラーゼとしては、バチルス ズブチリスマーバーグ(Bacillus subtilisMarburg)、バチルス ズブチリス ナットウ(Bacillus subtilis natto)、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス セレウス(Bacilluscereus)、バチルス マセランス(Bacillus macerans)、シュードモナス シュツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、クレブシェラ アエリゲネス(Klebusiellaaerogenes)等の細菌、ストレプトマイセス グリセウス(Streptomyces griseus)等の放線菌、アスペルギウスオリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ニガー(Aspergillusniger)等のカビ類、イネ科及びマメ科植物の種子、ヒト及びブタ等の動物の消化腺等多くの生物から得られているものを使用することができる。本発明に用いるアミラーゼは、前記微生物又はそれらの変異株、又はこれらの酵素若しくはその変異体をコードするDNA配列を有する組換えベクターで形質転換された宿主細胞等を、同化性の炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養し、一般の酵素の採取及び精製方法に準じて得ることができる。このようにして得られる酵素液はそのまま用いることもできるが、更に公知の方法により精製、結晶化、粉末製剤化又は液体製剤化したものを用いることができる。本発明に用いるアミラーゼは、α-アミラーゼが好ましい。使用できる市販のアミラーゼとしては、商標名ラピダーゼ(ギストブロカーズ社製)、商標名ターマミル、デュラミル及びステインザイム(ノボザイムズジャパン(株)製)、Amplify(ノボザイムズ社製)、商標名プラスターST及びプラスターOxAm(ジェネンコア・インターナショナル社製)を挙げることができる。
【0032】
セルラーゼとしてはエンドグルカナーゼやセロビオハイドロラーゼが挙げられる。また、これらのセルラーゼはβ-グルコシダーゼも含めた複数種のセルラーゼの混合物であっても良い。好適なセルラーゼは細菌又は真菌起源のものであり、例えばバチルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フミコラ(Humicola)、フサリウム(Fusarium)、チエラビア(Thielavia)、アクレモニウム(Acremonium)、トリコデルマ(Trichoderma)属などからのセルラーゼが挙げられる。また、好適なセルラーゼは更にこれらの酵素の化学的又は遺伝的に改変された突然変異体であっても良い。
好適な市販のセルラーゼとしては、Novozymes A/Sよりの:Celluzyme、及びCarezyme、Carezyme Premium、Celluclean、Celluclean Classic、Celluclean Evity、Cellusoft、Whitezymeとして販売されている酵素、並びにDanisco/DuPontよりの:Revitelenz、Clazinase、PuradaxHAなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、特許第3512981号記載のアルカリセルラーゼ及びその変異体も好適である。
【0033】
(c)成分は、殺菌性能向上の観点から、リパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる2種類以上を併用してもよい。また、殺菌性能向上の観点から、リバーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼの全てを併用することもできるが、酵素安定性に留意が必要である。
(c)成分は、殺菌性能向上の観点から、リパーゼが好ましい。本発明の殺菌剤組成物は、(c)成分としてリパーゼを含有することが好ましい。
【0034】
<組成及びその他成分>
本発明の殺菌剤組成物は、(a)成分を、殺菌性能と経済性の観点から、該組成物中、1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更により好ましくは5質量%以上、そして、保存安定性と経済性の観点から、15質量%以下、好ましくは13質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
(a)成分を上記範囲で含有する殺菌剤組成物は、薄めずに対象表面に接触させる組成物として好適に用いることができる。また、予め本発明の殺菌剤組成物を濃縮しておき、使用時の(a)成分の含有量が上記範囲となるように薄めて対象表面に適用することもできる。
【0035】
本発明の殺菌剤組成物は、(b)成分を、殺菌性能を向上させる観点から、該組成物中、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、保存安定性と経済性の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
(b)成分を上記範囲で含有する殺菌剤組成物は、薄めずに対象表面に接触させる組成物として好適に用いることができる。また、予め本発明の殺菌剤組成物を濃縮しておき、使用時の(b)成分の含有量が上記範囲となるように薄めて対象表面に適用することもできる。
【0036】
本発明の殺菌剤組成物は、(c)成分を、殺菌性能向上の観点から、酵素タンパク質として、該組成物中、1質量ppm以上、好ましくは5質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは100質量ppm以上、そして、酵素の保存安定性と経済性の観点から、好ましくは10,000質量ppm以下、より好ましくは1,000質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下含有する。なお、本明細書において、(c)成分の質量に関する規定は、特に断りが無い限り、酵素タンパク質としての質量である。
(c)成分を上記範囲で含有する殺菌剤組成物は、薄めずに対象表面に接触させる組成物として好適に用いることができる。また、予め本発明の殺菌剤組成物を濃縮しておき、使用時の(c)成分の含有量が上記範囲となるように薄めて対象表面に適用することもできる。
【0037】
本発明において、(c)成分の酵素タンパク質としての質量は、Lowry法に基づいて測定されたものである。Lowry法には、市販の測定キット、例えば、DCプロテインアッセイキットII(BIO-RAD社)を用いることができる。DCプロテインアッセイキットII(BIO-RAD社)を用いる場合の具体的な測定法は、例えば、次の通りである。DCプロテインアッセイキットIIのA試薬10μLに対し、適宜希釈した酵素溶液20μLを加え、DCプロテインアッセイキットIIのB試薬80μLを加えて室温で15分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(例えば、Infinite(登録商標)200PRO(Tecan社製)など)にて750nmの吸光度を測定する。タンパク質濃度が既知の試料(例えば、BSAStandard Solution(富士フイルム和光試薬(株))など)から検量線を作成し、前記で得た吸光度から、当該酵素中のタンパク質としての質量を定量する。
