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特開2024-124398極薄銅箔、その製造方法、およびそれから製造される物品
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  • 特開-極薄銅箔、その製造方法、およびそれから製造される物品 図1
  • 特開-極薄銅箔、その製造方法、およびそれから製造される物品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124398
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】極薄銅箔、その製造方法、およびそれから製造される物品
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20240905BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20240905BHJP
   C25D 5/48 20060101ALI20240905BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20240905BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240905BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
C25D7/06 A
C25D5/48
C25D5/10
C25D7/00 J
C25D7/00 G
B32B15/01 H
H05K1/09 A
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031966
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】63/487,960
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン シー-チン
(72)【発明者】
【氏名】リン ヤー-メイ
【テーマコード(参考)】
4E351
4F100
4K024
5H017
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351BB01
4E351BB30
4E351DD04
4E351DD08
4E351DD17
4E351DD19
4E351GG20
4F100AB15B
4F100AB16B
4F100AB17A
4F100AB19B
4F100AB20B
4F100AB33A
4F100AH06B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA06B
4F100CA16B
4F100CB00B
4F100EH71A
4F100EJ34A
4F100EJ85A
4F100EJ86B
4F100GB43
4F100JJ03B
4F100JK02A
4F100JK04A
4F100JL11B
4K024AB02
4K024AB03
4K024AB04
4K024BC02
4K024DB06
4K024GA16
5H017AA03
5H017BB16
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017HH00
5H017HH03
5H017HH08
5H017HH10
(57)【要約】
【課題】 極薄銅箔、その製造方法、およびそれから製造される物品を提供する。
【解決手段】 本発明は、約50g/m以下の質量厚さ、約5.0μm以下の公称厚さ、約40Kgf/mm以上の引張強さ、および2mN以上のループ剛性を有するキャリアレス極薄銅箔を開示する。また、本発明の極薄銅箔の製造方法、表面処理された極薄銅箔、およびそれらから製造される物品も開示される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアレス極薄銅箔であって、
約45g/m以下の質量厚さと;
約5.0μm以下の公称厚さと;
約40Kgf/mm以上の引張強さと;
約2mN以上のループ剛性と;
を有することを特徴とするキャリアレス極薄銅箔。
【請求項2】
表面処理プロセスを受けた後に破損がないことを特徴とする、請求項1に記載の極薄銅箔。
【請求項3】
前記表面処理プロセスが、酸洗工程、粗面化工程、耐熱層形成工程、酸化防止層形成工程、接着促進層形成工程、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の極薄銅箔。
【請求項4】
前記極薄銅箔が、集電体、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板、または樹脂被覆銅(RCC)のために使用される、請求項1に記載の極薄銅箔。
【請求項5】
i)電解槽内に電解液を供給する工程と;
ii)前記電解液中で互いに隔てられて配置された正極板と回転負極ドラムとに所定の電流密度で電流を印加する工程と;
iii)前記回転負極ドラム上に銅箔を電着させる工程と;
iv)工程iii)から得られた前記銅箔を分離する工程と;
を含む、請求項1に記載の極薄銅箔の製造方法であって、
前記極薄銅箔が、約45g/m以下の質量厚さおよび約5.0μm以下の公称厚さを有し、
前記電解液が、
約120g/L~約450g/Lの硫酸銅;
