(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124387
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】公称熱を除去するための液体金属浴と、事故時の崩壊熱を除去するための相変化材料(phase-change material:PCM)とを有する熱除去システムを組み込んだ、液体冷却材と固体燃料集合体とを有する原子炉
(51)【国際特許分類】
G21C 1/03 20060101AFI20240905BHJP
G21C 1/02 20060101ALI20240905BHJP
G21C 15/26 20060101ALI20240905BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20240905BHJP
G21C 3/62 20060101ALI20240905BHJP
G21C 1/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G21C1/03
G21C1/02 300
G21C15/26
G21C15/18 C
G21C3/62 700
G21C1/06
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031322
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】2301895
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・パンタノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・パスカル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・アンフー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・アルグル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・デーデルライン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・シオラ
(57)【要約】
【課題】公称熱を除去するための液体金属浴と、事故時の崩壊熱を除去するための相変化材料(PCM)とを使用する熱除去システムを組み込んだ、液体冷却材と固体燃料集合体とを有する原子炉を提供すること。
【解決手段】本発明は、本質的に、
- 通常動作モードおよび事故動作モードにおける、原子炉の一次容器を通した、すなわち第2の封じ込め障壁を越える停止中の、一次回路内の自然対流による受動的のみの熱除去、
- 事件または事故が発生した場合の、炉心において生成され、一次容器によって除去される崩壊熱を蓄える1つまたは複数のPCMの存在により、オペレータによる介入なしで、所定の期間、典型的には3日間の間、安全機能を実行することができるコンパクトな受動的崩壊熱除去システムの実装、
を特に同時に保証する、液体金属または溶融塩の一次容器冷却材を有する固体燃料原子炉からなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属または1つもしくは複数の溶融塩によって冷却される原子炉(1)であって、前記原子炉が、
- 前記原子炉の一次回路の冷却材として少なくとも1つの液体金属または少なくとも1つの不活性液体塩を使用する第1の冷却材で満たされた、中心軸(X)に関して軸対称の一次容器と呼ばれる容器(10)であって、
・少なくとも1つのバレル内に収容された、固体状態における核燃料物質を含む集合体からなる炉心(11)と、
・前記一次容器の前記軸と一致する中心軸を有するレダン(14)を形成する構造体であって、前記原子炉の動作中に、前記液体金属または溶融塩冷却材が、核分裂反応が発生する原子炉炉心(C)が配置されている中央ゾーンの底部からループにおいて自然対流によって循環し、そこから加熱によって前記中央ゾーンの上面まで上昇し、そこで周辺ゾーンの底部に向けて下降するように前記周辺ゾーンの上面に向けてそらされ、そこで前記原子炉の前記炉心に向けてそらされるように、前記構造体が、前記一次容器の内部を前記中央ゾーンと前記周辺ゾーンとに分離するように前記一次容器内に配置された、構造体と
を備える、容器と、
- 前記一次容器の周囲に配置された、二次容器と呼ばれる容器(22)と、
- 前記二次容器(22)の周囲に配置された原子炉ピット(20)と、
- 前記第1の冷却材を前記一次容器内に封入するための炉心ヘッドプラグ(15)と、
- 通常動作中と、前記原子炉が停止している状況との両方において熱を除去するためのシステム(3)であって、前記システムが、
・前記一次容器と前記二次容器との間に配置され、前記液体金属(31)で満たされた前記一次容器のボリュームを定義するシェル(30)と、
・第2の冷却材で満たされており、前記一次容器を通る伝導によって除去され、前記液体金属によってエネルギー変換システムおよび/または熱ネットワークに伝達される熱自体を除去することができる、前記二次容器と呼ばれる閉回路(32)と
を備える、システムと、
- 前記原子炉の事故状況において崩壊熱を除去する(DHR)システムであって、前記システムが、
・前記シェルと前記二次容器との間に区切られた空間の内側に配置された少なくとも1つの固液相変化材料(PCM)(23)であって、前記PCMが、事故状況において前記炉心から放出される前記崩壊熱の少なくとも一部、好ましくはすべてを、所定の期間、潜熱によって蓄積しながら溶融することができる、少なくとも1つのPCM
含む、システムと
を備える、原子炉(1)。
【請求項2】
前記シェルと前記二次容器との間の前記PCMの高さが、前記一次容器と前記シェルとの間の不活性液体塩の高さよりも大きい、請求項1に記載の原子炉(1)。
【請求項3】
前記一次および二次容器ならびに前記シェルが、同心円状に配置された直円筒である、請求項1または2に記載の原子炉(1)。
【請求項4】
前記不活性液体塩が、オプションで塩素37が濃縮された塩素ベースの塩、好ましくは、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、ZnCl2、またはそれらの混合物、特に、溶融塩混合物NaCl-MgCl2、NaCl-MgCl2-KCl、またはNaCl-MgCl2-KCl-ZnCl2から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項5】
前記閉回路が蛇行コイル(40)を備え、前記蛇行コイル(40)の周囲には好ましくは放熱フィンが設けられ、前記蛇行コイルが、前記一次容器と前記シェルとの間に、前記シェルの周囲を螺旋状に配置された、請求項1から4のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項6】
前記一次容器と前記シェルとの間の浴の前記液体金属が、アルミニウム合金、好ましくはA0850.0である、請求項1から5のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項7】
前記シェルと前記二次容器との間の前記PCMが、粉末の形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項8】
