(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124543
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】抗菌抗ウイルス薬、抗菌抗ウイルス部材、及び抗菌抗ウイルス薬の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240905BHJP
A61K 36/282 20060101ALI20240905BHJP
A61K 36/232 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240905BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240905BHJP
A01N 63/22 20200101ALI20240905BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240905BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K36/282
A61K36/232
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/16
A61P31/14
A01N63/22
A01P3/00
A01P1/00
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109971
(22)【出願日】2024-07-09
(62)【分割の表示】P 2022162264の分割
【原出願日】2017-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2016117443
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅親
(72)【発明者】
【氏名】砂原 博文
(57)【要約】
【課題】天然由来成分を有効成分として、様々な種類の真菌を含む菌及びウイルスに対して有効な抗菌抗ウイルス薬を提供する。
【解決手段】
ヨモギ由来のラクトバシラス(Lactobacillus)属を備える抗菌抗ウイルス薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨモギ由来のラクトバシラス(Lactobacillus)属を備える抗菌抗ウイルス薬。
【請求項2】
ヨモギ由来のラクトバシラス(Lactobacillus)属の分泌物を備える抗菌抗ウイルス薬。
【請求項3】
ラクトバシラス(Lactobacillus)属を備える抗菌抗ウイルス薬であって、
前記ラクトバシラス属の種が、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、harbinensis種、vini種、及びnagelii種からなる群から選択される少なくとも一つである、抗菌抗ウイルス薬。
【請求項4】
ラクトバシラス(Lactobacillus)属の分泌物を備える抗菌抗ウイルス薬であって、
前記ラクトバシラス属の種が、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、harbinensis種、vini種、及びnagelii種からなる群から選択される少なくとも一つである、抗菌抗ウイルス薬。
【請求項5】
前記ラクトバシラス属がヨモギ又は明日葉由来である、請求項3又は4に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項6】
真菌を減少させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項7】
前記真菌を24時間以内に減少させる、請求項6に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項8】
前記真菌が白癬菌である、請求項6又は7に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項9】
前記真菌がカンジダである、請求項6又は7に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項10】
エンベロープウイルスを減少させる、請求項1から9のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項11】
前記エンベロープウイルスを24時間以内に減少させる、請求項10に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項12】
前記エンベロープウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項10又は11に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項13】
ノンエンベロープウイルスを減少させる、請求項1から12のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項14】
前記ノンエンベロープウイルスを24時間以内に減少させる、請求項13に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項15】
前記ノンエンベロープウイルスがノロウイルスである、請求項13又は14に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項16】
前記ラクトバシラス属が死菌である、請求項1又は3に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項17】
前記ラクトバシラス属が加熱処理されている、請求項1又は3に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項18】
前記ラクトバシラス属が菌体乾燥物である、請求項1又は3に記載の抗菌抗ウイルス薬。
