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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124570
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】血管内血液ポンプ用カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/165 20210101AFI20240905BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20240905BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61M60/165
A61M60/216
A61M25/00 530
【審査請求】有
【請求項の数】45
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024110886
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2021533482の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】18211647.5
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーラン クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルシュテン
(57)【要約】
【課題】血管内血液ポンプ用カテーテルを提供する。
【解決手段】血管内血液ポンプ(P)は、カテーテル(5)と、カテーテル(5)の遠位端(15)に取り付けられたポンプ装置(1)とを備える。血液ポンプ(P)は、カテーテル(5)によって患者の血管内を前進する。カテーテル(5)は、細長い管状本体(10)と、カテーテル本体(10)の外面(8)の少なくとも一部分に設けられた多孔質三次元構造体(6)とを備え、多孔質三次元構造体(6)は、タンパク質の吸着および自家移植片(7)の形成を促進することで、カテーテル(5)が血管内壁に陥入することを防ぐものである。多孔質三次元構造体(6)は、布地スリーブ(6)として形成されることができ、それは好ましくは経編み生地から成る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ(P)用のカテーテル(5)であって、前記カテーテル(5)が、近位端(16)と遠位端(15)との間に延び且つ外面(8)を有する細長い管状本体(10)を備え、前記外面(8)上の少なくとも一部分に多孔質三次元構造体(6)を含み、
前記多孔質三次元構造体(6)が、前記カテーテル(5)の前記管状本体(10)上に直接作製される、カテーテル(5)。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が、エレクトロスピニングまたは吹付けによって、前記カテーテル(5)の前記管状本体(10)上に直接作製される、カテーテル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が溶融紡糸フィラメントから成る、カテーテル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が単層(6)から成るか、または複数の層(6a、6b)から成る、カテーテル。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が、発泡状またはスポンジ状の構造を有する第1の層(6a)と、布地スリーブの形態である第2の層(6b)とを備える、カテーテル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)によって、複数の第1の開口部と複数の第2の開口部とが形成されており、前記第1および第2の開口部はサイズが互いに異なる、カテーテル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が非吸収性材料から成る、カテーテル。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が放射線不透過性材料から成る、カテーテル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、および、天然タンパク繊維のうちの少なくとも1つから成る、カテーテル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)は、フィブリノゲンの吸着を促進するように構成される、カテーテル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)は、厚さが少なくとも20μmである、カテーテル。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のカテーテルであって、前記外面(8)の少なくとも一部分が、タンパク質の吸着を促進するように構成されている、カテーテル。
