(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124470
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/36 20060101AFI20240905BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240905BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M4/36 A
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105541
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2022072898の分割
【原出願日】2014-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2013088165
(32)【優先日】2013-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 実
(57)【要約】
【課題】集電体である金属箔と負極活物質との密着性を向上させ、長期信頼性を実現する
。
【解決手段】基材に電極活物質層(負極活物質或いは正極活物質を含む)を形成し、電極
活物質層にスパッタリング法を用いて金属膜を形成した後、基材と電極活物質を界面で分
離して電極を形成する。スパッタリング法を用いた金属膜で覆うことによって金属膜と接
するそれぞれの粒子が接着された電極活物質をリチウムイオン二次電池の一対の電極のう
ち、少なくとも一方の電極(負極或いは正極)として用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質粒子と、金属膜と、樹脂膜と、集電体と、を有する二次電池であって、
前記金属膜は、前記活物質粒子と接する第1の領域を有し、
前記金属膜は、前記集電体と接する第2の領域を有し、
前記金属膜は、前記集電体と前記活物質粒子の間に位置する前記樹脂膜と接する第3の領域を有し、
前記第2の領域において、前記金属膜と前記集電体は面接触し、
前記金属膜は、チタンを有し、
前記樹脂膜は、ポリフッ化ビニリデンを有する、二次電池。
【請求項2】
請求項1において、
さらにグラフェンを有し、
前記活物質粒子は、前記グラフェンと接し、
前記金属膜は、前記グラフェンと接する、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二次電池の構造及びその作製方法に関する。特にリチウムイオン二次電池の電極に関する
。
【背景技術】
【0002】
二次電池としては、ニッケル水素電池や、鉛蓄電池や、リチウムイオン二次電池などが挙
げられる。
【0003】
これらの二次電池は、携帯電話などで代表される携帯情報端末の電源として用いられてい
る。中でも、リチウムイオン二次電池は、高容量、且つ、小型化が図れるため、開発が盛
んに行われている。
【0004】
特許文献1には、正極活物質または負極活物質の分散や、正極活物質層または負極活物質
層の崩落を妨げるため、同一の多層グラフェンまたは複数の多層グラフェンにより、複数
の正極活物質または負極活物質を内包することが開示されている。多層グラフェンは、正
極活物質同士または負極活物質同士の結合を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池は、負極活物質として代表的には炭素材料を用い、正極活物質と
して代表的にはリチウム金属複合酸化物を用いる。
【0007】
金属箔などの集電体上に電極層を形成する際、金属箔上に微粒子状である正極活物質また
は微粒子状である負極活物質を溶媒に懸濁させたスラリー(結着剤(バインダーと呼ぶ)
などを含む懸濁体)を塗工(塗布とも呼ぶ)し、乾燥させる。例えば、負極を形成する場
合、銅箔またはアルミニウム箔上に炭素の粒子を含む溶液を塗工し、乾燥させ、さらに必
要があればプレス処理を行う。こうして得られる負極と、セパレータと、リン酸鉄リチウ
ムなどの正極活物質を含む正極と、電解液とを組み合わせることでリチウムイオン二次電
池が形成される。
【0008】
リチウムイオン二次電池の劣化モードを大きく分類すると、カレンダー寿命とサイクル寿
命の2つに分類できる。カレンダー寿命は、リチウムイオン二次電池の充電が満充電にな
った後も温度が高い状態で継続して充電が行われることによって、電気化学的変化によっ
て起こる劣化モードである。また、サイクル寿命は、充電または放電を繰り返し行う際、
リチウムイオン二次電池の電気化学的な変化または物理的な変化によって起こる劣化モー
ドである。
【0009】
サイクル寿命やカレンダー寿命などの劣化モードに影響を与える原因としていくつか挙げ
られる。
【0010】
例えば、劣化モードに影響を与える原因の一つは、バインダーである。バインダーとして
は、主にポリフッ化ビニリデンなどの有機材料が用いられるが、銅箔またはアルミニウム
箔などの金属箔は、バインダーとの界面における密着性が十分でなく、バインダーそのも
のは電池の内部抵抗の要因となるため、使用量は少ないことが好ましい。
【0011】
また、劣化モードに影響を与える原因の他の一つは、炭素の粒子である。炭素の粒子の表
面は撥水性が高い。また、金属箔と炭素の粒子の接触面積は小さく、点接触と言え、密着
性を十分確保することが困難である。また、炭素の粒子はリチウムの吸蔵と放出に伴う体
積変化が約10%あることが知られており、活物質である炭素の粒子と集電体との界面に
応力が生じる。これらのことに起因して、リチウムイオン二次電池の充電と放電を何度か
繰り返すと、金属箔と接している負極活物質との界面の密着性が悪化し、負極活物質が金
属箔から剥がれ、充放電特性の低下の原因、またはリチウムイオン二次電池の寿命の短縮
の原因となっている。
【0012】
リチウムイオン二次電池において、集電体である金属箔と負極活物質との密着性を向上さ
せ、長期信頼性を実現することを課題の一つとする。
【0013】
また、リチウムイオン二次電池において、新規の電極構造を提供することも課題の一つと
する。また、可撓性を有する二次電池を実現することも課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
基材に電極活物質層(負極活物質或いは正極活物質を含む)を形成し、電極活物質層にス
パッタリング法等を用いて金属膜を形成した後、基材と電極活物質層を界面で分離して電
極を形成する。例えばスパッタリング法を用いた金属膜で覆うことによって金属膜と接す
るそれぞれの粒子が接着された電極活物質層をリチウムイオン二次電池の一対の電極のう
ち、少なくとも一方の電極(負極或いは正極)として用いる。
【0015】
本明細書で開示する発明の構成は、基材上に複数の電極活物質の粒子を含むスラリーを塗
工し、乾燥させた後、スパッタリング法等により金属膜を成膜して電極活物質の粒子同士
を接着、または電極活物質の粒子同士の接着を強化し、基材と複数の電極活物質の粒子の
界面から分離させ、金属膜により一部が接着された複数の電極活物質を含む電極を形成す
る二次電池の作製方法である。
【0016】
