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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124531
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】運転切替装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20240905BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W60/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109578
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2023005023の分割
【原出願日】2016-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤栄 哲也
(57)【要約】
【課題】ドライバーの負担を軽減することができる運転切替装置を提供する。
【解決手段】次区間通過予測時間算出部2が次区間距離Dを取得して、その次区間距離Dと走行速度Sとに基づいて通過予測時間T1を算出する。そして、運転モード切替判定部4は、次区間通過予測時間算出部2が算出した自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間についての通過予測時間T1が運転モード切替時間T2の2倍に余裕値αを加算した時間未満の場合、車両を自動走行させる自動運転モードと手動で走行させる手動運転モードとを切り替える運転モード切替部5における切り替えを行わないように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モードと手動運転モードを切り替える切替部と、
自動運転推奨区間では前記自動運転モードに、手動運転推奨区間では前記手動運転モードになるように前記切替部を制御する切替制御部と、を備え、
前記切替制御部は、前記自動運転推奨区間と前記手動運転推奨区間の一方から他方に切り替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、前記切替部の切り替えを行わないように制御する、
ことを特徴とする運転切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の自動運転に際しては、自動運転をしてもよい区間(自動運転推奨区間)と、手動運転が推奨される区間(手動運転推奨区間)と、に分けて、それぞれの区間に応じて自動運転と手動運転とを切り替えて走行することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高速道路区間が自動運転区間(自動運転推奨区間)に設定されている場合に、その高速道路区間の出口ICの一つ手前のPA(最終PA)を退避エリアとして設定し、高速道路区間における最終PAの手前の地点を自動運転から手動運転への引き継ぎを開始するための引継地点として設定し、自動運転スイッチ5がオンに切り換えられると、退避エリアを目的地として自動運転を行うように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-290680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した自動運転推奨区間と手動運転推奨区間とを設定する方式において、例えば、手動運転推奨区間→自動運転推奨区間→手動運転推奨区間と短時間で切り替わる場合、短時間の自動運転が行われることにより、ドライバーが戸惑い却って負担となる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、例えば、ドライバーの負担を軽減することができる運転切替装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、自動運転モードと手動運転モードを切替える切替部と、自動運転推奨区間では前記自動運転モードに、手動運転推奨区間では前記手動運転モードになるように前記切替部を制御する切替制御部と、を備え、前記切替制御部は、前記自動運転推奨区間と前記手動運転推奨区間の一方から他方に切替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、前記切替部の切り替えを行わないように制御する、ことを特徴としている。
【0008】
請求項8に記載の発明は、自動運転推奨区間では前記自動運転モードにかかる情報に、手動運転推奨区間では前記手動運転モードにかかる情報になるように提示部の提示情報を切り替えて制御する切替制御部を備え、前記切替制御部は、前記自動運転推奨区間と手動運転推奨区間の一方から他方に切り替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、前記提示情報の切り替えを行わないように制御する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項9に記載の発明は、自動運転モードと手動運転モードを切替える切替部を備える運転切替装置の運転切替方法であって、自動運転推奨区間では前記自動運転モードに、手動運転推奨区間では前記手動運転モードになるように前記切替部を制御する切替制御工程を含み、前記切替制御工程は、前記自動運転推奨区間と前記手動運転推奨区間の一方から他方に切替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、前記切替部の切り替えを行わないように制御する、ことを特徴としている。