【請求項13】
ポンプ装置(1)と、請求項1から12のいずれか一項に記載のカテーテル(5)とを備える、患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ(P)。
【請求項14】
請求項3に記載のカテーテルであって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が1μm~100μmの範囲内である、カテーテル。
【請求項15】
請求項14に記載のカテーテルであって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が2μm~30μmの範囲内である、カテーテル。
【請求項16】
請求項15に記載のカテーテルであって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が10μm~20μmの範囲内である、カテーテル。
【請求項17】
請求項4に記載のカテーテルであって、前記複数の層(6a、6b)は、構成が互いに異なる、カテーテル。
【請求項18】
請求項5または17に記載のカテーテルであって、前記第2の層(6b)は、前記第1の層(6a)を取り囲む、カテーテル。
【請求項19】
請求項9に記載のカテーテルであって、前記天然タンパク繊維は、絹繊維である、カテーテル。
【請求項20】
請求項10に記載のカテーテルであって、前前記三次元構造体は、半径内側方向へのフィブリノゲンの吸着を許容する複数の開口部(23,24;33,34)および複数の糸(21,22;31,32)を備える、カテーテル。
【請求項21】
請求項11に記載のカテーテルであって、前記多孔質三次元構造体(6)は、厚さが少なくとも30μmである、カテーテル。
【請求項22】
請求項12に記載のカテーテルであって、前記タンパク質が血液タンパク質である、カテーテル。
【請求項23】
請求項22に記載のカテーテルであって、前記血液タンパク質がフィブリノゲンである、カテーテル。
【請求項24】
患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ(P)用のカテーテル(5)の製造方法であって、前記カテーテル(5)が、近位端(16)と遠位端(15)との間に延び且つ外面(8)を有する細長い管状本体(10)を備え、前記外面(8)上の少なくとも一部分に多孔質三次元構造体(6)を含み、
前記製造方法は、
前記多孔質三次元構造体(6)を前記カテーテル(5)の前記管状本体(10)上に直接作製する工程を含む、製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が、エレクトロスピニングまたは吹付けによって、前記カテーテル(5)の前記管状本体(10)上に直接作製される、製造方法。
【請求項26】
請求項24または25に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が溶融紡糸フィラメントから成る、製造方法。
【請求項27】
請求項24から26のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が単層(6)から成るか、または複数の層(6a、6b)から成る、製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が、発泡状またはスポンジ状の構造を有する第1の層(6a)と、布地スリーブの形態である第2の層(6b)とを備える、製造方法。
【請求項29】
請求項24から28のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)によって、複数の第1の開口部と複数の第2の開口部とが形成されており、前記第1および第2の開口部はサイズが互いに異なる、製造方法。
【請求項30】
請求項24から29のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が非吸収性材料から成る、製造方法。
【請求項31】
請求項24から30のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が放射線不透過性材料から成る、製造方法。
【請求項32】
請求項24から31のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、および、天然タンパク繊維のうちの少なくとも1つから成る、製造方法。
