(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124579
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ノズル取付部材
(51)【国際特許分類】
E03D 11/13 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
E03D11/13
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111094
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2020112908の分割
【原出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】清家 玲生
(72)【発明者】
【氏名】浅井 崇臣
(72)【発明者】
【氏名】福谷 孝二
(72)【発明者】
【氏名】手島 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】深川 雅史
(57)【要約】
【課題】ノズル取付部材の組み付けを容易にするとともに、ノズル取付部材の止水性能と強度の向上を両立させたノズル取付部材を提供すること。
【解決手段】水洗式便器9に洗浄水を供給するリムノズル3を、便器本体91に形成されたノズル取付孔部95に取り付けるためのノズル取付部材1は、リムノズル3が挿通された状態で、便器本体91の外側からノズル取付孔部95を挿通可能に便器本体91の内側に固定される環状部11を備え、環状部11は、第1の外径を有する部分と、前記第1の外径とは異なる第2の外形を有する部分とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式便器に洗浄水を供給するノズルを、便器本体に形成されたノズル取付孔部に取り付けるためのノズル取付部材であって、
前記ノズルが挿通された状態で、前記便器本体の外側から前記ノズル取付孔部を挿通可能に前記便器本体の内側に固定される環状部を備え、
前記環状部は、第1の外径を有する部分と、前記第1の外径とは異なる第2の外径を有する部分とを備える、ノズル取付部材。
【請求項2】
前記ノズルの全周が、前記環状部の内周に当接する、請求項1に記載のノズル取付部材。
【請求項3】
前記環状部の内周は、円である、請求項1又は2に記載のノズル取付部材。
【請求項4】
前記環状部は、前記ノズル取付孔部の直径をD、前記ノズルの外径をd、前記環状部の内径をd1、前記環状部の外径最大径をd2としたとき、以下の式(1)を満たす寸法を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のノズル取付部材。
[数1]
d2/d1<D/d
d≦d1 ・・・(1)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記ノズル取付部材を前記ノズル取付孔部に配置する治具であって、
前記ノズルに着脱可能に接続される接続部を有する治具。
【請求項6】
前記接続部から前記ノズルの挿入方向における基端側へ延び、前記接続部の外径よりも小径の保持部を有する、請求項5に記載の治具。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記ノズル取付部材を前記ノズル取付孔部に組み付けるノズル取付部材の組付け方法であって、
前記ノズルに着脱可能に接続される接続部と、前記接続部から前記ノズルの挿入方向における基端側へ延び、前記接続部の外径よりも小径の保持部を有する治具の前記保持部に前記環状部を挿通させ、
前記接続部を、前記ノズル取付孔部を挿通させて吐水方向下流側へ移動させ、
前記環状部を、前記保持部で傾けた状態で前記ノズル取付孔部を挿通させ、
前記ノズル取付部材を、前記ノズル取付孔部の吐水方向下流側に残した状態で前記治具を前記ノズルから外す、ノズル取付部材の組付け方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記ノズル取付部材の組付構造であって、