約30g/L~約140g/Lの硫酸;
約0.01ppm~約25.0ppmの塩化物イオン;および
約0.01ppm~約75ppmの少なくとも1種の添加剤;
を含む、方法。
【請求項6】
前記添加剤が、ゼラチン、膠、セルロース、窒素含有カチオン性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記添加剤が窒素含有カチオン性ポリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記窒素含有カチオン性ポリマーが、式(I)のジアミンと式(II)のエポキシドとを約1:1のモル比で反応させた生成物である、請求項7に記載の方法:
【化1】
(式中、
、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立してHまたはC~Cアルキルであり;
は、C~CアルキレンおよびC~C10シクロアルキレンから選択される二価の連結基であり、Rは、-OHで任意選択的に置換されていてもよく;
Aは、C~Cアルキレン、C~C10シクロアルキレン、C~C20アリーレン、およびC~C20アリーレン-C~C10アルキレンから選択される二価の連結基であり;
p、q、およびrのそれぞれは、独立して0~10の整数であり;
nは1または2である)。
【請求項9】
前記電着が、約20A/dm~約80A/dmの電流密度で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記電着が20℃~80℃の前記電解液の温度で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
表面処理された極薄銅箔の製造方法であって、
v-1)請求項1に記載の極薄銅箔、または請求項5に記載の方法により得られた極薄銅箔の両面を酸洗する工程;
v-2)任意選択的に、前記極薄銅箔の少なくとも片面を粗面化する工程;
v-3)任意選択的に、前記極薄銅箔の少なくとも片面に耐熱層を形成する工程;
v-4)任意選択的に、前記極薄銅箔の少なくとも片面に酸化防止層を形成する工程;
v-5)任意選択的に、前記極薄銅箔の少なくとも片面に接着促進層を形成する工程;および
v-6)極薄銅箔を乾燥して、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔を得る工程;
を含み、
前記極薄銅箔が、v-2)~v-5)から選択される少なくとも2つの任意選択的な工程を経たものであり;
v-2)の前記粗面化工程が、前記極薄銅箔の少なくとも片面上に銅ノジュールを形成することであり、前記銅ノジュールが、Cu、Ni、Co、Mo、W、As、またはそれらの組み合わせを含み;
前記耐熱層が、Ni、Co、Mo、Zn、またはそれらの組み合わせを含み;
前記酸化防止層が、Cr、Zn、またはそれらの組み合わせを含み;
前記接着促進層が接着促進剤を含む;
方法。
【請求項12】
前記接着促進剤がシラン系薬剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により製造される、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔。
【請求項14】
前記極薄銅箔が、集電体、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板、または樹脂被覆銅(RCC)のために使用される、請求項13に記載の表面処理されたキャリアレス極薄銅箔。
【請求項15】
請求項13に記載の表面処理されたキャリアレス極薄銅箔を組み込むことによって製造される物品。
【請求項16】
リチウムイオン電池または電気二重層キャパシタの負極集電体、銅張積層板、リジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板、または樹脂被覆銅である、請求項15に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約45g/m以下の質量厚さと約5.0μm以下の公称厚さとを有するキャリアレス極薄銅箔に関する。また、本発明は、極薄銅箔の製造方法、表面処理された極薄銅箔、およびそれらから製造される物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の薄型化・軽量化、プリント基板の配線密度の高まりの現在の動向から、多層プリント基板(PCB)上の回路を形成するための銅箔も薄型化する必要がある。
PCB製造プロセスに適した銅箔として、銅箔は、通常、原料の銅箔に一連の表面処理工程を行って好ましい/望ましい特性を付与する表面処理を受ける。
【0003】
銅箔の従来の表面処理プロセスは図1に示されており、これは、槽11内での酸洗、めっき浴12内での銅ノジュール形成による粗面化、めっき浴13内での耐熱層形成、めっき浴14内での酸化防止層の形成、処理チャンバー15内での接着促進剤によるコーティング、およびオーブン16内での乾燥を含む複数の工程を含む。一般に、乾燥前の最後の表面処理工程は、シラン系化合物などの公知の接着促進剤で処理することによって接着促進層を形成することである。
【0004】