【0010】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の運転切替方法を、コンピュータにより実行させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施例にかかる運転切替装置のブロック構成図である。
図2図1に示された運転切替装置の動作のフローチャートである。
図3】運転モード切り替えの具体例を示した説明図である。
図4】運転モード切り替えの具体例を示した説明図である。
図5】本発明の第2の実施例にかかる運転切替装置のブロック構成図である。
図6図5に示された運転切替装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる運転切替装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる運転切替装置は、自動運転モードと手動運転モードを切り替える切替部と、自動運転推奨区間では自動運転モードに、手動運転推奨区間では手動運転モードになるように切替部を制御する切替制御部と、を備えている。そして、切替制御部は、自動運転推奨区間と手動運転推奨区間の一方から他方に切り替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、切替部の切り替えを行わないように制御する。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離や走行時間によってはモードの切り替えを行わないようにして、頻繁な切り替えに伴うドライバーの負担を軽減することができる。
【0013】
また、切替制御部は、走行距離が所定距離未満の場合、切替部における切り替えを行わないように制御してもよい。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離が短い場合、頻繁なモードの切り換えが発生すると見做して、モード切り替えを抑制することができる。
【0014】
また、切替制御部は、走行時間が所定時間未満の場合、切替部における切り替えを行わないように制御してもよい。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間を走行時間が短い場合、頻繁なモードの切り換えが発生すると見做して、モード切り替えを抑制することができる。
【0015】
また、車両の速度を取得する速度取得部を更に備え、切替制御部は、走行距離及び速度により走行時間を予測し、当該走行時間に基づいて切替部における切り替えを制御するようにしてもよい。このようにすることにより、走行距離と走行速度から走行時間が予測できるので、車両から得られる情報に基づいて容易に切替部の制御をすることができる。
【0016】
また、所定時間は、自動運転モードと手動運転モードとの切り替えに要する時間及び速度に基づいて定めてもよい。このようにすることにより、装置の動作上必要な最低限の時間を確保し、更に速度を考慮することで、走行速度が速いときは運転モードの切り替えを発生しにくくできる。
【0017】
また、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間における渋滞情報を取得する渋滞情報取得部を更に備え、切替制御部は、渋滞情報を考慮して走行時間を予測し、当該走行時間に基づいて、切替部における切り替えを制御してもよい。このようにすることにより、渋滞情報を考慮して走行時間をより精度良く予測して、切替部の制御をすることができる。
【0018】
また、自動運転モードと手動運転モードとで車両の搭乗者に異なる情報を提示する提示部を更に備えてもよい。このようにすることにより、提示部に情報を提示する際に、頻繁な表示の切り替えにより、搭乗者が煩わしく感じてしまうことを少なくすることができる。
【0019】
また、本発明の他の実施形態にかかる運転切替装置は、自動運転推奨区間では自動運転モードにかかる情報に、手動運転推奨区間では手動運転モードにかかる情報になるように提示部の提示情報を切り替えて制御する切替制御部を備えている。そして、切替制御部は、自動運転推奨区間と手動運転推奨区間の一方から他方に切り替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、前記提示情報の切り替えを行わないように制御する。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離や走行時間によっては提示情報を切り替え行わないようにして、頻繁な切り替えに伴う画面等のちらつき等によるドライバーの負担を軽減することができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態にかかる運転切替方法は、自動運転推奨区間では自動運転モードに、手動運転推奨区間では手動運転モードになるように切替部を制御する切替制御工程を含んでいる。そして、切替制御工程は、自動運転推奨区間と手動運転推奨区間の一方から他方に切り替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、切替部の切り替えを行わないように制御する。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離や走行時間によってはモードの切り替えを行わないようにして、頻繁な切り替えに伴うドライバーの負担を軽減することができる。
【0021】
また、上述した運転切替方法をコンピュータにより実行させる運転切替プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離や走行時間によってはモードの切り替えを行わないようにして、例えば短時間のモード切り替えを抑制しドライバーの負担を軽減することができる。
【実施例0022】
本発明の第1の実施例にかかる運転切替装置を図1乃至図4を参照して説明する。本実施例にかかる運転切替装置1は、図1に示したように次区間通過予測時間算出部2と、α値算出部3と、運転モード切替判定部4と、運転モード切替部5と、を備えている。
