(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124420
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】走行中非接触給電システム及び非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20240905BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240905BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240905BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240905BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20240905BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/12
B60L53/12
B60L53/20
B60L5/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101682
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2023068370の分割
【原出願日】2019-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018120335
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】角谷 勇人
(72)【発明者】
【氏名】藤川 知之
(72)【発明者】
【氏名】間崎 耕司
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】宇田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(57)【要約】
【課題】電力脈動を抑制しつつ、装置構成を簡略化できる技術を提供する。
【解決手段】走行中非接触給電システムは、道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル112と、車両200に搭載された2次コイル212とを用いて車両の走行中に車両に給電する。1次コイル112は単相コイルであり、2次コイル212は、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、車両の前後方向に沿って並ぶM個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルは、他の相のコイルよりもコイル面積が小さく設定されている。
【選択図】
図11B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルは単相コイルであり、
Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、
前記車両の前後方向に沿って並ぶ前記M個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルは、他の相のコイルよりもコイル面積が小さく設定されている、走行中非接触給電システム。
【請求項2】
道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルは単相コイルであり、
Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、
前記2次コイルには磁性体ヨーク(214)が設けられており、
前記車両の前後方向に沿って並ぶ前記M個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルは、他の相のコイルよりも前記磁性体ヨークからの距離が大きな位置に設置されている、走行中非接触給電システム。
【請求項3】
道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルは単相コイルであり、
Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、
前記M個のコイルのうちの少なくとも1相のコイルの巻き方向は、他の相のコイルの巻き方向と異なり、
前記車両の前後方向に測った前記M個のコイルの相互のずれ幅(Db)が、前記1次コイルの電気角の(360÷M÷2)度以上(360÷M÷2+20)度以下の範囲内に相当する値に設定されている、走行中非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記車両の前後方向に測った前記M個のコイルの相互のずれ幅(Db)が、前記1次コイルの電気角の(360÷M)度に相当する長さよりも大きく設定されている、走行中非接触給電システム。
【請求項5】
請求項2に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記M個のコイルは、前記車両の前後方向に沿って延びるコイルエンド(Ce)と、前記車両の幅方向に沿って延びる主コイル部(Mc)とを有しており、
前記M個のコイルを前記磁性体ヨークの表面に垂直な方向から観察したとき、前記コイルエンドは前記磁性体ヨークの外側に配置されている、走行中非接触給電システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記M個のコイルのうちの少なくとも1相のコイルの巻き方向は、他の相のコイルの巻き方向と異なる、走行中非接触給電システム。
【請求項7】
請求項3に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記M個のコイルの巻き方向は、前記車両の前後方向に沿った前記M個のコイルの配列順に、交互に逆方向となっている、走行中非接触給電システム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、
Wcを各コイルの巻線幅としたとき、前記車両の前後方向に測った前記M個のコイルの各コイルの長さが、前記1次コイルの電気角の(180-180÷M-Wc)度に相当する値以下に設定されている、走行中非接触給電システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルには磁性体ヨーク(114)が設けられており、
前記1次コイル用の前記磁性体ヨークは、前記1次コイルのコイル線が存在する位置以外の位置に設けられたギャップを有する、走行中非接触給電システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルには第1共振コンデンサ(116)が並列に接続されており、
前記2次コイルには第2共振コンデンサ(216)が並列に接続されている、走行中非接触給電システム。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、更に、
直流電圧を供給する電源回路(130)と、
前記電源回路に接続されたハイサイドスイッチ(21)とローサイドスイッチ(22)をそれぞれ有し、前記複数の1次コイルに交流電圧を供給する複数の送電回路(120)と、
を備え、
前記複数の1次コイルは互いに直列に接続されており、
隣接する前記1次コイルの間の接続点は、共振コンデンサ(116)を介して、前記複数の送電回路のうちの1つの送電回路の前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの間の接続点に接続されている、走行中非接触給電システム。
【請求項12】
道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルは単相コイルであり、
Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、