【0038】
本発明の殺菌剤組成物において、(b)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(b)/(a)は、殺菌性能の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、更により好ましくは0.2以上、そして、溶解性と殺菌性能の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下、更により好ましくは0.6以下である。
【0039】
本発明の殺菌剤組成物において、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(c)/(a)は、殺菌性能の観点から、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、更により好ましくは0.0002以上、そして、経済性と殺菌性能の観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.01以下である。
【0040】
<(d)成分>
本発明の殺菌剤組成物は、(a)成分~(c)成分の溶解性向上に基づく殺菌性能向上の観点から、任意に(d)アニオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕を含有することができる。
【0041】
(d)成分は、殺菌性能向上の観点から、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤からなる群より選択される1種以上のアニオン界面活性剤が好ましく、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより好ましく、硫酸エステル型界面活性剤及びスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が更に好ましく、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより更に好ましい。
なお、(d)成分のアニオン界面活性剤が塩の場合、(d)成分の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩等の無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩等の有機塩が挙げられる。(d)成分の塩は、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩から選ばれる無機塩であり、より好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩である。下記(d)成分の具体例の塩についても同様である。
【0042】
(d)成分のアルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、18以下、好ましくは15以下のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩は、ベンゼン環の炭素原子と結合するアルキル基の炭素原子が第2級炭素原子であるアルキルベンゼンスルホン酸塩であってよい。
【0043】
(d)成分の硫酸エステル型界面活性剤としては、炭素数8以上20以下の炭化水素基と、硫酸エステル基とを有するアニオン界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
【0044】
(d)成分の硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0045】
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩が好適である。
【0046】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基から選ばれる1種以上のオキシアルキレン基の平均付加モル数が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1.5以下のポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。オキシアルキレン基は、炭素数2が好ましい。また、オキシアルキレン基がエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基はブロック結合であってもランダム結合であってもよい。
【0047】
(d)成分のアルカンスルホン酸型界面活性剤としては、アルカン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0048】
(d)成分のオレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩は、具体的には、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
また内部オレフィンスルホン酸塩は、具体的には、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下の内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
【0049】
(d)成分のスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては、炭素数5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは10以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノエステル及び/又はジエステルが挙げられ、好ましくはジエステルである。スルホコハク酸のアルキルエステルは、酸又は塩であってよい。また、脂肪族アルコールは分岐アルコールが好適である。スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤は、上記の炭素数の分岐アルキル基を有するスルホコハク酸分岐アルキルモノエステル及び/又はジエステル、並びにその塩から選ばれる化合物であってよい。
具体的には、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸、ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸並びにそれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくは、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸又はその塩である。
【0050】
(d)成分のスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、殺菌性能向上の観点から、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩が挙げられる。
【0051】
