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特開2024-124480フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124480
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/36 20140101AFI20240905BHJP
   B42D 25/41 20140101ALI20240905BHJP
   G09F 19/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B42D25/36
B42D25/41
G09F19/14
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106120
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2022170572の分割
【原出願日】2015-03-27
(31)【優先権主張番号】61/971,240
(32)【優先日】2014-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509004480
【氏名又は名称】ビジュアル フィジクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】カープ、 サミュエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴスネル、 ジョナサン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン、 グレゴリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】パルム、 スコット ケー.
(57)【要約】
【課題】フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイスを提供する。
【解決手段】光学デバイスは、硬化された有色素材料26,32,38から形成される画像アイコンの少なくとも1つの配列と、画像アイコンの配列(1つ又は複数)の少なくとも一部の、1つ以上の合成画像を形成するために配置される、埋め込まれる集光要素の配列12とから構成される。有色素材料(1つ又は複数)のうちのいくつか又は全ては、光学デバイスの表面に対する1つ以上の角度において、集光要素を通して画像アイコンの配列(1つ又は複数)に向けて方向付けられる、コリメート光を使用して硬化されて、指向性硬化された画像アイコンを形成する。硬化された画像アイコンの合成画像(1つ又は複数)は、硬化角(1つ又は複数)において見ることができ、デバイスの視角が硬化角(1つ又は複数)を通って移動するにつれて視覚的に出現及び消失する、すなわちオン及びオフになる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイスであって、
前記光学デバイスは、画像アイコンの少なくとも1つの配列と共に、実質的に透明な又はクリアな放射線硬化性樹脂から作製された単一のアイコン層を備え、前記画像アイコンは、前記実質的に透明な又はクリアな放射線硬化性樹脂に予め形成され予め加工された空隙又は柱を備え、前記画像アイコンは、2つ以上の異なる種類毎に前記アイコン層の中で前記アイコン層が延在する方向に並んで時系列的に順に硬化された有色素材料を用いて前記空隙に充填され又は前記柱の周囲で前記柱を形成する隙間を埋めるように前記有色素材料から形成され、
前記光学デバイスは、前記画像アイコンの前記少なくとも1つの配列の少なくとも一部の、1つ以上の合成的に拡大された画像を形成するために配置される、埋め込まれる集光要素の少なくとも1つの配列を備え、
前記2つ以上の有色素材料のうちのいくつか又は全ては、前記光学デバイスの表面に対する1つ以上の角度において、前記集光要素を通して方向付けられる、コリメート光を使用して硬化されて、指向性硬化された画像アイコンを形成し、
前記指向性硬化された画像アイコンの前記1つ以上の合成的に拡大された画像は、1つ以上のコリメート光硬化角において見ることができ、従って、前記光学デバイスの視角がこれらの角度を通って移動するにつれて視覚的に出現及び消失し、オン及びオフになり、
前記集光要素の少なくとも1つの配列の集光要素の反復周期に対する前記画像アイコンの少なくとも1つの配列の画像アイコンの反復周期の縮尺比率は、実質的に1.0000に等しく、
前記光学デバイス内の画像アイコンの1つの配列又は層内で、マイクロサイズの画像アイコン及びナノサイズの画像アイコンが互いに整合されている、
光学デバイス。
【請求項2】
画像アイコンの前記少なくとも1つの配列内の各画像アイコンは、2つの硬化された有色素材料であって、それぞれが異なる色を有し、それぞれが異なる角度におけるコリメート光を使用して硬化された、2つの硬化された有色素材料から形成される、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の前記光学デバイスを製造する方法であって、
色付き有色素材料を1つの角度からのコリメート光を使用して硬化させ、未硬化の有色素材料を前記光学デバイスから洗浄し、次に第2の色付き有色素材料を追加し、異なる角度においてそれを硬化させること、を含む方法。
【請求項4】
画像アイコンの前記少なくとも1つの配列内の各画像アイコンは、1つの硬化された蛍光有色素材料から、及び1つの硬化された非蛍光有色素材料から形成される、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の前記光学デバイスを備え、かつ前記光学デバイスの上及び下のうちの少なくとも一方に位置する1つ以上の層を必要に応じて備え、
前記光学デバイスの少なくとも1つの配列又は層、あるいは前記光学デバイスの上又は下の少なくとも1つの層は、レーザマーキング可能な配列又は層である、レーザマーキング可能な光学デバイス。
【請求項6】
前記レーザマーキング可能な光学デバイスは、レーザマーキング可能な層である少なくとも1つの層を前記光学デバイスの下に有し、
前記光学デバイスの画像アイコンの前記少なくとも1つの配列は、1つ以上の硬化された有色素材料と、1つ以上の硬化された無着色材料とから形成される、請求項5に記載のレーザマーキング可能な光学デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の前記光学デバイスを備え、かつ前記光学デバイスの上及び下のうちの少なくとも一方に位置する1つ以上の層を必要に応じて備え、
