(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124516
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】測定装置、測定システム、および、測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20240905BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01N22/04 C
G01N22/00 S
G01N22/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109331
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2023181541の分割
【原出願日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019090371
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤
(72)【発明者】
【氏名】市原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】廣井 聡幸
(57)【要約】
【課題】媒質中の水分量を測定する測定装置において、水分量の測定精度を向上させる。
【解決手段】送信機は、各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する。受信機は、一対のプローブの一方で入射波が反射した反射波と一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とをケーブルを介して受信する。処理部は、ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて往復遅延時間と媒質およびケーブルを電磁波および電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部に対して、前記受信機により生成された前記測定データを送信する通信部と、
前記一対のプローブのそれぞれを被覆する外殻と
を具備し、
前記外殻は、先端が尖った形状であり、
前記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備し、
前記スペーサの厚さは、前記一対のプローブの少なくとも一方の太さよりも小さい
測定装置。
【請求項2】
前記外殻は、電磁波透過材料で形成されている
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記スペーサは、電磁波透過材料で形成されている
請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記スペーサの外縁であって、前記一対のプローブの間に延在する該外縁のうち、前記一対のプローブのそれぞれのアンテナ部に近い方の該外縁は、円弧状になっている
請求項3記載の測定装置。
【請求項5】
前記一対のプローブのそれぞれの前記アンテナ部から前記スペーサの下端までの距離は、前記アンテナ部の間の距離であるアンテナ間距離よりも大きく、
好ましくは前記アンテナ間距離の2倍よりも大きく、
より好ましくは、前記アンテナ間距離の3倍よりも大きく、
前記プローブの長さよりも小さい
請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記入射波を送信させる制御と前記入射波および前記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理と前記入射波および前記透過波のそれぞれの複素振幅の比を透過係数として求める処理とを行う制御部をさらに具備し、
前記処理部は、前記反射係数および前記透過係数に基づいて前記往復遅延時間および前記伝搬伝送時間を求める
請求項1記載の測定装置。
【請求項7】
前記制御部と前記処理部とは所定の半導体チップに設けられる
請求項6記載の測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、所定の半導体チップに設けられ
前記処理部は前記半導体チップと異なる半導体チップに設けられる
請求項6記載の測定装置。
【請求項9】
前記反射係数および前記透過係数を前記処理部に無線送信する通信部をさらに具備する
請求項6記載の測定装置。
【請求項10】
前記ケーブルを伝送する電気信号を前記入射波と前記反射波に分離する方向性結合器をさらに具備する
請求項7記載の測定装置。
【請求項11】
前記受信機は、
前記入射波を受信する入射波受信機と、
前記反射波を受信する反射波受信機と、
前記透過波を受信する透過波受信機とを含む
請求項10記載の測定装置。
【請求項12】
前記入射波は、互いに方向の異なる第1および第2の入射波を含み、
前記反射波は、前記第1の入射波に対応する第1の反射波と前記第2の入射波に対応する第2の反射波とを含み、
前記透過波は、前記第1の入射波に対応する第2の透過波と前記第2の入射波に対応する第1の透過波とを含み、
前記方向性結合器は、前記電気信号を前記第1の入射波と前記第1の反射波とに分離する第1の方向性結合器と、前記電気信号を前記第2の入射波と前記第2の反射波とに分離する第2の方向性結合器とを含み、
前記送信機は、前記第1の入射波を送信する第1の送信機と前記第2の入射波を送信する第2の送信機とを含み、
前記受信機は、前記第1の反射波と前記第1の透過波とを順に受信する第1の受信機と、前記第2の反射波と前記第2の透過波とを順に受信する第2の受信機とを含む
請求項10記載の測定装置。
【請求項13】
前記往復遅延時間は、前記一対のプローブの一方に対応する第1の往復遅延時間と前記一対のプローブの他方に対応する第2の往復遅延時間とを含み、
前記処理部は、前記第1の入射波と前記第1の反射波とから前記第1の往復遅延時間を求め、前記第2の入射波と前記第2の反射波とから前記第2の往復遅延時間を求める
請求項10記載の測定装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記媒質を前記電磁波が伝搬する時間である伝搬遅延時間を前記往復遅延時間および前記伝搬伝送時間から求めて前記伝搬遅延時間に応じた水分量を測定する
請求項1記載の測定装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記伝搬遅延時間と前記水分量との関係を示す所定の係数を保持しておき、前記求めた伝搬遅延時間と前記係数とから前記水分量を測定する
請求項15記載の測定装置。
【請求項16】
各々にケーブルが接続された一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記入射波を送信させる制御と前記入射波および前記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理を行う制御部と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を前記反射係数から求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部に対して、前記受信機により生成された前記測定データを送信する通信部と、
前記一対のプローブのそれぞれを被覆する外殻と
を具備し、
前記外殻は、先端が尖った形状であり、
前記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備し、
前記スペーサの厚さは、前記一対のプローブの少なくとも一方の太さよりも小さい
測定システム。
【請求項17】
各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理装置に対して、前記受信機により生成された測定データを送信する通信部と、
前記ケーブルを伝送する電気信号を前記入射波と前記反射波とに分離する方向性結合器と、
前記一対のプローブのそれぞれを被覆する外殻と
を具備し、
前記受信機は、
前記入射波を受信する入射波受信機と、
前記反射波を受信する反射波受信機と、
前記透過波を受信する透過波受信機とを含み、
前記一対のプローブの一方は、前記入射波を含む前記電気信号を前記電磁波に変換する第1のアンテナ部を備え、
前記一対のプローブの他方は、前記透過波を含む前記電気信号に前記電磁波を変換する第2のアンテナ部を備え、
前記測定データは、前記入射波受信機の出力と前記反射波受信機の出力に基づいて得られた反射係数と、前記入射波受信機の出力と前記透過波受信機との出力に基づいて算出された透過係数を示すデータであり、
前記外殻は、先端が尖った形状であり、
前記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備し、
前記スペーサの厚さは、前記一対のプローブの少なくとも一方の太さよりも小さい
測定装置。
【請求項18】
各々にケーブルが接続された一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を前記反射係数から求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理装置に対して、前記受信機により生成された測定データを送信する通信部と、