【請求項33】
請求項24から32のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)は、フィブリノゲンの吸着を促進するように構成される、製造方法。
【請求項34】
請求項24から33のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)は、厚さが少なくとも20μmである、製造方法。
【請求項35】
請求項24から34のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記外面(8)の少なくとも一部分が、タンパク質の吸着を促進するように構成されている、製造方法。
【請求項36】
請求項26に記載の製造方法であって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が1μm~100μmの範囲内である、製造方法。
【請求項37】
請求項36に記載の製造方法であって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が2μm~30μmの範囲内である、製造方法。
【請求項38】
請求項37に記載の製造方法であって、前記溶融紡糸フィラメントは、直径が10μm~20μmの範囲内である、製造方法。
【請求項39】
請求項27に記載の製造方法であって、前記複数の層(6a、6b)は、構成が互いに異なる、製造方法。
【請求項40】
請求項28または39に記載の製造方法であって、前記第2の層(6b)は、前記第1の層(6a)を取り囲む、製造方法。
【請求項41】
請求項32に記載の製造方法であって、前記天然タンパク繊維は、絹繊維である、製造方法。
【請求項42】
請求項33に記載の製造方法であって、前前記三次元構造体は、半径内側方向へのフィブリノゲンの吸着を許容する複数の開口部(23,24;33,34)および複数の糸(21,22;31,32)を備える、製造方法。
【請求項43】
請求項34に記載の製造方法であって、前記多孔質三次元構造体(6)は、厚さが少なくとも30μmである、製造方法。
【請求項44】
請求項35に記載の製造方法であって、前記タンパク質が血液タンパク質である、製造方法。
【請求項45】
請求項44に記載の製造方法であって、前記血液タンパク質がフィブリノゲンである、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管に経皮挿入し、特に患者の心臓内へ進入させる血管内血液ポンプに関し、より具体的には、血管組織への陥入を低減または防止する血管内血液ポンプ用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
大腿動脈または静脈あるいは腋窩動脈または静脈などの患者の血管に経皮的に挿入されるように設計された血管内血液ポンプは、左心補助人工心臓または右心補助人工心臓として機能するように患者の心臓に進入させることができる。したがって、血液ポンプは、心臓内血液ポンプと呼ばれることもある。血管内血液ポンプは通常、カテーテルと、カテーテルの遠位端に取り付けられたポンプ装置とを備える。カテーテルは、細長い管状本体を有することがあり、送電ラインおよびパージラインなどの供給ラインを収容している場合がある。ポンプ装置は、インペラを備えることがあり、そのインペラは、血液ポンプの動作中に回転して、血液を血液ポンプの血流入口から血流出口に、たとえばフローカニューレを通して送るものである。本開示全体にわたって、「遠位」という用語は、ユーザから離れて心臓に向かう方向を指し、「近位」という用語は、ユーザに向かう方向を指す。
【0003】
血管内血液ポンプは、数時間または数日間の短期利用、あるいは数週間または数ヶ月間にも及ぶ長期利用に供することができる。血管内血液ポンプは通常、回復への架け橋として使用され得る。それはすなわち、心臓が十分に回復し血液ポンプでサポートする必要がなくなった後に、血液ポンプを患者から取り外すことを意味する。しかし、特に長期利用では、血液ポンプが血管組織に被包化されることがあるため、血液ポンプの取り外しが難しい場合がある。組織の異常増殖(および、場合によっては内部成長)による異物の被包化は、異物に対する人体の自然な反応であり、身体と体内の異物との間に保護バリアを形成するものである。一般に、異物の材料および表面、異物の形状、異物によって生じる機械的刺激などが、組織による異物の被包化を誘発する。
【0004】
血管内血液ポンプにおいて、血管を通って心臓に向かって延びるカテーテルは特に、患者の身体によって異物として扱われる可能性があり、したがって、血管壁への近接が原因となって組織の内部成長または異常増殖にさらされる場合がある。特に、カテーテルとの接触によって生じる血管内壁の機械的刺激は、組織の内部成長を促進することがある。組織の内部成長は、たとえば30日間以上に及ぶ血液ポンプの動作などの長期利用における重要な問題である。血液ポンプの取り外しには、強い力(たとえば最大50N)が必要になる場合があり、それにより、血管に重度の外傷や損傷が生じ、粒状物の放出が発生して梗塞を引き起こす可能性がある。