こうして得られるリチウムイオン二次電池は、新規な構造であり、その構成は、複数の電
極活物質の粒子と、複数の電極活物質の粒子のうち、隣接する2つの粒子間を接着する金
属膜と、を含む第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に少なくとも
電解液を有する二次電池である。
【0017】
また、二次元方向に隣接する2つの粒子間を接着する金属膜に限定されず、膜厚方向の粒
子同士の間隙にも金属膜を形成してもよく、その構成は、電解液を間に有する一対の電極
のうち、少なくとも一方の電極は、複数の電極活物質の粒子と、複数の電極活物質の粒子
同士の間隙の少なくとも一部に充填された金属膜と、を有し、間隙内に充填された部分に
おける金属膜は、電極活物質の粒子同士を接着、または電極活物質の粒子同士の接着を強
化する二次電池である。
【0018】
例えば、負極活物質として炭素の粒子を用いる場合、平坦な基材表面上に複数の炭素の粒
子を設け、その複数の炭素の粒子の間には間隙を有している。スパッタリング法により成
膜された金属膜は、複数の炭素の粒子同士の間隙の少なくとも一部に充填される。複数の
炭素の粒子を含む層を負極活物質層と呼ぶ場合には、負極活物質層の表面には複数の凹部
または複数の凸部を有するといえる。その場合、スパッタリング法により成膜された金属
膜は、負極活物質層表面の複数の凹部を埋めるように形成される、または負極活物質層表
面の複数の凸部を平坦化するように形成される。
【0019】
スパッタリング法により成膜された金属膜は、金属膜と接触する負極活物質同士の結合を
維持する。金属膜の材料を銅とする場合には、金属膜が集電体として機能する。
【0020】
また、負極活物質だけでなく、正極活物質が粒子である場合にもスパッタリング法を用い
て金属膜を形成させて、複数の正極活物質の粒子同士の間隙の少なくとも一部に充填する
。形成された金属膜は、金属膜と接触する正極活物質同士の結合を維持する。金属膜の材
料を銅とする場合には、金属膜が集電体として機能する。
【0021】
さらに必要であれば、金属膜に集電体を固定し、電気的に接続させる構成とすることで集
電体と金属膜とを面接触させることができ、密着性が向上する。金属膜に接して集電体を
設ける場合、金属膜は、集電体と負極活物質(または正極活物質)との間のバッファ層と
して機能する。
【0022】
金属膜に集電体を固定する場合の作製方法は、基材上に複数の電極活物質の粒子を含むス
ラリーを塗工し、乾燥させた後、スパッタリング法により金属膜を成膜して電極活物質の
粒子同士を接着、または電極活物質の粒子同士の接着を強化し、基材と複数の電極活物質
の粒子の界面から分離させ、金属膜に集電体を電気的に接続させた電極を形成する。電極
活物質の粒子同士の接着を強化することによって、集電体及び電極活物質を曲げても密着
性を保持することができる。従って、可撓性を有する二次電池を実現できる。
【0023】
可撓性を有する二次電池は、曲率半径が10mm以上150mm以下の曲面とすることが
できる。
【0024】
面の曲率半径について、
図11を用いて説明する。
図11(A)において、曲面1700
を切断した平面1701において、曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半
径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。
図11(B)に曲面1
700の上面図を示す。
図11(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図
を示す。曲面を平面で切断するとき、切断する平面により、曲線の曲率半径は異なるもの
となるが、曲面を、最も曲率半径の小さい曲線を有する平面で切断したときにおいて、曲
線の曲率半径を面の曲率半径とする。
【0025】
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液などの電池材料1805を挟む二次電池を湾
曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径
1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも
小さい(
図10(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800
に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面
には引っ張り応力がかかる(
図10(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成され
る模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみに
よる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側
の外装体の曲率半径が10mm以上、好ましくは30mm以上となる範囲で変形すること
ができる。
【0026】
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にす
ることができ、例えば
図10(C)に示す形状や、波状(
図10(D))、S字形状など
とすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数
の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、外装
体の曲率中心に近い方の面の曲率半径が、10mm以上、好ましくは30mm以上となる
範囲で二次電池が変形することができる。
【0027】
基材としては、スパッタリング法を用いて金属膜を形成することができ、負極活物質を含
む溶媒と反応がほとんど生じない材料を用いる。例えば、基材の材料は、プラスチックフ
ィルム、金属箔(チタン、銅など)などを用いることができる。また、後の工程で分離す
る際、分離しやすくなるようにプラスチックフィルムの表面、または金属箔の表面に酸化
シリコン膜や、フッ素樹脂膜(ポリテトラフルオロエチレン膜など)を設けてもよい。金
属膜はスパッタリング法、真空蒸着法、化学気相成長法など既知の方法を用いればよい。
【0028】
また、負極活物質としては、代表的には炭素の粒子を用い、天然黒鉛(鱗片状、球状など
)、人造黒鉛などが挙げられる。なお、それぞれの炭素の粒子表面の一部を酸化シリコン
膜などで覆った負極活物質を用いてもよい。
【0029】
本明細書において、負極活物質は、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵または放出するこ
とができる材料であれば特に限定されない。
【0030】
また、金属膜は、負極活物質の粒子の量が少ない場合を除いて、全ての負極活物質と接し
ているのではないため、活物質同士の結合を強化するためにバインダーや、活物質間又は
活物質と集電体の間の電気伝導性を向上させるため導電助剤を用いてもよい。
【0031】
金属膜によって一部の負極活物質同士の結合も強化できるために、結果として、金属膜を
用いない場合と比べてバインダーの使用量も削減することができる。