前記ケーブルを伝送する電気信号を前記入射波と前記反射波とに分離する方向性結合器と、
前記一対のプローブのそれぞれを被覆する外殻と
を具備し、
前記受信機は、
前記入射波を受信する入射波受信機と、
前記反射波を受信する反射波受信機と、
前記透過波を受信する透過波受信機とを含み、
前記一対のプローブの一方は、前記入射波を含む前記電気信号を前記電磁波に変換する第1のアンテナ部を備え、
前記一対のプローブの他方は、前記透過波を含む前記電気信号に前記電磁波を変換する第2のアンテナ部を備え、
前記測定データは、前記入射波受信機の出力と前記反射波受信機の出力に基づいて得られた反射係数と、前記入射波受信機の出力と前記透過波受信機との出力に基づいて算出された透過係数を示すデータであり、
前記外殻は、先端が尖った形状であり、
前記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備し、
前記スペーサの厚さは、前記一対のプローブの少なくとも一方の太さよりも小さい
測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、測定装置、測定システム、および、測定方法に関する。詳しくは、一対のプローブが設けられた測定装置、測定システム、および、測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土壌などの媒質中の水分量を測定する装置や機器が、農業や環境調査などの分野において広く利用されている。例えば、一対のプローブの間の媒質を電磁波が伝搬する伝搬遅延時間から水分量を測定するセンサ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このセンサ装置は、一対のプローブと送信機および受信機とをケーブルで接続し、送信機から受信機へ電気信号を送信し、その送信から受信までの遅延時間を求めている。そして、センサ装置は、ケーブルを電気信号が伝送する伝送時間を固定値の誤差として予め保持しておき、求めた遅延時間から、その誤差を減算することにより、電磁波が媒質を伝搬する伝搬遅延時間を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のセンサ装置では、電磁波の伝搬遅延時間を求める際に誤差を減算することにより、水分量の測定精度の向上を図っている。しかしながら、ケーブルの長さが熱膨張により変わることがあり、その長さの変化に起因して誤差も変動する。このため、誤差を固定値とした上述のセンサ装置では、ケーブルが熱膨張した際に、水分量の測定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、媒質中の水分量を測定する測定装置において、水分量の測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へ上記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、上記一対のプローブの上記一方で上記入射波が反射した反射波と上記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを上記ケーブルを介して受信する受信機と、上記ケーブルを上記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて上記往復遅延時間と上記媒質および上記ケーブルを電磁波および上記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて上記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部とを具備する測定装置、および、その測定方法である。これにより、往復遅延時間および伝搬伝送時間から水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記一対のプローブを上記媒質から隔離する外殻をさらに具備してもよい。これにより、水分量に関わらず、往復遅延時間が一定になるという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記外殻は、電磁波透過材料で形成されていてもよい。これにより、外殻を電磁波が透過するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備することもできる。これにより、プローブの間の間隔が規定されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記スペーサは、電磁波透過材料で形成されていてもよい。これにより、スペーサを電磁波が透過するという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記スペーサの外縁であって、上記一対のプローブの間に延在する該外縁のうち、上記一対のプローブのそれぞれのアンテナ部に近い方の該外縁は、円弧状になっていてもよい。これにより、ノイズが低減するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記一対のプローブのそれぞれの上記アンテナ部から上記スペーサの下端までの距離は、上記アンテナ部の間の距離であるアンテナ間距離よりも大きく、好ましくは上記アンテナ間距離の2倍よりも大きく、より好ましくは、上記アンテナ間距離の3倍よりも大きく、上記プローブの長さよりも小さくてもよい。これにより、ノイズが低減するという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記入射波を送信させる制御と上記入射波および上記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理と上記入射波および上記透過波のそれぞれの複素振幅の比を透過係数として求める処理とを行う制御部をさらに具備し、上記処理部は、上記反射係数および上記透過係数に基づいて上記往復遅延時間および上記伝搬伝送時間を求めてもよい。これにより、反射係数および透過係数から得られた往復遅延時間および伝搬伝送時間に基づいて水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記制御部と上記処理部とは所定の半導体チップに設けられてもよい。これにより、測定装置のチップ数が削減されるという作用をもたらす。
【0015】
また、この第1の側面において、上記制御部は、所定の半導体チップに設けられ、上記処理部は上記半導体チップと異なる半導体チップに設けられてもよい。これにより、複数の半導体チップを設けた測定装置において水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0016】
また、この第1の側面において、上記反射係数および上記透過係数を上記処理部に無線送信する通信部をさらに具備してもよい。これにより、処理部を遠隔地に配置しても水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0017】
また、この第1の側面において、上記ケーブルを伝送する電気信号を上記入射波と上記反射波に分離する方向性結合器をさらに具備してもよい。これにより、分離した入射波および反射波のそれぞれが受信されるという作用をもたらす。
【0018】
また、この第1の側面において、上記受信機は、上記入射波を受信する入射波受信機と、上記反射波を受信する反射波受信機と、上記透過波を受信する透過波受信機とを含むものであってもよい。これにより、入射波、反射波および透過波のそれぞれが受信されるという作用をもたらす。
【0019】
また、この第1の側面において、上記入射波は、互いに方向の異なる第1および第2の入射波を含み、上記反射波は、上記第1の入射波に対応する第1の反射波と上記第2の入射波に対応する第2の反射波とを含み、上記透過波は、上記第1の入射波に対応する第2の透過波と上記第2の入射波に対応する第1の透過波とを含み、上記方向性結合器は、上記電気信号を上記第1の入射波と上記第1の反射波とに分離する第1の方向性結合器と、上記電気信号を上記第2の入射波と上記第2の反射波とに分離する第2の方向性結合器とを含み、上記送信機は、上記第1の入射波を送信する第1の送信機と上記第2の入射波を送信する第2の送信機とを含み、上記受信機は、上記第1の反射波と上記第1の透過波とを順に受信する第1の受信機と、上記第2の反射波と上記第2の透過波とを順に受信する第2の受信機とを含むものであってもよい。これにより、互いに方向の異なる第1および第2の入射波と、それらに対応する反射波および透過波とが受信されるという作用をもたらす。
【0020】
また、この第1の側面において、上記往復遅延時間は、上記一対のプローブの一方に対応する第1の往復遅延時間と上記一対のプローブの他方に対応する第2の往復遅延時間とを含み、上記処理部は、上記第1の入射波と上記第1の反射波とから上記第1の往復遅延時間を求め、上記第2の入射波と上記第2の反射波とから上記第2の往復遅延時間を求めてもよい。これにより、一対のプローブのそれぞれに対応する往復遅延時間が得られるという作用をもたらす。
【0021】
また、この第1の側面において、上記処理部は、上記媒質を上記電磁波が伝搬する時間である伝搬遅延時間を上記往復遅延時間および上記伝搬伝送時間から求めて上記伝搬遅延時間に応じた水分量を測定してもよい。これにより、伝搬遅延時間に応じた水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0022】
