(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124379
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】焙煎装置
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20240905BHJP
A23N 12/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A23N12/08 A
A23N12/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029740
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023030852
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220435
【氏名又は名称】株式会社ファインシンター
(71)【出願人】
【識別番号】591212279
【氏名又は名称】株式会社川島鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕太
(72)【発明者】
【氏名】七理 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中根 啓介
(72)【発明者】
【氏名】植田 義久
(72)【発明者】
【氏名】岩大路 基
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061BA09
4B061BA10
4B061CD06
4B061CD18
(57)【要約】
【課題】焙煎対象物として粉体を焙煎する際に、ダマができにくく、焙煎ムラができにくい焙煎装置を提供する。
【解決手段】焙煎装置10は、焙煎対象物である粉体が収容される有底の粉体用容器20と、焙煎対象物を加熱するためのヒーター12A、12Bと、粉体用容器20を面上で移動させる容器移動機構40とを備え、粉体用容器20の内面に、内側に向けて突出する整流板21を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎対象物である粉体が収容される有底の粉体用容器と、
焙煎対象物を加熱するためのヒーターと、
前記粉体用容器を面上で移動させる容器移動機構とを備え、
前記粉体用容器の内面に、内側に向けて突出する整流板を有する、焙煎装置。
【請求項2】
前記整流板は、前記粉体用容器の底部の周縁の近傍に設けられている、請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項3】
前記整流板は正面からみた形状が矩形状であり、
前記粉体用容器の底部は平面からみた形状が円形の平坦面であり、
前記粉体用容器を平面からみたときに、前記整流板は、前記底部の周縁に近い前記整流板の第1端部と前記底部の中心点とを結ぶ仮想の線に対して、15度以上、35度以下の角度で傾いて設けられている、請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項4】
前記粉体用容器は、底部と、底部から連続して斜め上方向に延びる周側部とを備え、前記周側部は、下側に外側に凸状に湾曲する湾曲部を含む、請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項5】
前記容器移動機構は、アームと、前記アームに接続されたモータとを備え、前記粉体用容器を面上で旋回させる、請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項6】
前記粉体用容器を筐体内に支持する支持機構を備え、
前記支持機構は、前記粉体用容器の周側部に設けられる支持板と、
前記支持板が前側から後側に向けて挿入される一対のレールとを備え、
前記レールおよび前記支持板は、後側に向かうにつれて下となるように傾いており、
前記支持板が前記レールに挿入されたときに、前記粉体用容器の底部が上下方向に直交する水平面と平行となる、請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項7】