前記M個のコイルのうちの少なくとも1相のコイルの巻き方向は、他の相のコイルの巻き方向と異なる、走行中非接触給電システム。
【請求項13】
道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムであって、
前記1次コイルは単相コイルであり、
Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、
Wcを各コイルの巻線幅としたとき、前記車両の前後方向に測った前記M個のコイルの各コイルの長さが、前記1次コイルの電気角の(180-180÷M-Wc)度に相当する値以下に設定されている、走行中非接触給電システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムであって、
前記2次コイルを構成する複数のコイルは、平面視において互いに一部が重なるように配置されている、走行中非接触給電システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の走行中非接触給電システムに使用される非接触給電装置(100)であって、
前記複数の1次コイル(112)と、
直流電圧を供給する電源回路(130)と、
前記電源回路の直流電圧を交流電圧に変換して前記複数の1次コイルに供給する複数の送電回路(120)と、
を備える非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行中に非接触で車両に給電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の走行中に非接触で車両に給電する技術が開示されている。この従来技術では、道路に設置される1次コイルと車両に搭載される2次コイルは、それぞれ3相コイルとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、1次コイルと2次コイルの両方が3相コイルなので、走行中の電力脈動は小さいが、装置が大型化してしまいコストも増大するという問題がある。そこで、電力脈動を抑制しつつ、装置構成を簡略化できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、道路の進行方向に沿って設置された複数の1次コイル(112)と、車両(200)に搭載された2次コイル(212)とを用いて前記車両の走行中に前記車両に給電する走行中非接触給電システムが提供される。この走行中非接触給電システムでは、前記1次コイルは単相コイルであり、Mを3以上の整数としたとき、前記2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、前記車両の前後方向に沿って並ぶ前記M個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルは、他の相のコイルよりもコイル面積が小さく設定されている。
【0006】
この走行中非接触給電システムによれば、1次コイル(112)と2次コイル(212)のうち、1次コイルは単相コイルであり、2次コイルは、M個のコイルで構成されたM相コイルであり、車両の前後方向に沿って並ぶM個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルは、他の相のコイルよりもコイル面積が小さく設定されているので、簡素な構成で電力脈動の少ない給電を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】走行中非接触給電システムの全体構成を示すブロック図。
【
図2A】1次コイルが3相で2次コイルが単相のコイル構成を示す説明図。
【
図2B】1次コイルが2相で2次コイルが単相のコイル構成を示す説明図。
【
図2C】1次コイルが単相で2次コイルが3相のコイル構成を示す説明図。
【
図2D】1次コイルが単相で2次コイルが2相のコイル構成を示す説明図。
【
図3A】S-S方式(1次側直列2次側直列方式)の共振回路を示す説明図。
【
図3B】P-P方式(1次側並列2次側並列方式)の共振回路を示す説明図。
【
図3C】P-S方式(1次側並列2次側直列方式)の共振回路を示す説明図。
【
図3D】S-P方式(1次側直列2次側並列方式)の共振回路を示す説明図。
【
図3E】PS-P方式(1次側並列直列2次側並列方式)の共振回路を示す説明図。
【
図4A】コイル構成と共振方式の組み合わせ毎のコイル効率を示す説明図。
【
図4B】コイル構成と共振方式の組み合わせ毎の電力脈動を示す説明図。
【
図4C】コイル構成と他の共振方式の組み合わせ毎の電力脈動を示す説明図。
【
図6A】1次コイルが多相で2次コイルが単相の場合のインバータ出力を示す説明図。
【
図6B】1次コイルが単相で2次コイルが多相の場合のインバータ出力を示す説明図。
【
図7A】1次コイルが単相で2次コイルが3相の場合の電力脈動を示す説明図。
【
図7B】1次コイルが単相で2次コイルが2相の場合の電力脈動を示す説明図。
【
図8B】2次コイルの2相コイルのずれ幅を1次コイルの電気角の90度に相当する長さより大きくした構成の電力脈動を示す説明図。
【
図8C】2次コイルの磁性体ヨークの長さを1次コイルの電気角の360度に相当する長さより大きくした構成の電力脈動を示す説明図。
【
図9A】2相の2次コイルの機械的位相と1次コイル/2次コイルの結合係数の2乗の2次成分の振幅との関係を示すグラフ。
【
図9B】2相の2次コイルの機械的位相と相互インダクタンスとの関係を示すグラフ。
【
図9C】2相の2次コイルの機械的位相と電力脈動との関係を示すグラフ。
【
図10B】3相の2次コイルの各コイルのずれ幅を1次コイルの電気角の120度に相当する長さより大きくした構成の電力脈動を示す説明図。
【
図10C】3相の2次コイルの磁性体ヨークの長さを1次コイルの電気角の360度に相当する長さより大きくした構成の電力脈動を示す説明図。
【
図11A】3相の2次コイルのコイルエンドを磁性体ヨークの外側に配置した構成を示す説明図。
【
図11B】3相の2次コイルのうちの中央のコイルのコイル面積を他のコイルのコイル面積よりも小さくした構成を示す説明図。
【
図12A】3相の2次コイルのうちの中央のコイルを他のコイルよりも磁性体ヨークからの距離が大きな位置に設置した構成を示す説明図。
【
図12B】3相の2次コイルの各コイルの磁性体ヨークからの距離を順次大きくした構成を示す説明図。
【
図13A】3相の2次コイルの各コイルの巻き方を同じにした構成を示す説明図。
【
図13B】3相の2次コイルの各コイルの巻き方を交互に逆方向とした構成を示す説明図。
【
図14A】5相の2次コイルの各コイルの巻き方を同じにした構成を示す説明図。
【
図14B】5相の2次コイルの各コイルの巻き方を交互に逆方向とした構成を示す説明図。
【
図15A】3相の2次コイルのz方向の配置を示す説明図。
【
図15B】3相の2次コイルの各コイルの長さを短くした構成と配置を示す説明図。
【
図16A】1次コイルの磁性体ヨークを密に配置した場合の電力脈動を示す説明図。
【
図16B】1次コイルの磁性体ヨークにギャップを設けた場合の電力脈動を示す説明図。
【
図17A】送電回路の回路構成と電流経路の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、走行中非接触給電システムは、道路RSに設置された非接触給電装置100と、道路RSを走行する車両200とを含み、車両200の走行中に非接触給電装置100から車両200に給電することが可能なシステムである。車両200は、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。
図1において、x軸方向は車両200の進行方向を示し、y軸方向は車両200の幅方向を示し、z軸方向は鉛直上方向を示す。後述する他の図におけるx,y,z軸の方向も、
図1と同じ方向を示している。
【0009】
非接触給電装置100は、複数の送電コイル部110と、複数の送電コイル部110に交流電圧を供給する複数の送電回路120と、複数の送電回路120に直流電圧を供給する電源回路130と、受電コイル位置検出部140とを備えている。