【0005】
カテーテルの血管への陥入を低減または回避するために、様々な試みが為されてきた。しかし、外観的に異なる種類のものは、組織の内部成長または異常増殖に対して異なる反応を示すため、試験は困難である。組織の内部成長または異常増殖は、血管管腔の内部且つインプラント側で始まり、まず、カテーテルの外面にフィブリノゲンが吸着する。その後、血小板と赤血球(RBC)とがフィブリノゲン層に付着する。最後に、フィブリンを含有する薄いスリーブがカテーテルの外面に形成される。
【0006】
そのようなスリーブの形成を回避するために、カテーテルは通常、滑らかな表面を備えており、たとえば押出ポリウレタン(PU)で構成されている。しかし、そのようなスリーブはそれでも形成されてしまい、血管壁に付着したり、滑らかなポリウレタン表面でくしゃくしゃになったりする場合がある。そのスリーブが緩むと、少なくとも部分的に剥がれ落ちて梗塞を引き起こす可能性がある。フィブリノゲンの吸着を回避するために、有機または無機(たとえば銀)の添加剤をポリウレタンに添加することがある。同様に、抗血栓性、親水性、または疎水性のコーティングを塗布することもある。それでもなお、組織の内部成長は依然として問題であり、血管内血液ポンプの長期利用における重大な障壁である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、組織の内部成長を低減または回避することにより、特に長期利用において、一定期間後に患者から血液ポンプを容易に取り外すことを可能にする血管内血液ポンプ、より具体的には血管内血液ポンプ用のカテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従い、独立請求項に記載の特徴を有するカテーテルによって達成される。本発明の好適な実施形態およびさらなる展開は、従属請求項に明記されている。
【0009】
本発明の一態様によれば、患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプ用のカテーテルが提供される。別の態様によれば、患者の血管に経皮挿入される血管内血液ポンプが提供され、その血管内血液ポンプは、ポンプ装置とカテーテルとを備える。両態様におけるカテーテルは、近位端と遠位端との間に延び且つ外面を有する細長い管状本体を備える。本発明によれば、カテーテルの外面の少なくとも一部分は、タンパク質、特に血液タンパク質、最も好ましくはフィブリノゲンの吸着を促進するように構成される。
【0010】
一実施形態では、カテーテルは、外面の少なくとも一部分に多孔質三次元構造体を含む。当該構造体は多孔質であって、すなわち、血液タンパク質および他の細胞の吸着を可能にする複数の開口部を有する。当該構造体は三次元であって、すなわち、以下でより詳細に説明するように、半径方向に最小限の寸法(厚さ)を特に有する。
【0011】
驚くことに、多孔質三次元構造体は、組織の内部成長を低減または防止することができる。血管内でカテーテルの位置を固定するために組織の内部成長を促進することを目的として多孔質構造体を用いた構想を試みていたのだが、多孔質構造体が組織の内部成長を低減し防止さえすることが見出された。より具体的には、本発明によれば、多孔質三次元構造体が自己移植片(「自家移植片」と呼ばれる)の生成を促進することが望まれる。その自家移植片は、滑りやすい表面を形成し、組織(特に、血液ポンプの動作中にカテーテルが配置される血管の内壁の組織)の異常増殖または内部成長を防止する。言い換えれば、患者の身体は、多孔質構造体の領域においてカテーテル上に独自のコーティング、つまり自己コーティングを生成する。
【0012】
したがって、自家移植片の基礎は、タンパク質、特にフィブリノゲンの吸着であり得る。したがって、より一般的に言えば、組織の内部成長を回避するように設計された既知のカテーテルとは対照的に、血管内血液ポンプ用のカテーテルであって、その外面の少なくとも一部分に、たとえばフィブリノゲンおよび/または他のタンパク質などのタンパク質を吸着できる多孔質三次元構造体を有するカテーテルが提供される。フィブリノゲンの吸着後に、血小板および赤血球がフィブリノゲン層に付着することがある。たとえば筋内膜細胞などのさらなる細胞および/またはフィブリノゲンが付着して、安定的で均質な自家移植片が形成される。その結果、すでに上述したように、自己コーティングである自家移植片の形成後には、自家移植片が、少なくともカテーテルの外面のうち多孔質三次元構造体を支持する各部分に重なって位置する。それにより、自家移植片の外面が、カテーテル、多孔質三次元構造体、および自家移植片を含むアセンブリ全体の最外面を形成する。
