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特開2024-124396核酸分子を検出するための方法、キット及びカートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124396
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】核酸分子を検出するための方法、キット及びカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240905BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   G16B 30/00 20190101ALI20240905BHJP
   G16B 25/00 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12M1/00 A
G16B30/00
G16B25/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031732
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】63/449,284
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518210052
【氏名又は名称】體學生物科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Personal Genomics Taiwan, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】邱 創汎
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏樺
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR62
4B063QR66
4B063QR84
4B063QS15
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】検出ステップを簡素化し、検出時間を短縮し、検出精度を向上させながら、豊富な情報を提供可能な、核酸分子検出方法、キット及びカートリッジを提供する。
【解決手段】第1の捕捉プライマーを第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせて複合体を形成することと、新生鎖合成反応を実行して第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体を形成することと、第1の鋳型分子を解離することと、第1のシーケンスプライマーを解離した第1の鋳型分子にハイブリダイズさせて単一分子配列決定によって第1の鋳型分子を配列決定し、第1の生配列を取得することと、第1の生配列と第1の標的配列を比較して各第1の生配列の第1の配列類似度を算出することと、第1の配列類似度が所定の閾値に達する第1の生配列を収集して第1のクラスタを取得することと、第1のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して第1のコンセンサス配列を取得することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の標的核酸分子を含むサンプルを提供することと、
複数の第1の捕捉プライマーを前記複数の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、複数の第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体を形成することと、
新生鎖合成反応を実行して、複数の第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体を形成することと、
複数の第1の鋳型分子を解離することと、
複数の第1のシーケンスプライマーを解離した前記複数の第1の鋳型分子にハイブリダイズさせて、単一分子配列決定によって前記複数の第1の鋳型分子を配列決定して、複数の第1の生配列を取得することと、
前記複数の第1の生配列と第1の標的配列を比較して、各前記複数の第1の生配列の第1の配列類似度を算出することと、
第1の配列類似度が所定の閾値に達する複数の第1の生配列を収集して、第1のクラスタを取得することと、
前記第1のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して、第1のコンセンサス配列を取得すると、
を含み、
前記複数の第1の捕捉プライマーはリンカーを有し、前記リンカーは、配列決定チップ上で別のリンカーとペアリングされる、
核酸分子の検出方法。
【請求項2】
前記サンプルは未精製又は粗精製であり、複数の非標的核酸分子をさらに含み、前記複数の非標的核酸分子は、前記複数の第1の捕捉プライマー又は前記複数の第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズしない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の第1の標的核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅されない、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の第1の標的核酸分子は、DNA、mRNA、miRNA、又はminiRNAを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペアリング方法は、ビオチン-ストレプトアビジン結合、核酸ハイブリダイゼーション又は化学結合を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記前記複数の第1の鋳型分子は、一本鎖の直鎖核酸である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の第1の鋳型分子は、25から10,000のヌクレオチドを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体を形成した後、洗浄プロセス及び精製プロセスを実行すること、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の第1の鋳型分子を解離させた後、かつ、前記複数の第1のシーケンスプライマーを解離した前記複数の第1の鋳型分子にハイブリダイズさせる前に、解離した前記複数の第1の鋳型分子を配列決定チップ上に固定化すること、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の第1の捕捉プライマーを前記複数の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせる前に、前記複数の第1の捕捉プライマーを配列決定チップ上に固定化すること、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の第1の鋳型分子は、第1の末端及び第2の末端を含み、前記第1の末端は、前記第1の捕捉プライマーを含み、前記第2の末端は、前記複数の第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のコンセンサス配列中の各ヌクレオチドのエラーモード分布を算出して、前記複数の第1の標的核酸分子が変異を有するかどうかを判定すること、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記変異は、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド置換、遺伝子組換え及び/又はメチル化部位を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の閾値は、80%よりも大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルは、複数の第2の標的核酸分子をさらに含み、
前記方法はさらに、
複数の第2の捕捉プライマーを前記複数の第2の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、複数の第2の捕捉プライマー-第2の標的核酸分子複合体を形成することと、
新生鎖合成反応を実行して、複数の第2の鋳型分子‐第2の標的核酸分子複合体を形成することと、
