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特開2024-124589キャッピング剤前駆体及びその製造方法、並びに、キャッピング剤の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124589
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】キャッピング剤前駆体及びその製造方法、並びに、キャッピング剤の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20240906BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240906BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240906BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C07H21/02 CSP
A61K39/00 A
A61P37/04
A61K31/7105
A61K48/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032353
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】594134833
【氏名又は名称】藤本化学製品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐也
(72)【発明者】
【氏名】植村 恵理香
(72)【発明者】
【氏名】水谷 春菜
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB10
4C057CC03
4C057DD03
4C057MM02
4C057MM09
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C085AA03
4C085BA01
4C085CC33
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、擬似固相保護基を使用する液相合成法によるキャッピング剤の簡易迅速な合成が可能となる、キャッピング剤前駆体、キャッピング剤合成用試薬、及び、それらを用いたキャッピング剤の製造方法を提供することに関する。また、本発明は、液相合成法による簡易迅速なmRNAの製造方法を提供することに関する。また、本発明は、液相合成法による簡易迅速なmRNAワクチンの製造方法を提供することに関する。
【解決手段】例えば、下記式の7mGpppAmpU-Tag及び7mGpppAmpU等の化合物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。)
【請求項2】
一般式(2)で表される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【化2】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。
Vは、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、擬似固相保護基を表す。)
【請求項3】
前記Lは、一般式(3)で表される、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【化3】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、前記一般式(1)との結合部を表す。)
【請求項4】
前記Lは、一般式(4)で表される、請求項2に記載の化合物又はその塩。
【化4】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、前記一般式(2)との結合部を表す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を含む、キャッピング剤前駆体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を含む、キャッピング剤合成用試薬。
【請求項7】
一般式(5)で表される化合物又はその塩
【化5】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、水素原子、又は、以下のL(2-1)、L(2-2)、若しくは、L(2-3)を表す。
【化6】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。))
と、一般式(6)で表される化合物又はその塩
【化7】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する液相合成担体由来部を表す。
は、水素原子、又は、以下のL(4-1)、L(4-2)、若しくは、L(4-3)を表す。
【化8】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。)
ただし、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-1)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。)
とを、触媒を用いて反応させる工程(1)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩の製造方法。
【請求項8】
前記Lは、一般式(7)で表される、請求項7に記載の製造方法。
【化9】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、下記一般式(6)との結合部を表す。)
【請求項9】
前記工程(1)以降に、水を加えて沈殿物を生成させ、ろ過により分離させる工程(2)を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)以降に、水を加えて沈殿物を生成させ、ろ過により分離させる工程(2)を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記Baseは、保護基で修飾されている、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、
を含む、キャッピング剤の製造方法。
【請求項13】
前記工程(3)は、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を脱保護させる工程(4)を含む、請求項12に記載のキャッピング剤の製造方法。
【請求項14】
前記工程(4)は、塩基性下で行われる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記工程(4)において用いられる脱保護試薬は、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アミンの炭酸塩,アルカリ金属水素炭酸塩、アルカリ土類金属水素炭酸塩,及び、アミン水素炭酸塩からなる群より選ばれる1つ以上を含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、及び、
前記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、
を含む、mRNAの製造方法。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、
前記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、及び、