【0032】
また、活物質同士の結合を強化するために、複数の活物質の粒子を包むように複数のグラ
フェンを形成してもよい。グラフェンは、炭素が形成する六角形の骨格を平面状に延ばし
た結晶構造をもつ炭素材料である。グラフェンはグラファイト結晶の一原子面を取り出し
たものであり、電気的、機械的又は化学的な性質に驚異的な特徴を有することから、グラ
フェンを利用した高移動度の電界効果トランジスタや高感度のセンサ、高効率な太陽電池
、次世代向けの透明導電膜など、様々な分野での応用が期待され注目を浴びている。複数
のグラフェンを形成する場合には、スパッタリング法を用いた金属膜がグラフェンと活物
質の結合を強化する。
【0033】
本明細書においてスラリーとは、電極活物質を溶媒に懸濁させた懸濁液または懸濁体を指
しており、溶媒の他に他の添加物、例えばバインダーや導電助剤や酸化グラフェンを加え
たものもスラリーと呼ぶ。
【発明の効果】
【0034】
活物質が粒子である場合、スパッタリング法を用いて金属膜を形成することで活物質と集
電体との剥離を抑えることができ、十分な充放電サイクル特性を有し、長期信頼性を実現
するリチウムイオン二次電池を提供することができる。また、電極が可撓性を有し、可撓
性を有する二次電池を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明の一態様を示すSEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
本発明の一態様にかかるリチウムイオン二次電池の電極の作製方法について
図1を用い、
以下に説明する。
【0038】
まず、基材100上に電極活物質102を含むスラリーを塗工し、乾燥させる。
図1(A
)は基材100上に電極活物質102を含むスラリーを塗工し、乾燥させた状態での断面
模式図を示している。
【0039】
本実施の形態では、電極活物質102として炭素系材料を用い負極を形成する工程を以下
に説明する。なお、
図1(A)において電極活物質102は、平均粒径や粒径分布を有す
る二次粒子からなる粒状の電極活物質である。このため、
図1(A)においては、電極活
物質102を模式的に球で示しているが、この形状に限られるものではない。
【0040】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハー
ドカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。黒鉛と
しては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造
黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。また、黒鉛の形状としては鱗
片状のものや球状のものなどがある。
【0041】
本実施の形態で基材100として銅の金属箔を用い、スラリーとしては、メソカーボンマ
イクロビーズとエチルシリケートゾル溶液との混合させたものを用いる。
【0042】
基材100としては、スラリーに含まれる溶媒とほとんど反応せず、電極活物質102と
密着性の低い材料とする。また、後の工程で真空中でのスパッタリング法による成膜を行
うことのできる材料を基材100に用いる。基材100としては、ポリイミドフィルム、
ガラス基板、銅の金属箔、またはこれらの表面にフッ素樹脂膜や酸化シリコン膜などを設
けたものを用いる。
【0043】
また、乾燥後に必要があればプレス処理を行ってもよい。
【0044】
次いで、
図1(B)に示すように電極活物質102上に金属膜101の成膜を行う。この
成膜はスパッタリング法を用いる。本実施の形態では、金属膜101として、膜厚1μm
以上、ここでは3μmのチタン膜の成膜を行う。本実施の形態では、基板温度を室温とし
、圧力を0.3Pa、アルゴン流量を7.5sccmとする。
【0045】
なお、
図1(B)での断面SEM(Scanning Electron Micros
cope)写真を
図2に示す。
図2では金属膜101と電極活物質102の界面が確認で
き、黒鉛表面の一部がチタン膜と接している様子がわかる。
【0046】
次いで、
図1(C)に示すように基材100と電極活物質102の界面で分離を行う。基
材100と電極活物質102との密着性は低いほうが分離する上で好ましいが、電極活物
質102の一部が基材100の表面に残ったまま分離されても問題ない。
【0047】
分離後の様子を
図1(D)に示す。
図1(D)に示す構造の機械強度が十分であれば、図
1(D)の構造を負極として用いることもできる。その場合、金属膜101は集電体とし
て機能するため金属膜101の材料は、導電性の高い膜を用いる。
【0048】
次いで、
図1(E)に示すように、集電体104と金属膜101とを電気的に接続させる
。
【0049】
なお、集電体104には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン
、タンタル等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウムイオン等のキャリ
アイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム
、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合
金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形
成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウ
ム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タング
ステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体104は、箔状、板状(シート状)、網状
、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いる
ことができる。集電体104は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい
。
【0050】
以上の工程でリチウムイオン二次電池の負極を作製することができる。
【0051】
集電体104と電極活物質102との密着性を向上させるためにスパッタリング法による
金属膜101をバッファ層として用いることで、リチウムイオン二次電池の信頼性を向上
できる。
【0052】
(実施の形態2)
【0053】
本実施の形態では、電極活物質202としてオリビン型構造のLiFePO4を用い正極
を形成する工程を以下に説明する。LiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高
電位、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められ
る事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
【0054】
電極活物質202としては、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な材料を用いることが