前記シェルと前記二次容器との間の前記PCMが、純アルミニウムまたはアルミニウム合金、好ましくはA0850.0から選択された、請求項1から7のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項9】
前記一次容器が、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られた、請求項1から8のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項10】
前記二次容器および前記シェルが、各々、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られた、請求項1から9のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項11】
前記原子炉が高速中性子を使用して動作するように、前記一次容器には減速材がない、請求項1から10のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項12】
前記原子炉が熱中性子または熱外中性子を使用して動作するように、前記原子炉炉心が、少なくとも1つの減速材を収容する、請求項1から10のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項13】
前記固体核燃料が、核燃料集合体および/もしくはTRISOと呼ばれる燃料粒子、ならびに/またはプレートの別個のセル内に個別に収容された燃料ペレットである、請求項1から12のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項14】
前記固体核燃料が、劣化、好ましくは<5%の濃縮度の低濃縮、もしくは再処理(URT)二酸化ウラン(UO2)、および/もしく二酸化プルトニウム(PuO2)、または好ましくは5%と20%との間の濃縮度の濃縮ウランU235(UALEU、または高アッセイ低濃縮ウラン)をベースとする、請求項1から13のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項15】
前記一次容器内の制御棒または前記一次容器外の回転ドラムのいずれかによって構成される反応度制御システムを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【請求項16】
出力が20MWth未満である、請求項1から15のいずれか一項に記載の原子炉(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第4世代原子炉の一部である、高速原子炉(fast neutron reactors:FNR)と呼ばれる、1つまたは複数の溶融塩または液体金属冷却材、特に液体ナトリウムで冷却され固体燃料原子炉の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、通常状況および事故停止状況において公称熱と崩壊熱の両方の確実な除去を保証しながら、これらの原子炉のアーキテクチャを簡素化することに関する。
【0003】
本発明は、小型モジュール炉(small modular reactor:SMR)に適用され、より具体的には、典型的には20MWth未満の動作出力を有する超小型モジュール炉(micro modular reactor:MMR)に適用される。
【0004】
ここで、原子炉の崩壊熱は、核連鎖反応が停止した後に炉心によって生成される熱であり、主に核分裂生成物の崩壊エネルギーからなることが思い出されよう。
【0005】
崩壊熱は、公称熱の一部に対応し、時間の経過とともに減少する。いずれにせよ、熱除去システムのサイズを決定するために、通常の原子炉停止段階中、取り扱い段階中、および事故状況中にも考慮しなければならない。
【0006】
本発明は、1つまたは複数の溶融塩で冷却される原子炉を参照して説明されているが、原子炉の一次回路において冷却材として使用される、液体ナトリウムまたは鉛などの任意の他の液体金属で冷却される原子炉にも適用される。
【0007】
同様に、本発明は、高速中性子炉を参照して説明されているが、熱スペクトル原子炉または熱外スペクトル原子炉にも適用される。
【背景技術】
【0008】
高速中性子炉システムは、特に、プルトニウムストックの持続可能な管理と、熱中性子炉において回収することができないウランの同位体238のストックを回収する能力とを通じて、核燃料の改善された管理を可能にするために開発された。
【0009】
ウラン-プルトニウム増殖サイクルは、高エネルギー中性子によってのみ可能である。結果として生じる高速中性子スペクトルは、プルトニウムストックの持続可能な管理の鍵となり、軽水冷熱中性子炉の従来のシステムによって使用されないウラン238のストックを回収する可能性の鍵となる。
【0010】
固体燃料高速中性子炉は、物理的障壁(クラッド)を形成するバレルによる、固体燃料と冷却材との間の物理的分離に基づく。燃料自体は、目標動作温度において固体である材料(特に、核分裂性物質の酸化物、炭化ケイ素(SiC)、もしくは窒化物の形態、または直接金属合金の形態における)で構成される。
【0011】
オプションで、燃料と冷却材とを分離する物理的障壁は、
- 放射性物質の封じ込め、特に発生するガス状核分裂生成物の封じ込めを制御する安全機能という意味で封じ込め障壁として機能すること、
- 燃料および冷却材に対して異なる技術的構成と管理規程とを実装すること
を可能にする。
【0012】
この文脈において、主要な固体燃料高速中性子炉プロジェクトは、冷却材機能を実行するために液体金属またはガスを実装し、液体燃料を障壁によって冷却材から物理的に分離するというコンセプトを中心に開発された。
【0013】
液体ナトリウムまたは液体鉛で冷却されるFNR、または高温ガス冷却炉が挙げられ得る。
【0014】
ナトリウム(Na)で冷却されるFNRのシステム、特に、一体型原子炉、すなわち、一次ナトリウム回路が原子炉容器内に配置されたものは、最も成熟した技術である。フランス国内とフランス国外の両方のいくつかのFNR-Na原子炉の動作から得られたフィードバック[1]は、以下の利点、
- 核燃料の改善された使用、すなわち、すべての高速中性子炉に有効な、生成されるエネルギーの単位あたりの廃棄物の削減と、
- 炉心出口における最高550度のより高い平均冷却材温度のため、熱力学的効率が32~33%程度の加圧水型原子炉と比較して、約42%の改善された熱力学的効率と、
- 非常に高い熱伝導率を有する液体金属の使用による、燃料の非常に効率的な熱伝導および冷却と、
- 事故状況における崩壊熱除去(decay heat removal:DHR)に寄与する、一次回路における重要な自然対流と、
- 約100℃から880℃の周囲圧力における液体状態におけるかなり広い動作範囲による、一次回路における冷却材の加圧がないことと
を強調した。
【0015】
しかしながら、一体型FNR-Na原子炉は、以下の欠点、
- ナトリウムと水または空気との間の相互作用が発生した場合の発熱反応のリスクであり、
・厳格な密閉要件とともに、液体ナトリウムループ内の酸素量の厳格な管理と、
・放射線リスクと化学リスクとを分離するために、加圧水型原子炉と比較して、一次回路とエネルギー変換システムとの間に追加の二次ナトリウムループを有することと
を必要とするリスクと、
