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  • 特開-装飾被膜面の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124462
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】装飾被膜面の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20240905BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240905BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240905BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240905BHJP
   B05C 19/00 20060101ALI20240905BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20240905BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240905BHJP
   B05C 17/02 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D1/36 Z
B05D7/24 303K
B05D7/24 303J
B05D5/06 G
B05C19/00
E04F13/02 D
E04F13/02 H
E04F13/08 A
B05C17/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104823
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2019209485の分割
【原出願日】2019-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2019033999
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 一裕
(57)【要約】
【課題】コントラストを有する美観性の高い装飾被膜面の形成方法を提供する。
【解決手段】
本発明の装飾被膜面の形成方法は、被塗面に、着色被膜面を形成する工程、上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、塗装用ローラーを用いて塗付し、クリヤー被膜を形成する工程を含み、上記塗装用ローラーが、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上の吸液材が円筒外周面に混在するローラーブラシであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾被膜面の形成方法であって、
被塗面に、着色被膜面を形成する工程、
上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、塗装用ローラーを用いて不均一に塗付し、不連続なクリヤー被膜を形成する工程、
を含み、
上記クリヤー塗料は、合成樹脂及び透明性を有する粉体を含み、
上記透明性を有する粉体は、ガラス粉砕物、ガラスフレーク、透明樹脂フレーク、マイカ、焼成マイカから選ばれるものであり、
上記塗装用ローラーが、硬度及び/ または密度が異なる少なくとも2 種以上の吸液材が円筒外周面に混在するローラーブラシであることを特徴とする装飾被膜面の形成方法。
【請求項2】
上記着色被膜面は、少なくとも2種以上の着色領域が混在することを特徴とする請求項1に記載の装飾被膜面の形成方法。
【請求項3】
上記着色被膜は、艶消し被膜であることを特徴とする請求項1に記載の装飾被膜面の形成方法。
【請求項4】
上記着色被膜は、鏡面光沢度が40以下であることを特徴とする請求項1に記載の装飾被膜面の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な装飾被膜面の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の壁面に対し、種々の模様を有する装飾被膜を形成することが行われている。特に近年は、デザイン性の高い建築物が多く設計される中で、例えば、自然石調、木目調、金属調、レザー調、陶磁器(釉薬)調、アンティーク調など、様々な装飾被膜が要望される。このような装飾被膜の一例として、複数の被覆材を部分的に塗り重ねて模様を形成した装飾被膜が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、下塗り塗料を全面に塗付し、次いで下塗り塗料より濃い色の塗料(模様付け塗料)を模様付けする方法が記載されている。