(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124460
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ケーブル保護管
(51)【国際特許分類】
H02G 9/06 20060101AFI20240905BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240905BHJP
F16L 9/127 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G1/06
F16L9/127
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104722
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2020056385の分割
【原出願日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2019067424
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陸太
(72)【発明者】
【氏名】森高 紘平
(72)【発明者】
【氏名】久保 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】澤田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】冨永 充志
(57)【要約】
【課題】灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された、電線共同溝内で変形しにくい電力通信管を提供する。
【解決手段】電力通信管1は、地中に埋設される電力通信管であって、塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体21を備えた直管部2を備え、前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、直管部2の内周面の赤外線反射率が20%以上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル保護管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部を備え、
前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記直管部の内周面の波長800~1100nmにおける赤外線反射率の平均値が20%以上であることを特徴とするケーブル保護管。
【請求項2】
前記直管部の端部に受口部を備える、請求項1に記載のケーブル保護管。
【請求項3】
前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなり、
前記有機顔料が青色有機顔料である、請求項1又は2に記載のケーブル保護管。
【請求項4】
前記顔料が、非カーボン系無機顔料のみからなり、
前記非カーボン系無機顔料が、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合物からなり、
前記有色を呈する非カーボン系無機顔料が、酸化クロムと酸化鉄との複合酸化物と、青色無機顔料との混合物からなる、請求項1又は2に記載のケーブル保護管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力通信管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、景観改善や防災等のために、電力ケーブル及び電力ケーブルに関係する設備等を地中に埋設する電線類地中化(無電柱化)が推進されている。
電線類地中化を行う場合、電力ケーブルは、ケーブル保護管内に収容される。地中には、ケーブル保護管が中心軸に沿って多数連結した状態で埋設され、ケーブル保護管路が構成される。ケーブル保護管としては、例えば硬質塩化ビニル系樹脂管が用いられる。
【0003】
電力ケーブルは通電量に応じて発熱量が変わり、電力需要の増える夏場は電力ケーブルの温度が非常に高温となり、ケーブル保護管は高温にさらされる。したがって、電力ケーブルを収容するケーブル保護管(以下、「電力管」ともいう。)には、高温下において土圧や輪圧に耐え得ることが求められ、電力管として用いられる硬質塩化ビニル系樹脂管には、衝撃強度及び耐熱強度の高い樹脂及び配合が用いられる(特許文献1)。
電力管として用いられる硬質塩化ビニル系樹脂管はオレンジ色とされている。
【0004】
電線類地中化を行う場合、地中に電線共同溝(C.C.BOX)を構築し、電線共同溝に複数の電力ケーブルを埋設することがある。また、電線共同溝に複数の通信ケーブルを埋設することがある。通信ケーブルも、電力ケーブルと同様に、ケーブル保護管に収容される。通信ケーブルを収容するケーブル保護管(以下、「通信管」ともいう。)は、電力管のような衝撃強度及び耐熱強度は要求されないため、一般向けの硬質塩化ビニル系樹脂管が用いられる。一般向けの硬質塩化ビニル系樹脂管は灰色とされている。
【0005】
電線共同溝においては、例えば
