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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124500
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フォークリフトの遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240905BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F9/24 A
H04Q9/00 301B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108008
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2022091034の分割
【原出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木綿 啓介
(57)【要約】
【課題】遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータに有益かつ豊富な情報を提供することが可能な遠隔操作システムを提供する。
【解決手段】遠隔操作システム1Aは、フォークリフトFに設けられる撮像装置20と、オペレータOの頭部に装着される頭部装着型映像表示装置10と、オペレータOによる遠隔操作指令を受け付ける指令受付装置11と、指令受付装置11が受け付けた遠隔操作指令の内容、遠隔操作指令に従って動作するフォークリフトFの動作状態、および撮像装置20によって撮影された遠隔映像を取得し、遠隔映像に遠隔操作指令の内容を示す指令表示画像およびフォークリフトFの動作状態を示す動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する合成遠隔映像生成装置12Aとを備えている。頭部装着型映像表示装置10は、生成された合成遠隔映像をオペレータOの眼前に表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータから離れた場所にあるフォークリフトに設けられる撮像装置と、
前記オペレータの頭部に装着される頭部装着型映像表示装置と、
前記オペレータの手が届く場所にあり、前記オペレータによる遠隔操作指令を受け付ける指令受付装置と、
前記指令受付装置が受け付けた前記遠隔操作指令の内容、前記遠隔操作指令に従って動作する前記フォークリフトの動作状態、および前記撮像装置によって撮影された遠隔映像を取得し、前記遠隔映像に前記遠隔操作指令の内容を示す指令表示画像および前記フォークリフトの動作状態を示す動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する合成遠隔映像生成装置と、
を備え、
前記頭部装着型映像表示装置は、前記合成遠隔映像生成装置によって生成された前記合成遠隔映像を前記オペレータの眼前に表示する
ことを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
前記頭部装着型映像表示装置は、前記オペレータの前記頭部の姿勢を検出する姿勢検出部を含み、
前記合成遠隔映像生成装置は、前記姿勢検出部が検出した姿勢を取得し、前記姿勢に従って切り出した前記遠隔映像の一部に前記指令表示画像および前記動作表示画像を合成することにより前記合成遠隔映像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記合成遠隔映像生成装置は、前記オペレータ側に設置され、インターネット回線を介して前記フォークリフトから該フォークリフトの動作状態および前記遠隔映像を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記合成遠隔映像生成装置は、前記フォークリフトに設置され、インターネット回線を介して前記指令受付装置から前記遠隔操作指令の内容を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項5】
前記合成遠隔映像生成装置は、前記オペレータおよび前記フォークリフトから離れた場所に設置され、インターネット回線を介して前記フォークリフトから該フォークリフトの動作状態および前記遠隔映像を取得するとともに、前記インターネット回線を介して前記指令受付装置から前記遠隔操作指令の内容を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項6】
前記指令受付装置は、前記フォークリフトに設けられたフォークの上昇および下降、並びに前記フォークリフトに設けられたマストの前傾および後傾に対応する、十字状に配置された4つのボタンを含み、