複数の第2の鋳型分子を解離させることと、
複数の第2のシーケンスプライマーを解離した前記複数の第2の鋳型分子にハイブリダイズさせて、単一分子配列決定によって前記複数の第2の鋳型分子を配列決定して、複数の第2の生配列を取得することと、
複数の第2の生配列と第2の標的配列とを比較して、各前記複数の第2の生配列の第2の配列類似度を算出することと、
第2の配列類似度が所定の閾値に達する複数の第2の生配列を収集して第2のクラスタを取得することと、
前記第2のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して、第2のコンセンサス配列を取得することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の第1の標的核酸分子と前記複数の第2の標的核酸分子を同時に検出すること、
をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記クラスタ内の前記複数の第1の生配列の数をカウントし、前記複数の第1の標的核酸分子のコピー数及び発現量を決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法を使用して、サンプル中の複数の第1の標的核酸分子及び複数の第2の標的核酸分子を同時に検出し、
複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第2の捕捉プライマーの混合物、複数の第1のシーケンスプライマー及び複数の第2のシーケンスプライマーの混合物、新生鎖合成反応を実行するための第1の試薬、配列決定チップ及び単一分子配列決定用の第2の試薬を含む、
核酸分子の検出用のキット。
【請求項19】
前記捕捉プライマー及び前記シーケンスプライマーは事前に提供されず、代わりに、検出すべき前記複数の第1の標的核酸分子が確認された後、必要な複数の捕捉プライマー及び必要な複数のシーケンスプライマーがキットに追加される、
請求項18に記載のキット。
【請求項20】
請求項1に記載の方法を使用して、サンプル中の複数の第1の標的核酸分子及び複数の第2の標的核酸分子を同時に検出し、
検出中に前記サンプルを添加する第1のチャンバと、複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第2の捕捉プライマーの混合物と配列決定チップを含む第2のチャンバと、複数の第1のシーケンスプライマー及び複数の第2のシーケンスプライマーの混合物を含む第3のチャンバと、新生鎖合成反応を実行するための第1の試薬を含む第4のチャンバと、単一分子配列決定用の第2の試薬を含む第5のチャンバと、を含み、前記複数の第1の捕捉プライマー及び前記複数の第2の捕捉プライマーは、前記配列決定チップ上に固定化される、
核酸分子の検出用のカートリッジ。
【請求項21】
前記捕捉プライマー及び前記シーケンスプライマーは事前に提供されず、代わりに、検出すべき前記複数の第1の標的核酸分子が確認された後、必要な複数の捕捉プライマー及び必要な複数のシーケンスプライマーが前記チャンバに追加される、
請求項20に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本願は、提出済みの配列表を含む。XMLファイルで電子的に保存され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2024年3月1日に作成された前記XMLコピーは、131880-US-配列リストと名付けられ、サイズは6,189バイトである。
【0002】
本発明は、検出方法、検出キット及び検出カートリッジに関し、特に、核酸分子を検出するための方法、検出キット及び検出カートリッジに関する。
【背景技術】
【0003】
連続的単一分子配列決定技術(single molecule sequencing technologies)は、核酸増幅工程を必要とせずに、生の核酸分子の配列を直接読み取ることができる。単一分子配列決定のシークエンス速度は、1秒あたり5塩基に達し、単一塩基の読み取りに通常2分以上かかる次世代シークエンス(Next Generation Sequencing,NGS)よりも大幅に高速であるが、生のシークエンシングリードの読取精度は依然として課題であり、85%に達しているにすぎない。このレベルの精度では、多くの応用、特に医療診断やヘルスケアの分野では不十分である。
【0004】
シークエンスの精度を向上させる取り組みには、上流と下流の両方の手順の開発が含まれる。よく知られている方法の1つは、シーケンス用の環状鋳型の構築であり、これにより鋳型の繰り返しの読み取りおよび生のシークエンシングリード(raw reads)とのアライメント(alignment)を可能にして、より正確なコンセンサス結果を生成する。この環状鋳型法は、応用の要件を満たすためにシーケンスの精度を効果的に向上させることができるが、その複雑な操作手順と長い操作時間により、その適用性が制限される。単一分子シークエンシングの精度要件を満たし、その適用範囲を拡大するための、シンプルかつ迅速なプロトコルを開発することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、検出ステップを簡素化し、検出時間を短縮し、検出精度を向上させながら、豊富な情報を提供することのできる、核酸分子を検出するための方法、キット及びカートリッジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸分子を検出するための方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む。第1の標的核酸分子を含むサンプルを提供するステップと、第1の捕捉プライマーを第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体を形成することと、新生鎖合成反応を実行して、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体を形成することと、第1の鋳型分子を解離することと、第1のシーケンスプライマーを解離した第1の鋳型分子にハイブリダイズさせて、単一分子配列決定によって第1の鋳型分子を配列決定して、第1の生配列(生のリード配列)を取得することと、第1の生配列と第1の標的配列を比較して、各第1の生配列の第1の配列類似度を算出することと、第1の配列類似度が所定の閾値に達する第1の生配列を収集して、第1のクラスタを取得することと、第1のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して、第1のコンセンサス配列を取得することと、を含む。複数の第1の捕捉プライマーはリンカーを有し、リンカーは、配列決定チップ上で別のリンカーとペアリングされる。
【0007】
本発明の一実施形態において、サンプルは、未精製又は粗精製であり、複数の非標的核酸分子をさらに含み、複数の非標的核酸分子は、複数の第1の捕捉プライマー又は複数の第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズしない。
【0008】
本発明の一実施形態において、複数の第1の標的核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅されない。
【0009】
本発明の一実施形態において、複数の第1の標的核酸分子は、DNA、mRNA、miRNA、又はminiRNAを含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、ペアリング方法は、ビオチン-ストレプトアビジン結合、核酸ハイブリダイゼーション又は化学結合を含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、複数の第1の鋳型分子は、一本鎖の直鎖核酸である。
【0012】
本発明の一実施形態において、複数の第1の鋳型分子は、25から10,000のヌクレオチドを有する。
【0013】
本発明の一実施形態において、本方法はさらに、複数の第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体を形成した後、洗浄プロセス及び精製プロセスを実行することを含む。
【0014】
本発明の一実施形態において、本方法はさらに、複数の第1の鋳型分子を解離させた後、複数の第1のシーケンスプライマーを解離した複数の第1の鋳型分子にハイブリダイズさせる前に、解離した複数の第1の鋳型分子を配列決定チップ上に固定化することを含む。