表面処理プロセス中、銅箔は、何十本もの搬送ローラーおよび大電流の電気めっきを通過する際の様々な応力および張力、ならびに高温条件にさらされることになる。そのため、銅箔は、表面処理プロセスに耐えられる十分な機械的強度および剛性を有さなければならない。銅箔の公称厚さが減少すると、銅箔の機械的強度が低下する可能性が高い。表面処理プロセス中の引張歪みや様々な応力に耐え、その後プリント基板の製造に使用できるようにするためには、銅箔は、公称厚さが5.0μmよりも大きい必要があることが知られている。
【0005】
銅箔の公称厚さが5.0μm未満である場合、銅箔業界ではこれは一般的に極薄銅箔として特徴付けられる。しかしながら、極薄銅箔は機械的強度が不十分なため、従来の表面処理プロセスで発生する様々な応力および張力を受けた場合、容易に皺および/または破損が生じる可能性がある。そのため、表面処理プロセスのパラメータおよび/または更には処理装置/ツールを変更せずに表面処理された極薄銅箔を製造することは困難である。
【0006】
更に、表面処理された極薄銅箔は、強度および剛性が不十分であるため、皺および/または撓みのない自立した形態で存在することができない。そのため、極薄銅箔を組み込むことによってより薄いPCBを製造しようとするPCBメーカーにとっては、取り扱いおよび加工も困難になる。
【0007】
前述した課題を解決するために、現在市販されている極薄銅箔は、一般に、従来の表面処理プロセスに耐えられる十分な耐性を極薄銅箔に付与するためのキャリアを有している。その結果、表面処理されたキャリア付き極薄銅箔は、より薄い多層プリント基板の製造に使用することができる。
【0008】
極薄銅箔のための一般的なキャリアとしては、銅箔、アルミニウム箔、金属箔、またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。キャリア付き極薄銅箔に関する参考文献については、(特許文献1)、(特許文献2)、および(特許文献3)を参照されたい。
【0009】
キャリア付き極薄銅箔の1つの明らかな欠点は、PCB製造プロセス中にキャリアを除去しなければならないことである。この余分なキャリア除去工程は、労力、コスト、および作業負担を増加させるだけでなく、より多くの産業廃棄物も発生させる。省エネルギー、炭素削減、および環境負荷低減を実現しようとするPCBメーカーにとっては、これは有益なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0127743号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0013212号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0288884号明細書
【特許文献4】米国特許第5,861,076号明細書
【特許文献5】米国特許第8,815,387号明細書
【特許文献6】米国特許第9,688,704号明細書
【特許文献7】米国特許第10,385,076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記観点から、プリント基板産業に全体として利益をもたらすために、キャリアを有さず、かつ従来の表面処理プロセスで表面処理することができる極薄銅箔を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するために、本発明は、十分な強度および剛性を有するキャリアレス極薄銅箔ならびに前記極薄銅箔の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の一態様によれば、キャリアレス極薄銅箔が提供される。この極薄銅箔は、約45g/m以下の質量厚さ、約5.0μm以下の公称厚さ、約40Kgf/mm以上の引張強さ、および2mN以上のループ剛性を有する。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、上述した極薄銅箔の製造方法が提供される。この方法は、
i)電解槽内に電解液を供給する工程;
ii)電解液中で互いに隔てられて配置された正極板と回転負極ドラムとに所定の電流密度で電流を印加する工程;
iii)回転負極ドラム上に銅箔を電着させる工程;および
iv)工程iii)から得られた銅箔を分離する工程;
を含み、電解液は:
約120g/L~約450g/Lの硫酸銅;
約30g/L~約140g/Lの硫酸;
約0.01ppm~約25.0ppmの塩化物イオン;および
約0.01ppm~約75ppmの少なくとも1種の添加剤;
を含む。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、本発明の極薄銅箔に表面処理プロセスを行うことによって製造される、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔も提供される。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、本発明の表面処理されたキャリアレス極薄銅箔を使用することによって製造される物品が提供される。
【0017】
一実施形態では、物品は、リチウムイオン電池または電気二重層キャパシタの負極集電体、銅張積層板、リジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板、または樹脂被覆銅(RCC)である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】銅箔の従来の表面処理プロセスを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による表面処理されたキャリアレス極薄銅箔の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特に明記しない場合、あたかも完全に明記されているかのように、あらゆる目的のためにそれらの全体を本明細書に参照により明確に援用される。