(d)成分としては、殺菌性能向上の観点から、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸及びその塩、ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸及びその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、並びにポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくはジ-エチルヘキシルスルホコハク酸、ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上、更に好ましくはジ-エチルヘキシルスルホコハク酸又はその塩である。ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸又はその塩は、ジ-(2-プロピルヘプチル)スルホコハク酸又はその塩が好ましく、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸又はその塩は、ジ-(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸又はその塩が好ましい。
【0052】
本発明の殺菌剤組成物が(d)成分を含有する場合、本発明の殺菌剤組成物は、(d)成分を、殺菌性能向上の観点から、該組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、殺菌性能と経済性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有することができる。
なお、(d)成分の含有量は、ナトリウム塩に換算した含有量である。
(d)成分を上記範囲で含有する殺菌剤組成物は、薄めずに対象表面に接触させる組成物として好適に用いることができる。また、予め本発明の殺菌剤組成物を濃縮しておき、使用時の(d)成分の含有量が上記範囲となるように薄めて対象表面に適用することもできる。
【0053】
本発明の殺菌剤組成物が(d)成分を含む場合、本発明の殺菌剤組成物における(d)成分の含有量と(a)成分の含有量の質量比(d)/(a)は、殺菌性能の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、そして、殺菌性能の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下である。
【0054】
<(e)成分>
本発明の殺菌剤組成物は、任意に(e)芳香族化合物〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。(e)成分は、芳香族アルコール及び芳香族アルコールのアルキレングリコールエーテルから選ばれる1種以上であってよい。芳香族アルコールのアルキレングリコールエーテルは、芳香族アルコールと炭素数2以上4以下のアルキレングリコールのモノエーテルであってよい。
【0055】
(e)成分としては、殺菌効果の向上の観点から、下記一般式(e1)で表される化合物が好ましい。
R1eO-(R2eO)l-H (e1)
〔式中、R1eは、芳香族基を有し、且つ総炭素数6以上10以下の炭化水素基であり、lは0以上3以下の整数であり、R2eは炭素数2以上4以下のアルキレン基である。〕
【0056】
R1eの総炭素数は、芳香族基を含めた炭素数であり、R1eの総炭素数は、殺菌効果の向上の観点から、6以上、そして、配合安定性の観点から、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。R1eは、芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
一般式(e1)中のlは、殺菌効果向上の観点から、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が更に好ましい。
【0057】
(e)成分としては、具体的には、殺菌効果の向上と配合安定性の観点から、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、3-フェニル-1-プロパノール、シンナミルアルコール、ベンジルグリコール、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルジグリコールともいう)及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。(e)成分は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。(e)成分は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルから選らばれる2種以上の組み合わせであってよい。本発明の殺菌剤組成物は、(e)成分としてベンジルアルコール、フェノキシエタノール及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0058】
本発明の殺菌剤組成物が(e)成分を含有する場合、本発明の殺菌剤組成物は、(e)成分を、殺菌効果の向上の観点から、該組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、保存安定性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有することができる。
【0059】
本発明の殺菌剤組成物は、殺菌性能の観点から、水を含有する。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水、精製水等を用いることができ、工業用水に微量の次亜塩素酸ナトリウムを添加した水等を用いることもできる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。本発明の殺菌剤組成物は、殺菌性能の観点から、水を、組成物中に、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下含有する。
【0060】
本発明の殺菌剤組成物の25℃におけるpHは、殺菌性能の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、更により好ましくは5以上、そして、殺菌性能の観点から、好ましくは11以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
なお、本発明のpHはガラス電極法で測定される。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
【0061】
<pHの測定方法>
pHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、pH/イオンメーター F-23)にpH電極内部液を飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)としたpH測定用複合電極(例えば、株式会社堀場製作所製、ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となる殺菌剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極を該殺菌剤組成物に浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0062】
