(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124518
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】AlN接合体
(51)【国際特許分類】
C04B 37/00 20060101AFI20240905BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C04B37/00 A
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109336
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2021135883の分割
【原出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山名 啓太
(72)【発明者】
【氏名】▲のぼり▼ 和宏
(72)【発明者】
【氏名】横田 元一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲久
(57)【要約】
【課題】良好に接合され且つクラックのないAlN接合体を提供する。
【解決手段】AlN接合体10は、第1AlN部材11と第2AlN部材12とを接合したものである。第1AlN部材11のイットリア含有率は、検出限界以下である。第2AlN部材12は、イットリアを含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1AlN部材と第2AlN部材とを接合したAlN接合体であって、
前記第1AlN部材のイットリア含有率は、検出限界以下であり、
前記第2AlN部材は、イットリアを含有する、
AlN接合体。
【請求項2】
前記第2AlN部材のイットリア含有率は、0.07質量%以上である、
請求項1に記載のAlN接合体。
【請求項3】
前記第1AlN部材は、イットリアを除く希土類金属酸化物、マグネシア及びチタニアからなる群より選ばれた少なくとも1つの酸化物を含む、
請求項1又は2に記載のAlN接合体。
【請求項4】
前記第1AlN部材は、マグネシア及びチタニアを含む、
請求項3に記載のAlN接合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のAlN接合体であって、
前記第1AlN部材のうち前記第2AlN部材との接合面とは反対側の面に接合された第3AlN部材
を備え、
前記第3AlN部材は、イットリアを含有する、
AlN接合体。
【請求項6】
前記第3AlN部材のイットリア含有率は、0.07質量%以上である、
請求項5に記載のAlN接合体。
【請求項7】
第1AlN部材と第2AlN部材とを接合したAlN接合体であって、
前記第1AlN部材は、接合によって形成された第1拡散層を有し、
前記第2AlN部材は、接合によって形成された第2拡散層を有し、
前記第1AlN部材のうち前記第1拡散層を除く部分のイットリア含有率は、検出限界以下であり、
前記第2AlN部材のうち前記第2拡散層を除く部分は、イットリアを含有する、
AlN接合体。
【請求項8】
前記第2AlN部材のうち前記第2拡散層を除く部分のイットリア含有率は、0.07質量%以上である、
請求項7に記載のAlN接合体。
【請求項9】
前記第1AlN部材は、イットリアを除く希土類金属酸化物、マグネシア及びチタニアからなる群より選ばれた少なくとも1つの酸化物を含む、
請求項7又は8のいずれか1項に記載のAlN接合体。
【請求項10】
前記第1AlN部材は、マグネシア及びチタニアを含む、
請求項9に記載のAlN接合体。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載のAlN接合体であって、
前記第1AlN部材のうち前記第2AlN部材との接合面とは反対側の面に接合され、接合によって形成された第3拡散層を有する第3AlN部材
を備え、
前記第1AlN部材は、前記第3AlN部材との接合によって形成された別の第1拡散層を有し、
前記第1AlN部材のうち2つの前記第1拡散層を除く部分のイットリア含有率は、検出限界以下であり、
前記第3AlN部材のうち前記第3拡散層を除く部分は、イットリアを含有する、
AlN接合体。
【請求項12】
前記第3AlN部材のうち前記第3拡散層を除く部分のイットリア含有率は、0.07質量%以上である、
請求項11に記載のAlN接合体。
【請求項13】
前記第2AlN部材は、ウエハ載置面を有する円形プレートであり、