【0023】
運転切替装置1は、例えばECU(Electronic Control Unit)として自動車等の車両に搭載される。そして、上述した次区間通過予測時間算出部2、α値算出部3、運転モード切替判定部4、運転モード切替部5はECUが有するマイクロコントローラ(マイコン)が機能する。つまり、マイコン上で動作する運転切替制御プログラムとして構成される。勿論、プログラムではなく図1の各ブロックの全て又は一部をハードウェアとしてもよい。
【0024】
本実施例においては、運転切替装置1が搭載される車両は自動運転による走行が可能なものとする。即ち、自動運転モードと手動運転モードとを切り替えることが可能となっている。
【0025】
また、車両が走行する道路は自動運転で走行してもよい区間である自動運転推奨区間と手動運転が推奨される区間である手動運転推奨区間とが設定されている。これらの区間は、国や地方自治体等により公的に定められてもよいし、自動車メーカーやナビゲーションシステム等の機器メーカー等の事業者が任意に定めてもよい。或いは、車両の使用者が個人的に設定して定めてもよい。
【0026】
そして、本実施例では、ナビゲーションシステム10において車両が走行する経路が探索される。ナビゲーションシステム10は、周知のように、目的地までの経路を探索し、GPS(Global Positioning System)等により現在地を取得して、表示や音声等により目的地までの案内をするシステムである。ナビゲーションシステム10が探索した経路には自動運転推奨区間と手動運転推奨区間が含まれるものとする。
【0027】
区間情報取得部、速度取得部としての次区間通過予測時間算出部2は、例えばナビゲーションシステム10から取得した次区間距離Dと、車両の走行速度を検出するセンサ(車速パルス等)から取得した走行速度Sと、に基づいて次区間の通過予測時間T1を算出する。通過予測時間T1は、次区間距離Dを走行速度Sで除算する(T1=D/S)ことで算出される切り替わり後の区間の走行時間である。なお、走行速度Sではなく当該区間の制限速度をナビゲーションシステム10等から取得してその制限速度で算出してもよい。即ち、次区間通過予測時間算出部2は、車両の走行する自動運転推奨区間及び手動運転推奨区間に関する情報を取得している。また、次区間通過予測時間算出部2は、次期間距離D及び走行速度Sにより走行時間を算出(予測)していることから切替制御部としても機能する。
【0028】
ここで、次区間とは、ナビゲーションシステム10が探索した経路上における次の運転モード切り替え発生後の自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間である。つまり、現在自動運転推奨区間を走行中の場合は、次区間は手動運転推奨区間となり、現在手動運転推奨区間を走行中の場合は、次区間は自動運転推奨区間となる。
【0029】
α値算出部3は、運転モード切替判定部4での判定において運転モード切替時間T2に加算される余裕値αを算出する(α≧0)。余裕値αは、例えば車両の走行速度Sに応じて可変にしてもよい。例えば、走行速度Sが早いときはα値を大きくして運転モードの切り替えを起こりにくくすればよい。また、余裕値αは、ドライバーに設定させてもよいし固定値であってもよい。したがって、α値算出部3は、これらの走行速度Sや設定等に基づいて余裕値αを算出する。
【0030】
切替制御部としての運転モード切替判定部4は、通過予測時間T1と、余裕値α及び運転モード切替時間T2と、に基づいて運転モード(自動運転モード又は手動運転モード)の切り替えをするか判定する。運転モード切替時間T2は、自動運転モードから手動運転モード、又は、手動運転モードから自動運転モードへ切り替わる時間であり、各車両あるいはシステム毎に予め測定し設定されている値である。
【0031】
運転モード切替判定部4における判定条件は、次のとおりである。通過予測時間T1が、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値(2×T2+α)未満である場合は運転モードを切り替えない。通過予測時間T1が、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値以上である場合は運転モードを切り替える。運転モード切替時間T2の2倍となっているのは、例えば手動運転モード→自動運転モード→手動運転モードと切り替わる場合は2回運転モードの切り替えが発生するからである。即ち、所定時間(2×T2+α)は、自動運転モードと手動運転モードとの切り替えに要する時間及び走行速度に基づいて定めている。
【0032】
切替部としての運転モード切替部5は、運転モード切替判定部4の判定結果に基づいて運転モードの切り替えを行う。例えば自動運転モードに切り替えられた場合は、アクセル、ブレーキ、ハンドル等が走行する道路や外部の状況に応じて自動的に制御される。
【0033】
また、運転モード切替部5は、HUD(Head Up Display)やメータ内、或いはインストルメントパネルに設けられた表示手段(提示部)等の表示内容(提示情報)がモードによって切り替えられる場合は切り替える。即ち、HUD等が、自動運転モードと手動運転モードとで車両の搭乗者に異なる情報を提示する提示部となる。
【0034】
次に、上述した構成の運転切替装置1の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
まず、ステップS11において、次区間通過予測時間算出部2は、運転モードが異なる区間に入るか否かを判定し、入る場合(YESの場合)はステップS12に進み、そうでない場合(NOの場合)は本ステップで待機する。本ステップでは、次区間通過予測時間算出部2がナビゲーションシステム10から取得した経路情報に基づいて運転モードが現在と異なる区間(運転モードの切り替えが発生する可能性がある地点)に近づいた場合に判定する。
【0036】
