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特開2024-124511ディスク装置用サスペンションのフレキシャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124511
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンションのフレキシャ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/60 20060101AFI20240905BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G11B5/60 P
G11B21/21 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108960
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2023094719の分割
【原出願日】2019-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸恵
(57)【要約】
【課題】フレキシャテールに設けられた検査用パッドを有するフレキシャを提供する。
【解決手段】フレキシャテール22は、テールパッド部22dと、テール電極25と、導体32a´と導通する導体接続部51と、ジャンパー導体52と、検査用パッド60とを含んでいる。ジャンパー導体52は、導体接続部51と導通する第1の端部52aを含む第1の部分52cと、テールパッド部22dとは反対の方向に配置された第2の端部52bを含みメタルベース30に形成された開口38に沿う第2の部分52dとを有している。ジャンパー導体52の全周にメタルベース30との間を電気的に絶縁するエアギャップ57が形成されている。開口38とエアギャップ57との間に狭小部58が形成されている。ジャンパー導体52の第1の端部52aと第2の端部52bとの間の中間部52eに、第1の部分52cに対し第2の部分52dが角度θをなして狭小部58の幅W2が確保される方向に曲がる曲がり部が形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルベースと、前記メタルベース上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に配置された導体とを具備したディスク装置用サスペンションのフレキシャであって、
前記フレキシャがフレキシャテールを有し、
前記フレキシャテールが、
テールパッド部と、
前記テールパッド部に配置され前記導体と導通するテール電極と、
前記導体と導通する導体接続部と、
前記導体接続部と導通する第1の端部を含む第1の部分と、前記フレキシャテールの長さ方向に関し前記テールパッド部とは反対の方向に配置された第2の端部を含み前記メタルベースに形成された開口に沿う第2の部分とを有したジャンパー導体と、
前記ジャンパー導体の全周に形成され前記メタルベースとの間を電気的に絶縁するエアギャップと、
前記メタルベースの一部で前記開口と前記エアギャップとの間に形成された狭小部と、
前記ジャンパー導体の前記第2の端部と導通する検査用パッドを含む検査用端子部と、
前記ジャンパー導体の前記第1の端部と前記第2の端部との間に形成され前記第1の部分に対し前記第2の部分が角度をなして前記狭小部の幅が確保される方向に曲がる曲がり部と、
を具備したことを特徴とするフレキシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク装置用サスペンションのフレキシャに係り、特に検査用パッドを有したフレキシャに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、フレキシャ(flexure)などを備えている。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが設けられている。スライダには、ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。
【0004】
前記フレキシャは、薄いステンレス鋼の板からなるメタルベースと、メタルベース上に形成されたポリイミド等の電気絶縁材料からなるベース絶縁層と、ベース絶縁層上に形成された銅からなる複数の導体などを含んでいる。導体の一部はスライダに設けられた素子やフレキシャに設けられた電子部品に接続されている。
【0005】
従来のサスペンションの一例が特許文献1に記載されている。そのサスペンションのフレキシャは、長さ方向に延びるフレキシャテールを有している。フレキシャテールの端部にテールパッド部が形成されている。テールパッド部には、アンプ等の電子回路に接続するための電極パッド(この明細書ではテール電極と称す)が配置されている。特許文献2に記載されているように、電極パッド(テール電極)に孔が開けられていることもある。特許文献3に記載されたフレキシャは、配線部の側部に配置された電極パッドを有している。しかし配線部の側部に電極パッドが配置されていると、配線部の幅が大きくなるため、フレキシャテールの幅が大きくなってしまう。