- 安全マージンにより炉心出口において動作温度を550℃に制限する原子炉の緊急停止デバイスの作動なしで、流れの損失または冷却の損失の事故が発生した場合の一次ナトリウムの沸騰のリスクと
を有する。
【0016】
鉛冷却炉(FNR-Pb)は、鉛の沸騰温度が約1750℃であるので、冷却材の沸騰マージンを高めながら、ナトリウムと水との間の発熱相互作用に関連するリスクを排除し、固体燃料によって高温熱を生成することを可能にする。
【0017】
それにもかかわらず、鉛冷却炉は、高温および非常に高い冷却材密度で悪化する構成要素のエロージョン/コロージョンの問題を有し、これは、500~550℃に制限された温度で動作することを必要とする[2]。
【0018】
他の2つの周知の原子炉技術は、本質的に、ナトリウムと水との間の発熱反応と、事故の場合における冷却材の沸騰とに関連するリスクを克服するか、少なくとも軽減することができ、固体燃料によって高温熱(>550℃)を生成することができる。
【0019】
これらは、ガス冷却高速炉(gas-cooled fast reactor:GFR)、超高温ガス炉(very high temperature gas reactor:VHTGR)、およびMSFRと呼ばれる溶融塩で冷却される固体燃料炉である。
【0020】
VHTGRは、その非常に高い熱慣性、低い出力密度、および非常に高い融解温度がナトリウム炉と比較して安全性を改善する固体燃料によって特徴付けられる。FR2956773B1または刊行物[3]を参照することができる。燃料を冷却するために加圧ガスが使用され、これは、事故の場合における液体冷却材沸騰に関連するリスクを回避することを可能にする。それに加えて、ガスを使用することは、構造材料が適合すれば、非常に高い温度まで、典型的には炉心出口において1000℃まで上昇させ、大幅な効率レベルを達成することを可能にする。冷却材として検討されてきたガスの中で、ヘリウムは、その熱的特性(他のガスよりも高い伝導率および比熱)およびその化学的慣性のため、しばしば主要な候補として選択されてきた。
【0021】
しかしながら、冷却材としてガス(ヘリウム)を有することは、以下の様々な欠点、
- 燃料の低い出力密度が、核燃料を収容する一次容器のボリュームの増加を必要とすること、
- ガスの熱伝達と施設の効率とを高めるために、一次回路の加圧が必要であること
を引き起こす。これは、一次容器の大きい寸法、すなわち、その壁圧の増加を必要とし、
- ヘリウムは、空気の3倍容易に固体障壁を貫通することができるので、使用するのが複雑な流体である[4]。したがって、VHTGRの動作中、ヘリウムストックの損失が考慮されなければならず、
- 今日まで、ヘリウムは、地球上であまり豊富ではなく、そのコストが高い材料であり[5]、
- 一次回路の減圧に関連する動作リスク
が存在する。
【0022】
液体金属またはガスを冷却材として使用することから結果として生じる問題を克服するために、液体塩を冷却材として使用することができる。
【0023】
冷却材として液体塩を使用し、約120MWthの低出力で非常にコンパクトな原子炉アーキテクチャが、刊行物[6]に記載されており、主に前記刊行物の
図1に示されている。
【0024】
液体塩冷却固体燃料炉のこのアーキテクチャは、上述したヘリウムの使用に関連する問題のすべてを解決する。刊行物[6]において言及されている動作温度は、約500~550℃であるが、塩の沸騰/解離温度は、沸騰のいかなるリスクもなしにより高い温度において動作することを可能にするように、十分に高い(>1000℃)。
【0025】
しかしながら、刊行物[6]による原子炉アーキテクチャは、以下の欠点、
- 原子炉の一次容器内の中間回路の存在であって、
・一次容器上のクロージャにおいてフィードスルーを有する必要性、およびボイラーの密封に関連する追加要件と、
・高速中性子スペクトル炉心の場合、出力ピークを引き起こす可能性がある、炉心へのガス泡の巻込みのリスクと、
・中間流体の潜在的な活性化と、
・より大きい容器サイズと、
・構成要素およびシステムの追加、ならびにより複雑な構成による、低下した全体的な信頼性と、
・より複雑であり、したがって、より長くおよび/またはよりコストのかかる建設可能性と
を含む、中間回路の存在、
- おそらくその製造を複雑にする、一次塩回路と二次塩回路との間の中間熱交換器の設置を可能にしなければならない一次容器内のレダン構造と、より一般的には、製造可能性および検査に関する規制上の制約を受け、それらの代替不可能な性質により、施設の耐用年数に影響を有する可能性がある代替不可能な一次容器内構造物、
- 通常「ダウンカマー」と呼ばれる一次容器内の冷却塩の下降流域は、中間熱交換器の挿入を可能にするのに十分な大きさでなければならない。液体塩は、約60W/mKの伝導率を有するナトリウムなどの液体金属と比較して、典型的には0.5から1W/mK程度の非常に低い熱伝導率を有する不十分な冷却材であるので、熱交換器は、必然的に大きい構成要素となる。しかしながら、大きい一次容器は、工場で製造し、輸送することがより困難である、
- 事故の場合に専用の崩壊熱除去(DHR)安全システムがないこと、
- 燃料の取り扱いは、不活性雰囲気中の原子炉クロージャを除去することによって行われ、これは、かなりの施設停止時間と、再稼働前の原子炉の密閉のチェックとを必要とする
を有する。
【0026】
したがって、特に、前述の欠点を克服するために、液体金属または液体塩を使用して冷却される固体燃料原子炉を改善する必要がある。
【0027】
一般に、以下の、
- 動作モードに応じて20MWth未満の出力範囲における一次回路における自然対流を用いる動作、
- 好ましくはコンパクトなパッシブシステムによって保証されるDHR機能、
- 周知の容器と比較した一次容器の内部構造の簡素化、
- 一次容器のフィードスルーの制限、
- 通常の原子炉動作中の熱除去機能の全体的な簡素化、
- 水および空気との発熱相互作用の化学的リスクのない大気圧における動作、
- 核物質にできるだけ近く、第3の封じ込め障壁機能を果たす放射性物質防護
のように定義することができる仕様のすべてのポイントに準拠することによって、液体金属または液体塩を使用して冷却される固体燃料原子炉の安全性を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】仏国特許発明第2956773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、この必要性/これらの必要性を少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
これを達成するために、本発明は、その態様の1つにおいて、液体金属または1つもしくは複数の溶融塩を使用して冷却される原子炉に関し、原子炉は、
- 原子炉の一次回路の冷却材として少なくとも1つの液体金属または少なくとも1つの不活性液体塩を使用する第1の冷却材で満たされた、中心軸(X)に関して軸対称の一次容器と呼ばれる容器であって、
・少なくとも1つのバレル内に収容された、固体状態における核燃料物質を含む集合体からなる炉心と、
・一次容器の軸と一致する中心軸を有するレダンを形成する構造体であって、原子炉の動作中に、液体金属または溶融塩冷却材が、核分裂反応が発生する原子炉炉心が内部に配置されている中央ゾーンの底部からループにおいて自然対流によって循環し、そこから加熱によって中央ゾーンの上面まで上昇し、そこで周辺ゾーンの底部に向けて下降するように周辺ゾーンの上面に向けてそらされ、そこで原子炉の炉心に向けてそらされるように、構造体が、一次容器の内部を中央ゾーンと周辺ゾーンとに分離するように一次容器内に配置された、構造体と