図1に示すように、多数の電力管130が連結されて構成された複数の電力管路120と、多数の通信管230が連結されて構成された1以上の通信管路220とが埋設される。1つの電力管路120には1本の電力ケーブル110が収容される。1つの通信管路220には複数本の通信ケーブル210が、直接又はさや管240に挿入された状態で収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近になり、電線共同溝を普及させるため、特殊で高コストなオレンジ色の硬質塩化ビニル系樹脂管ではなく、低コストな一般向けの灰色の硬質塩化ビニル系樹脂管を電力管に用いることが認められた。また、通信管について、加工や施工が高コストな曲がり管だけを用いて通信管路の曲線部を構築するのではではなく、直管どうしを特殊な継手で接続したり、受口付きの直管どうしを接続し、この接続部分を曲げたりすることで通信管路の曲線部を構築する方法が開発されている。
しかし、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂管は一般的に、顔料としてカーボンブラックを含む。カーボンブラックは蓄熱性が高いため、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂管を電力管に用いると、電力ケーブルから発生する熱により高温になりやすい。電線共同溝に電力管と隣接して通信管が埋設されている場合、電力管が高温になると、その熱によって通信管も高温になりやすい。
灰色の硬質塩化ビニル系樹脂管が高温になると、強度が低下し、土圧や輪圧によって変形するおそれがある。特に、硬質塩化ビニル系樹脂管の埋設位置が浅くなると、その上を車両が通過する際にかかる圧力が大きくなり、硬質塩化ビニル系樹脂管が割れたり潰れたりするおそれがある。
また、通信管についても、反りが発生した状態で通信管路の曲線部を施工したり、配管した後に反りが発生したりすると、接続部分において通信管の端部が通信管路内部に突出し、通信管路内部の通信ケーブルやさや管を傷つけるおそれがある。
【0008】
本発明は、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された、電線共同溝内で変形しにくい電力通信管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体を備えた直管部を備え、
前記顔料が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記直管部の内周面の赤外線反射率が20%以上であることを特徴とする電力通信管。
〔2〕前記顔料がカーボンブラックを実質的に含まない、前記〔1〕の電力通信管。
〔3〕前記顔料が非カーボン系無機顔料のみからなる、前記〔1〕又は〔2〕の電力通信管。
〔4〕前記顔料のうち有色を呈する顔料が有機顔料のみからなる、前記〔1〕又は〔2〕の電力通信管。
〔5〕前記顔料が非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなる、前記〔1〕又は〔2〕の電力通信管。
〔6〕地中に埋設される電力通信管であって、
塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体と、前記管体の内周面上に位置する塗膜とを備えた直管部を備え、
前記塗膜が、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記直管部の内周面の赤外線反射率が20%以上であることを特徴とする電力通信管。
〔7〕前記塗膜がカーボンブラックを実質的に含まない、前記〔6〕の電力通信管。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された、電線共同溝内で変形しにくい電力通信管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電線共同溝を説明する部分破断斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る電力通信管の部分破断側面図である。
【
図3】電力通信管の他の例を示す部分破断側面図である。
【
図4】電力通信管の他の例を示す部分破断側面図である。
【
図5】実施例1、3及び比較例1の電力通信管について、内周面の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電力通信管について、実施形態を示して説明する。ただし本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明において「電力通信管」は、電力管及び通信管の総称である。
「電力管」は、地中に埋設される電力ケーブルを収容する。
「通信管」は、電力ケーブルとともに地中に埋設される通信ケーブルを収容する。
【0013】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電力通信管1は、直管部2と、受口部3とを備える。直管部2は、同一径を有する円筒状に形成されている。受口部3は、直管部2の一端側に拡径して形成されている。直管部2と受口部3とは、テーパー管部4によって連絡されている。
直管部2の他端部は、別の電力通信管1の受口部3に挿し込まれる挿入部5とされている。直管部2の外周面には、他の電力通信管1の受口部3内への挿し込み深さを規定するための挿入標線6が設けられている。