前記指令表示画像は、前記4つのボタンに対応する、十字状に配置された4つの荷役シンボルを含み、
前記4つのボタンのいずれかが操作されると該ボタンに対応する荷役シンボルの見た目が変化する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項7】
前記指令受付装置は、前記フォークリフトの走行方向および走行速度を指令するためのアナログスティックを含み、
前記指令表示画像は、前記フォークリフトをモチーフとした車両シンボルと、前記アナログスティックの傾倒方向および傾倒量に応じて前記車両シンボルからの相対位置が変化する走行シンボルとを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項8】
前記動作表示画像が示す前記フォークリフトの動作状態に、当該フォークリフトを構成するフォークの揚高が含まれる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離れた場所にあるフォークリフトを頭部装着型映像表示装置に表示される遠隔映像を見ながら遠隔操作することを可能にする遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離れた場所にある作業機械を頭部装着型映像表示装置に表示される遠隔映像を見ながら遠隔操作することを可能にする遠隔操作システムが知られている。例えば、特許文献1には、作業機械としてのショベルを遠隔操作するための遠隔操作システムが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のシステムは、ウェアラブルセンサによって検出したオペレータの頭部の動きに応じて頭部装着型映像表示装置に表示される画像の内容が切り替わるよう構成されている。より詳しくは、このシステムは、オペレータの頭部がピッチダウンすると、表示される画像がショベルに取り付けられた撮像装置によって撮影された前方映像(遠隔映像)から計器画面画像に切り替わり、その状態からオペレータの頭部がピッチアップすると、表示される画像が遠隔映像に戻るよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-226094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のシステムでは、遠隔映像または計器画面画像が択一的に頭部装着型映像表示装置に表示される。つまり、このシステムでは、遠隔映像でアームの動きを確認しているオペレータにショベルの計器情報が一切提供されない。このため、オペレータは、搭乗操作を行っているときに得られる情報よりも少ない情報を頼りに遠隔操作を行わなければならない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータに有益かつ豊富な情報を提供することが可能な遠隔操作システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る遠隔操作システムは、オペレータから離れた場所にあるフォークリフトに設けられる撮像装置と、オペレータの頭部に装着される頭部装着型映像表示装置と、オペレータの手が届く場所にあり、オペレータによる遠隔操作指令を受け付ける指令受付装置と、指令受付装置が受け付けた遠隔操作指令の内容、遠隔操作指令に従って動作するフォークリフトの動作状態、および撮像装置によって撮影された遠隔映像を取得し、遠隔映像に遠隔操作指令の内容を示す指令表示画像およびフォークリフトの動作状態を示す動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する合成遠隔映像生成装置と、を備え、頭部装着型映像表示装置は、合成遠隔映像生成装置によって生成された合成遠隔映像をオペレータの眼前に表示する、との構成を有している。
【0008】
上記遠隔操作システムの頭部装着型映像表示装置は、オペレータの頭部の姿勢を検出する姿勢検出部を含んでいてもよい。この場合、上記遠隔操作システムの合成遠隔映像生成装置は、姿勢検出部が検出した姿勢を取得し、取得した姿勢に従って切り出した遠隔映像の一部に指令表示画像および動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成することが好ましい。
【0009】
上記遠隔操作システムの合成遠隔映像生成装置は、(1)オペレータ側に設置され、インターネット回線を介してフォークリフトから該フォークリフトの動作状態および遠隔映像を取得するよう構成されていてもよいし、(2)フォークリフトに設置され、インターネット回線を介して指令受付装置から遠隔操作指令の内容を取得するよう構成されていてもよいし、(3)オペレータおよびフォークリフトから離れた場所に設置され、インターネット回線を介してフォークリフトから該フォークリフトの動作状態および遠隔映像を取得するとともに、インターネット回線を介して指令受付装置から遠隔操作指令の内容を取得するよう構成されていてもよい。