また、この第1の側面において、上記処理部は、上記伝搬遅延時間と上記水分量との関係を示す所定の係数を保持しておき、上記求めた伝搬遅延時間と上記係数とから上記水分量を測定してもよい。これにより、伝搬遅延時間と係数とから水分量が測定されるという作用をもたらす。
【0023】
また、本技術の第2の側面は、各々にケーブルが接続された一対のプローブの一方へ上記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、上記一対のプローブの上記一方で上記入射波が反射した反射波と上記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを上記ケーブルを介して受信する受信機と、上記入射波を送信させる制御と上記入射波および上記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理を行う制御部と、上記ケーブルを上記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を上記反射係数から求めて上記往復遅延時間と上記媒質および上記ケーブルを電磁波および上記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて上記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部とを具備する測定システムである。これにより、反射係数から得られた往復遅延時間と伝搬伝送時間とに基づいて水分量が測定されるという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本技術の第1の実施の形態における測定装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】本技術の第1の実施の形態におけるセンサヘッドの外観図の一例である。
【
図3】本技術の第1の実施の形態におけるアンテナ部および等価回路の一例を示す図である。
【
図4】本技術の第1の実施の形態における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。
【
図5】比較例における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。
【
図6】本技術の第1の実施の形態における測定ユニットの一構成例を示すブロック図である。
【
図7】本技術の第1の実施の形態における方向性結合器の一構成例を示す図である。
【
図8】本技術の第1の実施の形態における送信機および受信機の一構成例を示す回路図である。
【
図9】本技術の第1の実施の形態における制御部の一構成例を示すブロック図である。
【
図10】本技術の第1の実施の形態における信号処理ユニットの一構成例を示すブロック図である。
【
図11】本技術の第1の実施の形態における電磁波および電気信号の伝搬経路および伝送経路を説明するための図である。
【
図12】本技術の第1の実施の形態における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。
【
図13】本技術の第1の実施の形態における透過係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。
【
図14】本技術の第1の実施の形態における往復遅延時間および伝搬伝送時間と水分量との関係の一例を示すグラフである。
【
図15】本技術の第1の実施の形態における伝搬遅延時間と水分量との関係の一例を示すグラフである。
【
図16】本技術の第1の実施の形態におけるケーブルをさらに延長した測定装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図17】本技術の第1の実施の形態における測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図18】本技術の第2の実施の形態における測定装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図19】本技術の第2の実施の形態における測定ユニットの一構成例を示すブロック図である。
【
図20】本技術の第3の実施の形態における測定システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図21】本技術の第4の実施の形態における測定ユニットの一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(往復遅延時間および伝搬伝送時間を求める例)
2.第2の実施の形態(1つの半導体チップにより往復遅延時間および伝搬伝送時間を求める例)
3.第3の実施の形態(無線通信を行い、往復遅延時間および伝搬伝送時間を求める例)
4.第4の実施の形態(送信方向を変えて往復遅延時間および伝搬伝送時間を求める例)
【0026】
<1.第1の実施の形態>
[測定装置の構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における測定装置100の一構成例を示すブロック図である。この測定装置100は、媒質Mに含まれる水分量を測定するものであり、センサ装置110と、信号処理ユニット400とを有する。媒質Mとしては、例えば、農作物を育成するための土壌が想定される。
【0027】
センサ装置110は、水分量の測定に必要なデータを測定データとして取得するものである。測定データの内容については後述する。このセンサ装置110は、測定データを信号線409を介して信号処理ユニット400へ送信する。信号処理ユニット400は、測定データを用いて水分量を測定するものである。
【0028】
また、センサ装置110は、センサヘッド200と測定ユニット300とを有する。センサヘッド200は、プローブ201および202からなる部品である。これらのプローブ201および202は、ケーブル308および309を介して測定ユニット300に接続される。ケーブル308および309として、例えば、同軸ケーブルが用いられる。これらのケーブル308および309は、それぞれの先端をプローブ201および202の内部に埋め込むことにより、プローブ201および202に接続されている。測定ユニット300は、プローブ201および202の一方に電磁波EWを送信させ、その電磁波EWを他方に受信させて測定データを生成するものである。
【0029】
また、測定ユニット300と、信号処理ユニット400とは互いに異なる半導体チップに実装される。なお、後述するように、測定ユニット300と信号処理ユニット400とのそれぞれの回路を同一の半導体チップに実装することもできる。
【0030】
さらに、測定ユニット300は、配線層を備えた電子回路基板とこの電子回路基板上に実装された半導体チップを含んで構成されてもよい。測定ユニット300は、上記電子回路基板と上記半導体チップと、これらを収容した筐体とを含んで構成されてもよい。そして、上記ケーブル308および309は、上記電子回路基板に備わる上記配線層を介して、上記半導体チップと接続されてよい。
【0031】
電子回路基板と半導体チップを含んで構成された測定ユニット300、あるいはこれを収容した筐体、の大きさは、(1)その延在する方向(電子回路基板の基板平面方向)の大きさが、例えば、1辺の長さが1乃至20センチメートル(cm)、これと直交する他辺の長さが1乃至40センチメートル(cm)、の略長方形に収まる大きさであってよく、(2)その厚さは、例えば、2乃至20ミリメートル(mm)であってよい。
【0032】
測定ユニット300を配置する方向は、少なくとも2通りのいずれかを取り得る。すなわち、(1)測定ユニット300の延在する方向が、プローブ201および202の延在する方向と平行となるように、測定ユニット300を配置してよい。あるいは、(2)測定ユニット300の延在する方向が、プローブ201および202の延在する方向と直交するように、測定ユニット300を配置してもよい。
【0033】
なお、信号処理ユニット400をセンサ装置110と異なる筐体内に配置した場合、センサ装置110と、信号処理ユニット400とを有するシステムを測定システムとして扱うこともできる。
【0034】
[センサヘッドの構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態におけるセンサヘッド200の外観図の一例である。センサヘッド200は、プローブ201および202を有する。プローブ201および202のそれぞれの長さは、例えば、75乃至150ミリメートル(mm)である。プローブ201および202のそれぞれの太さ(直径、あるいは、プローブ断面の幅)は、例えば、3乃至30ミリメートル(mm)である。これらのプローブ201および202は、土壌等の媒質の中に配置され、プローブ201および202の間で所定周波数の電磁波を送受信することが可能なアンテナ部210をそれぞれ有する。
【0035】
プローブ201および202は、それぞれのアンテナ部210の間の距離が所定値Dとなるように媒質中に埋め込まれる。例えば、これらのプローブは、媒質中に概ね垂直な姿勢で埋め込まれる。なお、アンテナ部210の間の距離がDとなるのであれば、それらの姿勢は、垂直な姿勢に限定されない。
【0036】