【0015】
本発明の一実施形態において、本方法はさらに、複数の第1の捕捉プライマーを複数の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせる前に、複数の第1の捕捉プライマーを配列決定チップ上に固定化することを含む。
【0016】
本発明の一実施形態において、複数の第1の鋳型分子は、第1の末端及び第2の末端を含み、第1の末端は、第1の捕捉プライマーを含み、第2の末端は、複数の第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズされる。
【0017】
本発明の一実施形態において、本方法はさらに、第1のコンセンサス配列中の各ヌクレオチドのエラーモード分布を算出して、複数の第1の標的核酸分子が変異を有するかどうかを判定することを含む。
【0018】
本発明の一実施形態において、変異は、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド置換、遺伝子組換え及び/又はメチル化部位を含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、所定の閾値は、80%よりも大きい。
【0020】
本発明の一実施形態において、サンプルはさらに、複数の第2の標的核酸分子を含み、本方法はさらに、複数の第2の捕捉プライマーを複数の第2の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、複数の第2の捕捉プライマー-第2の標的核酸分子複合体を形成することと、新生鎖合成反応を実行して、複数の第2の鋳型分子‐第2の標的核酸分子複合体を形成することと、複数の第2の鋳型分子を解離させることと、複数の第2のシーケンスプライマーを解離した複数の第2の鋳型分子にハイブリダイズさせて、単一分子配列決定によって複数の第2の鋳型分子を配列決定して、複数の第2の生配列を取得することと、複数の第2の生配列と第2の標的配列とを比較して、各複数の第2の生配列の第2の配列類似度を算出することと、第2の配列類似度が所定の閾値に達する複数の第2の生配列を収集して、第2のクラスタを取得することと、第2のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して、第2のコンセンサス配列を取得することと、を含む。
【0021】
本発明の一実施形態において、本方法はさらに、複数の第1の標的核酸分子と複数の第2の標的核酸分子を同時に検出することを含む。
【0022】
本発明の一実施形態において、クラスタ内の複数の第1の生配列の数をカウントし、複数の第1の標的核酸分子のコピー数及び発現量を決定する。
【0023】
本発明は、核酸分子を検出するためのキットを提供する。キットは、前述の方法を使用して、サンプル中の複数の第1の標的核酸分子及び複数の第2の標的核酸分子を同時に検出する。キットは、複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第2の捕捉プライマーの混合物、複数の第1のシーケンスプライマー及び複数の第2のシーケンスプライマーの混合物、新生鎖合成反応を実行するための第1の試薬、配列決定チップ及び単一分子配列決定用の第2の試薬を含む。
【0024】
上述のキットにおいて、捕捉プライマーの混合物とシーケンスプライマーの混合物は、ユーザによって提供されても良い。
【0025】
本発明の一実施形態において、捕捉プライマー及びシーケンスプライマーは事前に提供されず、代わりに、検出すべき複数の第1の標的核酸分子が確認された後、必要な複数の捕捉プライマー及び必要な複数のシーケンスプライマーがキットに追加される。
【0026】
本発明は、核酸分子を検出するためのカートリッジを提供する。カートリッジは、前述の方法を使用して、サンプル内の複数の第1の標的核酸分子及び複数の第2の標的核酸分子を同時に検出する。カートリッジは、検出中にサンプルを添加する第1のチャンバと、複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第2の捕捉プライマーの混合物と配列決定チップを含む第2のチャンバと、複数の第1のシーケンスプライマー及び複数の第2のシーケンスプライマーの混合物を含む第3のチャンバと、新生鎖合成反応を実行するための第1の試薬を含む第4のチャンバと、単一分子配列決定用の第2の試薬を含む第5のチャンバと、を含む。複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第2の捕捉プライマーは、配列決定チップ上に固定化される。
【0027】
前述のカートリッジにおいて、捕捉プライマーの混合物及びシーケンスプライマーの混合物は、ユーザによって提供されても良い。
【0028】
本発明の一実施形態において、捕捉プライマー及びシーケンスプライマーは事前に提供されず、代わりに、検出される複数の第1の標的核酸分子が確認された後、必要な複数の捕捉プライマー及び必要な複数のシーケンスプライマーがカートリッジのチャンバに追加される。
【発明の効果】
【0029】
以上を踏まえ、本発明の一実施形態に係る核酸分子を検出するための方法、キット及びカートリッジでは、特定の一連のステップを使用することで、検出ステップが簡素化され、検出時間が短縮され、検出精度が向上する。特定の一連のステップは、少なくとも、まず、捕捉プライマーを未精製又は粗精製サンプル中の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、次に、新生鎖合成反応によって鋳型分子を取得し、次に、シーケンスプライマーを鋳型分子にハイブリダイズさせて、次に、単一分子配列決定により鋳型分子の生配列(original sequence)を取得し、次に、配列類似度が所定の閾値に達した生配列を分析して、コンセンサス配列を取得することを含む。本実施形態において、特定の一連のステップは、簡易な調製方法とバイオインフォマティクスを組み合わせたものである。簡易な調製方法では、単一分子シークエンシング中に標的核酸断片を読み取り、サンプル中の複数のゲノムにわたる核酸断片を読み取る。バイオインフォマティクスでは、個別に読み取られた各核酸断片から得られた低精度の生配列を組み立てて、応用要件を満たす高精度の結果を生成する。
【0030】
前述の内容をより理解しやすくするために、図面を参照していくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の例示的な実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
図1】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法のフローチャートである。
図2A】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2C】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2D】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2E】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2F】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2G】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2H】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図2I】本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。
図4A】配列類似度が所定の閾値に達する生配列を使用してコンセンサス配列を生成した結果を示す。
図4B】コンセンサス配列と参照配列とを比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法のフローチャートである。図2Aから図2I は、本発明の一実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。本実施形態における核酸分子の検出方法は、以下のステップを含んで良い。
【0033】