【0010】
上記遠隔操作システムの指令受付装置は、フォークリフトに設けられたフォークの上昇および下降、並びにフォークリフトに設けられたマストの前傾および後傾に対応する、十字状に配置された4つのボタンを含んでいてもよい。この場合、指令表示画像は、4つのボタンに対応する、十字状に配置された4つの荷役シンボルを含み、4つのボタンのいずれかが操作されると該ボタンに対応する荷役シンボルの見た目が変化するようになっていることが好ましい。
【0011】
上記遠隔操作システムの指令受付装置は、フォークリフトの走行方向および走行速度を指令するためのアナログスティックを含んでいてもよい。この場合、指令表示画像は、フォークリフトをモチーフとした車両シンボルと、アナログスティックの傾倒方向および傾倒量に応じて車両シンボルからの相対位置が変化する走行シンボルとを含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータに有益かつ豊富な情報を提供することが可能な遠隔操作システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例に係る遠隔操作システムの構成を示す図である。
図2】第1実施例に係る遠隔操作システムの指令受付装置を示す図である。
図3】第1実施例に係る遠隔操作システムの第1演算装置による映像の切り出しを説明する図である。
図4】第1実施例に係る遠隔操作システムの第1演算装置による映像の合成を説明する図である。
図5】本発明の第2実施例に係る遠隔操作システムの構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施例に係る遠隔操作システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る遠隔操作システムの実施例について説明する。
【0015】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る遠隔操作システム1Aを示す。遠隔操作システム1Aは、離れた場所にあるフォークリフトFをオペレータOが遠隔操作するためのもので、同図に示すように、オペレータO側にある頭部装着型映像表示装置10、指令受付装置11、第1演算装置12Aおよび第1通信装置13と、フォークリフトF側にある撮像装置20、第2演算装置21Aおよび第2通信装置22とを備えている。
【0016】
頭部装着型映像表示装置10は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と呼ばれているものである。頭部装着型映像表示装置10は、オペレータOの頭部に装着され、オペレータOの眼前に後述する合成遠隔映像を表示する。
【0017】
頭部装着型映像表示装置10は、不図示の姿勢検出部を有している。姿勢検出部は、オペレータOの頭部の姿勢を検出するとともに該姿勢に対応した信号(以下、「姿勢信号」という)を出力する。姿勢信号には、オペレータOの頭部が左右方向にどの程度傾いているのかを示す信号と、オペレータOの頭部が上下方向にどの程度傾いているのかを示す信号とが含まれている。
【0018】
指令受付装置11は、ゲームコンソールのコントローラのようなものであり、図2に示すように、十字状に配置された4つのボタン30,31,32,33と、アナログスティック34とを有している。指令受付装置11は、ボタン30,31,32,33のそれぞれが押し込まれているか否かを示す信号(以下、「ボタン操作信号」という)と、アナログスティック34の傾倒方向および傾倒量を示す信号(以下、「スティック操作信号」という)とを出力する。ボタン30,31,32,33は、オペレータOの左手親指によって操作される。また、アナログスティック34は、オペレータOの右手親指によって操作される。
【0019】
第1演算装置12Aは、パーソナルコンピュータのようなものであり、USB等の外部機器接続用インタフェースを介して頭部装着型映像表示装置10および指令受付装置11に有線で接続されている。なお、本実施例では、この第1演算装置12Aが「合成遠隔映像生成装置」に相当する。
【0020】
第1通信装置13は、ルータのようなものであり、LAN等の通信インタフェースを介して第1演算装置12Aに有線で接続されている。第1通信装置13は、インターネット回線NTにも接続されている。
【0021】
撮像装置20は、遠隔操作されるフォークリフトFに取り付けられた360°カメラである。フォークリフトFは、オペレータが着座するシートの代わりに1m弱の長さを有するポール25を備え、撮像装置20は、このポール25の上端に取り付けられている。つまり、撮像装置20は、オペレータがシートに着座した場合に該オペレータの頭部が位置することになる位置に取り付けられている。撮像装置20は、360°分の遠隔映像を撮影するとともに該遠隔映像に関する信号(以下、「遠隔映像信号」という)を出力する。