【請求項19】
部材と、
前記部材表面に配置された、請求項1から18のいずれか1項に係る抗菌抗ウイルス薬と、
を備える、抗菌抗ウイルス部材。
【請求項20】
植物を発酵させ、ラクトバシラス(Lactobacillus)属を備える発酵液を得ることを備える、抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項21】
前記植物がヨモギ又は明日葉である、請求項20に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項22】
前記ラクトバシラス属の種が、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、harbinensis種、vini種、及びnagelii種からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項20又は21に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項23】
前記発酵液に含まれる前記ラクトバシラス属を死菌にすることを更に備える、請求項20から22のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項24】
前記発酵液を加熱することを更に備える、請求項20から23のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項25】
前記発酵液を乾燥させ、菌体乾燥物を得ることを更に備える、請求項20から24のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【請求項26】
前記ラクトバシラス属の分泌物を得ることを更に備える、請求項20から22のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌抗ウイルス薬、抗菌抗ウイルス部材、及び抗菌抗ウイルス薬の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌の一部は、ヒトや動物に対して有害な病原菌に対抗することが知られている。例えば、特許文献1は、月桃由来の菌であるラクトバシラス属のpentosus種をピロリ菌を除菌するために利用することを記載している。ただし、特許文献1は、月桃濃縮発酵液は、カンジダ菌に対しては全く効果が無いと記載している。
【0003】
特許文献2は、ラクトバシラス属のreuteri種が、ロイテリンと称される抗微生物物質を産生し、サルモネラ菌のような細菌やいくつかの真菌の増殖を阻害すると記載している。また、特許文献2は、皮膚障害の治療や予防のために、ラクトバシラス属のfermentum種を使用することを記載している。さらに、特許文献2は、ラクトバシラス属のreuteri種を、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、及びざ瘡プロピオンバクテリウム等を病原菌とする皮膚障害の予防又は治療、並びにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の予防又は治療に使用することも記載している。
【0004】
特許文献3は、ラクトバシラス属のplantarum種が、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌等のグラム陰性細菌及びグラム陽性細菌の増殖を抑制するものの、カンジダ・アルビカンス、及びカンジダ・パラプシロシス等の真菌の増殖を抑制しないことを記載している。
【0005】
特許文献4は、ラクトバシラス-カゼイKE01株が、大腸菌を数週間かけて減少させることを記載している。特許文献5は、ラクトバシラス属のgasseri種が、サルモネラ・エンテリティディスを減少させることを記載している。特許文献6は、酵母と、ラクトバチルス・プランタラムML11-11株からなるバイオフィルムが、枯草菌を減少させることを記載している。
【0006】
特許文献7は、ラクトバシルス属のpentosus種が、カンジダの増殖を抑制することを記載している。しかし、特許文献7は、ラクトバシルス属のpentosus種が、カンジダを減少させることは記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-193619号公報
【特許文献2】特開2014-230541号公報
【特許文献3】特開2010-215641号公報
【特許文献4】特開2010-195778号公報
【特許文献5】特開2012-147759号公報
【特許文献6】特開2013-150598号公報
【特許文献7】特開2007-308504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抗菌剤としてアルコールが用いられることがあるが、セレウス菌、枯草菌、及び納豆菌のような芽胞を形成する細菌は、アルコール耐性を有する。また、アルコールは、発疹、及び皮膚の刺激症状等の副作用をもたらす場合がある。さらに、合成化合物を有効成分とする抗菌薬も、患部を刺激したり、かゆみや痛み等を伴うかぶれ症状を引き起こしたりするおそれがある。そのため、天然由来成分を有効成分とする、様々な種類の真菌を含む菌及びウイルスに対して有効な抗菌抗ウイルス薬が望まれている。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、天然由来成分を有効成分とする、様々な種類の真菌を含む菌及びウイルスに対して有効な抗菌抗ウイルス薬、抗菌抗ウイルス部材、及び抗菌抗ウイルス薬の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス薬は、ヨモギ由来のラクトバシラス(Lactobacillus)属を備える。また、本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス薬は、ヨモギ由来のラクトバシラス属の分泌物を備える。