【0006】
フレキシャに設けられた電気回路の特性を検査するために、プローブを有する測定機器を用いて検査が行われることがある。例えば一対のプローブのうち一方のプローブをテール電極に接触させ、他方のプローブをフレキシャのメタルベースに接触させることによって、回路の特性が検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,679,592号明細書
【特許文献2】特開平11-191210号公報
【特許文献3】米国特許第9,396,747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回路を検査する際には、測定用のプローブを特定のテール電極に確実に接触させる必要がある。しかし特許文献2のようにテール電極に孔が開いていると、プローブとテール電極との接触が不確実になることがある。しかもテールパッド部の狭い領域に、ごく小さなテール電極が狭い間隔で複数配置されているため、特定のテール電極にプローブを接触させることが難しいことがある。場合によっては、他のテール電極にプローブが接してしまうことも考えられる。
【0009】
検査する回路に導通するテール電極をフレキシャテールの配線部の外側に配置し、そのテール電極にプローブを接触させることも考えられた。しかし配線部の外側にテール電極を配置すると、配線部の幅が実質的に大きくなるため、フレキシャテールの幅が大きくなってしまうという問題がある。また、そのフレキシャテールの電極パッドに孔が開いている場合には、プローブを電極パッドに確実に接触させる上で支障がある。
【0010】
従って本発明の目的は、フレキシャの検査をフレキシャテールに配置された検査用パッドを用いて行うことができ、しかも検査用パッドがフレキシャテールの好ましい位置に配置されたディスク装置用サスペンションのフレキシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施形態のディスク装置用サスペンションのフレキシャは、メタルベースと、前記メタルベース上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に配置された導体とを具備し、前記フレキシャがフレキシャテールを有している。前記フレキシャテールが、テールパッド部と、前記テールパッド部に配置され前記導体と導通するテール電極と、前記導体と導通する導体接続部と、ジャンパー導体と、検査用端子部とを具備している。前記ジャンパー導体は、前記導体接続部と導通する第1の端部を含む第1の部分と、前記フレキシャテールの長さ方向に関し前記テールパッド部とは反対の方向に配置された第2の端部を含み前記メタルベースに形成された開口に沿う第2の部分とを有している。また前記ジャンパー導体の全周に形成され前記メタルベースとの間を電気的に絶縁するエアギャップと、前記メタルベースの一部で前記開口と前記エアギャップとの間に形成された狭小部と、前記ジャンパー導体の前記第1の端部と前記第2の端部との間に形成され前記第1の部分に対し前記第2の部分が角度をなして前記狭小部の幅が確保される方向に曲がる曲がり部とを有している。前記検査用端子部は、前記ジャンパー導体の前記第2の端部と導通する検査用パッドを含んでいる。
【0012】
前記フレキシャテールの長さ方向の一部で前記フレキシャテールの長さ方向に関し前記テールパッド部とは反対の方向に延びる延出部を有し、前記延出部に前記検査用端子部が配置されてもよい。前記延出部が、前記テールパッド部の一方の側面を前記テールパッド部の長さ方向に延長した線分と、前記テールパッド部の他方の側面を前記長さ方向に延長した線分と、の間に設けられてもよい。
【0013】
前記ジャンパー導体が、前記テールパッド部の一方の側面を前記テールパッド部の長さ方向に延長した線分と、前記テールパッド部の他方の側面を前記長さ方向に延長した線分との間に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テール電極に導通する検査用パッドを用いて検査を行うことができるため、テール電極に孔が開いていてもプローブによる検査を問題なく行うことができる。また検査用パッドを有していながらも配線部の幅が大きくなることを抑制でき、フレキシャテールの幅が大きくなることを抑制することができる。場合によってはテール電極を用いて検査を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ディスク装置の一例を示す斜視図。
図2図1に示されたディスク装置の一部の断面図。
図3】第1の実施形態に係るフレキシャを備えたディスク装置用サスペンションの平面図。
図4図3に示されたフレキシャの一部の平面図。