でき、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶
構造を有するリチウム含有材料等がある。正極活物質として、例えばLiFeO2、Li
CoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物
を用いる。
【0055】
オリビン型構造のリチウム含有材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(
II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))の代表例としては、LiFePO4、
LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFe
aCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnb
PO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、
LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、
0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g
+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等がある。
【0056】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有材料としては、例えば、コバルト酸リチウム
(LiCoO2)、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co
0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1-xO2(0<x<1))、L
iNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1-xO2(0
<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCと
もいう。一般式は、LiNixMnyCo1-x-yO2(x>0、y>0、x+y<1
))がある。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li2MnO
3-LiMO2(M=Co、Ni、Mn)等がある。
【0057】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料としては、例えば、LiMn2O4、L
i1+xMn2-xO4、LiMn(2-x)AlxO4、LiMn1.5Ni0.5O
4等がある。
【0058】
LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、
少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1-xMO2(M=Co、Al等)
)を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の利点があり好
ましい。
【0059】
また、正極活物質として、一般式Li(2-j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn
(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有材料を
用いることができる。一般式Li(2-j)MSiO4の代表例としては、Li(2-j
)FeSiO4、Li(2-j)NiSiO4、Li(2-j)CoSiO4、Li(2
-j)MnSiO4、Li(2-j)FekNilSiO4、Li(2-j)FekCo
lSiO4、Li(2-j)FekMnlSiO4、Li(2-j)NikColSiO
4、Li(2-j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)
、Li(2-j)FemNinCoqSiO4、Li(2-j)FemNinMnqSi
O4、Li(2-j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、
0<n<1、0<q<1)、Li(2-j)FerNisCotMnuSiO4(r+s
+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等を挙げること
ができる。
【0060】
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、M
n、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナ
シコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)
3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として
、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表
される化合物、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、Mo
S2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料、バナジウム酸化物系(V2O5、V6
O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物、有機硫黄化合物等の材料を用いることがで
きる。
【0061】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金
属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウム含有材料において
、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土
類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等
)を用いてもよい。
【0062】
本実施の形態では、電極の導電助剤としてグラフェンを用いる例を示す。分散性の良い酸
化グラフェンを原材料として用い、活物質、バインダー、または極性溶媒(分散媒とも呼
ぶ)等を合わせて混練することで得られた混合物をスラリーとする。
【0063】
まず、基材200上に電極活物質202を含むスラリーを塗工し、乾燥させた後、酸化グ
ラフェンを還元させ、還元雰囲気にて乾燥させる。基材200としてはポリイミドフィル
ムテープを用いる。
図3(A)は基材200上に電極活物質202及び酸化グラフェンを
含むスラリーを塗工し、乾燥させた後、酸化グラフェンを還元させ、還元雰囲気にて乾燥
させた状態での断面模式図を示している。酸化グラフェンの還元方法は特に限定されない
が、本実施の形態では、少なくともアスコルビン酸及び水を含む還元液に含浸させる。な