しかしながら、上記特許文献1では、色、質感等のコントラストが不十分であったり、単調で人工的な仕上がりとなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-266911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、コントラストを有する自然な仕上がりが得られ、美観性の高い装飾被膜面の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、被塗面に、着色被膜面を形成し、該着色被膜面上に、クリヤー塗料を特定の方法で塗付する装飾被膜面の形成方法に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.装飾被膜面の形成方法であって、
被塗面に、着色被膜面を形成する工程、
上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、塗装用ローラーを用いて不均一に塗付し、不連続なクリヤー被膜を形成する工程、
を含み、
上記クリヤー塗料は、合成樹脂及び透明性を有する粉体を含み、
上記透明性を有する粉体は、ガラス粉砕物、ガラスフレーク、透明樹脂フレーク、マイカ、焼成マイカから選ばれるものであり、
上記塗装用ローラーが、硬度及び/ または密度が異なる少なくとも2 種以上の吸液材が円筒外周面に混在するローラーブラシであることを特徴とする装飾被膜面の形成方法。
2.上記着色被膜面は、少なくとも2種以上の着色領域が混在することを特徴とする1.に記載の装飾被膜面の形成方法。
3.上記着色被膜は、艶消し被膜であることを特徴とする1.に記載の装飾被膜面の形成方法。
4.上記着色被膜は、鏡面光沢度が40以下であることを特徴とする1.に記載の装飾被膜面の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、被塗面に、着色被膜面を形成する工程、上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、特定の塗装用ローラーを用いて塗付し、クリヤー被膜を形成する工程を含む装飾被膜面の形成方法であり、コントラストを有する自然な仕上がりが得られ、美観性の高い装飾被膜面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(I)は、着色被膜面の一例を示す正面図、(II)は、(I)に、クリヤー被膜を形成した本発明装飾被膜面の一例を示す正面図である。
図2図2(I)は、着色被膜面の一例を示す正面図、(II)は、(I)に、クリヤー被膜を形成した本発明装飾被膜面の一例を示す正面図である。
図3図3は、本発明で使用するローラーブラシの断面図である。
【符号の説明】
【0010】
1.装飾被膜面
2.着色被膜面
2a.着色領域A
2b.着色領域B
3.クリヤー被膜
4.塗装用ローラー
4a~4e.スポンジ質材
4f.円筒外周面
4g.円筒外径方向
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明は、装飾被膜面の形成方法であって、被塗面に、着色被膜面を形成する工程(第1工程)、上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、特定の塗装用ローラーを用いて塗付し、クリヤー被膜を形成する工程(第2工程)を含むことを特徴とする。本発明で形成される装飾被膜面は、着色被膜面の表面側に不均一に塗付されたクリヤー被膜が形成されている。これにより、正面や斜め方向から装飾被膜面を視認した場合に、少なくともコントラストが異なる部分が混在し、コントラストを有する自然な仕上がりが得られ、美観性の高い装飾被膜面を得ることができる。
【0013】
図1に、本発明によって形成される装飾被膜面の一例(正面図)を示す。図1(I)は、被塗面に着色被膜を形成した一例であり、(II)は、(I)の着色被膜面上に、クリヤー被膜を塗付して形成される装飾被膜面の一例である。本発明の装飾被膜面の形成方法によれば、図1(II)のように正面から視認した場合に、不均一にクリヤー被膜が形成されており、光沢(艶)、色調、深み感、質感等の差(以下、「光沢(艶)の差等」ともいう。)によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面を形成することができる。
【0014】
本発明では、第1工程として、被塗面に、被覆材を塗付して着色被膜面を形成する(図1(I))。着色被膜を形成する被覆材としては、樹脂、及び顔料を含むものが使用できる。本発明では、顔料の種類、混合比率等を調整することにより、色、光沢等を設定することができる。樹脂と顔料の混合比率は、樹脂固形分100重量部に対して、顔料が好ましくは5~500重量部(より好ましくは20~400重量部、さらに好ましくは30~300重量部)である。
【0015】