図5図4に示されたフレキシャのメタルベースの一部の平面図。
図6図4に示されたフレキシャの導体接続部の断面図。
図7図4に示されたフレキシャの検査用端子部の断面図。
図8】第2の実施形態に係るフレキシャの検査用端子部の断面図。
図9】第3の実施形態に係るフレキシャ連鎖シート(flexure chain blank sheet)の一部の平面図。
図10】従来のフレキシャのテールパッド部を示す平面図。
図11】第4の実施形態に係るフレキシャの一部の平面図。
図12図11に示されたフレキシャの検査用端子部の断面図。
図13】第5の実施形態に係るフレキシャの一部の平面図。
図14図13に示されたフレキシャの検査用端子部の断面図。
図15】第6の実施形態に係るフレキシャの一部の平面図。
図16図15に示されたフレキシャの導体接続部の断面図。
図17図15に示されたフレキシャの検査用端子部の断面図。
図18】第7の実施形態に係るフレキシャの一部の平面図。
図19図18に示されたフレキシャの導体接続部の断面図。
図20図18に示されたフレキシャの検査用端子部の断面図。
図21】第8の実施形態に係るフレキシャの一部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションのフレキシャについて、図1から図7を参照して説明する。
図1に示すディスク装置(ハードディスク装置)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク(磁気ディスク)4と、ピボット軸5を中心に旋回するキャリッジ6と、キャリッジ6を旋回させるポジショニング用モータ7とを有している。ケース2は図示しない蓋によって密閉される。
【0017】
図2は、ディスク装置1の一部を模式的に示す断面図である。キャリッジ6にアーム8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部付近に磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。
【0018】
ディスク4が回転すると、ディスク4とスライダ11との間にエアベアリングが形成される。ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、スライダ11がディスク4の所望トラックへ移動する。スライダ11には、ディスク4にデータを記録するための素子と、ディスク4に記録されたデータを読取るための素子が設けられている。
【0019】
図3は、サスペンション10とスライダ11とを備えたヘッドジンバルアセンブリの一例を示している。サスペンション10は、ベースプレート15と、ロードビーム16と、フレキシャ20などを含んでいる。ベースプレート15のボス部15aは、キャリッジのアーム8(図1図2に示す)に固定される。
【0020】
ロードビーム16はステンレス鋼の板からなる。ロードビーム16の厚さは例えば30~80μmである。図3中の矢印Xはサスペンション10の長さ方向、すなわちフレキシャ20の長さ方向を示している。矢印X1はフレキシャ20の前側、矢印X2はフレキシャ20の後側である。図3中の矢印Yはフレキシャテール22の幅方向を示している。
【0021】
フレキシャ20は、ロードビーム16に重なる先端側の部分21と、先端側の部分21からベースプレート15の後方に延びるフレキシャテール22とを含んでいる。フレキシャ20の先端側の部分21に、揺動可能なジンバル部として機能するタング23が形成されている。タング23にスライダ11が搭載されている。
【0022】
フレキシャテール22は、テール本体22aと、第1の曲がり部22bと、第2の曲がり部22cと、テールパッド部22dとを含んでいる。テール本体22aは、ベースプレート15の側部付近からフレキシャ20の長さ方向Xに延びている。第1の曲がり部22bは、テール本体22aの後端からフレキシャテール22の幅方向Y(図3に示す)に延びている。第2の曲がり部22cは、第1の曲がり部22bの端からフレキシャテール22の長さ方向Xに延びている。第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとによって、テール本体22aとテールパッド部22dとの間に、L形に方向が変わるエルボ部24が形成されている。
【0023】
テールパッド部22dは第2の曲がり部22cからフレキシャテール22の後方(図3に矢印X2で示す)に連なっている。テールパッド部22dには、アンプ等の電子回路に接続される複数のテール電極(電極パッド)25が配置されている。第1の曲がり部22bは、折曲げ工程において、折曲部L1(図3から図5に1点鎖線で示す)がメタルベース30の厚さ方向にほぼ直角に曲げられる。
【0024】
図4はフレキシャ20の一部を示す平面図である。フレキシャ20は、メタルベース30と、メタルベース30に沿って配置された配線部31とを含んでいる。メタルベース30はフレキシャ20の先端側の部分21(図3に示す)において、レーザ溶接等の固定部によってロードビーム16に固定されている。