まず、まず、図1及び図2Aを同時に参照すると、ステップS1において、サンプルSが提供される。本実施形態において、サンプルSは、血液、細胞株、組織、微生物(ウイルス、細菌など)等の生体物質に由来するものであって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。サンプルSは、生体材料から抽出された未精製抽出物、生体材料から抽出され粗精製された粗精製抽出物、又は生体材料から抽出され精製された精製核酸分子であって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
本実施形態において、サンプルSは、複数の第1の標的核酸分子110及び複数の非標的核酸分子120を含んで良い。第1の標的核酸分子110は、後続の検出ステップで使用される第1の捕捉プライマー及び第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズされて良く、第1の標的配列と高い配列類似度を有し得る核酸分子として定義することができる。非標的核酸分子120は、第1の捕捉プライマー及び後続の検出ステップで使用される第1のシーケンスプライマーによってハイブリダイズされず、第1の標的配列と低い配列類似度を有し得る核酸分子として定義することができる。第1の標的配列は、既知の配列であって良く、第1の標的配列は、例えば、データベース(GenBank又はGenome Databaseなど)内の参照配列(reference sequence)であって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態において、本実施形態において、第1の標的核酸分子110はDNAであって良く、非標的核酸分子120もDNAであって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、第1の標的核酸分子は、さまざまな種類のRNA(mRNA、miRNA、又はminiRNAなど)又は他の種類のDNA(メチル化修飾を有するDNAなど)であっても良い。いくつかの実施形態において、非標的核酸分子は、さまざまな種類のRNA(mRNA、miRNA、又はminiRNAなど)又は他の形態のDNA(メチル化修飾を有するDNAなど)であっても良い。
【0035】
ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)によって増幅された核酸分子を検出に使用する一般的な検出方法と比較して、本実施形態で使用される第1の標的核酸分子110は、ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅されていない生の核酸分子であり、これにより検出された第1の標的核酸分子の配列が増幅によって歪むことが防止される。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅された核酸分子の配列は、通常、一定の確率でエラー(突然変異など)が発生し、そのエラー(突然変異)も連続的なポリメラーゼ連鎖反応によって増幅され、その結果、増幅された核酸分子の配列が歪む可能性がある。さらに、ポリメラーゼ連鎖反応を実行する場合、プライマーの特異性が低いために、非標的核酸分子が誤って増幅され、増幅された核酸分子の配列が歪む可能性がある。
【0036】
次に、図1及び図2Bを同時に参照すると、ステップS2において、第1の捕捉プライマー130は、第1の標的核酸分子110にハイブリダイズされて、第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体C1を形成する。本実施形態において、第1の捕捉プライマー130は、第1の標的核酸分子110と相補的な核酸配列を有するため、第1の捕捉プライマー130は、第1の標的核酸分子110にアニーリング(annealing)されて、第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体C1を形成することができる。第1の捕捉プライマー130は、例えば、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)であって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
本実施形態において、第1の捕捉プライマー130は、リンカー132を有する。リンカー132は、後続のステップで配列決定チップ200の他のリンカー210とペアリングするために使用されて良く、これにより、図2Fに示すように、リンカー132を他のリンカー210とペアリングすることによって、第1の捕捉プライマー130を配列決定チップ200上に固定化することができる。
【0038】
次に、図1及び図2Cを同時に参照すると、ステップS3では、新生鎖合成反応(nascent strand synthesizing reaction)を実行して、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2を形成する。具体的には、第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体C1が形成された後、第1の標的核酸分子110の核酸配列を鋳型として使用し、ポリメラーゼP1を使用して、適切なデオキシリボヌクレオシド三リン酸(deoxyribonucleoside triphosphate,dNTP)N1を第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体C1の第1の捕捉プライマー130の3’末端に順次接続し、新生鎖(つまり、第1の鋳型分子140)を含む第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2を形成する。
【0039】
いくつかの実施形態において、第1の標的核酸分子が各種RNA(mRNA、miRNA、又はminiRNAなど)の場合、ステップS3では、ポリメラーゼP1の代わりに逆転写酵素(reverse transcriptase)を使用して、新生鎖合成反応を実行する。逆転写酵素は、例えば、M-MLV RTaseであって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
次に、図1及び図2Dを同時に参照すると、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2を形成した後、洗浄プロセス及び精製プロセスが実行される。洗浄プロセスは、不純物(非標的核酸分子120、未反応の第1の捕捉プライマー130、ポリメラーゼP1、未反応のデオキシリボヌクレオシド三リン酸N1など)を除去するために用いることができ、精製プロセスは、第1の鋳型分子140の濃度を増加させるために使用することができ、それにより不純物によって引き起こされる干渉が低減され、後続の配列決定チップ上での第1の鋳型分子の固定化の効率を改善し、シークエンシングの効率を改善することができる。
【0041】
次に、図1及び図2Eを同時に参照すると、ステップS4において、第1の鋳型分子140が解離される。具体的には、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2が形成された後、加熱などの変性条件(denaturing condition)を使用して、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2中の第1の鋳型分子140を解離させ、解離した第1の鋳型分子140中のリンカー132を露出させる。本実施形態において、第1の鋳型分子140は、一本鎖の直鎖状の核酸であって良い。第1の鋳型分子140は、例えば、25~10,000のヌクレオチドを有するが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の鋳型分子140は、互いに対向する第1の末端141及び第2の末端142を含む。第1の末端141は、第1の捕捉プライマー130を含み、第2の末端142は、後続のステップで第1のシーケンスプライマー150によってハイブリダイズするために使用される。
【0042】
配列決定のために環状鋳型(環状核酸など)の準備に複雑なステップを必要とする一般的な検出方法と比較して、本実施形態において配列決定に使用される第1の鋳型分子140は一本鎖の直鎖状の核酸であるため、検出ステップが簡略化され、検出時間が短縮される。
【0043】
配列決定のために短い断片(例えば、1000ヌクレオチド未満)を有する鋳型分子を使用し、標的配列を組み換えるためにより多くの配列決定結果を提供する必要がある一般的な検出方法と比較して、本実施形態において配列決定に使用される第1の鋳型分子140は、最大10,000ヌクレオチドの長い断片であるため、標的配列の数十倍のサイズの配列決定結果を提供することなく標的配列を組み換えることができ、それにより検出ステップが簡略化され、検出時間が短縮される。