お、還元液のpHは、4以上11以下とする。
【0064】
図3(A)に示すように電極活物質202の間にグラフェンによる電気伝導のためのネッ
トワークが形成される。その結果、グラフェンにより電極活物質同士が電気的に接続され
た蓄電池用電極を形成することができる。
図3(A)において電極活物質202は、平均
粒径や粒径分布を有する二次粒子からなる粒状の電極活物質である。このため、
図3(A
)においては、電極活物質202を模式的に球で示しているが、この形状に限られるもの
ではない。
【0065】
ネットワークの形成は、グラフェンの原材料として用いる酸化グラフェンが、エポキシ基
、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を有する極性物質であるこ
とに由来する。酸化グラフェンは極性溶媒中においては、官能基中の酸素がマイナスに帯
電するため、異なる酸化グラフェン同士では凝集しにくい一方で、N-メチル-2-ピロ
リドン(NMP)等の極性溶媒との相互作用が大きい。したがって、酸化グラフェンが有
するエポキシ基等の官能基と、極性溶媒との相互作用によって、酸化グラフェンどうしの
凝集が阻害され、結果として極性溶媒中に酸化グラフェンが均一に分散すると考えられる
。
【0066】
上記のように、導電助剤の原材料として酸化グラフェンを用いる場合、酸化グラフェンは
極性溶媒に対して分散性が良好であるものの、電気伝導率が極めて低いため、酸化グラフ
ェンのままでは導電助剤としては機能しない。したがって、蓄電池用電極の製造に際し、
少なくとも活物質等と酸化グラフェンとを混練した後に、酸化グラフェンを還元して電気
伝導率の高いグラフェンを形成することが必要である。
【0067】
ここで、酸化グラフェンの還元方法としては、加熱による還元(以下、熱還元という。)
、電解液中で電極に酸化グラフェンが還元される電位を与えて行う電気化学的な還元(以
下、電気化学還元という。)、還元剤を用いた化学反応による還元(以下、化学還元とい
う。)等が挙げられる。
【0068】
電気化学還元または化学還元により、酸化グラフェンを還元しグラフェン205を形成し
た後、
図3(B)に示すように金属膜201をスパッタリング法により成膜する。
【0069】
図3(B)に示すように、金属膜201は、複数の電極活物質202の粒子のうち、隣接
する2つの粒子間を接着する。また、
図3(B)に示すように、金属膜201は、複数の
電極活物質202の粒子同士の間隙の少なくとも一部に充填される。
【0070】
そして、
図3(C)に示すように、ポリイミドフィルムテープである基材200を剥離し
、基材200と複数の電極活物質202とを分離する。
【0071】
以上の工程により、
図3(D)に示すリチウムイオン二次電池の正極を作製することがで
きる。
【0072】
金属膜201を集電体として用いることで正極の薄膜化が実現できる。また、集電体と電
極活物質202との密着性を向上させるためにスパッタリング法による金属膜201をバ
ッファ層として用いることで、リチウムイオン二次電池の信頼性を向上できる。
【0073】
また、上記工程に加えて、必要であれば集電体を金属膜201に電気的に接続してもよい
。
【0074】
本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。例えば、実施の形態1
で得られる負極と、本実施の形態で得られる正極と、セパレータと、電解液を用いて薄型
のリチウムイオン二次電池を実現でき、集電体と電極活物質との間の密着性を金属膜で高
めることで信頼性の向上を実現できる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態では、基材として酸化シリコンを含む膜を表面に形成したプラスチックフィ
ルムを用いるリチウムイオン二次電池の電極の作製方法の一例を以下に示す。
【0076】
まず、基材10a上にエチルシリケートゾル溶液を塗工し、乾燥させて表面に酸化シリコ
ンを含む膜10bを形成する。基材10aとしてはポリエチレンテレフタレート(PET
)を用いる。
【0077】
次いで、電極活物質12を含むスラリーを塗工し、乾燥させて
図4(A)の状態を得る。
スラリーは電極活物質12の他に導電助剤、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒
、ポリフッ化ビニリデンなども混合させたものを用いる。スラリーは、スロットダイコー
ターなどのコーティング装置を用い、所定の膜厚とする。
【0078】
次いで、スパッタリング法により金属膜11を成膜し、
図4(B)の状態を得る。金属膜
11はチタンまたは銅などを用いる。
【0079】
次いで、酸化シリコンを含む膜10bと電極活物質12の界面で分離させる。
【0080】
次いで、表面にポリフッ化ビニリデンまたはスチレンブタジエンゴムなどの樹脂膜13を
形成した集電体14を形成する。この集電体14はアルミニウムまたは銅などの金属箔を
用いる。
【0081】
図4(C)のように樹脂膜13を接着剤として集電体14と金属膜11とを貼り合わせ、
集電体14と金属膜11との電気的な接続を行う。
【0082】
以上の工程でリチウムイオン二次電池の電極を作製することができる。
【0083】
集電体14と電極活物質12との密着性を向上させるためにスパッタリング法による金属
膜11をバッファ層として用いることで、リチウムイオン二次電池の信頼性を向上できる
。
【0084】
また、上記工程は一例であって特に限定されず、例えば、上記工程では、分離した後に集
電体14と金属膜11とを貼り合わせているが、金属膜を成膜した後に集電体14を貼り
合わせた後で、基材10aを分離してもよい。
【0085】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0086】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至3で示した製造方法により製造した蓄電池用電極を
用いた蓄電池の構造について、
図5乃至
図7を参照して説明する。
【0087】
(コイン型蓄電池)
図5(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、
図5(B)は、その断
面図である。
【0088】
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶3
02とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正
極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306に
より形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けら
れた負極活物質層309により形成される。正極活物質層306と負極活物質層309と
の間には、セパレータ310と、電解液(図示せず)とを有する。
【0089】
負極307には、実施の形態1で示した本発明の一形態に係る蓄電池用電極の製造方法に
より作製された蓄電池用電極を用いることができる。また、正極304には、実施の形態
2で示した本発明の一形態に係る蓄電池用電極の製造方法により作製された蓄電池用電極