前記工程(5)で得られたmRNAを用いてmRNAワクチンを製造する工程(6)、
を含む、mRNAワクチンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似固相保護基を使用する液相合成法によるキャッピング剤の合成方法、並びに、キャッピング剤前駆体及びその塩、それらの製造方法、等に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンをはじめとするmRNAワクチンやmRNA治療薬の開発が特に強く求められている。mRNAは「5‘-Cap」「5’-UTR」「GOI」「3‘-UTR」「ポリA鎖」から成り立っており、pDNAを鋳型DNAとして、RNAポリメラーゼやヌクレオチド三リン酸などを用いて、mRNAに転写される。最終的なmRNA構造は、その安定性および細胞への効率的な導入のため、5’-Cap構造を必要とする。Capは、酵素法と共転写法の2種類の方法で付加されるが、酵素法では転写工程後にCap付加工程が必要であるのに対し、共転写法では転写工程で同時にCap付加も行われるため、操作が簡便となり製造コストが安い。共転写法は、Cap付加の原料となるキャッピング剤が必須となる。
【0003】
キャッピング剤の合成は、一般的に、特許文献1に記載されている方法で行われている(特許文献1参照)。この方法においては、多くの工程が存在し、かつ、各段階毎にカラム精製等が必要であり、工数や作業工程、収率等の面で十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,519,189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、本発明は、擬似固相保護基を使用する液相合成法によるキャッピング剤の簡易迅速な合成が可能となる、キャッピング剤前駆体、キャッピング剤合成用試薬、及び、それらを用いたキャッピング剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、簡便に合成できるとともに、簡便にキャッピング剤合成等に変換可能な以下に示す新規化合物の創製に成功し、上記化合物及びそれを用いた手法等により上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の化合物又はその塩を提供する。
【0008】
[1]一般式(1)(以下、本明細書中において、「化合物(1)」と言う場合もある。また、他の一般式で表される化合物もこれに準ずる。)で表される、化合物又はその塩。
【化1】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。)
【0009】
本発明の化合物又はその塩によると、上記一般式(1)で表される構造を有することにより、液相合成法によるキャッピング剤の簡便な合成が可能となる。より詳細には、本発明の化合物又はその塩は、Lとして炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基(以下、「Tag部分」という場合もある。)を有しており、当該擬似固相保護基(Tag部分)が例えば一般式(3)又は(4)のような場合、水の添加により、7-メチルグアノシン二リン酸などの副原料などとろ過操作などによって簡便に分離することができ、キャッピング剤の簡便な合成が可能となる。
【0010】
なお、上記化合物の塩とは、本発明の作用効果を損なわないものであれば、上記化合物の化学構造を一部塩形態(イオン形態)に変換したものが広く含まれ、たとえば、リン酸のOH基部分がO(水酸基アニオンと、Aカチオンの塩形態等)等の塩が含まれる。また、上記塩において、分子内に複数のイオン塩部位が存在していてもよい。
【0011】
[2]一般式(2)で表される、[1]に記載の化合物又はその塩。
【化2】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。
Vは、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、擬似固相保護基を表す。)
【0012】
[3]上記Lは、一般式(3)で表される、[1]に記載の化合物又はその塩。
【化3】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、上記一般式(1)との結合部を表す。)
【0013】
[4]上記Lは、一般式(4)で表される、[2]に記載の化合物又はその塩。
【化4】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、上記一般式(2)との結合部を表す。)
【0014】
また、本発明は、以下のキャッピング剤前駆体を提供する。
【0015】
[5][1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を含む、キャッピング剤前駆体。
【0016】
また、本発明は、以下のキャッピング剤合成用試薬を提供する。
【0017】
[6][1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を含む、キャッピング剤合成用試薬。
【0018】
また、本発明は、以下の化合物又はその塩の製造方法を提供する。
【0019】
[7]一般式(5)で表される化合物又はその塩
【化5】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、水素原子、又は、以下のL(2-1)、L(2-2)、若しくは、L(2-3)を表す。
【化6】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。))
と、一般式(6)で表される化合物又はその塩
【化7】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。
は、水素原子、又は、以下のL(4-1)、L(4-2)、若しくは、L(4-3)を表す。
【化8】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。)
ただし、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-1)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。)
とを、触媒を用いて反応させる工程(1)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩の製造方法。
【0020】
[8]上記Lは、一般式(7)で表される、[7]に記載の製造方法。
【化9】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、下記一般式(6)との結合部を表す。)
【0021】
[9]上記工程(1)以降に、水を加えて沈殿物を生成させ、ろ過により分離させる工程(2)を含む、[7]に記載の製造方法。
【0022】
[10]上記工程(1)以降に、水を加えて沈殿物を生成させ、ろ過により分離させる工程(2)を含む、[8]に記載の製造方法。
【0023】
[11]上記Baseは、保護基で修飾されている、[7]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
また、本発明は、以下のキャッピング剤の製造方法を提供する。
【0025】
[12][1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、
を含む、キャッピング剤の製造方法。
【0026】