受口部3には、受口部3の内周面に止水材としてのゴム輪11を収容するための拡径部3aが全周にわたって形成されている。
【0014】
直管部2は、灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物で構成された管体21を備える。
灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む。灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物については後で詳しく説明する。
管体21は、単層でもよく多層でもよい。多層である場合、各層を構成する灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は同じでもよく異なってもよい。
【0015】
管体21の呼び径は、例えば、100~150(管体21の外径が114mm~170mm)であってよい。電力通信管1が電力管である場合、管体21の呼び径は、典型的には100~150(管体21の外径が114mm~170mm)である。電力通信管1が通信管である場合、管体21の呼び径は、典型的には100~150(管体21の外径が114mm~170mm)である。呼び径はA呼称である。
管体21は、例えば、JIS K 6741に規定されるVP管又はVU管であってよい。VP管とVU管は外径が同じであるが、管の厚さが異なっており、VP管はVU管よりも管の厚さが厚くされている。具体的には、外径を管の厚さで割った数値(外径/管厚さ)がVP管では17~20とされているのに対し、VU管では30~38とされている。
呼び径が同じ場合、管の厚さが薄いVU管の方が、電力ケーブルから発生した熱の影響を受けやすい。本実施形態にあっては、電力ケーブルから発生した熱の影響を抑制できるので、管体21がVU管であっても、押出成形時の押出し速度が高く熱による影響を受けにくく、樹脂自体の劣化による黄変(ヤケ)が起こりにくい。
一方、VP管又はVU管よりも管の厚さを厚くしてもよい。例えば、外径を管の厚さで割った数値(外径/管厚さ)を15~17としてもよい。管の厚さを厚くすることで、高温下だけでなく低温下でも強度を高くすることができる。
【0016】
電力通信管1が電力管である場合、直管部2の内周面の赤外線反射率は、20%以上であり、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。赤外線反射率が20%以上であれば、電力ケーブルから発生した熱にさらされたときに電力管の温度が上昇しにくく、熱の影響を受けにくい。直管部の内周面の赤外線反射率は高いほど好ましく、上限に特に制限はないが、例えば60%であってよい。
電力通信管1が電力管である場合、直管部の外周面の赤外線反射率に特に制限はない。
【0017】
電力通信管1が通信管である場合、直管部2の外周面の赤外線反射率は、20%以上であり、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。赤外線反射率が20%以上であれば、電力ケーブルから発生した熱にさらされたときに通信管の温度が上昇しにくく、熱の影響を受けにくい。直管部の外周面の赤外線反射率は高いほど好ましく、上限に特に制限はないが、例えば60%であってよい。
電力通信管1が通信管である場合、直管部の内周面の赤外線反射率に特に制限はない。
【0018】
本実施形態では、直管部2の内周面は管体21の内周面であり、直管部2の内周面の赤外線反射率は、管体21を構成する硬質塩化ビニル系樹脂組成物の顔料(管体21が多層である場合は、最内層を構成する硬質塩化ビニル系樹脂組成物の顔料)によって調整できる。顔料中、後述する顔料(I)の含有量が多いほど、又はカーボンブラックの含有量が少ないほど、管体21の内周面の赤外線反射率が高まる傾向がある。
また、本実施形態では、直管部2の外周面は管体21の外周面であり、直管部2の外周面の赤外線反射率は、管体21を構成する硬質塩化ビニル系樹脂組成物の顔料(管体21が多層である場合は、最外層を構成する硬質塩化ビニル系樹脂組成物の顔料)によって調整できる。
赤外線反射率は、波長800~1600nmにおける分光反射率の平均値を指す値であり、特に波長800~1100nmにおける分光反射率の平均値が20%以上であることが好ましい。赤外線反射率は、紫外可視近赤外分光光度計により測定される。詳しくは実施例に記載のとおりである。
【0019】
(灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物)
灰色の硬質塩化ビニル系樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」ともいう。)は、塩化ビニル系樹脂と顔料とを含む。
本樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤を含むことができる。
【0020】
<塩化ビニル系樹脂>
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルの共重合体、それらの塩素化物が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
塩化ビニルの共重合体としては、塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマー又は重合体との共重合体等が挙げられる。
【0021】
塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン化合物;プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド化合物等が挙げられる。これらの共重合性モノマーは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な重合体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマー等からなるアクリル系共重合体等が挙げられる。これらの共重合性重合体は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
(メタ)アクリレートとはアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
塩化ビニルの共重合体において、塩化ビニルモノマーと上記の共重合性モノマー又は重合体との比率は、硬質塩化ビニル系樹脂管の性能や目的に応じて適宜されればよく、特に限定されるものではない。
【0022】
塩化ビニル系樹脂としては、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。塩化ビニルの単独重合体又は共重合体の製造において、塩化ビニル等の重合方法としては従来公知の方法でよく、例えば、懸濁重合法等が挙げられる。
【0023】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、600~3000が好ましく、800~2000がより好ましく、900~1200がさらに好ましい。平均重合度が600以上であれば、管体21の機械的強度がより優れる。平均重合度が3000以下であれば、成形しやすい。特に、電力通信管は電力ケーブルから発生する熱にさらされるため、平均重合度が900以上とすることで高温下での機械的強度を優れたものとできる。また、一般に電力通信管は外径が大きく塩化ビニル系樹脂と顔料とが混練しづらいが、平均重合度を1200以下とすることで塩化ビニル系樹脂の流動性が向上し、塩化ビニル系樹脂と顔料とが混練しやすく、色ムラが起こりにくい。
上記の平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ろ過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、日本工業規格JIS K 6721の「塩化ビニル樹脂試験法」に準拠して測定される平均重合度を意味する。
【0024】
<顔料>
本樹脂組成物において顔料は、本樹脂組成物を、JIS K 6741に規定されるように、灰色の色調とするために用いられる。
顔料は、本樹脂組成物を灰色の色調とするために、有色(非白色)を呈する顔料を含む。顔料は、典型的には、有色を呈する顔料と白色を呈する顔料とを含む。
【0025】
顔料は、非カーボン系無機顔料及び有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、これらを総称して「顔料(I)」ともいう。)を含む。顔料(I)は、カーボンブラックに比べ、赤外線吸収性が低い。そのため、顔料が(I)を含むことで、管体21の内周面の赤外線反射率を高くできる。
顔料は、必要に応じて、顔料(I)以外の他の顔料を含むことができる。
【0026】
非カーボン系無機顔料は、鉱物や金属の化学反応により得られた化合物(酸化物等)である。非カーボン系無機顔料としては、有色(非白色)を呈する非カーボン系無機顔料、白色を呈する非カーボン系無機顔料等が挙げられる。これらの非カーボン系無機顔料は、本樹脂組成物を灰色の色調に調色可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
【0027】
有色を呈する非カーボン系無機顔料としては、クロム、鉄、コバルト、銅、マンガン、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、アルミニウム、バナジウムからなる群より選択される金属を1種(単塩)又は複数種(複塩)含有する化合物が挙げられる。複塩の具体例としては、Fe-Co-Cr系、Cu-Cr系、Fe-Cr系、Fe-Mn系、Cu-Mn系、Cu-Mg系、Cu-Bi系、Mn-Bi系、Y-Mn系、Co-Al系、Fe-Co-Al-Mg系等の塩が挙げられる。また、上述の金属を含有する化合物としては、上述の金属の、酸化物、水酸化物、硫化物、ケイ酸塩、フェロシアン化塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
有色を呈する非カーボン系無機顔料としては、赤外線反射率をより低くできることから、クロム含有化合物が好ましく、Fe-Cr系がより好ましい。
有色を呈する非カーボン系無機顔料としては、色調安定性がより優れることから、酸化物が好ましい。
【0028】
白色を呈する非カーボン系無機顔料としては、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、高屈折率且つ高白色度である点で、二酸化チタンが好ましい。
【0029】
顔料(I)が非カーボン系無機顔料である場合、非カーボン系無機顔料としては、本樹脂組成物を灰色に調色する観点から、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合顔料が好ましい。