前記ノズルの外周側に設けられ、前記ノズル取付孔部に挿通した状態で組付けられる弾性部材と、
前記弾性部材の上流側に配置されるナットと、
前記弾性部材と前記ナットの間に配置されるワッシャと、をさらに備え、
前記ワッシャは、前記弾性部材が径方向に移動することを規制する規制部を有する組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗式便器を洗浄する洗浄水を吐水する配管には、下流側の端部にノズルが設けられる。ノズルは、便器本体に形成されたノズル取付孔部に取り付けられ、固定される。この際、ノズルがノズル取付孔部から抜けてしまうことを防止するように、ノズルの外周に組み付け、ノズル取付孔部の下流に配置されるノズル取付部材を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便器本体に洗浄水を吐水するノズルを組み付ける場合、ノズル取付孔部より前方は便器本体の周壁等で囲われており、手が届かない。ノズル取付孔部より前方へのノズル取付部材の組み付けを容易にするとともに、ノズル取付部材の止水性能と強度の向上を両立させたノズル取付部材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、水洗式便器に洗浄水を供給するノズルを、便器本体に形成されたノズル取付孔部に取り付けるためのノズル取付部材であって、前記ノズルが挿通された状態で、前記便器本体の外側から前記ノズル取付孔部を挿通可能に前記便器本体の内側に固定される環状部を備え、前記環状部は、外径が異なる部分を有する、ノズル取付部材に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態のノズル取付部材が設けられた水洗式便器の側面断面図である。
【
図2】本実施形態のノズル取付部材の組付け構造を示す断面図である。
【
図3A】本実施形態のワッシャを下流側から視た斜視図である。
【
図3B】本実施形態のワッシャとパッキンの関係を示す図である。
【
図4】本実施形態のノズル取付部材の正面図である。
【
図5】本実施形態のノズル取付部材の組み付けを示す図である。
【
図6】本実施形態のノズル取付部材の組み付けに用いられる治具の斜視図である。
【
図7】本実施形態のノズル取付部材治具の治具を用いた組み付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明においては、水洗式便器9の便座92に座った人から視た場合の前後の方向を前後方向と定義する。前後方向に交差する左右を結ぶ方向を幅方向と定義する。鉛直方向に沿った上下の方向を上下方向と定義する。図中、Fは水洗式便器9の前方を、Rは後方を示す。
【0008】
図1は、本実施形態のノズル取付部材1が設けられる水洗式便器9を示す図である。水洗式便器9は、便器本体91と、便座92と、便蓋93と、機能部94と、を有する。
【0009】
便器本体91は、床等の設置面から所定高さ延び、腰掛けて使用する洋式便器である。便器本体91は、ボウル部91aと、リム空間91bと、仕切り壁96とを有する。
【0010】
ボウル部91aは、便器本体91の前方側に配置され、上部に凹部が形成されている。ボウル部91aの下部には、下水道に接続される排水口が形成されている。
【0011】
リム空間91bは、ボウル部91aの上部の周縁に沿って便器本体91の内部に形成される。リム空間91bは、便器本体91の後方から供給される洗浄水が一時的に滞留可能な中空の空間である。リム空間91bには、ボウル部91a側へ連通し、洗浄水を供給する吐水孔(図示省略)が形成されている。リムノズル3から吐水された洗浄水は、リム空間91bを介してボウル部91aへ供給されるように構成されている。
【0012】
仕切り壁96は、便器本体91の後方と、ボウル部91aとの間に上下方向に延びる仕切りである。仕切り壁96には、後述するノズルとしてのリムノズル3を挿通させるノズル取付孔部95が形成されている。仕切り壁96から前方へのリム空間91bへは、ノズル取付孔部95のみが連通しており、施工者の手は届かないように構成されている。