前記第3AlN部材は、前記円形プレートよりも小径の筒状シャフトであり、
前記第1AlN部材は、前記円形プレートと前記筒状シャフトとの間に挟まれたリングである、
請求項5,6,11又は12に記載のAlN接合体。
【請求項14】
前記第2AlN部材は、ヒータを埋設したウエハ載置面を有する第2円形プレートであり、
前記第3AlN部材は、筒状シャフトと接合された第3円形プレートであり、
前記第1AlN部材は、前記円第2形プレートと前記第3円形プレートとの間に挟まれた第1円形プレートである、
請求項5,6,11又は12に記載のAlN接合体。
【請求項15】
前記円形プレートは、溝を有する、
請求項13に記載のAlN接合体。
【請求項16】
前記第1~第3円形プレートが積層された積層プレートは、溝を有する、
請求項14に記載のAlN接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlN接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハを載置するウエハ載置面を有し抵抗発熱体を内蔵したAlN製のプレートと、プレートのウエハ載置面とは反対側の裏面に接合されたAlN製の筒状シャフトとを備えたセラミックヒータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したセラミックヒータは、例えば、5質量%のイットリアを含んだAlN製のプレートと、5質量%のイットリアを含んだAlN製の筒状シャフトとを、融剤を塗って接合して製造される。近年、プレートの外周温度を熱電対で測定するために、プレートに熱電対用の溝を設けることがある。また、ウエハに成膜する際の対策として、プレートにガスパージ用の溝を設けることがある。そのため、このような溝が形成されたプレートに筒状シャフトを接合することを検討した。そうしたところ、従来の接合方法では、溝を起点としたクラックが生じることが分かった。クラックの発生は、接合時のプレス圧が高いことにある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、良好に接合され且つクラックのないAlN接合体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のAlN接合体の一態様は、
第1AlN部材と第2AlN部材とを接合したAlN接合体であって、
前記第1AlN部材のイットリア含有率は、検出限界以下であり、
前記第2AlN部材は、イットリアを含有する、
ものである。
【0007】
本発明のAlN接合体の別の態様は、
第1AlN部材と第2AlN部材とを接合したAlN接合体であって、
前記第1AlN部材は、接合によって形成された第1拡散層を有し、
前記第2AlN部材は、接合によって形成された第2拡散層を有し、
前記第1AlN部材のうち前記第1拡散層を除く部分のイットリア含有率は、検出限界以下であり、
前記第2AlN部材のうち前記第2拡散層を除く部分は、イットリアを含有する、
ものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1~
図4はAlN接合体10~40の正面図、
図5はセラミックヒータの縦断面図(中心軸を含む面で切断したときの断面図)である。以下の説明において、上下、左右、前後は
図1に示す通りとする。なお、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0010】
図1に示すAlN接合体10は、第1AlN部材11と第2AlN部材12とを融剤(接合用のペースト)を用いて接合したものである。融剤としては、例えば、カルシア(CaO)とアルミナ(Al
2O
3)とイットリア(Y
2O
3)を含むものを用いることができる。第1AlN部材11と第2AlN部材12は、同じ大きさの円板部材である。第1AlN部材11のイットリア含有率は検出限界以下であり、第2AlN部材12は、イットリアを含有する。第2AlN部材12のイットリア含有率は、0.07質量%以上であることが好ましい。第1AlN部材11は、イットリアを除く希土類金属酸化物、マグネシア(MgO)及びチタニア(TiO
2)からなる群より選ばれた少なくとも1つの酸化物を含むことが好ましい。酸化物の総添加量は、例えば0.1~3質量%とすることができる。希土類酸化物としては、例えばセリア(CeO
2)やサマリア(Sm
2O
3)などが挙げられる。第1AlN部材11は、イットリアを除く希土類金属酸化物又はマグネシアとチタニアとを含むことが好ましく、マグネシアとチタニアとを含むことがより好ましい。
【0011】