【0013】
自家移植片は、多孔質三次元構造体によって支持されて所定位置に保持される。自家移植片は、滑りやすく、カテーテルが血管内壁を傷つけたり血管内壁に付着したりすることなく血管内をスライドできるようにする。多孔質構造体上に形成された自家移植片は、組織への刺激を軽減することで、異物を被包化する身体の自然な反応を低減し、カテーテルが組織の異常増殖によって被覆されることを防ぎ、たとえば約3~6ヶ月間などの長期利用においても血管に外傷を生じさせることなくカテーテルを容易に抜去できるようにする。カテーテルの挿入時および前進時における初期の機械的刺激によって血管に外傷が生じたとしても、それらの損傷は、カテーテルが所定位置に配置された状態で治癒する可能性がある。血管の機械的刺激または内部成長を回避するために、多孔質構造体は、カテーテルの全長に沿って設けられるか、または、カテーテル本体のうち血液ポンプの動作中に大きな血管内に配置される部分にのみ設けられることが可能である。
【0014】
好適な実施形態では、多孔質三次元構造体は、カテーテル本体の外面に配置されたスリーブによって構成される。スリーブは、編地、結び編み(knotted)生地、織布、不織布、またはそれらの組み合わせなどの布地材料で構成または形成されることがある。
【0015】
特に、スリーブは編地で構成されることができ、それは好ましくは経編みで作製されたものである。1×1編成のニット(トリコットとしても知られているもの)または2×1編成のニットなどの、適切な経編み技術を用いることが可能である。そのような経編み生地は、優れた伸縮性を有し、カテーテル本体の機械的特性に大きな影響を与えることなく、カテーテルの動きおよび屈曲に追従できる。さらに、布地材料(特に編地)のメッシュ構造によって、タンパク質および細胞を付着させて前述の自家移植片を形成するための開口部および糸を備える支持構造体が提供される。
【0016】
編地は、マルチフィラメントを含むことがあり、各マルチフィラメントは、3~100本のフィラメント、好ましくは15~30本のフィラメント、より好ましくは24本のフィラメントから成ることが好ましい。スリーブの布地材料は、溶融紡糸プロセスによって製造される場合があり、それにより、たとえば直径が約1μm~100μm、好ましくは2μm~30μm、より好ましくは10μm~20μmなどの、非常に細いフィラメントの作製が可能になる。
【0017】
布地材料に関して、たとえば経編み生地の場合、繊維、編み糸、または糸の線密度は、1000メートル当たりのグラム単位の質量として定義され、単位「tex」で測定される。マルチフィラメント1本当たりのフィラメント数が24本のPET生地の一例としては、PET78dtex/24fが挙げられる。スリーブに適した布地材料の他の例としては、17dtex/3fから110dtex/34fの範囲内のポリアミド、または、33dtex/24fから180dtex/88fの範囲内のPESが挙げられる。
【0018】
上記の例に加えて、直径がたとえば約0.5μm~10μm、好ましくは1.7μm~5μm、より好ましくは2μm~4μmなどの非常に細いフィラメントから成るマルチフィラメントを使用することが可能である。それらのフィラメントは、たとえば、いわゆる海島紡糸プロセスによって得ることができる。糸1本当たりのフィラメント数は、所望の糸直径に応じて調整する必要がある。
【0019】
スリーブは、近位端と遠位端とを有する細長い管状本体を備えることがある。スリーブは、少なくともスリーブの近位端およびスリーブの遠位端にて、カテーテルの管状本体に取り付けられる場合がある。スリーブはさらに、スリーブ本体の長手部分に沿った追加位置、またはスリーブの全長に沿った追加位置においても、カテーテル本体に取り付けられ得ると理解される。ただし、スリーブが両端部のみで固定されていれば、カテーテルの機械的特性は実質的に影響を受けない。スリーブは、接着剤不使用の方法で、すなわち、利用中に不具合が発生しかねない追加の接着剤を使用せずに、カテーテル本体に取り付けられることが有利である。たとえば、スリーブは、溶剤接着によってカテーテル本体に取り付けられることがあり、その場合、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶剤を使用して、スリーブ材料に影響を与えずにカテーテル本体をエッチングする。その後、スリーブはカテーテル本体にしっかりと接着する。
【0020】
