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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124594
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】押出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20240906BHJP
【FI】
B29C48/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032370
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥平
(72)【発明者】
【氏名】横溝 和哉
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL76
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの出力軸のスムーズな動作が可能となる押出成形装置を提供する。
【解決手段】押出成形用ダイ20Aと、前記押出成形用ダイの可動リップ21cと相手リップ22cとの間のリップ間隔Sを調整するリップ間隔調整機構31cと、前記押出成形用ダイに固定され、かつ、前記リップ間隔調整機構を保持するリテーナ200と、を備え、前記リップ間隔調整機構は、前記リテーナに形成された貫通穴H210に挿入され、先端部32aが前記可動リップに固定されたロッド部材32と、前記ロッド部材をその軸方向に進退させることにより、可動リップと相手リップとの間のリップ間隔を調整するアクチュエータ311と、を含み、さらに、前記貫通穴内における前記ロッド部材の径方向の移動を規制しつつ、前記貫通穴内における前記ロッド部材の軸方向の移動を許容可能なガイド部400a、400bを備える。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形用ダイと、
前記押出成形用ダイの可動リップと相手リップとの間のリップ間隔を調整するリップ間隔調整機構と、
前記押出成形用ダイに固定され、かつ、前記リップ間隔調整機構を保持するリテーナと、を備え、
前記リップ間隔調整機構は、前記リテーナに形成された貫通穴に挿入され、先端部が前記可動リップに固定されたロッド部材と、前記ロッド部材をその軸方向に進退させることにより、可動リップと相手リップとの間のリップ間隔を調整するアクチュエータと、を含み、
さらに、前記貫通穴内における前記ロッド部材の径方向の移動を規制しつつ、前記貫通穴内における前記ロッド部材の軸方向の移動を許容可能なガイド部を備える押出成形装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記ロッド部材が挿入された状態で前記貫通穴に挿入固定された少なくとも1つの軸受けである請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記ロッド部材が挿入された状態で当該ロッド部材に固定され、前記ロッド部材と共に前記貫通穴に挿入される少なくとも1つの軸受けである請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項4】
前記軸受けは、ブッシュである請求項2又は3に記載の押出成形装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記貫通穴の一部に設けられた小径部である請求項1に記載の押出成形装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記ロッド部材の一部に設けられた大径部である請求項1に記載の押出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に形成されたリップ間の間隔(スリット、隙間。以下、リップ間隔と呼ぶ)からフィルム状の溶融樹脂を押し出す押出成形用ダイ(Tダイ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、リップ間隔から押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚みをその幅方向の全域に亘って均一に制御するため、押出成形用ダイの幅方向に配置された複数のヒートが開示されている。リップ調整ねじを手動で回転させることにより、ヒートボルトは、その軸方向に移動して一方のリップ(可動リップ、フレキシブルリップ)を押し引きし、リップ間隔を局所的に調整する。これにより、リップ間隔からその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが均一に制御される。
【0004】