本発明の殺菌剤組成物は、殺菌性能を損なわない範囲で、任意に、pH調整剤、界面活性剤〔(a)成分、(b)成分又は(d)成分に該当するものを除く〕、アルカリ剤、再汚染防止剤、分散剤、有機溶剤〔(a)成分に該当するものを除く〕、安定化剤、ハイドロトロープ剤、キレート剤、漂白剤、漂白活性化剤、ウイルス不活性化剤、消泡剤、無機塩類、蛍光染料、酸化防止剤、色素及び香料を含有することができる。
【0063】
本発明の殺菌剤組成物がハイドロトロープ剤を含有する場合、ハイドロトロープ剤として、p-トルエンスルホン酸、m-キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸より選ばれる1種類以上を含有することが好ましく、前記ハイドロトロープ剤の含有量は、殺菌剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0064】
本発明の殺菌剤組成物が香料を含有する場合、特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料 (2000年1月14日発行)に記載の香料成分を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。香料として、具体的には、炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エステル系香料、ラクトン系香料、環状ケトン系香料等より選ばれる1種類以上を挙げることができる。
【0065】
<炭化水素系香料>
炭化水素系香料として、リモネン、カンフェン、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネオール、テルピノレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、オレンジペラ、オレンジバレンシア等が挙げられる。
【0066】
<アルコール系香料>
アルコール系香料として、リナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、シトロネロール、ゲラニオール、オイゲノール、イソオイゲノール、チモール、パラクレゾール、ネロール、ターピネオール、α-ターピネオール、l-メントール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、ボルネオール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール、p-t-ブチルシクロヘキサノール、o-t-ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール等が挙げられる。
【0067】
<エーテル系香料>
エーテル系香料として、セドリルメチルエーテル、エストラゴール、アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、1,8-シネオール、リナロールオキサイド、リモネンオキサイド、ネロールオキサイド、ローズオキサイド、ローズフラン、リメトールメントフラン、ブチルジメチルジヒドロピラン、メトキシシクロドデカン、アニソール、アセトアニソール、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン、ジヒドロアネトール、メチルオイゲノール、フェニルエチルイソアミルエーテル等が挙げられる。
【0068】
<アルデヒド系香料>
アルデヒド系香料として、n-ヘキサナール、n-オクタナール、n-ノナナール、n-デカナール、n-ドデカナール、n-トリデカナール、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、トリプラール、ヘリオナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリンp-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン等が挙げられる。
【0069】
<ケトン系香料>
ケトン系香料として、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-メチルイオノン、β-メチルイオノン、γ-メチルイオノン、ダマセノン、ダマスコン、メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アセトフェノン、アミルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、ローズケトン、カルボン、メントン、樟脳、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、ラズベリーケトン等が挙げられる。
【0070】
<エステル系香料>
エステル系香料として、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステル、ノネン酸エステル、安息香酸エステル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステル、ブラシル酸エステル、チグリン酸エステル、ジャスモン酸エステル、グリシド酸エステル、アントラニル酸エステル等が挙げられる。
【0071】
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等が挙げられる。
酢酸エステルとしては、ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、パラクレジルフェニルアセテート等が挙げられる。
ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート等が挙げられる。
酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。
【0072】
吉草酸エステルとしては、メチルバレレート、エチルバレレート、ブチルバレレート、アミルバレレート、ベンジルバレレート、フェニルエチルバレレート等が挙げられる。
ヘキサン酸エステルとしては、メチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、リナリルヘキサノエート、シトロネリルヘキサノエート等が挙げられる。
ヘプタン酸エステルとしては、メチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
ノネン酸エステルとしては、メチル2-ノネノエート、エチル2-ノネノエート、エチル3-ノネノエート等が挙げられる。
安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、3,6-ジメチルベンゾエート等が挙げられる。
桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート等が挙げられる。
サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。
【0073】
<カルボン酸系香料>
カルボン酸系香料としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2-ヘキセン酸等が挙げられる。
【0074】
<ラクトン系香料、環状ケトン系香料など>
ラクトン系香料又は環状ケトン系香料としては、γ-バレロラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、クマリン、γ-ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、11-オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