【0013】
便座92は、便器本体91の上面に配置され、使用者が腰を掛ける部材である。便座92は、便器本体91のボウル部91aの周縁に沿って、略環状に形成されている。
【0014】
便蓋93は、便座92の上面及び便器本体91のボウル部91aを覆う蓋である。便蓋93は、便器本体91の後方に接続され、ヒンジの回転により開閉可能に構成されている。
【0015】
機能部94は、便器本体91の後方の上面に配置され、水洗式便器9における便座開閉装置や洗浄装置、加温装置等の各種の装置を作動させるための部品が配置された部分である。
【0016】
ノズル取付部材1は、水洗式便器9に洗浄水を供給するためのノズル取付孔部95に組み付けられる部品である。ノズル取付部材1は、
図2に示すノズル取付部材の組付構造100により、ノズル取付孔部95に組み付けられる。ノズル取付部材の組付構造100は、ノズル取付孔部95と、リムノズル3と、を有し、便器本体91の仕切り壁96に形成されたノズル取付孔部95にリムノズル3を接続する構造である。
【0017】
図2に示すように、リムノズル3は、水洗式便器9に洗浄水を供給するノズルであり、不図示の洗浄水供給源に接続されるリム配管33の下流側に設けられる。リムノズル3は、リムノズル接続部30と、ナット4と、弾性部材5と、ワッシャ6と、ノズル取付部材1と、バックアップリング7と、を有する。
【0018】
リムノズル接続部30は、ノズル取付孔部95に挿通され固定された状態でリム配管33下流側の端部に接続される筒状のアダプタである。リムノズル接続部30の上流側から洗浄水が供給され、ノズル取付孔部95を通過して便器本体91のリム空間91bへと洗浄水が流通する。リムノズル接続部30は、上流側よりも、便器本体91のノズル取付孔部95に挿通される下流側の方で径が大きく形成されている。リムノズル接続部30の外側表面には、リムノズル接続部30が係合する部品の形状に応じた溝及び突起が形成されている。具体的には、リムノズル接続部30の上流側には、後述するナット4と係合するネジ溝31が形成されており、下流側には、後述するノズル取付部材1が係合するフランジ状の突起32が形成されている。
【0019】
リムノズル接続部30は、断面視円形の筒の内壁の一部に、中空部分の断面が六角形となるように内周面側に形成される係合部34を有する。係合部34は、断面視六角形の中空部分に、後述する治具8の突出部811が係合するように寸法が合わされている。
【0020】
弾性部材5は、リムノズル接続部30の外周に設けられる。弾性部材5は、中心側に中空部54を有する筒状で、フランジの形成されたゴム製平パッキンである。弾性部材5は、挿入部51と、内側凸部52と、当接部53と、を有する。弾性部材5の中空部54には、リムノズル接続部30が挿通される。弾性部材5は、ノズル取付孔部95に挿通した状態で組み付けられる。
【0021】
挿入部51は、ノズル取付孔部95に挿入される略円筒形の部分であり、リムノズル接続部30の挿通する挿通方向に沿って延びる。
【0022】
当接部53は、挿入部51の一方側で挿入部51からフランジ状に拡径する部分である。
図2に示すように、当接部53は、挿入部51がノズル取付孔部95に挿入された状態で、ノズル取付孔部95の周囲の仕切り壁96の表面に当接可能な部分である。当接部53は、挿入部51から屈曲して拡径する面が平坦な平面状に形成され、仕切り壁96の表面に面で接触する。仕切り壁96の表面と接する側と反対の上流側の面も平坦な平面状に形成され、後述するワッシャ6が当接する。
【0023】
内側凸部52は、当接部53における中空部54の内壁面に形成される環状の凸部である。内側凸部52は、中空部54の内壁面から内側に向かって突出する環が上下方向に離れて形成されている。内側凸部52は、リムノズル接続部30が中空部54に挿入された際、リムノズル接続部30の外側表面を押圧する。
【0024】
バックアップリング7は、中心にリムノズル接続部30が挿通される環状の薄い金具である。バックアップリング7は、弾性部材5の挿入部51の下流側端部に対向するように配置される。バックアップリング7は、後述するノズル取付部材1の上流側かつ仕切り壁96の下流側に配置される。バックアップリング7は、弾性部材5が変形した際に、弾性部材5を支持する。