【0020】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。不一致の場合、定義を含めて、本明細書が優先されるであろう。
【0021】
特に明記しない限り、全ての百分率、部、比等は、重量による。
【0022】
本明細書で用いる場合、用語「から生成される」は、「含む」と同義語である。本明細書で用いる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」、「含有する」または「含有している」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を網羅することが意図されている。例えば、要素のリストを含む組成物、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、またはそのような組成物、プロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を包含し得る。
【0023】
移行句「からなる」は、明記されていないいかなる要素、工程、または原料も排除する。請求項における場合、そのような語句は、それらと通常関係がある不純物を除いて、列挙されるもの以外の材料の包含を請求項から排除するであろう。語句「からなる」が、前文の直後よりもむしろ、請求項の本体の条項に現れる場合、それは、その条項に明記される要素のみを限定し;他の要素は、全体として請求項から排除されない。
【0024】
移行句「から本質的になる」は、文字通りに考察されるものに加えて、材料、工程、特徴、構成要素、または要素を含む組成物、方法または装置を定義するために用いられ、但し、これらの追加の材料、工程、特徴、構成要素、または要素は、本特許請求される発明の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間領域を占める。
【0025】
用語「含む」は、用語「から本質的になる」および「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0026】
量、濃度、あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または上方の好ましい値および下方の好ましい値のリストのいずれかとして与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上方の範囲限界または好ましい値と、任意の下方の範囲限界または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているとして理解されるべきである。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙された範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」等を含むとして解釈されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、それの終点、ならびにその範囲内の全ての整数および分数を含むことを意図する。
【0027】
用語「約」が値または範囲の端点を表すのに用いられる場合、本開示は、言及される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0028】
更に、それとは反対を明確に述べない限り、「または」は、包括的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件A「または」Bは、以下:Aが真であり(または存在し)、かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)、かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBが両方とも真である(または存在する)のいずれか1つによって満たされる。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「炭化水素基」は、示される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、少なくとも1つの炭素原子と少なくとも1つの水素原子とを有する有機化合物を指す。「アルキル基」は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、または異なるブチルなど、特定の数の炭素原子を有する一価の直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素を指す。「アルキレン基」は、二価のアルキル基を指す。「シクロアルキル基」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルなど、全ての環員が炭素である1つ以上の飽和環を有する一価の基を指し;「シクロアルキレン基」は二価のシクロアルキル基を指す。「アリール基」は、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフチル、およびビナフチルなど、環員が炭素原子から構成されており少なくとも1つのシクロアルキル環またはヘテロシクロアルキル環に縮合した芳香環を有する基を含んでいてもよい一価の芳香族単環式または多環式の環系を指す。「アリーレン基」は、二価のアリール基を指す。置換基内の炭素原子の総数は、接頭辞「Ci~Cj」によって示される。