【0075】
<天然香料>
天然香料としては、植物性や動物性の天然精油や天然抽出物が挙げられ、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、バニラ、ナツメグ、ローズ、ロックローズ、ジャスミン、ラベンダー、キンモクセイ、カシス、ペパーミント、スペアミント、シソ、ローズマリー、セージ、ゼラニウム、ローレル、ウインターグリーン、ユーカリ、シンナモン、キハダ、ジンジャー、ターメリック、カルダモン、セダーウッド、ヒノキ、グアイヤックウッド、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、ガルバナム、オリバナム、ガージャンバルサム、フェンネル等が挙げられる。
【0076】
本発明の殺菌剤組成物が香料を含有する場合、2種以上の香料を組み合わせた香料組成物を使用することが好ましい。
本発明の殺菌剤組成物が香料を含有する場合、その含有量は、殺菌剤組成物中、0.001質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量以下がより好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下が更に好ましい。
【0077】
本発明の殺菌剤組成物は、例えば、噴霧、塗布又は浸漬により、対象表面に直接接触させる組成物として用いられ、高い殺菌性能及び/又は抗菌性能を示す。
【0078】
本発明の殺菌剤組成物は、黄色ブドウ球菌に対して高い殺菌効果を有することから例えば、エスケリキア属(大腸菌等)、スタフィロコッカス属、メチロバクテリウム属、モラクセラ属、マイクロコッカス属、シュードモナス属、ロゼオモナス属、スフィンゴモナス属、アセトバクタ-属、バチルス属等の中古の繊維製品等から分離される細菌、アスペルギルス属、エキソフィアラ属、カンジダ属、クラドスポリウム属、ロドトルラ属等の真菌について殺菌、除菌又は抗菌を行うことができる。
【0079】
本発明の殺菌剤組成物は、硬質表面、可撓性物品の表面、及び繊維を殺菌対象とすることができる。すなわち、本発明の殺菌剤組成物は、硬質表面用、可撓性物品の表面用、及び/又は繊維用の殺菌剤組成物であってよい。
硬質表面は、例えば、食器、台所周りの硬質物品、及び/又は、浴室、トイレ周り、フロアなどの住環境の硬質物品の表面が挙げられる。
硬質表面は、好ましくは食器及び/又は台所周りの硬質物品の表面、並びに浴室及び/又はトイレ周りの硬質物品の表面、より好ましくは食器、まな板、バスタブ及びトイレの便器の表面である。
また、可撓性物品は、例えば、スポンジ、クッション、マットが挙げられる。スポンジは、繊維状の骨格を有するものであってもよい。
【0080】
台所周りの硬質物品は、台所の周辺で使用される物品であり、具体的には、
(1)冷蔵庫、食器棚などの食品、食器、調理器具の保存場所、
(2)排水溝、調理台、レンジフード、シンク、ガスレンジ、電子レンジなどの食品の調理場所、及び
(3)前記保存場所や前記調理場所の周辺の床や壁等
である。本発明では、これらを便宜上「台所周りの硬質物品」とする。
また、食器としては、具体的には、
(i)皿、椀等のいわゆる食器、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁やまな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)フードプロセッサー、ミキサー等の調理家電等
の食材が接触する部材や器具が挙げられる。本発明では、これらを便宜上「食器」とする。
【0081】
繊維は、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維が挙げられる。本発明の殺菌剤組成物は、これらの繊維を含む繊維製品を対象とすることができる。繊維製品は、例えば、衣料であってよい。
【0082】
繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。本発明において、親水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5質量%以上の繊維をさしている。また、疎水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5質量%未満の繊維をさしている。この標準状態の水分率は、JIS L 1013記載の方法により算出される。
疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックス等)、ポリアミド系繊維(ナイロン等)、ポリエステル系繊維(ポリエステル等)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリル等)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン等)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン等)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラール等)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエート等)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレン等)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポック等)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻等)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻等)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ等)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等)等が例示される。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品である。
【0083】
<殺菌方法>
本発明は、本発明の殺菌剤組成物を、対象表面に接触させる、殺菌方法を提供する。
本発明の殺菌方法は、本発明の殺菌剤組成物を、希釈せずに、対象表面に接触させる、殺菌方法であってよい。
本発明の殺菌方法は、本発明の殺菌剤組成物を、希釈せずに、硬質表面、可撓性物品の表面、及び繊維から選ばれる1以上の対象表面に接触させる、殺菌方法であってよい。
本発明の殺菌方法では、前記殺菌剤組成物を、希釈せずに、霧又は泡の状態で、対象表面に接触させることが好ましい。
なお、本発明において、希釈せずとは、殺菌剤組成物を対象表面に接触させるときに、殺菌剤組成物が原液のままで接触されていればよく、その後水で希釈されたり濃縮されたりしてもよい。
【0084】
本発明の殺菌方法では、殺菌効果を高める観点から、前記殺菌剤組成物を対象表面に接触後、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、より更に好ましくは50秒以上、より更に好ましくは1分以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下、より更に好ましくは5分以下、放置する。この場合、前記組成物が最初に対象表面に接触した時点を放置の開始としてよい。