【0010】
複数の送電コイル部110は、道路RSの進行方向に沿って設置されている。個々の送電コイル部110は、1次コイルを含んでいる。1次コイルを「送電コイル」とも呼ぶ。送電コイル部110の具体的な構成例については後述する。1次コイルは送電コイル部110として構成されている必要はなく、道路RSの進行方向に沿って複数の1次コイルが設置されていればよい。
【0011】
複数の送電回路120は、電源回路130から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電コイル部110の1次コイルに印加するインバータ回路である。電源回路130は、直流電圧を送電回路120に供給する回路である。例えば、電源回路130は、外部電源の交流電圧を整流して直流電圧を出力するAC/DCコンバータ回路として構成される。電源回路130が出力する直流電圧は、完全な直流電圧でなくてもよく、或る程度の変動(リップル)を含んでいても良い。
【0012】
受電コイル位置検出部140は、車両200に搭載されている受電コイル部210の位置を検出する。受電コイル位置検出部140は、例えば、複数の送電回路120における送電電力や送電電流の大きさから受電コイル部210の位置を検出しても良く、或いは、車両200との無線通信や車両200の位置を検出する位置センサを利用して受電コイル部210の位置を検出しても良い。複数の送電回路120は、受電コイル位置検出部140で検出された受電コイル部210の位置に応じて、受電コイル部210に近い1つ以上の送電コイル部110を用いて送電を実行する。
【0013】
車両200は、受電コイル部210と、受電回路220と、メインバッテリ230と、モータジェネレータ240と、インバータ回路250と、DC/DCコンバータ回路260と、補機バッテリ270と、補機280と、制御装置290とを備えている。
【0014】
受電コイル部210は、2次コイルを含んでおり、送電コイル部110の1次コイルとの間の電磁誘導によって誘導起電力を生じる装置である。2次コイルを「受電コイル」とも呼ぶ。受電回路220は、受電コイル部210から出力される交流電圧を、メインバッテリ230の充電に適した直流電圧に変換する回路である。例えば、受電回路220は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、その直流電圧を昇圧するDC/DCコンバータ回路とを含む回路として構成される。受電回路220から出力される直流電圧は、メインバッテリ230の充電に利用することができ、また、補機バッテリ270の充電や、モータジェネレータ240の駆動、及び、補機280の駆動にも利用可能である。
【0015】
メインバッテリ230は、モータジェネレータ240を駆動するための比較的高い直流電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ240は、3相交流モータとして動作し、車両200の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ240は、車両200の減速時にはジェネレータとして動作し、3相交流電圧を発生する。インバータ回路250は、モータジェネレータ240がモータとして動作するとき、メインバッテリ230の直流電圧を3相交流電圧に変換してモータジェネレータ240に供給する。インバータ回路250は、モータジェネレータ240がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ240が出力する3相交流電圧を直流電圧に変換してメインバッテリ230に供給する。
【0016】
DC/DCコンバータ回路260は、メインバッテリ230の直流電圧を、より低い直流電圧に変換して補機バッテリ270及び補機280に供給する。補機バッテリ270は、補機280を駆動するための比較的低い直流電圧を出力する2次電池である。補機280は、空調装置や電動パワーステアリング装置等の周辺装置である。
【0017】
制御装置290は、車両200内の各部を制御する。制御装置290は、走行中非接触給電を受ける際には、受電回路220を制御して受電を実行する。
【0018】
図2Aに示すように、送電コイル部110は、1次コイル112と、磁性体ヨーク114とを有している。受電コイル部210は、2次コイル212と、磁性体ヨーク214とを有している。この例では、1次コイル112は、U相コイル112uとV相コイル112vとW相コイル112wとを含む3相コイルとして構成されている。3つのコイル112u,112v,112wはスター結線又はデルタ結線されている。2次コイル212は、単相コイルとして構成されている。各コイル112u,112v,112w,212は、2以上の巻数を有する集中巻コイルとして構成されているが、
図2Aでは簡略化して描かれている。各コイルのコイル線を示す丸の中に付されている黒丸「・」とバツ印「×」は、電流方向が逆方向であることを示している。後述する他の図も同様である。
【0019】
磁性体ヨーク114,214はいわゆるバックヨークであり、コイル112,212の周辺の磁束密度を高めるために使用されている。送電コイル部110の磁性体ヨーク114は、1次コイル112の裏側に配置されている。「1次コイル112の裏側」とは、1次コイル112と2次コイル212の間のギャップと反対の側を意味する。同様に、受電コイル部210の磁性体ヨーク214は、2次コイル212の裏側に配置されている。磁性体ヨーク114,214とは別に、1次コイル112と2次コイル212に磁性体コアを設けてもよい。また、磁性体ヨーク114,214の裏側に、非磁性金属製の磁気シールド板をそれぞれ設けてもよい。
【0020】
図2Aには、1次コイル112の3つのコイル112u,112v,112wによる3相の電圧波形U,V,Wが描かれている。1次コイル112に印加する交流電圧の周波数は、1次コイル112から2次コイル212への送電に関して、車両200の走行中にも2次コイル212がほぼ停止していると見なせる程度に十分に高い周波数に設定される。
図2Aにおいて、2次コイル212がx方向(右方向)に一定速度で移動すると仮定すると、2次コイル212の移動周波数f
212を次式で算出できる。
f
212=1/{p
112/v
212} …(1)
ここで、p
112は1次コイル112のピッチ[m]、v
212は2次コイル212の移動速度[m/s]である。
この移動周波数f
212は、2次コイル212が複数の1次コイル112の配列方向に沿って進行するときの周波数であると考えることができる。例えば、走行中非接触給電における2次コイル212の移動周波数f
212が数十Hz~数百Hzの範囲の場合には、1次コイル112に印加する交流電圧の周波数は数十kHz~数百kHzの範囲の値に設定される。このように、1次コイル112に印加する交流電圧の周波数を2次コイル212の移動周波数f
212よりも十分に大きな値に設定すれば、1次コイル112から2次コイル212への送電に関しては、車両200の走行中にも2次コイル212がほぼ停止していると見なすことができる。但し、車両200が走行すると、1次コイル112と2次コイル212の相互の位置関係が変化するので、送電電力に変動(電力脈動)が生じる。この電力脈動については後述する。
【0021】
図2Bに示すように、1次コイル112をA相コイル112aとB相コイル112bとを含む2相コイルとし、2次コイル212を単相コイルとしてもよい。
図2Bには、1次コイル112の2つのコイル112a,112bによる2相の電圧波形A,Bが描かれている。
図2A及び
図2Bにおいて、1次コイル112は、2相や3相に限らず、4相以上としてもよい。換言すれば、2次コイル212が単相コイルの場合には、1次コイル112は、2相以上の多相コイルとして構成することができる。
【0022】
図2Cに示すように、1次コイル112を単相コイルとし、2次コイル212を3相コイルとしてもよい。或いは、