【0025】
図4は、フレキシャテール22の長さ方向の一部(エルボ部24)を示している。配線部31は、複数の導体32aを有する第1の導体群32と、複数の導体33aを有する第2の導体群33とを含んでいる。第1の導体群32と第2の導体群33は、それぞれフレキシャテール22の長さ方向に沿って配置されている。
【0026】
図4に示されるように配線部31の長さ方向の一部は、L形に曲がるエルボ部24において、第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとに沿って曲がる。このため第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとの間に、導体群32,33の向きがL形に変化する導体曲がり部C1が形成されている。
【0027】
第1の導体群32の長さ方向の一部は、テールパッド部22dの一方の側面35に沿って配置されている。第2の導体群33の長さ方向の一部は、テールパッド部22dの他方の側面36に沿って配置されている。第1の導体群32と第2の導体群33とは、互いに隙間G1(図4に示す)を介して離れた状態で配置されている。第1の導体群32の複数の導体32aのうち、検査される回路に導通する導体32a´は、導体曲がり部C1に最も近いテール電極25aに接続されている。テール電極25aに孔26が形成されていてもよい。
【0028】
図5はメタルベース30の一部を示している。メタルベース30はステンレス鋼の板からなる。メタルベース30の厚さはロードビーム16の厚さよりも小さく、例えば15~20μmである。メタルベース30は、第1の曲がり部22bの折曲部L1において厚さ方向にほぼ直角に曲げられる。このため第1の曲がり部22bには、折曲部L1の曲げ剛性を小さくするために開口38が形成されている。
【0029】
配線部31は、メタルベース30上に形成されたベース絶縁層40(図4図6図7に示す)と、ベース絶縁層40上に形成された複数の導体32a,33aと、導体32a,33aを覆うカバー絶縁層41(図6図7に示す)とを含んでいる。図4は、導体32a,33aが分かりやすいように、カバー絶縁層41が省略されている。
【0030】
導体32a,33aは、めっき銅などの高導電率の金属からなる。導体32a,33aの厚さは例えば5μmである。第1の導体群32の導体32aの一部は読取用であり、タング23に形成された読取用端子と導通している。第2の導体群33の導体33aの一部は書込用であり、タング23に形成された書込用端子と導通している。
【0031】
ベース絶縁層40とカバー絶縁層41(図6図7に示す)とは、ポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる。ベース絶縁層40の厚さは、例えば10μmである。カバー絶縁層41の厚さはベース絶縁層40よりも小さく、例えば4μmである。
【0032】
フレキシャテール22の長さ方向の一部、すなわち第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとを含むエルボ部24に、延出部45が形成されている。延出部45は、第2の曲がり部22cからテールパッド部22dとは反対の方向(導体曲がり部C1の外側)に延びている。すなわち延出部45は、第2の曲がり部22cからフレキシャテール22の前側(図3に矢印X1で示す方向)に延びている。延出部45はフレキシャテール22の一部であり、メタルベース30の一部30aとベース絶縁層40の一部40aとを含んでいる。
【0033】
図4に示すように、テールパッド部22dの一方の側面35をテールパッド部22dの長さ方向X3に延長した線分をL2とし、テールパッド部22dの他方の側面36を長さ方向X3に延長した線分をL3とする。延出部45は、線分L2,L3間の幅W1の領域S1において、導体曲がり部C1の外側に形成されている。このため本実施形態のフレキシャテール22は、延出部45を有しているにもかかわらず、第2の曲がり部22cの幅が従来品よりも大きくなることが回避されている。
【0034】
導体曲がり部C1は、フレキシャテール22の第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとに沿って配置されている。このため第1の曲がり部22bと第2の曲がり部22cとの間で、導体群32,33の向きが例えば90°近く変化する。
【0035】
フレキシャテール22の一部(エルボ部24と延出部45とを含む部分)に、検査用導通部50が設けられている。検査用導通部50は、サスペンション10に設けられた各種電気回路のうち、特に静電容量や誘電正接(タンジェント・デルタ)等の特性を正確に把握する必要のある回路の検査に使用される。
【0036】