アンテナ部210は、プローブ201および202の先端部(言い換えれば、終端部)又はその近傍に設けられ、電磁波を送受信するものである。なお、アンテナ部210は、プローブ201および202の先端部に設けられているが、この構成に限定されない。例えば、プローブ201および202の中央位置などに設けることもできる。
【0037】
また、アンテナ部210は、プローブ201および202を共振させない程度の大きさで形成された微小アンテナで構成される。これにより、プローブ201および202の共振による測定精度の低下を抑制することができる。
【0038】
また、プローブ201および202のそれぞれの内部には、前述したように
図1におけるケーブル308および309(同軸ケーブル)の先端が埋め込まれている。この同軸ケーブルの一部が開口され、アンテナ部210として用いられる。同軸ケーブルのうちアンテナ部210以外の部分の外周は、電磁波吸収材240により被覆されている。電磁波吸収材240により、開口部以外の領域からの電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0039】
電磁波吸収材240として、主にNi-Zn系のフェライトが用いられるが、これに限られず、電磁波EWの周波数等に応じて、センダストやパーマロイ等の他の高透磁率材料が用いられてもよい。また、電磁波吸収材240は、必要に応じて省略されてもよいし、プローブ201および202の一方にのみ設けられてもよい。
【0040】
アンテナ部210の間の距離Dの大きさは特に限定されない。距離Dが大きすぎると、媒質Mを伝搬する電磁波EWの減衰が大きくなり、十分な受信強度が得られなくなるおそれがある。一方、距離Dが小さすぎると、技術的に観測が難しくなるおそれがある。これらを考慮して、距離Dは適切な値に設定される。例えば、距離Dは、25乃至75ミリメートル(mm)である。
【0041】
そして、プローブ201および202の間には、アンテナ部210の間の距離を規定するためにスペーサ260が配置される。また、プローブ201および202のそれぞれの外周は、厚さが1乃至3ミリメートル(mm)の外殻225により被覆され、媒質から隔離されている。スペーサ260および外殻225は、電磁波透過性の材料により形成される。電磁波透過性の材料としては、例えば、高分子系材料、ガラスや、PTEF(PolyTEtraFluoroethylene)などの無機系材料が挙げられる。高分子系材料として、PC(PolyCarbonate)、PES(PolyEtherSulfone)、PEEK(PolyEtherEtherKetone)、PSS(PolyStyrene Sulfonic acid)などが用いられる。その他、高分子材料として、PMMA(PolyMethylMethAcrylate)、PET(PolyEthylene Terephthalate)なども用いられる。
【0042】
スペーサ260の厚さは、電子回路基板と半導体チップを含んで構成された測定ユニット300の大きさや厚さより小さくてよい。例えば、測定ユニット300の延在する方向が、プローブ201および202の延在する方向と平行となるように、測定ユニット300が配置されている場合、スペーサ260の厚さは、測定ユニット300の厚さよりも小さくてよく、好ましくは、1/2よりも小さくてよく、より好ましくは、1/3よりも小さくてよい。あるいは、測定ユニット300の延在する方向が、プローブ201および202の延在する方向と直交するように、測定ユニット300が配置されている場合、スペーサ260の厚さは、測定ユニット300が延在する一方向の長さよりも小さくてよく、好ましくは、1/2よりも小さくてよく、より好ましくは、1/3よりも小さくてよい。また、スペーサ260の厚さは、プローブ201および202の少なくともいずれか一方の太さ(直径、あるいは、プローブ断面の幅)よりも小さくてよく、好ましくは、1/2よりも小さくてよく、より好ましくは、1/3よりも小さくてよい。そして、スペーサ260の厚さは、例えば、1乃至3ミリメートル(mm)であってよい。
【0043】
スペーサ260の厚さを、測定ユニット300の厚さよりも小さくする、あるいは、測定ユニット300が延在する一方向の長さよりも小さくする、もしくは、プローブ201および202の少なくともいずれか一方の太さ(直径、あるいは、プローブ断面の幅)よりも小さくする、という構成は、アンテナ間の電磁波の伝搬遅延時間を計測する水分センサならではの効果を発揮する。仮に、スペーサ260を電磁波透過材料で形成しても、その材料によっては、送信アンテナから放射された電磁波がスペーサで反射されて受信アンテナで受信され、ノイズとなる可能性がある。スペーサ260の厚さを、上記の構成とすることによって、この構成を備えない形態と比較して、スペーサ260で反射される上記のノイズを低減することができる。この、スペーサの厚さを小さくすることによってノイズを低減する効果は、アンテナ間の電磁波の伝搬遅延時間を計測する以外の水分センサでは発生せず、アンテナ間の電磁波の伝搬遅延時間を計測する水分センサであるからこそ発生する効果である。
【0044】
なお、一対のプローブ(201および202)のアンテナ部(210および220)からスペーサ260の下端までの距離dは、アンテナ間の距離Dよりも大きいことが好ましい。特に、その距離dは、アンテナ間の距離Dの2倍よりも大きいことが好ましい。さらに、距離dは、アンテナ間の距離Dの3倍よりも大きく、プローブ201および202のそれぞれの長さよりも小さいことがより好ましい。仮に、プローブ201および202の間のスペーサ260を電磁波透過材料で形成しても、その材料によっては、送信アンテナから放射されたマイクロ波がスペーサで反射されて、受信アンテナで受信され、ノイズとなる可能性がある。上述のように、スペーサ260をアンテナから遠ざけることによって、このノイズを低減することができる。この「スペーサ260をアンテナから遠ざけることによってノイズを低減する効果」は、アンテナ間の伝搬遅延計測方式以外の水分センサでは発生せず、本技術のように、アンテナ間の伝搬遅延計測方式の水分センサであるからこそ発生するものである。
【0045】
また、スペーサ260の外縁であって、一対のプローブ(201および202)の間に延在する該外縁のうち、アンテナ部(210および220)に近い方の該外縁は、同図に例示するように円弧状になっている。該外縁が、直線であるよりも円弧状になっている方が、信アンテナから放射されたマイクロ波がスペーサ260で反射されて受信アンテナで受信されるノイズをより低減できる。この「スペーサ260を円弧状にすることによってノイズを低減する効果」は、アンテナ間の伝搬遅延計測方式以外の水分センサでは発生せず、アンテナ間の伝搬遅延計測方式の水分センサであるからこそ発生するものである。
【0046】
[アンテナ部の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態におけるアンテナ部210および等価回路の一例を示す図である。同図におけるaは、アンテナ部210の拡大図である。同図におけるbは、アンテナ部210の等価回路の一例である。
【0047】
プローブ201内に埋め込まれたケーブル308(同軸ケーブル等)は、芯線部211とシールド部212を有する。当該ケーブルの太さおよび長さは特に限定されず、任意の太さおよび長さとすることができる。同図におけるaに例示するように、芯線部211は銅線で構成され、シールド部212は銅パイプで構成されるが、シールド部212は銅線のメッシュ体で構成されてもよい。
【0048】
ケーブル308(同軸ケーブル等)の先端付近の一部が開口され、電極部213が取り付けられる。これにより、プローブ201および202のそれぞれのアンテナ部210は、長さが4乃至10ミリメートル(ミリメートル)程度の微小ダイポールアンテナとして機能する。開口部は、矩形、円形、楕円形、長円形等の開口形状を有する。開口部の長軸は、使用する電磁波の波長に応じて適宜設定可能である。
【0049】
また、同図におけるbに例示するように、アンテナ部210の等価回路は、抵抗511と、フリンジング容量512および513とが並列に接続された回路により表される。フリンジング容量512の容量値は、同軸ケーブルの内側に広がる物質の誘電率εcに応じた値である。フリンジング容量513の容量値は、電極513の周囲に広がる物質の誘電率ε*に応じた値である。
【0050】
プローブ201および202のいずれかに電気信号が送信されると、その信号の一部が終端で反射して、同軸ケーブル内を電気信号が往復する。この電気信号のうち、入力された信号内の波を「入射波」とし、その入射波が反射したものを「反射波」とする。
【0051】
ここで、外殻225を設けない比較例を想定する。この比較例において、電気信号が同軸ケーブル内を往復するのに要する往復遅延時間は、温度と媒質の誘電率ε*とに起因して変動する。
【0052】
温度が高くなるほど、同軸ケーブルが熱膨張により長くなるため、遅延時間が長くなる。また、媒質の誘電率ε*が変化すると、その値に応じてフリンジング容量512が変化し、反射係数のインパルス応答のピーク時間が変化する。ここで、反射係数は、入射波および反射波のそれぞれの複素振幅の比である。
【0053】
図4は、本技術の第1の実施の形態における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、反射係数のインパルス応答を示し、横軸は、時間を示す。実線の曲線は、媒質が空気である場合のインパルス応答の波形を示し、一点鎖線の曲線は、媒質が水である場合のインパルス応答の波形を示す。