図2に示すAlN接合体20は、AlN接合体10の第1AlN部材11のうち第2AlN部材12との接合面とは反対側の面に、融剤を用いて第3AlN部材13を接合したものである。融剤としては、例えば、カルシアとアルミナとイットリアを含むものを用いることができる。第3AlN部材13は、第1及び第2AlN部材11,12と同じ大きさの円板部材である。第3AlN部材13は、イットリアを含有する。第3AlN部材13のイットリア含有率は、0.07質量%以上であることが好ましい。
【0012】
図3に示すAlN接合体30は、第1AlN部材31と第2AlN部材32とを融剤を用いて接合したものである。融剤としては、例えば、カルシア(CaO)とアルミナ(Al
2O
3)とイットリア(Y
2O
3)を含むものを用いることができる。第1AlN部材31と第2AlN部材32は、同じ大きさの円板部材である。第1AlN部材31は、接合によって形成された第1拡散層31aを有する。第2AlN部材32は、接合によって形成された第2拡散層32aを有する。第1及び第2拡散層31a,32aは、融剤成分が拡散した層である。第1AlN部材31のうち第1拡散層31aを除く部分のイットリア含有率は、検出限界以下であり、第2AlN部材32のうち第2拡散層32aを除く部分は、イットリアを含有する。第2AlN部材32のうち第2拡散層32aを除く部分のイットリア含有率は、0.07質量%以上であることが好ましい。第1AlN部材31は、イットリアを除く希土類金属酸化物、マグネシア(MgO)及びチタニア(TiO
2)からなる群より選ばれた少なくとも1つの酸化物を含むことが好ましい。酸化物の総添加量は、例えば0.1~3質量%とすることができる。希土類酸化物としては、例えばセリア(CeO
2)やサマリア(Sm
2O
3)などが挙げられる。第1AlN部材31は、イットリアを除く希土類金属酸化物又はマグネシアとチタニアとを含むことが好ましく、マグネシアとチタニアとを含むことがより好ましい。
【0013】
図4に示すAlN接合体40は、AlN接合体30の第1AlN部材31のうち第2AlN部材32との接合面とは反対側の面に、融剤を用いて第3AlN部材33を接合したものである。融剤としては、例えば、カルシアとアルミナとイットリアを含むものを用いることができる。第3AlN部材33は、第1及び第2AlN部材31,32と同じ大きさの円板部材である。第1AlN部材31は、第3AlN部材33との接合によって形成された別の第1拡散層31aを有する。第3AlN部材33は、接合によって形成された第3拡散層33aを有する。第3拡散層33aは、融剤成分が拡散した層である。第1AlN部材31のうち2つの第1拡散層31aを除く部分のイットリア含有率は、検出限界以下である。第3AlN部材33のうち第3拡散層33aを除く部分は、イットリアを含有する。第3AlN部材33のうち第3拡散層33aを除く部分のイットリア含有率は、0.07質量%以上であることが好ましい。
【0014】
図5に示すセラミックヒータ50は、ウエハ載置面52aを有し抵抗発熱体52bが埋設された円形プレート52と、円形プレート52よりも小径の筒状シャフト53と、円形プレート52と筒状シャフト53との間に挟まれた中間リング51とを備える。円形プレート52は、内部に半径方向に沿って設けられた熱電対溝52cを有する。筒状シャフト53は、円形プレート52に対向する側にフランジ53aを有する。中間リング51と円形プレート52は融剤を用いて接合され、中間リング51と筒状シャフト53も融剤を用いて接合されている。融剤としては、例えば、カルシアとアルミナとイットリアを含むものを用いることができる。接合方法は、
図6に示すように、まず円形プレート52のウエハ載置面52aが下になるように円形プレート52を作業台に載せ、ウエハ載置面52aとは反対側の面に融剤Pをリング状に塗布し、その上に中間リング51を載せ、中間リング51の上面に融剤Pを塗布し、その上に筒状シャフト53をフランジ53aが下になるように載せる。この状態で、フランジ53aに上から荷重(例えば10~40kg/cm
2)を加え、所定の接合温度(例えば1600~1700℃)で処理する。
図5において、円形プレート52は、上述した第2AlN部材12,32に相当し、筒状シャフト53は、上述した第3AlN部材13,33に相当し、中間リング51は、上述した第1AlN部材11,31に相当する。なお、熱電対溝52cに代えて又は加えて、ウエハに成膜する際の対策として円形プレート52にガスパージ用の溝を設けてもよい。
【0015】