前記光学デバイスの少なくとも1つの配列又は層、あるいは前記光学デバイスの上又は下の少なくとも1つの層は、レーザマーキング可能な配列又は層であり、
少なくとも1つのレーザマーキング可能な配列又は層は、1つ以上のレーザマーキングされた静止2次元画像をその上に有する、レーザマーキングされた光学デバイス。
【請求項8】
前記レーザマーキングされた光学デバイスは、レーザマーキング可能な層である少なくとも1つの層を前記光学デバイスの下に有し、
前記光学デバイスの画像アイコンの前記少なくとも1つの配列は、1つ以上の硬化された有色素材料と、1つ以上の硬化された無着色材料とから形成される、請求項7に記載のレーザマーキングされた光学デバイス。
【請求項9】
コリメート硬化エネルギーが印加された1つ又は複数の角度とは異なる角度において、前記光学デバイス内に又は前記光学デバイスの下にレーザエネルギーを方向付けることを含む、請求項6に記載の前記レーザマーキング可能な光学デバイスをレーザマーキングする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の前記光学デバイスから作られたか又は請求項1に記載の前記光学デバイスを使用した、シート材料。
【請求項11】
請求項10に記載の前記シート材料から作られた、文書。
【請求項12】
ポリマーIDカードであって、請求項1に記載の前記光学デバイスを、前記ポリマーIDカード内に埋め込まれたパッチの形態で備える、ポリマーIDカード。
【請求項13】
前記加工された空隙又は柱は、0.5ミクロン~8ミクロンの間の深さを有する、請求項1に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年3月27日出願の米国特許仮出願第61/971,240号の優先権を主張するものであり、当該出願は参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は一般に、フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイスに関し、特に、指向性硬化された(directionally cured)画像アイコンを使用する光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
合成画像を投影するマイクロ光学フィルム材料は一般に、マイクロサイズの画像アイコンの配列と、集光要素(例えば、マイクロレンズ、マイクロリフレクタ)の配列と、必要に応じて、光透過性のポリマー基板とを含む。画像アイコン及び集光要素の配列は、画像アイコンの配列が集光要素の配列を使用して見られる場合に、1つ以上の合成画像が投影されるように構成される。投影される画像はいくつかの異なる光学効果を示し得る。
【0004】
これらのマイクロ光学フィルム材料は、紙幣、セキュア文書及び製品の認証のためのセ
キュリティデバイスとして使用可能である。紙幣及びセキュア文書に関しては、これらの材料は一般にストリップ、パッチ、又はスレッドの形態で使用され、紙幣又は文書内に部分的に埋め込まれるか又はその表面に貼付され得る。パスポート又はその他の身分証明(ID)文書に関しては、これらの材料は、パスポート又はその他のID文書の表面の全面ラミネート又はインレーとして使用され得る。製品パッケージに関しては、これらの材料は一般にラベル、シール、又はテープの形態で使用され、製品パッケージの表面に貼付される。
【0005】
マイクロ光学フィルム材料の例は、米国特許第7,733,268号明細書及び米国特許第7,468,842号明細書において説明され図示されている。これらの両方の参照文献には、画像アイコンを形成するマイクロ構造アプローチが記載されており、このアプローチでは、画像アイコンがマイクロ構造内の空隙から、又は立体(solid)領域から、単独で又は組み合わせて形成される。空隙は必要に応じて、周囲の又は基礎をなす材料とは異なる屈折率を有する材料、染色された材料、金属、又は有色素材料を用いて充填されるか又はコーティングされる。そのようなアプローチは、ほとんど無制限の空間解像度という利点を有する。
【0006】
これらのマイクロ光学フィルム材料を製造する例示的方法では、75ゲージ接着促進ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのベースフィルムに対してキャストされる放射線硬化液体ポリマー内の空隙としてアイコンを形成し、次にベースフィルムの反対面上に、アイコンと正しく位置合わせするか又はスキューさせて、放射線硬化ポリマーからレンズを形成し、次にフィルム表面に対するグラビア様のドクターブレーディングによって、サブミクロン粒子有色素着色材料を用いてアイコン空隙を充填し、充填を好適な手段(例えば、溶剤除去、放射線硬化、又は化学反応)によって凝固させ、最後に、透明な、染色された、有色素の、又は秘密のセキュリティ材料を含む、省略可能なシーリング層を適用する。ここで、充填を凝固させる手段は非指向性(non-directional)であり、画像アイコン層に直接かつレンズを通さずに適用される。そのような非指向性硬化された(non-directionally cured)アイコンの合成画像は、広い角度範囲にわたって見ることができる。
【0007】
アイコン空隙は複数のアイコン充填材料を含んでもよい。例えば、米国特許第7,468,842号明細書の49欄第36行目~63行目において、アイコン空隙は第1のアイコン充填材料を用いてアンダーフィルされ、必要に応じて(例えば放射線硬化によって)安定化される。アイコン空隙は次に、必要に応じて第2のアイコン充填材料を用いて充填される。この例では、アイコン充填材料は、アイコン充填材料に直接かつレンズを通さずに適用される非指向性硬化などの、非指向性技法によって安定化される。
【0008】
マイクロ光学フィルム材料の別の例は、米国特許第7,738,175号明細書から知られている。この参照文献では、フリッカー状の光学効果を生成する合成マイクロ光学システムが開示されている。このシステムは、画像アイコンのアレイ又はパターンと集光要素のアレイとから形成される面内画像を生成する。ここで面内画像は、面内画像をその上又は中に担持する基板の実質的に面内に視覚的に存在する、何らかの視覚的境界、パターン、又は構造を有する画像、と定義される。このシステムは少なくとも1つの面外合成画像も生成し、面外合成画像(1つ又は複数)は面内合成画像の出現の程度を調整又は制御するように働く。一実施形態では、面外合成画像は面内画像の視野を制御する働きをし、従って面内画像の出現の程度を調整又は制御する働きをする。ここで、面内画像の外観は、システムの視角に応じて視覚的に出現及び消失する、すなわちオン及びオフになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,733,268号明細書