【0054】
一方、
図5は、外殻225を設けない比較例における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、反射係数のインパルス応答を示し、横軸は、時間を示す。実線の曲線は、媒質が空気である場合のインパルス応答の波形を示し、一点鎖線の曲線は、媒質が水である場合のインパルス応答の波形を示す。
【0055】
図5に例示するように、外殻225を設けない場合には、媒質が変わると、その誘電率ε
*が変動し、フリンジング容量512が変わる。このため、インパルス応答のピーク値が変動する。この変動に起因して、往復遅延時間の算出において誤差が生じる。
【0056】
これに対して、外殻225を設けてアンテナ部210を媒質から隔離した場合、フリンジング容量512が一定となるため、
図4に例示したように、インパルス応答のピーク値が変動しない。これにより、往復遅延時間を高い精度で算出することができる。
【0057】
図6は、本技術の第1の実施の形態における測定ユニット300の一構成例を示すブロック図である。この測定ユニット300は、方向性結合器310、送信機320、入射波受信機330、反射波受信機340、透過波受信機350、通信部360および制御部370を備える。測定ユニット300として、例えば、ベクトルネットワークアナライザが用いられる。
【0058】
方向性結合器310は、ケーブル308を伝送する電気信号を入射波と反射波とに分離するものである。入射波は、送信機320により送信された電気信号の波であり、反射波は、プローブ201の終端で入射波が反射したものである。この方向性結合器310は、入射波を入射波受信機330に供給し、反射波を反射波受信機340に供給する。
【0059】
送信機320は、所定周波数の電気信号を送信信号として方向性結合器310およびケーブル308を介して、プローブ201に送信するものである。送信信号内の入射波として、例えば、CW(Continuous Wave)波が用いられる。この送信機320は、例えば、1乃至9ギガヘルツ(GHz)の周波数帯域内において、50メガヘルツ(MHz)のステップで周波数を順に切り替えて送信信号を送信する。
【0060】
入射波受信機330は、方向性結合器310からの入射波を受信するものである。反射波受信機340は、方向性結合器310からの反射波を受信するものである。透過波受信機350は、プローブ202からの透過波を受信するものである。ここで、透過波は、プローブ201および202の間の媒質を透過した電磁波をプローブ202が電気信号に変換したものである。
【0061】
入射波受信機330、反射波受信機340および透過波受信機350は、受信した入射波、反射波および透過波に対して、直交検波とAD(Analog to Digital)変換とを行って受信データとして制御部370に供給する。
【0062】
なお、入射波受信機330、反射波受信機340および透過波受信機350は、特許請求の範囲に記載の受信機の一例である。
【0063】
制御部370は、送信機320を制御して、入射波を含む送信信号を送信させる制御と、反射係数および透過係数を求める処理とを行うものである。ここで、反射係数は、前述したように入射波および反射波のそれぞれの複素振幅の比である。透過係数は、入射波および透過波のそれぞれの複素振幅の比である。制御部370は、求めた反射係数および透過係数を通信部360に供給する。
【0064】
通信部360は、反射係数および透過係数を示すデータを測定データとして信号線409を介して信号処理ユニット400に送信するものである。
【0065】
なお、正確な反射係数と透過係数を測定するために、測定前において、方向性結合器310、送信機320および受信機(入射波受信機330等)のそれぞれの周波数特性の校正(キャリブレーション)が実行されている。
【0066】
[方向性結合器の構成例]
図7は、本技術の第1の実施の形態における方向性結合器310の一構成例を示す図である。この方向性結合器310は、伝送線路311、312および313と、終端抵抗314および315とを備える。この方向性結合器310は、例えば、小型化に好適なブリッジカップラーにより実装することができる。
【0067】
伝送線路311の一端は、送信機320に接続され、他端は、ケーブル308を介してプローブ201に接続される。伝送線路312は、伝送線路311より短く、伝送線路311と電磁界結合する線路である。この伝送線路312の一端には終端抵抗314が接続され、他端は、反射波受信機340に接続される。伝送線路313は、伝送線路311より短く、伝送線路311と電磁界結合する線路である。この伝送線路313の一端には終端抵抗315が接続され、他端は、入射波受信機330に接続される。
【0068】
上述の構成により、方向性結合器310は、電気信号を入射波および反射波に分離し、入射波受信機330および反射波受信機340に供給する。
【0069】
[送信機および受信機の構成例]
図8は、本技術の第1の実施の形態における送信機320および受信機の一構成例を示す回路図である。同図におけるaは、送信機320の一構成例を示す回路図であり、同図におけるbは、入射波受信機330の一構成例を示す回路図である。同図におけるcは、反射波受信機340の一構成例を示す回路図であり、同図におけるdは、透過波受信機350の一構成例を示す回路図である。
【0070】
同図におけるaに例示するように、送信機320は、送信信号発振器322およびドライバ321を備える。
【0071】
送信信号発振器322は、制御部370の制御に従って電気信号を送信信号として生成するものである。ドライバ321は、送信信号を方向性結合器310に出力するものである。この送信信号S(t)は、例えば、次の式により表される。
S(t)=|A|cos(2πft+θ)
上式において、tは、時刻を表し、単位は、例えば、ナノ秒(ns)である。|A|は、送信信号の振幅を示す。cos()は、余弦関数を示す。fは、周波数を示し、単位は例えば、ヘルツ(Hz)である。θは、位相を表し、単位は、例えば、ラジアン(rad)である。
【0072】
同図におけるbに例示するように、入射波受信機330は、ミキサ331、バンドパスフィルタ332およびアナログデジタル変換器333を備える。
【0073】
ミキサ331は、位相が90度異なる2つのローカル信号と送信信号とを混合することにより、直交検波を行うものである。この直交検波により、同相成分IIおよび直交成分QIからなる複素振幅が得られる。これらの同相成分IIおよび直交成分QIは、例えば、次の式により表される。ミキサ331は、複素振幅をバンドパスフィルタ332を介してアナログデジタル変換器333に供給する。
II=|A|cos(θ)
QI=|A|sin(θ)
上式において、sin()は、正弦関数を示す。
【0074】
バンドパスフィルタ332は、所定の周波数帯域の成分を通過させるものである。アナログデジタル変換器333は、AD変換を行うものである。このアナログデジタル変換器333は、AD変換により複素振幅を示すデータを生成し、受信データとして制御部370に供給する。
【0075】
同図におけるcに例示するように、反射波受信機340は、ミキサ341、バンドパスフィルタ342およびアナログデジタル変換器343を備える。ミキサ341、バンドパスフィルタ342およびアナログデジタル変換器343の構成は、ミキサ331、バンドパスフィルタ332およびアナログデジタル変換器333と同様である。反射波受信機340は、反射波を直交検波して同相成分IRおよび直交成分QRからなる複素振幅を取得し、その複素振幅を示す受信データを制御部370に供給する。
【0076】
同図におけるdに例示するように、透過波受信機350は、レシーバ351、ローカル信号発振器352、ミキサ353、バンドパスフィルタ354およびアナログデジタル変換器355を備える。ミキサ353、バンドパスフィルタ354およびアナログデジタル変換器355の構成は、ミキサ331、バンドパスフィルタ332およびアナログデジタル変換器333と同様である。
【0077】
レシーバ351は、ケーブル309を介して、透過波を含む電気信号を受信し、ミキサ353に出力するものである。ローカル信号発振器352は、位相が90度異なる2つのローカル信号を生成するものである。
【0078】
透過波受信機350は、透過波を直交検波して同相成分ITおよび直交成分QTからなる複素振幅を取得し、その複素振幅を示すデータを受信データとして制御部370に供給する。
【0079】
なお、送信機320および受信機(入射波受信機330等)のそれぞれの回路は、入射波等を送受信することができるものであれば、同図に例示した回路に限定されない。
【0080】
[制御部の構成例]
図9は、本技術の第1の実施の形態における制御部370の一構成例を示すブロック図である。この制御部370は、送信制御部371、反射係数算出部372および透過係数算出部373を備える。
【0081】
送信制御部371は、送信機320を制御して、送信信号を送信させるものである。
【0082】
反射係数算出部372は、周波数毎に反射係数Γを算出するものである。この反射係数算出部372は、入射波受信機330および反射波受信機340から、入射波および反射波のそれぞれの複素振幅を受信し、次の式により、それらの比を反射係数Γとして算出する。
Γ=(IR+jQR)/(II+jQI) ・・・式1
上式において、jは、虚数単位である。
【0083】