を用いることができる。
【0090】
セパレータ310は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリ
エチレン等の絶縁体を用いることができる。
【0091】
電解液は、電解質塩として、キャリアイオンを有する材料を用いる。支持電解質の代表例
としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、
Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これら
の支持電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用
いてもよい。
【0092】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金
属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカ
リ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、
ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
【0093】
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解液の溶
媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては
、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジ
エチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタ
ン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また
、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性
が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代
表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオ
キサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解液の溶媒
として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いるこ
とで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発
火などを防ぐことができる。
【0094】
また、電解液の代わりに電解質として、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体
電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用い
ることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要とな
る。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上
する。
【0095】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウ
ム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレ
ス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミ
ニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極
307とそれぞれ電気的に接続する。
【0096】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、
図5(B)に
示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極
缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して
圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
【0097】
ここで
図5(C)を用いてバッテリーの充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用い
たバッテリーを一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向
きになる。なお、リチウムを用いたバッテリーでは、充電と放電でアノード(陽極)とカ
ソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応
電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書
においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても
、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、
負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に
関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時と
では、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカ
ソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(
陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正
極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0098】
図5(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池
400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
図5(C)では、蓄電池400の
外部の端子から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中において、正極402から負
極404の方へ流れ、負極から蓄電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の
向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
【0099】
(ラミネート型蓄電池)
次に、ラミネート型の蓄電池の一例について、
図6を参照して説明する。
【0100】
図6に示すラミネート型の蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502