【特許文献2】米国特許第7,468,842号明細書
【特許文献3】米国特許第7,738,175号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、コリメート光(collimated light)を使用し、レンズ層を通してこれらのフィルム材料の画像アイコン層を指向性硬化することにより、これらの材料によって示される光学効果の範囲が大幅に増加するということが発見された。
【0011】
従って本発明は、フリッカー状の光学効果を生成する光学デバイスを提供し、この光学デバイスは、1つ以上の硬化された有色素材料から形成される画像アイコンの少なくとも1つの配列と、画像アイコンの配列(1つ又は複数)の少なくとも一部の、1つ以上の合成画像を形成するために配置される、必要に応じて埋め込まれる集光要素の少なくとも1つの配列とを含み、ここで、有色素材料(1つ又は複数)のうちのいくつか又は全ては、光学デバイスの表面に対する1つ以上の角度(以下、「硬化角(1つ又は複数)」と呼ぶ)において、集光要素を通して方向付けられる、コリメート光を使用して硬化されて、指向性硬化された画像アイコンを形成し、ここで、指向性硬化された画像アイコンの合成画像(1つ又は複数)は、硬化角(1つ又は複数)において見ることができ、従って、デバイスの視角が硬化角(1つ又は複数)を通って移動するにつれて視覚的に出現及び消失する、すなわちオン及びオフになる。
【0012】
本明細書中で使用される用語「有色素材料(pigmented material)」は、本発明のデバイスの画像アイコンに、及び合成画像(1つ又は複数)に色を付与することが可能な任意の材料であって、コリメート光によって硬化可能な任意の材料を意味することが意図されている。企図される一実施形態では、有色素材料は、硬化性顔料分散(curable pigment dispersion)(すなわち、硬化性の媒体又はキャリア内の顔料粒子)である。
【0013】
以下でより詳細に説明するように、本発明の光学デバイスによって投影される合成画像(1つ又は複数)は、デバイスの面に実質的に平行な軸の周りでデバイスが傾けられた場合に、いくつかの別個の視覚効果を示し得る。例えば、合成画層(1つ又は複数)は、視差直交移動(orthoparallactic movement、OPM)(すなわち、デバイスが傾けられた場合、画像は、通常の視差によって予想される方向に対して垂直に見える傾きの方向に移動する)を示してもよい。フリッカー状の光学効果を生成する上述の従来技術のマイクロ光学システムとは異なり、本発明によって投影される画像(1つ又は複数)は、デバイスの実質的に面内に視覚的に存在する画像では必ずしもなく、デバイスの厚さより視覚的に奥深くの空間平面上にあるように見えてもよく、又はデバイスの表面の上方に離れた空間平面上にあるように見えてもよい。画像(1つ又は複数)はまた、デバイスが所与の角度(例えば90度)にわたって回転された場合に、デバイスの上方の位置からデバイスの下方の位置に振れるか又は逆に振れ、デバイスが同じ角度だけ更に回転された場合に元の位置に戻ってもよい。
【0014】
1つ以上の硬化された有色素材料を使用して作製される本発明の画像アイコンは、本発明の光学デバイスの表面上又は表面内の、柱の形態あるいは空隙又は凹部の形態で作られてもよい。柱は有色素材料(1つ又は複数)から形成されてもよく、あるいは、柱又は空隙又は凹部を取り囲む領域は、有色素材料(1つ又は複数)を用いてコーティングされるか又は部分的に又は完全に充填されてもよい。アイコンのサイズ、形態、及び形状は限定されない。実際に、本発明のデバイス内の画像アイコンの1つの配列又は層内で、2つ以上のタイプの画像アイコン(例えば、マイクロサイズ及びナノサイズの画像アイコン)が
互いに整合された(in register with)実施形態が企図される。
【0015】
一例示的実施形態では、画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンは、1つの硬化された有色素材料から形成され、有色素材料は、所与の角度におけるコリメート光を使用して硬化される。この実施形態において、合成画像(1つ又は複数)は硬化角(cure angle)において見ることができる。言い換えると、投影される合成画像(1つ又は複数)は、デバイスの視角が硬化角を通って移動するにつれて明滅する、すなわちオン及びオフになる。
【0016】
2つ以上の有色素材料から形成される画像アイコンは、各材料をコリメート光を用いて硬化させることによって、又は1つの材料をコリメート光を用いて硬化させ、別の材料を別の硬化手段(例えば、非指向性放射線硬化、化学反応)を用いて硬化させることによって作製されてもよい。指向性硬化された有色素材料から形成された合成画像は、硬化角(1つ又は複数)において見ることができ、非指向性硬化された有色素材料から形成された合成画像は、広い角度範囲にわたって見ることができる。本発明の実施において使用される画像アイコンの配列(1つ又は複数)は、非指向性硬化された有色素材料から全体が形成された従来技術の画像アイコンも含んでもよいということに留意されたい。
【0017】
そのような一例示的実施形態では、画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンは、それぞれが異なる色を有する2つの硬化された有色素材料から形成される。各有色素材料は、他の有色素材料を硬化させるために使用される角度とは異なる角度におけるコリメート光を使用し、集光要素を通して硬化される。この例示的実施形態における光学デバイスは、第1の硬化角において見ることができる第1の色の合成画像(1つ又は複数)と、第2の硬化角において見ることができる第2の色の合成画像(1つ又は複数)とを投影する。
【0018】
この例示的実施形態は、色付き有色素材料を1つの角度からのコリメート光を使用して硬化させ、未硬化の有色素材料をデバイスから洗浄し、次に第2の色付き有色素材料を追加し、それを硬化させることによって製造されてもよい。容易に理解されるように、多数の色付き有色素材料がこのようにして追加されてもよい。
【0019】