また、本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属を備え、ラクトバシラス属の種が、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、harbinensis種、vini種、及びnagelii種からなる群から選択される少なくとも一つである。また、本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属の分泌物を備え、ラクトバシラス属の種が、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、harbinensis種、vini種、及びnagelii種からなる群から選択される少なくとも一つである。さらに、本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス部材は、部材と、部材表面に配置された、上記の抗菌抗ウイルス薬と、を備える。またさらに、本発明の一側面に係る抗菌抗ウイルス薬の製造方法は、植物を発酵させ、ラクトバシラス属を備える発酵液を得ることを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然由来成分を有効成分として、様々な種類の真菌を含む菌及びウイルスに対して有効な抗菌抗ウイルス薬、抗菌抗ウイルス部材、及び抗菌抗ウイルス薬の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る発酵液に含まれる菌の解析結果を示すグラフと表である。
【
図2】実施例2に係る発酵液に含まれる菌の解析結果を示すグラフと表である。
【
図3】実施例4に係る発酵液の抗菌効果を示すグラフと表である。
【
図4】実施例5に係る発酵液の抗真菌効果を示すグラフと表である。
【
図5】実施例6に係る発酵液の抗ウイルス効果を示すグラフと表である。
【
図6】実施例6に係る発酵液の抗ウイルス効果を示すグラフと表である。
【
図7】実施例7に係る発酵液の抗白癬菌効果を示すグラフと表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部材の組み合わせ等を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス(Lactobacillus)属及びラクトバシラス属の分泌物からなる群から選択される少なくとも一つを含む。ラクトバシラス属は、乳酸桿菌の一種であり、グラム陽性の通性嫌気性菌である。ラクトバシラス属は、糖を発酵して乳酸を産生する。ラクトバシラス属は、ヒトを含む動物の体内にも生息しているが、第1の実施の形態に係るラクトバシラス属としては、植物由来のラクトバシラス属が好ましい。
【0014】
例えば、第1の実施の形態に係るラクトバシラス属は、植物を発酵させて、抽出される。植物としては、ヨモギ、明日葉、延命草、及びココア等が挙げられるが、これらに限定されない。ヨモギ由来のラクトバシラス属は、例えば、parafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、及びharbinensis種等を含む。明日葉由来のラクトバシラス属は、例えば、vini種、及びnagelii種を含む。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属の複数の種を含んでいてもよい。
【0015】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、真菌(カビ)を減少させる。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、真菌を、24時間以内に、80%以上、85%以上、90%以上、あるいは95%以上減少させる。真菌としては、白癬菌、カンジダ、クリプトコックス、及びアスペルギルス等が挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、真菌症の治療薬として使用可能である。真菌症としては、白癬、カンジダ症、クリプトコックス症、及びアスペルギルス症等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、グラム陰性菌及びグラム陽性菌を減少させる。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、グラム陰性菌及びグラム陽性菌を、24時間以内に、80%以上、85%以上、90%以上、あるいは95%以上減少させる。グラム陰性菌としては、大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、肺炎桿菌、及び緑膿菌等が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陽性菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、芽胞を形成するセレウス菌、及び枯草菌等が挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、グラム陰性菌及びグラム陽性菌の消毒薬として使用可能である。
【0017】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ウイルスを減少させる。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、ウイルスを、24時間以内に、80%以上、85%以上、90%以上、あるいは95%以上減少させる。ウイルスは、エンベロープを有するウイルスであるエンベロープウイルス、及びエンベロープを有さないウイルスであるノンエンベロープウイルスを含む。また、ウイルスは、DNAウイルス及びRNAウイルスを含む。
【0018】
エンベロープを有するDNAウイルスとしては、ヒトヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及びB型肝炎ウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