図4に示すように検査用導通部50は、導体32a´の長さ方向の途中に形成された導体接続部51と、ジャンパー導体52と、パッド接続部53と、検査用端子部54とを具備している。検査用導通部50は、テールパッド部22dの両側面35,36を長さ方向に延長した線分L2,L3の内側の領域S1に設けられている。
【0037】
導体接続部51は、テールパッド部22dにおいて、第1の導体群32と第2の導体群33との間の隙間G1に配置されている。このため本実施形態のフレキシャテール22は、検査用導通部50を有していても、第2の曲がり部22cの幅やテールパッド部22dの幅が従来品と比較して大きくなることを回避できた。なお、導体接続部51がエルボ部24に設けられてもよい。
【0038】
図5にジャンパー導体52が示されている。本実施形態のジャンパー導体52は、メタルベース30の一部をエッチングによって除去することにより、メタルベース30と同一の面内に島状に形成されている。すなわちエッチング工程において、メタルベース30の一部(ジャンパー導体52となる部分)の周りを除去することにより、細長い島状のジャンパー導体52が形成される。ジャンパー導体52の全周には、メタルベース30との間を電気的に絶縁するためのエアギャップ57が形成されている。
【0039】
図5に示されるようにジャンパー導体52は、長さ方向の一方の端部(第1の端部52a)と、他方の端部(第2の端部52b)とを有している。第1の端部52aと第2の端部52bとの間に、第1の部分52cと第2の部分52dとが形成されている。第1の部分52cと第2の部分52dとは、ジャンパー導体52の長さ方向の中間部52eにおいて、互いに角度θ(図5に示す)をなして曲がっている。
【0040】
ジャンパー導体52の第1の端部52aは、テールパッド部22dの導体接続部51と対応した位置に配置されている。第2の端部52bは延出部45に配置されている。このためジャンパー導体52とエアギャップ57とは、テールパッド部22dから延出部45に向かって、テールパッド部22dの長さ方向に延びている。しかもこのジャンパー導体52は、テールパッド部22dの両側面35,36を長さ方向に延長した線分L2,L3の内側の領域S1に設けられている。
【0041】
フレキシャテール22の一部をなす第1の曲がり部22bは、曲げ工程において、開口38を通る折曲部L1のところで板厚方向に略直角に曲げられる。折曲部L1の近傍にジャンパー導体52とエアギャップ57とが形成されている。このため、開口38とエアギャップ57との間に、幅W2の狭小部58が存在する。狭小部58の幅W2が小さすぎると、折曲部L1を曲げる際に狭小部58付近に許容限度を超える変形が生じるおそれがある。
【0042】
そこで本実施形態のジャンパー導体52は、開口38に沿う第2の部分52dが開口38に近付きすぎることを回避するために曲がった形状としている。すなわち第1の部分52cに対して第2の部分52dが角度θ(図5に示す)をなして曲がっている。こうすることにより、狭小部58の曲げ剛性が小さくなりすぎないようにしている。
【0043】
ジャンパー導体52の第1の端部52aは、導体接続部51(図4図6に示す)を介して導体32a´に接続されている。導体32a´は、検査する回路のテール電極25aと導通している。ジャンパー導体52は第1の端部52aから検査用端子部54(図4図7に示す)に向かって延びている。検査用端子部54に検査用パッド60が設けられている。ジャンパー導体52の第2の端部52bは、パッド接続部53を介して検査用パッド60と導通している。検査用パッド60を有する検査用端子部54は延出部45に配置されている。
【0044】
図6はジャンパー導体52に接続される導体接続部51の断面を示している。導体接続部51は、めっき銅からなる導体51aを有し、配線部31の導体32a´と一体に形成されている。ベース絶縁層40に貫通孔65が形成されている。貫通孔65に充填された導体51aはジャンパー導体52の第1の端部52aと導通している。検査する回路の導体32a´(図4に示す)は、導体接続部51を介してジャンパー導体52の第1の端部52aと導通している。
【0045】
図7は、検査用端子部54の断面を示している。検査用端子部54は、めっき銅からなる検査用パッド60を有している。ベース絶縁層40に貫通孔66が形成されている。検査用パッド60の一部が貫通孔66に充填されている。検査用パッド60はパッド接続部53を介してジャンパー導体52の第2の端部52bと導通している。検査の際に使用されるプローブは、検査用パッド60の表面60aに接する。
【0046】
検査用パッド60を銅めっきによって形成した場合、検査用パッド60の表面60aに凹部67が形成される。この凹部67はベース絶縁層40の貫通孔66と対応した位置に形成される。このため検査用パッド60の表面60aのうち、プローブと接触することができる面積が凹部67の分だけ小さくなる。しかも図7に示した例では、検査用パッド60の表面60aの周りがカバー絶縁層41の一部41aによって覆われている。そこで検査用パッド60の外径D1をプローブが十分接触できる大きさとしている。
【0047】
