(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124561
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】印刷装置の切断機構
(51)【国際特許分類】
B26D 1/30 20060101AFI20240905BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20240905BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20240905BHJP
B65H 35/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B26D1/30 501B
B26D3/08 Z
B26D1/30 501H
B26D1/30 501L
B41J11/70
B65H35/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024110617
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2021207685の分割
【原出願日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】望月 義晃
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で動作の信頼性と耐久性能に優れる印刷装置の切断機構を提供する。
【解決手段】切断刃(37)と刃受け部材(36)とを有し、切断刃からの力を刃受け部材で受けながら切断刃によって被印刷媒体(20)の少なくとも一部を切断するカッター(35)と、刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材(15)と、を備え、刃受け部材は支持部材に隣接して固定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって被印刷媒体の少なくとも一部を切断するカッターと、
前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、
を備え、
前記刃受け部材は、前記支持部材の側面に沿う被支持部と、前記被支持部に対して屈曲して前記支持部材のうち前記被印刷媒体の搬送経路に面する縁部に沿って位置する受け部と、を有し、且つ前記支持部材に隣接して固定され、
前記切断刃は、前記受け部に対して前記支持部材の前記縁部とは反対側から当接し、
前記支持部材の前記縁部は、前記カッターによって前記被印刷媒体の一部が切断される場合に、前記被印刷媒体の幅方向において前記被印刷媒体の通過領域を跨いだ2箇所で、前記受け部に対して当接することを特徴とする印刷装置の切断機構。
【請求項2】
被印刷媒体の厚みの一部を切断するハーフカッターを構成する切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって前記被印刷媒体の少なくとも一部を切断し、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断する際に前記切断刃に設けたストッパを前記刃受け部材に当接させるカッターと、
固定刃と可動刃を有し、前記被印刷媒体の厚み全体を切断するフルカッターと、
前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、
を備え、
前記刃受け部材は、前記支持部材に隣接して固定され、
前記支持部材は、前記被印刷媒体の搬送方向と交差する向きに設けられた支持壁であり、
前記被印刷媒体の搬送方向で、前記フルカッターの前記固定刃、前記被印刷媒体の搬送を案内するテープガイド、前記ハーフカッターの前記刃受け部材、前記支持壁の順に並んで配置されていることを特徴とする印刷装置の切断機構。
【請求項3】
前記刃受け部材は、前記支持部材の側面に沿う被支持部と、前記被支持部に対して屈曲して前記支持部材のうち前記被印刷媒体の搬送経路に面する縁部に沿って位置する受け部と、を有し、
前記切断刃は、前記受け部に対して前記支持部材の前記縁部とは反対側から当接することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項4】
前記支持部材の前記縁部は、前記カッターによって前記被印刷媒体の一部が切断される場合に、前記被印刷媒体の幅方向において前記被印刷媒体の通過領域を跨いだ2箇所で、前記受け部に対して当接することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項5】
前記切断刃と前記刃受け部材は、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断するハーフカッターを構成しており、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断する際に前記切断刃に設けたストッパを前記刃受け部材に当接させ、
前記被印刷媒体の厚み全体を切断するフルカッターをさらに有し、
前記支持部材は、前記被印刷媒体の搬送方向と交差する向きに設けられた支持壁であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項6】
前記フルカッターは、固定刃と可動刃を有し、
前記被印刷媒体の搬送方向で、前記フルカッターの前記固定刃、前記被印刷媒体の搬送を案内するテープガイド、前記ハーフカッターの前記刃受け部材、前記支持壁の順に並んで配置されていることを特徴とする請求項5に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項7】
前記被印刷媒体の搬送方向で、前記支持部材を挟んで前記刃受け部材とは反対側に位置し、前記支持部材に対して回動可能に支持される可動部材を有し、