樹脂としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられる。これらは架橋反応性を有するものであってもよく、またその形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明では特に、水分散性樹脂及び/または水溶性樹脂が好適に用いられる。使用可能な樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。なお、本発明では、セメント等の水硬性結合材は、被膜の色を制限するおそれがあるため使用しないことが望ましい。
【0016】
顔料としては、公知の着色顔料、体質顔料等が使用できる。このうち、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウムフレーク顔料、パール顔料、光輝性顔料等が挙げられる。これら着色顔料の1種または2種以上を用いることにより任意の色相に着色することができる。
【0017】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。体質顔料の種類、混合比率等を適宜設定することにより、被覆材を所望の光沢度に調整することができる。
【0018】
第1工程において、被覆材により形成される着色被膜は、艶消し被膜であることが好ましい。この場合、光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性に優れた模様を容易に形成することが可能である。なお、ここで言う「艶消し」とは、一般に艶消しと呼ばれるものの他に、3分艶、5分艶等と呼ばれるものも包含する。
【0019】
具体的に、本発明では、鏡面光沢度によって艶を規定することができる。着色被膜における鏡面光沢度は、好ましくは40以下(より好ましくは20以下、さらに好ましくは0.1以上10以下)である。なお、「鏡面光沢度」とは、JIS K5600-4-7「鏡面光沢度」に準じて測定される値である。
【0020】
本発明の被覆材は、上記成分以外に、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、公知の添加剤、例えば、骨材、染料、増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、希釈溶媒等を含むものであってもよい。被覆材は、上述の各成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0021】
図2に、本発明によって形成される装飾被膜面の別の一例(正面図)を示す。図2(I)のように正面から視認した場合、本発明の着色被膜面は、少なくとも2種以上の着色領域(例えば、着色領域A、着色領域B、・・等)が混在することが好ましい。このような着色被膜面の場合、図2(II)のように着色被膜による色のコントラスト、及びクリヤー層による光沢(艶)の差等によるコントラストの組み合わせにより、よりいっそう美観性の高い装飾被膜面を形成することができる。第1工程において、少なくとも2種以上の着色領域が混在する形成方法としては、例えば以下の方法によって形成できる。
(1-1)色調が異なる2種以上の被覆材を使用する方法
(1-2)色調が異なる2種以上の着色粒子を含む被覆材を使用する方法
【0022】
まず、上記(1-1)の方法について説明する。
上記(1-1)の方法では、色調が異なる2種以上の被覆材を用いて、2色以上の着色領域が混在するように着色被膜を形成すればよい。具体的には、
(1-1A)第1被覆材を全体に塗付後、不連続(部分的)に第2被覆材を塗付する方法
(1-1B)第1被覆材及び第2被覆材をそれぞれ不連続(部分的)に塗付する方法
等が挙げられる。着色被膜を正面から見たときの各着色領域の形状は、特に限定されず、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、菱形、多角形、不定形、筋状、格子状等の形状が挙げられる。
【0023】
本発明において、色調が異なる2種以上の被覆材とは、少なくとも色差(△E)が3以上(より好ましくは5以上)であるものを使用することが好ましい。このように色差(△E)が特定の値であることにより、着色領域同士のコントラストを有する美観性の高い被膜を形成することができる。色差(△E)の上限は特に限定されないが、好ましくは90以下であり、所望の意匠に応じて設定することができる。例えば、コントラストを付与しつつ、統一感のある落ち着いた意匠を形成する場合には、色差(△E)の上限は20以下とすることが好ましい。一方、着色領域同士のコントラストが明瞭なアクセント意匠を形成する場合には、色差(△E)を20超90以下とすることが好ましい。
【0024】
なお、本発明における色差(△E)は、色彩色差計を用いて測定される値である。具体的には、標準白紙に、すきま250μmのフィルムアプリケータを用いてそれぞれの被覆材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態(気温23℃、相対湿度50%。以下同様。)で48時間乾燥したときの被膜のL値、a値、b値(測定点3箇所以上の平均値)より下記式にて算出することができる。