[13]上記工程(3)は、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を脱保護させる工程(4)を含む、[12]に記載のキャッピング剤の製造方法。
【0027】
[14]上記工程(4)は、塩基性下で行われる、[13]に記載の製造方法。
【0028】
[15]上記工程(4)において用いられる脱保護試薬は、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アミンの炭酸塩,アルカリ金属水素炭酸塩、アルカリ土類金属水素炭酸塩,及び、アミン水素炭酸塩からなる群より選ばれる1つ以上を含む、[13]又は[14]に記載の製造方法。
【0029】
また、本発明は、以下のmRNAの製造方法を提供する。
【0030】
[16][1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、及び、
上記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、
を含む、mRNAの製造方法。
【0031】
また、本発明は、以下のmRNAワクチンの製造方法を提供する。
【0032】
[17][1]~[4]、
上記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、及び、
上記工程(5)で得られたmRNAを用いてmRNAワクチンを製造する工程(6)、
を含む、mRNAワクチンの製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明の化合物又はその塩(化合物(1)、(2)等)は、新規化合物であって、これを用いることにより、液相合成法によるキャッピング剤の合成等を簡易迅速に行うことが可能となる。
【0034】
また、本発明の化合物又はその塩の製造方法等は、上記工程を有することにより、上記化合物又はその塩を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
〔化合物又はその塩〕
本発明の化合物又はその塩は、一般式(1)で表される化合物又はその塩(化合物(1))である。
【化10】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。)
【0037】
上記一般式(1)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
【0038】
としての炭素数1~4のアルコキシル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等をあげることができる。
【0039】
また、Rは、複数のR同士で環を形成する基であってもよく、例えば、メチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基をあげることができる。
【0040】
上記一般式(1)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
【0041】
としてのハロゲン原子は、例えば、F原子、Cl原子、Br原子、ヨウ素原子などをあげることができる。
【0042】
としての炭素数1~4のアルコキシル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等をあげることができる。
【0043】
上記一般式(1)において、nは、0~30の整数を表す。nは、使用目的や用途に応じて、例えば、0~20であってもよく、0~10であってもよく、1~5であってもよい。キャッピング剤前駆体、キャッピング剤合成用試薬、又は、キャッピング剤に用いる場合、例えば、nは、0~5の整数の場合が好適な例としてあげることができる。また、nが1位以上の場合のR、R、nが2位以上の場合のY、V等、同様の凡例のものが複数存在する場合は、それぞれ、同一又は異なる。
【0044】
上記一般式(1)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
【0045】
としてのハロゲン原子は、例えば、F原子、Cl原子、Br原子、ヨウ素原子等をあげることができる。
【0046】
としての炭素数1~4のアルコキシル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等をあげることができる。
【0047】
のLNA環における置換基の炭素数1~4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等をあげることができる。
【0048】
のLNA環における置換基の炭素数1~4のアルコキシル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等をあげることができる。
【0049】
上記一般式(1)において、Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
【0050】
Baseとしての核酸塩基は、特に限定されず、天然由来の核酸塩基であっても、人工合成核酸塩基であってもよい。
【0051】
上記Baseとして、例えば、アデニル基、グアニル基、シトシル基、チミニル基、若しくはウラシル基、及び、これらの誘導体、ならびに、これらの修飾体をあげることができる。上記修飾体として、例えば、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ヨードシトシル基、5-ウラシル基(シュードウラシル基)、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等をあげることができる。上記Baseの極性基等が公知の保護基等で保護されたものであってもよい。
【0052】
上記保護基として、例えば、アセチル基,イソブチリル基,トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、ベンゾイル基、ジメチルホルムアミジノ(dmf)基,フェノキシアセチル基,4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-t-ブチルフェノキシアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等をあげることができる。
【0053】
上記修飾体として、例えば、アミノ基がアシル基で修飾された核酸塩基等をあげることができる。
【0054】
上記一般式(1)において、Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
【0055】
Vにおける炭素数1~6のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチル基等をあげることができる。
【0056】
Vにおける炭素数1~6のジアルキルアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等をあげることができる。
【0057】
Vにおけるピペラジノ基は、4位窒素原子が公知の窒素原子の保護基で保護されたものをあげることができる。また、上記ピペラジノ基はさらに置換されていてもよく、当該置換基として、例えば、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基等をあげることができる。
【0058】
上記一般式(1)において、Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
【0059】
上記一般式(1)において、Lは、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。
【0060】