これに対して、本発明者らは、押出成形用ダイの幅方向に複数配置されたリップ間隔調整機構(ロッド部材、及び当該ロッド部材をその軸方向に進退させるアクチュエータを含む)を押出成形用ダイに固定されたリテーナ(保持部材)で保持し、各々のリップ間隔調整機構の配置箇所でリップ間隔を調整することを検討した。なお、ロッド部材は、リテーナに形成された貫通穴に挿入され、先端部が押出成形用ダイの可動リップに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-52574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討したところ、上記構成においては、ロッド部材(先端部)が固定(剛接続)された可動リップが押出成形用ダイの固定リップに対して変位し(押し引きされ)、リップ間隔が調整される際、リップ曲げ荷重が発生することに起因してアクチュエータの出力軸のスムーズな動作(例えば、回転)が難しくなるという課題を見出した。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態に係る押出成形装置では、押出成形用ダイと、前記押出成形用ダイの可動リップと相手リップとの間のリップ間隔を調整するリップ間隔調整機構と、前記押出成形用ダイに固定され、かつ、前記リップ間隔調整機構を保持するリテーナと、を備え、前記リップ間隔調整機構は、前記リテーナに形成された貫通穴に挿入され、先端部が前記可動リップに固定されたロッド部材と、前記ロッド部材をその軸方向に進退させることにより、可動リップと相手リップとの間のリップ間隔を調整するアクチュエータと、を含み、さらに、前記貫通穴内における前記ロッド部材の径方向の移動を規制しつつ、前記貫通穴内における前記ロッド部材の軸方向の移動を許容可能なガイド部を備える。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、ロッド部材(先端部)が固定(剛接続)された可動リップを押出成形用ダイの固定リップに対して変位させる(押し引きする)場合であっても、アクチュエータの出力軸のスムーズな動作(例えば、回転)が可能となる押出成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る押出成形装置1の全体構成を示す概略図である。
図2】リップ間隔調整装置30が取り付けられたTダイ20の斜視図である。
図3図2中の矢印A1方向から見た矢視図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】リップ間隔調整装置30の動作例(成形開始前)のフローチャートである。
図6】リップ間隔調整装置30の動作例(成形開始後)のフローチャートである。
図7】リップ間隔調整装置30によりリップ間隔Sを調整する場合の時間と可動リップ21cの変位量との関係を表すグラフである。
図8A】比較例のリップ間隔調整装置30Aである。
図8B】比較例のリップ間隔調整装置30A(ヒートボルト33)によりリップ間隔Sを調整する場合の時間と可動リップ21cの変位量との関係を表すグラフである。
図9】リップ間隔調整装置30(変形例1)が取り付けられたTダイ20の断面図である。
図10】リップ間隔調整装置30(変形例2)が取り付けられたTダイ20の断面図である。
図11】リップ間隔調整装置30A(変形例3)が取り付けられたTダイ20の斜視図である。
図12図11中の矢印A2方向から見た矢視図である。
図13図12のXIII-XIII断面図である。
図14】可動リップ21Acを含むダイブロック21A、可動リップ21Bcを含むダイブロック21Bを備えたTダイ20(変形例4)の断面図である。
図15】リップ間隔調整機構31Cが取り付けられたTダイ20Aの斜視図である。
図16】Tダイ20Aの中央断面図である。
図17図15から抜き出したリップ間隔調整機構31Cの斜視図である。
図18】リテーナ200の斜視図である。
図19】Tダイ20A(熱源)からの熱の移動を表す図である。
図20】放熱促進手段700を適用した押出成形装置1Aの例である。
図21】ブッシュ400a、400bを設けたことの効果について説明する図である。
図22】比較例の押出成形装置の部分拡大図(簡略図)である。
図23】ブッシュ400a、400bの変形例である。
図24】ブッシュ400a、400bの他の変形例である。
図25】放熱促進手段700の他の一例である。
図26】放熱促進手段700の他の一例である。
図27A】1つのブッシュ400bを用いる場合のはめあいの例である。
図27B】2つのブッシュ400a、400bを用いる場合のはめいあいの例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<参考例>
以下、参考例について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下の参考例に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0012】
(参考例1)
【0013】
<押出成形装置の全体構成>
まず、図1を参照して、参考例1に係る押出成形装置1の全体構成について説明する。図1は、参考例1に係る押出成形装置1の全体構成を示す概略図である。
【0014】
押出成形装置1は、押出機10(溶融樹脂出口11)から押し出される溶融樹脂を、Tダイ20(押出成形用ダイ)の先端に形成されたスリット出口、すなわち、リップ間の間隔(スリット、隙間。以下、リップ間隔と呼ぶ)からフィルム状に押し出す装置である。本明細書において、フィルムは、シートを含む。
【0015】
図1に示すように、押出成形装置1は、押出機10、Tダイ20、リップ間隔調整装置30、冷却ロール40、搬送ロール群50、巻取機60、厚みセンサ70、リップ間隔測定部71、制御部80を備えている。すなわち、押出成形装置1は、無延伸フィルム製造装置である。なお、押出成形装置1は、冷却ロール40と巻取機60との間に、フィルムを縦方向に延伸(MD(Machine Direction)延伸)する縦延伸装置、フィルムを横方向に延伸(TD(Transverse Direction)延伸)する横延伸装置がこの順に直列に配置された二軸延伸フィルム製造装置であってもよいし、冷却ロール40と巻取機60との間に、フィルムを縦方向及び横方向に延伸する延伸装置が配置された同時二軸延伸フィルム製造装置であってもよいし、その他構成のフィルム製造装置であってもよい。