次に、ステップS12において、次区間通過予測時間算出部2は、ナビゲーションシステム10から取得した次区間距離D及び速度センサ等から取得した走行速度Sに基づいて切り替え先の通過予測時間T1を算出してステップS3に進む。
【0037】
次に、ステップS13において、運転モード切替判定部4は、α値算出部3から余裕値αを取得してステップS14に進む。なお、余裕値αは定数の場合はα値算出部3に設定されている値を読み出し、変数の場合はα値算出部3がα値を算出して出力する。
【0038】
次に、ステップS14において、運転モード切替判定部4は、通過予測時間T1が運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値未満(2×T2+α>T1)か否かを判定する。運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値未満の場合(YESの場合)はステップS15に進み、運転モード切替時間T2の2倍とα値との加算値以上の場合(NOの場合)はステップS16に進む。
【0039】
次に、ステップS15において、ステップS14の判定の結果、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値未満であったので、運転モード切替部5は、運転モードを切り替えずに現在のモードを継続する。即ち、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間についての走行時間が所定時間未満の場合は、自動運転推奨区間と手動運転推奨区間との一方から他方に切り替わる場合であっても、運転モード切替部5(切替部)における切り替えを行わないように制御している。なお、運転モードを切り替えない場合は、ドライバー等にその旨を通知することが望ましい。
【0040】
一方、ステップS16においては、ステップS14の判定の結果、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値以上であったので、運転モード切替部5は、運転モードを切り替える。
【0041】
上述した説明から明らかなように、ステップS11が区間情報取得工程、ステップS12~S16が切替制御工程として機能する。
【0042】
ここで、運転切替装置1の動作の具体例を図3を参照して説明する。図3は、国道Nが交差点I1で市道R1と交差し、交差点I2で市道R2と交差している。そして、車両が走行する経路RTとして、市道R1から交差点I1で国道Nに右折して、次の交差点I2で市道R2に左折するものとする。また、国道Nは自動運転推奨区間、市道R1、R2は手動運転推奨区間となっているものとする。
【0043】
この図3の例において、交差点I1とI2で運転モードの切り替えが発生するため、この区間の通過予測時間T1が運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αの加算値未満であった場合は、運転モードの切り替えが頻繁に発生し、短時間の運転モードの切り替えによってドライバーにとって負担となる可能性がある。また、運転モードに応じてHUDやメータ、或いはインストルメントパネルに設けられた表示手段内の表示を切り替える場合に、短時間の切り換えにより画面がちらついて見える場合がある。そこで、上記条件(2×T2+α>T1)を満たす場合は、自動運転推奨区間から手動運転推奨区間に切り替わる場合であっても、自動運転モードに切り替えない。
【0044】
なお、図3の例では、交差点間が短い場合で説明したが、例えば図3で市道R1を直進した場合に、交差点I1で国道Nを横断する際に一瞬自動運転モードに切り替わるのを防止することも可能である。
【0045】
また、上述した説明は、手動運転推奨区間に短区間(短時間)の自動運転推奨区間が挟まれる場合であったが、逆でも同様に制御する。つまり、図4上段に示したように、自動運転推奨区間に短区間(短時間)の手動運転推奨区間が挟まれていた場合は運転モードを切り替えないようにする。
【0046】
更には、図4下段のように、短区間(短時間)の自動運転推奨区間や手動運転推奨区間が連続する場合であっても、それらの区間では運転モードの切り替えを行わないようにする。図4下段の場合、地点p1、p2では運転モードの切り替えは行わずに、地点p3で運転モードの切り替えを行う。
【0047】
図4下段のような場合、次区間が運転モードを切り替えないと判定されたときは、その次の区間についても距離Dや走行速度S等から切り替えるかの判定を引き続き行ってもよい。つまり、次の1区間に限らず複数の区間について判定を行ってもよい。例えば地点p1で運転モードを切り替えないと判定した場合は、引き続き地点p2やp3で運転モードを切り替えるか判定する。このようにすることにより、図4下段のような短区間(短時間)の自動運転推奨区間や手動運転推奨区間が連続する範囲についてまとめて予め判定することができる。
【0048】
本実施例によれば、運転切替装置1は、自動運転モードと手動運転モードを切り替える運転モード切替部5と、自動運転推奨区間では自動運転モードに、手動運転推奨区間では手動運転モードになるように運転モード切替部5を制御する運転モード切替判定部4と、を備えている。そして、自動運転推奨区間と手動運転推奨区間の一方から他方に切替わる場合であっても、次区間通過予測時間算出部2が算出した自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間についての通過予測時間T1が運転モード切替時間T2の2倍に余裕値αを加算した時間未満の場合、運転モード切替判定部4が運転モード切替部5の切り替えを行わないように制御する。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行時間が短い場合、頻繁な運転モードの切り換えが発生すると見做して、運転モードの切り替えを行わないようにして、短時間の運転モード切り替えを抑制し、ドライバーの負担を軽減することができる。