【0025】
ワッシャ6は、弾性部材5の当接部53における上流側に配置される。ワッシャ6は、弾性部材5と後述するナット4との間に配置される。ワッシャ6は、樹脂製で略筒状の形状を有し、内部をリムノズル接続部30が挿通する。ワッシャ6は、ワッシャ部61と、ガイド部62と、ビード部63と、ナット係合部64と、を有する。
【0026】
ワッシャ部61は、弾性部材5における当接部53の仕切り壁96に当接する側と反対側の面に配置される。ワッシャ部61は、当接部53を覆うように、当接部53に重ねて配置される。ワッシャ部61は、当接部53と略同じかわずかに大きい外径を有し、当接部53との接触面61aを有する。
【0027】
ガイド部62は、ワッシャ部61の周縁から突出して当接部53の外周面に沿って延びる側壁である。ガイド部62は、ワッシャ部61の面に対して略直交する方向に延び、当接部53の側面を少なくとも部分的に覆うように配置される。
【0028】
ビード部63は、
図3Aに示すように、ガイド部62の内周側に配置される環状の突起である。ビード部63は、ワッシャ部61における弾性部材5との接触面61aからガイド部62と同じ方向へ突出する。ビード部63がワッシャ部61から突出する距離D1は、ガイド部62がワッシャ部61から延出する距離よりも短い。ビード部63の突出端部は、曲面を有しており、弾性部材5の当接部53に線接触で当接する。
【0029】
ビード部63は、
図3Bに示すように、ガイド部62からワッシャ6の内周側へ、ビード部63の径方向の厚さW1と同程度の距離離れた位置に配置される。同程度とは、例えば1mm以下の誤差であってよい。本実施形態では、ビード部63の径方向の厚さW1は、0.8mmであり、ガイド部62の内周側の壁と、ビード部63のガイド部62側の側面との間の幅W2は、1mmであることを例示できる。
【0030】
ガイド部62及びビード部63は、ともに規制部60を構成する。規制部60は、弾性部材5が径方向に移動することを規制する。
図3Bに示すように、後述するナット4が締結されると、ワッシャ6を通じて弾性部材5が押圧され、弾性部材5が
図3Bの矢印方向に変形しようとする。ガイド部62は、弾性部材5の外周面に沿って延びることで、ゴム製平パッキンである弾性部材5が、外側へ伸びるように変形することを防止する。ビード部63は、弾性部材5の厚さ方向に食い込んで当接することで、ワッシャ6と弾性部材5との面圧を高める。ビード部63が形成されていることにより、便器本体91のノズル取付孔部95近傍に凹凸が形成されていたり、弾性部材5の中心がノズル取付孔部95の中心からずれて片側へ寄っていたりしても、弾性部材5におけるビード部63より径方向で内側に位置する部分の変形が抑制されている。
【0031】
ナット係合部64は、ワッシャ部61における接触面61aと反対側の面から延びる円筒状の部分である。ナット係合部64は、ワッシャ部61よりも小さな外径を有する。ナット係合部64は、ナット4の内周に係合し、ナット4に固定される部分である。
【0032】
ナット4は、リムノズル接続部30とリム配管33とを、ワッシャ6及び弾性部材5を介して接続し、外れないように締結する締結部材である。ナット4は、弾性部材5の上流側に配置される。ナット4は、挿通孔4aと、ワッシャ係合部41と、配管側取付部42と、締結部43と、を有する。
【0033】
挿通孔4aは、ナット4の中心を厚さ方向に通り、リムノズル接続部30及びリム配管33を挿通させるための貫通孔である。
【0034】
ワッシャ係合部41は、ワッシャ6のナット係合部64に係合する部分である。ワッシャ係合部41は、二重の筒状に延びるように形成され、外周部411と、内周部412と、を有する。外周部411と内周部412との間にワッシャ6のナット係合部64が係合する。内周部412の内側には、リムノズル接続部30が挿通して係合する。
【0035】
配管側取付部42は、リム配管33の下流側端部に接続される。配管側取付部42は、ワッシャ係合部41の上流側の端部から二重の筒状に延びるように形成され、外周部421と、内周部422とを有する。外周部421と内周部422との間にリム配管33が挿入される。