を備える、容器と、
- 一次容器の周囲に配置された、二次容器と呼ばれる容器と、
- 二次容器の周囲に配置された原子炉ピットと、
- 第1の冷却材を一次容器内に封入するための原子炉クロージャと、
- 通常動作中と、原子炉が停止している状況の両方において熱を除去するためのシステムであって、システムが、
・一次容器と二次容器との間に配置され、液体金属で満たされた一次容器のボリュームを定義するシェルと、
・第2の冷却材で満たされており、一次容器を通る伝導によって除去され、液体金属によってエネルギー変換システムおよび/または熱ネットワークに伝達される熱自体を除去することができる二次容器と呼ばれる閉回路と
を備える、システムと、
- 原子炉の事故状況において崩壊熱を除去する(DHR)システムであって、システムが、
・シェルと二次容器との間に区切られた空間の内側に配置された少なくとも1つの固液相変化材料(phase-change material:PCM)であって、PCMが、事故状況において炉心から放出される崩壊熱の少なくとも一部、好ましくはすべてを、所定の期間、潜熱によって蓄積しながら溶融することができる、少なくとも1つのPCM
含む、システムと
を備える。
【0031】
有利には、PCMのストックは、相変化に必要なエネルギー(潜熱)により、所定の3日間の持続時間中の炉心からの崩壊熱のすべてを吸収することを可能にする。したがって、液体状態における溶融塩の顕熱に関連するサイジングマージンが存在し、これは、沸騰するかなり前に追加の崩壊熱を吸収することを可能にし、したがって、介入前に3日間を超える猶予期間を残すことを可能にする。
【0032】
「顕熱」は、材料が所与の状態において相を変化させることなく吸収することができる熱を意味する。
【0033】
ここで、本発明の文脈において、「停止状況」は、通常の原子炉の停止を意味し、事故の場合の原子炉の停止(事故状況)を意味しないように与えられる。
【0034】
「不活性液体塩」は、いかなる核分裂性元素または増殖用要素も含まず、水または空気と化学反応しない液体塩冷却材を意味するように与えられる。
【0035】
有利には、シェルと二次容器との間のPCMの高さは、一次容器とシェルとの間の不活性液体塩の高さよりも大きい。これは、事故の場合に一次容器を通る液体塩冷却材の漏出が制限または防止されることを確実にする。同様に、好ましくは、一次容器とシェルとの間の液体金属の高さは、一次容器とシェルとの間の不活性液体塩の高さよりも大きい。
【0036】
1つの有利な構造変形例によれば、一次および二次容器ならびにシェルは、同心円状に配置された直円筒である。
【0037】
好ましくは、不活性液体塩は、放射性Cl36の形成を低減するためにオプションで塩素37が濃縮された塩素ベースの塩から選択され、より好ましくは、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、ZnCl2、またはそれらの混合物、特に、溶融塩混合物NaCl-MgCl2、NaCl-MgCl2-KCl、またはNaCl-MgCl2-KCl-ZnCl2から選択される。
【0038】
1つの有利な変形実施形態によれば、閉回路は、蛇行コイルを備え、その周囲には、好ましくは放熱フィンが設けられ、蛇行コイルは、一次容器とシェルとの間に、シェルの周囲を螺旋状に配置される。好ましくは、蛇行コイルは、特にシェルに溶接することで固定することができる。
【0039】
一次容器とシェルとの間の浴の液体金属は、有利には、[7]に開示されているように、アルミニウム合金、好ましくはA0850.0である。
【0040】
好ましくは、シェルと二次容器との間のPCMは、粉末の形態である。
【0041】
より好ましくは、シェルと二次容器との間のPCMは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金、好ましくはA0850.0から選択される。
【0042】
より好ましくは、一次容器は、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られる。
【0043】
より好ましくは、二次容器およびシェルは、計画された動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られる。
【0044】
本発明による原子炉は、熱スペクトル原子炉、熱外スペクトル原子炉、または高速中性子炉とすることができる。
【0045】
したがって、第1の代替案によれば、原子炉が高速中性子を使用して動作するように、一次容器には、減速材がない。
【0046】
第2の代替案によれば、原子炉が熱中性子または熱外中性子を使用して動作するように、原子炉炉心は、少なくとも1つの減速材を収容する。冷却材は、減速材(リチウムを含む塩化物塩、またはフッ化物塩)として有利に作用することができる。
【0047】
本発明の文脈において、「減速材」は、中性子を減速させることが可能な任意の材料を意味するように与えられる。通常の意味において、高速中性子の運動エネルギーは、1eVよりも大きいが、熱中性子の運動エネルギーは、1eV未満であり、典型的には0.025eV程度である。いくつかのタイプの原子炉の中性子束の熱中性子割合と高速中性子割合とを示す刊行物[8]、特に
図4を参照することができる。
【0048】
高速中性子炉の燃料集合体への減速材の挿入について記載しているFR3025650B1を参照することができる。
【0049】
1つの有利な実施形態によれば、固体核燃料は、核燃料集合体および/もしくはTRISOと呼ばれる燃料粒子、ならびに/またはプレートの別個のセル内に個別に収容された燃料ペレットである。
【0050】
固体核燃料は、劣化、好ましくは<5%の濃縮度の低濃縮、もしくは再処理(URT)二酸化ウラン(UO2)、および/もしく二酸化プルトニウム(PuO2)、または好ましくは5%と20%との間の濃縮度の濃縮ウランU235(UALEU、または高アッセイ低濃縮ウラン)をベースとすることができる。
【0051】
好ましくは、原子炉は、一次容器内の制御棒または一次容器外の回転ドラムのいずれかによって構成される反応度制御システムを備える。
【0052】
上記で説明した原子炉は、特に、20MWth未満の出力を有するように意図されている。
【0053】
したがって、本発明は、本質的に、
- 通常動作モードおよび事故動作モードにおける、原子炉の一次容器を通した、すなわち第2の封じ込め障壁を越える停止中の、一次回路内の自然対流による受動的のみの熱除去、
- 事件または事故が発生した場合の、炉心において生成され、一次容器によって除去される崩壊熱を蓄える1つまたは複数のPCMの存在により、コンパクトで、オペレータによる介入なしで、所定の期間、典型的には3日間の間、安全機能を実行することができる受動的崩壊熱除去システムの実装、
- 一次容器内の中間熱交換器の不在による、炉心へのガスの巻込みのリスクの大幅な低減、
○その信頼性と検査性とを改善し、
○施設の全体的な耐用年数を大幅に延長する一次構成要素の交換を可能にし、
○その構築可能性を簡素化し、
○安全性の実証を簡素化し、したがってより堅牢にするのに役立ち、
○すべてのメンテナンス動作と取り扱い動作、特に燃料の取り扱いを簡素化する、
- いかなるフィードスルーも用いず、熱除去流体回路を用いる、一次回路、原子炉ピット、および原子炉容器のアーキテクチャの簡素化、