前記切断刃は前記可動部材に支持されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷装置の切断機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置の切断機構に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状のテープに対して印刷を行うラベルプリンタのような印刷装置では、印刷後のテープを切断する切断機構を備えているものが多い。印刷層の裏側に離型紙層(剥離紙層)を有する積層テープを印刷対象とする印刷装置では、切断機構として、印刷層と離型紙層の両方を切断するフルカッターと、印刷層と離型紙層の一方のみを切断するハーフカッターとを備える場合がある。
【0003】
フルカッターは、対向する一対の刃部を交差させてテープを切断する鋏構造を用いることが多い。ハーフカッターは、刃受け部材に対してストッパ付きの刃部を押し付けて、ストッパによって刃受け部材と刃部の間に所定の間隔を確保しながらテープを切断する押し切り構造が多用される。
【0004】
ハーフカッターのような押し切り構造のカッターは、切断時に加わる強い荷重によって曲げモーメントが加わりやすいという課題が知られている。その対策として、特許文献1では、印刷テープがカットされるカット位置の近傍のみで、ハーフカッターのカッターユニットをカッター固定部に固定するという技術が提案されている。
【0005】
特許文献2では、ハーフカッターを構成する刃受け部材を、フルカッターを構成する固定刃に固定し、ハーフカット時に刃受け部材が受ける荷重を固定刃及び固定刃支持部で受けられるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-136301号公報
【特許文献2】特許第4069037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載された解決手段は、既存の切断機構からの変更に伴う問題が生じるおそれがある。例えば、特許文献1では、全体的な構造が複雑化したり、ハーフカッターの動作精度の確保が難しくなったりするおそれがある。特許文献2では、フルカッターとハーフカッターを隙間無く並べて配置するので、フルカッターとハーフカッターを互いに干渉させずに動作させるための精度管理の難度が高くなるという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、簡単な構造で動作の信頼性と耐久性能に優れる印刷装置の切断機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の印刷装置の切断機構は、切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって被印刷媒体の少なくとも一部を切断するカッターと、前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、を備え、前記刃受け部材は、前記支持部材の側面に沿う被支持部と、前記被支持部に対して屈曲して前記支持部材のうち前記被印刷媒体の搬送経路に面する縁部に沿って位置する受け部と、を有し、且つ前記支持部材に隣接して固定され、前記切断刃は、前記受け部に対して前記支持部材の前記縁部とは反対側から当接し、前記支持部材の前記縁部は、前記カッターによって前記被印刷媒体の一部が切断される場合に、前記被印刷媒体の幅方向において前記被印刷媒体の通過領域を跨いだ2箇所で、前記受け部に対して当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の態様によれば、簡単な構造で動作の信頼性と耐久性能に優れる印刷装置の切断機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の印刷装置の内部構造を示す正面図である。
【
図2】本実施形態の印刷装置の内部構造を示す側面図である。
【
図3】本実施形態の印刷装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の印刷装置の切断機構付近を拡大した正面図である。
【
図6】比較例の印刷装置の切断機構付近を拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1から
図3は、本実施形態の印刷装置10の内部構造を示している。
図1から
図3に示す内部構造の外側に外装部品が取り付けられて印刷装置10が完成する。印刷装置10は、帯状の被印刷媒体であるテープ20に印刷を行ってラベルを作成するラベルプリンタである。
【0013】
テープ20はテープカートリッジ25に収容されている。印刷装置10内のカートリッジ装着部11にテープカートリッジ25を装着し、テープカートリッジ25から引き出されたテープ20に対して印刷を行う。
【0014】
印刷装置10での印刷は、加熱によってインクリボン(図示略)のインクをテープ20に付着させる熱転写式で行われる。カートリッジ装着部11には、印刷の際にインクリボンを加熱する印刷ヘッドであるサーマルヘッド12が設けられている。
【0015】
図5に示すように、テープ20は、離型紙層21と糊層22と印刷層23とを積層した構成である。テープカートリッジ25内に収容されたインクリボンが印刷層23側に重ねて搬送され、印刷の際には、インクリボンに含まれるインクがサーマルヘッド12の加熱によって溶融して印刷層23に付着する。
【0016】
なお、印刷装置10における印刷方式は熱転写式には限定されない。例えば、サーマルヘッド12の加熱によって、印刷層23に含まれる発色剤を顕色化させる感熱式の印刷を行うものであってもよい。
【0017】
印刷装置10内には、サーマルヘッド12に対向する位置にプラテンローラ13が設けられている。プラテンローラ13は、サーマルヘッド12から離間する位置と、サーマルヘッド12に接触する位置とに移動可能である。