【0022】
第2演算装置21Aは、荷役装置23(これには、マスト、フォークおよびこれらを駆動する油圧系が含まれる)および走行装置24(これには、操舵輪の向きを変える操舵装置および駆動輪を駆動するモータが含まれる)を制御することが可能な車両制御ユニットECUである。第2演算装置21Aは、フォークリフトFの各部の状態を把握する機能、およびフォークリフトFの各部に異常が発生しているか否か判定する機能も有している。第2演算装置21Aは、把握しているフォークリフトFの各部の状態および異常の発生の有無に関する信号(以下、「動作状態信号」という)を生成する。
【0023】
本実施例では、第2演算装置21Aは、少なくともフォーク上の積荷の重量、マストのティルト角、フォークの揚高、モータの回転数(フォークリフトFの走行速度)、およびバッテリの残量を常に把握することができる。
【0024】
第2通信装置22は、フォークリフトFが作業を行う施設内に設置されたルータのようなものであり、通信インタフェースを介して第2演算装置21Aに無線で接続されている。第2通信装置22は、インターネット回線NTにも接続されている。
【0025】
オペレータOが指令受付装置11のボタン30,31,32,33のいずれかを押し込むと、そのボタン(例えば、第1ボタン30)に対応したボタン操作信号が“指令受付装置11→第1演算装置12A→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21A”の経路で第2演算装置21Aに送られる。ボタン操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0026】
第2演算装置21Aは、指令受付装置11から送られてきたボタン操作信号に従って荷役装置23を作動させる。具体的には、第2演算装置21Aは、第1ボタン30に対応したボタン操作信号に従ってフォークを上昇させ、第2ボタン31に対応したボタン操作信号に従ってフォークを下降させ、第3ボタン32に対応したボタン操作信号に従ってマストを後傾させ、第4ボタン33に対応したボタン操作信号に従ってマストを前傾させる。
【0027】
オペレータOが指令受付装置11のアナログスティック34をいずれかの方向に傾倒させると、その傾倒方向および傾倒量に対応したスティック操作信号がボタン操作信号と同様の経路、すなわち、“指令受付装置11→第1演算装置12A→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21A”の経路で第2演算装置21Aに送られる。スティック操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0028】
第2演算装置21Aは、指令受付装置11から送られてきたスティック操作信号に従って走行装置24を作動させる。具体的には、第2演算装置21Aは、フォークリフトFの走行方向がスティック操作信号の示す傾倒方向に対応した方向に一致するように操舵装置を作動させるとともに、フォークリフトFの走行速度がスティック操作信号の示す傾倒量に対応した速度に一致するようにモータを作動させる。
【0029】
撮像装置20が出力する360°分の遠隔映像に関する遠隔映像信号は、“撮像装置20→第2演算装置21A→第2通信装置22→インターネット回線NT→第1通信装置13→第1演算装置12A”の経路で第1演算装置12Aに送られる。遠隔映像信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0030】
第2演算装置21Aが把握しているフォークリフトFの各部の状態および異常の発生の有無に関する動作状態信号は、“第2演算装置21A→第2通信装置22→インターネット回線NT→第1通信装置13→第1演算装置12A”の経路で第1演算装置12Aに送られる。
【0031】
頭部装着型映像表示装置10が出力する姿勢信号は、“頭部装着型映像表示装置10→第1演算装置12A”の経路で第1演算装置12Aに送られる。
【0032】
このようにして、合成遠隔映像生成装置としての第1演算装置12Aは、指令受付装置11が出力したボタン操作信号およびスティック操作信号と、頭部装着型映像表示装置10が出力した姿勢信号と、撮像装置20が出力した遠隔映像信号と、第2演算装置21Aが出力した動作状態信号とを取得する。
【0033】
第1演算装置12Aは、取得した姿勢信号に基づいて遠隔映像の一部を抽出する。言い換えると、第1演算装置12Aは、図3に示すように、オペレータOの姿勢に従って360°分の遠隔映像からオペレータOの視野に相当する大きさの画像Aを切り出す。オペレータOの頭部の姿勢が変化すれば、切り出される画像Aの位置も変化する。一方、オペレータOの頭部の姿勢が変化しても、切り出される画像Aの大きさは変化しない。