エンベロープを有するRNAウイルスとしては、インフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ラッサウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、麻疹ウイルス、C型肝炎ウイルス、エボラウイルス、黄熱ウイルス、及び日本脳炎ウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
エンベロープを有さないDNAウイルスとしては、アデノウイルス、B19ウイルス、パポバウイルス、及びヒトパピローマウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
エンベロープを有さないRNAウイルスとしては、ノロウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、アストロウイルス、ロタウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、及びサポウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ウイルスの消毒薬として使用可能である。
【0023】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、有効量のラクトバシラス属、及び/又は有効量のラクトバシラス属の分泌物を含む。有効量とは、抗菌又は抗ウイルス効果を奏するために必要な量であり、対象とする菌、ウイルス、及び症状によって適宜決定される。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば0.001重量%以上、0.005重量%以上、あるいは0.01重量%以上の濃度でラクトバシラス属を含む。また、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば20重量%以下、15重量%以下、あるいは10重量%以下の濃度でラクトバシラス属を含むが、より高濃度でラクトバシラス属を含んでもよい。ただし、ラクトバシラス属の濃度が高いと、粘度が高くなる傾向にある。
【0024】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬に含まれるラクトバシラス属は、生菌であってもよいし、例えば加熱処理された死菌であってもよい。したがって、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属の死菌を含んでいてもよい。ラクトバシラス属は、菌体乾燥物であってもよい。ラクトバシラス属の死菌、あるいは菌体乾燥物も、抗菌抗ウイルス効果を奏する。また、ラクトバシラス属の死菌、あるいは菌体乾燥物は、運搬や、長期にわたる保管が容易である。
【0025】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、液体、クリーム、軟膏、硬膏、ジェル、ワックス、及びスプレーであってもよい。また、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、消毒薬、塗布治療薬等の皮膚外用薬、点眼剤、及び内服薬として供される。第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、手足指を含む人体の皮膚、毛、口腔、及び眼球等に適用される。また、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、例えば、調理器具、病院等の建物の壁や床、及び机等の家具にも適用される。
【0026】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属の他に、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、被膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、香料、粉体、色材、及び水等の化粧品及び医薬品の配合成分を目的に応じて適宜含んでいてもよい。
【0027】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、ラクトバシラス属の他に、抗菌性物質あるいは抗ウイルス性物質を目的に応じて適宜含んでいてもよい。
【0028】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬が有効成分とするラクトバシラス属及びその分泌物は、食中毒等の様々な病気の原因になる、様々な種類の真菌を含む菌及びウイルスを減少させることが可能である。また、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬が有効成分とするラクトバシラス属及びその分泌物は、アルコール耐性である芽胞を形成するセレウス菌も減少させることが可能である。
【0029】
さらに、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬が有効成分とするラクトバシラス属は、天然由来の乳酸菌であるため、ヒトに適用しても、副作用等の悪影響がないか、少なく、安全である。またさらに、例えば皮膚外用薬として供された第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬を、仮に、乳児、小児、あるいは老人等が誤飲した場合にも、ラクトバシラス属は飲食可能な乳酸菌であり、腸管内の消化酵素で容易に分解されるため、副作用等の悪影響がないか、少ない。分泌物についても、同様である。
【0030】