としての炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基は、例えば、炭素数13以上200以下のアルキルオキシ基、炭素数15以上100以下のアルキルオキシ基、炭素数20以上50以下のアルキルオキシ基などをあげることができる。
【0061】
としての炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基は、例えば、炭素数13以上200以下のアルキルオキシ基、炭素数15以上100以下のアルケニルオキシ基、炭素数20以上50以下のアルケニルオキシ基などをあげることができる。
【0062】
また、本発明において、擬似固相保護基としては、例えば、特許公開公報第2020-011932号に記載のアルコキシフェニル誘導体等をあげることができる。
【0063】
上記一般式(1)において、上記Lは、例えば、一般式(3)で表される基であることが好ましい。
【化11】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、上記一般式(1)との結合部を表す。)
【0064】
上記一般式(3)において、Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。上記Rは、炭素数13~30のアルキル基であってもよく、炭素数15~20のアルキル基であってもよく、なかでも炭素数18のアルキル基が好適なものとしてあげることができる。また、上記Rは、複数存在する場合にはそれぞれ独立して、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。また、上記Rが炭素原子数10から40のアルキル基であることにより、本発明の液相合成法によるキャッピング剤の合成が容易となるとともに、溶解度や分離能の向上作用も得ることができる。
【0065】
上記一般式(3)において、mは、1~5の整数を表す。mが2以上の場合には、複数存在するROは同一、または、異なっていてもよい。mが、2~4の整数であることが好ましく、mが、3であることがより好ましい。また、上記RO基は、フェニル基に直接結合しているカルボニル基(C=O基)を1位とした場合、3位、4位、または、5位に結合していることが好ましく、m=3の場合には、3位、4位、または、5位に結合していることが好ましい。また、上記mの値を上記範囲内で調整することにより、本発明のキャッピング剤の合成過程における、非極性溶媒に対する溶解能を調整することができる。
【0066】
上記一般式(3)において、Xは、O、S、NH、または、NRを表す。なかでも、Xが、Oであることが好ましい。
【0067】
上記一般式(3)において、nは、1~4の整数を表す。なかでも、nが、1、又は、2であることが好ましい。
【0068】
上記一般式(3)において、Rは、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。上記Rとして、たとえば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-メチル-1-エチル基、1-ブチル基、1-メチル-1-プロピル基、1,1-ジメチル-1-エチル基、2-メチル-1-プロピル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基等をあげることができる。
【0069】
また、本発明の化合物又はその塩は、一般式(2)で表される化合物又はその塩(化合物(2))である。
【化12】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。
Vは、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、擬似固相保護基を表す。)
【0070】
上記一般式(2)において、R、R、R、Base、V、Y、及びLは、それぞれ、上記一般式(1)の場合と同様である。
【0071】
上記一般式(2)において、上記Lは、例えば、一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【化13】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、上記一般式(2)との結合部を表す。)
【0072】
上記一般式(4)において、R、m1、X、n1、R、及び*は、それぞれ、上記一般式(3)の場合と同様である。
【0073】
また、上記Lとして上記一般式(3)で表される基、及び、上記一般式(4)で表される基は、下記一般式(8)で表される基であることが好ましい。
【化14】
であってもよい。
(式中、
10、R20、および、R30は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
Xは、O、S、NH、または、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、上記一般式(1)又は(2)との結合部を表す。)
【0074】
上記一般式(8)において、R10、R20、および、R30は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。上記R10、R20、および、R30は、炭素数13~30のアルキル基であってもよく、炭素数15~20のアルキル基であってもよく、なかでも炭素数18のアルキル基が好適なものとしてあげることができる。また、上記R10、R20、および、R30は、それぞれ独立して、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよいが、すべて直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0075】
上記一般式(8)において、X、n1、および、Rは、上記一般式(1)の場合と同様である。
【0076】
〔化合物又はその塩の製造方法〕
本発明の化合物又はその塩の製造方法は、
一般式(5)で表される化合物又はその塩
【化15】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、水素原子、又は、以下のL(2-1)、L(2-2)、若しくは、L(2-3)を表す。
【化16】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。))
と、一般式(6)で表される化合物又はその塩
【化17】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。
は、水素原子、又は、以下のL(4-1)、L(4-2)、若しくは、L(4-3)を表す。
【化18】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。)
ただし、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。)
とを、触媒を用いて反応させる工程(1)を含む。
【0077】
上記工程(1)において、一般式(5)で表される化合物又はその塩
【化19】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、R同士で環を形成するメチレンジオキシ基、エチリデン-1,1-ジオキシ基、イソプロピリデンジオキシキ基を表す。複数存在するRは、同一又は異なる。
は、水素原子、又は、以下のL(2-1)、L(2-2)、若しくは、L(2-3)を表す。
【化20】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。))
が用いられる。
【0078】
一般式(5)において、Rは、上記一般式(1)の場合と同様である。
【0079】