図2Dに示すように、1次コイル112を単相コイルとし、2次コイル212を2相コイルとしてもよい。2次コイル212は、2相や3相に限らず、4相以上としてもよい。換言すれば、1次コイル112が単相コイルの場合には、2次コイル212は、2相以上の多相コイルとして構成することができる。
【0023】
以上の説明から理解できるように、1次コイル112と2次コイル212のうちの一方を単相コイルとし、他方を多相コイルとすることが好ましい。この構成によれば、1次コイル112と2次コイル212の両方を多相コイルとする場合に比べて、簡素な構成で走行中の電力脈動の少ない給電を行うことが可能である。この点については更に後述する。
【0024】
図3A~
図3Fに示すように、送電コイル部110と受電コイル部210は、共振コンデンサ116,216をそれぞれ含んでいる。共振コンデンサ116,216による代表的な共振方式には、以下が存在する。
(1)S-S方式(1次側直列2次側直列方式)
S-S方式は、
図3Aに示すように、1次コイル112とその共振コンデンサ116が直列接続されており、2次コイル212とその共振コンデンサ216も直列接続されている共振方式である。
(2)P-P方式(1次側並列2次側並列方式)
P-P方式は、
図3Bに示すように、1次コイル112とその共振コンデンサ116が並列接続されており、2次コイル212とその共振コンデンサ216も並列接続されている共振方式である。
(3)P-S方式(1次側並列2次側直列方式)
P-S方式は、
図3Cに示すように、1次コイル112とその共振コンデンサ116が並列接続されており、2次コイル212とその共振コンデンサ216が直列接続されている共振方式である。
(4)S-P方式(1次側直列2次側並列方式)
S-P方式は、
図3Dに示すように、1次コイル112とその共振コンデンサ116が直列接続されており、2次コイル212とその共振コンデンサ216が並列接続されている共振方式である。
【0025】
図3E及び
図3Fは、他の共振方式を示している。
図3Eは、1次コイル112に並列接続された共振コンデンサ116pと、1次コイル112に直列接続された共振コンデンサ116sとが設けられた例である。
図3Fは、
図3Eの共振コンデンサ116sに、更にコイル113a,113bを直列接続し、2つのコイル113a,113bの間の接続点に共振コンデンサ116pの一端を接続した例である。
図3Eと
図3Fの共振方式は、1次コイル112と2次コイル212のそれぞれに共振コンデンサが並列に接続されている点で、
図3Bに示したP-P方式と共通している。
図3E及び
図3Fの例では2次コイル212には共振コンデンサ216が並列接続されているが、2次コイル212の側は任意の共振方式を適用可能である。
【0026】
共振方式としては、共振コンデンサ116が1次コイル112に並列に接続された共振方式を使用することが好ましい。2次コイル212についても同様である。この理由は、コイルに並列に接続された共振コンデンサを使用する場合には、1次コイル112と2次コイル212の結合係数に対する共振電流の依存度が小さくなるので、走行中の電力脈動を低減できるからである。
【0027】
図3A~
図3Fで説明した各種の共振方式は、
図2A~
図2Dで説明した各種のコイル構成と任意に組み合わせることが可能である。
図3A~
図3Fでは、図示の便宜上、1次コイル112と2次コイル212をそれぞれ1つのコイルとして描いているが、
図2A~
図2Dで説明したように、1次コイル112と2次コイル212の一方を単相コイルとし、他方を多相コイルとして構成することが好ましい。
【0028】
図4A及び
図4Bに示すように、2次コイル212の進行方向位置に応じた給電特性は、コイル構成と共振方式の組み合わせによって異なる。ここでは、コイル構成として、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である構成と、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である構成と、の2つのコイル構成を使用した。また、共振方式として、S-S方式とP-P方式との2つの共振方式を使用した。そして、2つのコイル構成と2つの共振方式による4つの組み合わせについて、車両200が一定速度で走行する条件下で、給電特性をシミュレーションによって評価した。給電特性としては、
図4Aに示すコイル効率と、
図4Bに示す電力脈動とを評価した。
【0029】
図4Aに示すように、コイル効率は、2次コイル212の進行方向位置に依存する。2次コイル212の進行方向位置とは、車両200の進行方向(
図2Cのx方向)に沿った複数の1次コイル112に対する2次コイル212の相対位置を意味する。1次コイル112と2次コイル212が共に単相である場合には、2次コイル212の進行方向位置においてコイル効率がゼロとなる位置が存在する。コイル効率がゼロという意味は、2次コイル212で受電できないことを意味する。一方、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である場合には、コイル効率がゼロになることがなく、コイル効率も高い値で安定している。特に、P-P方式の場合には、S-S方式よりもコイル効率が高く、かつ、安定している点で好ましい。
図4Aの傾向は、2次コイル212が3相以上の場合も同様である。
【0030】
図4Bに示すように、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である場合には、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である場合に比べて、走行中の電力脈動も小さい点で好ましい。電力脈動は、出力電力の最大値を最小値で除した値である。1次コイル112と2次コイル212が共に単相である場合は走行中の電力脈動が大きいので、同一の平均電力を出力するための瞬時電力が大きくなり、機器の大型化、高コスト化に繋がるという問題がある。更に、2次側の電力が不安定になることや、メインバッテリ230への入力電力の変動による電池劣化も問題となる。これに対して、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である場合には走行中の電力脈動が十分に小さいので、これらの問題点を解消できる。特に、P-P方式はS-S方式よりも電力脈動が更に小さい点で好ましい。図示は省略するが、P-P方式は、S-P方式やP-S方式よりも電力脈動が小さい。
図4Bの傾向は、2次コイル212が3相以上の場合も同様である。
【0031】
図4Cに示すように、共振方式として
図3Eや
図3Fの方式を用いた場合にも、電力脈動を十分に低減することが可能である。この傾向は、2次コイル212が3相以上の場合も同様である。
【0032】
図5に示す各種のコイル構成#1~#4の特性は、
図4A及び
図4Bに示したものと同様のシミュレーションを行って得られた結果である。ここでは、コイル構成として、1次コイル112が単相又は多相であり、2次コイル212が単相又は多相である4つのコイル構成#1~#4を比較している。コイル効率の観点からは、
図4Aで説明したように、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である構成#1よりも、1次コイル112と2次コイル212のうちの少なくとも一方が多相である構成#2~#4の方が好ましい。電力脈動についても、
図4Bで説明したように、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である構成#1よりも、1次コイル112と2次コイル212のうちの少なくとも一方が多相である構成#2~#4の方が好ましい。
【0033】
位置変動ロバスト性は、1次コイル112と2次コイル212の相互の位置が最適位置からy方向やz方向にずれた場合におけるコイル効率への影響を意味している。位置変動ロバスト性が高いことは、1次コイル112と2次コイル212がy方向やz方向に位置ずれしてもコイル効率がそれほど変動しないことを意味する。位置変動ロバスト性に関しても、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である構成#1よりも、1次コイル112と2次コイル212のうちの少なくとも一方が多相である構成#2~#4の方が好ましい。