【0018】
テープカートリッジ25から引き出されたテープ20及びインクリボンは、サーマルヘッド12とプラテンローラ13の間を通される。プラテンローラ13をサーマルヘッド12への接触位置に移動させることにより、サーマルヘッド12とプラテンローラ13の間にテープ20及びインクリボンが挟持される。印刷の際には、この挟持状態でサーマルヘッド12を加熱する。また、この挟持状態でプラテンローラ13を回転させると、テープ20が長手方向に搬送される。印刷後のテープ20は、プラテンローラ13の回転によって搬送されて、印刷装置10の外部に排出される。
【0019】
印刷装置10はベースシャーシ14を備えている。ベースシャーシ14は印刷装置10の本体を構成しており、金属などの強度に優れる材質で形成されている。印刷装置10を構成する各部品が直接的に又は間接的にベースシャーシ14に対して取り付けられる。ベースシャーシ14は、底板14aと、底板14aから突出する複数の側壁とを備えている。底板14aは概ね矩形状であり、底板14aの4辺のうち一対の辺を結ぶ方向をX軸方向とし、底板14aの別の一対の辺を結ぶ方向をY軸方向とする。X軸方向とY軸方向は互いに垂直な関係にある。また、X軸方向及びY軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向とする。
【0020】
底板14aの4つの辺のうち、Y軸方向に延びる一辺に沿って、支持壁15(支持部材)が設けられている。支持壁15は、底板14aからZ軸方向に突出する壁部であり、X軸方向に所定の厚みを有している。なお、支持壁15は、途中に凹凸や段差を有していて完全に平坦な形状ではないが、概ねY軸方向とZ軸方向に向けて延びる平板状の部位となっており、X軸方向に向く一対の側面を有している。
【0021】
プラテンローラ13の回転によって、テープ20は概ねX軸方向に搬送される。つまり、X軸方向がテープ20の搬送方向である。また、Y軸方向がテープ20の厚み方向であり、Z軸方向がテープ20の幅方向である。支持壁15は、テープ20の搬送方向と交差する(搬送方向と略垂直な)向きに設けられた立壁である。支持壁15を境界として、印刷装置10の内部側(
図1の左側)を搬送方向の内側とし、印刷装置10の外部側(
図1の右側)を搬送方向の外側とする。印刷後のテープ20は、支持壁15が設けられている位置を横切って印刷装置10の外部へ排出される。支持壁15はテープ20の搬送経路を遮らない形状に設定されており、支持壁15のY軸方向を向く端部には、テープ20の搬送経路に面して位置する縁部15aが形成されている(
図4参照)。
【0022】
縁部15aは、支持壁15におけるZ軸方向の両端付近に一対設けられている(
図2及び
図3参照)。一対の縁部15aの間隔は、印刷装置10での使用が想定される最大幅のテープ20よりも広く、Z軸方向でテープ20の通過領域を跨いだ2箇所に縁部15aが配置されている。
【0023】
支持壁15の近傍には、テープ20を案内して搬送経路を定めるテープガイド17が設けられている。テープガイド17は、支持壁15に対して搬送方向の内側に配置されている。
図4に示すように、テープガイド17は、Y軸方向でテープ20の搬送経路の両側に分けて配置されるガイド部17aと支持部17bとを有している。
【0024】
ガイド部17aは、支持壁15の縁部15aに対してY軸方向へ所定の間隔を空けて設置されており、支持壁15よりも僅かに搬送方向の内側に位置している。支持部17bは、支持壁15に対して搬送方向の内側に並んで位置している。支持部17bと支持壁15の間には、後述するハーフカッター35の刃受け部材36の厚み分の間隔が存在する。
【0025】
印刷後のテープ20は、ガイド部17aと支持部17bの間を通過して搬送方向の外側へ進む。ガイド部17aの先端には、搬送方向の内側から外側へ進むにつれてY軸方向で支持壁15との間隔を小さくする傾斜部17cが設けられている。傾斜部17cによって、テープ20が適正な方向に進行するように案内される。
【0026】
印刷装置10は、テープ20の搬送経路の途中に切断機構30を備えており、印刷後のテープ20が切断機構30によって切断されてラベルが完成する。切断機構30によるテープ20の切断は、フルカッター31によるフルカットと、ハーフカッター35によるハーフカットを選択可能である。以下、切断機構30について説明する。
【0027】
切断機構30では、フルカッター31とハーフカッター35が搬送方向に位置を異ならせて配置されており、搬送方向の上流側(サーマルヘッド12及びプラテンローラ13に近い側)にフルカッター31が位置し、搬送方向の下流側(サーマルヘッド12及びプラテンローラ13から遠い側)にハーフカッター35が位置する。
【0028】
切断機構30の各部品は支持壁15によって支持されており、支持壁15が切断機構30を支持する支持部材を構成している。印刷装置10では、搬送方向に並ぶフルカッター31とハーフカッター35のうち、ハーフカッター35を支持壁15に隣接する位置に設け、フルカッター31をハーフカッター35よりも搬送方向の内側(支持壁15から遠い位置)に設けている。
【0029】
図4に示すように、フルカッター31は、テープガイド17に対して搬送方向の内側に配されている。フルカッター31は固定刃32と可動刃33を有し、固定刃32がX軸方向で支持部17bに隣接して位置し、可動刃33がX軸方向でガイド部17aに隣接して位置している。固定刃32は支持部17bに固定されている。可動刃33は、支持壁15に対して、X軸方向に向く軸(図示略)を中心として回動可能に支持されている。可動刃33は図示を省略するバネによって、固定刃32から離間する方向に付勢されている。この離間状態がフルカッター31の基本状態であり、テープ20をフルカットする際に、バネの付勢力に抗して可動刃33を動作させる。
【0030】