一般式(5)において、Lは、水素原子、又は、以下のL(2-1)、L(2-2)、若しくは、L(2-3)を表す。
【化21】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。))
【0080】
一般式L(2-1)、L(2-2)、及び、L(2-3)において、Rは、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
【0081】
としてのアルコキシル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピロキシ基、イソプロピロキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等をあげることができる。
【0082】
一般式L(2-1)、L(2-2)、及び、L(2-3)において、Mは、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
【0083】
としての無機カチオンは、例えば、公知の金属カチオン、アンモニウムカチオン等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上記金属カチオンとしては、例えば、1価、2価、又は、3価の金属カチオンをあげることができる。上記金属カチオンは、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン、アルミニウムカチオン、鉄カチオン、亜鉛カチオン、マンガンカチオン等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
としての有機カチオンは、例えば、公知の有機アンモニウムカチオン等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
上記有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウムカチオン、エチルアンモニウムカチオン、プロピルアンモニウムカチオン、イソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルアンモニウムカチオン、ジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルアンモニウムカチオン、ジプロピルアンモニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジブチルアンモニウムカチオン、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、ジアザビシクロウンデセニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、メチルピリジニウムカチオン、ジメチルピリジニウムカチオン、トリメチルピリジニウムカチオン、アニリニウムカチオン、フェネチルアンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
一般式L(2-1)、L(2-2)、及び、L(2-3)において、Lは、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。
【0088】
としての脱離基は、例えば、有機リン化合物合成に用いられる公知の脱離基を用いることができる。
【0089】
上記脱離基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、イミダゾール基、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ヒドロカルボニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基等をあげることができる。
【0090】
上記工程(1)において、一般式(6)で表される化合物又はその塩
【化22】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基を表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
nは、0~30の整数を表す。
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシル基、又は、メトキシエトキシ(MOE)基、又は、Rと結合してLNA(Locked nucleic acid)環を形成する。LNA環は、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、又は、炭素数1~4のアルコキシル基で置換されていてもよい。
Baseは、修飾されていてもよい核酸塩基を表す。nが1以上の場合には、複数存在するBaseは、同一又は異なっていてもよい。
Vは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、スルファニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、アリルオキシ基、2-シアノエトキシ基、2-ニトロエトキシ基、又は4位窒素原子が保護基で保護され、さらに置換されていてもよいピペラジノ基を表す。
Yは、それぞれ独立して、O又はSを表す。
は、炭素数10以上300以下のアルキルオキシ基及び/又は炭素数10以上300以下のアルケニルオキシ基で置換されたフェニル基を有する擬似固相保護基を表す。
は、水素原子、又は、以下のL(4-1)、L(4-2)、若しくは、L(4-3)を表す。
【化23】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。)
ただし、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。)
が用いられる。
【0091】
上記一般式(6)において、R、n、R、Base、V、Y、及び、Lは、上記一般式(1)の場合と同様である。
【0092】
は、水素原子、又は、以下のL(4-1)、L(4-2)、若しくは、L(4-3)を表す。
【化24】
(式中、
は、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、S、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
は、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
は、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。)
ただし、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。)
【0093】
上記一般式L(4-1)、L(4-2)、又は、L(4-3)において、Rは、ヒドロキシル基、アルコキシル基、スルファニル基、又は、Oを表す。複数存在する場合、Rは、同一又は異なる。
【0094】
としてのアルコキシル基は、Rとしてのアルコキシル基の場合と同様である。
【0095】
上記一般式L(4-1)、L(4-2)、又は、L(4-3)において、Mは、無機カチオン、又は、有機カチオンを表す。
【0096】
上記一般式L(4-1)、L(4-2)、又は、L(4-3)におけるMは、上記一般式L(2-1)、L(2-2)、及び、L(2-3)におけるMの場合と同様である。
【0097】
上記一般式L(4-1)、L(4-2)、又は、L(4-3)において、Lは、ヒドロキシル基又は脱離基を表す。
【0098】
における脱離基は、上記Lとしての脱離基の場合と同様である。
【0099】