- 一次容器の制限のみに由来する特異点のない極めて簡素化された第2の障壁、
- 一次回路の外側における閉回路で構成された熱交換器の位置による、第2の封じ込め障壁を越えて、簡素化された方法でメンテナンス動作および検査動作を実行する可能性
を同時に保証する、液体金属または溶融塩の一次容器冷却材を使用する固体燃料原子炉を製造することからなる。
【0054】
本発明の多くの利点のうちのいくつかは、
- 一次容器内の中間熱交換器の不在による圧力降下の減少による、通常/公称動作におけるおよび/または崩壊熱除去のための、数十MWthの熱出力を有する原子炉のための一次回路内の冷却材の受動的流れ、すなわち自然対流のみによる流れによる動作、
- 第2の封じ込め障壁(一次容器)のフィードスルーが、反応性制御デバイス、すなわち、クロージャを通る、したがって一次流体の液量を超えて一次容器の上部にあるフィードスルーである制御ロッドフィードスルーと、通常の計装デバイスとに限定されるので、改善された安全性
である。クロージャフィードスルーをさらに削減するために、一次容器の外側に、例えば、一次容器の周りを回転する中性子反射体の形態における容器反応性制御デバイスも想定することができ、
- 特異点を制限し、容器の耐用年数を長くすることを可能にする、熱除去のためのフィードスルーの不在による一次容器の設計の簡素化、
- 従来技術の解決策とは異なり、中間熱交換器を組み込む必要がもはやないので、機械的支持および油圧の点から、レダンを形成する構造体の簡素化、
- 中間回路の削除、
- 第2の障壁(一次容器)を越えた熱の除去による、閉じた二次回路内の流体のより幅広い選択、したがって、エネルギー回収方法のより幅広い選択
も想定することができる。例えば、加圧流体(ガスまたは超臨界CO2)を、安全性の実証において原子炉炉心へのガス泡の巻込みの影響を考慮しなければならないことのリスクなしで想定することができる。
【0055】
本発明の好ましい用途は、第4世代の小型原子炉、特に、ナトリウム、鉛、または液体塩を使用して冷却される原子炉である。
【0056】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の図を参照して非限定的な例示として与えられる本発明の例示的な実施形態の詳細な説明を読むことで、より明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】一次容器を介して停止の場合に公称熱および崩壊熱を除去するシステムと、事故状況において崩壊熱を除去するシステムとを有する、本発明による液体塩冷却原子炉の概略横断面図である。
【
図4】原子炉の二次閉回路の変形実施形態による
図3の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本出願全体を通して、「垂直」、「下部」、「上部」、「底部」、「上面」、「下方」、および「上方」という用語は、本発明による高速中性子原子炉の不活性液体塩で満たされ一次容器を、その垂直動作構成において参照して理解されるべきである。
【0059】
図1から
図4は、本発明による液体塩冷却高速中性子原子炉1を示す。
【0060】
そのような原子炉1は、一次塩Sと呼ばれる不活性液体塩で満たされ、燃料の核分裂によって熱エネルギーを発生する図示しない複数の燃料集合体が浸漬された炉心11を収容する一次容器10または原子炉容器を備える。
【0061】
したがって、不活性液体塩Sは、一次回路の冷却材であり、炉心11からの熱を蓄えて輸送し、一次容器10の壁を通して熱を交換する。一次塩は、炉心11の通常および事故時の動作温度範囲において、大気圧において液体状態に留まることを保証することを可能にする物理的および化学的特性を備えている。いかなる増殖用要素も核分裂性元素も含まないので、放射性の観点からは不活性であり、また、以下で詳細に説明するPCMおよび液体金属浴に対して、および原子炉のすべての構造体に対して化学的に不活性である。
【0062】
一次塩Sは、自然対流と、炉心11との熱交換および一次容器10の壁を介した熱交換とを促進するために、良好な熱的特性および物理的特性を有するように選択される。
【0063】
したがって、一次塩は、有利には、塩素37が濃縮されたNaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、またはZnCl2、またはその混合物、特に溶融塩混合物NaCl-MgCl2、NaCl-MgCl2-KCl、またはNaCl-MgCl2-KCl-ZnCl2から選択される。例えば、500℃未満の融点と、良好な熱容量(Cp)と、良好な熱膨張係数とを有するNaCl-KCl-MgCl2は、自然対流を改善するために有利である。
【0064】
固体核燃料は、劣化、好ましくは<5%の濃縮度の低濃縮、もしくは再処理(URT)二酸化ウラン、および/もしく二酸化プルトニウム(PuO2)、または好ましくは5%と20%との間で濃縮された濃縮ウランU235(UALEU、または高アッセイ低濃縮ウラン)をベースとすることができる。
【0065】
燃料集合体は、非常に高い温度に耐えるために、SiC燃料クラッドを備えることができる。燃料集合体のクラッドは、第1の封じ込め障壁を形成し、容器10は、炉心11内に含まれる放射性物質のための第2の封じ込め障壁を形成する。
【0066】
一次容器10は、一次回路の液体塩および内部構造物の重量を支持する。
【0067】
炉心11は、燃料集合体11の脚部が配置されたダイアグリッド12と呼ばれる溶接構造体によって支持される。
【0068】
炉心11は、中性子束が炉心内に保持されることを確実にすることを意図した周辺中性子反射体が設けられた分離バレル13によって取り囲まれる。炉心11のこの分離バレル13は、低温の一次塩と高温の一次塩とを分離することを可能にする。したがって、低温の一次塩は、一次容器内の炉心11を取り囲み、炉心11内を上向きに循環することによって加熱された高温の一次塩は、炉心の上部中央部分にある。
【0069】
典型的には、ダイアグリッド12は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られる。
【0070】
図示のように、一次容器10は、中心軸Xを有する直円筒である。典型的には、一次容器10は、高温における亀裂のリスクを防ぐために、好ましくは、非常に低いホウ素含有量を有するAISI 316Lステンレス鋼から作られる。その外表面は、好ましくは、崩壊熱除去段階中に外部への熱の放射を容易にするために実行される予備酸化処理によって高放射性にされる。一次容器10は、動作条件に応じて、ニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作ることもできる。
【0071】
原子炉容器10は、原子炉10の内部に配置された少なくとも1つのシェル14からなる分離構造によって、2つの異なるゾーンに分割される。この分離構造は、レダンとしても知られている。
【0072】
図3に示すように、中心軸Xを有するレダン14は、互いに溶接された3つのシェル140、141、142、すなわち、
- 直円筒の形状における上面シェル140、
- 円錐台の形状における中央シェル141、
- 直円筒の形状における、分離バレル13を取り囲む底部シェル142
を備えることができる。
【0073】
レダン14、およびより具体的には、その底部シェル142は、
図3に示すようにダイアグリッド12に溶接することができ、一次容器10の底部に配置されて溶接される。
【0074】