【0036】
締結部43は、ワッシャ係合部41の外周面が、締結を容易にするため断面視多角形に形成された外面である。
【0037】
ノズル取付部材1は、中心側にリムノズル接続部30が挿通される環状の金具である。ノズル取付部材1、ノズル取付孔部95の下流側に取り付けられ、リムノズル接続部30が上流側へ抜けることを防止する抜け止め金具である。ノズル取付部材1は、環状部11と、延出部12と、を有する。
【0038】
環状部11は、リムノズル接続部30が挿通した状態で、便器本体91の外側、すなわち便器本体91の後方側からノズル取付孔部95を通って便器本体91の内側、すなわちリム空間91b側に固定される。環状部11は、
図4に示すように、貫通孔13を有し、貫通孔13の周縁が、リムノズル接続部30の外周に当接可能な内径を有する。環状部11の内周は、円であり、リムノズル接続部30の全周に当接する。環状部11は、外径が異なる部分を有する。例えば環状部11のうちのある部分を第1の外径を有する部分11aとした場合、第1の外径を有する部分11aと異なる部分11bでは、第1の外径と異なる第2の外径を有する。具体的には、環状部11の外周側の形状は、略楕円形状となっている。環状部11の外周側の形状は、厳密な楕円形状でなくてよいが、長手方向及び短手方向を有することが好ましい。本実施形態では、環状部11の外周側で、環状部11の中心からの距離が最も遠い部分では、外側に突出し、端部が直線状の凸部121が形成されている。
【0039】
延出部12は、環状部11の外縁が、略楕円の長径方向における端部で内周側から外周側へ延出する環状部11の一部分である。
図4中の符号11a、11bは説明のための例示であり、環状部11における略楕円の外径の短い側の任意の部分を第1の外径を有する部分と呼び、外径の長い側の延出部12を第2の外径を有する部分と呼ぶこともできる。環状部11の中心から延出部12の外縁側までの距離Lが略楕円の長径となり、短径となる環状部の中心から外縁側までの距離Sと異なっている。延出部12は、仕切り壁96の下流側に当接する。延出部12が仕切り壁96に当接し、環状部11の内周側でリムノズル接続部30の全周に当接しているので、リムノズル接続部30が上流側へ抜けないようになっている。
【0040】
図5に示すように、ノズル取付部材1は、以下の式(1)を満たす寸法を有することが好ましい。ノズル取付部材1の厚みを考慮しない場合、式(1)を満たす寸法を有していれば、傾けてノズル取付孔部95を通過させることでノズル取付孔部95の下流側へ移動させることができる。式(1)では、ノズル取付孔部95の直径をD、リムノズル接続部30部の外径をd、環状部11の内径をd1、環状部11の外径最大径をd2とする。
[数1]
d2/d1<D/d
d≦d1 ・・・(1)
【0041】
図6は、ノズル取付部材1をノズル取付孔部95に配置し、組み付ける組み付け方法に用いる治具8を示す。ノズル取付部材1が上記の式(1)を満たさない場合、ノズル取付部材1は、治具8に接続されることで、ノズル取付孔部95の下流側に組み付けることができる。治具8は、径の異なる円柱状の棒が長手方向に接続された形状をしている。治具8は、接続部81と、保持部82と、傾斜部83と、を有する。
【0042】
接続部81は、リムノズル接続部30に着脱可能に接続される。接続部81は、径が大きく、短い円柱状を有する。接続部81の外周面における長手方向中央部には、断面視六角形の突出部811が突出する。リムノズル接続部30の上流側の開口に接続部81を挿入し、突出部811をリムノズル接続部30の内壁から突出した係合部34の内側を通過させた後、接続部81を回転させると、突出部811と係合部34との位置がずれるため、突出部811が係合部34に係合する。これにより、治具8がリムノズル接続部30から抜けなくなるように構成されている。
【0043】
保持部82は、施工者が保持する部分である。保持部82は、接続部81の外径よりも小径であり、接続部81よりも長い棒である。保持部82は、環状部11の貫通孔13を挿通させることが可能な環状部11の内径よりも小さな径を有する。好ましくは、環状部11の内径よりの半分以下の外径を有する。保持部82は、接続部81からリムノズル接続部30の挿入方向の基端側へ延びる。