前記粉体用容器の上側または下側に、第2の焙煎対象物である粒体が収容される粒体用容器をさらに備える、請求項1に記載の焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を焙煎する焙煎装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焙煎装置としてさまざまなものが知られている。例えば、特許文献1に記載の焙煎装置は、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等の焙煎対象物を加熱し焙煎するためのものである。特許文献1の焙煎装置は、焙煎対象物を内部に収容しその内部の雰囲気を大気圧よりも高圧としながら内部の雰囲気が流出入しないように維持できる密閉可能な収容容器と、収容容器の内部に配設され、密閉した収容容器の内部に収容した焙煎対象物を加熱する加熱機構とを備えている。加熱機構は、その内に焙煎対象物を収める回転可能なドラムと、ドラム内の焙煎対象物を加熱するヒーターとを備えている。焙煎対象物の加熱、焙煎中の少なくとも一時期または全期間に亘り、収容容器の内部の雰囲気を高圧に維持し、かつ気密を維持してその雰囲気を外部に漏出させずに、ドラムを回転させながら焙煎を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明においては、コーヒー豆その他の穀類または茶葉等、ある程度の大きさを有するものを焙煎対象物としており、ドラムに焙煎対象物を収容して回転させることで、焙煎が可能である。しかし、コーヒー豆や穀物、茶葉等を挽いて粉体にした場合、粉体を焙煎すると、焙煎中に焙煎対象物から発する湿った空気によりダマができ、焙煎ムラができやすくなるという問題がある。
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、焙煎対象物として粉体を焙煎する際に、ダマができにくく、焙煎ムラができにくい焙煎装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1:焙煎対象物である粉体が収容される有底の粉体用容器と、
焙煎対象物を加熱するためのヒーターと、
前記粉体用容器を面上で移動させる容器移動機構とを備え、
前記粉体用容器の内面に、内側に向けて突出する整流板を有する、焙煎装置。
【0008】
項2:前記整流板は、前記粉体用容器の底部の周縁の近傍に設けられている、項1に記載の焙煎装置。
【0009】
項3:前記整流板は正面からみた形状が矩形状であり、
前記粉体用容器の底部は平面からみた形状が円形の平坦面であり、
前記粉体用容器を平面からみたときに、前記整流板は、前記底部の周縁に近い前記整流板の第1端部と前記底部の中心点とを結ぶ仮想の線に対して、15度以上、35度以下の角度で傾いて設けられている、項1または2に記載の焙煎装置。
【0010】
項4:前記粉体用容器は、底部と、底部から連続して斜め上方向に延びる周側部とを備え、前記周側部は、下側に外側に凸状に湾曲する湾曲部を含む、項1から3のいずれか1項に記載の焙煎装置。
【0011】
項5:前記容器移動機構は、アームと、前記アームに接続されたモータとを備え、前記粉体用容器を面上で旋回させる、項1から4のいずれか1項に記載の焙煎装置。
【0012】
項6:前記粉体用容器を筐体内に支持する支持機構を備え、
前記支持機構は、前記粉体用容器の周側部に設けられる支持板と、
前記支持板が前側から後側に向けて挿入される一対のレールとを備え、
前記レールおよび前記支持板は、後側に向かうにつれて下となるように傾いており、
前記支持板が前記レールに挿入されたときに、前記粉体用容器の底部が上下方向に直交する水平面と平行となる、項1から5のいずれか1項に記載の焙煎装置。
【0013】
項7:前記粉体用容器の上側または下側に、第2の焙煎対象物である粒体が収容される粒体用容器をさらに備える、項1から6のいずれか1項に記載の焙煎装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、焙煎対象物として粉体を焙煎する際に、ダマができにくく、焙煎ムラができにくい焙煎装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る焙煎装置の全体の概略構成を示す側面図であり、筐体の一部を取り除いた図である。
【
図2】焙煎装置の全体の概略構成を示す正面図であり、筐体の一部を取り除いた図である。
【
図4】(A)は粉体用容器および支持板の平面図、(B)は(A)の部分拡大図である。
【
図5】(A)は整流板の側面図、(B)は整流板の正面図である。
【
図6】容器移動機構、支持機構、粉体用容器等の部材を示した平面図である。
【
図7】容器移動機構、支持機構、粉体用容器等の部材を示した側面図である。
【
図8】(A)は
図7のA-A断面図であり、(B)は(A)のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1、