また、上記工程(1)において、Lが水素原子の場合、LはL(4-3)である。LがL(2-1)の場合、LはL(4-2)である。LがL(2-2)の場合、LはL(4-1)である。LがL(2-3)の場合、Lは水素原子である。
【0100】
また、上記工程(1)において、触媒を用いて反応させる工程(1)を含む。
【0101】
上記触媒は、例えば、塩化亜鉛、塩化マンガン、塩化カルシウム等をあげることができる。
【0102】
上記工程(1)において、上記Lは、一般式(7)で表される基であることが好ましい。
【化25】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
m1は、1~5の整数を表す。m1が2以上の場合には、複数存在するROは、同一又は異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、又は、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。
*は、下記一般式(6)との結合部を表す。)
【0103】
上記一般式(7)において、R、m1、X、n1、及び、Rは、上記一般式(3)の場合と同様である。
【0104】
また、一般式(6)で表される化合物又はその塩におけるLは、例えば、下記一般式(8)で表される化合物(化合物(9))を用いて、例えば縮合反応を用いて得ることが可能である。
【化26】
(式中、
Rは、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
mは、1~5の整数を表す。mが2以上の場合には、複数存在するROは同一、または、異なっていてもよい。
Xは、O、S、NH、または、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0105】
上記一般式(9)において、R、m、X、n1,及び、Rは、上記一般式(3)の場合と同様である。
【0106】
また、上記一般式(9)で表される化合物又はその塩は、下記一般式(10)で表される基であることが好ましい。
【化27】
であってもよい。
(式中、
10、R20、および、R30は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数10~40のアルキル基を表す。
Xは、O、S、NH、または、NRを表す。
n1は、1~4の整数を表す。
は、置換されていてもよい、炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0107】
上記一般式(10)において、R10、R20、R30、及び、n1は、上記一般式(8)と同様である。
【0108】
上記工程(1)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0109】
また、本発明において、上記工程(1)以降に、水を加えて沈殿物を生成させ、ろ過により分離させる工程(2)を含むことができる。
【0110】
上記工程(2)において、ろ過による分離は、公知の手法を適宜用いることができる。
【0111】
上記工程(2)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0112】
また、本発明において、上記Baseは、保護基で修飾されているものであることが好ましい。
【0113】
上記Baseの保護基は、上記一般式(1)におけるBaseの場合と同様である。
【0114】
〔キャッピング剤前駆体〕
本発明のキャッピング剤前駆体は、上記化合物又はその塩を含む。
【0115】
本発明において、「キャッピング剤前駆体」とは、適切な操作を加えることでキャッピング剤に変換等して、キャッピング剤を得うるものをいう。上記適切な操作とは、適宜、公知の合成反応や、公知の操作・処理であってもよい。
【0116】
上記キャッピング剤は、例えば、上記化合物又はその塩において、擬似固相保護基を水素原子へ変換し、Baseとリン酸の保護基を除去する等によって行うことができ得る。より具体的には、例えば、化合物(1)、(2)において、-OL基を、-OHに変換することで、キャッピング剤を得ることができ得る。
【0117】
〔キャッピング剤合成用試薬〕
本発明のキャッピング剤合成用試薬は、上記化合物又はその塩を含む。
【0118】
本発明において、「キャッピング剤合成用試薬」とは、それを用いて適切な操作を加えることでキャッピング剤を合成可能にするものをいう。上記適切な操作とは、適宜、公知の合成反応や、公知の操作・処理であってもよい。
【0119】
上記キャッピング剤合成用試薬は、例えば、上記キャッピング剤合成用試薬において、擬似固相保護基を水素原子へ変換し、Baseとリン酸の保護基を除去する等によって行うことができ得る。より具体的には、例えば、化合物(1)、(2)において、-OL基を、-OHに変換することで、キャッピング剤を得ることができ得る。
【0120】
〔キャッピング剤の製造方法〕
本発明のキャッピング剤の製造方法は、
上記化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、を含む。
【0121】
上記工程(3)は、上記化合物又はその塩に対して、適宜公知の手法を用いることができる。上記工程(3)は、例えば、上記キャッピング剤合成用試薬において、液相合成用担体由来部を水素原子へ変換する等によって行うことができ得る。より具体的には、例えば、化合物(1)、(2)において、-OL基を、-OHに変換することで、キャッピング剤を得ることができ得る。
【0122】
上記工程(3)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0123】
また、上記工程(3)は、上記化合物又はその塩を脱保護させる工程(4)を含むことが好ましい。
【0124】
上記化合物又はその塩の合成と組み合わせる場合には、例えば、上記工程(2)以降に、さらに脱保護させる工程(4)を含むことができる。
【0125】
上記工程(4)において、脱保護は、当該脱離基に応じて、公知の手法を適宜用いることができる。
【0126】
上記工程(4)は、塩基性下で行われることが好ましい。
【0127】
上記工程(4)において用いられる脱保護試薬は、アミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アミンの炭酸塩,アルカリ金属水素炭酸塩、アルカリ土類金属水素炭酸塩,及び、アミン水素炭酸塩からなる群より選ばれる1つ以上を含むことが好ましい。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0128】
また、本発明において、上記Baseは、保護基で修飾されているものであることが好ましい。
【0129】
上記Baseの保護基は、上記一般式(1)におけるBaseの場合と同様である。
【0130】
上記工程(4)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0131】
〔mRNAの製造方法〕
本発明のmRNAの製造方法は、
上記化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、及び、
上記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、
を含む。
【0132】
上記工程(3)は、上記キャッピング剤の製造方法の場合と同様である。
【0133】
上記工程(5)は、本発明の作用効果を損なわない限り、適宜、公知の手法を用いることができる。
【0134】
上記工程(5)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0135】
〔mRNAワクチンの製造方法〕
本発明のmRNAワクチンの製造方法は、