図4に示されたように、検査用パッド60はエルボ部24の導体曲がり部C1の外側の領域(いわばデッドスペース部)に配置されている。しかも検査用パッド60は、テールパッド部22dの両側面35,36を延長した線分L2,L3間の領域S1に収まっている。このため本実施形態のフレキシャ20は、検査用パッド60を有していながらも、第2の曲がり部22cやテールパッド部22dの幅が大きくなることを回避することができた。
【0048】
図8は、第2の実施形態に係る検査用パッド60を有する検査用端子部54の断面を示している。この例は、検査用パッド60の周りがカバー絶縁層41によって覆われていない点で第1の実施形態とは異なる。図8に示された検査用端子部54は、検査用パッド60の表面60aの全体をプローブとの接触面として使用することが可能である。
【0049】
図9は、第3の実施形態に係るフレキシャ連鎖シート(flexure chain blank sheet)70の一部を示している。フレキシャ連鎖シート70は、多数のフレキシャを同時に製造する過程で作られる中間製品である。フレキシャ連鎖シート70は、フレーム71と、フレーム71に所定ピッチで配置された複数のフレキシャ要素20X(一部のみ示す)とを含んでいる。フレキシャ要素20Xの基本的な構成は、第1の実施形態で説明したフレキシャ20(図3に示す)と実質的に共通である。フレーム71はメタルベース30と共通のステンレス鋼の板からなる。
【0050】
フレーム71に取付けられた状態のフレキシャ要素20Xを検査する際、一方のプローブ72を検査用パッド60に接触させ、他方のプローブ73を電気的なグランドとしてのメタルベース30に接触させる。こうすることにより、例えばテール電極25aに導通する回路の特性を検査することができる。
【0051】
検査後に行われる切断工程において、フレキシャ要素20Xをフレーム71から切り離すことにより、図3に示したフレキシャ20を得ることができる。なお、一対のプローブ72,73を用いてフレキシャ要素20Xを1つずつ検査してもよいし、あるいは複数対のプローブを用いて複数のフレキシャ要素20Xを同時に検査してもよい。
【0052】
図10は従来のフレキシャ80の一部を示している。従来のフレキシャ80を検査する際には、一方のプローブ72をテール電極81に接触させ、他方のプローブ73をメタルベース82に接地(アース)させる。このためテール電極81に孔83が開いている場合には、プローブ72をテール電極81に確実に接触させることができないことがあった。しかもテール電極81は小さく、形状も限られているため、プローブ72との接触を確実にすることに限界があった。
【0053】
これに対し図3図8に示した実施形態のフレキシャ20は、フレキシャテール22の延出部45に配置された検査用パッド60を用いて検査を行うことができる。このためテール電極25aに孔が開いていても、テール電極25aとは別の位置に設けられた検査用パッド60にプローブを確実に接触させることができる。場合によっては、テール電極25aを用いて検査を行うことも可能である。しかも本実施形態のフレキシャ20の検査用パッド60は、フレキシャテール22の導体曲がり部C1の外側の延出部45に配置されている。
【0054】
このため本実施形態のフレキシャ20は、検査用パッド60を有していながらも、エルボ部24の第2の曲がり部22cやテールパッド部22dの幅が大きくなってしまうことを抑制でき、ひいてはフレキシャ20の幅が大きくなることを回避できる。例えば図9に示されたフレキシャ連鎖シート70の場合に、フレキシャ要素20Xの幅が大きくならないため、1枚のフレキシャ連鎖シートに形成することが可能なフレキシャ要素20Xの数が減ることを回避できる。
【0055】
図11は、第4の実施形態に係るフレキシャ20Aの一部を示している。図12は、図11に示されたフレキシャ20Aの検査用端子部54Aの断面を表している。本実施形態の検査用端子部54Aは、パッド接続部53とは別の位置に設けられた検査用パッド60Aを有している。パッド接続部53と検査用パッド60Aとは,接続導体90を介して互いに導通している。検査用パッド60Aの表面60a、すなわち測定用のプローブが接する面の面積は、パッド接続部53よりも大きい。
【0056】
図11図12に示された検査用端子部54Aのように、検査用パッド60Aをパッド接続部53とは別の位置に形成したことにより、大きな表面積を有する検査用パッド60Aをフレキシャテール22の延出部45に配置することができた。それ以外の構成について本実施形態のフレキシャ20Aは、第1の実施形態のフレキシャ20と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図13は第5の実施形態に係るフレキシャ20Bの一部を示している。図14図13に示されたフレキシャ20Bの検査用端子部54の断面を表している。本実施形態の検査用端子部54に設けられた検査用パッド60Bは、第1の実施形態の検査用パッド60の凹部67よりも径が大きい凹部95を有している。