【0030】
「任意選択的に置換された」という用語は、「置換または無置換」という語または「(無)置換」という用語と互換的に使用される。「1~4個の置換基で任意選択的に置換された」という表現は、置換基が存在しない(すなわち無置換)、あるいは1、2、3、または4個の置換基が存在する(利用可能な結合位置によって制限される)ことを意味する。他に指示されない限り、任意選択的に置換された基は、その基の各置換可能な位置で1つの置換基を有することができ、各置換基は独立して選択される。
【0031】
「発明の概要」に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載される任意の他の実施形態を含み、任意の方法で組み合わせることができ、実施形態における変数の記載は、本発明の複合積層板にのみならず、それから製造される物品にも関連する。
【0032】
本発明は、本明細書で以下に詳細に説明される。
【0033】
本発明は、キャリアレス極薄銅箔に関する。本発明の極薄銅箔は、約45g/m以下の質量厚さ、約5.0μm以下の公称厚さ、約40Kgf/mm以上の引張強さ、および2mN以上のループ剛性を有する。なお、引張強さ、パーセント伸び、およびループの剛性を含む機械的特性は、周囲温度、すなわち約20℃~約25℃で測定される。
【0034】
本発明の一実施形態では、キャリアレス極薄銅箔は、約45g/m以下、または約35g/m以下、または約25g/m以下の質量厚さを有する。
【0035】
本発明の一実施形態では、キャリアレス極薄銅箔は、約5.0μm以下、または約4.0μm以下、または約3.0μm以下、または約2.0μm以下の公称厚さを有する。
【0036】
本発明の一実施形態では、キャリアレス極薄銅箔は、約40Kgf/mm以上、または約50Kgf/mm以上、または約60Kgf/mm以上、または約70Kgf/mm以上の引張強さを有する。
【0037】
本発明の一実施形態では、キャリアレス極薄銅箔は、約2mN以上、または3mN以上、4mN以上、5mN以上のループ剛性を有する。
【0038】
本発明の第2の態様は、
i)電解槽内に電解液を供給する工程;
ii)電解液中で互いに隔てられて配置された正極板と回転負極ドラムとに所定の電流密度で電流を印加する工程;
iii)回転負極ドラム上に銅箔を電着させる工程;および
iv)工程iii)から得られた銅箔を分離する工程;
を含む、上述したキャリアレス極薄銅箔の製造方法であって、
極薄銅箔が、約45g/m以下の質量厚さおよび約5.0μm以下の公称厚さを有し、
電解液が、
約120g/L~約450g/Lの硫酸銅;
約30g/L~約140g/Lの硫酸;
約0.01ppm~約25.0ppmの塩化物イオン;および
約0.01ppm~約75ppmの少なくとも1種の添加剤;
を含む、方法を提供することである。
【0039】
本発明の製造方法において、電解液は、硫酸銅、硫酸、塩化物イオン、および少なくとも1種の添加剤を含む。電解液中の銅イオン源である硫酸銅と電解質である硫酸は、いずれも様々な供給元から市販されており、更に精製することなしに使用される。
【0040】
本発明の一実施形態では、電解液中の硫酸銅の含有量は、電解液の総体積を基準として約120g/L~約450g/L;または約180g/L~約400g/L;または約240g/L~約350g/Lである。
【0041】
本発明の一実施形態では、電解液中の硫酸の含有量は、電解液の総体積を基準として約30g/L~約140g/L;または約35g/L~約130g/L;または約40g/L~約120g/Lである。
【0042】
塩化物イオンの供給源は、塩化銅または塩酸であってよい。塩化物イオンのこれらの供給源は、市販されており、更に精製することなしに使用される。
【0043】
本発明の一実施形態では、電解液中の塩化物イオンの含有量は、電解液の総重量を基準として約0.01ppm~約25.0ppm、または約0.05ppm~約20.0ppm、または約0.1ppm~約15.0ppm、または約0.5ppm~約10.0ppmである。
【0044】
本発明で使用される添加剤は、得られる極薄銅箔が高い引張強さと高いループ剛性を有する限り、特に限定されない。電解液における使用に適した添加剤としては、ゼラチン、膠、セルロース、窒素含有カチオン性ポリマー、またはそれらの組み合わせが挙げられる。促進剤、抑制剤、またはレベリング剤などのその他の添加剤も、状況に応じて1種類以上組み合わせて添加されてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、添加剤は、ゼラチン、膠、セルロース、窒素含有カチオン性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む。
【0046】
本発明の別の実施形態では、添加剤は窒素含有カチオン性ポリマーである。
【0047】
本発明の別の実施態様では、窒素含有カチオン性ポリマーは、式(I)のジアミンと式(II)のエポキシドとを約1:1のモル比で反応させた生成物である:
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、
、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立してHまたはC~Cアルキルであり;
は、C~CアルキレンおよびC~C10シクロアルキレンから選択される二価の連結基であり、Rは、-OHで任意選択的に置換されていてもよく;
Aは、C~Cアルキレン、C~C10シクロアルキレン、C~C20アリーレン、およびC~C20アリーレン-C~C10アルキレンから選択される二価の連結基であり;
p、q、およびrのそれぞれは、独立して0~10の整数であり;
nは1または2である)。
【0050】
本発明の銅箔の製造方法において、電解液中の添加剤の量は、選択される具体的な添加剤、電解液中の銅イオンの濃度および硫酸の濃度、ならびに印加される電流密度に依存する。
【0051】
銅箔の大量生産の実施においては、通常、必要な成分(例えば銅イオン、硫酸、塩化物イオンなど)を補充することによって電解液のリサイクルが継続されるため、電解槽にポンプ送液する前に不純物および分解した添加剤を除去するためにフィルター材を通す濾過が行われる。添加剤の総含有量が(電解液の総重量に対して)75ppm以下である場合、活性炭などのフィルター材の使用量を減らすことが有益である。そのため、本発明の極薄銅箔の製造方法は、大量生産および環境保護に有益である。
【0052】
本発明の一実施形態では、電解液中の添加剤の含有量は、約0.01ppm~約75.0ppm、または約0.5ppm~約50.0ppm、または約1ppm~約25.0ppmである。
【0053】
本発明の極薄銅箔の製造方法は、幅広い範囲の電解液温度で行うことができる。電解液の温度は、通常約20℃~約80℃、好ましくは約30℃~約60℃である。
【0054】
本発明の極薄銅箔の製造方法は、幅広い範囲の電流を印加することによって行うこともできる。電着は、約20A/dm~約80A/dmの範囲の電流密度で行うことができる。電着が60A/dmより大きい電流密度で行われる場合、極薄銅箔の製造速度は少なくとも毎秒約0.25μmに到達することができ、これは工業的な高速製造の基準を満たす。
【0055】
一般に、電着により製造される銅箔は、マット面(析出面)と光沢面(ドラム面)とを有する電着(ED)銅箔である。本発明の方法によって製造される極薄銅箔は、ED銅箔として分類することができる。
【0056】
上記方法により製造された本発明の極薄銅箔は、高い引張強さとループ剛性を有するため、皺および/または破損を生じることなく従来の銅箔の表面処理プロセスに耐えることができる。本発明の第3の態様は、本発明のキャリアレス極薄銅箔に対して表面処理プロセスを行うことによって製造される、表面処理された極薄銅箔を提供することである。
【0057】
前述したように、従来の表面処理プロセスには、限定するものではないが、酸洗、粗面化、耐熱層形成、酸化防止層形成、および/または接着促進層形成の工程が含まれる。上述した表面処理工程は、極薄銅箔のマット面、光沢面、または両方の面に対して適用することができる。
【0058】
表面処理されたキャリアレス極薄銅箔の製造方法は、
v-1)本発明の極薄銅箔の両面を酸洗する工程;
v-2)任意選択的に、極薄銅箔の少なくとも片面上に銅ノジュールを形成することによって粗面化する工程;
v-3)任意選択的に、極薄銅箔の少なくとも片面に耐熱層を形成する工程;
v-4)任意選択的に、極薄銅箔の少なくとも片面に酸化防止層を形成する工程;または
v-5)任意選択的に、極薄銅箔の少なくとも片面に接着促進層を形成する工程;および
v-6)極薄銅箔を乾燥して、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔を得る工程;
を含み、
極薄銅箔が、v-2)~v-5)から選択される少なくとも2つの工程を経たものであり;
v-2)の粗面化工程は、極薄銅箔の少なくとも片面上に銅ノジュールを形成することであり、銅ノジュールは、Cu、Ni、Co、Mo、W、As、またはそれらの組み合わせを含み;
耐熱層は、Ni、Co、Mo、Zn、またはそれらの組み合わせを含み;
酸化防止層は、Cr、Zn、またはそれらの組み合わせを含み;
接着促進層は接着促進剤を含む。
【0059】
通常、表面処理プロセスの最初の工程は、v-1)槽11内で本発明の極薄銅箔の両面を酸洗することである。酸洗は、約5%~10%の硫酸または硫酸銅を含む溶液に極薄銅箔を浸漬して原料銅箔上の酸化物層またはグリースを除去することによって行われる。
【0060】
表面処理プロセスの第2工程は、通常はv-2)粗面化工程である。これは、表面処理された極薄銅箔の最終用途に応じた任意選択的な工程である。粗面化工程は、電気めっきによって極薄銅箔の少なくとも片面上に銅ノジュールを形成することによって行われる。図1に示されているように、正極板に面する極薄銅箔の表面は、めっき浴12内で銅ノジュールを形成する。銅ノジュール形成に適した電解液は、硫酸銅と、Ni、Co、Mo、W、As、およびそれらの組み合わせから選択される他の微量金属イオンとを含むことができる。当業者は、本明細書における更に詳しい説明なしで、一般常識に従ってこの工程を行うことができる。
【0061】