反射係数算出部372は、N(Nは、整数)個の周波数f1乃至fNのそれぞれについて式1により反射係数を算出する。これらのN個の反射係数をΓ1乃至ΓNとする。反射係数算出部372は、それらの反射係数を通信部360に供給する。
【0084】
透過係数算出部373は、周波数毎に透過係数Tを算出するものである。この透過係数算出部373は、入射波受信機330および透過波受信機350から、入射波および透過波のそれぞれの複素振幅を受信し、次の式により、それらの比を透過係数Tとして算出する。
T=(IT+jQT)/(II+jQI) ・・・式2
【0085】
透過係数算出部373は、N個の周波数f1乃至fNのそれぞれについて式2により透過係数を算出する。これらのN個の反射係数をT1乃至TNとする。透過係数算出部373は、それらの透過係数を通信部360を介して信号処理ユニット400へ供給する。
【0086】
[信号処理ユニットの構成例]
図10は、本技術の第1の実施の形態における信号処理ユニット400の一構成例を示すブロック図である。この信号処理ユニット400は、通信部410、往復遅延時間算出部420、伝搬伝送時間算出部430、水分量測定部440および係数保持部450を備える。
【0087】
通信部410は、測定ユニット300からの測定データを受信するものである。この通信部410は、測定データ内の反射係数Γ1乃至ΓNを往復遅延時間算出部420に供給し、測定データ内の透過係数T1乃至TNを伝搬伝送時間算出部430に供給する。
【0088】
往復遅延時間算出部420は、反射係数に基づいて、電気信号がケーブル308を往復する時間を往復遅延時間として算出するものである。この往復遅延時間算出部420は、反射係数Γ1乃至ΓNを逆フーリエ変換することにより、インパルス応答hΓ(t)を求める。そして、往復遅延時間算出部420は、インパルス応答hΓ(t)のピーク値のタイミングと、CW波の送信タイミングとの時間差を往復遅延時間τ11として求め、水分量測定部440に供給する。
【0089】
伝搬伝送時間算出部430は、透過係数に基づいて、電磁波および電気信号が媒質とケーブル308および309とを伝搬および伝送する時間を伝搬伝送時間として算出するものである。この伝搬伝送時間算出部430は、透過係数T1乃至TNを逆フーリエ変換することにより、インパルス応答hT(t)を求める。そして、伝搬伝送時間算出部430は、インパルス応答hT(t)のピーク値のタイミングと、CW波の送信タイミングとの時間差を伝搬伝送時間τ21として求め、水分量測定部440に供給する。
【0090】
水分量測定部440は、往復遅延時間τ11および伝搬伝送時間τ21に基づいて水分量を測定するものである。この水分量測定部440は、まず、往復遅延時間τ11および伝搬伝送時間τ21から伝搬遅延時間τdを算出する。ここで、伝搬遅延時間は、プローブ201および202の間の媒質を電磁波が伝搬する時間である。伝搬遅延時間τdは、次の式により算出される。
τd=τ21-τ11 ・・・式3
上式において、往復遅延時間τ11、伝搬伝送時間τ21および伝搬遅延時間τdのそれぞれの単位は、例えば、ナノ秒(ns)である。
【0091】
そして、水分量測定部440は、水分量と伝搬遅延時間τdとの間の関係を示す係数aおよびbを係数保持部450から読み出し、式3で算出した伝搬遅延時間τdを次の式に代入して、水分量xを測定する。そして、水分量測定部440は、測定した水分量を、必要に応じた外部の装置や機器へ出力する。
τd=a・x+b ・・・式4
上式において、水分量xの単位は、例えば、体積パーセント(%)である。
【0092】
係数保持部450は、係数aおよびbを保持するものである。係数保持部450として、不揮発性のメモリなどが用いられる。
【0093】
図11は、本技術の第1の実施の形態における電磁波および電気信号の伝搬経路および伝送経路を説明するための図である。
【0094】
前述したように、プローブ201に先端が埋め込まれたケーブル308を介して、送信機320は、入射波を含む電気信号を送信信号としてプローブ201に送信する。
【0095】
プローブ201の終端で入射波が反射し、その反射波を反射波受信機340が受信する。これにより、入射波および反射波を含む電気信号がケーブル308内を往復する。同図における太い実線の矢印は、ケーブル308を電気信号が往復した経路を示す。この経路を電気信号が往復する時間が、往復遅延時間τ11に該当する。
【0096】
また、入射波を含む電気信号はプローブ201により、電磁波EWに変換され、プローブ201および202の間の媒質を透過(言い換えれば、伝搬)する。プローブ202は、その電磁波EWを電気信号に変換する。透過波受信機350は、ケーブル309を介して、その電気信号内の透過波を受信する。すなわち、入射波を含む電気信号がケーブル308を伝送し、電磁波EWに変換されて媒質を伝搬し、透過波を含む電気信号に変換されてケーブル309を伝送する。同図における太い点線の矢印は、電磁波と電気信号(入射波および透過波)とが、媒質とケーブル308および309とを伝搬および伝送した経路を示す。この経路を電磁波および電気信号が伝搬および伝送する時間が、伝搬伝送時間τ21に該当する。
【0097】
測定ユニット300内の制御部370は、式1および式2により反射係数Γおよび透過係数Tを求める。そして、信号処理ユニット400は、反射係数Γおよび透過係数Tから往復遅延時間τ11および伝搬伝送時間τ21を求める。
【0098】
ここで、入射波の送信から、透過波の受信までの経路は、媒質と、ケーブル308および309とを含む。このため、媒質を電磁波が伝搬する伝搬遅延時間τdは、伝搬伝送時間τ21と、ケーブル308および309を電気信号が伝送する遅延時間との差分により求められる。ここで、ケーブル308および309のそれぞれの長さが同一と仮定すると、ケーブル308を伝送する遅延時間と、ケーブル309を伝送する遅延時間とは同一になる。この場合、ケーブル308および309を電気信号が伝送する遅延時間の合計は、ケーブル308を往復する往復遅延時間τ11に等しくなる。したがって式3が成立し、信号処理ユニット400は、式3により、伝搬遅延時間τdを算出することができる。
【0099】
そして、信号処理ユニット400は、求めた往復遅延時間τ11および伝搬伝送時間τ21から伝搬遅延時間を算出し、伝搬遅延時間と係数aおよびbとから、媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う。なお、信号処理ユニット400は、特許請求の範囲に記載の処理部の一例である。
【0100】
図12は、本技術の第1の実施の形態における反射係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、反射係数のインパルス応答であり、横軸は、時間である。
【0101】
水分量の異なる4種類の豊浦標準砂を媒質として用意し、測定装置100が反射係数のインパルス応答を求めたものとする。それぞれの水分量は、0.0、10.1、19.7、および32.9体積パーセント(%)とする。
【0102】
同図に例示するように、水分量が変化しても、反射係数のピーク値は変化しない。すなわち、往復遅延時間は一定である。これは、前述したように、プローブ201および202が外殻225により隔離されているためである。
【0103】
図13は、本技術の第1の実施の形態における透過係数のインパルス応答の波形の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、透過係数のインパルス応答であり、横軸は、時間である。同図において、測定対象の媒質は、
図12と同様の4種類の豊浦標準砂である。
【0104】
同図に例示するように、水分量が多くなるほど、透過係数のピーク値のタイミングが遅くなる。これにより、水分量が多くなるほど、伝搬伝送遅延時間が長くなる。
【0105】
図14は、本技術の第1の実施の形態における往復遅延時間および伝搬伝送時間と水分量との関係の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、往復遅延時間または伝搬伝送時間を示し、横軸は水分量を示す。
【0106】
図14における点線は、
図12から得られた往復遅延時間と水分量との関係を示す。
図14における実線は、
図13から得られた伝搬伝送時間と水分量との関係を示す。
図14に例示するように、水分量に関わらず、往復遅延時間は一定である。一方、水分量が多くなるほど、伝搬伝送遅延時間は長くなる。
【0107】
図15は、本技術の第1の実施の形態における伝搬遅延時間と水分量との関係の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、伝搬遅延時間を示し、横軸は、水分量を示す。同図の直線は、
図14の水分量毎に、伝搬伝送時間および往復遅延時間の差分を求めることにより得られる。
【0108】
図15に例示するように、伝搬遅延時間は、水分量が多くなるほど、長くなり、両者は比例関係にある。したがって式4が成立する。式4における係数aは、同図における直線の傾きであり、係数bは、切片である。
【0109】
図16は、本技術の第1の実施の形態におけるケーブル308および309をさらに延長した測定装置の一構成例を示すブロック図である。ケーブル308および309を長くすることにより、測定ユニット300および信号処理ユニット400を、プローブ201および202よりも遠方に配置することができる。
【0110】