前記混合顔料において、有色を呈する非カーボン系無機顔料としては、上述の有色を呈する非カーボン系無機顔料の1種又は複数種の組み合わせによって、黒色を呈する顔料が好ましい。
黒色を呈する顔料としては、互いに補色の関係又は補色の関係に近い色を呈する2種以上の顔料の混合顔料;互いに補色又は補色の関係に近い色を呈する2種以上の顔料それぞれを構成する金属イオンを複数含む複塩顔料;及びそれらの混合物が挙げられる。
高い赤外線反射率と色調安定性とをより良好に得る観点から、有色を呈する非カーボン系無機顔料としては、緑色の酸化クロム(Cr2O3)と、その補色となる赤色の顔料(例えば酸化鉄)とを組み合わせて黒色に調色された混合顔料;酸化クロムと酸化鉄とを含む複合酸化物;又はそれらの混合物が好ましく、酸化クロムと酸化鉄とを含む複合酸化物がより好ましい。
前記混合顔料において、有色を呈する非カーボン系無機顔料と白色を呈する非カーボン系無機顔料との合計の含有量に対する有色を呈する非カーボン系無機顔料の含有比率は、本樹脂組成物が灰色となる範囲で適宜調整でき特に限定されないが、例えば18~58質量%であってよい。
【0030】
有機顔料は、石油等から合成されたものである。有機顔料としては、有色(非白色)を呈する有機顔料が挙げられる。
有色を呈する有機顔料としては、特に限定されず、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料(フタロシアニン銅等)、スレン系顔料、染料レーキ系顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有色を呈する有機顔料としては、色調安定性がより優れる点で、フタロシアニン系顔料が好ましく、フタロシアニン銅がより好ましい。
【0031】
顔料(I)は、有色(非白色)を呈する顔料であってもよく、白色を呈する顔料であってもよく、有色を呈する顔料及び白色を呈する顔料の混合物であってもよい。
顔料(I)のうち白色を呈する顔料としては、白色を呈する非カーボン系無機顔料が好ましい。
顔料(I)のうち有色を呈する顔料としては、有色を呈する非カーボン系無機顔料であってもよく、有色を呈する有機顔料であってもよく、有色を呈する非カーボン系無機顔料及び有色を呈する有機顔料の混合物であってもよい。
【0032】
顔料(I)が非カーボン系無機顔料である場合、非カーボン系無機顔料の含有量としては、顔料の分散不均一性による色調の不均一性を抑制する観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.050質量部以上が好ましい。また、非カーボン系無機顔料の含有量としては、さらに押出成形における機器への汚染を抑制する観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.050~0.500質量部がより好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、非カーボン系無機顔料の含有量としては、0.055~0.450質量部が好ましく、0.065~0.350質量部がより好ましく、0.070~0.250質量部がさらに好ましい。
【0033】
顔料(I)が有機顔料である場合、有機顔料の含有量としては、赤外線反射性を与える観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましい。また、有機顔料の含有量としては、さらに十分な赤外線反射性を与える観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01~1.0質量部がより好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、有機顔料の含有量としては、0.02~0.8質量部が好ましく、0.02~0.6質量部がより好ましく、0.02~0.4質量部がさらに好ましい。
【0034】
顔料(I)が非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物である場合、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の合計の含有量としては、赤外線反射性を与える観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましい。また、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の合計の含有量としては、さらに十分な赤外線反射性を与える観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01~1.0質量部がより好ましい。これらの効果をより良好に得る観点から、非カーボン系無機顔料及び有機顔料の合計の含有量としては、0.02~0.8質量部が好ましく、0.02~0.6質量部がより好ましく、0.02~0.4質量部がさらに好ましい。
非カーボン系無機顔料及び有機顔料の合計の含有量に対する非カーボン系無機顔料の含有比率は、10~100質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、70~98質量%がさらに好ましい。
【0035】
他の顔料としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。