スリーブは、管状本体の外面にぴったりと嵌まっている。言い換えれば、スリーブの内径は、カテーテル本体の外径と実質的に等しいか、またはそれよりわずかにのみ大きい場合がある。組織または血餅が、スリーブ内すなわちスリーブとカテーテル本体との間に蓄積するのを回避するためには、カテーテル本体に対してスリーブがぴったりと嵌まっていることが、緩く嵌まっているよりも好ましいことがある。ぴったりと嵌まっている場合、スリーブは、軸方向に比べて半径方向により硬い場合がある。特に、スリーブは軸方向に柔軟であることがあり、特に軸方向の伸長および軸方向の圧縮に関してそうである。より詳細には、スリーブは、軸方向に伸長可能且つ軸方向に圧縮可能である場合があり、それによりスリーブは、しわを生じさせることなくカテーテルが曲がることを許容しつつ、カテーテルにぴったりと合った状態で配置されることができる。
【0021】
ただし、要望があれば、スリーブを緩く嵌めることがあり、すなわち、スリーブの内径がカテーテル本体の外径よりも大きい場合がある。スリーブを緩く嵌めて、カテーテル本体の外面とスリーブの内面との間に間隙が存在し得るようにした場合、自家移植片は、スリーブを少なくとも部分的にカプセル化する場合がある。つまり、自家移植片は、半径方向にスリーブを通って延びるか、または、スリーブの半径方向外面およびスリーブの半径方向内面の両方から半径方向に延びることができ、それにより、カテーテルの管状本体の外面に接触できる。
【0022】
多孔質構造体は、非吸収性材料で構成または形成されることが好ましい。多孔質構造体は、自家移植片の支持構造体または足場として機能する。したがって、多孔質構造体は、経時的に且つ血液ポンプの動作中に安定していて吸収されないものであれば、好ましい。その吸収特性とは無関係に、多孔質構造体は、放射線不透過性材料から成ることがある。それにより、カテーテルの正しい配置、特に多孔質構造体の正しい配置を観察しやすくなる。より具体的には、カテーテルの長手部分の一部分のみに沿って延在し得る多孔質構造体が、組織の異常増殖が最も生じやすい血管の重要領域に正しく配置されているかどうかを、観察することができる。たとえば、布地材料の糸のいくつかが、放射線不透過性マーカーとして機能するように、放射線不透過性材料で構成される場合がある。
【0023】
多孔質構造体に適した材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、および、絹繊維などの天然タンパク繊維が挙げられる。スリーブの布地材料は、上記材料のうちの1つまたは複数から成るフィラメントで構成され得る。スリーブは、単一の材料または材料の組み合わせから成ることがある。たとえば、布地材料の経糸と緯糸とが異なる材料から成ることがある。
【0024】
多孔質構造体によって、タンパク質および細胞の吸着を促進するように構成された三次元構造体が形成され得る。より具体的には、三次元構造体は、半径内側方向へタンパク質および細胞が形成されることを許容する複数の開口部(または孔)および複数のウェブ(または支柱部)を含むことがある。開口部およびウェブは、布地材料あるいは他のメッシュまたはネット構造体の開口部および糸で形成されることができる。もしくは、多孔質三次元構造体は、発泡状またはスポンジ状の構造体、あるいは、細孔を有する他の任意の規則的構造体または不規則構造体であって、タンパク質および細胞の吸着を促進できるもので形成されることが可能である。要望があれば、多孔質構造体は、カテーテルの管状本体と一体的にその外面上に形成されるか、あるいは、たとえば前述のスリーブの形態で別個に形成されるか、あるいは、たとえばエレクトロスピニングまたは吹付けによって直接カテーテル上に作製されることができる。
【0025】
多孔質三次元構造体は、布地スリーブ、メッシュ、発泡体、または他の多孔質構造などの、上記構成のうちの1つまたは複数を有する単一または複数の層を備える場合がある。個々の層は、同じ構成または異なる構成で形成されることがある。たとえば、発泡状またはスポンジ状の構造体を、その発泡体またはスポンジを取り囲む布地スリーブと組み合わせることができる。
【0026】
一実施形態では、多孔質構造体によって、複数の第1の開口部と複数の第2の開口部とが形成されることがあり、第1の開口部と第2の開口部とはサイズが異なる。言い換えれば、布地材料の場合、メッシュサイズが多様である場合がある。それにより、上記自家移植片の形成が向上する可能性がある。上述のように複数の層を有する多孔質構造体では、異なる細胞が三次元多孔質構造体の異なる層に付着することを許容するように、開口サイズを個々の層において多様または同じにする場合がある。
【0027】