【0034】
インフラコスト(「インフラストラクチャ・コスト」の略)は、非接触給電装置100と車両200の給電用の構成に要するコストである。インフラコストの観点では、1次コイル112と2次コイル212が共に単相である構成#1が最も優れているが、1次コイル112が単相で2次コイル212が多相の構成#3も十分に優れていると評価できる。一方、1次コイル112が多相で2次コイル212が単相の構成#2は、1次コイル112が単相で2次コイル212が多相の構成#3に比べてインフラコストがやや高い。また、1次コイル112と2次コイル212が共に多相の構成#4は、インフラコストが最も高い点で好ましくない。
【0035】
図5に示した4つの特性から考えると、1次コイル112と2次コイル212のうちの一方が単相で他方が多相である構成#2,#3が好ましく、1次コイル112が単相で2次コイル212の多相である構成#3が特に好ましい。
【0036】
図6A及び
図6Bに比較して示すように、1次コイル112が単相で2次コイル212が多相である構成は、1次コイル112が多相で2次コイル212が単相である構成に比べて、インバータ効率の観点からも好ましい。
図6Aのコイル構成は、
図2Aと同じであり、1次コイル112が3相で2次コイル212が単相である。
図6Bのコイル構成は、
図2Cと同じであり、1次コイル112が単相で2次コイル212が3相である。
図6A及び
図6Bの下部には、送電回路120のインバータの出力電圧と出力電流の変化が描かれている。
【0037】
図6Aのように、1次コイル112を多相とすると、1次コイル112の各相と2次コイル212の結合係数に差が生じる。
図6Aの状態では、1次コイル112のU相コイル112uと2次コイル212の結合係数が1次コイル112の他の相のコイル112v、112wと2次コイル212の結合係数に対し大きくなっている。複数の相の結合係数が異なると、複数の相のインピーダンスが異なってしまうため、複数の相に同一の相電圧を印加しても電流が複数の相で異なってしまい、電流の不均衡が生じる。電流の不平衡が生じると位相のずれを引き起こし、結果として送電回路120のインバータの力率が悪化する。力率悪化はインバータの損失を増加させる。
【0038】
一方、
図6Bのように、1次コイル112を単相とすることで、送電回路120のインバータの力率を高めることができ、インバータの損失を低減できる。また、1次コイル112を単相とすれば、送電コイル部110や送電回路120の簡素化、具体的には、素子数低減及び巻線形状の簡素化、による低コスト化を実現可能である。
【0039】
図7A及び
図7Bに比較して示すように、1次コイル112を単相とした場合に、2次コイル212を3相とするよりも2相とする方が、走行中の電力脈動の低減の観点から好ましい。
図7Aのコイル構成は、
図2Cと同じであり、1次コイル112が単相で2次コイル212が3相である。
図7Bのコイル構成は、
図2Dと同じであり、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である。
図7A及び
図7Bの下部には、送電回路120のインバータの出力電力の変化が描かれている。
【0040】
図7Aに示すように、2次コイル212を3相とすると、3つのコイル212u,212v,212wの中央に配置されるコイル212uと、端部に配置されるコイル212v,212wとが存在するコイル配置となる。この結果として、3相の電気特性(すなわち、インピーダンス)に不平衡が生じ、この不平衡により電力脈動が生じる。不平衡が生じた場合には、出力電力の周波数は、出力電圧や出力電流の2倍の周波数となる。一方、
図7Bに示すように、2次コイル212を2相とすれば、2相のコイル212a,212bが互いに等価な位置で配置されるので、2相の間に電気特性に差が生じない。この結果、2次コイル212を2相とすれば、2次コイル212を3相にした場合に比べて、電力脈動が小さくなるという利点がある。
【0041】
図8Aは、
図8B及び
図8Cの基準となる構成であり、
図7Bと同じコイル構成を示している。
図8Aでは、以下のパラメータが図示されている。
・Da:1次コイル112の電気角の360度に相当する長さ。これは、複数の1次コイル112のピッチに等しい。
・Db:車両200の前後方向に測った2次コイル212の第1相コイル212aと第2相コイル212bのずれ幅。
・L214:車両200の前後方向に測った2次コイル212用の磁性体ヨーク214の長さ。
図8Aの例では、Db=Da/4であり、L214=Daである。Da/4は、1次コイル112の電気角の90度に相当する長さである。
【0042】
図8Bは、2次コイル212の第1相コイル212aと第2相コイル212bのずれ幅Dbを、
図8Aよりも大きくして、Db>Da/4とした場合を示している。
図8Aのように、Db=Da/4とした場合には、第1相コイル212aの往路のコイル線と復路のコイル線のうちの一方が受電コイル部210の端部に存在し、他方が中央に存在する配置となる。この結果、端部側のコイル線による磁束が弱まってしまい、第1相コイル212aの磁気的な位置が等価的に受電コイル部210の中央に寄ってしまう。第2相コイル212bも同様である。2次コイル212を2相とした場合に、2相のコイル212a,212bの磁気的な位置が2次コイル212の電気角の1周期の1/4だけずれていない場合には、2相のコイル212a,212bの起電力にアンバランスが生じてしまい、これによって電力脈動が生じる。そこで、
図8Bでは、第1相コイル212aと第2相コイル212bのずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の90度に相当する長さDa/4よりも大きく設定している。このように2相のコイル212a,212bの設置位置をずらすことにより、それらの磁気的な相対位置を2次コイル212の電気角の1周期の1/4に近づけることができ、電力脈動を低減することが可能である。このような効果は、2次コイル212の相数に拘わらずに得られるが、2次コイル212を2相コイルとした場合に特に顕著である。
【0043】
図8Cは、2次コイル212用の磁性体ヨーク214の長さL214を
図8Aよりも大きくして、L214>Daとした場合を示している。上述したように、
図8Aの構成では、第1相コイル212aの往路のコイル線と復路のコイル線のうちの一方が磁性体ヨーク214の端部に存在し、他方が中央に存在する配置となるので、2相のコイル212a,212bの起電力にアンバランスが生じてしまい、これによって電力脈動が生じる。そこで、
図8Cでは、磁性体ヨーク214の長さL214を
図8Aから大きく変更し、1次コイル112の電気角の360度に相当する長さDaよりも大きく設定している。この結果、2相のコイル212a,212bの磁気的な相対位置を2次コイル212の電気角の1周期の1/4に近づけることができ、電力脈動を低減することが可能である。このような効果も、2次コイル212の相数に拘わらずに得られるが、2次コイル212を2相コイルとした場合に特に顕著である。
【0044】
図9Aに示すように、2相の2次コイル212を使用したときのシミュレーション結果によれば、1次コイル/2次コイル間の結合係数kの2乗の2次成分の振幅は、2次コイル212の機械的位相(電気角表示(°))に依存する。「結合係数kの2乗の2次成分の振幅」とは、結合係数kの2乗の値k
2の最大値と最小値の差分である。結合係数kの2乗の値k
2については、例えば
図2Dや
図7Bに示した構成において、2次コイル212のA相コイル212aと1次コイル112との結合係数をk1aとし、2次コイル212のB相コイル212bと1次コイル112との結合係数をk1bとすると、k
2=k1a
2+k1b
2が成立する。「2次コイル212の機械的位相」とは、前述した