フルカッター31は、鋏構造でテープ20の厚み全体(離型紙層21から印刷層23までの全体)を切断するものである。固定刃32に対して可動刃33が接近し、固定刃32の刃先と可動刃33の刃先がY軸方向で交差することによって、互いの刃先間でテープ20を切断する。
【0031】
図4に示すように、ハーフカッター35は、テープガイド17に対して搬送方向の外側に配されている。ハーフカッター35は、刃受け部材36と切断刃37を有している。
【0032】
刃受け部材36はX軸方向でテープガイド17の支持部17bと支持壁15との間に配された板状の部品であり、支持壁15の内側の面に対して刃受け部材36の側面が密着する状態で固定されている。換言すれば、刃受け部材36は、テープ20の搬送方向で支持壁15に隣接して固定されている。
【0033】
刃受け部材36のうち搬送方向の内側の側面(支持壁15に固定される側とは反対側の側面)に対して、テープガイド17の支持部17bが接して固定される。また、支持部17bのうち搬送方向の内側の側面(刃受け部材36に固定される側とは反対側の側面)に対して、フルカッター31の固定刃32が接して固定される。つまり、搬送方向の内側から外側に向けて、フルカッター31の固定刃32、テープガイド17の支持部17b、ハーフカッター35の刃受け部材36、支持壁15の順に並んで配置され、これらの各部材が互いに固定された関係にある。
【0034】
これらの部材の固定方法は限定されないが、一例として、支持壁15に対する刃受け部材36の固定は、ネジ留め。接着、溶接など、任意の方法で行うことができる。また、支持壁15に対して、刃受け部材36に加えて、テープガイド17の支持部17bやフルカッター31の固定刃32をまとめてネジ留めする共締め構造を採用してもよい。
【0035】
刃受け部材36は、支持壁15の側面に沿う被支持部36aを有し、被支持部36aが支持壁15に対して固定されている。被支持部36aのY軸方向の先端には、被支持部36aに対して搬送方向の外側へ向けて屈曲した屈曲形状の受け部36bが設けられている。受け部36bは、Y軸方向で支持壁15の縁部15aに接しており、Z軸方向へ長く延びている(
図2参照)。支持壁15のうちZ軸方向の両端付近に設けた一対の縁部15aによって受け部36bを支持する構造であるため、受け部36bの位置を高精度に定めることができる。
【0036】
例えば、本実施形態のような一対の縁部15aではなく、支持壁15のうちZ軸方向に延びる長い端面全体で受け部36bを支持する構造では、支持壁15の端面の一部に形状不良(凹凸など)があった場合に、受け部36bが傾いてしまうおそれがあるため、支持壁15の端面全体の精度を管理する必要がある。これに対して、本実施形態の構成では、高度な精度管理を要するのが一対の縁部15aだけで済み、一対の縁部15aの間の領域は受け部36bに接しない逃げ形状(凹形状)になっているので、支持壁15の精度管理を容易にしつつ、受け部36bを高精度に支持させることができる。
【0037】
図4及び
図5に示すように、切断刃37は刃部37aとストッパ37bによって構成されている。刃部37aとストッパ37bはX軸方向に重ねられて結合している。刃部37aは切断用の鋭利な刃先形状を有しており、ストッパ37bは刃部37aのような鋭利な刃先形状を有さない。
図5に示すように、ストッパ37bはZ軸方向の両端付近で刃部37aよりもY軸方向への突出量を大きくしており、刃部37aの刃先からストッパ37bの先端までの間に突出量の差S1がある。差S1は、テープ20における離型紙層21の厚みT1よりも小さい値(S1<T1)に設定されている。
【0038】
図4に示すように、切断刃37はY軸方向で支持壁15の延長上に位置しており、切断刃37の先端がY軸方向で刃受け部材36の受け部36bに対向している。後述する駆動構造によって、切断刃37が受け部36bとの距離を変化させる。
図5の(A)は切断刃37が受け部36bから離間した状態であり、
図5の(B)は切断刃37を受け部36bに最も接近させたハーフカット状態である。
【0039】
ハーフカット状態では、ストッパ37bの先端が、受け部36bに対して支持壁15の縁部15aとは反対側から当接して、それ以上の接近が制限される。刃部37aはテープ20に対して途中まで切り込まれるが、ストッパ37bの突出量との差S1の分だけ受け部36bから離間した状態で止まる。切断刃37側の差S1と離型紙層21の厚みT1は、離型紙層21の途中まで刃部37aを食い込ませる値に設定されている。従って、ハーフカット状態では、刃部37aが糊層22及び印刷層23を切断し、刃部37aが離型紙層21の途中まで切り込まれた状態になる。刃部37aが切り込まれていない部分では、離型紙層21が切断されずにX軸方向に連続している。
【0040】
以上のように、ハーフカッター35は、ストッパ37b付きの切断刃37を刃受け部材36に当て付けて、切断刃37からの力を刃受け部材36で受けながら、テープ20の厚みの一部分(糊層22及び印刷層23)を切断する押し切り構造である。
【0041】
切断刃37は可動部材40に取り付けられている。
図2及び
図3に示すように、可動部材40は、X軸方向に向く回転軸40aを中心として回動可能な板状の部品であり、回転軸40aは支持壁15に接続して支持されている。可動部材40における回転軸40a付近の領域は、支持壁15のうち搬送方向の外側の側面に沿う位置に配されている。前述したように、支持壁15のうち搬送方向の内側の側面にはハーフカッター35の刃受け部材36が支持されているので、支持壁15の一方の側面に刃受け部材36が支持され、支持壁15の他方の側面(支持壁15を挟んで刃受け部材36とは反対側)に可動部材40が支持された構成となる。
【0042】
このように、ハーフカッター35における固定部である刃受け部材36と、ハーフカッター35における可動部である切断刃37が取り付けられる可動部材40とを、支持壁15の両側に振り分けて配置することで、支持壁15に近い領域にハーフカッター35の構成要素をスペース効率良く収めることができる。