図2は、本発明の一実施形態の焙煎装置10を示す。本実施形態の焙煎装置10は、
図1に示すように、筐体11内に、焙煎対象物である粉体が収容される有底の粉体用容器20と、焙煎対象物を加熱するためのヒーター12A、12Bと、粉体用容器20を面上で移動させる容器移動機構40と、粉体用容器20を筐体11内に支持する支持機構30を備える。粉体用容器20は、その内面に、粉体用容器20の内側に向けて突出する整流板21を有している。また、本実施形態の焙煎装置10は、粉体用容器20の上側または下側に第2の焙煎対象物である粒体が収容される粒体用容器16を備えるが、粒体用容器16は必ずしも備えていなくてもよい。
【0017】
本実施形態においては、特に指定しないかぎり、
図1を基準に上下方向を規定し、
図1の右側を焙煎装置10の後、左側を焙煎装置10の前または正面とする。すなわち、
図2は焙煎装置10を前側または正面からみた図であり、
図2の左右方向を装置の左右方向とする。また
図1の上下方向に直交し、前後方向と左右方向とを含む面を水平面とする。なお、上下方向は必ずしも厳密に鉛直方向に沿う必要はなく、焙煎対象物である粉体を焙煎可能な程度に鉛直方向に対して斜めであってもよい。また、
図1、
図2においては内部を説明するために筐体11の一部の図示を省略している。
【0018】
(焙煎対象物)
本実施形態による焙煎装置10の焙煎対象物は、粉体である。本明細書においては、粉体とは、最長径がおおよそ500μm以下の粒子の集合体であり、その形態は限定されない。粉体の例として、コオロギ粉末、コーヒー豆を挽いた挽豆、きな粉等が挙げられる。特にコオロギ粉末は風味を増し、殺菌のために焙煎を行うことが求められる。また、第2の焙煎対象物は粒体である。粒体とは、最長径がおおよそ500μmより大きい粒子の集合体であり、粒子は、顆粒状、ペレット状、チップ状、繊維状、及びフレーク状等の形態を含むものである。粒体の例として、アーモンド、落花生などのナッツ類、コーヒー豆、大豆、豆・米菓子が挙げられる。
【0019】
(全体構成)
筐体11内の内部であって、上壁11aの直下には断熱カバー13がボルトとナット等の取り付け手段により取り付けられている。断熱カバー13の下側には、粉体用容器20に収容された焙煎対象物である粉体を焙煎するための上部ヒーター12Aが設けられている。上部ヒーター12Aは、粉体または粒体を焙煎するために粉体用容器20または粒体用容器16を加熱できればどのような構成のものであってもよく、本実施形態では遠赤外線を発生するセラミックコーティングガスヒーターが用いられている。筐体11の上壁11aの上面にはカバー11c内に吸引ファン14が設けられている。吸引ファン14のダクト14aが筐体11の上壁11aを貫通し、上部ヒーター12Aと連結されている。ダクト14a内部と上部ヒーター12A内部とが連通しており、吸引ファン14による吸引により上部ヒーター12A内に燃焼ガスが行き渡る。また、筐体11の側壁には、図示しない非常停止スイッチなどが設けられている。
【0020】
上部ヒーター12Aの下側には、粉体用容器20、粒体用容器16、容器移動機構40が設けられている。筐体11の正面には開口部11bが形成され、開口部11bから粉体用容器20および粒体用容器16の筐体11への出し入れが可能となっている。粉体用容器20および粒体用容器16、容器移動機構40については後述する。上部ヒーター12Aと粉体用容器20との間に熱電対17を設け、粉体用容器20の上部の温度を測定している。
【0021】
粉体用容器20及び粒体用容器16の下側には下部ヒーター12Bが設けられている。下部ヒーター12Bは、筐体11の下壁に設けられた昇降機構15により昇降動作が可能である。昇降機構15は、本実施形態では、ハンドル15aと、ハンドル15aの回転軸と連結し、回転軸の回転運動を上下方向の運動に変換する変換機構15bとを備えている。変換機構15bは、歯車、ナット、ナットに螺合するボールネジ等から構成される既知の機構であり、ボールネジの上端に下部ヒーター12Bが取り付けられている。ハンドル15aが正逆いずれかの方向に回転したとき、その回転方向に応じて下部ヒーター12Bが上下いずれかの方向へ移動する。なお、昇降機構15は、リニアモータ、油圧ジャッキ等を用いることもでき、後述する制御装置により動作が制御されてもよい。下部ヒーター12Bは、粉体または粒体を焙煎するために粉体用容器20または粒体用容器16を加熱できればどのような構成のものであってもよく、例えば、ガスバーナーであってもよい。なお、上部ヒーター12Aと下部ヒーター12Bの種類は、粉体、粒体の種類に応じて選択される。
【0022】