図8Aのずれ幅Dbと同じものであり、車両の前後方向に測った第1相コイル212aと第2相コイル212bのずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角で表したものを意味している。結合係数kの2乗の値k
2(=k1a
2+k1b
2)は、1次コイル112と2次コイル212の相対位置に依らずに一定となることが理想である。しかし、実際には、結合係数kの2乗の値k
2は1次コイル112と2次コイル212の相対位置に応じて多少変化するので、結合係数kの2乗の2次成分はゼロとならない。また、一般に、結合係数kの振幅は2次コイル212の受電電圧に比例し、受電電力は受電電圧の2乗に比例するので、受電電力の2次成分である電力脈動は、結合係数kの2乗の2次成分の振幅に比例する。これらの特性を考慮すると、電力脈動を低減するためには、結合係数kの2乗の2次成分の振幅を可能な限り小さくすることが好ましい。具体的には、結合係数kの2乗の2次成分の振幅が0から0.001までの範囲内となるように2次コイル212を構成することが好ましい。また、
図9Aのシミュレーション結果においては、2次コイル212の機械的位相を1次コイル112の電気角の107±2度の範囲内に相当する値に設定することが好ましい。
【0045】
また、
図9Bに示すシミュレーション結果によれば、2次コイル212の第1相コイルと第2相コイルの相互インダクタンスMabも、2次コイル212の機械的位相(電気角表示(°))に依存する。2次コイル212の相互インダクタンスMabは無効電力に寄与するので、電力脈動を小さくするためには、2次コイル212の相互インダクタンスMabの絶対値を可能な限り小さくすることが好ましい。具体的には、2次コイル212の相互インダクタンスMabが0±0.01μHの範囲内に収まるように2次コイル212を構成することが好ましい。また、
図9Bのシミュレーション結果においては、2次コイル212の機械的位相を1次コイル112の電気角の115±2度の範囲内に相当する値に設定することが好ましい。
【0046】
更に、
図9Cに示すシミュレーション結果によれば、電力脈動自体が2次コイル212の機械的位相(電気角表示(°))に依存する。このシミュレーション結果において、電力脈動を小さくするためには、2次コイル212の機械的位相を1次コイル112の電気角の102±6度の範囲内に相当する値に設定することが好ましく、102±4度の範囲内に相当する値に設定することが更に好ましく、102±2度の範囲内に相当する値に設定することが最も好ましい。
図9Cの結果は、
図9Aで説明した結合係数kの2乗の2次成分の振幅の影響と、
図9Bで説明した相互インダクタンスMabの影響と、の両方を考慮した場合の結果に相当する。
図9A~
図9Cで説明した2次コイル212の機械的位相の好ましい範囲は、互いに異なるが、これらのいずれを採用するかは、他の事情を考慮して適宜選択することが可能である。なお、
図9A~
図9Cは、1次コイル112と2次コイル212のy方向のずれがない状態、すなわち、互いの中心線が一致した状態でシミュレーションを行った結果である。
【0047】
図10A~
図10Cは、3相の2次コイル212を使用した場合について、前述した
図8A~
図8Cと同様の構成を示している。
図10Aでは、以下のパラメータが図示されている。
・Da:1次コイル112の電気角の360度に相当する長さ。
・Db:車両200の前後方向に測った2次コイル212の各相のコイル212v,212u,212wのずれ幅。
・L214:車両200の前後方向に測った2次コイル212用の磁性体ヨーク214の長さ。
図10Aの例では、Db=Da/3であり、L214=Daである。Da/3は、1次コイル112の電気角の120度に相当する長さである。また、
図10Aの下部には、車両の進行に伴う送電電力の変化が描かれている。
【0048】
図10Bは、3相の2次コイル212の3つのコイル212v,212u,212wのずれ幅Dbを
図10Aよりも大きくして、Db>Da/3とした場合を示している。
図10Aのように、Db=Da/3とした場合には、V相コイル212vの往路のコイル線と復路のコイル線のうちの一方が受電コイル部210の端部に存在し、他方が中央に存在する配置となる。この結果、端部側のコイル線による磁束が弱まってしまい、V相コイル212vの磁気的な位置が等価的に受電コイル部210の中央に寄ってしまう。W相コイル212wも同様である。2次コイル212を3相とした場合に、3相のコイル212v,212u,212wの磁気的な位置が2次コイル212の電気角の1周期の1/3だけずれていない場合には、3相のコイル212v,212u,212wの起電力にアンバランスが生じてしまい、これによって電力脈動が生じる。そこで、
図10Bでは、各コイル212v,212u,212wのずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の120度に相当する長さDa/3よりも大きく設定している。このように3相のコイル212v,212u,212wの設置位置をずらすことにより、それらの磁気的な相対位置を2次コイル212の電気角の1周期の1/3に近づけることができ、電力脈動を低減することが可能である。このような効果は、2次コイル212の相数が3よりも大きな場合にも得ることが可能である。具体的には、2次コイル212の相数Mを3以上の整数としたとき、車両の前後方向xに測ったM個のコイルの相互のずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の(360÷M)度に相当する長さよりも大きく設定することが好ましい。なお、2次コイル212の相数Mは、通常は素数である。
【0049】
図10Cは、2次コイル212用の磁性体ヨーク214の長さL214を
図10Aよりも大きくして、L214>Daとした場合を示している。上述したように、
図10Aの構成では、V相コイル212vとW相コイル212wのそれぞれについて、往路のコイル線と復路のコイル線のうちの一方が磁性体ヨーク214の端部に存在し、他方が中央に存在する配置となるので、各コイル212v,212u,212wの起電力にアンバランスが生じてしまい、これによって電力脈動が生じる。そこで、
図10Cでは、磁性体ヨーク214の長さL214が
図10Aよりも大きくなるように変更し、1次コイル112の電気角の360度に相当する長さDaよりも大きくしている。この結果、3相のコイル212v,212u,212wの磁気的な相対位置を2次コイル212の電気角の1周期の1/3に近づけることができ、電力脈動を低減することが可能である。このような効果も、2次コイル212の相数に拘わらずに得られる。すなわち、2次コイル212の相数Mを3以上としたとき、車両の前後方向xに測ったM個のコイルの相互のずれ幅Dbは、1次コイル112の電気角の(360÷M)度に相当する長さよりも大きく設定されることが好ましい。
【0050】
図11Aに示すように、3相の2次コイル212を磁性体ヨーク214の表面に垂直な方向から観察したとき、2次コイル212のコイルエンドCeを磁性体ヨーク214の外側に配置してもよい。この例において、W相のコイル212wは、主コイル部McとコイルエンドCeとに区分されている。主コイル部Mcは車両の幅方向yに沿って延びるコイル部分であり、コイルエンドCeは車両の前後方向xに沿って延びるコイル部分である。他の相のコイル212u,212vも同様である。コイルエンドCeを磁性体ヨーク214の外側に配置するようにすれば、コイルエンドCeの磁束が通る磁路の磁気抵抗を、主コイル部Mcの磁束が通る磁路の磁気抵抗よりも大きくすることができる。ここで、「コイルエンドCeの磁束」とは、コイルエンドCeを流れる電流に応じて生成される磁束を意味する。「主コイル部Mcの磁束」も同様に、主コイル部Mcを流れる電流に応じて生成される磁束を意味する。前述した
図10Aと
図10Cの比較で説明したように、磁性体ヨーク214の長さL214が短い場合には、3つのコイル212v,212u,212wの相互インダクタンスが相間で不平衡になり、電力脈動の原因となり得る。そこで、コイルエンドCeを磁性体ヨーク214の外側に配置するようにすれば、相互インダクタンスの不平衡を低減して電力脈動を小さくすることが可能である。このような効果は、2次コイル212の相数が3を超える場合にも得られる。