【0043】
図2に示すように、可動部材40はX軸方向に沿う側面視で略L字状であり、L字の屈曲部付近が回転軸40aによって軸支されている。L字状の可動部材40の第1腕部40bに切断刃37が取り付けられている。切断刃37は、固定ネジ42によって第1腕部40bに固定されている。
図4に示すように、第1腕部40bのうち搬送方向の内側を向く面に対して切断刃37が取り付けられている。従って、支持壁15よりも搬送方向の外側に第1腕部40bが位置するのに対して、切断刃37はX軸方向で支持壁15と同じ位置(Y軸方向に並ぶ関係)に配置され、可動部材40の回動(揺動)によって切断刃37の先端と刃受け部材36の受け部36bとの距離を変化させることができる。
【0044】
なお、切断刃37の移動は、回転軸40aを中心とする可動部材40の揺動によって行われるが、切断刃37が受け部36bに当接する状態では、切断刃37の先端が概ね受け部36bと平行になる(Z軸方向に延びる向きになる)。従って、ハーフカット時に切断刃37から刃受け部材36に対して加わる押し切り力は、Y軸方向への成分が主となる。
【0045】
可動部材40の第1腕部40bとベースシャーシ14のバネ掛け部14bとの間を、引張バネ41が接続している。引張バネ41は刃受け部材36から切断刃37を離間させる方向の付勢力を可動部材40に与える。
図2及び
図3は、引張バネ41の付勢力によって切断刃37が刃受け部材36から離間した状態を示している。この離間状態がハーフカッター35の基本状態であり、テープ20をハーフカットする際に、引張バネ41の付勢力に抗して可動部材40を動作させる。
【0046】
L字状の可動部材40の第2腕部40cは、途中でX軸方向に屈曲するクランク形状を有している。そして、第2腕部40cの先端付近は、支持壁15に対して搬送方向の内側に位置しており、第2腕部40cから突出するカムフォロア40dを有している(
図1及び
図2参照)。
【0047】
図2及び
図3に示すように、支持壁15の外側にモータ43が取り付けられ、モータ43の出力軸の回転が減速ギヤ列44によって減速されながら伝達される。減速ギヤ列44の最終ギヤと一体に回転するカム部材45を有し、カム部材45にカッター制御カム45aが形成されている。モータ43の出力軸はY軸方向に延びている。減速ギヤ列44を構成する各ギヤとカム部材45のそれぞれの回転軸の軸線は、Z軸方向に延びている。モータ43の出力軸の外面に設けた傘歯車を介して回転伝達の方向を変更して、モータ43から減速ギヤ列44に駆動力を伝達する。
【0048】
図2に示すように、フルカッター31の可動刃33は、カッター制御カム45aの近傍に位置するカムフォロア33aを有している。可動部材40のカムフォロア40dもカッター制御カム45aの近傍に位置している。カムフォロア33aとカムフォロア40dは、カム部材45の回転方向においてカッター制御カム45aの両側に振り分けて配置されている。
【0049】
モータ43はDCモータであり、モータ43の出力軸の回転方向の切り替えにより、カム部材45の回転方向が変更される。カム部材45を第1の方向(
図2の反時計方向)に回転させるモータ43の駆動方向を正転、カム部材45を第2の方向(
図2の時計方向)に回転させるモータ43の駆動方向を逆転とする。
【0050】
モータ43の正転によりカム部材45を第1の方向に回転させると、カッター制御カム45aがカムフォロア33aを押圧する。すると、可動刃33を付勢するバネの力に抗して可動刃33が固定刃32への接近方向(
図2の時計方向)に動作して、テープ20に対するフルカットが行われる。
【0051】
モータ43の逆転によりカム部材45を第2の方向に回転させると、カッター制御カム45aがカムフォロア40dを押圧する。すると、可動部材40を付勢する引張バネ41の力に抗して切断刃37が刃受け部材36への接近方向(
図2の時計方向)に動作して、テープ20に対するハーフカットが行われる。
【0052】
カム部材45の周囲には、カム部材45の回転位置を検知する一対のカム位置検知スイッチ46が設けられている。一対のカム位置検知スイッチ46はそれぞれ、カム部材45の周面カム45bに接触する突出部を有しており、カム部材45の回転による周面カム45bの形状変化に応じて突出部が突出状態と押し込み状態に変化する。
【0053】
一対のカム位置検知スイッチ46の突出部の位置関係によって、いずれのカッターも動作していない初期状態、フルカッター31に切断動作を行わせたフルカット状態、ハーフカッター35に切断動作を行わせたハーフカット状態、を検知することができる。
図2は初期状態を示しており、一方のカム位置検知スイッチ46で突出部が突出し、他方のカム位置検知スイッチ46で突出部が押し込まれている。フルカット状態では、一対のカム位置検知スイッチ46の両方で突出部が突出した状態になる。ハーフカット状態では、一対のカム位置検知スイッチ46の両方で突出部が押し込まれた状態になる。
【0054】
フルカット時には、印刷装置10の制御部は、前述のフルカット状態が検知されるまでモータ43を正転させ、フルカット状態が検知されるとモータ43を停止させ、続いてモータ43を逆転させて初期状態まで戻す。ハーフカット時には、印刷装置10の制御部は、前述のハーフカット状態が検知されるまでモータ43を逆転させ、ハーフカット状態が検知されるとモータ43を停止させ、続いてモータ43を正転させて初期状態まで戻す。ハーフカット状態が検知されてモータ43を停止した時点で発生するトルクが、減速ギヤ列44、カム部材45、可動部材40を経て切断刃37に伝わり、ストッパ37bから刃受け部材36へ荷重が加わる。
【0055】