【0044】
次に、図1及び図2Fを同時に参照すると、ステップS5において、解離した第1の鋳型分子140は、配列決定チップ200上に固定化される。具体的には、第1の鋳型分子140は、第1の鋳型分子140のリンカー132と配列決定チップ200の他のリンカー210とのペアリングによって、配列決定チップ200上に固定化される。本実施形態において、リンカー132は、例えばビオチン(biotin)であって良く、他のリンカー210は、例えばストレプトアビジン(streptavidin)であって良い。リンカー132は、ビオチン-ストレプトアビジン結合(biotin-streptavidin binding)によって他のリンカー210とペアリングすることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、リンカーと他のリンカーはそれぞれビオチンとストレプトアビジンではなく、ペアリング方法は核酸ハイブリダイゼーション(nucleic acid hybridization)又は化学結合(chemical bonding)であっても良い。
【0045】
本実施形態において、第1の捕捉プライマー130を含む第1の鋳型分子140は、第1の鋳型分子140が解離した後、かつ、第1のシーケンスプライマー150が解離した第1の鋳型分子140にハイブリダイズされる前に、配列決定チップ200上に固定化されるが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、第1の捕捉プライマーは、第1の捕捉プライマーが第1の標的核酸分子にハイブリダイズされる前に配列決定チップ上に固定化されても良い。
【0046】
次に、図1及び図2Gを同時に参照すると、ステップS6において、第1のシーケンスプライマー150は、解離した第1の鋳型分子140にハイブリダイズされる。本実施形態において、解離した第1の鋳型分子140が配列決定チップ200上に固定化された後、任意で、別の洗浄プロセスを実行して、配列決定チップ200上に固定化されていない第1の鋳型分子140を除去し、その後、第1のシーケンスプライマー150を添加しても良い。本実施形態において、第1のシーケンスプライマー150は、第1の鋳型分子140と相補的な核酸配列を有するので、第1のシーケンスプライマー150は、第1の鋳型分子140にアニーリングされて、第1のシーケンスプライマー-第1の鋳型分子複合体C3を形成することができる。第1のシーケンスプライマー150は、例えば、オリゴヌクレオチドであって良いが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
次に、図1及び図2Hを同時に参照すると、ステップS6において、単一分子配列決定(single-molecule sequencing)によって第1の鋳型分子140を配列決定して、第1の生配列を取得する。具体的には、第1のシーケンスプライマー-第1の鋳型分子複合体C3が形成された後、第1の鋳型分子140の核酸配列を鋳型として使用し、及びポリメラーゼP2を使用して、適切な蛍光標識ヌクレオチド類似体(fluorescence-labelled nucleotide analog)N2を第1のシーケンスプライマー-第1の鋳型分子複合体C3の第1のシーケンスプライマー150の3’末端に順次接続し、図2Iに示すように、第1の鋳型分子140の核酸配列を配列決定し、第1の生配列160、161、162、163を取得することができる。
【0048】
次に、図1及び図2Iを同時に参照すると、ステップS7において、第1の生配列160、161、162、163は、第1の標的配列と比較されて、第1の生配列160、161、162、163の第1の配列類似度(sequence similarity)が算出される。例えば、第1の生配列160の第1の配列類似度は約65%であり、第1の生配列161の第1の配列類似度は約70%であり、第1の生配列162の第1の配列類似度は約79%であり、第1の生配列163の第1のシーケンス類似性は約88%である。第1の生配列160(又は第1の生配列161、又は第1の生配列162、又は第1の生配列163)における各生配列は、同一であっても異なっていても良い。
【0049】
次に、図1及び図2Iを同時に参照すると、ステップS8において、第1の配列類似度が所定の閾値に達しない第1の生配列160、161、162は除外され、第1の配列類似度が所定の閾値に達する第1の生配列163が収集されて、第1のクラスタ170が取得される。本実施形態において、所定の閾値は、後続のステップで取得される第1のコンセンサス配列180の精度を向上させるために、例えば80%より大きいが、本発明はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、所定の閾値は、後続のステップで取得される第1のコンセンサス配列180の精度をさらに向上させるために、80%、85%、又は95%より大きくても良い。いくつかの実施形態において、所定の閾値は、使用された単一分子配列決定法のエラー率に基づいて決定されて良い。例えば、単一分子配列決定法のエラー率が15%(すなわち、精度85%)である場合、所定の閾値は80%(85%-5%=80%)であって良い。
【0050】
次に、図1及び図2Iを同時に参照すると、ステップS9において、第1のクラスタ170は、高精度で第1のコンセンサス配列180を取得するために、バイオインフォマティクス(bioinformatics)によって分析される。
【0051】
ハイブリダイゼーションプローブのみで核酸分子を同定するために誤判定が起こりやすい一般的な検出法と比べ、本実施形態は、単一分子配列決定及びバイオインフォマティクスを使用して、収集された第1の鋳型分子140の第1の生配列が第1の標的核酸分子に由来することを保証し、それにより誤判定の可能性を低減し、検出精度を向上させる。例えば、非標的核酸分子が第1の捕捉プライマー130によって誤って捕捉され、第1のシーケンスプライマー150によって誤ってハイブリダイズされ、シーケンスされて生配列が取得された場合、単一分子配列決定及びバイオインフォマティクスを使用することで、生配列が標的核酸分子ではなく非標的核酸分子に由来することが明確に分かり(つまり、非標的核酸分子に由来する生配列の配列類似度は80%未満であることが分かる)、それにより非標的核酸分子に由来する生配列が除外される。
【0052】
次に、図1を参照すると、ステップS10において、第1のコンセンサス配列180内の各ヌクレオチドのエラーモード分布(error mode distribution)を算出して、第1の標的核酸分子が変異(variant)又は突然変異(mutation)を有するかどうかを判定する。具体的には、第1のコンセンサス配列180の各ヌクレオチドが、第1のクラスタ170の各第1の生配列163の対応する各ヌクレオチドと同じであるか異なるかをアライメントして確認し、次に、第1のコンセンサス配列180中の各ヌクレオチドのエラーモード分布を算出する。
【0053】
配列決定のサンプル内で複数の種類の突然変異を含む標的核酸断片に遭遇した場合、コンセンサス配列を生成し、その配列情報を分析することで、特定の突然変異の種類とその頻度を検出して決定することができる。
【0054】
単一分子配列決定技術では、所定の確率でランダムなエラーが発生する。エラー確率はシステムに相関しており、各配列決定プラットフォームは、一貫したエラー確率の分布を生成する。
【0055】
以下、多型(polymorphisms)の検出とそれぞれの比率の推定を示す包括的な例を提供する。
【0056】
単一分子配列決定プラットフォームの精度が90%、各塩基読み取りのエラー率が10%であると仮定する。エラーモードとその確率は次のように分類される。N(正確な読み取り)90%、E1、E2、E3(塩基を他の3つの塩基のいずれかと誤って読み取る)それぞれ2%、O(塩基をスキップして読み取らない)4%である。これらのパーセンテージは、各エラーモードが発生する可能性を示す。
【0057】
1つのクラスタ内に1000個の生配列リードが集まっていると仮定する。いかなる種類の特別変異も有さないサンプルの場合、読み取られる分子の102位の塩基が「A」であると仮定する。したがって、クラスタ内の1000個の生のリードのうち、102位の結果は、約900回の「A」、約20回の「T」、約20回の「C」、約20回の「G」、及び約40回の「O」(スキップされた塩基)を含み、これは、「A」が1000 x 90% = 900の計算から求めることができる。したがって、102位の読み取り結果(エラーモード分布)は、約(A 900、T 20、C 20、G 20、O 40)となる。