表面処理プロセスの耐熱層形成工程v-3)も、表面処理された極薄銅箔の最終用途に応じて任意選択的である。耐熱層の形成は、Ni、Co、Mo、Zn、またはそれらの組み合わせを含む電解液中での電気めっきによって行うことができる。図1に示されているように、銅ノジュールを有する極薄銅箔の正極板側の面、したがって耐熱層が、めっき浴13中で銅ノジュールの上に形成される。耐熱層は、Ni、Co、Mo、Zn、またはそれらの組み合わせを含む。
【0062】
表面処理プロセスの酸化防止層形成工程v-4)も、表面処理された極薄銅箔の最終用途に応じて任意選択的である。酸化防止層の形成は、Cr、Zn、またはそれらの組み合わせを含む電解液中での電気めっきによって行うことができる。図1に示されているように、4枚の正極板がめっき浴14内に極薄銅箔の両方の面に面して配置される。その結果、極薄銅箔の両面は、Cr、Zn、またはそれらの組み合わせを含む酸化防止層を含む。
【0063】
表面処理プロセスの接着促進層形成工程v-5)も、表面処理された極薄銅箔の最終用途に応じて任意選択的である。接着促進層が望まれる場合には、通常、乾燥工程の前に行われる。図1に示されているように、接着促進層は、処理チャンバー15内のスプレーノズルに面した極薄銅箔の表面に接着促進剤を含む溶液をコーティングすることによって形成される。
【0064】
銅表面を処理するための公知の接着促進剤(カップリング剤とも名付けられる)としては、Adlamらに付与された(特許文献4)およびSatoらに付与された(特許文献5)に開示されているシランおよびシリルアミン;Miuraらに付与された(特許文献6)に開示されているアゾールシラン;Moriらに付与された(特許文献7)中のアミノトリアジン系化合物;ならびにそれらに引用されている多数の参考文献が挙げられる。
【0065】
一実施形態では、表面処理に使用される接着促進剤はシラン系薬剤である。
【0066】
表面処理プロセスの最終工程として、v-6)水分および揮発性物質を除去するための極薄銅箔の乾燥は、通常、約100℃~約200℃の温度のオーブン(図1に示す通り)内で1~10秒間加熱することによって行われる。
【0067】
本発明の第3の態様は、前述した表面処理方法によって製造される、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔を提供することである。具体的な最終用途に応じて、表面処理された極薄銅箔は、銅ノジュール層、耐熱層、酸化防止層、および接着促進層から選択される少なくとも2つの処理層を含んでいてもよく、処理層は、表面処理された極薄銅箔の少なくとも片面に位置することができる。
【0068】
図2は、本発明の一実施形態による表面処理されたキャリアレス極薄銅箔100の拡大図を示す。本発明のキャリアレス極薄銅箔10に対して、前述した図1に示されている表面処理プロセスが行われた後、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔100が得られる。表面処理されたキャリアレス極薄銅箔100は、キャリアレス極薄銅箔10の片面(10a)上に、銅ノジュール層20、耐熱層30、酸化防止層40a、および接着促進層50をこの順で含み、キャリアレス極薄銅箔10の他方の面(10b)上に酸化防止層40bを含む。なお、本発明の表面処理された銅箔は、図2に示すものに限定されるものではなく、具体的な用途の要件に基づいて調整することができる。
【0069】
本発明の一実施形態では、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔は、銅ノジュール層、耐熱層、酸化防止層、および接着促進層から選択される少なくとも2つの処理層を含み、処理層は、表面処理された極薄銅箔の少なくとも片面に位置する。
【0070】
本発明の一実施形態では、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔は、銅ノジュール層、耐熱層、酸化防止層、および接着促進層から選択される少なくとも3つの処理層を含み、処理層は、表面処理された極薄銅箔の少なくとも片面に位置する。
【0071】
本発明の一実施形態では、表面処理されたキャリアレス極薄銅箔は、銅ノジュール層、耐熱層、酸化防止層、および接着促進層をこの順で含み、処理層は、表面処理された極薄銅箔の少なくとも片面に位置する。
【0072】
本発明の第4の態様は、本発明の極薄銅箔を使用することによって製造される物品を提供することである。物品は、リチウムイオン電池または電気二重層キャパシタの負極集電体、樹脂被覆銅(RCC)、銅張積層板(CCL)、フレキシブル銅張積層板(FCCL)、リジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、またはリジッドフレキシブルプリント基板であってよい。
【0073】
さらなる詳述なしに、先行記載を用いる当業者は、本発明をその最大限まで利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形でも本発明を限定するものではない。
【実施例0074】
略語「E」は「実施例」を表し、「CE」は「比較例」を表す。各実施例は同様の方法で調製し、比較例は商業的供給元から入手した。実施例および比較例の性能試験も同じまたは同様の方法で行った。
【0075】
材料
NCP-A:窒素含有カチオン性ポリマー、分子量(Mw)は約9000であり、MICROFILLTM-EVF IIIの商品名でDuPont Electronics,Inc.Wilmington,DE,USAにより製造されている。NCP-Aは、式(I)のジアミンと式(II)のエポキシドとの1:1モル比の反応生成物であり、式中、R、R、R、R、R、およびRは水素であり;p、q、およびrは0であり、AはCアルキレンであり;RはCアルキレンである。