を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506
と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内
に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また
、外装体509内は、電解液508で満たされている。また、電極が可撓性を有し、可撓
性を有する二次電池とすることができる。
【0101】
図6に示すラミネート型の蓄電池500において、正極集電体501および負極集電体5
04は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体50
1および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置される
。
【0102】
ラミネート型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜の上に、ア
ルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金
属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹
脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。このような三層構造
とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解
液性を有する。
【0103】
(円筒型蓄電池)
次に、円筒型の蓄電池の一例について、
図7を参照して説明する。円筒型の蓄電池600
は
図7(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面
に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602
とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0104】
図7(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶6
02の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回
された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回
されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、
電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの
合金やこれらと他の金属との合金(ステンレス鋼等)を用いることができる。また、非水
電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電
池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向す
る一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶
602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン形や
ラミネート型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
【0105】
正極604及び負極606は、上述したコイン形の蓄電池の正極及び負極と同様に製造す
ればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物
質層を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が
接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子6
03及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。
正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵
抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperat
ure Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続さ
れている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャ
ップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子61
1は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量
を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaT
iO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン形、ラミネート型及び円筒型の蓄電池を
示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができ
る。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレ
ータが捲回された構造であってもよい。
【0107】
本実施の形態で示す蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の正極又は負極には、本
発明の一態様に係る蓄電池用電極の製造方法により作製された電極が用いられている。そ
のため、蓄電池300、蓄電池500、蓄電池600の放電容量を高めることができる。
【0108】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0109】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、先の実施の形態で説明した蓄電池を有する電子機器の一例につ
いて
図8、及び
図9を用いて説明を行う。
【0110】
蓄電池を適用した電子機器として、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デ
ジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム
機、携帯情報端末、音響再生装置などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を
図8に
示す。
【0111】
図8(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機800は、筐体801に組み
込まれた表示部802の他、操作ボタン803、スピーカ805、マイク806などを備
えている。なお、携帯電話機800内部に本発明の一態様の蓄電池804を用いることに
より軽量化される。
【0112】
図8(A)に示す携帯電話機800は、表示部802を指などで触れることで、情報を入