【0051】
図11Bに示すように、2次コイル212を磁性体ヨーク214の表面に垂直な方向から観察したとき、3つのコイル212v,212u,212wのうちの中央に存在する特定の相のコイル212uのコイル面積Suを、他の相のコイル212v,212wのコイル面積Sv,Swよりも小さく設定してもよい。ここで、「コイル面積」とは、1つのコイルで囲われる領域の面積を意味する。前述した
図11Aの例では、車両200の幅方向xに沿ったU相コイル212uとV相コイル212vの間の距離、及び、U相コイル212uとW相コイル212wの間の距離よりも、V相コイル212vとW相コイル212wの間の距離の方が長い。このため、V相/W相間の相互インダクタンスMvwが、他の相互インダクタンスMuv,Mwuよりも小さくなり、相互インダクタンスのバランスが悪いために電力脈動の原因となる。これに対して、
図11Bに示すように、中央に存在する特定の相のコイル212uのコイル面積Suを他の相のコイル212v,212wのコイル面積Sv,Swよりも小さくすれば、相互インダクタンスMuv,Mwuが小さくなるので、3つの相互インダクタンスMuv,Mvw,Mwuがほぼ等しくなるようにバランスさせることができ、電力脈動を小さくすることが可能である。このような効果は、2次コイル212の相数が3を超える場合にも得られる。
【0052】
図12Aに示すように、3相の2次コイル212のうちの中央に配置されているU相コイル212uを、他の相のコイル212v,212wよりも磁性体ヨーク214からの距離が大きな位置に設置するようにしてもよい。前述した
図10Aの例では、3つのコイル212v,212u,212wは、いずれも磁性体ヨーク214の表面に接するように配置されている。この場合には、車両200の幅方向xに沿ったU相コイル212uとV相コイル212vの間の距離、及び、U相コイル212uとW相コイル212wの間の距離よりも、V相コイル212vとW相コイル212wの間の距離の方が長い。このため、V相/W相間の相互インダクタンスMvwが、他の相互インダクタンスMuv,Mwuよりも小さくなり、相互インダクタンスのバランスが悪いために電力脈動の原因となる。これに対して、
図12Aに示すように、U相コイル212uを他の相のコイル212v,212wよりも磁性体ヨーク214からの距離が大きな位置に設置すれば、相互インダクタンスMuv,Mwuが小さくなるので、3つの相互インダクタンスMuv,Mvw,Mwuをバランスさせることができ、電力脈動を小さくすることが可能である。
【0053】
図12Bに示すように、中央にあるU相コイル212uのみでなく、他の1つの相のコイル(例えばV相コイル212v)も磁性体ヨーク214から離れた位置に設置するようにしても良い。この場合に、3つのコイル212v,212u,212wのうちで、車両の前後方向xに沿った配列順の中央により近いコイルほど磁性体ヨーク214からの距離がより大きくなるように各コイルを配置することが好ましい。こうすれば、3つの相互インダクタンスMuv,Mvw,Mwuを更にバランスさせることができ、電力脈動を更に小さくすることが可能である。
【0054】
なお、
図12A及び
図12Bと同様の構成は、2次コイル212の相数が3以上の場合に適用可能である。すなわち、相数Mを3以上としたとき、車両の前後方向xに沿って並ぶM個のコイルのうちの中央に存在する特定相のコイルを、他の相のコイルよりも磁性体ヨーク214からの距離が大きな位置に設置することが好ましい。また、M個のコイルのうちで、車両の前後方向xに沿った配列順の中央により近いコイルほど磁性体ヨーク214からの距離がより大きくなるように各コイルを配置することが更に好ましい。更に、これらの構成において、前述した
図11Aで説明したように2次コイル212のコイルエンドCeを磁性体ヨーク214の外側に配置すれば、電力脈動を更に小さくできる。
【0055】
図13Aに示すように、3相の2次コイル212の各コイル212w,212u,212vの巻き方を同じにした構成も採用可能である。
図13Aの下部には、各コイルのコイル線を流れる電流の向きを示している。この場合に、隣接する各相の間の位相差を120度にするために、3つのコイル212w,212u,212vの相互のずれ幅Dbが、1次コイル112の電気角の120度に相当する値に設定される。
【0056】
図13Bに示すように、3相の2次コイル212のうち、特定の1相のコイル212uの巻き方を他の相のコイル212v,212wと逆方向にするようにしても良い。この場合には、隣接する各相の間の位相を120度にするために、3つのコイル212v,212u,212wの相互のずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の60度に相当する値に設定することができる。このとき、隣接するV相コイル212vとU相コイル212uの間のずれ幅Dbは電気角の60度に相当するが、U相コイル212uの巻き方が逆方向なのでU相コイル212uの電流の位相が-180度となり、V相コイル212vとU相コイル212uの位相差は120度(=|60-180|)となる。なお、車両の前後方向xに沿った個々のコイルの長さL212は任意に設定できるが、個々のコイルの長さL212を
図13Aと同じに維持した場合には、
図13Bの2次コイル212の全体の長さL1bは、
図13Aの2次コイル212の全体の長さL1aに比べて小さくなる。このように、3相の2次コイル212では、各相のコイルの巻き方向を車両の前後方向xに沿ったコイルの配列順に交互に逆方向にすることによって、2次コイル212の全体のサイズを小さくすることができる。
【0057】
図14Aに示すように、5相の2次コイル212についても、各コイル212a~212eの巻き方を同じにした構成を採用可能である。この場合に、隣接する各相の間の位相差を72度にするために、5つのコイル212a~212eの相互のずれ幅Dbが、1次コイル112の電気角の72度に相当する値に設定される。
【0058】
図14Bに示すように、5相の2次コイル212の各コイルの巻き方を、コイルの配列順に逆方向にしても良い。この場合には、隣接する各相の間の位相を72度にするために、3つのコイルの相互のずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の36度に相当する値に設定することができる。なお、車両の前後方向xに沿った個々のコイルの長さL212を
図14Aと同じに維持した場合には、
図14Bの2次コイル212の全体の長さL2bは、
図14Aの2次コイル212の全体の長さL2aに比べて小さくなる。このように、5相の2次コイル212でも、各相のコイルの巻き方向を車両の前後方向xに沿ったコイルの配列順に交互に逆方向とすることによって、2次コイル212の全体のサイズを小さくすることができる。
【0059】
図13B及び
図14Bで説明したコイルの好ましい巻き方は、2次コイル212の相数Mが3以上の場合に適用可能である。一般に、2次コイル212の相数Mを3以上の整数としたとき、少なくとも1相のコイルの巻き方向を、他の相のコイルの巻き方向と異なる方向とすることが好ましく、特に、巻き方向を交互に逆方向とすることが好ましい。また、車両の前後方向xに測ったM個のコイルの相互のずれ幅Dbを、1次コイル112の電気角の(360÷M÷2)度に相当する長さよりも大きく設定することが好ましい。但し、ずれ幅Dbを1次コイル112の電気角の(360÷M)度に相当する長さよりも過度に大きくすると、却って2次コイル212のサイズが大きくなる可能性がある。この点を考慮すると、車両の前後方向xに測ったM個のコイルの相互のずれ幅Dbが、1次コイル112の電気角の(360÷M÷2)度以上(360÷M÷2+20)度以下の範囲内に相当する値に設定されることが特に好ましい。これらのいずれかの構成を採用すれば、2次コイル212の全体のサイズを小さくすることができる。
【0060】
図15Aは、