【0076】
硫酸銅、硫酸、塩酸、および商業的供給元が特定されていない化合物は、Sigma-Aldrich Companyから購入した。
【0077】
CE1の銅箔は、厚さ18μmのキャリア銅箔を有しており、三井金属鉱業株式会社から購入した。CE1の銅箔は、従来の表面処理プロセスによって表面処理されていた。
【0078】
CE2の銅箔はChang Chun Petrochemical Co.から購入した。この銅箔は電着直後に酸化防止層を電気めっきしたものであり、従来の表面処理プロセスを受けなかった。
【0079】
CE3の銅箔は古河電気工業株式会社から購入したものであり、これはキャリアを有さないが従来の表面処理プロセスによって表面処理されていた。
【0080】
実施例1~2の銅箔の作製
表1に列挙されている硫酸銅、硫酸、塩化物イオン、および添加剤の量に基づいて電解液を十分に混合した後、以下の工程によって実施例1~2の極薄銅箔を作製した。
【0081】
最初に、チタンドラムを負極(カソード)として使用し、寸法安定性を有するアノード(IrO/Ti)を正極として使用した。直流電源を使用した。負極とアノードとの間の空間に電解液を満たし、電解液の温度を40℃に維持した。表1の作製パラメータに従って、厚さ約3~5μmの銅箔をチタンドラムの表面に直接形成した。電着プロセスの後、銅箔をチタンドラムから取り外し、極薄銅箔、すなわち本発明の一実施形態を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
試験方法
実施例1~2および比較例1~3の銅箔は、該当する場合には以下の方法によって試験した。
【0084】
1.質量厚さ
実施例1~2および比較例1~3のそれぞれの銅箔片を10cm×10cmの正方形に切り取った。CE1の銅箔サンプルについてはキャリア銅箔を剥がしてから秤量した。電子天秤を使用することによって各銅箔の正方形のサンプルを秤量し、グラム/平方メートル(g/m)単位で質量厚さを計算し、表2に記録した。
【0085】
2.公称厚さ
各銅箔サンプルの厚さ(μm)は、IPC-TM-650 2.2.12の方法を参照して、それぞれの質量厚さを銅の密度(すなわち8.94g/cm)で割ることによって計算した。
【0086】
3.引張強さおよび伸び試験
各銅箔の試験片をIPC-TM-650 2.4.18Bの方法に従って作製し、試験した。各銅箔サンプルの試験片は、周囲温度(すなわち約20~25℃)で引張強さおよび伸びについて試験した。
【0087】
4.ループ剛性
各銅箔サンプルを幅25.4mmのストリップに切断した。ループ剛性は、株式会社東洋精機製作所製のループ剛性試験機を使用して、ループ長60mm、圧縮速度3.3mm/秒の試験条件で測定した。
【0088】
5.表面処理の耐性
E1-2およびCE2の銅箔サンプルに対して、それぞれ独立して以下の表面処理プロセスを行い、耐性を評価した。表面処理プロセスは、1)酸洗工程、2)粗面化工程、3)耐熱層形成工程、4)酸化防止層形成工程、5)シラン系薬剤による接着促進層形成工程、および6)乾燥工程をこの順で含んでいた(図1を参照)。
【0089】
表面処理の複数の工程の後、表面処理のいずれかの工程で破損した銅箔サンプルを「不合格」とし、表面処理の複数の工程を破断または皺なしで経た銅箔サンプルを「合格」とした。
【0090】
各銅箔サンプル(実施例1~2および比較例1~3)の試験結果を以下の表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示されているように、実施例1~2の本発明の極薄銅箔は優れた機械的特性を有しており、また表面処理プロセス後もそのまま保たれていた。
【0093】
比較例1の銅箔は、極薄の厚さと複数の処理層を有するが、PCB製造プロセスで使用する際に除去工程を必要とするキャリア(すなわち18μmの銅箔)を有する。
【0094】
比較例2の銅箔は、実施例1の極薄銅箔と同様の厚さを有し、キャリアを有さないが、CE2の銅箔の引張強さおよびループ剛性は不十分であり、表面処理耐性試験に不合格であった。実際、CE2の銅箔サンプルの破損は、表面処理プロセスの複数の工程でランダムに発生したが、粗面化工程で最も多く発生した。
【0095】
比較例3の銅箔は、5.0μmを超える公称厚さ、40Kgf/mm未満の引張強さ、および6.87mNのループ剛性を有する。比較例3の銅箔も複数の処理層を有していることから、CE3の銅箔が表面処理プロセスに合格したことはループ剛性が高いためであると考えられる。
【0096】
本発明の特定の実施形態を示して説明してきたが、当業者であれば追加の修正および改良を思い付くであろう。したがって、本発明は示された特定の形態に限定されず、本発明の趣旨および範囲から逸脱しないあらゆる変更が添付の特許請求の範囲に網羅されることが意図されていると理解されることが望まれる。
【符号の説明】
【0097】
10 キャリアレス極薄銅箔
10a キャリアレス極薄銅箔の片面
10b キャリアレス極薄銅箔の他方の面
11 槽
12 めっき浴
13 めっき浴
14 めっき浴
15 処理チャンバー
16 オーブン
20 銅ノジュール層
30 耐熱層
40a 酸化防止層
40b 酸化防止層
50 接着促進層
100 表面処理されたキャリアレス極薄銅箔
図1
図2
【外国語明細書】