本樹脂組成物において顔料は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。カーボンブラックは赤外線吸収性が高いので、顔料がカーボンブラックを実質的に含まないことで、管体21の内周面の赤外線反射率を20%以上としやすい。
「実質的に含まない」とは、赤外線反射率が20%を下回らないことを意味する。
カーボンブラックの含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以下が好ましく、0.01質量部以下がより好ましく、0質量部が特に好ましい。
【0036】
本樹脂組成物中の顔料の総含有量に対する顔料(I)の含有比率は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、本樹脂組成物の顔料は顔料(I)のみからなることが特に好ましい。
【0037】
顔料の総含有量に対する有色を呈する顔料の含有比率は、10~60質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましい。
顔料の総含有量に対する白色を呈する顔料の含有比率は、40~90質量%が好ましく、50~85質量%がより好ましい。
【0038】
本発明の好ましい一態様において、本樹脂組成物の顔料は非カーボン系無機顔料のみからなる。非カーボン系無機顔料は色調安定性に優れるため、顔料が非カーボン系無機顔料のみからなるものであれば、管体21の退色が起こりにくい。
【0039】
本発明の好ましい他の一態様において、本樹脂組成物の顔料のうち有色を呈する顔料は有機顔料のみからなる。有機顔料は塩化ビニル系樹脂への分散性が優れるため、有色を呈する顔料が有機顔料のみからなるものであれば、管体21の色ムラが起こりにくい。
本態様において顔料が白色を呈する顔料を含む場合、白色を呈する顔料は、白色を呈する非カーボン系顔料のみからなることが好ましい。
【0040】
本発明の好ましい他の一態様において、本樹脂組成物の顔料は非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなる。顔料が非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物からなるものであれば、管体21の色ムラが起こりにくく、しかも管体21の退色を抑制できる。
【0041】
顔料(I)が非カーボン系無機顔料及び有機顔料の混合物である場合、有機顔料が青色で、他の色が非カーボン系無機顔料であることが好ましい。青色の有機顔料は、有機顔料であるため分散性に優れ、しかも他の色の有機顔料に比べて色調安定性に優れる。そのため、管体21の色ムラを抑制しつつ、管体21の退色をより抑制できる。
青色の有機顔料としては、例えばフタロシアニン銅(フタロシアニンブルー)が挙げられる。
青色の有機顔料と組み合わせる他の色の非カーボン系無機顔料としては、例えば、前記した、有色を呈する非カーボン系無機顔料(特に黒色を呈する顔料)と白色を呈する非カーボン系無機顔料との混合顔料が挙げられる。この混合顔料と青色の有機顔料とを組み合わせれば、色ムラをより抑制し、かつ色調安定性がより向上する。
【0042】
<添加剤>
添加剤としては、分散剤、安定化剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、充填剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。これらの添加物の中でも、分散剤、安定化剤及び充填剤が好ましい。
分散剤としては特に限定されず、例えば、シリカ、ポリカルボン酸(例えばポリアクリル酸)のナトリウム塩やアンモニウム塩、界面活性剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
安定化剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤、バリウム-亜鉛系安定剤、バリウム-カドミウム系安定剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛等のステアリン酸塩系安定剤(金属石鹸);サリチル酸エステル系、べンゾフェノン系、べンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの安定化剤の中でも、ステアリン酸塩(ステアリン酸系安定剤)が好ましく、ステアリン酸鉛がより好ましい。
【0044】
本樹脂組成物にステアリン酸塩を含ませる場合、ステアリン酸塩の含有量としては、より一層優れた色調安定性を得る観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5~2質量部が好ましく、0.8~1.7質量部がより好ましく、1~1.5質量部がさらに好ましく、1.1~1.4質量部が特に好ましい。
本樹脂組成物が有色を呈する非カーボン系無機顔料を含む場合、ステアリン酸塩の含有量としては、より一層優れた色調安定性を得る観点から、有色を呈する非カーボン系無機顔料1質量部に対し、10~54質量部が好ましく、15~53質量部がより好ましく、20~52質量部がさらに好ましく、22~52質量部が特に好ましい。
【0045】
安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。