上記化合物又はその塩を用いてキャッピング剤を合成する工程(3)、
上記工程(3)で得られたキャッピング剤を用いてmRNAを製造する工程(5)、及び、
上記工程(5)で得られたmRNAを用いてmRNAワクチンを製造する工程(6)、
を含む。
【0136】
上記工程(3)、(5)は、上記mRNAの製造方法の場合と同様である。
【0137】
上記工程(6)は、本発明の作用効果を損なわない限り、適宜、公知の手法を用いることできる。
【0138】
上記工程(6)は、本発明の作用効果を損なわない限り、その他、市販の原料等を用いて公知の方法を組み合わせてもよい。
【0139】
上記工程(6)は、例えば、上記工程(5)で得られたmRNAを新規または公知の溶媒や添加剤等とともに調整する方法等で行うことができ得る。
【0140】
上記で得られたmRNAワクチンは、ヒトや動物に接種する等により、その体内(細胞内)で上記mRNAを翻訳させること等により、抗原となるポリペプチド等を合成し、その結果、当該抗原に対する免疫性を獲得することができ得る。
【0141】
上記翻訳は、上記mRNAが細胞の核の外にあるリボソームで解読され、特定の
1677733495957_0
鎖(
1677733495957_1
ともよぶ)が作られることをいう。
【実施例0142】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。以下、実施例における濃縮操作は特に指定のない限り、減圧下で行った。また、特に明記のない配合量については、質量部を基本とする。
【0143】
なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0144】
<TOF/MSスペクトルの測定>
TOF/MSスペクトルの測定は、飛行時間型質量分析計(Waters社製、製品名LCT-PremierXEを用いて行った。
【0145】
〔実施例1〕
7mGpppApUの合成
【0146】
〔実施例1-1〕
(A)2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン-3’-イルの合成
【化28】
【0147】
2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸(15.00g,15.22mmol)、5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン(11.06g,16.74mmol)、1-メチルイミダゾール(6.87g,83.70mmol)のTHF(150mL)懸濁液にCOMU((1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩)(13.04g,30.44mmol)を加えたのち、室温で4時間撹拌した。反応液にアセトニトリル(750mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-THF混合溶媒で洗浄したのち、50℃で減圧乾燥し、表題の化合物(24.13g,97%)を得た。
【0148】
TOF/MS(ESI):calcd for C9915814SiNa[M+Na] 1650.03,found 1650.14.
【0149】
〔実施例1-2〕
(B)2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)ウリジン-3’-イルの合成
【化29】
【0150】
2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-(tert-ブチルジメチルシリル)ウリジン-3’-イル(5.00g,3.07mmol)のTHF溶液(50mL)にトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(3.46g,21.49mmol)を加えたのち、室温で26時間撹拌した。反応液をアセトニトリル(350mL)に滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-THF混合溶媒とアセトニトリルで洗浄したのち、50℃で減圧乾燥し、表題の化合物(4.57g,98%)を得た。
【0151】
TOF/MS(ESI):calcd for C9314414Na[M+Na] 1536.05,found 1536.02.
【0152】
〔実施例1-3〕
(C)2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸2’-O-アセチルウリジン-3’-イルの合成
【化30】
【0153】
窒素下で、2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)ウリジン-3’-イル(4.00g,2.64mmol)、1-メチルイミダゾール(0.42g,5.28mmol)のジクロロメタン溶液(48mL)に無水酢酸(0.30g,2.91mmol)を加えたのち、室温で1時間撹拌した。次に、メタノール(0.034g,1.06mmol)、ピロール(1.55g,23.04mmol)、トリフルオロ酢酸(1.26g,11.04mmol)を加えたのち、室温1時間撹拌した。反応液にピリジン(0.87g,11.04mmol)を加え、アセトニトリル(280mL)に滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒で洗浄したのち、50℃で減圧乾燥し、表題の化合物(3.29g,99%)を白色固体として得た。
【0154】
TOF/MS(ESI):calcd for C7412913[M+H] 1253.95,found 123.98.
【0155】
〔実施例1-4〕
(D)DMT-2mer-Tagの合成
【化31】
【0156】
窒素下で、2-((3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル)オキシ)酢酸2’-O-アセチルウリジン-3’-イル(3.00g,2.39mmol)、N-ベンゾイル-5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-2’-O-メチルアデノシン3’-シアノエチル-ホスホロアミダイト(4.25g,4.79mmol)のジクロロメタン懸濁液(30mL)に5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(0.90g,4.67mmol)を加えたのち、室温で3時間撹拌した。次に、クメンヒドロペルオキシド(含量82%)(1.37g,7.18mmol)を加えたのち、室温で0.5時間撹拌した。反応液にアセトニトリル(210mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒で洗浄したのち、50℃で減圧乾燥し、表題の化合物(4.82g,98%)を白色固体として得た。
【0157】
〔実施例1-5〕
(E)HO-2mer-Tagの合成
【化32】
【0158】
窒素下で、DMT-2mer-Tag(4.70g,2.29mmol)のジクロロメタン溶液(47mL)にピロール(1.51g,22.56mmol)、トリフルオロ酢酸(0.64g,5.64mmol)を加えたのち、室温で1時間撹拌した。反応液にピリジン(0.45g,5.64mmol)を加えたのち、アセトニトリル(329mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒とアセトニトリルで洗浄したのち、50℃で減圧乾燥し、表題の化合物(3.87g,97%)を白色固体として得た。
【0159】
TOF/MS(ESI):calcd for C1915020[M+H] 1754.07,found 1753.97.