多孔質構造体、特に上記三次元構造体、より具体的には上記スリーブは、厚さが少なくとも20μm、好ましくは少なくとも30μmであり得る。多孔質三次元構造体の厚さは、カテーテルの管状本体の外面から多孔質構造体の外面まで、半径方向に測定される。多孔質構造体とカテーテル本体の外面との間に間隙が存在する場合、多孔質構造体の厚さは、多孔質構造体の内面から多孔質構造体の外面まで、半径方向に測定されることができる。言い換えれば、自家移植片の支持構造体としてのスリーブの機能を向上させるために、スリーブの壁の厚さは、最小寸法であるべきである。特に、最小の半径方向厚さは、自家移植片が多孔質構造体の外面から半径内側方向に成長することを可能にし、それにより、自家移植片の初期形成以降に全体の直径が実質的に拡大しないようにする。カテーテルの全直径は、血管壁の刺激または損傷を回避するために、12F(4mm)以下、好ましくは9F(3mm)以下、場合によっては6F(2mm)または4F(1.3mm)であり得ると理解される。埋め込まれたカテーテルに対して血管のサイズが小さすぎる場合、自家移植片が存在しているにもかかわらず、引き起こされた機械的刺激が組織の異常増殖を生じさせてしまう可能性がある。
【0028】
上記解決手段の記載、および好適な実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解される。本開示を説明する目的で、図面を参照する。ただし、本開示の範囲は、図面に開示された特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】異なるタイプのアクセスを介して患者の心臓に挿入された血管内血液ポンプを示す概略図である。
図1b】異なるタイプのアクセスを介して患者の心臓に挿入された血管内血液ポンプを示す概略図である。
図2】スリーブを備える図1の血液ポンプのカテーテルを示す断面図である。
図3】スリーブの編地パターンの実施形態を示す図である。
図4】スリーブの編地パターンの別の実施形態を示す図である。
図5】多孔質三次元構造体の代替実施形態を示す図である。
図6】多孔質三次元構造体のさらなる代替実施形態を示す図である。
図7】2層の多孔質三次元構造体を備える図2のカテーテルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aおよび図1bに、患者の心臓Hに挿入された血管内血液ポンプPを示す。より具体的には、血液ポンプPは、カテーテル5に取り付けられたポンプ装置1を備える。ポンプ装置1は、カテーテル5によって患者の心臓Hの左心室LVに挿入されて、左心室LVから大動脈AOに血液を送り込む。図示の用途は単に例示的な用途であり、本発明の血液ポンプPはこの用途に限定されない。たとえば、右心室RVにおける逆の用途が想定され得る。血液ポンプPは、たとえば大腿からのアクセスを介して経皮的に挿入され、大動脈AOを通って心臓Hに進入する(図1aを参照のこと)。あるいは、血液ポンプPは、腋窩からのアクセスを介して経皮的に挿入され、鎖骨下動脈SAを介して大動脈AOを通って心臓Hに進入する(図1bを参照のこと)。血液ポンプPは、血流出口2が患者の心臓Hの外の大動脈AO内に位置し、且つ、フローカニューレ4と流れが連通している血流入口3が左心室LVの内部に位置するように、配置される。血流入口3から血流出口2への血流を発生させるために、インペラ(図示せず)がポンプ装置1に設けられる。インペラの回転は、ポンプ装置1内に設置された電気モータ(図示せず)によってもたらされる。
【0031】
血管内血液ポンプPは、カテーテル5によって患者の心臓内に進められる。ここで、ポンプ装置1は、カテーテル5の近位端16の反対側に位置するカテーテル5の遠位端15に取り付けられている。図1に概略的に示すように、カテーテル5は、挿入中または動作中、あるいはおそらくその両方の間に、大動脈AOの内壁に接触することがある。このことは、血管壁の刺激または損傷(表面トポロジーおよび異物によって誘発される)を引き起こし、身体組織の異常増殖によるカテーテル5の被覆を促す可能性がある。血液に含まれるタンパク質および他の細胞が、カテーテル5の外面に付着する。特に、最初にタンパク質および細胞がカテーテル5の外面に付着する。したがって、既知のカテーテルは、血管組織に陥入する傾向があり、それにより、患者の身体から血液ポンプPを取り外すのが困難になる。このことは、血液ポンプPが数週間または数か月間動作される長期利用において、特に発生する。陥入したカテーテルの抜去によって、血管に損傷が生じる可能性がある。
【0032】
組織の内部成長または異常増殖を低減または回避するために、布地スリーブ6の形態である多孔質三次元構造体が、カテーテル5の少なくとも一部分、特に血管内壁に接触する傾向がある部分に沿って設けられる。スリーブ6は、フィブリノゲンの付着を誘導するものであり、組織の内部成長を促進すると考えられたのだが、実際には、以下でより詳細に説明するように、血管内壁に沿ってスライドする自家移植片7(図2を参照のこと)がスリーブ6に形成されるため、逆のことが起こることが判明した。
【0033】