内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルステアレート、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリオレフインワックス、エステルワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万~200万のアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの充填剤の中でも、より優れた色調安定性を得る観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0050】
本樹脂組成物に炭酸カルシウムを含ませる場合、炭酸カルシウムの含有量としては、より一層優れた色調安定性を得る観点から、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、5質量部以上が好ましい。炭酸カルシウムの含有量の上限としては特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、9質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0051】
<電力通信管の製造方法>
電力通信管1は、例えば、塩化ビニル系樹脂と、顔料(I)を含む顔料と、必要に応じて添加剤とを混合して本樹脂組成物を調製する工程(調製工程)と、本樹脂組成物を成形する工程(成形工程)と、を含む製造方法により製造できる。
【0052】
調製工程において、塩化ビニル系樹脂、顔料等の混合方法としては、ホットブレンド法又はコールドブレンド法等の公知の方法を用いることができる。
成形工程において、本樹脂組成物の成形方法としては、公知の成形方法を用いることができる。例えば、本樹脂組成物を押出成形法により成形して同一径を有する円筒状の管体を得、管体の一端部を、加熱したオイルバスに浸漬して加熱したあと拡径金型を挿入する等の方法により拡径して受口部を形成することにより電力通信管1を製造できる。
【0053】
<用途>
電力通信管1は、地中に埋設される電力ケーブル又は電力ケーブルとともに地中に埋設される通信ケーブルを収容する。
電力ケーブル又は通信ケーブルを地中に埋設する際には、典型的には、複数の電力通信管1が中心軸に沿って多数連結した状態で埋設され、電力管路又は通信管路が構成される。
【0054】
電力通信管1は、電線共同溝に好適に用いられる。
電線共同溝においては、例えば
図1に示すように、多数の電力管130が連結されて構成された複数の電力管路120と、多数の通信管230が連結されて構成された1以上の通信管路220とが埋設される。1つの電力管路120には1本の電力ケーブル110が収容される。1つの通信管路220には複数本の通信ケーブル210が、直接又はさや管240に挿入された状態で収容される。これら電力管130、通信管230等に電力通信管1を適用できる。
【0055】
以上、実施形態を示して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。
【0056】
電力通信管の形状は、
図2に示すものに限定されない。
例えば、受口部の形状が異なっていてもよい。例えば上記実施形態では、拡径部3a以外の部分の受口部3が同一径で形成された例を示したが、
図3に示すように、テーパー管部4から拡径部3aにかけて縮径する形状としてもよい。
受口部に挿入される他の電力通信管の直管部が所定の角度で可動できるよう、受口部3の拡径部3a及び受口部3の開口部が拡径していてもよい。この場合、直管部2と受口部3のみを備えた電力通信管で、曲線部を有する管路を構築することができる。
電力通信管は、受口部を備えていなくてもよい。この場合、
図4に示すように、直管部2A、2Bのみを備えた電力通信管1A、1Bどうしを、直管部2A、2Bを所定の角度で可動可能な受口を両端に備えた両受口継手7で接続することで、直管部2A、2Bのみを備えた電力通信管と両受口継手で、曲線部を有する管路を構築することができる。
このように、受口部又は継手を介して直管部のみを備えた電力通信管で曲線部を有する管路を構築すると、直管部どうしの接続部分において直管部の端部が管路内面に突出するが、本発明においては電力通信管が変形しにくいため、直管部の端部が意図しない方向や寸法で管路内面に突出するのを防ぐことができる。
【0057】
直管部は、管体に加えて、管体の内周面上に位置する塗膜を備えていてもよい。
管体の内周面上に塗膜を備える場合、直管部の内周面は塗膜の表面である。したがって、電力通信管が電力管である場合、塗膜の表面の赤外線反射率は20%以上である。
管体の内周面上に位置する塗膜を備える場合、管体の内周面の赤外線反射率は、20%以上であってもよく、20%未満であってもよい。
【0058】
直管部は、管体に加えて、管体の外周面上に位置する塗膜を備えていてもよい。
管体の外周面上に塗膜を備える場合、直管部の外周面は塗膜の表面である。したがって、電力通信管が通信管である場合、塗膜の表面の赤外線反射率は20%以上である。
管体の外周面上に位置する塗膜を備える場合、管体の外周面の赤外線反射率は、20%以上であってもよく、20%未満であってもよい。
【0059】
塗膜の表面の赤外線反射率を20%以上とする場合、塗膜は、顔料(I)を含むことが好ましい。