ただし、ケーブル308および309を長くするほど、温度変化に伴う往復遅延時間の変動が大きくなる。したがって、仮に、測定装置100が往復遅延時間を固定値として水分量を測定すると、真値と固定値との間の誤差が拡大し、水分量の測定精度が低下するおそれがある。
【0111】
しかし、測定装置100は、反射波を受信して、反射係数から往復遅延時間を算出している。したがって、測定装置100は、温度変化により往復遅延時間が変動しても、その変動時の値を得ることができる。このため、往復遅延時間を固定値とする場合よりも水分量の測定精度を向上させることができる。
【0112】
[測定装置の動作例]
図17は、本技術の第1の実施の形態における測定装置100の動作の一例を示すフローチャートである。同図における動作は、例えば、水分量を測定するための所定のアプリケーションが実行されたときに開始される。
【0113】
一対のプローブ201および202は、電磁波を送受信する(ステップS901)。測定ユニット300は、入射波および反射波から反射係数を算出し(ステップS902)、入射波および透過波から透過係数を算出する(ステップS903)。
【0114】
次いで、信号処理ユニット400は、反射係数から往復遅延時間を算出し(ステップS904)、透過係数から伝搬伝送時間を算出する(ステップS905)。信号処理ユニット400は、往復遅延時間および伝搬伝送時間から伝搬遅延時間を算出し(ステップS906)、その伝搬遅延時間と係数aおよびbとから水分量を算出する(ステップS907)。ステップS907の後に、測定装置100は、測定のための動作を終了する。
【0115】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、測定装置100は、電気信号がケーブル308を往復する往復遅延時間を求め、その往復遅延時間から水分量を測定するため、往復遅延時間が変動した場合であっても高精度で水分量を測定することができる。
【0116】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、測定ユニット300と信号処理ユニット400とを互いに異なる半導体チップに実装していた。しかし、この構成では、半導体チップ間の通信のためのインターフェースを設ける必要があり、その分、測定装置100の回路規模が増大するおそれがある。この第2の実施の形態の測定装置100は、測定ユニット300および信号処理ユニット400のそれぞれの機能を単体の半導体チップで実現する点において第1の実施の形態と異なる。
【0117】
図18は、本技術の第2の実施の形態における測定装置100の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態の測定装置100は、測定ユニット300および信号処理ユニット400の代わりに、測定ユニット301を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0118】
測定ユニット301は、第1の実施の形態の測定ユニット300の機能に加えて、信号処理ユニット400の機能を有する。
【0119】
図19は、本技術の第2の実施の形態における測定ユニット301の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態の測定ユニット301は、通信部360の代わりに信号処理部380を備える点において第1の実施の形態と異なる。信号処理部380の構成は、第1の実施の形態の信号処理ユニット400と同様である。また、同図において、制御部370の機能は、例えば、DSP(Digital Signal Processing)回路により実現される。
【0120】
また、測定ユニット301は、単体の半導体チップに実装されるものとする。これにより、測定ユニット300および信号処理ユニット400の機能を単体の半導体チップで実現することができる。したがって、半導体チップの間で通信を行うためのインターフェース(通信部360など)を不要とし、測定装置100の回路規模を削減することができる。
【0121】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、測定ユニット300および信号処理ユニット400の機能を単体の半導体チップに実装したため、それらを異なる半導体チップに実装する場合と比較して、測定装置100の回路規模を削減することができる。
【0122】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、測定ユニット300と信号処理ユニット400とを信号線409により有線接続していたが、この構成では、信号処理ユニット400を測定個所から離れた遠隔地に配置することが困難となる。この第3の実施の形態の測定ユニット300は、測定データを無線送信する点において第1の実施の形態と異なる。
【0123】
図20は、本技術の第3の実施の形態における測定システムの一構成例を示すブロック図である。この第3の実施の形態の測定システムは、センサ装置110と、信号処理ユニット400とを備える。
【0124】
第3の実施の形態のセンサ装置110は、測定ユニット300の代わりに測定ユニット302を備える。測定ユニット302の通信部360は、アンテナ390を介して測定データを信号処理ユニット400に無線送信する点において第1の実施の形態と異なる。
【0125】
信号処理ユニット400は、基地局のネットワークやインターネットに接続され、それらを介して無線送信された測定データを有線または無線で受信する。
【0126】
同図に例示したように、測定ユニット302と信号処理ユニット400とが無線で接続されるため、測定個所から離れた遠隔地に信号処理ユニット400を配置することができる。
【0127】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、測定ユニット302が、測定データを信号処理ユニット400へ無線送信するため、信号処理ユニット400を遠隔地に配置することができる。
【0128】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、ケーブル308および309のそれぞれを電気信号が伝送する遅延時間が同一であると仮定して、その前提の下で水分量を測定していた。しかし、ケーブル308および309のそれぞれの長さが異なる場合には、それらの遅延時間が異なる値になり、前提が崩れて測定誤差が生じるおそれがある。この第4の実施の形態の測定装置100は、ケーブル308の往復遅延時間とケーブル309の往復遅延時間とを両方とも求めて、水分量を測定する点において第1の実施の形態と異なる。
【0129】
図21は、本技術の第4の実施の形態における測定ユニット300の一構成例を示すブロック図である。この第4の実施の形態の測定ユニット300は、方向性結合器310および391と、送信機320および393と、入射波受信機330および394と、透過波・反射波受信機392および395と、通信部360と、制御部370とを備える。
【0130】
送信機320は、ケーブル308を介して入射波I1を送信するものである。送信機393は、ケーブル309を介して入射波I2を送信するものである。制御部370は、送信機320および393を制御して、入射波I1およびI2を順に送信させる。
【0131】
入射波受信機330は、入射波I1が送信された際に入射波I1を受信するものである。入射波受信機394は、入射波I2が送信された際に入射波I2を受信するものである。
【0132】
方向性結合器310は、ケーブル308の電気信号を入射波と反射波とに分離するものである。この方向性結合器310は、入射波I1が送信された際に、ケーブル308の電気信号を、入射波I1と、その入射波I1に対応する反射波R1とに分離する。一方、入射波I2が送信された際に方向性結合器310は、その入射波I2に対応する透過波Tr1を出力する。
【0133】
方向性結合器391は、ケーブル309の電気信号を、入射波と反射波とに分離するものである。この方向性結合器391は、入射波I2が送信された際に、ケーブル308の電気信号を、入射波I2と、その入射波I2に対応する反射波R2とに分離する。一方、入射波I1が送信された際に方向性結合器391は、その入射波I1に対応する透過波Tr2を出力する。
【0134】
透過波・反射波受信機392は、透過波および反射波を順に受信するものである。この透過波・反射波受信機392は、入射波I1が送信された際に、方向性結合器310からの反射波R1を受信し、入射波I2が送信された際に、方向性結合器310からの透過波Tr1を受信する。
【0135】
透過波・反射波受信機395は、透過波および反射波を順に受信するものである。この透過波・反射波受信機395は、入射波I1が送信された際に、方向性結合器391からの透過波Tr2を受信し、入射波I2が送信された際に、方向性結合器391からの反射波R2を受信する。
【0136】
なお、入射波I1およびI2は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の入射波の一例であり、反射波R1およびR2は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の反射波の一例である。透過波Tr1およびTr2は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の透過波の一例である。また、方向性結合器310および391は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の方向性結合器の一例であり、送信機320および393は、第1および第2の送信機の一例である。透過波・反射波受信機392および395は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の受信機の一例である。