別のそのような例示的実施形態では、画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンは、1つの硬化された蛍光有色素材料から、及び1つの硬化された非蛍光有色素材料から形成される。容易に理解されるように、所与の角度においてのみ検出可能であり別の所与の角度においては検出可能ではない蛍光特徴は、効果的な機械読み取り可能認証特徴として働き得る。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の光学デバイスは、1つ以上のセキュリティ印刷特徴(例えばテキスト、写真)を有するIDカードと共に使用される。セキュリティ印刷特徴(1つ又は複数)は、選ばれた視角において可視となり、本発明のデバイスによって投影される合成画像(1つ又は複数)は他の選ばれた視角において可視となる。このようにして、合成画像(1つ又は複数)は、セキュリティ印刷特徴(1つ又は複数)を見えにくくすることも損ねることもないものとなる。
【0021】
更なる例示的実施形態では、本発明の光学デバイスは、上述の光学デバイス(例えば光学フィルム材料)を基本的に含み、かつその光学デバイスの上及び/又は下に位置する1つ以上の層を必要に応じて含む、レーザマーキングされた光学デバイスであり、ここで、光学デバイスの少なくとも1つの配列又は層、あるいは光学デバイスの上又は下の少なくとも1つの層は、レーザマーキング可能な配列又は層であり、ここで、レーザマーキング可能な配列(1つ又は複数)又は層(1つ又は複数)は、1つ以上のレーザマーキングさ
れた静止2次元(2D)画像をその上に有する。
【0022】
本発明は、本発明の光学デバイスから作られたか又は本発明の光学デバイスを使用したシート材料及びベースプラットフォーム、並びにそれらの材料から作られた文書を更に提供する。本明細書中で使用される用語「文書」は、紙幣又は貨幣、債券、小切手、トラベラーズチェック、宝くじ券、郵便切手、株券、権利証書などの経済的価値を有する任意の種類の文書、あるいはパスポート、IDカード、運転免許証などの身分証明書、あるいはラベルなどの非セキュア文書を示す。本発明の光学デバイスは、消費財並びに消費財と共に使用される袋又はパッケージと共に使用することも企図される。
【0023】
そのような一実施形態では、光学デバイスは、ポリマーIDカード内に埋め込まれたパッチの形態である。
【0024】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者にとって明らかとなるであろう。特に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての出版物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、それらの全体が参照によって本明細書中に援用される。矛盾がある場合は、定義を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0025】
開示される発明の特定の特徴について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、いかなる有色素材料も組み込まれる前の光学デバイスの側断面図である。
図2】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、図1に示す光学デバイスであり、画像アイコン層内の空隙は第1の有色素材料を用いて充填されて示されており、平行光線の形態の入射光が、集光要素配列上にその表面に垂直に当たっている状態で示されている。
図3】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、図2に示す光学デバイスであり、未硬化の第1の有色素材料は画像アイコン層から除去されており、硬化された第1の有色素材料と元のアイコン構造とのみが後に残されている。
図4】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、図3に示す光学デバイスであり、再作成された空隙が第2の有色素材料を用いて充填されて示されており、コリメート光が、集光要素配列上に異なる硬化角において当たっている状態で示されている。
図5】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、図4に示す光学デバイスであり、未硬化の第2の有色素材料は画像アイコン層から除去されており、硬化された第1の及び第2の有色素材料と元のアイコン構造とが後に残されている。
図6】本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示し、図5に示す光学デバイスであり、再作成された空隙が第3の有色素材料を用いて充填されて示されており、非コリメート(散乱)光が、集光要素配列上に当たっている状態で示されている。
図7図1図6に示した方法に従って作製された本発明の光学デバイスの例示的実施形態の側断面図である。このデバイスは3つの異なる充填材料を有し、それらのうちの2つは指向性硬化されたものである。
図8図7に示す光学デバイスであり、第1の硬化角からデバイスを見ている観察者を示す。
図9図7に示す光学デバイスであり、第2の硬化角からデバイスを見ている観察者を示す。
図10図7に示す光学デバイスであり、第3の硬化角からデバイスを見ている観察者を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明により、異なる視角から見た場合に色が必要に応じて変化するフリッカー状の光学効果であって、必ずしも光学デバイスの平面上にあるとは限らないフリッカー状の光学効果が生成される。本発明の光学デバイスはレーザ彫刻と組み合わせて使用することができ、それにより少なくとも1つの実施形態において、光学デバイスを通した優れたレーザ彫刻が可能になる。
【0028】
上述のように、本発明の光学デバイスは、1つ以上の硬化された有色素材料から形成される画像アイコンの少なくとも1つの配列と、画像アイコンの配列(1つ又は複数)の少なくとも一部の、1つ以上の合成画像を形成するために配置される、必要に応じて埋め込まれる集光要素の少なくとも1つの配列とを含み、ここで、有色素材料(1つ又は複数)のうちのいくつか又は全ては、光学デバイスの表面に対する1つ以上の角度(硬化角(1つ又は複数))において、集光要素を通して方向付けられる、コリメート光を使用して硬化されて、指向性硬化された画像アイコンを形成し、ここで、指向性硬化された画像アイコンの合成画像(1つ又は複数)は、硬化角(1つ又は複数)において見ることができ、従って、デバイスの視角が硬化角(1つ又は複数)を通って移動するにつれて視覚的に出現及び消失する、すなわちオン及びオフになる。