なお、放置する際の温度は、室温、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0085】
本発明の殺菌方法では、スプレー手段を用いて、前記殺菌剤組成物を、泡比容が2mL/g以上の泡の状態として、対象表面に接触させることが好ましい。本発明に用いる殺菌剤組成物を、泡形成機構を有するスプレイヤーを具備する容器に充填してなる殺菌剤物品を用いて、前記殺菌剤組成物を、泡の状態として、対象表面に接触させることがより好ましい。
【0086】
本発明は、本発明の殺菌剤組成物を、泡形成機構を有するスプレイヤーを具備する容器に充填してなる、スプレー容器入り殺菌剤物品を提供する。
前記スプレイヤーを具備する容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等が挙げられる。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0087】
<殺菌洗浄剤組成物>
本発明は、殺菌成分として(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔(a)成分である〕を1質量%以上15質量%以下、(b)アルキルグリセリルエーテル〔(b)成分である〕を0.5質量%以上、(c)酵素〔(c)成分である〕を1質量ppm以上、(d)アニオン界面活性剤〔(d)成分である〕及び水を含有する殺菌洗浄剤組成物を提供する。
【0088】
本発明の殺菌洗浄剤組成物における、(a)成分~(d)成分、水、任意成分の好ましい態様は、本発明の殺菌剤組成物の好ましい態様を適用できる。
また、本発明の殺菌洗浄剤組成物における、(a)成分~(d)成分の好ましい含有量、該含有量の好ましい質量比は、本発明の殺菌剤組成物の好ましい含有量、好ましい質量比を適用できる。
【0089】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、(f)界面活性剤〔ただし、(a)成分、(b)成分又は(d)成分に該当するものを除く〕を任意に含有することができる。
(f)成分としては、(f1)非イオン界面活性剤〔ただし、(a)成分又は(b)成分に該当するものを除く〕〔以下、(f1)成分という〕、(f2)カチオン界面活性剤〔以下、(f2)成分という〕、及び(f3)両性界面活性剤〔以下、(f3)成分という〕から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0090】
(f1)成分は、殺菌性と洗浄性の観点から、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、アルキル(ポリ)グリコシド(グリコシド型非イオン界面活性剤)、ソルビタン系非イオン界面活性剤、脂肪族アルカノールアミド、長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキサイドが付加した化合物、脂肪酸モノグリセライド、蔗糖脂肪酸エステル、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン等のアルカノールアミンとラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸とのアミド化物を挙げることができる。非イオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基は、例えば、炭素数6以上18以下である。非イオン界面活性剤のオキシアルキレン基、例えばオキシエチレン基の平均付加モル数は、例えば、3以上25以下である。(f1)成分の好ましい例は、殺菌性と洗浄性の観点から、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、及びアルキル(ポリ)グリコシド(グリコシド型非イオン界面活性剤)から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0091】
(f2)成分は、カチオン界面活性剤である。(f2)成分としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。
第4級アンモニウム塩としては、窒素原子に結合する4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数10以上28以下のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1以上5以下のアルキル基及び炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数10以上28以下のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。
【0092】
(f3)成分の両性界面活性剤としては、殺菌性と洗浄性の観点から、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。更に、殺菌性と洗浄性の観点から、炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するアミンオキシド型界面活性剤及び炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。より詳細には、(f3)成分としては、殺菌性と洗浄性の観点から、炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有する3級アミンオキシド型界面活性剤、炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するスルホベタイン型界面活性剤及び炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するカルボベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0093】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、殺菌性能を損なわない範囲で、任意成分として、前述の本発明の殺菌剤組成物と同様に、pH調整剤、アルカリ剤、再汚染防止剤、分散剤、有機溶剤〔(a)成分に該当するものを除く〕、安定化剤、ハイドロトロープ剤、キレート剤、漂白剤、漂白活性化剤、ウイルス不活性化剤、消泡剤、無機塩類、蛍光染料、酸化防止剤、色素及び香料を任意に含有することができる。
【0094】
また、本発明の殺菌洗浄剤組成物の殺菌洗浄対象は、本発明の殺菌剤組成物の殺菌対象で挙げた硬質表面、可撓性物品表面、繊維が挙げられる。
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、これら対象表面を洗浄すると同時に、該対象表面の殺菌、除菌及び/又は抗菌することができる。
殺菌、除菌及び抗菌の対象となる菌は、本発明の殺菌剤組成物で挙げた菌が挙げられる。
【0095】
<殺菌洗浄方法>
本発明は、本発明の殺菌洗浄剤組成物と、対象表面とを接触させる殺菌洗浄方法を提供する。
本発明の殺菌洗浄方法では、前記殺菌洗浄剤組成物を希釈せずに霧又は泡状にして、対象表面と接触させ、機械力などの外力をかけずに対象表面を洗浄した後、該対象表面を水で濯ぐことが好ましい。