この凹部95の表面95aにプローブを接触させるようにしている。それ以外の構成について本実施形態のフレキシャ20Bは、第1の実施形態のフレキシャ20と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図15は、第6の実施形態に係る二層配線を有するフレキシャ20Cの一部を示している。図16は、図15に示されたフレキシャ20Cの導体接続部51の断面を表している。図17は、このフレキシャ20Cの検査用端子部54の断面を表している。本実施形態のフレキシャ20Cは、ベース絶縁層40上に形成された導体32a,32a´,33aと、導体32a,32a´,33aを覆うカバー絶縁層41と、カバー絶縁層41上に形成されたジャンパー導体100(図15に示す)と、検査用パッド101とを有している。ジャンパー導体100と検査用パッド101とは、めっき銅からなる。ジャンパー導体100の第1の端部100aは、導体接続部51を介して導体32a´と導通している。ジャンパー導体100の第2の端部100bは検査用パッド101に接続されている。
【0059】
本実施形態(図15図17)のフレキシャ20Cは、大きな表面積の検査用パッド101をフレキシャテール22の延出部45の任意の位置に形成することができるという利点がある。それ以外の構成について本実施形態のフレキシャ20Cは、第1の実施形態のフレキシャ20と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図18は、第7の実施形態に係る二層配線を有するフレキシャ20Dの一部を示している。図19は、同フレキシャ20Dの導体接続部51の断面を表している。図20は、同フレキシャ20Dの検査用端子部54の断面を表している。本実施形態のフレキシャ20Dは、ベース絶縁層40上に形成されたジャンパー導体100と、ベース絶縁層40上に形成された検査用パッド101とを有している。
【0061】
本実施形態の導体32a,33a(図18に示す)は、カバー絶縁層41の上に形成されている。ジャンパー導体100の第1の端部100aは、導体接続部51において導体32a´と導通している。ジャンパー導体100の第2の端部100b(図18に示す)は、検査用端子部54において検査用パッド101と導通している。図20に示すように、カバー絶縁層41には検査用パッド101の表面101aを露出させるために開口102が形成されている。
【0062】
本実施形態(図18図20)のフレキシャ20Dも、大きな表面積の検査用パッド101をフレキシャテール22の延出部45の任意の位置に配置することができるという利点がある。それ以外の構成について本実施形態のフレキシャ20Dは、第1の実施形態のフレキシャ20と共通であるため、両者に共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図21は、第8の実施形態に係るフレキシャ20Eの一部を示している。このフレキシャ20Eは、第1の実施形態のフレキシャ20(図4)と同様のジャンパー導体52を含む検査用導通部50を有している。そのジャンパー導体52の第1の端部52aは、他のジャンパー導体120を介して配線部31の導体32a´に接続されている。さらにこのフレキシャ20Eは、配線部31の態様に応じて、さらに別のジャンパー導体121,122などを有している。
【0064】
なお本発明を実施するに当たり、フレキシャを構成するメタルベースやベース絶縁層および導体をはじめとして、フレキシャを構成する要素を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また検査用導通部を構成する導体接続部、ジャンパー導体、検査用パッドなども種々に変更して実施できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…ディスク装置、10…サスペンション、20,20A,20B,20C,20D,20E……フレキシャ、22…フレキシャテール、22a…テール本体、22b…第1の曲がり部、22c…第2の曲がり部、22d…テールパッド部、24…エルボ部、25,25a…テール電極、30…メタルベース、31…配線部、32…第1の導体群、32a,32a´…導体、33…第2の導体群、33a…導体、35…一方の側面、36…他方の側面、38…開口、G1…隙間、L1…折曲部、C1…導体曲がり部、40…ベース絶縁層、41…カバー絶縁層、45…延出部、50…検査用導通部、51…導体接続部、52…ジャンパー導体、52a…第1の端部、52b…第2の端部、52c…第1の部分、52d…第2の部分、θ…角度、53…パッド接続部、54,54A…検査用端子部、58…狭小部、60,60A,60B…検査用パッド、70…フレキシャ連鎖シート、72,73…測定用のプローブ、100…ジャンパー導体。
図1
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