【0029】
合成画像(1つ又は複数)は、反射光又は透過光の中で、硬化角(1つ又は複数)において見られる場合、以下の光学効果のうちの1つ以上を示してもよい。
i.視差直交移動を示す、
ii.光学デバイスの厚さより奥深くの空間平面上にあるように見える、
iii.光学デバイスの表面の上方の空間平面上にあるように見える、
iv.デバイスが方位角方向に回転される場合に、光学デバイスの厚さより奥深くの空間平面と、光学デバイスの表面の上方の空間平面との間で振れる、
v.複雑な3次元構造、パターン、移動、又はアニメーションを示す、及び/又は
vi.出現及び消失する面内画像、静止したままだが全体を通して移動する動的な色の帯を有する面内画像、又は全体を通して移動する動的な色の帯を有して動く面内画像を有する。
【0030】
スティーンブリク(Steenblik)らの国際出願PCT/US2004/039315号明細書に記載されているように、画像の倍率又は合成倍率の大きさ、及び上述の視覚効果は、集光要素(例えばレンズ)及び画像アイコンの配列(例えばアレイ)の間の「スキュー」の程度と、2つのアレイの相対的スケールと、集光要素又はレンズのf値とに依存し、f値は、レンズの焦点距離(f)をレンズの有効最大直径(D)で割ることによって得られる商と定義される。
【0031】
スティーンブリク(Steenblik)らの国際出願PCT/US2004/039315号明細書にやはり記載されているように、視差直交効果は、集光要素及び画像アイコンの対称軸がずれている場合に、実質的に1.0000に等しい「縮尺比率(scale ratio)」(すなわち集光要素又はレンズの反復比率に対する画像アイコンの反復周期の比率)によりもたらされる。本発明の光学デバイスの厚さより奥深くの空間平面上にあるという外観は、集光要素及び画像アイコンの対称軸が実質的に位置合わせされている場合に、1.0000未満の「縮尺比率」によりもたらされ、本発明のデバイスの表
面の上方の空間平面上にあるという外観は、集光要素及び画像アイコンの対称軸が実質的に位置合わせされている場合に、1.0000より大きな「縮尺比率」によりもたらされる。デバイスが方位角方向に回転される場合に、光学デバイスの厚さより奥深くの空間平面と、光学デバイスの表面の上方の空間平面との間で振れるという外観は、軸非対称的な縮尺比率の値(例えば、X方向に0.995及びY方向に1.005)によりもたらされる。
【0032】
1つ以上の硬化された有色素材料を使用して作製される、本発明の実施において使用される画像アイコンは、本発明の光学デバイスの表面上又は表面内の、柱の形態あるいは空隙又は凹部の形態で作られてもよい。柱は、硬化された有色素材料(1つ又は複数)から作製されてもよく、あるいは、柱又は空隙又は凹部を取り囲む領域は、有色素材料(1つ又は複数)を用いてコーティングされるか又は部分的に又は完全に充填されてもよい。アイコンのサイズ、形態、及び形状は限定されないが、これらの隆起した又は凹状のアイコンは、視覚的に検出可能な、及び場合によっては機械検出又は機械読み取りが可能な、例えば、ポジ又はネガの記号、文字、及び/又は数字の形態又は形状を取ってもよい。それらはまた、3次元効果を提供する浅浮き彫り構造を構成してもよく、あるいは、ライン、ドット、スワール、又はこれらの組み合わせの形態を取ってもよい複数の離間された、隆起した又は凹状のアイコンによって形成される、複合画像又はモザイク状画像を構成してもよい。企図される一実施形態では、本発明の実施において使用される画像アイコンは、約0.5ミクロン~約8ミクロンの範囲の高さ又は凹部深さを有する隆起した又は凹状のアイコンである。
【0033】
上述のように、本発明のデバイス内の画像アイコンの1つの配列又は層内で、2つ以上のタイプの画像アイコン(例えば、マイクロサイズ及びナノサイズの画像アイコン)が互いに整合された実施形態が企図される。これらの実施形態のために、好ましい硬化の形態が必要とされる。本発明によって企図される好ましい硬化の一形態は、充填の差分溶解(differential dissolution)であり、これは異なるサイズの構造、及び異なる溶解度の充填を利用して達成され得る。これは、単一の層上で様々な組成を有する様々な構造を製造するために、コリメート硬化(collimated curing)と組み合わせられてもよい。コリメート硬化はまた、多機能のマイクロサイズ及び/又はナノサイズの画像アイコンのそのような単一の層を製造するための手段として、単独で使用されてもよい。
【0034】
本発明における使用が企図される有色素材料としては、有色素樹脂及びインクが挙げられるが、これらに限定されない。例示的実施形態では、サンケミカルコーポレーション(Sun Chemical Corporation)から製品名「スペクトラパック(Spectra Pac)」として入手可能な、顔料分散の形態のサブミクロン顔料が使用される。本発明における使用に適した硬化性有色素材料を実現するために、この顔料分散に他の硬化性(例えば紫外線(UV)硬化性)材料及び光開始剤が追加される。結果として得られる硬化性有色素材料は、次に、柱を作製するために、あるいは空隙(又は凹部)を充填するため及び/又は柱を取り囲む領域を充填するために使用される。
【0035】
本発明の実施において使用される必要に応じて埋め込まれる集光要素としては、屈折性集光要素、反射性集光要素、ハイブリッド屈折性/反射性集光要素、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。企図される一実施形態では、集光要素は屈折性マイクロレンズである。好適な集光要素の例は、スティーンブリク(Steenblik)らの米国特許第7,333,268号明細書、スティーンブリク(Steenblik)らの米国特許第7,468,842号明細書、及びスティーンブリク(Steenblik)らの米国特許第7,738,175号明細書において開示されており、当該特許の全ては本明細書中に完全に記載されたかのように参照によって本明細書中に完全に援
用される。
【0036】
集光要素の実施形態は、光学的劣化をもたらす外部効果に対する本発明の光学デバイスの耐性を向上させる働きをする。そのような一実施形態では、本発明のデバイスの外表面から屈折界面までの屈折率は、第1の屈折率と第2の屈折率との間で変化し、第1の屈折率は第2の屈折率と実質的に又は測定可能な程度に異なる。本明細書中で使用する語句「実質的に又は測定可能な程度に異なる」は、集光要素の焦点距離(1つ又は複数)を少なくとも約0.1ミクロン変化させる屈折率の差を意味する。