機械力などの外力をかけずに放置して対象表面を洗浄するとは、例えば、組成物の接触以外に、洗浄のための外力を意図的に対象物に加える操作を行わないことである。例えば、接触させた組成物が対象表面を自然に流下することや、洗浄を意図しない振動が対象表面に伝わることなどは、機械力などの外力をかけずに放置して対象表面を洗浄すると理解できる。
放置した後は、対象表面を水で濯ぐ。濯ぐ際は、手などで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流で濯いでもよい。
【0096】
本発明では、前記殺菌洗浄剤組成物の原液をそのまま、つまり組成を変動させることなく、霧又は泡状にして対象表面に付着させることが好ましい。対象表面に接触した後は、前記殺菌洗浄剤組成物の組成が変動してもよい。すなわち、対象表面に接触した後は、前記殺菌洗浄剤組成物の組成が希釈又は濃縮されてもよい。
【0097】
<(a)成分の殺菌性を向上させる方法>
本発明は、殺菌成分である(a)炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基を有する、1価アルコール又はアルキレングリコールエーテル〔(a)成分である〕に対して、(b)アルキルグリセリルエーテル〔(b)成分である〕と、(c)酵素〔(c)成分である〕と、を組み合わせることで、(a)成分の殺菌性を向上させる方法を提供する。
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法において、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分などの任意成分の好ましい態様は、本発明の殺菌剤組成物における好ましい態様を適用できる。
【0098】
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、(a)成分を、殺菌性能の観点から、1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更により好ましくは5質量%以上、そして、保存安定性と経済性の観点から、15質量%以下、好ましくは13質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する水溶液の(a)成分の殺菌性を向上させることができる。
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、上記範囲で(a)成分を含む組成物の殺菌性能を顕著に向上させることができる。
【0099】
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、殺菌性能の観点から、(a)成分に対する(b)成分の質量比(b)/(a)が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、更により好ましくは0.2以上、そして、溶解性と殺菌性能の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1以下、更により好ましくは0.6以下となるように、(a)成分に対して(b)成分を組み合わせる。
【0100】
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、殺菌性能の観点から、(a)成分に対する(c)成分の質量比(c)/(a)が、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、更により好ましくは0.0002以上、そして、経済性と殺菌性能の観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.01以下となるように、(a)成分に対して(c)成分を組み合わせる。
【0101】
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、(a)成分に対して、更に、任意に(d)アニオン界面活性剤〔(d)成分である〕を組み合わせて、(a)成分の殺菌性を向上させることができる。
【0102】
本発明の(a)成分の殺菌性を向上させる方法では、殺菌性能の観点から、(a)成分に対する(d)成分の質量比(d)/(a)が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、そして、殺菌性能の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下となるように、(a)成分に対して任意に(d)成分を組み合わせることができる。
【実施例0103】
1.実施例1
(1)配合成分
表1の実施例1及び比較例1では、以下の(a)成分~(c)成分を用いて殺菌剤組成物を調製した。(a’)成分は、(a)成分の比較成分である。
【0104】
<(a)成分>
(a1)成分
・C5-OH:1-ペンタノール、富士フイルム和光純薬(株)製
(a2)成分
・C2EO1:エチレングリコールモノエチルエーテル、東京化成工業(株)製
・C4EO2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコールともいう)、日本乳化剤(株)製
・C4EO3:トリエチレングリコールモノブチルエーテル、東京化成工業(株)製
・C4PO2:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤(株)製
<(a’)成分>
(a’1)成分
・PG:プロピレングリコール、(株)ADEKA製
・グリセリン:花王(株)製
<(b)成分>
・GE-EH:2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(製品名「ペネトールGE-EH」、花王(株)製)
・GE-PH:2-プロピルヘプチルグリセリルエーテル(花王(株)製)
<(c)成分>
・リパーゼ:Lipex Evity 100L、Novozymes社製
・プロテアーゼ:Progress Uno、Novozymes社製
・アミラーゼ:Amplify Prime、Novozymes社製
<水>
・蒸留水:富士フイルム和光純薬(株)製
【0105】
<(c)成分の酵素タンパク質量換算量の定量方法>
DCプロテインアッセイキットIIのA試薬10μLに対し、適宜希釈した酵素溶液20μLを加え、DCプロテインアッセイキットIIのB試薬80μLを加えて室温で15分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)200PRO(Tecan社製))にて750nmの吸光度を測定した。タンパク質濃度が既知の試料(BSAStandard Solution(富士フイルム和光試薬(株)))から検量線を作成し、前記で得た吸光度から、当該酵素中の酵素タンパク質量を定量した。
【0106】
(2)殺菌活性値の評価
(i)試験菌液の調製
蒸留水1000mLに対し肉エキス5.6g、ペプトン9.4gを溶解させ、その後高圧蒸気滅菌器(PHC(株)製:MLS-3030-PJ)にて殺菌処理してニュートリエント培地を調製した。また、塩化カルシウム二水和物59.03g及び塩化マグネシウム六水和物27.21gを1000mLの蒸留水に溶解させ、その後シリンジフィルター(ADVANTEC社製:DISMIC CSタイプ)にて殺菌処理して硬水を調製した。