図7に示すセラミックヒータ60は、ウエハ載置面62aを有し抵抗発熱体(ヒータ)62bが埋設された第2円形プレート62と、筒状シャフト64と接合された第3円形プレート63と、第2円形プレート62と第3円形プレート63との間に挟まれた第1円形プレート61とを備える。第1~第3円形プレート61~63は、融剤を用いて互いに接合されて積層プレート65を形成する。融剤としては、例えば、カルシアとアルミナとイットリアを含むものを用いることができる。積層プレート65は、内部に半径方向に沿って設けられた熱電対溝66を有する。熱電対溝66は、第1円形プレート61に形成された直線溝61cと、第3円形プレート63を上下方向に貫通する貫通穴63cとによって構成される。筒状シャフト64は、第3円形プレート63に対向する側にフランジ64aを有し、フランジ64aが第3円形プレート63と接合されている。接合は、
図6に準じて行うことができる。
図7において、第2円形プレート62は、上述した第2AlN部材12,32に相当し、第3円形プレート63は、上述した第3AlN部材13,33に相当し、第1円形プレート61は、上述した第1AlN部材11,31に相当する。なお、熱電対溝66に代えて又は加えて、ウエハに成膜する際の対策として積層プレート65にガスパージ用の溝を設けてもよい。
【0016】
以上詳述した実施形態のAlN接合体10~40やセラミックヒータ50,60によれば、各部材を低荷重で接合することができる。そのため、良好に接合されると共に、各部材にクラックが発生しにくい。また、接合に用いる融剤の染み出し量が少なくなり、使用時に発生するパーティクルの量も少なくなる。更に、各部材の変形が少なくなる。
【0017】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0018】
例えば、上述した実施形態では、第1~第3AlN部材11~13として同じ大きさの円板部材を例示したが、これに限定されない。例えば、第1~第3AlN部材11~13は、それぞれ異なる形状で異なる大きさのものであってもよい。第1~第3AlN部材31~33についても同様である。
【0019】
上述した実施形態では、融剤(接合用のペースト)を用いたが、融剤の代わりに接合用のシートを用いてもよい。
【0020】
また、イットリアを含んだ厚いAlNプレート同士を、イットリアを含まない(検出限界以下)薄いAlNプレートを介して挟んで焼成することにより、熱伝導率の高い積層型AlNプレートを得るようにしてもよい。AlNプレートは、イットリア含有率が高いほど熱伝導率が高い。得られた積層型AlNプレートは、イットリアを含んだプレートが占める割合が多いため、熱伝導率が良好になる。
【0021】
プレートの接合によりプレート内に熱電対溝、ガス溝などを設けるにあたり、より低い圧力で焼成することができ、変形を予防できるとともに、熱伝導率のよいプレートを作成することができる。
【0022】
イットリアを含む窒化アルミとイットリアが検出限界以下の窒化アルミを交互に重ねることにより、3層以上重ねることもできる。
【実施例0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
[実施例1]
1.円形プレートの作製
AlN原料粉末にY2O3粉末を添加してボールミルにより混合して混合粉末とし、これをスプレードライにて顆粒化した。Y2O3粉末は全体に対して5質量%となるように添加した。続いて、得られた顆粒を用いて、円盤形状の成形体を作製した。そして、この成形体をホットプレス焼成することによりAlN焼結体である円形プレートを作製した。ホットプレス焼成では、焼成時の最高温度(焼成温度)を1650~1850℃、焼成温度でのキープ時間を2時間、プレス圧力を20MPa、雰囲気を窒素雰囲気とした。
【0025】
2.筒状シャフトの作製
AlN原料粉末に硝酸イットリウム水和物を添加してボールミルにより混合して混合粉末とし、これをスプレードライにて顆粒化した。Y2O3粉末は焼結体中の含有量が5質量%となるように添加した。続いて、得られた顆粒を用いて、成形体を作製した。そしてこの成形体を常圧焼成することによりAlN焼結体(筒状シャフト)を作製した。焼成時の最高温度(焼成温度)を1750~1900℃、焼成温度でのキープ時間を1~5時間、雰囲気を窒素雰囲気とした。
【0026】
3.中間リングの作製