<式>△E={(L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*20.5
(式中、L*1、a*1、b*1はそれぞれ第1被覆材のL、a、b。L*2、a*2、b*2はそれぞれ第2被覆材のL、a、b。)
【0025】
上記(1-1A)において、第1被覆材の塗付け量は、被塗面の種類・状態、仕上がり等を勘案して適宜設定すればよいが、好ましくは30~500g/m、より好ましくは80~400g/m、さらに好ましくは90~300g/mである。第1被覆材の塗付け量が上記範囲を満たす場合、被塗面の全面を覆う連続的な被膜が形成されやすい。また、第2被覆材の塗付け量は、所望の仕上り(模様等)に応じて、適宜設定すればよいが、第1被覆材よりも第2被覆材の塗付け量が少ないことが好ましく、好ましくは100g/m以下、より好ましくは5~90g/m、さらに好ましくは10~80g/mである。第2被覆材の塗付け量が上記範囲を満たす場合、不連続な被膜が形成されやすく、異色の着色領域が混在する着色被膜面を安定して形成することができる。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0026】
上記(1-1B)において、第1被覆材、第2被覆材の塗付け量は、少なくとも1種が、好ましくは100g/m以下(より好ましくは5~90g/m、さらに好ましくは10~80g/m)であればよい。もう1種の被覆材は、被塗面の種類・状態・仕上がり等を勘案して適宜設定すればよいが、好ましくは500g/m以下(より好ましくは100g/m以下、さらに好ましくは5~90g/m、特に好ましくは10~80g/m)である。上記(1-1B)では、第1被覆材、第2被覆材の塗付け量が、それぞれ100g/m以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明における被覆材は、塗付時に各種溶媒で希釈することができる。被覆材の希釈割合は、被覆材に対して、好ましくは0~50重量%(より好ましくは0~30重量%)の割合とする。上記被覆材の塗付時の粘度は、好ましくは0.1~10Pa・s(より好ましくは0.5~9.5Pa・s)である。なお、粘度は、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)でBH型粘度計(回転数20rpm)を用いて測定される値(4回転目の指針値)である。
【0028】
上記(1-1A)、(1-1B)において、第2被覆材を塗付するタイミングは、特に限定されないが、第1被覆材(先に塗付した着色被覆材)がJIS K5400に規定される指触乾燥、半硬化乾燥、硬化乾燥等の状態となった後が好適である。本発明では、第1被覆材の指触乾燥後(より好ましくは半硬化乾燥後、さらに好ましくは硬化乾燥後)に、第2被覆材を塗付することが好ましい。なお、本発明において、乾燥・硬化は、好ましくは常温(5~40℃)で行えばよい。
【0029】
被覆材を塗付する際の塗付器具としては、例えば、スプレー、ローラー、ブラシ(刷毛等を含む)、押圧具(叩き具等を含む)等が挙げられる。このうち、ローラーとしては、例えば、繊維質ローラー、多孔質(スポンジ質)ローラー等が挙げられ、押圧具としては、例えば、スポンジ、フェルト、織布、不織布等を有するものが使用できる。
【0030】
上記(1-1A)において、着色被覆材を被塗面全体に塗付する場合には、例えば、スプレー、ローラー、ブラシ等を使用することが望ましい。ローラーとしては、特に繊維質ローラーが好適である。
【0031】
本発明では、上記(1-1A)、(1-1B)のように着色被覆材を不連続に塗付する場合、スポンジ質材を用いることが好適である。本発明では、被覆材を不連続に塗付する際、このようなスポンジ質材を用いることにより、コントラストを付与しつつ、着色領域同士の境界を非直線状態(入り組んだ状態)にすることができ、美観性をいっそう高めることができる。
【0032】
次に、上記(1-2)の方法について説明する。
上記(1-2)の方法では、色調が異なる2種以上の着色粒子を含む被覆材を用いて、2色以上の着色領域が混在するように着色被膜を形成すればよい。この方法によれば、1回の塗装で、2色以上の着色領域が混在する着色被膜が形成できる。
【0033】
上記(1-2)における被覆材としては、具体的には、
・結合材を含む分散媒中に、非造膜性の着色粒子が分散した被覆材
・分散媒中に、造膜性の着色粒子が分散した被覆材
等が挙げられる。着色被膜を正面から見たときの各着色領域の形状は、塗装後の着色粒子の形状等に依存し、例えば円形、楕円形、不定形等の形状が挙げられる。
【0034】
上記(1-2)の被覆材中の着色粒子としては、ゲル状または液状のものが好適である。このような着色粒子は、結合材及び着色顔料を含む着色材をゲル状またはカプセル化することによって得ることができる。非造膜性の着色粒子としては、着色材がゲル化されたゲル状の着色粒子が使用でき、造膜性の着色粒子としては、液状の着色材を内包するカプセル状の着色粒子が使用できる。結合材、着色顔料としては、上記と同様のものが使用できる。着色材をゲル化またはカプセル化する方法としては、公知の方法を採用すればよい。