【0034】
第1演算装置12Aは、取得したボタン操作信号およびスティック操作信号に基づいて指令表示画像を生成する。
【0035】
指令表示画像は、図4に示すように、指令受付装置11のボタン30,31,32,33に対応する、十字状に配置された4つの荷役シンボル40,41,42,43を含んでいる。第1荷役シンボル40は、フォークを上昇させるための第1ボタン30に対応しており、第1ボタン30が押し込まれているときとそうでないときとで見た目(例えば、色。以下同様)が変化するようになっている。第2荷役シンボル41は、フォークを下降させるための第2ボタン31に対応しており、第2ボタン31が押し込まれているときとそうでないときとで見た目が変化するようになっている。第3荷役シンボル42は、マストを後傾させるための第3ボタン32に対応しており、第3ボタン32が押し込まれているときとそうでないときとで見た目が変化するようになっている。また、第4荷役シンボル43は、マストを前傾させるための第4ボタン33に対応しており、第4ボタン33が押し込まれているときとそうでないときとで見た目が変化するようになっている。
【0036】
指令表示画像は、図4に示すように、フォークリフトFをモチーフとした車両シンボル44と、その近傍に位置する走行シンボル45とをさらに含んでいる。車両シンボル44を基準とした走行シンボル45の相対位置は、アナログスティック34の傾倒方向および傾倒量に応じて変化するようになっている。
【0037】
指令表示画像における荷役シンボル40,41,42,43、車両シンボル44および走行シンボル45の配置は、指令受付装置11におけるボタン30,31,32,33およびアナログスティック34の配置に概ね対応している。すなわち、左手親指で操作されるボタン30,31,32,33に対応したシンボル40,41,42,43は、指令表示画像の左側に配置され、右手親指で操作されるアナログスティック34に対応したシンボル44,45は、指令表示画像の右側に配置されている。
【0038】
指令表示画像は、指令受付装置11が受け付けた遠隔操作指令の内容、言い換えると、オペレータOが入力した遠隔操作指令の内容を示す画像であると言える。
【0039】
第1演算装置12Aは、取得した動作状態信号に基づいて動作表示画像を生成する。
【0040】
動作表示画像は、図4に示すように、フォーク上の積荷の重量を示す荷重メータ50、マストのティルト角を示すティルトメータ51、フォークの揚高を示すリフトメータ52、フォークリフトFの走行速度を示す速度メータ53、バッテリに残存する電力の量を示すバッテリメータ54、および現在時刻あるいは稼働積算時間を示すアワメータ56を含んでいる。この他、動作表示画像は、異常が発生したときに点灯したような見た目に変化する複数の警告シンボル55も含んでいる。
【0041】
第1演算装置12Aは、図4に示すように、遠隔映像の一部(画像A)に指令表示画像および動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する。そして、第1演算装置12Aは、生成した合成遠隔映像に関する信号(以下、「合成遠隔映像信号」という)を頭部装着型映像表示装置10に向けて送る。
【0042】
頭部装着型映像表示装置10は、送られてきた合成遠隔映像信号に基づいて、オペレータOの眼前に合成遠隔映像を表示する。
【0043】
このように、第1実施例に係る遠隔操作システム1Aでは、遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータOに指令表示画像および動作表示画像が提示される。したがって、オペレータOは、遠隔操作を中断することなく、指令表示画像によって操作指令が正しく受け付けられたことを確認したり、動作表示画像によって遠隔映像からは把握できないフォークリフトFの状態を把握したりすることができる。
【0044】
[第2実施例]
図5に、本発明の第2実施例に係る遠隔操作システム1Bを示す。遠隔操作システム1Bは、オペレータO側にある頭部装着型映像表示装置10、指令受付装置11、第1演算装置12Bおよび第1通信装置13と、フォークリフトF側にある撮像装置20、第2演算装置21Bおよび第2通信装置22とを備えている。遠隔操作システム1Bは、第1演算装置12Aの代わりに第1演算装置12Bを備えている点と、第2演算装置21Aの代わりに第2演算装置21Bを備えている点とにおいて第1実施例に係る遠隔操作システム1Aと相違しているが、他の点においては遠隔操作システム1Aと共通している。
【0045】
第1演算装置12Bは、第1演算装置12Aと同様に、USB等の外部機器接続用インタフェースを介して頭部装着型映像表示装置10および指令受付装置11に有線で接続されている。