【0044】
傾斜部83は、接続部81及び保持部82の間に位置し、接続部81側から保持部82側に向かって徐々に縮径する傾斜した面である。傾斜部83の接続部81側の外径は、接続部81の外径よりも大きい。傾斜部83は、接続部81側の端部における下流側の面83aが、リムノズル接続部30の上流側の端部に当接可能に配置される。治具8を下流側へ移動させると、傾斜部83の下流側の面83aがリムノズル接続部30を下流側に押して接続部81から力を伝達するので、リムノズル接続部30が移動するように構成されている。
【0045】
図7を参照して、治具8を用いたノズル取付部材1の組付け方法について説明する。まず、治具8の接続部81をリムノズル接続部30に挿入し、突出部811を係合部34に係合させる。これにより、接続部81をリムノズル接続部30の上流側の端部に接続する。次に、保持部82にノズル取付部材1の環状部11を挿通させる。保持部82は、環状部11が挿通可能に小径であるので、環状部11を傾けることができる。次に、接続部81をノズル取付孔部95に挿通させて仕切り壁96を超え、吐水方向下流側へ移動させる。続いて環状部11を、保持部82で傾けた状態でノズル取付孔部95を挿通させる。延出部12をノズル取付孔部95の周囲の仕切り壁96に引っかけ、ノズル取付部材1をノズル取付孔部95の形成された仕切り壁96の吐水方向下流側に残した状態で、ノズル取付孔部95の上流側から弾性部材5を押し込む。弾性部材5を上流側から下流側へ押し込む一方、治具8を下流側から上流側へ引っ張る。接続部81をひねるように回転させると、接続部81がリムノズル接続部30から外れる。これにより、ノズル取付部材1を仕切り壁96の下流側の面に押圧させながら組み付けることができる。
【0046】
以上の実施形態によれば、以下の効果を奏する。水洗式便器9に洗浄水を供給するリムノズル3を、便器本体91に形成されたノズル取付孔部95に取り付けるためのノズル取付部材1を、リムノズル3が挿通された状態で、便器本体91の外側からノズル取付孔部95を挿通可能に便器本体91の内側に固定される環状部11を含んで構成した。環状部11を、第1の外径を有する部分11aと、第1の外径とは異なる第2の外径を有する部分11b、12とを含んで構成した。すなわち、環状部11は、外形が円形でない。このため、環状部の中心から外縁までの距離が大きい延出部12において、ノズル取付孔部95の下流側に位置する仕切り壁96にしっかりと係合することができる。よって、リムノズル3のノズル取付孔部95への組付け強度が向上する。ノズル取付部材1における環状部11の外径が異なる部分があるため、例えば略楕円形の場合には、長径側を傾けてノズル取付孔部95を挿通させることで、ノズル取付孔部95より前方へノズル取付部材1の組み付けが容易になる。
【0047】
本実施形態によれば、リムノズル3の全周を、環状部11の内周に当接させた。これにより、リムノズル3の外周及び環状部11の内周の全周に、同じ強さで荷重がかかるようになる。環状部11の内周の全周がリムノズル3におけるリムノズル接続部30に当接することで、負荷が分散する。よって、ノズル取付部材1の耐久性が向上する。もし、仮に環状部11の内周における一部しかリムノズル接続部30が当接しなかった場合には、当接する部分にのみ荷重がかかり、一部で負荷を受け続けるため、耐久性が低くなる。本実施形態では、ノズル取付部材1の耐久性が高いので、ノズル取付部材1とともに組み付ける部品をより高い強度で締結し、ノズル取付部材1に大きな荷重をかけることができる。その結果、ノズル取付孔部95の周囲の止水性が向上する。ノズル取付部材1とともに組み付ける部品をより高い強度で締結し、ノズル取付部材1に大きな荷重をかけることができるため、リムノズル接続部30やリムノズル3、ノズル取付孔部95等の径の大きさや、側壁の厚さを大きくすることができ、設計の自由度が向上する。
【0048】
本実施形態によれば、環状部11の内周を、円にした。これにより、環状部11を