【0137】
制御部370は、第1の実施の形態と同様の方法で入射波I1および反射波R1のそれぞれの複素振幅から、反射係数Γ11を算出し、入射波I1および透過波Tr2のそれぞれの複素振幅から、透過係数T21を算出する。また、制御部370は、第1の実施の形態と同様の方法で入射波I2および反射波R2のそれぞれの複素振幅から、反射係数Γ22を算出し、入射波I2および透過波Tr1のそれぞれの複素振幅から、透過係数T12を算出する。
【0138】
後段の信号処理ユニット400は、第1の実施の形態と同様の方法で反射係数Γ11および透過係数T12から往復遅延時間τ11および伝搬伝送時間τ12を算出する。また、信号処理ユニット400は、第1の実施の形態と同様の方法で反射係数Γ22および透過係数T12から往復遅延時間τ22および伝搬伝送時間τ21を算出する。
【0139】
そして、信号処理ユニット400は、次の式により、伝搬遅延時間τdを算出する。
τd=(τ21+τ12-τ11-τ22)/2 ・・・式5
【0140】
次いで信号処理ユニット400は、式5により算出した伝搬遅延時間τdを式4に代入して水分量を測定する。なお、往復遅延時間τ11およびτ22は、特許請求の範囲に記載の第1および第2の往復遅延時間の一例である。
【0141】
ケーブル308および309の長さが異なる場合は、それぞれのケーブルを電気信号が伝送する遅延時間が互いに異なることがある。しかし、この場合であっても式5により、往復遅延時間τ11に加えて往復遅延時間τ22も用いて演算を行うことにより、ケーブル308および309のそれぞれの長さの差に起因する測定誤差を低減することができる。
【0142】
なお、第4の実施の形態に、第2の実施の形態や第3の実施の形態を適用することができる。
【0143】
このように、本技術の第4の実施の形態によれば、ケーブル308に対応する往復遅延時間τ11と、ケーブル309に対応する往復遅延時間τ22とを用いて水分量を測定するため、それらのケーブルの長さの差に起因する測定誤差を低減することができる。
【0144】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0145】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0146】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0147】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部と
を具備する測定装置。
(2)前記一対のプローブを前記媒質から隔離する外殻をさらに具備する
前記(1)記載の測定装置。
(3)前記外殻は、電磁波透過材料で形成されている
前記(2)記載の測定装置。
(4)前記一対のプローブの間隔を一定に保持するスペーサをさらに具備する
前記(3)記載の測定装置。
(5)前記スペーサは、電磁波透過材料で形成されている
前記(4)記載の測定装置。
(6)前記スペーサの外縁であって、前記一対のプローブの間に延在する該外縁のうち、前記一対のプローブのそれぞれのアンテナ部に近い方の該外縁は、円弧状になっている
前記(5)記載の測定装置。
(7)前記一対のプローブのそれぞれの前記アンテナ部から前記スペーサの下端までの距離は、前記アンテナ部の間の距離であるアンテナ間距離よりも大きく、
好ましくは前記アンテナ間距離の2倍よりも大きく、
より好ましくは、前記アンテナ間距離の3倍よりも大きく、
前記プローブの長さよりも小さい
前記(6)記載の測定装置。
(8)前記入射波を送信させる制御と前記入射波および前記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理と前記入射波および前記透過波のそれぞれの複素振幅の比を透過係数として求める処理とを行う制御部をさらに具備し、
前記処理部は、前記反射係数および前記透過係数に基づいて前記往復遅延時間および前記伝搬伝送時間を求める
前記(1)から(7)のいずれかに記載の測定装置。
(9)前記制御部と前記処理部とは所定の半導体チップに設けられる
前記(1)から(8)のいずれかに記載の測定装置。
(10)前記制御部は、所定の半導体チップに設けられ
前記処理部は前記半導体チップと異なる半導体チップに設けられる
前記(8)記載の測定装置。
(11)前記反射係数および前記透過係数を前記処理部に無線送信する通信部をさらに具備する
前記(8)記載の測定装置。
(12)前記ケーブルを伝送する電気信号を前記入射波と前記反射波に分離する方向性結合器をさらに具備する
前記(8)から(11)のいずれかに記載の測定装置。
(13)前記受信機は、
前記入射波を受信する入射波受信機と、
前記反射波を受信する反射波受信機と、
前記透過波を受信する透過波受信機と
を含む前記(12)記載の測定装置。
(14)前記入射波は、互いに方向の異なる第1および第2の入射波を含み、
前記反射波は、前記第1の入射波に対応する第1の反射波と前記第2の入射波に対応する第2の反射波とを含み、
前記透過波は、前記第1の入射波に対応する第2の透過波と前記第2の入射波に対応する第1の透過波とを含み、
前記方向性結合器は、前記電気信号を前記第1の入射波と前記第1の反射波とに分離する第1の方向性結合器と、前記電気信号を前記第2の入射波と前記第2の反射波とに分離する第2の方向性結合器とを含み、
前記送信機は、前記第1の入射波を送信する第1の送信機と前記第2の入射波を送信する第2の送信機とを含み、
前記受信機は、前記第1の反射波と前記第1の透過波とを順に受信する第1の受信機と、前記第2の反射波と前記第2の透過波とを順に受信する第2の受信機とを含む
前記(12)記載の測定装置。
(15)前記往復遅延時間は、前記一対のプローブの一方に対応する第1の往復遅延時間と前記一対のプローブの他方に対応する第2の往復遅延時間とを含み、
前記処理部は、前記第1の入射波と前記第1の反射波とから前記第1の往復遅延時間を求め、前記第2の入射波と前記第2の反射波とから前記第2の往復遅延時間を求める
前記(14)記載の測定装置。
(16)前記処理部は、前記媒質を前記電磁波が伝搬する時間である伝搬遅延時間を前記往復遅延時間および前記伝搬伝送時間から求めて前記伝搬遅延時間に応じた水分量を測定する
前記(1)から(15)のいずれかに記載の測定装置。
(17)前記処理部は、前記伝搬遅延時間と前記水分量との関係を示す所定の係数を保持しておき、前記求めた伝搬遅延時間と前記係数とから前記水分量を測定する
前記(16)記載の測定装置。
(18)各々にケーブルが接続された一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信機と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信機と、
前記入射波を送信させる制御と前記入射波および前記反射波のそれぞれの複素振幅の比を反射係数として求める処理を行う制御部と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を前記反射係数から求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理部と
を具備する測定システム。
(19)各々にケーブルが埋め込まれた一対のプローブの一方へ前記ケーブルを介して入射波を含む電気信号を送信する送信手順と、
前記一対のプローブの前記一方で前記入射波が反射した反射波と前記一対のプローブの間の媒質を透過した透過波とを前記ケーブルを介して受信する受信手順と、
前記ケーブルを前記電気信号が往復する時間である往復遅延時間を求めて前記往復遅延時間と前記媒質および前記ケーブルを電磁波および前記電気信号が伝搬および伝送する時間である伝搬伝送時間とに基づいて前記媒質に含まれる水分量を測定する処理を行う処理手順と
を具備する測定方法。
【符号の説明】
【0148】
100 測定装置
110 センサ装置
200 センサヘッド
201、202 プローブ
210 アンテナ部
211 芯線部
212 シールド部
213 電極部
225 外殻
240 電磁波吸収材
260 スペーサ
300、301、302 測定ユニット
308、309 ケーブル
310、391 方向性結合器
311、312、313 伝送線路
314、315 終端抵抗
320、393 送信機
321 ドライバ
322 送信信号発振器
330、394 入射波受信機
331、341、353 ミキサ
332、342、354 バンドパスフィルタ
333、343、355 アナログデジタル変換器
340 反射波受信機
350 透過波受信機
351 レシーバ
352 ローカル信号発振器
360、410 通信部
370 制御部
371 送信制御部
372 反射係数算出部
373 透過係数算出部
380 信号処理部
390 アンテナ
392、395 透過波・反射波受信機
400 信号処理ユニット
420 往復遅延時間算出部
430 伝搬伝送時間算出部
440 水分量測定部
450 係数保持部