第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬は、植物を発酵させ、ラクトバシラス属を含む発酵液を得ることにより製造される。植物を発酵させる際には、塩、及び糖蜜等の糖が植物に添加される。発酵温度は、例えば30℃である。得られる発酵液の水素イオン指数(pH)は、4.0前後である。発酵液から、ラクトバシラス属の分泌物を抽出してもよい。
【0031】
得られた発酵液を加熱し、発酵液に含まれるラクトバシラス属を死菌にしてもよい。また、発酵液を噴霧乾燥し、ラクトバシラス属の菌体乾燥物を得てもよい。菌体乾燥物は、凍結乾燥法及び熱風乾燥法等によっても作製可能である。
【0032】
さらに、得られた発酵液、ラクトバシラス属の菌体、あるいはラクトバシラス属の菌体乾燥物を豆乳に添加し、豆乳を発酵させて豆乳発酵液を得てもよい。豆乳発酵液も、抗菌抗ウイルス効果を奏する。
【0033】
(第2の実施の形態)
第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0034】
第2の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス部材は、部材と、部材表面に配置された、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬と、を備える。部材とは、固体であり、例えば、金属、樹脂、ガラス、セラミック、及び木材等の材料からなるが、材料はこれらに限定されない。例えば、第2の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス部材を製造する際には、第1の実施の形態に係る抗菌抗ウイルス薬を、塗料、染料、顔料、各種樹脂、合成ゴム、ラテックス、フィルム、及び繊維等に配合し、抗菌抗ウイルス薬を配合された材料を、部材表面に塗布、配置、あるいは積層等する。
【0035】
材料における抗菌抗ウイルス薬の配合濃度は、例えば、0.001重量%以上、0.005重量%以上、あるいは0.01重量%以上であり、20重量%以下、15重量%以下、あるいは10重量%以下であり得るが、これらに限定されない。
【実施例0036】
以下に本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されないことはもちろんである。
【0037】
(実施例1:ヨモギ由来のラクトバシラス属)
ヨモギの葉においては、一日のうち、日の出時間を挟む前後1時間、合計2時間の間に、乳酸菌の数が最大化するとされている。また、この時間帯以外においては、乳酸菌が減少し、光合成菌が増加するとされている。したがって、この2時間の間に、ヨモギの葉の先端から約20cmの部分を採取した。採取した6.3kgのヨモギの葉を、すぐさま、中にビニールの袋を敷いた第1の漬物樽に入れ、ヨモギの葉に、3.2kgの糖蜜と0.6kgの粗塩を振りかけた後、ビニール袋の口を閉じて密封した。ビニール袋の上から、重石を載せ、ヨモギの葉を漬け込んだ。
【0038】
漬け汁がヨモギの葉の上まで上がった数日後、重石を外した。次に、第2の漬物樽に、すすぎ洗い出し用の塩素を含まない10Lの水を入れ、水の中に、ヨモギの葉の漬物と、10kgの漬け汁を入れた。さらに、第3の漬物樽を用意し、第3の漬物樽の開口上に金網フィルタを載せた。第2の漬物樽から、手でもみ洗いしながら少しずつヨモギの葉を取り出し、第3の漬物樽の開口上の金網フィルタにヨモギの葉を軽く掌で押さえて、漬け汁を絞った。
【0039】
ヨモギの葉を全て絞った後、第2の漬物汁に残っていた漬け汁を金網フィルタに通してろ過した。次に、第3の漬物樽の中の漬け汁に、糖蜜(波照間黒糖)を終濃度が10重量%となるよう、また粗塩を終濃度が3重量%となるよう溶かし入れた。その後、第3の漬物樽の周囲温度を約30℃にすることにより、発酵を開始させた。最初に大きな泡の発泡が確認され、徐々に細かい泡の発泡に変わっていき、最後に発泡が収まった。約1週間後、発泡が収まった時のpHは、3.8付近であった。このときの漬け汁を、ヨモギ発酵液とした。得られたヨモギ発酵液の一部を70℃で30分間加熱し、菌を死滅させた熱処理ヨモギ発酵液を得た。
【0040】
熱処理をしていないヨモギ発酵液を次世代シーケンサ(MiSeq、Illumina社)で解析したところ、
図1に示すように、ヨモギ発酵液は、ラクトバシラス属のparafarraginis種、parabuchneri種、buchneri種、及びharbinensis種等を含んでいた。なお、次世代シーケンサは、ハイスループットシーケンサとも呼ばれる。また、
図1の表中の数値は、ヨモギ発酵液に含まれていた菌種の菌数を反映している。
【0041】
(実施例2:明日葉由来のラクトバシラス属)
明日葉においては、一日のうち、日の出時間を挟む前後1時間、合計2時間の間に、乳酸菌の数が最大化するとされている。また、この時間帯以外においては、乳酸菌が減少し、光合成菌が増加するとされている。したがって、この2時間の間に、明日葉の新芽の葉茎を採取した。採取した6.3kgの明日葉を、すぐさま、中にビニールの袋を敷いた第1の漬物樽に入れ、明日葉に、3.2kgの糖蜜と0.6kgの粗塩を振りかけた後、ビニール袋の口を閉じて密封した。ビニール袋の上から、重石を載せ、明日葉を漬け込んだ。
【0042】
漬け汁が明日葉の上まで上がった数日後、重石を外した。次に、第2の漬物樽に、すすぎ洗い出し用の塩素を含まない10Lの水を入れ、水の中に、明日葉の漬物と、10kgの漬け汁を入れた。さらに、第3の漬物樽を用意し、第3の漬物樽の開口上に金網フィルタを載せた。第2の漬物樽から、手でもみ洗いしながら少しずつ明日葉を取り出し、第3の漬物樽の開口上の金網フィルタに明日葉を軽く掌で押さえて、漬け汁を絞った。
【0043】
明日葉を全て絞った後、第2の漬物汁に残っていた漬け汁を金網フィルタに通してろ過した。次に、第3の漬物樽の中の漬け汁に、糖蜜を終濃度が10重量%となるよう、また粗塩を終濃度が3重量%となるよう溶かし入れた。その後、第3の漬物樽の周囲温度を約30℃にすることにより、発酵を開始させた。最初に大きな泡の発泡が確認され、徐々に細かい泡の発泡に変わっていき、最後に発泡が収まった。約1週間後、発泡が収まった時のpHは、4.0付近であった。このときの漬け汁を、明日葉発酵液とした。得られた明日葉発酵液の一部を70℃で30分間加熱し、菌を死滅させた熱処理明日葉発酵液を得た。