【0058】
ここで、サンプルが102位に一塩基多型を示し、「A」型が75%、「T」型が25%であると仮定する。捕捉プライマーがサンプル断片にランダムに、各多型について等しい確率でハイブリダイズすると仮定すると、結果として得られるクラスタ内の生のリードは、「A」及び「T」多型を75%対25%の比率で反映する。
【0059】
その結果、クラスタ内の1000個の生のリードのうち、約750個は「A」多型に由来し、約250個は「T」に由来する。750個の「A」型では、約(A 675、T 15、C 15、G 15、O 30)の結果が得られる。250個の「T」型では、約(A 5、T 225、C 5、G 5、O 10)の結果が得られる。これらの結果の合計エラーモード分布(summation error mode distribution)は、約(A 680、T 240、C 20、G 20、O 40)である。
【0060】
この合計エラーモード分布分布結果を、多型が欠如している(約A 900、T 20、C 20、G 20、O 40)場合と比較すると、「A」多型と「T」多型の両方がサンプル中に共存していることがはっきりと分かる。これらの多型タイプの推定比率は、「A」の場合は約73.9%(680/(680+240))、「T」の場合は26.1%(240/(680+240))であり、想定される比率75%対25%とほぼ一致する。
【0061】
前述したように、エラーモードとその確率分布は、単一分子配列決定プラットフォームによって異なる可能性があることに注意することが重要である。ただし、前述の方法論は、なおもすべてのプラットフォームに適用することができる。
【0062】
多型検出の感度と精度は、クラスタ内で収集された生配列リードの量とともに増加する。例えば、1000の生のリードのクラスタでは、5%という低いレベルで存在する多型を検出ですることができる。10,000個の生のリードのクラスタでは、多型検出の感度は約0.5%に増加する。
【0063】
本方法では、挿入、欠失、置換などのさまざまなタイプの多型を検出することができる。さらに、単一のアッセイで複数の多型位置を同定することができる。
【0064】
本方法を使用した配列決定の対象となる試験断片は、最初に捕捉プライマーによって補足された断片であり、配列の相補性を示す。続いて、これらの断片は、正常にシーケンスプライマーとハイブリダイズし、結果として得られる配列決定されたリードの参照配列に対する類似性は、所定の閾値を満たさなければならない。このプロセスにより、テストサンプル内で確実に標的を検出することができる。配列決定標的と参照配列間の配列の不一致は、多型の存在を示す。さらに、配列リードで検出された多型の比率は、テストサンプルに存在する多型の比率を正確に反映している。
【0065】
鋳型分子は、サンプル中の捕捉プライマーと相補的標的核酸分子間のハイブリダイゼーション後にのみ生成され、生配列は、鋳型分子を取得した後にのみ生成されるため、クラスタ内の生配列の数は、サンプル内の標的核酸分子の数に比例するはずである。検出される標的核酸分子がmRNAの場合、生配列の数は、遺伝子の発現量に比例するはずである。つまり、本実施形態の方法は、複数の遺伝子の数、濃度、発現量を同時に検出することができる。
【0066】
本方法を利用すると、試験サンプル内に存在する特定の遺伝子のコピー数を効果的に測定することができる。例えば、サンプルAとサンプルBはどちらも、同じサンプル量、手順、及び同じ単一分子配列条件を使用した方法により、同じ標的断片が検出される。サンプルAがクラスタ内の100個の適格な生配列のリードを収集し、サンプルBが500個の適格な生配列のリードを収集した場合、サンプルBにはサンプルAよりも多くの標的DNA分子が含まれていると言える。
【0067】
さらに、遺伝子発現量は、RNAサンプルを配列決定材料として使用して取得することができる。例えば、サンプル中の遺伝子Aと遺伝子Bの両方のRNAが本方法で検査される。遺伝子A収集されたクラスタは2000個の適格な生配列を有し、遺伝子Bは30個の適格な生配列を有する。次に、適格な生配列の数(この場合は2000~30)によって、遺伝子Aと遺伝子Bの相対的な発現量を算出することができる。この方法により、単一分子配列決定技術の複雑で時間のかかるプロセスを簡素化し、迅速化することができ、それにより、生物学的プロセスと疾患メカニズムの理解と対処への適用範囲を拡大することができる。
【0068】
本実施形態における核酸分子の検出方法は、サンプル中に第1の標的核酸分子が存在するか否か、第1の標的核酸分子の数、第1の標的核酸分子に変異があるか否か、第1の標的核酸分子における変異の割合及び種類を検出することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1のクラスタ内の第1の生配列の数を使用して、サンプル中の第1の標的核酸分子の数を推定することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、第1の標的核酸分子がメチル化修飾を有するDNAである場合、第1の標的核酸分子の一部を直接配列決定することができ、第1の標的核酸分子の他の部分は、まず重亜硫酸塩(bisulfite)によって変換され、その後配列決定することができる。いくつかの実施形態において、第1の標的核酸分子がメチル化修飾されたDNAである場合、第1の標的核酸分子の一部と重亜硫酸塩により変換された第1の標的核酸分子の他の部分とをまず混合し、その後配列決定しても良い。
【0070】
いくつかの実施形態において、サンプルは、第1の標的核酸分子とは異なる核酸配列を有する複数の第2の標的核酸分子をさらに含んでも良く、本方法は、さらに以下のステップを含んで良い。複数の第2の捕捉プライマーを複数の第2の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、複数の第2の捕捉プライマー-第2の標的核酸分子複合体を形成することと、新生鎖合成反応を実行して、複数の第2の鋳型分子‐第2の標的核酸分子複合体を形成することと、複数の第2の鋳型分子を解離させることと、複数の第2の鋳型分子を配列決定チップ上に固定化することと、複数の第2のシーケンスプライマーを解離した複数の第2の鋳型分子にハイブリダイズさせて、単一分子配列決定によって複数の第2の鋳型分子を配列決定して、複数の第2の生配列を取得することと、複数の第2の生配列と第2の標的配列とを比較して、各複数の第2の生配列の第2の配列類似度を算出することと、第2の配列類似度が所定の閾値に達する複数の第2の生配列を収集して第2のクラスタを取得することと、第2のクラスタをバイオインフォマティクスによって分析して、第2のコンセンサス配列を取得することと、を含む。つまり、いくつかの実施形態において、本方法は、サンプル中の第1の標的核酸分子と第2の標的核酸分子を同時に検出するために使用されて良い。いくつかの実施形態において、本方法は、同じサンプルから2つ以上の異なる標的核酸分子を同時に検出するために使用することもでき、これにより、本方法は多重検出(multiplex detection)又は多重アッセイ(multiplex assay)の効果を有することができる。
【0071】
本実施形態における核酸分子検出用のキット(図示せず)は、上記方法を利用して、サンプルS中の複数の第1の標的核酸分子110及び複数の第2の標的核酸分子を同時に検出することができる。キットは、複数の第1の捕捉プライマー130と複数の第2の捕捉プライマーの混合物、複数の第1のシーケンスプライマー150と複数の第2のシーケンスプライマーの混合物、新生鎖合成反応の実行に用いられる第1の試薬(ポリメラーゼP1やデオキシリボヌクレオシド三リン酸N1など)、配列決定チップ200、及び単一分子配列決定の実行に用いられる第2の試薬(ポリメラーゼP2や蛍光標識ヌクレオチド類似体N2など)を含んで良い。複数の第1の標的核酸分子110及び複数の第2の標的核酸分子は、それぞれ異なる核酸配列を有する。本実施形態における核酸分子検出用のキットは、複数のタイプの標的核酸分子(第1の標的核酸分子110や第2の標的核酸分子などであるが、本発明はこれに限定されるものではない)を同時に検出することができ、多重検出又は多重アッセイの効果を有する。
【0072】