レダン14は、底部シェル142を貫通して作られた貫通開口部143をさらに備える。
【0075】
図1において矢印によって示すように、原子炉の動作中に、不活性液体塩が、原子炉炉心11が配置されている中央ゾーンの底部からループにおいて自然対流によって循環し、そこから加熱によって中央ゾーンの上面まで上昇し、そこで周辺ゾーンの底部に向けて下降するように周辺ゾーンの上面に向けてそらされ、そこで炉心11に向けてそらされるように、レダン14は、一次容器10の内部を中央ゾーンと周辺ゾーンとに分離する中央煙突を形成するように一次容器10内に配置される。
【0076】
典型的には、レダン14は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られる。
【0077】
有利には、
図3に示すように、不活性液体塩Sが底部に向けて下降するときに周辺ゾーンにおける不活性液体塩Sの流れ面積を減少させるために、レダン14は、その上面部分において、上面シェル140の周囲に配置されたデフレクタ144を備えることができる。これは、特に、通常は「ダウンカマー」と呼ばれるこの下降流ゾーンにおいて、液体塩Sの速度を上げることを可能にする。塩Sから一次容器10の壁への対流による熱伝達を有利に改善することも可能にする。
【0078】
レダン14の中央煙突形状は、液体塩Sの自然対流による循環を改善する。
【0079】
炉心ヘッドプラグと呼ばれる取外し可能なプラグ15は、炉心11の真上に配置され、液体塩Sを収容し、液体塩Sと外部環境との間の障壁として機能し、また、一次容器とともに、炉心11内に含まれる物質のための第2の封じ込め障壁を形成するために一次容器10を閉鎖する。
【0080】
一次容器10と同様に、炉心ヘッドプラグ15は、以下で詳細に説明するPCMおよび液体金属浴に対して、および原子炉のすべての構造体に対して化学的に不活性である。
【0081】
炉心ヘッドプラグ15には、制御棒16の構成要素のためのフィードスルー、ならびに図示しない炉心11および液体塩Sを制御および監視するための要素のためのフィードスルーが設けられる。したがって、炉心ヘッドプラグ15は、不活性雰囲気中で取り外すことができるプラグであり、このプラグは、炉心を監視するために必要なすべてのハンドリングシステムおよびすべての計装を搭載し、その数が炉心のタイプおよびその出力に依存する制御棒、ならびに熱電対および他の監視デバイスを備える。塩エアロゾルの堆積のリスクを制限するために、プラグの温度を維持するためのシステムが設けられる。
【0082】
典型的には、炉心ヘッドプラグ15は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作られる。また、典型的には、制御棒のために使用される材料は、B4Cである。
【0083】
一変形例において、プラグ15のフィードスルーを有利に排除し、したがって、塩エアロゾルに関連する焼付きのリスクを有利に排除するために、制御棒の代わりに、同様にB4Cから作られた回転ドラムを一次容器10の外側に配置することができる。
【0084】
原子炉容器10は、溶融塩液体燃料の上方に、アルゴンまたはヘリウムなどの不活性ガスで満たされた、通常カバーガスプレナムと呼ばれるプレナムを備える。このプレナムは、原子炉容器内の液体の液面が変化する際の液体の熱膨張を吸収し、燃料内の核分裂によって生成されたガス状核分裂生成物を回収することを可能にする。
【0085】
一次容器と外部環境Eとの間の支持、封じ込め、および断熱アセンブリが、一次容器10の周囲に配置される。
【0086】
より具体的には、
図1および
図3に示すように、このアセンブリ2は、原子炉ピット20を備え、原子炉ピット20内に、外側から内側に向かって、断熱材料の層21、二次容器22、および原子炉の一次容器10が挿入される。
【0087】
原子炉ピット20は、その内部のすべての構成要素の重量を支持する略円筒形の外形を有するブロックである。原子炉ピット20は、生物学的保護と外部攻撃に対する保護とを提供する機能を有し、低温を維持するために外部環境の冷却を提供する機能も有する。典型的には、原子炉ピット20は、コンクリートのブロックである。
【0088】
断熱材料の層21は、原子炉ピット20の断熱を確保する。典型的には、層21は、ポリウレタンまたはケイ酸塩ベースの発泡体から作られる。
【0089】
二次容器22は、一次容器10からの漏れの場合に液体塩Sが保持されることを保証し、原子炉ピット20を保護する。二次容器22は、固液相変化材料(PCM)のボリューム23も含む。
【0090】
好ましくは粉末の形態におけるPCMのボリューム23は、所定の持続時間の間、事故状況において炉心によって放出される崩壊熱の少なくとも一部を潜熱によって蓄えながら溶融することができる。したがって、PCMの物理的および化学的特性は、PCMが炉心の通常の動作温度範囲内では大気圧において固体状態のままであり、炉心11が事故状況に入ったときに、所定の持続時間の間、相を変化させることを保証することを可能にする。
【0091】
図2に示すように、PCMの総ボリューム23のストックは、一次容器10内の不活性液体塩Sの高さよりも高い高さHを確保することを可能にする。そのような高さは、一次容器10の壁において漏れが生じた場合に、一次容器10内にすべての一次塩Sを保持するのに役立つ。
【0092】
PCMは、液体金属浴および原子炉のすべての構造体に対して化学的に不活性である。
【0093】
典型的には、PCMは、純粋なアルミニウム合金、またはA0850.0アルミニウム合金である。変形例として、金属PCMは、塩PCM、例えばMgCl2に置き換えることができる。
【0094】
二次容器22は、原子炉ピット20に対向して位置し、その上面部は、原子炉クロージャ17に溶接される。
【0095】
典型的には、二次容器22は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作ることができる。
【0096】
炉心ヘッドプラグ15の周囲の環状の取外し可能なクロージャ24は、PCMのボリューム23を収容し、このボリューム23と外部環境Eとの間の障壁として機能するために、二次容器22を閉鎖する。
【0097】
二次容器22と同様に、クロージャ24は、以下で詳細に説明するPCMおよび液体金属浴に対して、および原子炉のすべての構造体に対して化学的に不活性である。
【0098】
クロージャ24には、図示しない、PCMのストックを制御および監視するための要素のためのフィードスルーが設けられ、第2の封じ込め障壁の密閉要件を満たす。取り扱い段階において、このクロージャの取り外しを必要とする動作は、不活性雰囲気中で行われなければならない。
【0099】
典型的には、クロージャ24は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作ることができる。
【0100】
原子炉1は、通常動作中と原子炉が停止する状況の両方で熱を除去するためのシステム3をさらに備える。
【0101】
このシステム3は、まず、一次容器10と二次容器22との間に同心円状に配置された円筒形シェル30を備える。
【0102】
したがって、このシェル30は、液体金属浴31で満たされた一次容器10とのボリュームを画定する。
【0103】
典型的には、シェル30は、動作条件に応じて、AISI 316Lステンレス鋼、またはニッケル基合金、または炭化ケイ素(SiC)から作ることができ、液体金属浴31およびPCMのボリューム23に化学的および機械的に耐えるように設計される。