【0016】
押出機10は、加熱溶融された樹脂(以下、溶融樹脂と呼ぶ)を溶融樹脂出口11から押し出す装置である。押出機10は、スクリュー式押出機であってもよいし、プランジャー式押出機であってもよい。
【0017】
冷却ロール40は、Tダイ20から押し出されたフィルム状の溶融樹脂92aを冷却しつつ、フィルム状の溶融樹脂92aが固化したフィルム93を搬出する。冷却ロール40から搬出されたフィルム93は、搬送ロール群50を介して搬送され、巻取機60によって巻き取られる。図1の例では、搬送ロール群50は、8個の搬送ロール51~58を備えている。搬送ロールの個数、配置は適宜決定される。
【0018】
厚みセンサ70は、オンライン型の厚みセンサ(厚み計)で、Tダイ20から押し出される溶融樹脂により形成されるフィルムの厚みを、Tダイ20の幅方向(図1中、紙面に直交する方向)に沿った複数位置(少なくとも後述のように配置される複数のリップ間隔調整機構31に対応する複数位置)でリアルタイムに測定する。厚みセンサ70は、非接触式(例えば、レーザ式、β線式、X線式)の厚みセンサであってもよいし、直接式(例えば、リニアゲージ式)の厚みセンサであってもよい。
【0019】
リップ間隔測定部71は、リップ間隔を、Tダイ20の幅方向に沿った複数位置(後述のように配置される複数のリップ間隔調整機構31に対応する複数位置)で測定する。複数位置それぞれのリップ間隔は、カメラにより撮像されたリップ間隔を含む画像に対して所定画像処理を施すことにより検出してもよいし、レーザー式ギャップセンサにより検出してもよい。なお、複数位置それぞれのリップ間隔は、隙間ゲージを使用して手動測定してもよい。但し、手動測定の場合、測定データを手動で制御部80に入力する必要がある。
【0020】
制御部80は、厚みセンサ70により複数位置で測定されたフィルムの厚み(厚みデータ)に基づいて、フィルムの厚みが均一となるように、アクチュエータを制御する。制御部80は、図示しないが、プロセッサを備えている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部80の動作については後述する。
【0021】
<Tダイの構成>
次に、図2図4を参照して、Tダイ20の構成について説明する。
【0022】
図2はリップ間隔調整装置30が取り付けられたTダイ20の斜視図、図3図2中の矢印A1方向から見た矢視図、図4図3のIV-IV断面図である。
【0023】
Tダイ20は、押出機10から押し出される溶融樹脂をフィルム状に成形するブロック状の部材である。Tダイ20は、典型的には、金属製である。
【0024】
図4等に示すように、Tダイ20は、その先端部20a及び基端部20bが鉛直方向に配置された状態でその基端部20b側が押出機10に取り付けられる。なお、図示しないが、Tダイ20は、その先端部20a及び基端部20bが水平方向に配置された状態でその基端部20b側が押出機10に取り付けられる場合もある。
【0025】
Tダイ20は、一対のダイブロック21、22を備えている。ダイブロック21が本発明の第1ダイブロックの一例で、ダイブロック22が本発明の第2ダイブロックの一例である。一対のダイブロック21、22は、それぞれ、互いに対向する面21a、22aを含む。図示しないが、Tダイ20は、この互いに対向する面21a、22aの間に形成される導入通路、マニホールド、及びスリット23cを含む。
【0026】
導入通路は、押出機10が接続されるTダイ20の基端部20bとマニホールドとを連通する通路である。導入通路は、Tダイ20の基端部20bからその反対側の先端部20aに向かって延びている。導入通路には、押出機10から押し出される溶融樹脂が導入される。
【0027】
マニホールドは、Tダイ20の幅方向(図4中紙面に直交する方向)に延びた通路である。マニホールドは、Tダイ20の基端部20bと先端部20aとの間の中間に形成されている。マニホールドには、導入通路を通過した溶融樹脂が導入される。導入通路を通過した溶融樹脂は、マニホールドを通過することによりTダイ20の幅方向に押し広げられる。導入通路及びマニホールドはT字を構成する。導入通路がT字を構成する縦棒に相当し、マニホールドがT字を構成する横棒に相当する。
【0028】
スリット23cは、Tダイ20の先端部20aとマニホールドとを連通する隙間である。スリット23cは、Tダイ20の幅方向に延びている。
【0029】
一対のダイブロック21、22は、それぞれ、先端に向かって傾斜したテーパ面21b、22bを含む先端部を備えている。ダイブロック21は、可動リップ21c(フレキシブルリップ)を含む。可動リップ21cは、後述のリップ間隔調整機構31により押し引きされることにより、ダイブロック21の先端部に形成された凹部21dの底部を支点として局所的に変位することができる。ダイブロック21の先端部の先端(図4中下端)が可動リップ21cである。
【0030】
一方、ダイブロック22は、固定リップ22cを含む。固定リップ22cが本発明の相手リップの一例である。固定リップ22cは、可動リップ21cが後述のリップ間隔調整機構31により押し引きされても変位しない。ダイブロック22の先端部の先端(図4中下端)が固定リップ22cである。可動リップ21c、固定リップ22c、及び凹部21dは、Tダイ20の幅方向に延びている。
【0031】
上記構成のTダイ20においては、押出機10から押し出される溶融樹脂は、Tダイ20の内部に設けられた導入通路、及びマニホールドをこの順に通過する。その際、溶融樹脂は、マニホールドを通過することによりTダイ20の幅方向に押し広げられる。このTダイ20の幅方向に押し広げられた溶融樹脂は、スリット23cを通過し、最終的に、Tダイ20の先端に形成されたスリット出口、すなわち、可動リップ21cと固定リップ22cとの間のリップ間隔Sからフィルム状に押し出される。このフィルム状に押し出される溶融樹脂92a(図1参照)の幅は、Tダイ20の幅に対応している。