【0037】
埋め込み材料は、透明、半透明、薄色、又は有色素であってもよく、かつ、光学効果、導電率又は静電容量、磁場検出に依存する、自動貨幣認証、検証、追跡、計数、及び検出システムのサポートを含むセキュリティ及び認証目的のための追加機能を提供してもよい。好適な材料としては、接着剤、ジェル、グルー、ラッカー、液体、成形ポリマー、並びに、有機又は金属分散を含むポリマー又はその他の材料が挙げられ得る。
【0038】
本発明の光学デバイスは、集光要素がマイクロレンズであり画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンが1つの硬化された有色素材料から形成される例示的実施形態において、(a)実質的に透明な又はクリアな放射線硬化性樹脂を、光学スペーサ又はスペーサ層の上表面及び下表面に塗布し、(b)マイクロレンズアレイを光学スペーサの上表面上に、並びに、空隙(又は凹部)及び/又は柱の形態のアイコンアレイを光学スペーサの下表面上に形成し、(c)放射線源を使用して実質的に透明な又はクリアな樹脂を硬化させ、(d)1つ以上の有色素材料を用いてアイコンアレイ凹部を充填し、かつ/又は柱を取り囲む領域を充填し、(e)光学スペーサの下表面から余分な有色素材料(1つ又は複数)を除去し、(f)有色素材料(1つ又は複数)のうちのいくつか又は全てを、光学デバイスの表面に対する1つ以上の角度において、集光要素を通してアイコン層に向けて方向付けられる、コリメート(平行にされた)光を使用して硬化させることによって作製されてもよい。
【0039】
有色素材料(1つ又は複数)の硬化は、結果としてもたらされるアレイに当たる光が有色素材料(1つ又は複数)の硬化を引き起こすように、コリメート光源からのコリメート光を、マイクロレンズアレイを通してアイコンアレイに向けて方向付けることを含む。好適なコリメート光源としては、レーザ光、1つ以上のコリメーティングレンズを通し狭いスリットを通して放物面反射体に向けて方向付けられる光(例えば、太陽光、UV光、赤外(IR)光)、LEDのアレイなどのより指向性のある源からの光、又はこれらの組み合わせが挙げられる。企図される一実施形態では、コリメート光源はUVリソグラフィ露光ユニットである。
【0040】
次に図面を詳細に参照すると、図1図6は、本発明の光学デバイスの一例示的実施形態の画像アイコン配列又は層を形成する方法を示す。図1では、いかなる有色素材料も組み込まれる前の光学デバイスの側断面図が10において一般に示されている。デバイス10は基本的に、
(a)集光要素の配列12と、
(b)ベースフィルム又は光学スペーサ14と、
(c)実質的に透明な又はクリアな放射線硬化性樹脂18から、アイコン凹部又は空隙20を中に有して作製された、部分的に形成された画像アイコン層(すなわち、元のアイコン構造)16と、を含む。
【0041】
図2に示す、画像アイコン配列又は層を形成する方法の第1のステップにおいて、空隙20は第1の有色素材料22を用いて充填される。平行光線の形態の入射光24が、集光要素配列12の表面に垂直に当たる。言い換えると、平行光線はゼロに等しい角度で入っ
てくる。各集光要素はそのそれぞれの入射光を画像アイコン配列又は層上に集光し、集光要素の概して焦点距離において集光が発生する。焦点に非常に近い充填された空隙の領域が硬化される。焦点に近くない充填された空隙の領域は硬化されない。
【0042】
未硬化の第1の有色素材料22は次に除去され(例えば洗浄除去され)、図3に最も良く示されているように、硬化された第1の有色素材料26と元のアイコン構造16とのみが後に残される。このステップにより、画像アイコン配列又は層内に空隙20が再作成される。
【0043】
次のステップにおいて、再作成された空隙20が第2の有色素材料28を用いて充填される。異なる硬化角が選択され、その角度から来るコリメート光30が生成される。図4に示すように、この硬化角はデバイス10の表面の右上から来るものである。コリメート光30は全て平行光線からなる。前述同様に、空隙20のうちのいくらかは集光要素の焦点に非常に近く、それらのゾーン内の第2の有色素材料28が硬化される。有色素材料28のうちのいくらかは焦点に近くないため露光されず、従って未硬化のままとなる。
【0044】
未硬化の第2の有色素材料28は次に除去され、図5に最も良く示されているように、硬化された第1の有色素材料26と硬化された第2の有色素材料32と元のアイコン構造16とが後に残される。再びこのステップにより、画像アイコン配列又は層内に空隙20が再作成される。
【0045】
次のステップにおいて、再作成された空隙20が第3の有色素材料34を用いて充填される。図6に示すように、材料は非コリメート(散乱)光36を使用して硬化される。結果として、集光要素による効果的な集光はなく、アイコン層全体が露光される。実際上、これにより第3の有色素材料34の全てが硬化されることが保証される。
【0046】
有色素充填材料を用いて空隙を充填することを含む方法ステップのうちの1つ以上は、レーザ光を吸収しないように設計された無着色材料(unpigmented material)を使用して実行されてもよい。これにより「空きの(vacant)」アイコン空間が設けられ、この利点については以下で更に説明する。
【0047】
この方法に従って作製される光学デバイスは図7に示されており、参照番号100が付されている。この場合、3つの異なる硬化された有色素材料26、32、38(硬化された第3の有色素材料)が存在し、それらのうちの2つ(26、32)は指向性硬化されたものである。
【0048】
次に図8を参照すると、第1の硬化角からデバイス100を見ている観察者は、硬化された第1の有色素材料26と関連付けられた合成画像(1つ又は複数)を視認する。図8図10において、観察者は、図8の集光要素のそれぞれに対する観察者の実効的な角度が例えば第1の硬化角に等しいように、デバイスから「非常に遠く離れて」いる。硬化された第1の有色素材料26と関連付けられた合成画像(1つ又は複数)は、第1の硬化角のみから可視である。
【0049】
第2の硬化角からデバイスを見ている観察者は(図9を参照)、硬化された第2の有色素材料32と関連付けられた合成画像(1つ又は複数)を視認する。この合成画像(1つ又は複数)は、第2の硬化角のみから可視である。
【0050】
それらの硬化角のうちの1つではない角度からデバイスを見る観察者は(図10を参照)、硬化された第3の有色素材料38と関連付けられた合成画像(1つ又は複数)を視認する。この合成画像(1つ又は複数)は、第1の硬化角にも第2の硬化角にも等しくない