塗膜は、他の顔料を含むことができる。赤外線反射率を低くする観点から、塗膜は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。
塗膜は、典型的には、顔料のほか、バインダーを含む。バインダーとしては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。
【0060】
塗膜は、顔料(I)を含む塗料を管体の内周面又は外表面に塗装することによって形成できる。塗装方法としては、公知の塗装方法を採用でき、特に制限はない。
塗膜の厚さは、例えば1~100μmであってよい。
【実施例0061】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1~3、比較例1)
<硬質塩化ビニル系樹脂組成物の調製>
表1に示す配合に従って、顔料及び分散剤を混合して顔料組成物を調製し、得られた顔料組成物、塩化ビニル系樹脂及び添加剤をスーパーミキサー(100L、カワタ社製)にてコールドブレンド法で攪拌混合し、硬質塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
表1に示される数値において、例えば酸化チタンについて「0.038-0.053」との記載は、酸化チタンが0.038質量部から0.053質量部の間の量で配合されたことを意味する。それぞれの成分の詳細は以下の通りである。
【0063】
・塩化ビニル系樹脂:塩化ビニル単独重合体(商品名「TS-1000R」、徳山積水工業社製、平均重合度1000)。
・ステアリン酸鉛:商品名「SAK-NSBN」、サンエース社製。
・炭酸カルシウム:商品名「ホワイトン305S」、白石カルシウム社製。
・酸化チタン:白色無機顔料、商品名「R-3L」、堺化学社製。
・クロム化合物:酸化クロムと酸化鉄との複合酸化物、黒色無機顔料。
・コバルトブルー:青色無機顔料。
・銅フタロシアニン:青色有機顔料。
・ジケトピロロピロール:赤色有機顔料。
・モノアゾイエロー:黄色有機顔料。
・カーボンブラック:商品名「トーカブラック#7350」、東海カーボン社製。
・分散剤:シリカ。
【0064】
<電力通信管の作製>
上記で得られた硬質塩化ビニル系樹脂組成物を、2軸異方向回転押出機(商品名「SLM-50」、長田製作所社製)に供給し、呼び径100、外径114mm、長さ1m、管の厚さが7.1mmの管を成形した。
得られた管(電力通信管)について、以下の測定及び試験を行った。
【0065】
<赤外線反射率測定>
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製「UV-3600Plus」)を用いて、実施例1、3及び比較例1の電力通信管の内周面の波長800~1100nmの分光反射率を測定し、その平均値を電力通信管の内周面の赤外線反射率とした。結果を表1に示す。また、各例の分光反射率曲線を
図4に示す。なお、本実施例で作製した電力通信管の内周面の赤外線反射率と外周面の赤外線反射率とは同じである。
【0066】
<圧縮強度試験>
電力通信管から長さ50mmを切り取って管状の試験体を作製した。
試験体の内周面に赤外線が均一に照射されるよう、出力250Wの赤外線ランプ(「アイR形赤外線電球」250W型、岩崎電気社製)の照射部を試験体の内表面から40cm離間して対向するよう設置し、試験体を回転させながら内周面へ赤外線を30分間照射した。
照射完了直後に、「C.C.BOX管路システム研究会規格「電線共同溝 電力用管路材」CCB E003-1:2018に規定される圧縮強度試験に準拠し、以下の手順で圧縮強度試験を行った。
照射完了直後の試験体を2枚の平板間に挟み、管軸に直角方向に10mm/分の速さで圧縮し、規定荷重が作用した時の試験体の扁平量を測定し、内径に対する扁平率を計算した。荷重は、呼び径100の場合の規定荷重である145Nとした。結果を表1に示す。
【0067】
<耐衝撃性試験>
電力通信管から長さ30cmを切り取って管状の試験体を作製した。
試験体の打撃試験箇所の内周面に、出力250Wの赤外線ランプ(「アイR形赤外線電球」250W型、岩崎電気社製)の照射部を試験体の内表面から40cm離間して対向するよう設置して赤外線を30分間照射した。
照射完了直後に、「C.C.BOX管路システム研究会規格「電線共同溝 電力用管路材」CCB E003-1:2018に規定される耐衝撃性試験に準拠し、以下の手順で耐衝撃性試験を行った。
照射完了直後の試験体の打撃試験箇所(赤外線照射箇所)に、JIS A 8902に規定されたショベル丸型の刃先を試験体の管軸に直角に当て、緩衝材(CRゴム:厚さ10mm、硬度35)を下面に貼りつけた10kgの錘を13cmの高さかたスコップに自然落下させた。その後、試験体の貫通(穴開き)の有無を観察した。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4、比較例2)
表1に示す配合に従って、実施例1と同様にして硬質塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
次に、管の厚さを3.1mmとしたこと以外は実施例1同様にして電力通信管の作製を行った。
得られた電力通信管について、上記の測定及び試験を行った。
【0069】
【0070】
実施例1~4の電力通信管は、赤外線照射時の昇温が抑制されており、赤外線照射時の圧縮強度及び耐衝撃性に優れていた。