【0046】
第2演算装置21Bは、第2演算装置21Aと同様、荷役装置23および走行装置24を制御することが可能な車両制御ユニットECUであり、フォークリフトFの各部の状態を把握する機能、およびフォークリフトFの各部に異常が発生しているか否か判定する機能を有している。また、第2演算装置21Bは、第2演算装置21Aと同様、把握しているフォークリフトFの各部の状態および異常の発生の有無に関する動作状態信号を生成する。本実施例では、この第2演算装置21Bが「合成遠隔映像生成装置」に相当する。
【0047】
オペレータOが指令受付装置11のボタン30,31,32,33のいずれかを押し込むと、そのボタン(例えば、第1ボタン30)に対応したボタン操作信号が“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られる。ボタン操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0048】
第2演算装置21Bは、第2演算装置21Aと同様、指令受付装置11から送られてきたボタン操作信号に従って荷役装置23を作動させる。
【0049】
オペレータOが指令受付装置11のアナログスティック34をいずれかの方向に傾倒させると、その傾倒方向および傾倒量に対応したスティック操作信号がボタン操作信号と同様の経路、すなわち、“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られる。スティック操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0050】
第2演算装置21Bは、第2演算装置21Aと同様、指令受付装置11から送られてきたスティック操作信号に従って走行装置24を作動させる。
【0051】
撮像装置20が出力する360°分の遠隔映像に関する遠隔映像信号は、“撮像装置20→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られる。
【0052】
頭部装着型映像表示装置10が出力する姿勢信号は、“頭部装着型映像表示装置10→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られる。姿勢信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0053】
このようにして、合成遠隔映像生成装置としての第2演算装置21Bは、指令受付装置11が出力したボタン操作信号およびスティック操作信号と、頭部装着型映像表示装置10が出力した姿勢信号と、撮像装置20が出力した遠隔映像信号と、第2演算装置21B自身が生成した動作状態信号とを取得する。
【0054】
第2演算装置21Bは、第1演算装置12Aと同様に、取得した姿勢信号に基づいて遠隔映像の一部を抽出する(図3参照)。
【0055】
第2演算装置21Bは、第1演算装置12Aと同様に、取得したボタン操作信号、スティック操作信号および動作状態信号に基づいて指令表示画像および動作表示画像を生成する。
【0056】
第2演算装置21Bは、第1演算装置12Aと同様に、遠隔映像の一部(画像A)に指令表示画像および動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する(図4参照)。そして、第2演算装置21Bは、生成した合成遠隔映像に関する合成遠隔映像信号を“第2演算装置21B→第2通信装置22→インターネット回線NT→第1通信装置13→第1演算装置12B→頭部装着型映像表示装置10”の経路で頭部装着型映像表示装置10に送る。
【0057】
頭部装着型映像表示装置10は、送られてきた合成遠隔映像信号に基づいて、オペレータOの眼前に合成遠隔映像を表示する。
【0058】
このように、第2実施例に係る遠隔操作システム1Bでも、遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータOに指令表示画像および動作表示画像が提示される。したがって、オペレータOは、遠隔操作を中断することなく、指令表示画像によって操作指令が正しく受け付けられたことを確認したり、動作表示画像によって遠隔映像からは把握できないフォークリフトFの状態を把握したりすることができる。
【0059】
[第3実施例]
図6に、本発明の第3実施例に係る遠隔操作システム1Cを示す。遠隔操作システム1Cは、オペレータO側にある頭部装着型映像表示装置10、指令受付装置11、第1演算装置12Bおよび第1通信装置13と、フォークリフトF側にある撮像装置20、第2演算装置21Aおよび第2通信装置22と、第3演算装置60とを備えている。遠隔操作システム1Cは、第1演算装置12Aの代わりに第1演算装置12Bを備えている点と、第3演算装置60をさらに備えている点とにおいて第1実施例に係る遠隔操作システム1Aと相違しているが、他の点においては遠隔操作システム1Aと共通している。遠隔操作システム1Cは、第2演算装置21Bの代わりに第2演算装置21Aを備えている点と、第3演算装置60をさらに備えている点とにおいて第2実施例に係る遠隔操作システム1Bと相違しているが、他の点においては遠隔操作システム1Bと共通しているとも言える。