図13Bに示した3相の2次コイル212について、3つのコイル212v,212u,212wの平面的な配置と、z方向の配置とを示したものである。z方向は、磁性体ヨーク214の表面と垂直な方向である。なお、
図15Aでは図示の便宜上、磁性体ヨーク214の図示を省略している。この例では、車両の前後方向xに測った個々のコイルの長さL212は180度に設定されており、3つのコイル212v,212u,212wがz方向に沿って順に積層されているので、2次コイル212の全体のz方向の高さH1aは比較的大きい。
【0061】
図15Bに示すように、車両の前後方向xに測った個々のコイルの長さL212を
図15Aよりも小さくすることによって、2次コイル212の全体の高さH1bを小さくすることが可能である。このとき、コイルの長さL212は、以下の(2)式を満たすことが好ましい。
L212≦180-180÷M×N-Wc …(2)
ここで、Mは2次コイル212の相数、Nは1以上(M-2)以下の整数、Wcは各コイルの巻線幅である。また、上記(2)式の右辺は、1次コイル112の電気角で表されている。
上記(2)式の右辺はN=1の場合に最も大きいので、これを考慮すると上記(2)式は次の(3)式に書き換えることができる。
L212≦180-180÷M-Wc …(3)
3相コイルの場合には、Nは1しか取り得ないので、上記(2)式と(3)式は同じである。
【0062】
3相の2次コイル212の各コイルの長さL212が上記(2)式又は(3)式を満足する場合には、
図15Bの下部に示すように、2つのコイル212v,212wを互いに交差させること無しに、磁性体ヨーク214から同じ高さ位置に並べて配置することができ、残りの1つのコイル212uをそれらの上に積層できる。この結果、2次コイル212の全体のz方向の高さH1bを、
図15Aにおける高さH1aに比べて小さくできる点で好ましい。上記(2)式又は(3)式は、相数Mが3以上の場合に適用可能である。このとき、上記(2)式又は(3)式を満たした上で、更に、M個のコイルうちの2つ以上のコイルを磁性体ヨーク214から同じ高さ位置に並べて配置することが好ましい。
【0063】
図16A及び
図16Bに比較して示すように、1次コイル112用の磁性体ヨーク114にギャップ114gを設けることが電力脈動の低減の観点から好ましい。
図16Aのコイル構成は、
図2Dと同じであり、1次コイル112が単相で2次コイル212が2相である。1次コイル112用の磁性体ヨーク114は、隙間なく並べられている。
図16Aでは、中央の1次コイル112のみに通電し、両端の1次コイル112には通電していない場合に発生する主磁束MFと漏洩磁束LFとが描かれている。複数の磁性体ヨーク114を隙間なく並べると、通電していない1次コイル112の磁性体ヨーク114にも磁束が広がるので漏洩磁束LFが大きくなり、この結果、電磁妨害や、人体暴露、金属過熱などの不具合を生じる可能性がある。仮に、磁性体ヨーク114の磁気抵抗を高めると、漏洩磁束LFは低減するが、効率が低下したり、磁束密度分布の歪みにより電力脈動が増加したりする可能性がある。
【0064】
一方、
図16Bでは、磁性体ヨーク114が、1次コイル112のコイル線が存在する位置以外の位置に設けられたギャップ114gを有している。具体的には、隣接する1次コイル112の境界に相当する位置にギャップ114gがそれぞれ設けられている。1次コイル112のコイル線が存在する位置以外の位置に設けられたギャップ114gを設けるようにすれば、ギャップ114gが磁気的ギャップとして機能するので、漏洩磁束LFを低減することができる。また、主磁束MFはギャップ114gを通過しないので、ギャップ114gによって主磁束MFは低下せず、給電性能が低下することもない。この結果、
図16Aで説明した不具合が解消されるので、効率が向上し、電力脈動を低減できる。なお、ギャップ114gは、磁気的なギャップとして機能すればよいので、隙間として形成されていても良く、あるいは、隙間に樹脂や非磁性金属などの非磁性体を充填したものとして形成されていても良い。
【0065】
図17Aに示すように、送電回路120は、2つのスイッチを有するハーフブリッジ回路として構成することが好ましい。
図17Aでは、隣接する3つの送電回路120_1,120_2,120_3と、3つの1次コイル112_1,112_2,112_3と、3つの共振コンデンサ116_1,116_2,116_3を含む回路構成の例が示されている。回路要素の符号の末尾に付された追加符号「_1」「_2」「_3」は、3つの回路を区別するために便宜的に付したものである。区別の必要が無い場合には、追加符号「_1」「_2」「_3」の無い符号を用いて説明する。
【0066】
個々の送電回路120は、電源回路130に接続されており、電源回路130から直流電圧を受けている。送電回路120は、ハイサイドスイッチ21と、ローサイドスイッチ22と、これらの2つのスイッチ21,22に並列に接続されたコンデンサ23とを有している。コンデンサ23は省略可能である。スイッチ21,22にスイッチング信号を供給するスイッチング信号生成回路は図示が省略されている。ハイサイドスイッチ21とローサイドスイッチ22の間の接続点NPは、共振コンデンサ116を介して1次コイル112の一端に接続されている。複数の1次コイル112は、互いに直列に接続されている。隣接する1次コイル112の間の接続点CPは、共振コンデンサ116を介して、1つの送電回路120のハイサイドスイッチ21とローサイドスイッチ22との間の接続点NPに接続されている。
【0067】
図17Aでは、電流経路CRの一例が破線で示されている。この電流経路CRは、第1の送電回路120_1のハイサイドスイッチ21_1と第3の送電回路120_3のローサイドスイッチ22_3とがオンで、他のスイッチがオフとなったときに形成される経路である。この状態では、2つの1次コイル112_1,112_2が1組の1次コイルとして働いている。電流経路CRと逆向きに電流を流す場合には、第1の送電回路120_1のローサイドスイッチ22_1と第3の送電回路120_3のハイサイドスイッチ21_3とがオンとなり、他のスイッチがオフとなる。
【0068】
図17Bは、
図17Aと同じ回路構成において、
図17Aとは異なる電流経路CR1,CR2を形成した例を示している。第1の電流経路CR1は、第1の送電回路120_1のローサイドスイッチ22_1と第2の送電回路120_2のハイサイドスイッチ21_2とがオンとなって形成される経路である。第2の電流経路CR2は、第2の送電回路120_2のハイサイドスイッチ21_1と第3の送電回路120_3のローサイドスイッチ22_3とがオンとなって形成される経路である。この状態では、2つの1次コイル112_1,112_2がそれぞれ1次コイルとして働いている。
図17Aと
図17Bでは、電流経路における1次コイル112と共振コンデンサ116の接続状態が異なるので、共振条件も異なる。従って、共振コンデンサ116の容量は、
図17Aと
図17Bのいずれの電流経路を使用するかに応じて予め適切な値に設定される。
【0069】
図17A及び
図17Bの回路構成によれば、ハイサイドスイッチ21とローサイドスイッチ22とを有する簡単な構成の送電回路120を用いて送電を行うことができるので、フルブリッジ回路で構成された送電回路を用いる場合に比べてスイッチ素子の数を低減することが可能である。
【0070】
本開示は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。また、上述した種々の特徴的な構成は、互いに矛盾しない限り、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
21…ハイサイドスイッチ、22…ローサイドスイッチ、100…非接触給電装置、110…送電コイル部、112…1次コイル、114…磁性体ヨーク、114g…ギャップ、116…共振コンデンサ、120…送電回路、130…電源回路、140…受電コイル位置検出部、200…車両、210…受電コイル部、212…2次コイル、212a…第1相コイル、212b…第2相コイル、214…磁性体ヨーク、216…共振コンデンサ、220…受電回路