【0104】
二次回路と呼ばれる閉回路32は、冷却材で満たされており、一次容器10を通る伝導によって除去され、液体金属浴31によって図示しないエネルギー変換システムおよび/または熱ネットワークに伝達される熱を除去することができる。
【0105】
したがって、液体金属浴31は、一次容器10から二次回路32への伝導による熱伝達を改善する。
【0106】
典型的には、液体金属浴は、好ましくはPCMとして使用されるA0850.0とは異なる化学組成を有する、液状のA0850.0アルミニウム合金から作られる。
【0107】
液体金属は、液体塩S、PCM、および原子炉のすべての構造体に対して化学的に不活性である。
【0108】
閉回路32は、好ましくは、一次容器10の周囲に螺旋状に配置され、好ましくはシェル30の内壁に溶接された蛇行コイルから構成される。
【0109】
蛇行コイル32は、一次容器10の直径に依存する直径と、求められる熱除去に必要な表面積を有するのに十分な高さとを有する。
【0110】
言い換えれば、蛇行コイル32を構成するこれらのターンの総数、間隔、および直径は、一次容器10の直径と原子炉炉心11の出力とに依存する。例えば、蛇行コイル32のターンのピッチは、10cmに等しくすることができ、これは、製造と液体金属浴による伝導熱吸収との間の良好な妥協点である。
【0111】
再び、例えば、圧力降下を最小限に抑え、パイプの接地面積を低減し、一次容器10に露出する表面積を最大にするように、蛇行コイル32の外径は、5から10cm程度とし、ターンピッチは、10から15cm程度とする。蛇行コイル32の厚さは、内部の液体金属およびその重量によって加えられる機械的応力に依存する。
【0112】
蛇行コイル32の材料は、良好な放射率特性を有していなければならない。典型的には、蛇行コイルの材料は、AISI 316Lステンレス鋼、フェライト鋼、およびニッケル基合金から選択される。この材料は、閉回路32において使用される内部流体に依存する。
【0113】
蛇行コイル32内を循環するこの内部冷却材は、良好な熱伝導体および熱媒体である化学的に安定した低粘度液体金属であり、回路3のすべての配管と化学的に適合し、150~600℃の温度間隔において自然対流または強制対流において動作することができる。典型的には、回路3の液体金属は、NaK合金、Pb-Bi合金、ナトリウム、または液体金属の三元合金のうちの1つなどから選択することができる。
【0114】
液体金属浴31と蛇行コイル32を形成するパイプとの間の熱交換を改善するために、蛇行コイルには、
図4に示すように、パイプから半径方向に延在する、特に直線形状の放熱フィン33を設けることができる。
【0115】
ここで、原子炉1の動作について、異なる通常の状況、計画停止状況、および事故状況に関して説明する。
【0116】
原子炉の通常動作中、炉心11の核分裂反応によって発生した熱のすべては、液体状態の塩Sが炉心を通過する際の熱交換によって、自然対流のみによって除去される。液体塩Sは、レダン14と一次容器10との間を落下する際に、一次容器10の壁を通してこの熱を交換する。次いで、この熱は、二次回路32によって熱ネットワークおよび/またはエネルギー変換システムに除去されるように、液体金属浴31によって伝達される。通常動作中、PCMのボリューム23は、固体状態のままである。
【0117】
オペレータによって引き起こされる計画停止の場合、同じ熱交換が行われる。停止した炉心11からの崩壊熱も、液体状態の不活性塩Sが炉心11を通過する際の熱交換によって、自然対流のみによって除去される。次いで、塩Sは、レダン14と一次容器10との間を落下する際に、一次容器10の壁を通してこの熱を交換する。次いで、この熱は、二次回路32によって熱ネットワークおよび/またはエネルギー変換システムに除去されるように、液体金属浴31によって伝達される。この計画停止中、PCMのボリューム23は、固体状態のままである。
【0118】
事故状況における動作中、特に、福島事故におけるような電力供給の完全な喪失に対応する全電源喪失(station blackout:SBO)の場合、停止した炉心11からの崩壊熱は、液体状態の塩Sが炉心を通過する際の熱交換によって、自然対流のみによって除去される。次いで、塩Sは、レダン14と一次容器10との間を落下する際に、一次容器10の壁を通してこの熱を交換する。この熱は、最初は固体であったPCMによって吸収され、PDMは、固体状態から液体状態に変化する。PCMのボリューム23のストックは、相変化に必要なエネルギー(潜熱)により、所定の持続時間の間、典型的には3日間、炉心からのすべての崩壊熱を吸収することを可能にする。
【0119】
本発明者らは、上記で説明したような原子炉1の実現可能性を実証し、その特徴的要素に関する桁数を提案するために、サイジング研究を実施した。
【0120】
実施された研究は、自然対流のみによる一次塩Sの循環を伴う、通常動作および事故動作における1~20MWth範囲をカバーしている。
【0121】
一次流体としての不活性液体塩Sの低温は、600℃に設定される。
【0122】
塩Sの液圧経路は、以下の表に示す分析研究によって決定される。熱出力範囲は、原子炉1が自然対流のみによって、すなわち、一次容器内のポンプまたは熱交換器なしで動作することを意図した範囲内で定義される。
【0123】
関連する特性を以下のTable 1(表1)にまとめた。
【0124】
【0125】
ここで、問題の塩の特性は、刊行物[11]に記載されている通りであることに留意されたい。
【0126】
1MWthと20MWthとの間の可変電力に対するこれらの入力データは、本発明者らによって、COPERNIC:[9]、[10]などの熱計算ソフトウェアを使用する予備計算に使用された。
【0127】
これらのサイジング計算は、以下のように2つの連続するステップに従って行われた。
【0128】
ステップ1/:熱流動に対して可能な限り低い抵抗を有する炉心構成が選択される。一次流体圧回路の総圧力降下を計算するために、第1の炉心サイジングが必要である。この計算の結果は、冷却材塩Sの自然対流のみによって流れを可能にするために循環が克服しなければならない抵抗負荷を形成する。
【0129】
ステップ2/:一次容器10内の自然対流のみによる一次塩Sの流れ、および一次容器10の壁を通る自然対流のみによって行われる熱伝達。
【0130】
ステップ1/において、核燃料ピン集合体を有する予備炉心設計が、1から20MWthの電力間隔に対して決定された。この計算において、Table 2(表2)において与えた物理量を適用することによって、液圧面積が最大化された。
【0131】
【0132】
Table 2(表2)における物理量を考慮すると、塩Sの流体圧流面積は、燃料の核分裂性高さ値と、炉心内の燃料ピンの数とによって最大化される。所与の流量に対する面積が大きいほど、炉心の圧力降下が減少するので、最大化された流体圧流面積を有することは、自然対流動作における流体の流れを改善する。
【0133】
炉心11の予備的なサイジング計算を、それぞれ10MWthおよび20MWthの熱出力についてTable 3(表3)にまとめている。
【0134】
問題の燃料集合体は、六角形のシースを有することに留意されたい。
【0135】
【0136】
Table 3(表3)の結果は、一次回路のサイジング計算のための入力データを与える。これは、一次塩Sによって運ばれる熱を除去するのに必要な一次容器10の内壁における温度差を決定する。