【0035】
上記(1-2)における被覆材の塗装では、例えばスプレー、ローラー等の公知の塗付具が使用できる。このような被覆材の塗付け量は、被覆材の形態にもよるが、固形分換算で好ましくは50~800g/m程度である。塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。被覆材の乾燥は、常温(5~40℃)で行えばよい。
【0036】
本発明では第2工程として、上記着色被膜面上に、クリヤー塗料を、特定の塗装用ローラーを用いてに塗付し、クリヤー被膜を形成する(図1(II)、図2(II))。これにより、着色被膜面上には、厚みが不均一な(凹凸を有する)クリヤー被膜、不連続なクリヤー被膜(例えば、網状、島状等)、あるいは厚みが不均一かつ不連続なクリヤー被膜等の不均一な模様を有する被膜が形成される。これにより装飾被膜面を正面や斜め方向から視認した場合に、少なくともコントラストが異なる部分が混在し、光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面を得ることができる。本発明では、不連続なクリヤー被膜、あるいは厚みが不均一かつ不連続なクリヤー被膜が好ましい。
【0037】
クリヤー塗料としては、透明被膜を形成するものであれば限定されるものではなく、結合材としては、透明被膜が形成可能なものであればよく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような合成樹脂としては、特に水分散性樹脂(樹脂エマルション)、水溶性樹脂等の水性樹脂が好適である。
【0038】
また、クリヤー塗料は、無色透明、着色透明のいずれであってもよく、また艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。このようなクリヤー塗料は、クリヤー被膜の透明性を維持することができる程度に、着色顔料、体質顔料、及びその他の粉体成分等を混合することができる。着色顔料、体質顔料としては、上述と同様のものを使用することができる。その他の粉体成分としては、透明性を有する粉体が好ましく、例えば、ガラス粉砕物、ガラスフレーク、透明樹脂フレーク、マイカ、焼成マイカ等が使用できる。特に、本発明のクリヤー塗料は、ガラスフレーク、マイカ、焼成マイカ、パール顔料、光輝性顔料から選ばれる1種を含むことが好適である。これにより、装飾被膜面を正面や斜め方向から視認した場合に、不均一な光反射(キラキラ感)性が付与された光反射透明被膜を形成することができ、光沢(艶)の差等によるコントラストがよりいっそう高まり美観性の高い装飾被膜面を得ることができる。
【0039】
上記粉体成分の平均粒子径は、好ましくは0.01~1000μm(より好ましくは0.02~800μm、さらに好ましくは0.03~600μm)である。また、粉体成分の含有量は、上記結合材の固形分100重量部に対して、好ましくは0.01~50重量部(より好ましくは0.03~30重量部、さらに好ましくは0.05~20重量部)である。なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により測定することができる。
【0040】
なお、クリヤー塗料により形成される被膜の隠蔽率は、好ましくは60%以下(より好ましくは1~50%)である。またクリヤー塗料の塗付時の粘度は、好ましくは0.1~10Pa・s(より好ましくは0.5~9.5Pa・s)である。
【0041】
本発明で使用する塗装用ローラーは、図3に示すような硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上の吸液材(図3:4a~4e)が円筒外周面(図3:4f)に混在するローラーブラシであることを特徴とする。このような特定のローラーブラシを使用することにより、不均一な模様を付与することができる。特に、円筒外周面に凹凸形状を有する場合、よりいっそう美観性の高い模様を付与することができる。本発明において、ローラーブラシの外径(図3:R)は、所望の模様に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは20~60mm(より好ましくは30~50mm)である。
【0042】
上記ローラーブラシにおいて、円筒は、軸を備えたハンドルを装着できるように空洞となっており、該空洞にハンドル軸を装着して使用することができるものである。円筒(筒状の芯材)としては、特に限定されず、例えば、プラスチック製、木製、金属製、紙製等の芯材を用いることができ、また、ハンドル軸と芯材との密着性を高めるために、ハンドル軸と芯材の間に、例えば、プラスチック製、ゴム製、ガラス製、金属製、繊維製等の補強材を用いることもできる。補強材は、ハンドル軸と一体化されたものであってもよい。