本実施形態における核酸分子検出用のカートリッジ(図示せず)は、上記方法を利用して、サンプルS中の複数の第1の標的核酸分子110と複数の第2標的核酸分子を同時に検出することができる。カートリッジは、検出中にサンプルSを添加するための第1のチャンバと、複数の第1の捕捉プライマー130及び複数の第2の捕捉プライマー及びの混合物と配列決定チップ200を含む第2のチャンバと、複数の第1のシーケンスプライマー150と複数の第2のシーケンスプライマーの混合物を含む第3のチャンバと、新生鎖合成反応を実行するための第1の試薬(ポリメラーゼP1やデオキシリボヌクレオシド三リン酸N1など)を含む第4のチャンバと、単一分子配列決定を実行するための第2の試薬(ポリメラーゼP2や蛍光標識ヌクレオチド類似体N2など)を含む第5のチャンバと、を含み、複数の第1の捕捉プライマー130及び複数の第2の捕捉プライマーは、配列決定チップ200上に固定化される。複数の第1の標的核酸分子110及び複数の第2の標的核酸分子は、それぞれ異なる核酸配列を有する。本実施形態における核酸分子検出用のカートリッジは、複数のタイプの標的核酸分子(s第1の標的核酸分子110や第2の標的核酸分子などであるが、本発明はこれに限定されるものではない)を同時に検出することができ、多重検出又は多重アッセイの効果を有する。
【0073】
核酸分子の検出用のカートリッジに係るいくつかの実施形態において、複数の第1の捕捉プライマー及び複数の第1のシーケンスプライマーは、それぞれ第2のチャンバ及び第3のチャンバに事前に添加されなくても良い。代わりに、最初に検出すべき第1の標的核酸分子が確認された後、必要な複数の第1の捕捉プライマー及び必要な複数の第1のシーケンスプライマーは、検出中に第2のチャンバ及び第3のチャンバに添加されても良い(カスタマイズアッセイ)。
【0074】
他の実施形態が提供され、以下に説明される。なお、上記実施形態の符号及び説明の一部は、以下の実施形態にも適用される。なお、同一又は類似の構成要素には同一の符号を付し、同一の技術内容の説明は省略する。省略された内容の説明については、上記の実施形態を参照することができ、以下の実施形態では繰り返さない。
【0075】
図3は、本発明の別の実施形態に係る核酸分子の検出方法の概略図である。図3は、図2に続き、図2Cと置換されるステップである。同一の材料または方法を図3の実施形態および図2Aから図2Iの実施形態の同一又は類似の構成要素に適用することができるので、以下では、2つの実施形態において同一又は類似の説明は省略し、2つの実施形態の相違点を中心に説明する。
【0076】
具体的には、図3を参照すると、図2Cと類似のステップに従い、新生鎖合成反応を実行して、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2bを形成する。ただし、本実施形態で使用する第1の標的核酸分子の量は検出に十分ではない可能性があるため、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2bを形成した後、線形増幅(linear amplification)を行うことにより、第1の鋳型分子の数を増やすことができ、検出感度を向上させることができる。
【0077】
本実施形態において、線形増幅では、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応(asymmetric PCR)を使用して、初期鎖合成反応のサイクルを複数回実行する。各サイクルは、以下のステップを含んで良い。まず、加熱により、第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体C2b中の第1の鋳型分子140と第1の標的核酸分子110bを解離し、次に、未反応の第1の捕捉プライマー130を解離した第1の標的核酸分子110bにアニーリングさせ、次に、ポリメラーゼP1とデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)N1を用いて、新生鎖合成反応を実行する。
【0078】
従来のポリメラーゼ連鎖反応(conventional PCR)により指数関数的に増幅される(exponential amplification)鋳型分子を検出に用いる一般的な検出方法と比較して、本実施形態では、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応により直線的に増幅される第1の鋳型分子を用いて直線的に増幅して検出し、それにより検出される第1の鋳型分子の配列が指数関数的増幅により歪むことが防止される。例えば、従来のポリメラーゼ連鎖反応によって指数関数的に増幅された鋳型分子の配列には、通常、一定の確率でエラー(突然変異など)が発生し、このエラー(突然変異)は、従来のポリメラーゼ連鎖反応の継続によって指数関数的に増幅され、その結果、指数関数的に増幅された鋳型分子の配列に歪みが生じる可能性がある。
【0079】
以下、上記実施形態における核酸分子の検出方法を実験例を挙げて詳細に説明する。ただし、以下の実験例は本発明を限定するものではない。
【0080】
[実験例1] ウイルスの検出
【0081】
ウイルス SARS-CoV-2 のS遺伝子(S gene)の突然変異により、懸念される複数の変異株(variants of concern,VOC)が出現し、感染が継続する可能性がある。したがって、新しいウイルスの亜種を迅速に検出できる方法の開発が急務となっている。
【0082】
本実験例では、まず、ビオチンを含む捕捉プライマー(Biotin-S-VOC-F)及びシーケンスプライマー(S-VOC-R)を設計した。ビオチンを含む捕捉プライマー(Biotin-S-VOC-F)の核酸配列は、5'-TTGGAACAGGAAGAGAATCAGC-3' (SEQ ID NO: 1)であり、シーケンスプライマー(S-VOC-R)の核酸配列は、5'-TGACACCACCAAAAGAACATGG-3' (SEQ ID NO: 2)である。ビオチンを含む捕捉プライマー(Biotin-S-VOC-F)及びシーケンスプライマー(S-VOC-R)を使用して、S遺伝子内のSタンパク質のアミノ酸360位からアミノ酸588位をコードする核酸配列を検出することができる。Sタンパク質のアミノ酸360~588位は、Sタンパク質の最も重要な突然変異が発生する受容体結合ドメイン(receptor-binding domain,RBD)に位置している。
【0083】
次に、陽性の鼻咽頭ぬぐい液サンプル(positive nasopharyngeal swab samples)から採取したウイルスからRNAを抽出した後、上記図1のフローチャート及び図2Aから図2Iの概略図に従ってウイルス中のRNAを検出することにより、ウイルスが既知のウイルス株であるか、新しいウイルス変異株であるかを迅速に識別する。
【0084】
[実験例2] 細菌の検出
【0085】
敗血症の治療では、通常、適切な抗生物質を使用して病原菌を殺すことができるように、血液中の病原菌を特定する必要がある。現在、血液中の病原菌を同定する臨床手法は、主に細菌培養と分子診断(PCRなど)である。しかしながら、細菌の培養には時間がかかり(少なくとも24時間から 72時間)、一部の細菌は培養が容易ではない。PCRを用いた分子診断では、偽陽性結果(false positive result)(予期せぬ核酸分子が増幅されるなど)や偽陰性結果(false negative result)(プライマーがアニーリングするはずの核酸分子に変異が生じるなど)が生じることが良くある。
【0086】
本実験例では、まず、ビオチンを含む捕捉プライマー(16S-F)及びシーケンスプライマー(16S-R)を設計した。ビオチンを含む捕捉プライマー(16S-F)の核酸配列は、5'-CAGACTCCTACGGGGAGGCAGCAGT-3' (SEQ ID NO: 3)であり、シーケンスプライマー(16S-R)の核酸配列は、5'-ACTTAACCCAACATCTCACGACAC-3' (SEQ ID NO: 4)である。ビオチンを含む捕捉プライマー(16S-F)及びシーケンスプライマー(16S-R)を使用して、細菌の16S rRNA遺伝子の保存領域(conserved region)にある762ヌクレオチドを有する核酸分子を検出することができる。
【0087】
次に、患者の血液から採取した細菌からDNAを抽出した後、図1のフローチャート及び図2Aから図2Iの概略図に従ってDNAを検出し、病原菌の種類を迅速に特定する。
【0088】
[実験例3] ヒト白血球抗原遺伝子の検出
【0089】
ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen,HLA)遺伝子によってコードされる主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex,MHC)は、免疫応答及び薬物過敏症反応の重要な調節因子である。近年、ヒト白血球抗原遺伝子の遺伝子型解析は、主要組織適合性複合体の抗原提示(antigen presentation)と免疫認識(immune recognition)を理解するために使用されており、これを利用して個別化免疫療法(personalized immunotherapy)の開発を促進し、それにより患者の治療結果を改善することができる可能性がある。通常、染色体の対では、一方の染色体上のHLA遺伝子座の対立遺伝子型は、もう一方の染色体上のHLA遺伝子座の対立遺伝子型と異なり、2つの異なる対立遺伝子型間の配列の違いは4%未満である。ここで、各対立遺伝子タイプのHLA遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DRB1、HLA-DQB1、HLA-DPB1、HLA-DQA1などの複数の異なる遺伝子型(genotyping)を含んで良い。
【0090】
本実験例では、まず、HLA-A 遺伝子(GenBank: OQ104609.1)の参照配列に基づいて、ビオチンを含む捕捉プライマー(HLA-A_F-267)及びシーケンスプライマー(HLA-A_R-592)を設計した。ビオチンを含む捕捉プライマー(HLA-A_F-267)の核酸配列は、5'-CCACCGGGACTCAGATTCTC-3' (SEQ ID NO: 5)であり、シーケンスプライマー(HLA-A_R-592)の核酸配列は、5'-TGTCGTCCACGTAGCCCAC-3' (SEQ ID NO: 6)である。ビオチンを含む捕捉プライマー(HLA-A_F-267)及びシーケンスプライマー(HLA-A_R-592)を使用して、一塩基多型(single nucleotide polymorphism,SNP)を有さないHLA-A遺伝子の保存領域にある325位のヌクレオチドを有する核酸分子を検出するために使用することができる。
【0091】
次に、ゲノムDNAを抽出した後、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、鋳型分子の数を増幅した。具体的には、1μgのゲノムDNA、0.5μMの捕捉プライマー(HLA-A_F-267)、及び0.005μM増幅プライマーを用いて、50μlの反応溶液中で、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応を実行した。非対称的非対称的的ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル条件は、98℃30秒、(98℃10秒、60℃10秒、72℃10秒)を35サイクル、72℃60秒とした。非対称的非対称的的ポリメラーゼ連鎖反応の反応時間は、約33分から42分である。
【0092】
次に、ポリメラーゼ連鎖反応を実行した後、スピンカラム(spin column)を使用して、未反応の捕捉プライマー(HLA-A_F-267)を除去し、増幅された鋳型分子を精製した。
【0093】
次に、図1のフローチャート及び図2Aから図2Iの概略図に従ってHLA-A遺伝子を検出した。具体的には、本実験例における単一分子配列決定の実行方法は、以下のステップを含む。50μlの10nMストレプトアビジンをカバースリップ上に適用し、30分間反応させて、ストレプトアビジンでコーティングされたカバースリップを取得した。次に、ストレプトアビジンでコーティングされたカバースリップを緩衝液(50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MgOAc、及び1mM DTTを含む)で3回洗浄する。次に、20μlの100nM鋳型分子「ビオチン-HLAA-325」をストレプトアビジンでコーティングされたカバースリップ上に固定化する。次に、鋳型分子を固定化したカバースリップを加熱プレート上に置き、20μlの100nMシーケンスプライマー(HLA-A_R-592)を添加して、カバースリップ上の鋳型分子とアニーリングした。5分間の反応後、ポリメラーゼ及び蛍光標識ヌクレオチド類似体を添加して、配列決定反応を開始する。次に、光学イメージングシステム(全反射蛍光顕微鏡(total internal reflection fluorescence microscopy,TIRFM)、レーザー、フィルター、及び画像レコーダーを含む)を使用して、配列決定反応における蛍光シグナルをリアルタイムで記録する。配列決定反応は約30分である。
【0094】
本実験例において、コンセンサス配列を取得する方法は、以下のステップを含む。ベースコールアルゴリズム(base calling algorism)を使用して蛍光シグナルを分析し、蛍光シグナルを対応するヌクレオチドに変換して4219個の生配列を取得する。次に、BioeditソフトウェアのClustalWツールを使用して、4219個の生配列をHLA-A参照配列と比較し、4219個の生配列の配列類似度を算出する。次に、4219個の生配列から、配列類似度が82%を超え、配列長が80%を超えるHLA-A参照配列の20個の生配列を収集し、クラスタを取得する。次に、クラスタ内の20個の生配列をバイオインフォマティクスによって分析し、コンセンサス配列を取得する。図4Aに示されるように、82.05%から86.06%の範囲の配列類似度を有する20個の生配列をアラインメントさせて分析することによってコンセンサス配列を生成する。次に、図4Bに示されるように、コンセンサス配列をHLA-A参照配列と比較し、コンセンサス配列の配列類似度又は精度を算出する。結果は、コンセンサス配列の配列類似度又は精度が約99.5%まで改善され得ることを示す。
【0095】
まとめると、本方法において、本発明の核酸分子検出用キット及びカートリッジでは、特定の一連のステップを使用することで、検出ステップが簡素化され、検出時間が短縮され、検出精度が向上する。特定の一連のステップは、少なくとも次のステップを含む。まず、捕捉プライマーを未精製又は粗精製サンプル中の標的核酸分子にハイブリダイズさせて、次に、新生鎖合成反応によって鋳型分子を取得し、次に、シーケンスプライマーを鋳型分子にハイブリダイズさせて、次に、単一分子配列決定により鋳型分子の生配列を取得し、次に、配列類似度が所定の閾値に達した生配列を分析して、コンセンサス配列を取得することを含む。本実施形態において、特定の一連のステップは、簡易な調製方法とバイオインフォマティクスを組み合わせたものである。簡易な調製方法では、単一分子シークエンシング中に標的核酸断片を読み取り、サンプル中の複数のゲノムにわたる核酸断片を読み取る。バイオインフォマティクスでは、個別に読み取られた各核酸断片から得られた低精度の生配列を組み立てて、i応用要件を満たす高精度の結果を生成する。
【0096】
本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、開示された実施形態に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかである。上記を考慮して、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限り、修正及び変形を包含することが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の核酸分子の検出方法、キット及びカートリッジは、検出ステップの簡略化、検出時間の短縮、検出精度の向上に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
110、110b: 第1の標的核酸分子
120: 非標的核酸分子
130: 第1の捕捉プライマー
132、210: リンカー
140: 第1の鋳型分子
141: 第1の末端
142: 第2の末端
150: 第1のシーケンスプライマー
160、161、162、163: 第1の生配列
170: 第1のクラスタ
180: 第1のコンセンサス配列
200:配列決定チップ
C1: 第1の捕捉プライマー-第1の標的核酸分子複合体
C2、C2b: 第1の鋳型分子‐第1の標的核酸分子複合体
C3: 第1のシーケンスプライマー-第1の鋳型分子複合体
N1: デオキシリボヌクレオシド三リン酸
N2: 蛍光標識ヌクレオチド類似体
P1、P2: ポリメラーゼ
S: サンプル
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10: ステップ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3
図4A
図4B
【配列表】
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【外国語明細書】