【0060】
第3演算装置60は、オペレータOおよびフォークリフトFの双方から離れた場所に設定されたクラウドサービスを提供するコンピュータであり、インターネット回線NTに接続されている。本実施例では、この第3演算装置60が「合成遠隔映像生成装置」に相当する。
【0061】
オペレータOが指令受付装置11のボタン30,31,32,33のいずれかを押し込むと、そのボタン(例えば、第1ボタン30)に対応したボタン操作信号が“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21A”の経路で第2演算装置21Aに送られるとともに、“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60にも送られる。ボタン操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0062】
オペレータOが指令受付装置11のアナログスティック34をいずれかの方向に傾倒させると、その傾倒方向および傾倒量に対応したスティック操作信号がボタン操作信号と同様の経路、すなわち、“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21A”の経路で第2演算装置21Aに送られるとともに、“指令受付装置11→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60にも送られる。スティック操作信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0063】
撮像装置20が出力する360°分の遠隔映像に関する遠隔映像信号は、“撮像装置20→第2演算装置21A→第2通信装置22→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60に送られる。遠隔映像信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0064】
第2演算装置21Aが把握しているフォークリフトFの各部の状態および異常の発生の有無に関する動作状態信号は、“第2演算装置21A→第2通信装置22→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60に送られる。
【0065】
頭部装着型映像表示装置10が出力する姿勢信号は、“頭部装着型映像表示装置10→第1演算装置12B→第1通信装置13→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60に送られる。姿勢信号は、途中で適当な形式に変換されてもよい。
【0066】
このようにして、合成遠隔映像生成装置としての第3演算装置60は、指令受付装置11が出力したボタン操作信号およびスティック操作信号と、頭部装着型映像表示装置10が出力した姿勢信号と、撮像装置20が出力した遠隔映像信号と、第2演算装置21Aが出力した動作状態信号とを取得する。
【0067】
第3演算装置60は、第1演算装置12Aおよび第2演算装置21Bと同様に、取得した姿勢信号に基づいて遠隔映像の一部を抽出する(図3参照)。
【0068】
第3演算装置60は、第1演算装置12Aおよび第2演算装置21Bと同様に、取得したボタン操作信号、スティック操作信号および動作状態信号に基づいて指令表示画像および動作表示画像を生成する。
【0069】
第3演算装置60は、第1演算装置12Aおよび第2演算装置21Bと同様に、遠隔映像の一部(画像A)に指令表示画像および動作表示画像を合成することにより合成遠隔映像を生成する(図4参照)。そして、第3演算装置60は、生成した合成遠隔映像に関する合成遠隔映像信号を“第3演算装置60→インターネット回線NT→第1通信装置13→第1演算装置12B→頭部装着型映像表示装置10”の経路で頭部装着型映像表示装置10に送る。
【0070】
頭部装着型映像表示装置10は、送られてきた合成遠隔映像信号に基づいて、オペレータOの眼前に合成遠隔映像を表示する。
【0071】
このように、第3実施例に係る遠隔操作システム1Cでも、遠隔映像を見ながら遠隔操作を行っているオペレータOに指令表示画像および動作表示画像が提示される。したがって、オペレータOは、遠隔操作を中断することなく、指令表示画像によって操作指令が正しく受け付けられたことを確認したり、動作表示画像によって遠隔映像からは把握できないフォークリフトFの状態を把握したりすることができる。