【0043】
また、円筒外周面に混在する吸液材としては、例えば、フェルト、不織布、スポンジ材等が挙げられ、これらの硬度、密度のいずれかまたは両方が異なる少なくとも2種以上(好ましくは3種以上)のものを混合して使用する。本発明では、2種以上(好ましくは3種以上)のスポンジ材を組み合わせて使用することが好ましい。各吸液材の硬度は、好ましくは10~3000N(より好ましくは20~2000N、さらに好ましくは30~1500N)、密度は、好ましくは1~300kg/m(より好ましくは3~200kg/m、さらに好ましくは5~150kg/m)である。このような吸液材を組み合わせたローラーブラシを使用することにより、各吸液材の変形具合や被覆材の転写性等に対応した模様を形成することができる。ここで言う、「硬度」とは、JIS K6400-2に準じ、試験片の厚さ40%まで圧縮したときの力から測定される硬さ(C法)の値である。また、「密度」とは、JIS K7222に準じ、試験片の重量及び寸法から算出される見掛け密度の値である。
【0044】
また、上記吸液材は、円筒外周面を覆うように固定された形態が好ましく、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上(好ましくは3種以上)の吸液材が円筒外径方向(図3:4g)に積み重なるように固定されている形態がより好ましい。さらには、複数の吸液材が外周方向及び外径方向にランダムに混在するように圧縮成形された形態であることがいっそう好ましい。このような吸液材を有するローラーブラシを使用することにより、本発明の効果を高めることができる。
【0045】
上記吸液材は、外形が不定形の立体形のものであり、その個々の大きさは、好ましくは1~30mm(より好ましくは2~20mm)である。このような吸液材が集合して、吸液体を形成する。本発明では、大きさの異なる複数の吸液材が混在することが好ましい。このような場合、硬度及び/または密度に加え大きさも異なる吸液材が円筒外周面にランダムに混在するため、本発明の効果を一層高めることができる。また、吸液材どうしの間で不定形の凹凸形状が形成されやすいため、本発明の効果をより一層高めることができる。なお、ここで言う「大きさ」は、外形の最長軸であり、例えば、一辺が所定寸法の升目を有する篩いにより篩い分けされて測定されるものである。また、円筒外周面に固定された吸液体の厚みは、個々の吸液材の大きさにもよるが、好ましくは50mm以下(より好ましくは1~30mm、さらに好ましくは2~15mm)である。さらに、本発明では、吸液体の外周面に所望の模様に応じて凹凸形状を設けることが好ましい。凹凸形状を設ける方法としては、吸液材の圧縮成形時にエンボス加工等をする方法や、圧縮成形された吸液材を部分的に除去する方法等が挙げられる。これにより、本発明の効果をより一層高めることができる。圧縮成形された吸液材を部分的に除去する場合、摘み取り、毟り等の公知の方法によれば、ランダムな凹凸形状が得られやすい。
【0046】
クリヤー塗料は、上記特定の塗装用ローラーを用いることによって、不均一な被膜を形成することができる。具体的に、本発明では、クリヤー塗料を塗装用ローラーに含ませた後、上記着色被膜面に対し、接触転動させることにより、クリヤー塗料を不均一に塗付する。クリヤー塗料の塗付け量は、好ましくは10~300g/m(より好ましくは20~250g/m)である。
【0047】
<被塗面>
本発明における被塗面は、好ましくは、建築物、土木構造物等の基材表面、特に、内外壁、天井、建具等の表面を構成する基材である。このような基材としては、例えば、石膏ボード、コンクリート、モルタル、磁器タイル、煉瓦、セメント板、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、パーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、合板、木質板、鋼板、プラスチック板、ガラス板、等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたものであってもよい。
【実施例0048】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0049】
被覆材として、以下のものを用意した。
【0050】
・被覆材1-1
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、黄色酸化鉄、体質顔料)を主成分とする淡灰色系被覆材(L値:89.1、a値:-0.3、b値:4.1、光沢度:11、加熱残分:54重量%、粘度:3.5Pa・s、隠蔽率:97%、顔料比率:樹脂固形分100重量部に対し130重量部)
【0051】
・被覆材1-2
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、体質顔料)を主成分とする白色系被覆材(L値:97.4、a値:-0.4、b値:1.6、光沢度:11、加熱残分:57重量%、粘度:5Pa・s、隠蔽率:97%、顔料比率:樹脂固形分100重量部に対し134重量部、被覆材1-1との色差△E:8.7)