以上のように動作する切断機構30のうち、フルカッター31については、固定刃32と可動刃33の互いの刃先が交差する鋏構造でテープ20を切断(フルカット)するので、切断時に可動刃33から固定刃32に対してY軸方向への強い力が加わらない。これに対し、ハーフカッター35については、刃受け部材36の受け部36bに対してストッパ37b付きの切断刃37を当てつける押し切り構造でテープ20を切断(ハーフカット)するので、切断時に切断刃37から刃受け部材36にY軸方向への力が入力される。ハーフカット時に刃受け部材36に加わる力は、印刷装置10の機種などによっても異なるが、一例として40kg程度の荷重が加わる。
【0056】
本実施形態の印刷装置10による効果を説明するため、本実施形態とは異なる構成の比較例を
図6に示した。この比較例における切断機構130は、フルカッター131とハーフカッター135を有している。
【0057】
フルカッター131は固定刃132と可動刃133を有し、固定刃132と可動刃133を交差させる鋏構造によってテープ120の厚みの全体を切断する。ハーフカッター135は刃受け部材136と切断刃137を有し、切断刃137は刃部137aとストッパ137bを有しており、可動部材140により支持されている。そして、刃受け部材136の受け部136bに切断刃137のストッパ137bを当接させる押し切り構造で、テープ120の厚みの一部を切断する。
【0058】
テープガイド117は、Y軸方向でテープ120の搬送経路の両側に位置するガイド部117aと支持部117bを有している。
【0059】
切断機構130では、ベースシャーシの一部である支持壁115に対して、搬送方向の外側に隣接してフルカッター131が配置されている。フルカッター131に対して搬送方向の外側に隣接してテープガイド117が配置され、テープガイド117に対してさらに搬送方向の外側にハーフカッター135が配置されている。より詳しくは、支持壁115を基準として、搬送方向の外側へ向けて順に、フルカッター131の固定刃132、テープガイド117の支持部117b、ハーフカッター135の刃受け部材136の被支持部136aが並ぶ配置になっている。被支持部136aは支持部117bに対して固定されている。従って、X軸方向における支持壁115から刃受け部材136までの距離が大きくなっている。
【0060】
さらに、刃受け部材136の受け部136bは、搬送方向の外側に向けて屈曲している。そのため、切断刃137が受け部136bに当接する位置は、支持壁115からさらに遠くなっている。
【0061】
図6の(A)は、このような構造の切断機構130で、ハーフカット時に切断刃137から刃受け部材136の受け部136bに対してY軸方向へ押し付ける荷重が作用した場合を示している。ここで、荷重の入力箇所である受け部136bと荷重を最終的に受ける支持壁115とがX軸方向に大きくずれているので、刃受け部材136に加わる荷重が大きい場合に、Y軸方向に対して傾けさせる大きな曲げモーメントが発生する。
【0062】
支持壁115は、Y軸方向に直線的に入力される荷重(圧縮荷重)に対しては高い強度を有する。一方で、X軸方向への支持壁115厚みは限られており、しかも固定刃132や刃受け部材136を支持する箇所では支持壁115が片持ち構造になっているため、支持壁115はX軸方向には変形を生じやすい。ここで、切断刃137から刃受け部材136に大きな荷重が入力されて前述の曲げモーメントが発生すると、
図6の(B)に示すように、支持壁115をX軸方向に屈曲させる変形が生じるおそれがある。
【0063】
支持壁115が屈曲すると、支持壁115に支持された固定刃132や刃受け部材136も支持壁115に伴って傾く状態になる。すると、切断刃137に対する受け部136bの位置が設計上の位置からずれてしまい、ハーフカット時の切り込み量に過不足が生じる。
図6の(B)の例では、刃受け部材136の傾きによって受け部136bと刃部137aとの間隔が拡大してしまっており、刃部137aによる切り込み量が不足する状態になっている。
【0064】
さらに、
図6の(B)に示す支持壁115の変形が弾性変形ではなく塑性変形であり、ハーフカット動作後にも支持壁115の変形が維持されてしまう場合には、次回以降の切断動作においても、刃受け部材136の位置ずれが継続してしまう。
【0065】
また、支持壁115の変形が維持されてしまうと、フルカッター131の固定刃132の位置もずれたままになるため、適切なフルカット動作を実行できなくなるおそれがある。例えば、
図6の(B)の状態では、可動刃133の移動軌跡上に固定刃132が位置しており、可動刃133が固定刃132に対して交差せずに衝突するようになってしまう。
図6の(B)に示す向きとは反対側に支持壁115が屈曲した場合には、固定刃132と可動刃133の間隔が広くなり過ぎて、テープ120を切断できないおそれがある。
【0066】
図6の比較例とは異なり、本実施形態の印刷装置10では、支持壁15と刃受け部材36が間に別の部材を挟まずに搬送方向(X軸方向)で隣接しており、X軸方向での刃受け部材36と支持壁15の距離が近いので、Y軸方向への荷重を切断刃37から刃受け部材36が受けたときに、荷重の入力方向に対して傾けようとするモーメントが作用しにくい。
【0067】
さらに、刃受け部材36は、搬送方向の外側(支持壁15の側)に屈曲した形状の受け部36bを有しており、受け部36bが支持壁15の縁部15aに接する位置にある。従って、切断刃37と受け部36bと支持壁15がY軸方向に並ぶ位置関係にあり、ハーフカット時には、切断刃37からの荷重が受け部36bを介して支持壁15に直線的に入力される。支持壁15は、Y軸方向に直線的に入力される荷重(圧縮荷重)に対しては高い強度を有するので、縁部15aで荷重を受けることは強度的に非常に有利である。また、受け部36bからの力を縁部15aで直接的に受けることにより、刃受け部材36の被支持部36aと支持壁15との間で剪断荷重が発生しにくい。
【0068】
以上の理由により、切断機構30は、ハーフカット時に切断刃37から刃受け部材36に強い力が加わっても、刃受け部材36や支持壁15の変形が生じにくく、ハーフカッター35の動作の信頼性や耐久性能に優れた構造になっている。