【0137】
原子炉の各熱出力値の動作点は、自然対流によって供給される駆動力に等しい圧力降下を適用することによって見出され、これは、
ΔP駆動力=ΔP液圧抵抗
【0138】
【0139】
と等価であり、ここで、
【0140】
【0141】
は、低温収集器内の塩と高温収集器(炉心出口)内の塩との間の密度の差であり、
【0142】
【0143】
は、重力定数であり、
H[m]は、一次容器10の高さであり、
fi[-]は、一次回路内の流体の流れによって濡れたすべてのエリアにおいて計算された壁摩擦係数であり、
【0144】
【0145】
は、流体の局所温度に応じて変化する一次塩Sの密度であり、
【0146】
【0147】
は、一次回路の異なる液圧面積における一次塩Sの速度であり、
Li[m]は、圧力降下によって特徴付けられる流体圧回路部分の長さであり、
Di[m]は、圧力降下によって特徴付けられる流体圧回路部分の等価直径である。
【0148】
この段階において、加速圧力降下および局所圧力降下は、考慮されない(サイジングのこの段階では不明であるので)。
【0149】
上記の式を解くことは、一次回路内の自然対流のみによる循環を開始することができる、レダン14によって区切られた高温流ゾーンと低温流ゾーンとの間の塩Sの温度差ΔTと、一次容器10の壁を通して発生する熱のすべてを除去するための最小温度差とを計算することを可能にする
【0150】
以下のTable 4(表4)は、上記の計算に基づく原子炉の動作計算の結果を示す。
【0151】
【0152】
Table 4(表4)の結果から、一次回路において、最大20MWthの熱出力について、自然対流のみによる(ポンプなしの)循環での動作が想定され、一次容器10の壁の温度が高温時の塩の平均温度よりも少なくとも171℃低ければ、一次容器の壁に熱を伝達することができるのに十分であることがわかり、これは、
Pth,PVの壁への伝達=SHsalt,wallΔTsalt,wall
であるからであり、ここで、
S[m2]は、一次塩Sによって濡れた一次容器10の内面積であり、
【0153】
【0154】
は、一次塩と一次容器10の内壁との間の熱伝達係数であり、
- ΔTsalt,wall[K]は、一次塩Sと一次容器10の内壁との間の温度差である。
【0155】
この温度差は、一次容器10の外側における蛇行コイル32内を流れる冷却材の温度を決定する。
【0156】
一次塩Sと一次容器10の内壁との間の温度差(ΔTsalt,wall)が大きいほど、蛇行コイル32内の冷却材の温度が低くなり、その結果、蛇行コイル32が接続されるエネルギー変換システムの電気変換効率の悪化を生じる。
【0157】
本発明は、今説明した例に限定されず、図示した例の特徴は、特に、図示していない変形例内で組み合わせることができる。
【0158】
本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変形例および実施形態を想定することができる。
【0159】
(参考文献)
[1]H.OHSHIMA et al.,“Handbook of Generation IV Nuclear Reactors”,chapter 5,Elsevier,2016.
[2]M.TARANTINO et al.,“Overview on Lead-Cooled Fast Reactor Design and Related Technologies Development in ENEA”,MDPI Energies,vol.14,p.5157,2021.
[3]M.A.FUTTERER et al.,“Status of the very high temperature reactor system”,Progress in Nuclear Energy,vol.77,pp.266-281,2014.
[4]GLENN D.CONSIDINE ed.,“Van Nostrand’s Encyclopedia of Chemistry”,Wiley-Interscience,5th edition,2005.
[5]A.H.O.H.U.Sverdrup,“Assessing the Past and Future Sustainability of Global Helium”,Biophysical Economics and Sustainability(2020),2020.
[6]L.LIN et al.,“Feasibility of an innovative long-life molten chloride-cooled reactor”,Nuclear Science and Techniques,vol.33,pp.1-15,2020.
[7]http://sme.vimaru.edu.vn/sites/sme.vimaru.edu.vn/files/volume_2_-_properties_and_selection_nonf.pdf
[8]Jiri Krepel et al.“Self-Sustaining Breeding in Advanced Reactors:Characterization of Selected Reactors”,Encyclopedia of Nuclear Energy 2021,Pages 801-819.https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780128197257001239?via%3Dihub
[9]F.MORIN et al.,“COPERNIC, A NEW TOOL BASED ON SIMPLIFIED CALCULATION METHODS FOR INNOVATIVE LWRs CONCEPTUAL DESIGN STUDIES”, ICAPP 2017 Conference,2017.
[10]P.GAUTHE et al.,“Innovative and inherently safe small SFR as a response to the dilemma’safety vs cost’”,ICAPP 2019 Conference,2019.
[11]Y.LI et al.,“Survey and evaluation of equations for thermophysical properties of binary/ternary eutectic salts from NaCl,KCl,MgCl2,CaCl2,ZnCl2 for heat transfer and thermal storage fluids in CSP”,Solar Energy,vol.152,pages 57-79,2017.
【符号の説明】
【0160】
1 液体塩冷却高速中性子原子炉、原子炉
2 アセンブリ
3 システム、回路
10 一次容器、容器、原子炉容器
11 炉心、燃料集合体、原子炉炉心
12 ダイアグリッド
13 分離バレル
14 シェル、レダン
15 取外し可能なプラグ、炉心ヘッドプラグ
17 原子炉クロージャ
20 原子炉ピット
21 断熱材料の層、層
22 二次容器
23 ボリューム、PCMのボリューム
24 環状の取外し可能なクロージャ、クロージャ
30 円筒形シェル、シェル
31 液体金属浴
32 閉回路、二次回路、蛇行コイル
33 放熱フィン
140 シェル、上面シェル
141 シェル、中央シェル
142 シェル、底部シェル
144 デフレクタ
【外国語明細書】