リムノズル接続部30の全周にしっかりと当接することができる。よって、上記と同様の効果を奏する。
【0049】
本実施形態によれば、前記環状部は、ノズル取付孔部95の直径をD、リムノズル3の外径をd、前記環状部の内径をd1、環状部11の外径最大径をd2としたとき、以下の式(1)を満たす寸法を有するように構成した。
[数2]
d2/d1<D/d
d≦d1 ・・・(1)
ノズル取付部材1の厚みを考慮しない場合、上記の式(1)を満たすことで、治具8を用いなくてもノズル取付孔部95にノズル取付部材1を挿通させることができる。そして、ノズル取付部材1をリムノズル接続部30の全周に当接させて、ノズル取付孔部95の下流側に係止させることができるので、上記と同様の効果を奏することができる。
【0050】
本実施形態によれば、ノズル取付部材1をノズル取付孔部95に配置する治具8を、リムノズル接続部30に着脱可能に接続される接続部81を含んで構成した。治具8がリムノズル接続部30に着脱可能に接続される接続部81を有することで、ノズル取付孔部95にノズル取付部材1を配置する際、治具8とノズル取付部材1とを挿入方向の同じ方向に移動させることができる。これにより、ノズル取付孔部95の下流側に手が届かない場合にも、リムノズル接続部30とともにノズル取付部材1をノズル取付孔部95の下流側へ移動させることが可能になる。
【0051】
本実施形態によれば、接続部81からリムノズル3の挿入方向における基端側へ延び、接続部81の外径よりも小径の保持部82を含んで構成した。接続部81よりの小径の保持部82に環状部11を挿通させて傾けることで、環状部11の外形にかかわらず、ノズル取付孔部95の下流側へノズル取付部材1をノズル取付孔部95の下流側へ挿通させることが可能になる。
【0052】
本実施形態によれば、ノズル取付部材1をノズル取付孔部95に組み付けるノズル取付部材1の組付け方法において、リムノズル接続部30に着脱可能に接続される接続部81と、接続部81からリムノズル接続部30の挿入方向における基端側へ延び、接続部81の外径よりも小径の保持部を有する治具8の保持部82に環状部11を挿通させた。そして、接続部81を、ノズル取付孔部95を挿通させて吐水方向下流側へ移動させ、環状部11を、保持部82で傾けた状態でノズル取付孔部95を挿通させ、ノズル取付部材1を、ノズル取付孔部の吐水方向下流側に残した状態で治具8をリムノズル接続部30から外すように構成した。これにより、保持部82に環状部11を挿通させて傾けることで、環状部11の外形にかかわらず、ノズル取付孔部95の下流側へノズル取付部材1をノズル取付孔部95の下流側へ挿通させることが可能になり、上記と同様の効果を奏する。
【0053】
本実施形態によれば、ノズル取付部材1の組付構造において、リムノズル3の外周側に設けられ、ノズル取付孔部95に挿通した状態で組付けられる弾性部材5と、弾性部材5の上流側に配置されるナット4と、弾性部材5とナット4の間に配置されるワッシャ6と、をさらに含んで構成した。ワッシャ6を、弾性部材5が径方向に移動することを規制する規制部60を含んで構成した。ワッシャ6が規制部60を有することにより、弾性部材5とワッシャ6との面圧を高め、弾性部材5が変形して圧力が分散してしまうことを防止することができる。これにより、止水性が向上する。止水性が向上するため、径の大きなノズル取付孔部95に、リム配管33やリムノズル接続部30を組み付けやすくなる。さらに、組み付ける部材の組付け強度を向上させることができる。
【0054】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。環状部11の内周は、円でなくてもよい。例えば、円の一部に切り欠き等が形成されていてもよい。またリムノズル接続部30の外周が円でない場合に、リムノズル接続部の外周に沿う形状であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ノズル取付部材、 3 リムノズル(ノズル)、 4 ナット、 5 弾性部材、 6 ワッシャ、 8 治具、 9 水洗式便器、 91 便器本体、 11 環状部、 60 規制部、 81 接続部、 82 保持部、 95 ノズル取付孔部