焙煎装置10は、上部ヒーター12A、下部ヒーター12B、容器移動機構40等の動作の制御を行う制御装置(図示せず)を備えていてもよい。制御装置は、例えば、CPU、メモリ、タッチパネル、モニタ、回転ツマミ等の入力部等からなる汎用のパーソナルコンピュータが用いられる。
【0023】
(粉体用容器20)
図3、
図4に粉体用容器20を示す。粉体用容器20は、有底であり上端が開口している。粉体用容器20は、
図4に示すように、平面からみた形状が全体として円形であり、底部22と、底部22から連続して斜め上方向に延びる周側部23とを備える。底部22は平面からみた形状が円形であり、平坦面である。周側部23は上に向かうにつれて直径が大きくなっており、側面からみて、下側に底部22に連続し外側に凸状に湾曲する第1湾曲部23aと、第1湾曲部23aに連続する平坦面からなる傾斜部23bと、傾斜部23bに連続し内側に凸状に湾曲する第2湾曲部23cとを備える。粉体用容器20は、ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属を素材としている。
【0024】
底部22には、粉体用容器20の内側に向けて突出する整流板21が設けられている。整流板21は粉体用容器20と同様の金属素材からなる。
図5(A)に示すように、整流板21は帯状の板状部材を折り曲げて形成されている。整流板21は、側面からみてL字状であり、第1片21aと第2片21bとが連結されており、第1片21aと第2片21bとの間の角度が約90度である。第2片21bが溶接等により底部22に固着され、第2片21bより長手方向の長さが長い第1片21aが粉体用容器20の内側(粉体用容器20の上側)に向けて突出する。
図5(B)に示すように、整流板21を正面、すなわち
図5(A)の右側からみたときに、第1片21aは矩形状である。整流板21の幅W、整流板21の高さHは以下のように設定される。底部22の直径WCに対する整流板21の幅W、すなわちW/WCは0.1以上、0.6以下に設定される。粉体用容器20の高さHCに対する整流板21の高さH、すなわちH/HCは、0.1以上、0.6以下に設定される。また、整流板21の第1片21aの幅Wに対する厚みD、すなわちD/Wは、1/100以上、1/15以下に設定される。
【0025】
図4(A)に示すように、粉体用容器20を平面からみて、整流板21は、第1片21aが底部22の周縁22aの近傍に位置するように設けられている。整流板21の第1片21aは整流板21の幅方向(矢印Rで示される)が底部22の径方向に対して傾くように設けられている。粉体用容器20を平面からみて、整流板21の第1片21aの上面の4つの角部であって底部22の周縁22aに最も近い角部を第1端部21cとすると、第1端部21cと底部22の中心点Pとを結ぶ仮想の線Lと整流板21の幅方向との間の角度αは、15度以上、35度以下に設定される。また、底部22の中心点Pと整流板21の第1片21aの第1端部21cを通って底部22の周縁22aとの間の長さLC1に対する、底部22の中心点Pと整流板21の第1端部21cとの間の長さL1、すなわちL1/LC1は、0.5以上、1以下に設定される。本実施形態では、L1/LC1が1の場合であって、整流板21の第1端部21cは底部22の周縁22a上に位置している。第1片21aが底部22の周縁22aの近傍に位置するとは、第1端部21cが周縁22aの近くに位置することと、周縁22a上に位置していることを含む。
【0026】
本実施形態では、整流板21の幅Wが40mm、整流板21の高さHは20mm、整流板21の厚みDは1mm、底部22の直径WCが210mm、粉体用容器20の高さHCは115mmに設定されている。また、角度αは30度、底部22の中心点Pと整流板21の第1端部21cとを結ぶ仮想の線の長さL1は105mm、整流板21の第1片21aの端部を通って底部22の中心点Pと底部22の周縁22aとを結ぶ仮想線の長さLC1は105mmに設定されている。
【0027】
なお、整流板21は本実施形態に限定されず、粉体である焙煎対象物を焙煎できればよい。例えば、第1片21a、または第2片21bのみからなるものであってもよい。また、整流板21は正面の形状が矩形状に限定されず、三角形、正方形、円形、楕円系、五角形等の多角形など、任意の形状であってもよい。また、整流板21は板状ではなく、柱状であってもよい。
【0028】
本実施形態では、整流板21は1つ設けられているが、整流板21の個数は限定されず、2つ以上設けられていてもよい。整流板21が2つ設けられる場合、粉体用容器20の底部22の中心点Pに対して点対称の位置に設けられてもよい。また、整流板21が3つ以上設けられる場合、粉体用容器20の底部22の中心点Pを中心とした中心角が等間隔となる位置に設けられてもよい。整流板21が2つ以上設けられる場合、各整流板21の大きさや形状が異なっていてもよい。また、本実施形態では整流板21は粉体用容器20の底部22に設けられているが、周側部23の第1湾曲部23aに設けられていてもよく、底部22から第1湾曲部23aにまたがるように設けられていてもよい。