殺菌した100mLビーカーにニュートリエント培地10mLを入れ、ろ過殺菌した硬水0.05mLと蒸留水20mL、滅菌ろ過した3%牛血清アルブミン(Cohn Fraction V)水溶液20mLを加えた。その溶液に生理食塩水中に溶解させた黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus、スタフィロコッカス・アウレウス)の懸濁液(5.0×109~5.0×1010cfu/mL)を0.7mL添加して、試験菌液を調製した。
【0107】
(ii)殺菌活性値の算出
滅菌した試験片(JIS K 6401に合致する軟質ウレタンフォームで、見掛け密度が16~22kg/m3、JIS K 6400で測定したときの硬さが50~150N、縦60mm、横30mm、厚さは30mmで、抗菌加工されていないもの)に試験菌液0.5mLを接種し、滅菌したガラス棒で10回以上揉み、25℃で1時間放置した。
放置後の試験片に表1の殺菌剤組成物又は対照サンプル0.05 (w/v)% ポリソルベート80水溶液を殺菌したもの)を0.5mL接種し、該組成物又は対象サンプルが試験片に均一に染み込むように殺菌済みのガラス棒で100回以上揉みこみ、18時間25℃で放置した。
殺菌活性不活化剤(SCDLP溶液、富士フイルム和光純薬(株)製)20mLを試験片に接種し滅菌済みガラス棒で20回以上揉み、試験片から菌液を抽出した。
抽出液1.0mLに対し48℃のトリプチックソイ寒天培地を20mL加え37℃で48時間培養した。トリプチックソイ寒天培地は、蒸留水1000mLに対しカゼイン製ペプトン15.0g、大豆製ペプトン5.0g、塩化ナトリウム5.0g、寒天粉末15.0gを溶解させ、その後殺菌処理したものを使用した。
培養後、コロニーの数nをカウントし、下記式(1)を用いて殺菌活性値を算出した。殺菌活性値が高い殺菌剤組成物は、殺菌活性が高い殺菌剤組成物であり、抗菌活性が高い殺菌剤組成物である。実施例1の殺菌剤組成物は、汚れ(実施例では、牛血清アルブミン)が存在する条件下でも、殺菌活性が高い組成物であった。なお、実施例1の殺菌剤組成物の25℃におけるpHを下記の方法により測定したところ、そのpHは、6.0~7.9の範囲であった。
殺菌活性値 = Avc-Avs (1)
Avc:対照サンプルで処理した試験片の生菌数の常用対数をとり、n個について平均した値
Avs:殺菌剤組成物で処理した試験片の生菌数の常用対数をとり、n個について平均した値
【0108】
(3)殺菌剤組成物のpHの測定方法
pHメーター((株)堀場製作所製、pH/イオンメーター F-23)にpH電極内部液を飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)としたpH測定用複合電極((株)堀場製作所製、ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続した。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行った。測定対象となる殺菌剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極を該殺菌剤組成物に浸漬し、1分後のpHを測定した。
【0109】
【0110】
2.実施例2
実施例2では、本発明の殺菌剤組成物の一例である、殺菌洗浄剤組成物を調製し、該組成物の殺菌効果を評価した。実施例2の殺菌洗浄剤組成物を、表2及び3に示す。
なお、実施例2の殺菌剤組成物の殺菌効果の評価は、上記実施例1の(2)の殺菌活性値の評価と同様の方法で行った。殺菌活性値は、いずれの組成物も2.5以上〔表2又は3中、「〇」と表記した〕であり、殺菌活性が高い組成物であった。
また、(c)成分の酵素タンパク質量換算量の定量方法も、上記実施例1の<(c)成分のタンパク質量換算量の定量方法>と同様の方法で行った。
【0111】
(1)配合成分
下記の成分を用いて、実施例2の殺菌洗浄剤組成物を調製した。
<(a)成分>
(a1)成分
・エタノール:富士フイルム和光純薬(株)製、特級
(a2)成分
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコールともいう):日本乳化剤(株)製
<(b)成分>
・2-エチルヘキシルグリセリルエーテル:製品名「ペネトールGE-EH」、花王(株)製
・2-プロピルヘプチルグリセリルエーテル:花王(株)製
<(c)成分>
・リパーゼ:Lipex Evity 100L、Novozymes社製
・プロテアーゼ:Progress Uno、Novozymes社製
・アミラーゼ:Amplify Prime、Novozymes社製
<(d)成分>
・ジ-(2-プロピルヘプチル)スルホコハク酸ナトリウム:花王(株)製
・ジ-(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム:製品名「エアロールCT-1L」、東邦化学工業(株)製
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム:製品名「エマール227-PH11」、花王(株)製、アルキル基の炭素数10~16、EO平均付加モル数2
・脂肪酸:ミリスチン酸、製品名「ルナックMY-98」、花王(株)製
<(e)成分>
・ベンジルアルコール:東京化成工業(株)製
・トリエチレングリコールモノフェニルエーテル:日本乳化剤(株)製(製品名:PHG-30)
・フェニルジグリコール:東京化成工業(株)製
・フェノキシエタノール:日本乳化剤(株)製
<水>
・水:加熱滅菌交換水又は次亜塩素酸添加水道水
<(f)成分>
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12~14セカンダリーアルコール):製品名「ソフタノール70H」、(株)日本触媒製
・ラウリルジメチルヒドロキシスルホベタイン:製品名「アンヒトール20HD」、花王(株)製
・ラウリルアミンオキシド:製品名「アンヒトール20N」、花王(株)製
・ラウラミドプロピルベタイン:製品名「アンヒトール20AB」、花王(株)製
・アルキルグルコシド:製品名「プランタケア2000UP」、BASF SE製、アルキル基の炭素数8~16、糖縮合度1~2
<その他の成分>
・プロピレングリコール:(株)ADEKA製
・クエン酸:富士フイルム和光純薬(株)製
・リンゴ酸:富士フイルム和光純薬(株)製
・EDTA:富士フイルム和光純薬(株)製
・ポリアクリル酸ナトリウム:製品名「オリゴマー M-3、花王(株)製
・p-トルエンスルホン酸:富士フイルム和光純薬(株)製
・m-キシレンスルホン酸:東京化成工業(株)製
・クメンスルホン酸:テイカ(株)製(製品名:テイカトックス565)
・硫酸亜鉛・7水和物:富士フイルム和光純薬(株)製
・香料:花王(株)製
・色素:富士フイルム和光純薬(株)製
・NaOH:水酸化ナトリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
・KOH:水酸化カリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
・モノエタノールアミン:(株)日本触媒製
【0112】
(2)殺菌洗浄剤組成物のpHの調整
表2及び3の殺菌洗浄剤組成物の25℃におけるpHを上記実施例1の(3)に記載の方法と同様の方法で測定し、該組成物のpHが表2又は3に記載のpHとなるように、NaOH、KOH、モノエタノールアミンのいずれか1以上を添加し、該組成物のpHを調整した。
【0113】
【0114】