任意の角度から可視である。いくつかの場合、特に光学デバイス又はシステムが大きなf値を有する場合、観察者は高角(すなわち「垂直な(normal)」角度から遠い角度)からデバイスを見ることができる。視角が十分高くなるにつれて、集光要素を通る視線により、隣接する集光要素の下の画像アイコンが視認され始める。このタイプの状況では、観察者は、特定の硬化角以外の角度において、特定の硬化角と関連付けられた1つ以上の合成画像を視認する可能性がある。
【0051】
光学スペーサ又はスペーサ層は、以下に限定されないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどの、1つ以上の本質的に透明又は半透明のポリマーを使用して形成されてもよい。例示的実施形態では、光学スペーサ又はスペーサ層は、ポリエステル又はポリエチレンテレフタレートを使用して形成される。
【0052】
上記の例示的実施形態では光学スペーサ又はスペーサ層の使用について言及したが、本発明の光学デバイスは光学スペーサ又はスペーサ層なしで作製されてもよいということに留意されたい。
【0053】
好適な放射線硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ、ポリエステル、アクリル化ポリエステル、ポリプロピレン、ウレタン、アクリル化ウレタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アレイは、ロードケミカルズ(Lord Chemicals)から入手可能なアクリル化ウレタンを使用して形成される。
【0054】
前述のように、2つ以上の有色素材料から形成される画像アイコンは、各材料をコリメート光を用いて硬化させることによって、又は1つの材料をコリメート光を用いて硬化させ、別の材料を別の硬化手段(例えば、放射線硬化、化学反応)を用いて硬化させることによって作製されてもよい。そのような指向性硬化された有色素材料(1つ又は複数)から形成された画像アイコンの合成画像は、硬化角(1つ又は複数)において見ることができ、非指向性硬化された有色素材料から形成された画像アイコンの合成画像は、広い角度範囲にわたって見ることができる。本発明の実施において使用される画像アイコンの配列(1つ又は複数)は、非指向性硬化された有色素材料から全体が形成された従来技術の画像アイコンも含んでもよいということに留意されたい。
【0055】
そのような一例示的実施形態では、画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンは、それぞれが異なる色を有する2つの硬化された有色素材料から形成される。ここで、各有色素材料は、他の有色素材料を硬化させるために使用される角度とは異なる角度におけるコリメート光を使用し、集光要素を通して硬化される。特に、この例示的実施形態は、色付き有色素材料を1つの角度からのコリメート光を使用して硬化させ、未硬化の有色素材料をデバイスから洗浄し、次に第2の色付き有色素材料を追加し、異なる角度においてそれを硬化させることによって製造されてもよい。結果として得られる光学デバイスは、第1の硬化角において見ることができる第1の色の合成画像(1つ又は複数)と、第2の硬化角において見ることができる第2の色の合成画像(1つ又は複数)とを投影する。容易に理解されるように、多数の異なる色の有色素材料がこのようにして追加されてもよい。加えて、角度硬化(angular curing)のためにまだ使用されていない任意の角度から視認可能な「背景色」を提供するために、コリメート光を使用せずに硬化される別の異なる色の有色素材料が追加される。
【0056】
別のそのような例示的実施形態では、画像アイコンの配列(1つ又は複数)内の各画像アイコンは、1つの硬化された蛍光有色素材料から、及び1つの硬化された非蛍光有色素材料から形成される。ここで、所与の角度においてのみ検出可能であり別の所与の角度においては検出可能ではない蛍光特徴は、効果的な機械読み取り可能認証特徴として働き得
る。
【0057】
本発明の更なる例示的実施形態では、光学デバイスは、上述の光学デバイスを基本的に含み、かつその光学デバイスの上及び/又は下に位置する1つ以上の層を必要に応じて含む、レーザマーキング可能な光学デバイスであり、ここで、光学デバイスの少なくとも1つの配列又は層、あるいは光学デバイスの上又は下の少なくとも1つの層は、レーザマーキング可能な配列又は層である。
【0058】
本明細書中で使用される用語「レーザマーキング可能な」又はその任意の変形は、以下に限定されないが、炭化、彫刻、変色を伴う又は伴わない彫刻、表面炭化を伴う彫刻、変色又は内部黒化、コーティング除去によるレーザマーキング、アブレーション、漂白、融解、膨張、及び蒸発などの、レーザによって誘導又は形成される物理的又は化学的変更が可能であることを意味することが意図されている。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明のレーザマーキング可能な光学デバイスは、
(a)必要に応じて埋め込まれた集光要素(例えば、埋め込まれた屈折性集光要素)の配列と、光学スペーサとしても機能するレーザマーキング可能な層によって分離された画像アイコンの配列、及び/又は、
(b)光学デバイスの下に位置する1つ以上のレーザマーキング可能な層
を有する。
【0060】
埋め込みレンズ及びその他のID製品(例えば、ポリマーIDカード内に埋め込まれるパッチ)において使用されてもよい、上記の好ましい実施形態において、静止2次元(2D)画像の形態のパーソナライズデータが、コリメート硬化エネルギーが印加された角度(1つ又は複数)とは異なる角度において、光学デバイス内に又は光学デバイスの下にレーザ彫刻される。
【0061】
1つ以上のレーザマーキング可能な層が光学デバイスの下に位置する後者の実施形態において、画像アイコンの配列は「空きの」アイコン空間を含む。前述のように、「空きの」アイコン空間は、レーザ光を吸収しないように設計された無着色材料(1つ又は複数)(例えばUV硬化性混合物)を使用して作製される。この実施形態における無着色材料(1つ又は複数)は、静止2次元画像を書き込むためにレーザ彫刻機が使用するのと同じ角度において指向性硬化される。画像アイコンの配列内のアイコン凹部又は空隙のうちの残りは、無着色材料(1つ又は複数)を硬化するために使用された角度以外の角度において硬化される有色素材料を用いて充填される。
【0062】