【0029】
(粉体用容器20の支持機構30)
図6、
図7に示すように、粉体用容器20の支持機構30は、粉体用容器20の周側部23の外側に取り付けられた支持板24と、粉体用容器20を支持するための容器支持枠31(31A~31D)と、左右の容器支持枠31A、31Bに設けられたレール支持体32と、レール支持体32に支持され、支持板24が前側から後側に向けて挿入される一対のレール33とを備える。
【0030】
図3、
図4に示すように、支持板24は、平面からみた形状が矩形状の板状部材であって中央に開口部が形成されている。開口部の大きさは粉体用容器20の側部の大きさに対応しており、開口部に粉体用容器20が嵌め込まれる。支持板24は複数の断面L字状の連結部材24bにより粉体用容器20に固定されている。
図3に示す側面からみて、支持板24は、粉体用容器20の平坦面の底部22に対して後側に向かうにつれて下となるように傾いている。後述するように、支持板24は支持機構30のレール33に傾いた状態で支持されるが、この傾きにより粉体用容器20が旋回したときに、粉体用容器20がレール33から前側に飛び出してくることを防いでいる。飛び出しを防ぐために、水平面に対して支持板24が傾く角度βはできるだけ大きく設定されることが好ましく、好ましくは4度以上、12度以下に設定され、本実施形態では8度に設定されている。角度βは筐体11の開口部11bの大きさや粉体用容器20が収容される筐体11内の空間の大きさに応じて設定される。支持板24の前側には略U字状の取っ手25が取り付けられている。作業者は取っ手25を握って支持板24をレール33に挿入する、またはレール33から支持板24を取り出す。
【0031】
図6に示すように、平面からみて、粉体用容器20および粒体用容器16の左右側および前側には容器支持枠31(31A~31D)が設けられている。左右側の容器支持枠31A、31Bの後端は容器移動機構40と連結され、前側の容器支持枠31Cの左右の両端にはそれぞれ吊り下げ部材34の一端が連結されている。2つの吊り下げ部材34の他端は筐体11の上壁11aに連結されている。容器支持枠31は容器移動機構40により後側が支持され、前側が吊り下げ部材34により支持されることで、筐体11内に位置している。容器支持枠31は水平面と平行となるように吊り下げ部材34の長さが調整される。
【0032】
図6、
図7に示すように、レール支持体32は、左右の容器支持枠31A、31Bそれぞれの前後方向に沿って2つずつ設けられている。
図8に示すように、各レール支持体32は、帯状の板状部材を約90度に曲げ加工した第1片32aと第2片32bを有する断面がL字の形状を有し、第1片32aが容器支持枠31A、31Bに溶接等により固定されている。レール支持体32の第2片32bは上方向に延在し、第2片32bの先端の内側には、レール33が取り付けられている。レール33は、断面がL字のL字部材33A、33Bを上下に2つ備えたものであり、各L字部材33A、33Bは帯状の板状部材を約90度に曲げ加工して形成され、第1片33aと第2片33bを有する。2つのL字部材33A、33Bのそれぞれの第1片33aが隙間Sを空けて対向するように、L字部材33A、33Bのそれぞれの第2片33bがレール支持体32に取り付けられる。レール33の2つL字部材33A、33Bの第1片33aの間の隙間Sの間隔は粉体用容器20の支持板24の厚みよりもわずかに大きく、この隙間Sに粉体用容器20の支持板24が挿入可能である。
図7に示すように、後側のレール支持体32の高さは前側のレール支持体32の高さよりも低く、レール33は、後側に向かうにつれて下となるように傾いている。水平方向に対するレール33の傾き角度γは粉体用容器20の底部22に対して支持板24が傾く角度βと同じ角度に設定される。2つのL字部材33A、33Bの間であってレール33の最も後側にはストッパー35を設けている。支持板24はストッパー35(
図7)に突き当たってそれ以上後側に移動せず、レール33に定位する。粉体用容器20の支持板24の左右側の端部をレール33の前側から隙間Sに挿入し、支持板24がストッパー35に突き当たって定位した状態で、粉体用容器20の底部22が水平面と平行となる。
【0033】
(粒体用容器16)