【0072】
[変形例]
以上、本発明に係る遠隔操作システムの第1実施例、第2実施例および第3実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されない。
【0073】
例えば、頭部装着型映像表示装置10は、第1演算装置12A,12Bまたは第1通信装置13に無線で接続されていてもよい。頭部装着型映像表示装置10が第1通信装置13に無線で接続されている場合、姿勢信号は、“頭部装着型映像表示装置10→第1通信装置13→第1演算装置12A”の経路で第1演算装置12Aに送られるか、“頭部装着型映像表示装置10→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られるか、“頭部装着型映像表示装置10→第1通信装置13→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60に送られることとなる。また、この場合、合成遠隔映像信号は、“第1演算装置12A→第1通信装置13→頭部装着型映像表示装置10”の経路、“第2演算装置21B→第2通信装置22→インターネット回線NT→第1通信装置13→頭部装着型映像表示装置10”の経路、または“第3演算装置60→インターネット回線NT→第1通信装置13→頭部装着型映像表示装置10”の経路で頭部装着型映像表示装置10に送られることとなる。
【0074】
また、指令受付装置11は、第1演算装置12A,12Bまたは第1通信装置13に無線で接続されていてもよい。指令受付装置11が第1通信装置13に無線で接続されている場合、ボタン操作信号およびスティック操作信号は、“指令受付装置11→第1通信装置13→第1演算装置12A”の経路で第1演算装置12Aに送られるか、“指令受付装置11→第1通信装置13→インターネット回線NT→第2通信装置22→第2演算装置21B”の経路で第2演算装置21Bに送られるか、“指令受付装置11→第1通信装置13→インターネット回線NT→第3演算装置60”の経路で第3演算装置60に送られることとなる。
【0075】
また、第1演算装置12A,12Bは、第1通信装置13に無線で接続されていてもよい。
【0076】
また、指令受付装置11は、両手持ちされるゲームコンソールのコントローラのようなものに限定されない。本発明では、オペレータOの手が届く場所にあり、かつオペレータOによる遠隔操作指令を受け付けることができる任意の装置を指令受付装置11として使用することができる。
【0077】
また、撮像装置20は、360°カメラに限定されない。360°カメラに代わるものとしては、異なる方向を向いた複数のカメラの組み合わせが挙げられる。この場合、合成遠隔映像生成装置12A,21B,60は、姿勢信号に従って複数のカメラのうちどのカメラが撮影した遠隔映像を使用するのかを選択し、選択した遠隔映像に指令表示画像および動作表示画像を合成すればよい。
【0078】
また、撮像装置20は、ポール25以外の手段でフォークリフトFに取り付けられていてもよい。例えば、撮像装置20は、ヘッドガードから吊り下げられていてもよい。
【0079】
また、第2演算装置21A,21Bは、荷役装置23および走行装置24の制御を担う車両制御ユニットECUとは別のユニットであってもよい。ただし、この場合、2つのユニットは、相互に信号のやり取りができるようになっていなければならない。
【0080】
また、図4に示した指令表示画像および動作表示画像は、単なる一例である。これらの画像のレイアウトおよびこれらの画像に含める情報は、適宜変更されてもよい。また、これらの画像のレイアウトおよびこれらの画像に含める情報は、オペレータOがカスタマイズすることができるようになっていることが好ましい。
【0081】
また、本発明に係る遠隔操作システムは、エンジン式のフォークリフトを遠隔操作するために使用されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C 遠隔操作システム
10 頭部装着型映像表示装置
11 指令受付装置
12A,12B 第1演算装置
13 第1通信装置
20 撮像装置
21A,21B 第2演算装置
22 第2通信装置
23 荷役装置
24 走行装置
25 ポール
30 第1ボタン
31 第2ボタン
32 第3ボタン
33 第4ボタン
34 アナログスティック
40 第1荷役シンボル
41 第2荷役シンボル
42 第3荷役シンボル
43 第4荷役シンボル
44 車両シンボル
45 走行シンボル
50 荷重メータ
51 ティルトメータ
52 リフトメータ
53 速度メータ
54 バッテリメータ
55 警告シンボル
56 アワメータ
60 第3演算装置
F フォークリフト
NT インターネット回線
O オペレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6