【0044】
熱処理していない明日葉発酵液を次世代シーケンサ(MiSeq、Illumina社)で解析したところ、
図2に示すように、明日葉発酵液は、vini種、及びnagelii種等を含んでいた。なお、
図2の表中の数値は、明日葉発酵液に含まれていた菌種の菌数を反映している。
【0045】
(実施例3:ラクトバシラス属を用いた豆乳発酵液)
豆乳を70℃に加熱し、約30分間過熱滅菌処理を行った。加熱滅菌処理した豆乳に、実施例1で用意した熱処理していないヨモギ発酵液を、終濃度が約10wt%となるよう加え、十分攪拌した。その後、熱処理ヨモギ発酵液を添加した豆乳を、37℃で24時間発酵させた。発酵させた後、濾過によって固形分を除去し、ラクトバシラス属を含む豆乳発酵液を得た。
【0046】
(実施例4:ラクトバシラス属の抗菌効果)
グラム陽性球菌として黄色ブドウ球菌及びMRSAを用意し、グラム陽性桿菌として枯草菌及びセレウス菌を用意し、グラム陰性球菌として大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、及び肺炎桿菌を用意し、グラム陰性桿菌として緑膿菌を用意した。
【0047】
実施例1で用意した10mLのラクトバシラス属を含む豆乳発酵液に、上記の菌のいずれかを10
7個/mLの濃度で含む0.1mLの菌液を接種し、25℃で作用させ経時的に接種した菌の生菌数を24時間測定した。また、コントロールとして、濃度が1/15mol/L、pH7.2の10mLのリン酸緩衝液に0.1mLの菌液を接種し、25℃で作用させ経時的に接種した菌の生菌数を24時間測定した。その結果、
図3に示すように、ラクトバシラス属を含む豆乳発酵液は、用意した全ての種類の細菌を24時間以内に減少させた。
【0048】
(実施例5:ラクトバシラス属の抗真菌効果)
真菌として、白癬菌及びカンジダを用意した。実施例1で用意した10mLのラクトバシラス属を含む豆乳発酵液に、白癬菌又はカンジダを10
7個/mLの濃度で含む0.1mLの菌液を接種し、25℃で作用させ経時的に接種した菌の生菌数を24時間測定した。また、コントロールとして、濃度が1/15mol/L、pH7.2の10mLのリン酸緩衝液に0.1mLの菌液を接種し、25℃で作用させ経時的に接種した菌の生菌数を24時間測定した。その結果、
図4に示すように、ラクトバシラス属を含む豆乳発酵液は、用意した白癬菌及びカンジダを24時間以内に減少させた。
【0049】
(実施例6:ラクトバシラス属の抗ウイルス効果)
エンベロープウイルスとして、インフルエンザウイルスA型(H1N1)の培養液を用意した。また、ノンエンベロープウイルスとして、ノロウイルス(ネコカリシウイルス)の培養液を用意した。ウイルスの培養液は、精製水で、10倍ずつ段階希釈した。その後、50%組織培養感染量(TCID50:50% Tissue Culture Infectious Dose)に従い、抗ウイルス試験を室温で実施した。抗ウイルス試験は、日本食品分析センターで実施された。
【0050】
その結果、
図5に示すように、ラクトバシラス属を含む豆乳発酵液は、1時間以内でインフルエンザウイルスの感染価を減少させた。また、
図6に示すように、ラクトバシラス属を含む豆乳発酵液は、24時間以内でノロウイルスの感染価を減少させた。
【0051】
(実施例7:ラクトバシラス属の抗白癬菌効果)
実施例1で得られた熱処理していないヨモギ発酵液を噴霧乾燥して、ラクトバシラス属の乾燥菌体を得た。菌体乾燥物が10重量部になるように、得られた菌体乾燥物を水とグリセリンに懸濁し、実施例7に係るラクトバシラス属の懸濁液を得た。ラクトバシラス属の懸濁液を白癬菌に添加し、白癬菌のコロニー形成単位(CFU)を計測したところ、
図7に示すように、ラクトバシラス属の懸濁液は、24時間以内に白癬菌を死滅させた。
【0052】
以上説明した各実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態及び実施例に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態及び実施例が備える各要素などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態及び実施例は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、及びウイルスを減少させる有効量のラクトバシラス(Lactobacillus)属乳酸菌を備えるヨモギ葉発酵液を含む豆乳発酵液を備える抗菌抗ウイルス薬であって、
前記ラクトバシラス属乳酸菌が、parafarraginis種の乳酸菌、parabuchneri種の乳酸菌、buchneri種の乳酸菌、及びharbinensis種の乳酸菌を含む、
抗菌抗ウイルス薬。
グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、及びウイルスを減少させるラクトバシラス(Lactobacillus)属乳酸菌の有効量の分泌物を備えるヨモギ葉発酵液を含む豆乳発酵液を備える抗菌抗ウイルス薬であって、
前記ラクトバシラス属乳酸菌が、parafarraginis種の乳酸菌、parabuchneri種の乳酸菌、buchneri種の乳酸菌、及びharbinensis種の乳酸菌を含む、
抗菌抗ウイルス薬。
抗ウイルス免疫応答上昇剤を除く、請求項1から13のいずれか1項に記載の抗菌抗ウイルス薬。
ヨモギ由来であり、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、及びウイルスを減少させるラクトバシラス(Lactobacillus)属乳酸菌を備えるヨモギ葉発酵液を含む豆乳発酵液であって、
前記ラクトバシラス属乳酸菌が、parafarraginis種の乳酸菌、parabuchneri種の乳酸菌、buchneri種の乳酸菌、及びharbinensis種の乳酸菌を含む、
ヨモギ葉発酵液を含む豆乳発酵液。