粒体用容器16は、第2の焙煎対象物である粒体を収容して焙煎するためのものである。粒体用容器16は、底部16aと、底部16aから立設する側部16bと、蓋部16cとを備えており、蓋部16cは開閉可能である。蓋部16cは、通気性を確保するために、その一部分が貫通孔が複数設けられた網状になっていてもよい。
図6に示すように、粒体用容器16は平面からみて略八角形状を呈しているが、粒体用容器16は粒体を収容して焙煎することができれば任意の形態であってよい。本実施形態においては、粒体用容器16の前側には受け部16dが設けられており、粒体用容器16の前側の側部を開閉可能としている。粒体用容器16から粒体を取り出す際には、受け部16dの先に受け皿を配置し、粒体用容器16の前側の側部を開けて受け部16dを介して粒体を受け皿に取り出す。このとき、粒体用容器16を前側が下となるように傾けてもよい。粒体用容器16は図示しないL字部材等の連結手段を介して容器支持枠31に固定されている。
【0034】
(容器移動機構40)
図6、
図7に示すように、容器移動機構40は、容器支持枠31A、31Bのそれぞれから延びる一対のアーム41と、アーム41に接続されアーム41に回転運動を与える駆動モータ42と、それぞれのアーム41と駆動モータ42とを連結する軸受43とを備えている。駆動モータ42は、
図1に示すように筐体11内の後側の支持台に配置されており、駆動モータ42のモータ軸42aは上下方向に沿っている。モータ軸42aの先端には平面からみて円形の回転板44が取り付けられ、回転板44の上面の円周付近に軸受43が設けられている。回転板44が駆動モータ42によりモータ軸42aを中心に回転することで、アーム41が回転板44に対して面上に旋回する。アーム41は容器支持枠31に取り付けられ、粉体用容器20および粒体用容器16は容器支持枠31に取り付けられているので、粉体用容器20および粒体用容器16は筐体11内で旋回する。本実施形態では、粉体用容器20および粒体用容器16は水平面上に旋回する。なお、面上に旋回するとは、粉体用容器20および粒体用容器16の移動の軌跡がある点を中心に円や楕円を描くようにまわることをいい、軌跡が同一平面上にあることをいう。また、粉体用容器20および粒体用容器16はかならずしも水平面上に旋回する必要はなく、水平面に対して傾いた面上に旋回してもよい。なお、容器移動機構40は駆動モータ42を1つ備えていてもよい。この場合、駆動モータ42から軸受43を介して駆動モータ42の回転運動を伝達して一方のアーム41を旋回させるとともに、他方の回転板44の回転軸と駆動モータ42の回転軸とを無端ベルトにより連結し、他方の回転板44に駆動モータ42の回転運動を伝達して他方のアーム41を旋回させる。また、容器移動機構40は、各アーム41毎に駆動モータ42を備えていてもよい。この場合、各駆動モータ42が同じ回転数で回転するように各駆動モータ42が制御装置により制御される。
【0035】
容器移動機構40は上記に限定されず、粉体または粒体を焙煎するために粉体用容器20および粒体用容器16を筐体11内で移動させることができればいずれの機構であってもよい。容器移動機構40は、粉体用容器20および粒体用容器16を面上で前後方向、左右方向、前後方向や左右方向に対して斜めの方向のすくなくとも一つの方向に移動させるものであってもよい。この場合、容器移動機構40として例えばリニアモータなどが用いられてもよい。
【0036】
(焙煎装置10の動作)
本実施形態の焙煎装置10により粉体または粒体を焙煎する手順について説明する。まず、作業者は粉体用容器20に焙煎対象物である粉体を収容する。粉体用容器20の支持板24をレール33に挿入して粉体用容器20を筐体11内に位置させる。次に粒体用容器16に第2の焙煎対象物である粒体を収容する。なお、粒体は焙煎せず、粉体である焙煎対象物のみを焙煎してもよい。次に、作業者は昇降機構15のハンドル15aを操作して下部ヒーター12Bの高さを調整する。下部ヒーター12Bの高さは、焙煎対象物に応じて調整される。また、作業者は制御装置のタッチパネル等の入力部から、上部ヒーター12Aの温度、下部ヒーター12Bの温度、焙煎時間、容器移動機構40の駆動モータ42の回転速度等の焙煎条件を入力する。なお、焙煎条件はあらかじめ制御装置のメモリに記憶されていてもよい。そして、作業者がタッチパネル等から焙煎動作開始を指示すると、焙煎装置10が動作し、容器移動機構40により粉体用容器20及び粒体用容器16が筐体11内で旋回するとともに、上部ヒーター12A、下部ヒーター12Bが駆動する。設定した焙煎時間が経過すると、制御装置は焙煎動作を終了する。焙煎動作終了後、作業者は粉体用容器20を引き出して焙煎された粉体を取り出す。また、粒体用容器16から粒体を取り出す。
【0037】