【0052】
・被覆材2-1
アクリル樹脂エマルション、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、体質顔料)を主成分とする濃灰色系被覆材(L値:36.5、a値:-0.2、b値:-1.8、光沢度:10、加熱残分:40重量%、粘度:2.1Pa・s、隠蔽率:98%、顔料比率:樹脂固形分100重量部に対し140重量部)
【0053】
・被覆材2-2
アクリル樹脂エマルション、顔料(カーボンブラック、黄色酸化鉄、体質顔料)を主成分とする黒色系被覆材(L値:26.4、a値:0.1、b値:-0.3、光沢度:10、加熱残分:56重量%、粘度:4.8Pa・s、隠蔽率:98%、顔料比率:樹脂固形分100重量部に対し138重量部、被覆材2-1との色差△E:10.2)
【0054】
・クリヤー塗料1
アクリル樹脂エマルションを主成分とするクリヤー塗料(加熱残分:35重量%、粘度:3.0Pa・s)
・クリヤー塗料2
アクリル樹脂エマルション、焼成マイカ(平均粒子径200μm)を主成分とするクリヤー塗料(加熱残分:35重量%、粘度:3.0Pa・s、焼成マイカ比率:樹脂固形分100重量部に対し5重量部)
【0055】
(実施例1)
基材(スレート板)に対し、第1工程として被覆材1-1を塗付け量120g/mで全面に繊維質ローラー塗りし、24時間乾燥させ着色被膜面を形成した。次いで、第2工程としてクリヤー塗料1を塗付け量20g/m図3に示すような硬度及び/または密度が異なる5種のスポンジ材1~5(各スポンジ材は、大きさ2~18mmを満たす不定形立体)が混在し、円筒外周面にランダムな凹凸形状を有するローラーブラシ(外径45mm、吸液体の厚み2~10mm)によって塗付し、24時間乾燥させ不連続なクリヤー被膜を形成した。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。以上の方法より、淡灰色の着色被膜面において、光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面が得られた。
・スポンジ材1:硬度45~60N、密度50~100kg/m
・スポンジ材2:硬度75~110N、密度15~30kg/m
・スポンジ材3:硬度110~140N、密度15~50kg/m
・スポンジ材4:硬度110~300N、密度30~85kg/m
・スポンジ材5:硬度10~12kN、密度5~15kg/m
【0056】
(実施例2)
基材(スレート板)に対し、第1工程として被覆材1-1を塗付け量120g/mで全面に繊維質ローラー塗りし、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させた。次いで、被覆材1-2を塗付け量40g/mでスポンジ質材(硬度75~110N、密度15~30kg/m)を用いて不連続に叩き塗りし、24時間乾燥させ着色被膜面を形成した。次いで、第2工程としてクリヤー塗料1を塗付け量30g/mで実施例1と同様のローラーブラシを用いて塗付し塗りし、24時間乾燥させ不連続なクリヤー被膜を形成した。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。以上の方法より、淡灰色領域と白色領域が混在し、さらに光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0057】
(実施例3)
基材(スレート板)に対し、第1工程として被覆材2-1を塗付け量120g/mで全面に繊維質ローラー塗りし、指触乾燥以上の状態となるように2時間乾燥させた。次いで、被覆材2-2を塗付け量50g/mでスポンジ質材(硬度75~110N、密度15~30kg/m)を用いて不連続に叩き塗りし、24時間乾燥させ着色被膜面を形成した。次いで、第2工程としてクリヤー塗料1を塗付け量30g/mで実施例1と同様のローラーブラシを用いて塗付し塗りし、24時間乾燥させ不連続なクリヤー被膜を形成した。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。以上の方法より、濃灰色領域と黒色領域が混在し、さらに光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面が得られた。
【0058】
(実施例4)
基材(スレート板)に対し、第1工程として被覆材1-1を塗付け量120g/mで全面に繊維質ローラー塗りし、24時間乾燥させ着色被膜面を形成した。次いで、第2工程としてクリヤー塗料2を塗付け量20g/mで実施例1と同様のローラーブラシを用いて塗付し、24時間乾燥させ、不連続なクリヤー被膜を形成した。塗装及び乾燥は、全て標準状態にて行った。以上の方法より、淡灰色の着色被膜面において、部分的に光反射(キラキラ感)を有し、光沢(艶)の差等によるコントラストを有する美観性の高い装飾被膜面が得られた。

図1
図2
図3