AlN原料粉末にMgO粉末、TiO2粉末を添加してボールミルにより混合して混合粉末とし、これをスプレードライにて顆粒化した。MgO粉末は焼結体中の含有量が1質量%、TiO2粉末は焼結体中の含有量が0.5質量%となるように添加した。続いて、得られた顆粒を用いて、成形体を作製した。そして、この成形体をホットプレス焼成することによりAlN焼結体を作製した。ホットプレス焼成では、焼成時の最高温度(焼成温度)を1750~1850℃、焼成温度でのキープ時間を1~5時間、プレス圧力を20MPa、雰囲気を窒素雰囲気とした。焼成後の板の中央部を機械加工でくり抜いて、厚さ3mmの中間リングを作製した。なお、中間リングはリング形状に成形したあと焼成してもよい。
【0027】
4.接合体の作製
融剤(接合用のペースト)を以下のようにして調製した。ペーストは、(a)CaOとAl
2O
3とY
2O
3とを合計100となるように質量比35~40:42~47:17~22で混合した混合粉を1330~1390℃で熱処理して合成粉を得る工程と、(b)合成粉とAlN粉末とを質量比100:60~70で混合したあと平均粒径が30μm以下となるように粉砕して粉砕粉を得る工程と、(c)エタノールを溶媒として混錬して作製した。円形プレート、筒状シャフト、中間リング及び融剤を用いて、接合体(シャフト付きプレート)を以下のようにして作製した。
図6のように、下から順に円形プレート、ペースト、中間リング、ペースト、筒状シャフトを積層した。接合は、最高温度1600~1700℃、荷重10~40kg/cm
2、窒素雰囲気で行った。なお、融剤の代わりに、接合用のシートを用いてもよい。
【0028】
5.評価
得られた接合体について、超音波探傷装置によって接合面の欠陥有無を検査したところ、接合面に欠陥は確認されなかった。また、接合面のSEM写真を観察したところ、接合面に欠陥は見られず、良好な接合性を有していることを確認した。接合体の外観を観察したところ、円形プレートと筒状シャフトは白色、中間リングはグレー(TiO2の影響と思われる)であった。中間リングには、円形プレートとの接合面の近傍や筒状シャフトとの接合面の近傍に融剤成分が拡散した拡散層が見られたが、これらの拡散層以外の部分のY2O3含有率を高周波誘導結合プラズマ発光分析(ICP-AES9で測定したところ、検出限界以下(5質量ppm以下)であった。円形プレートには、中間リングとの接合面の近傍に拡散層が見られたが、この拡散層以外の部分のY2O3含有率を同様にして測定したところ、5質量%であった。筒状シャフトには、中間リングとの接合面の近傍に拡散層が見られたが、この拡散層以外の部分のY2O3含有率を同様にして測定したところ、5質量%であった。また、接合強度は、JIS1601にしたがって4点曲げ方式で測定したところ、370MPaであった。
【0029】
[比較例1]
実施例1と同様の円形プレートと筒状シャフトを用いて、接合体を以下のようにして作製した。すなわち、円形プレートと筒状シャフトとの間に実施例1と同様の融剤を塗布し、接合した。接合は、最高温度1630℃、荷重80kg/cm2、窒素雰囲気で行った。得られた接合体を目視したところ、円形プレートにクラックが発生していた。
【0030】
[比較例2]
実施例1と同様の円形プレートと筒状シャフトを用いて、接合体を以下のようにして作製した。すなわち、円形プレートと筒状シャフトとの間に実施例1と同様の融剤を塗布し、接合した。接合は、最高温度1630℃、荷重40kg/cm2、窒素雰囲気で行った。得られた接合体は、接合強度が低く、SEM観察の結果、接合界面に融剤が凝集していることが確認された。
【0031】
なお、上記実施例1では、イットリアを5質量%含む円形プレートと、イットリアを5質量%含む筒状シャフトとを、イットリアが低濃度である中間リングを挟んで接合したが、イットリアを5質量%含む円形プレートと、イットリアが低濃度の筒状シャフトとを、中間リングを挟むことなく接合してもよい。
【0032】
また、イットリアを数質量%含む円形プレートと、円形プレートより低濃度のイットリアを含む筒状シャフトとを、円形プレートおよび筒状シャフトよりもイットリアが低濃度の中間リングを挟んで接合してもよい。この場合、イットリアが検出限界以下の中間リングを用いることにより、より強度の高い接合体を得ることができる。
10,20,30,40 AlN接合体、11,31 第1AlN部材、12,32 第2AlN部材、13,33 第3AlN部材、31a 第1拡散層、32a 第2拡散層、33a 第3拡散層、50 セラミックヒータ、51 中間リング、52 円形プレート、52a ウエハ載置面、52b 抵抗発熱体、52c 熱電対溝、53 筒状シャフト、53a フランジ、60 セラミックヒータ、61 第1円形プレート、61c 直線溝、62 第2円形プレート、62a ウエハ載置面、62b 抵抗発熱体、63 第3円形プレート、63c 貫通穴、64 筒状シャフト、64a フランジ部、65 積層プレート、66 熱電対溝。