この実施形態によって、レーザエネルギーは、光学デバイスによって吸収されるレーザエネルギーがほとんどなしに、光学デバイスを通過することを許可され、それにより光学デバイスを通した優れたレーザ彫刻が提供される。
【0063】
本願発明者らは、光学デバイスを通したレーザ彫刻を試みる際に特定の有色素材料がレーザエネルギーを吸収する、ということを発見した。結果として得られるのは、白い又は欠けている領域を有する不完全にレーザマーキングされた暗い画像である。この問題は、どの顔料を使用するかを慎重に選択することによって、又は上述の「空きの」アイコン空間を採用することによって回避することが可能である。当業者によって容易に理解されるように、「空きの」アイコン空間の使用により、不完全にレーザマーキングされた暗い画像を形成するリスクを伴わずに任意の顔料を使用することが可能になる。
【0064】
上述の実施形態の最終的な効果は、色付きの有色素合成画像(1つ又は複数)は、静止2Dレーザ彫刻画像(1つ又は複数)が可視であるのと同じ角度においては可視ではない
ということである。これは、集光要素がレーザ彫刻機からのレーザを集光する傾向がある領域内に顔料が存在せず、有色素材料(1つ又は複数)がレーザエネルギーを吸収するリスクが回避される、ということを意味している。
【0065】
上記で触れたように、本発明のレーザマーキング可能な光学デバイスにマーキングするために、彫刻レーザからの光エネルギーは集光要素によって集光され、彫刻する角度のみから見ることができる画像がレーザマーキング可能な層内に形成されるような手法で、レーザマーキング可能な層を彫刻する。この技法により、出現及び消失するようにされ得る動的なパーソナライズ画像を用いた、本発明のデバイスのより多くのカスタマイズが可能となる。複数のレーザマーキング角度が同じデバイス内で使用されてもよく、それにより、複数の画像であってそれらのそれぞれは異なる視角から観察可能な複数の画像が提供される。このようにして、短いアニメーション又は変化する画像が、パーソナライズされた手法で作られ得る。例として、そのようなデバイスがID文書上で、又はID文書と組み合わせて使用される場合、ID文書のために使用されるポートレートの小さなバージョンがオン及びオフにされてもよい。本発明のデバイスによって表示されるこの動的なポートレートは、そのID文書に固有であり、文書のセキュリティが向上する。
【0066】
結果として得られるレーザマーキングされた光学デバイスは、レーザマーキング可能な層(1つ又は複数)上に1つ以上のレーザマーキングされた静止2D画像を有する。ここで、用語「レーザマーキングされた」又はその任意の変形は、レーザ又はレーザに類似の装置によって形成された任意のマーキングを担持するか又は表示することを意味することが意図されている。
【0067】
好適なレーザマーキング可能な層は、熱可塑性ポリマーを使用して作製されてもよい。第1のカテゴリでは、良好な吸収性及び炭化性を有する熱可塑性ポリマーが使用されてもよい。これらのポリマーは、使用されるレーザの波長における光を吸収しそれを熱に変換する化合物であるいわゆるレーザ添加物なしで、レーザマーキング可能である。レーザに露光された領域内に甚大な黒化をもたらすこれらのポリマーの例としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、及びポリフェニレンスルフィド(PPS)が挙げられる。第2のカテゴリでは、レーザ添加物(例えば、顔料又は特別な添加物)を有する熱可塑性ポリマーが使用されてもよい。均一に、かつ良好な品質を有してマーキングされ得るこれらのポリマーの例としては、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、PET、PETG、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリエチレンが挙げられる。これらのレーザ添加物の例としては、カーボンブラック、アンチモン金属、酸化アンチモン、錫-アンチモン混合酸化物、燐を含有する混合酸化物であって鉄、銅、錫、及び/又はアンチモンの混合酸化物、マイカ(層状珪酸塩)であって金属酸化物でコーティングされたマイカ(層状珪酸塩)、が挙げられる。レーザマーキング可能な層は、約5ミクロン~約500ミクロンの範囲の、より好ましくは約25ミクロン~約200ミクロンの範囲の、好ましい厚さを有する。
【0068】
好ましいレーザマーキング技術では、10ワット、Qスイッチ、1064ナノメートル(nm)のV-Laseレーザマーキングシステムが、本発明のレーザマーキング可能なデバイスにマーキングするために使用され、このレーザマーキングシステムは30,000ヘルツ(Hz)の設定においてレーザ発光を行う。このレーザマーキングシステムは、最大出力の80%に、及び200ミリメートル/秒(mm/sec)の走査速度に設定される。これらの設定により、本発明のレーザマーキング可能なデバイス内の所望の位置において、焼損も過度の露光もなしに高コントラストのマーキングが生成される。
【0069】
上記で触れたように、本発明は、本発明の光学デバイスから作られたか又はそれを使用
したシート材料及びベースプラットフォーム、並びにそれらの材料から作られた文書も提供する。本発明の光学デバイスは、消費財並びに消費財と共に使用される袋又はパッケージと共に使用することも企図される。
【0070】
例として、本発明の光学デバイスは、認証の目的のために、任意の紙幣、セキュア文書又は製品と共に、様々な異なる形態(例えば、ストリップ、パッチ、セキュリティスレッド、プランシェット)で利用可能である。紙幣及びセキュア文書に関しては、これらの材料は一般にストリップ、パッチ、又はスレッドの形態で使用され、紙幣又は文書内に部分的に埋め込まれるか又はその表面に貼付され得る。パスポート又はその他のID文書に関しては、これらの材料は、パスポート又はその他のID文書の表面の全面ラミネート又はインレーとして使用され得る。製品パッケージに関しては、これらの材料は一般にラベル、シール、又はテープの形態で使用され、製品パッケージの表面に貼付される。上述のように、一例示的実施形態では、光学デバイスは、ポリマーIDカード内に埋め込まれたパッチの形態である。
【0071】
本発明の様々な実施形態について上述したが、それらは限定としてではなく例として示したものにすぎないということを理解されたい。従って、本発明の広さ及び範囲はいずれの例示的実施形態によっても限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10