【0160】
〔実施例1-6〕
(F)Bu-p-2mer-Tagの合成
【化33】
【0161】
アルゴン下で、HO-2mer-Tag(0.65g,0.37mmol)、1-メチルイミダゾリウムクロリド(0.13g,1.11mmol)のジクロロメタン溶液(9.8mL)にモレキュラーシーブス3A(0.13g)を加えたのち、室温で1時間撹拌した。次に、反応液を-5℃に冷却したのち、ジ(tert-ブチル)N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(0.31g,1.11mmol)を加え、-5℃で2時間撹拌した.反応液にクメンヒドロペルオキシド(含量82%)(0.28g,1.48mmol)を加えたのち、室温で1時間撹拌した。反応液を不溶物ろ過したのち、アセトニトリル(52mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒で洗浄したのち、40℃で減圧乾燥し、表題の化合物(0.71g,97%)を淡黄色固体として得た。
【0162】
TOF/MS(ESI):calcd for C10316723[M;H] 1946.16,found 1945.88.
【0163】
〔実施例1-7〕
(G)Bu-p-2mer-Tag(deCE)の合成
【化34】
【0164】
窒素下で、Bu-p-2mer-Tag(0.61g,0.31mmol)のジクロロメタン溶液(7.3mL)にジエチルアミン(1.8mL)を加えたのち、室温で2時間撹拌した。アセトニトリル(43mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒で洗浄したのち、40℃で減圧乾燥し、表題の化合物(0.56g,93%)を淡黄色固体として得た。
【0165】
TOF/MS(ESI):calcd for C10016423[M+H] 1893.14,found 1892.77.
【0166】
〔実施例1-8〕
(H)p-2mer-Tagの合成
【化35】
【0167】
窒素下で、Bu-p-2mer-Tag(deCE)(0.40g,0.21mmol)のジクロロメタン溶液(4.0mL)にトリフルオロ酢酸(0.36g,3.17mmol)を加えたのち、室温で4時間撹拌した。次に、ジクロロメタン(4.0mL)を加えたのち、トリエチルアミン(0.33g,3.27mmol)を滴下した。反応液にアセトニトリル(16mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体をアセトニトリル-ジクロロメタン混合溶媒で洗浄したのち、40℃で減圧乾燥し、表題の化合物(0.37g,99%)を白色固体として得た。
【0168】
TOF/MS(ESI):calcd for C9214823[M+H]+ 1781.01,found 1780.82.
【0169】
〔実施例1-9〕
(I)7mGpppAmpU-Tagの合成
【化36】
【0170】
アルゴン下で、p-2mer-Tag(1.15g,0.65mmol)、Im-pp7mG(0.70g,1.32mmol)のTHF懸濁液(17.3mL)を35℃に昇温し、塩化亜鉛(0.66g,4.83mmol)のDMF懸濁液(17.3mL)を加えたのち、35℃で2時間撹拌した。反応液を5℃まで冷却し、38mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水溶液(172.5mL)を滴下することで析出した固体をろ過した。固体を精製水とアセトニトリルで洗浄したのち、25℃で減圧乾燥し、表題の化合物(1.86g,129.5%)を白色固体として得た。
【0171】
〔実施例1-10〕
(J)7mGpppAmpUの合成
【化37】
【0172】
アルゴン下で、7mGpppAmpU-Tag(0.20g,0.092mmol)のメタノール懸濁液(18mL)を5℃に冷却し、40%メチルアミン-メタノール溶液(2mL,19.6mmol)を加えたのち、5℃で16時間撹拌した。反応液に酢酸水溶液(13mL,19.6mmol)を滴下し、室温で液量10mL以下になるまで濃縮した。濃縮液中の不溶物をろ過し、1M炭酸水素アンモニウム水溶液(1.84mL)と精製水で全量が92mLとなるように希釈した。
【0173】
希釈液の陰イオン交換カラム精製によって得られた溶出液を濃縮し、目的物である7mGpppAmpU水溶液を得た。
HPLC(cytivaHiPrepDEAE FF(16Φ×100mm),流速:2.5mL/min,移動相:精製水、1mol/Lアンモニア-塩化アンモニウム緩衝液(pH7.0)gradient:0-15min(2to98%アセトニトリル),Rt=3.9min(98.6%)
【0174】
TOF/MS(ESI):calcd for C31431225[M+H]+ 1107.14,found 1107.12.
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の化合物又はその塩は、例えば、キャッピング剤の製造等に利用可能である。また、本発明のキャッピング剤の製造方法は、キャッピング剤を簡便に得ることができる。これらはいずれも、様々なキャッピング剤の合成に非常に有用な化合物および手法であり、ひいてはmRNAワクチンやmRNA医薬の開発等に有用である。