図2に、スリーブ6が取り付けられたカテーテル5の断面を概略的に示す。カテーテル5は、外面8と管腔9とを有する管状本体10を備える。スリーブ6は、遠位端11と近位端12とを有する管状本体17を備え、適切な取り付け技術(特に、追加の接着剤の使用を必要としない溶剤接着)によってカテーテル5の本体10に取り付けられる。図2において符号13および14で示すように、スリーブ6は、遠位端11および近位端12においてのみカテーテル本体10に取り付けられている。このように、端部11,12の間のスリーブ6の大部分がカテーテル本体10の外面8に取り付けられていないので、カテーテル5の機械的特性は、スリーブ6によって実質的に影響されない。さらに、スリーブ6が単層で形成されることが図示されているが、スリーブ6は複数の層で構成され得ると理解される。それらの層は、たとえば、以下で説明する編地によって形成される開口部のサイズに関して、および/または、層材料に関して、互いに同一であることも異なることも可能である。
【0034】
布地スリーブ6は、経編み生地で構成され得る。経編み生地は、良好な柔軟特性を有し、開口部を備えた支持構造体を提供して自家移植片7の吸着を促進する。結び編み生地、織布、不織材料、またはそれらの組み合わせなどの他の布地材料は、それらが自家移植片の形成を誘導して自家移植片を支持するのに適していれば、使用することができる。スリーブ6に特に適切であると見出された既知の経編み生地の例を、図3および図4に概略的に示す。図3は、1×1編成のニット(トリコットとしても知られているもの)としての編地20を示している。図4は、2×1編成のニットとしての編地30を示している。編みパターンを視覚化するために、図3では、糸群22のうち個別の糸21を際立たせてある。フィブリノゲンの吸着および血球のさらなる付着を促進して自家移植片7を形成するために、異なるサイズの開口部23,24が糸21,22の間に形成されている。同じことが、図4に示す編地30の糸31,32および開口部33,34にも当てはまる。糸21,22,31,32は、スリーブ6の三次元構造体を強化するために、マルチフィラメントで形成されることが好ましい。
【0035】
自家移植片7は、スリーブ6(特に、上述したようにマルチフィラメントから成る経編み生地20,30)によって提供される三次元構造体の内部へ成長する。自家移植片7は、スリーブ6によって安定的に支持されているので、崩れたり緩んだりせず、カテーテル5の血管内壁への付着を防ぐ滑りやすい自己コーティングを提供する。自家移植片7はスリーブ6内へ成長するので、カテーテル5の全直径は、自家移植片7の初期形成以降に実質的に拡大しない。自家移植片7はスリーブ6を覆い、それによりカテーテル5は、スリーブ6の領域にて異物として被包化されず、血管に外傷を生じさせることなく容易に抜去されることができる。さらに、血液ポンプPを患者に挿入した際に最初に外傷が生じたとしても、血管内にカテーテル5が配置された状態での血液ポンプPの動作中にも、治癒が始まる可能性がある。
【0036】
このように、スリーブ6にタンパク質および他の細胞を意図的に且つ望んで吸着させることは、カテーテル5の血管壁への陥入をもたらすのではなく、カテーテルを血管内で自由にスライド可能にしてカテーテル5の陥入を防ぐ自己コーティングが形成されるという、予期せぬ効果を有する。この予期せぬ効果は、変遷過程の相違によって説明できる。つまり、自家移植片の形成は、多孔質構造体が血液に浸されるとすぐに始まるが、異常増殖によるカテーテルの被覆には数週間かかる。したがって、自家移植片が(通常は数日以内に)存在するようになると直ちに、血管壁から隣接するカテーテルへの異常増殖を誘発する刺激が停止され、異常増殖は発生しない。
【0037】
図5および図6は、前述のスリーブ6の代わりに、または場合によってはそれに加えて、カテーテルに適用され得る多孔質三次元構造体のさらなる代替実施形態を、概略的に示す。自家移植片の形成は、スリーブ6について上述したと同様に生じる。図5を参照すると、多孔質三次元構造体40は、1つまたは複数の層でのエレクトロスピニングによって形成されることがあり、開口部42を形成して上述したような自家移植片7の生成を許容するように、複数のフィラメント41で構成され得る。フィラメント41ひいては開口部42は、所望の寸法で不規則に配置されることができる。エレクトロスピニングは、多孔質構造体40をカテーテル5上に直接作製することを可能にする。同様に、図6に示すような開口部51を有する発泡状またはスポンジ状の構造体50を、カテーテル5上に直接形成してもよい。
【0038】
図7は、外面8上に多層状の三次元構造体を備える図2のカテーテル5を示す。この実施形態では、多層構造体は、2つの多孔質層6aおよび6bを有する。2つの層6a,6bは相違する場合がある。たとえば、内層6aは、外面8上に直接、発泡体として、またはフィラメントをエレクトロスピニングすることによって形成され、外層6bは、布地スリーブとして形成されることがある。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7