【0049】
また、運転モード切替判定部4は、次区間距離Dと走行速度Sから通過予測時間T1を算出しているので、車両から得られる情報に基づいて容易に運転モード切替部5の制御をすることができる。
【0050】
なお、上述した実施例において、例えば次区間通過予測時間算出部2がVICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)等により経路上の渋滞情報を取得して、その渋滞情報を考慮した通過予測時間T1を算出してもよい。即ち、次区間通過予測時間算出部2が、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の渋滞情報を取得する渋滞情報取得部として機能する。このようにすることにより、渋滞情報を考慮して通過予測時間T1をより精度良く推測して、運転モード切替部5の制御をすることができる。
【0051】
また、上述した実施例では、通過予測時間T1を算出して運転モードの切り替えを行うか判定していたが、通過予測時間T1を算出せずに自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間の走行距離(次区間距離D)に基づいて運転モードの切り替えを行うか判定してもよい。例えば、図3であれば、国道Nを走行する距離が、運転モードの切り替え等を考慮して定めた所定距離未満であった場合は運転モードを切り替えない。即ち、走行距離が所定距離未満の場合、切替部における切り替えを行わないようにしてもよい。このようにすることにより、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間が短い場合、頻繁なモードの切り換えが発生すると見做して、運転モードの切り替えを抑制することができる。
【0052】
また、走行距離に基づいて運転モードの切り替えを制御する場合、走行する道路の制限速度に応じて所定距離を可変にしてもよい。例えば制限速度30km/hの道路よりも制限速度60km/hの道路の所定距離を長くする。
【実施例0053】
次に、本発明の第2の実施例にかかる運転切替装置を図5及び図6を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施例は、運転モード切替判定部4による判定までは第1の実施例と同様であるが、運転モード切替部5が表示切替部5Aとなっている点が異なる。表示切替部5Aは、運転モード切替判定部4の判定結果に基づいて表示部20の表示内容を運転モードに応じた表示に切り替える。
【0055】
表示部20は、例えばHUDやメータ、或いはインストルメントパネルに設けられた表示手段であり、運転モードに応じて表示が切り替わる。例えば、手動運転モードの場合は、ナビゲーションシステム10の案内情報等の運転に必要な情報等(手動運転モードにかかる情報)を表示し、自動運転モードの場合は、周辺施設情報やエンターテインメント情報等(自動運転モードにかかる情報)を表示する。即ち、表示部20は、運転モードに応じて搭乗者に異なる情報を提示する提示部として機能する。
【0056】
図6に本実施例にかかる運転切替装置1の動作を示す。図6において、ステップS11~S14までは第1の実施例と同様である。ステップS25において、ステップS14の判定の結果、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値未満であったので、表示切替部5Aは、表示部20の表示内容を切り替えずに、現在のモードに対応する表示を継続する。
【0057】
一方、ステップS26においては、ステップS14の判定の結果、運転モード切替時間T2の2倍と余裕値αとの加算値以上であったので、表示切替部5Aは、表示部20の表示内容を運転モードに合わせて切り替える。
【0058】
即ち、表示切替部5Aは、自動運転推奨区間及び手動運転推奨区間の2つの区間の何れかから他方に切替わる場合であっても、切り替わり後の区間の走行距離及び走行時間の少なくとも一方に基づいて、提示情報の切り替えを行わないように制御する切替制御部として機能する。
【0059】
なお、本実施例ではステップS14の判定条件は第1の実施例と同様であったが、本実施例では、表示の切り替えの制御を特徴とするものであるので、例えば、通過予測時間T1が、表示部20のちらつきを感じない時間未満であった場合には切り替えを行わないとしてもよい。つまり、第1の実施例と異なる閾値であってもよい。
【0060】
本実施例によれば、自動運転推奨区間又は手動運転推奨区間についての通過予測時間T1が所定時間未満の場合、自動運転モードと手動運転モードとで車両の搭乗者に異なる情報を表示する表示部20の表示内容を切り替えないように制御する。このようにすることにより、頻繁な表示の切り替えにより、搭乗者がちらつきを感じること等によるドライバーの負担を軽減することができる。
【0061】
なお、上述した2つの実施例では提示部として表示部20等の表示手段で説明したが、表示に限らず音声による提示も含めてもよい。
【0062】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の運転切替装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1、1A 運転切替装置
2 次区間通過予測時間算出部(区間情報取得部、切替制御部、速度取得部、渋滞情報取得部)
4 運転モード切替判定部(切替制御部)
5 運転モード切替部(切替部)
5A 表示切替部(切替制御部)
20 表示部(提示部)
S11 運転モードが異なる区間に入るか(区間情報取得工程)
S12 切り替え先の区間の通過予測時間を算出(切替制御工程)
S13 α値を取得(切替制御工程)
S14 切り替えるか判定(切替制御工程)
S15 切り替えないように制御する(切替制御工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6