力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示
部802を指などで触れることにより行うことができる。
【0113】
表示部802の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示
モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モ
ードと入力モードの二つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0114】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部802を文字の入力を主
とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。
【0115】
また、携帯電話機800内部に、ジャイロセンサ、加速度センサ等の傾きを検出するセン
サを有する検出装置を設けることで、携帯電話機800の向き(縦か横か)を判断して、
表示部802の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0116】
また、画面モードの切り替えは、表示部802を触れること、又は筐体801の操作ボタ
ン803の操作により行われる。また、表示部802に表示される画像の種類によって切
り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータで
あれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0117】
また、入力モードにおいて、表示部802の光センサで検出される信号を検知し、表示部
802のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから
表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0118】
表示部802は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部802
に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、
表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用
いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0119】
図8(B)は、スマートウオッチであり、筐体702、表示パネル704、操作ボタン
711、712、接続端子713、バンド721、留め金722、等を有することができ
る。なお、スマートウオッチ内部に本発明の一態様の蓄電池を有することにより軽量化を
図ることができる。
【0120】
ベゼル部分を兼ねる筐体702に搭載された表示パネル704は、非矩形状の表示領域
を有している。表示パネル704は、時刻を表すアイコン705、その他のアイコン70
6等を表示することができる。
【0121】
なお、
図8(B)に示すスマートウオッチは、様々な機能を有することができる。例え
ば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパ
ネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログ
ラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピ
ュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信
を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示
する機能、等を有することができる。
【0122】
また、筐体702の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速
度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電
圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むも
の)、マイクロフォン等を有することができる。
【0123】
また、
図9(A)に示す掃除機901は、掃除機の内部に曲げられた薄型の二次電池90
2を有する。また、その薄型の二次電池を
図9(B)に示す。掃除機901は内部にゴミ
を格納するためのスペースが広ければ広いほどよいため、掃除機の外表面の形状に合わせ
て曲げられた薄型の二次電池902は有用である。
【0124】
薄型の二次電池902は実施の形態1乃至3の蓄電池用電極を用い、実施の形態4に示し
たラミネート型の蓄電池の作製方法を用いて作製することができる。
【0125】
薄型の二次電池902はラミネート型であり、曲げられて固定されている。また、掃除機
901は、薄型の二次電池902の電力残量などを表示する表示部903を有しており、
掃除機の外表面の形状に合わせて表示面も湾曲されている表示部903である。また、掃
除機はコンセントに接続するための電源コードを有し、薄型の二次電池902に十分な電
力が充電されれば、電源コードを外して掃除機を使用することもできる。また、薄型の二
次電池902の充電は電源コードを用いず、ワイヤレスで無線充電を行ってもよい。
【0126】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【符号の説明】
【0127】
10a:基材
10b:膜
11:金属膜
12:電極活物質
13:樹脂膜
14:集電体
100:基材
101:金属膜
102:電極活物質
104:集電体
200:基材
201:金属膜
202:電極活物質
205:グラフェン
300 蓄電池
301 正極缶
302 負極缶
303 ガスケット
304 正極
305 正極集電体
306 正極活物質層
307 負極
308 負極集電体
309 負極活物質層
310 セパレータ
400 蓄電池
402 正極
404 負極
500 蓄電池
501 正極集電体
502 正極活物質層
503 正極
504 負極集電体
505 負極活物質層
506 負極
507 セパレータ
508 電解液
509 外装体
600 蓄電池
601 正極キャップ
602 電池缶
603 正極端子
604 正極
605 セパレータ
606 負極
607 負極端子
608 絶縁板
609 絶縁板
611 PTC素子
612 安全弁機構
702 筐体
704 表示パネル
705 アイコン
706 アイコン
711 操作ボタン
712 操作ボタン
713 接続端子
721 バンド
722 留め金
800 携帯電話機
801 筐体
802 表示部
803 操作ボタン
804 蓄電池
805 スピーカ
806 マイク
901 掃除機
902 二次電池
903 表示部
1700 曲面
1701 平面
1702 曲線
1703 曲率半径
1704 曲率中心
1800 曲率中心
1801 フィルム
1802 曲率半径
1803 フィルム
1804 曲率半径
1805 電極・電解液などの電池材料