なお、焙煎条件や焙煎装置10の動作は上記の実施形態には限定されない。例えば、上部ヒーター12A、下部ヒーター12Bの温度そのものを設定するのではなく、ガスの量や昇降機構15による下部シーター12Bの上下位置を設定することで、上部ヒーター12A、下部ヒーター12Bから粉体用容器20及び粒体用容器16に加わる熱の温度を調整してもよい。また、焙煎時間が設定されて時間の経過により自動で焙煎動作を終了するのではなく、熱電対17による測定値が設定値を超えた場合に警告を発して作業者が焙煎動作を終了させてもよく、熱電対17による測定値をパネル等に表示させ、作業者が目視で温度を確認して設定温度に達したときに焙煎動作を終了させてもよい。また、入力部はタッチパネルに限定されず、各パラメータ毎に設けられた回転ダイヤル、操作つまみ、ボタン等であってもよい。
【0038】
本実施形態によれば、焙煎中に粉体用容器20及び粒体用容器16が旋回移動するため、粉体は粉体容器内で旋回移動しながら加熱される。整流板21がない場合には、旋回移動中に粉体同士がくっついてダマができる場合がある。また、粉体同士が混ざり合わずに粉体全体が大きな塊として粉体用容器20内を旋回移動することがある。しかし、本実施形態では整流板21を備えているので、旋回移動する粉体が整流板21にぶつかって移動方向が変化し、粉体同士が混ざり合いやすくなり、ダマができにくくなる。また、ダマができた場合でも整流板21にぶつかってダマが砕けて消滅する。このように、焙煎中に粉体が混ざり合い、ダマになりにくいことで、粉体は均一に焙煎される。
【0039】
粉体用容器20が旋回しており、粉体は遠心力により粉体容器の底部22の周縁22aに向かって移動する。整流板21が粉体用容器20の底部22の周縁22aの近傍に設けられることで、周縁22a付近に移動した粉体は整流板21にぶつかって粉体用容器20の中心点Pに向かって戻る。このように粉体が周縁22aへの移動と中心方向への移動とを繰り返すことで、焙煎中に粉体にダマができにくく、より粉体が混ざり合い、均一に焙煎される。
【0040】
また、本実施形態では、粉体用容器20を平面からみたときに、整流板21が経方向に対して傾いて設けられている。傾きの角度αは、底部22の周縁22aに近い整流板21の第1端部21cと底部22の中心点Pとを結ぶ仮想の線に対して、15度以上、35度以下の角度である。これにより、粉体が整流板21にぶつかりやすく、かつ、粉体が整流板21によって粉体の移動が堰き止められることがない。
【0041】
粉体用容器20は、底部22と、底部22から連続して斜め上方向に延びる周側部23とを備え、周側部23は底部22と連続し下側に外側に凸状に湾曲する第1湾曲部23aを含んでいる。周側部23の下側が湾曲しているため、周側部23の下側が角部である場合に比べ、周側部23の下側に粉体が溜まりにくい。
【0042】
また、粉体用容器20は支持機構30により筐体11内に支持されており、支持機構30の支持板24とレール33は、後側に向かうにつれて下となるように傾いている。このため、粉体用容器20が旋回したときに、支持板24に嵌め込まれた粉体用容器20がレール33から前側に飛び出してくることがない。また、支持板24とレール33は同じ角度で傾いており、支持板24がレール33に挿入されたときに粉体用容器20の底部22は水平面に対して傾かずに平行となる。このため、上部ヒーター12Aおよび下部ヒーター12Bと、粉体用容器20の底部22の任意の位置との間の最短の距離は一定であり、粉体が均一に焙煎される。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
なお、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。「同じ」、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。四角形状、円形の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。「平行」「直交」とは、実質的に「平行」「直交」であることを意味し、厳密に「平行」「直交」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。
【符号の説明】
【0044】
10 焙煎装置
12A、12B ヒーター
16 粒体用容器
20 粉体用容器
21 整流板
21c 第1端部
22 底部
22a 周縁
23 周側部
23a 湾曲部(第1湾曲部)
24 支持板
30 支持機構
31(31A~31D) 容器支持枠
32 レール支持体
33 一対のレール
40 容器移動機構
41 アーム
42 駆動モータ
44 回転板
P 底部の中心点