【0069】
フルカッター31やハーフカッター35を構成する部品の配置の工夫によって、耐荷重性を向上させる効果を得ており、個々の部品については剛性を高めるための格別な大型化や重量増加を要さない。例えば、支持壁15は、ベースシャーシ14を構成する他の壁部と同等の厚みに設定されており、支持壁15の肉厚だけを大きくするような対策は施されていないが、切断機構30の支持部としての要求強度を十分に満たすことができる。従って、切断機構30を含む印刷装置10を小型軽量に構成でき、製造コストを抑えることができる。
【0070】
ハーフカッター35において確実なハーフカットを行うためには、刃受け部材36の受け部36bと切断刃37の刃部37aとの間隔を精密に管理する必要がある。ここで、刃受け部材36の傾きが抑制される構造であるため、受け部36bと刃部37aとの間隔が変動せず、切断刃37における刃部37aの位置管理が容易になる。具体的には、刃部37aとストッパ37bの突出量の差S1(
図5)を適切に管理すれば良く、ストッパ37bの突出量に関する寸法公差の要件を緩和できる(刃受け部材36が傾く場合を考慮しなくてもよい)ため、切断機構30の製造コストを低減することができる。
【0071】
フルカッター31については、支持壁15との間にハーフカッター35及びテープガイド17を配した構成であるため、支持壁15に対するX軸方向での距離はハーフカッター35よりも大きくなる。しかし、フルカット時に可動刃33が固定刃32に押し付けられない構造であるため、フルカッター31はハーフカッター35に比して、可動刃33や固定刃32の支持部分に大きな力が作用しにくい。従って、本実施形態の切断機構30のようにフルカッター31を配置しても、フルカット時に支持壁15を変形させるような大きなモーメントは作用しない。
【0072】
このように、本実施形態の印刷装置10における切断機構30は、フルカッター31とハーフカッター35のそれぞれの構造的、作用的な条件の違いに着眼し、支持壁15に対してフルカッター31とハーフカッター35をどのように配置すると耐荷重性において有利となるかを見極めて実現したものである。
【0073】
さらに、ハーフカッター35を構成する刃受け部材36について、Y軸方向で支持壁15の延長上に位置する受け部36bを設け、切断刃37から受ける力が作用する方向に受け部36bと支持壁15を位置させているので、支持壁15を傾かせる曲げモーメントがより一層発生しにくくなっている。
【0074】
また、Z軸方向(テープ20の幅方向)においてテープ20の通過領域を跨いだ2箇所で、支持壁15の縁部15aが受け部36bに対して当接する構成によって、受け部36bの位置精度を管理しやすくなり、受け部36bの位置を高精度に定めることができる。
【0075】
また、ハーフカッター35の刃受け部材36(被支持部36a)と、切断刃37を支持する可動部材40とを、支持壁15の両側に振り分けて配置している。この構成により、ハーフカッター35の構成要素を配置するためのスペース効率を向上させると共に、刃受け部材36と支持壁15と可動部材40の積層関係によって断面剛性を向上させている。これにより、ハーフカッター35付近の強度がより一層優れたものになる。
【0076】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0077】
変形例として、テープガイド17をフルカッター31とハーフカッター35の間に配置せずに、フルカッター31とハーフカッター35をX軸方向で隣り合わせに配置することも可能である。しかし、フルカッター31とハーフカッター35が隣接していると、フルカッター31の可動刃33やハーフカッター35の切断刃37が動作する際に干渉を生じるおそれがあるため、精度誤差の吸収を考慮して、フルカッター31とハーフカッター35の間には所定のクリアランスを確保することが望ましい。
【0078】
本実施形態のテープガイド17は、ガイド部17aによってテープ20を案内したり、支持部17bによって固定刃32を支持したりする役割に加えて、フルカッター31とハーフカッター35の間のクリアランスを確保するためのスペーサとしての機能も有している。このようにフルカッター31とハーフカッター35の間にテープガイド17を配することの利点が大きいため、本実施形態の印刷装置10では当該構成を採用している。
【0079】
別の変形例として、ハーフカッター35については本実施形態の構成を踏襲した上で、フルカッター31を支持壁15よりも搬送方向の外側に配する構成にすることも可能である。つまり、X軸方向でのフルカッター31とハーフカッター35の位置関係を逆にして、支持壁15を挟んだ両側にハーフカッター35とフルカッター31を配するという構成である。しかし、切断装置はフルカッターの位置を基準として設計される場合が多く、仮にフルカッター31を支持壁15よりも搬送方向の外側に配すると、サーマルヘッド12からフルカッター31までの距離が長くなり、テープ20の利用効率が低下する(印刷に利用されない領域が多くなる)おそれがある。
【0080】
このような観点から、本実施形態の印刷装置10では、搬送方向の上流側から順にフルカッター31とハーフカッター35を配置する構成を採用している。この構成により、テープ20の利用効率を高めている。また、支持壁15に対して搬送方向の外側にフルカッター31を配置しないことで、印刷装置10の大型化、特にX軸方向での搬送経路の長大化を防ぐことができる。
【0081】
本実施形態の印刷装置10は、切断刃37と刃受け部材36を有するカッターがハーフカッター35であるが、切断刃37と刃受け部材36のような押し切り構造を有するカッターは、ハーフカッターには限定されない。例えば、本発明を適用する押し切り構造の(すなわち、切断刃と刃受け部材を有する)カッターは、テープの厚み全体を切断するフルカッターであってもよい。切断時に加わる強い荷重によって曲げモーメントが加わりやすいという課題は、押し切り構造であることに由来するものであるため、本発明の技術思想は押し切り構造を備えるカッター全般に有用である。
【0082】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって前記被印刷媒体の少なくとも一部を切断するカッターと、
前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、
を備え、
前記刃受け部材は、前記支持部材に隣接して固定されていることを特徴とする印刷装置の切断機構。
[付記2]
前記切断刃と前記刃受け部材は、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断するハーフカッターを構成しており、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断する際に前記切断刃に設けたストッパを前記刃受け部材に当接させ、
前記被印刷媒体の厚み全体を切断するフルカッターをさらに有し、
前記支持部材は、前記被印刷媒体の搬送方向と交差する向きに設けられた支持壁であることを特徴とする付記1に記載の印刷装置の切断機構。
[付記3]
前記刃受け部材は、前記支持部材の側面に沿う被支持部と、前記被支持部に対して屈曲して前記支持部材のうち前記被印刷媒体の搬送経路に面する縁部に沿って位置する受け部と、を有し、
前記切断刃は、前記受け部に対して前記支持部材の前記縁部とは反対側から当接することを特徴とする付記1又は2に記載の印刷装置の切断機構。
[付記4]
前記支持部材の前記縁部は、前記カッターによって前記被印刷媒体の一部が切断される場合に、前記被印刷媒体の幅方向において前記被印刷媒体の通過領域を跨いだ2箇所で、前記受け部に対して当接することを特徴とする付記3に記載の印刷装置の切断機構。
[付記5]
前記被印刷媒体の搬送方向で、前記支持部材を挟んで前記刃受け部材とは反対側に位置し、前記支持部材に対して回動可能に支持される可動部材を有し、
前記切断刃は前記可動部材に支持されていることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の印刷装置の切断機構。
[付記6]
前記フルカッターは、固定刃と可動刃を有し、
前記被印刷媒体の搬送方向で、前記フルカッターの前記固定刃、前記テープの搬送を案内するテープガイド、前記ハーフカッターの前記刃受け部材、前記支持壁の順に並んで配置されていることを特徴とする付記2に記載の印刷装置の切断機構。
【符号の説明】
【0083】
10 :印刷装置
11 :カートリッジ装着部
12 :サーマルヘッド
13 :プラテンローラ
14 :ベースシャーシ(印刷装置の本体)
15 :支持壁(支持部材)
15a :縁部
17 :テープガイド
17a :ガイド部
17b :支持部
17c :傾斜部
20 :テープ(被印刷媒体)
21 :離型紙層
22 :糊層
23 :印刷層
25 :テープカートリッジ
30 :切断機構
31 :フルカッター
32 :固定刃
33 :可動刃
35 :ハーフカッター
36 :刃受け部材
36a :被支持部
36b :受け部
37 :切断刃
37a :刃部
37b :ストッパ
40 :可動部材
41 :引張バネ
43 :モータ
44 :減速ギヤ列
45 :カム部材
46 :カム位置検知スイッチ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様の印刷装置の切断機構は、印刷装置を構成する各部品が取り付けられ、前記印刷装置の本体を構成するベースシャーシと、切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって被印刷媒体の少なくとも一部を切断するカッターと、前記ベースシャーシの一部であり、前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、を備え、前記刃受け部材は、前記支持部材に隣接して固定されていることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置を構成する各部品が取り付けられ、前記印刷装置の本体を構成するベースシャーシと、
切断刃と刃受け部材とを有し、前記切断刃からの力を前記刃受け部材で受けながら前記切断刃によって被印刷媒体の少なくとも一部を切断するカッターと、
前記ベースシャーシの一部であり、前記刃受け部材の変形を抑制するように設けられた支持部材と、
を備え、
前記刃受け部材は、前記支持部材に隣接して固定されていることを特徴とする印刷装置の切断機構。
【請求項2】
前記切断刃と前記刃受け部材は、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断するハーフカッターを構成しており、前記被印刷媒体の厚みの一部を切断する際に前記切断刃に設けたストッパを前記刃受け部材に当接させ、
前記被印刷媒体の厚み全体を切断するフルカッターをさらに有し、
前記支持部材は、前記被印刷媒体の搬送方向と交差する向きに設けられた支持壁であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項3】
前記刃受け部材は、前記支持部材の側面に沿う被支持部と、前記被支持部に対して屈曲して前記支持部材のうち前記被印刷媒体の搬送経路に面する縁部に沿って位置する受け部と、を有し、
前記切断刃は、前記受け部に対して前記支持部材の前記縁部とは反対側から当接することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項4】
前記支持部材の前記被印刷媒体の搬送方向における外側に取り付けられる、前記カッターを駆動させるためのギヤ列を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷装置の切断機構。