【0032】
<リップ間隔調整装置の構成>
参考例1は、以下に説明するリップ間隔調整装置30を備えることを特徴とする。
【0033】
図2に示すように、リップ間隔調整装置30は、Tダイ20の幅方向に複数配置され、各々の配置箇所でリップ間隔Sを調整するリップ間隔調整機構31を備えている。図4等に示すように、リップ間隔調整機構31は、アクチュエータ311と、アクチュエータ311の出力軸311bと可動リップ21cとを連結する連結部材312と、を備えている。
【0034】
アクチュエータ311は、アクチュエータ本体311a、回転軸である出力軸311bを含む。アクチュエータ311は、例えば、サーボモータ(DCサーボモータ、ACサーボモータ)、ステッピングモータ、コアレスモータ、DDモータである。
【0035】
連結部材312は、先端部が可動リップ21cに螺合し、基端部がアクチュエータ311の出力軸311bに連結(固定)されたロッド部材(又は調整ボルト。以下、ロッド部材32と呼ぶ)である。ロッド部材32は、典型的には、金属製である。
【0036】
図4等に示すように、アクチュエータ本体311aは、ダイブロック21に設けられた保持部21eに固定(例えば、ねじ固定)されている。アクチュエータ311の出力軸311bは、保持部21eに形成された貫通穴Hに挿入された状態で、先端部が可動リップ21cに螺合したロッド部材32の基端部に連結(固定)されている。なお、アクチュエータ311の出力軸311bの中心軸AX311b(回転軸)とロッド部材32の中心軸AX32(回転軸)とは一致(略一致)している。
【0037】
アクチュエータ311には、制御部80が電気的に接続されている。制御部80は、後述のように出力軸311bの回転方向(正方向又は逆方向)及び回転量を制御する。アクチュエータ311は、制御部80の制御に従い、出力軸311b(及びロッド部材32)を回転させ当該ロッド部材32の可動リップ21cに対する螺合量を変化させる。これにより、可動リップ21cが固定リップ22cに対して変位し(押し引きされ)、リップ間隔Sが調整される。
【0038】
リップ間隔Sから押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚みをTダイ20の幅方向の全域に亘って均一にするため、図2図3に示すように、Tダイ20(ダイブロック21)には、その幅方向に複数のリップ間隔調整機構31が取り付けられている。各々のリップ間隔調整機構31は、ダイブロック21に設けられた保持部21eに固定(例えば、ねじ固定)されている。なお、図2図3中、リップ間隔調整機構31の個数が11である例を図示してあるが、これに限らず、リップ間隔調整機構31の個数は、Tダイ20(ダイブロック21)の幅に応じた個数(1以上)であればよい。
【0039】
<リップ間隔調整機構の動作例>
次に、上記構成のリップ間隔調整機構31の動作例について説明する。
【0040】
上記構成のリップ間隔調整機構31によれば、出力軸311b(及びロッド部材32)の回転方向(正方向又は逆方向)及び回転量を制御することにより、リップ間隔Sを局所的に調整することができる。
【0041】
例えば、アクチュエータ311により出力軸311b(及びロッド部材32)を回転(例えば、正回転)させ当該ロッド部材32の可動リップ21cに対する螺合量を変化(減少)させる。これにより、可動リップ21cが凹部21dの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22cに接近する。これにより、リップ間隔Sが局所的に狭くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂(フィルム93)の厚さが局所的に減少する。
【0042】
反対に、アクチュエータ311により出力軸311b(及びロッド部材32)を回転(例えば、逆回転)させ当該ロッド部材32の可動リップ21cに対する螺合量を変化(増加)させる。これにより、可動リップ21cが凹部21dの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22cから離れる。これにより、リップ間隔Sが局所的に広くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂(フィルム93)の厚さが局所的に増加する。
【0043】
<リップ間隔調整装置の動作例(成形開始前)>
次に、上記構成のリップ間隔調整装置30の動作例(成形開始前)について説明する。以下に説明するように、成形開始前に、複数位置それぞれのリップ間隔を均一に調整することにより、成形開始後、リップ間隔Sから押し出されるフィルム状の溶融樹脂(フィルム93)の厚さを迅速に均一に調整することができる。
【0044】
図5は、リップ間隔調整装置30の動作例(成形開始前)のフローチャートである。
【0045】
以下の処理は、制御部80(プロセッサ)がハードディスク装置等の記憶装置(図示せず)からRAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)に読み込まれたプログラムを実行することで実現される。
【0046】
Tダイ20の昇温が完了すると(ステップS10)、リップ間隔測定部71は、リップ間隔(リップギャップ)を測定する(ステップS11)。具体的には、リップ間隔測定部71は、リップ間隔(リップギャップ)を、Tダイ20の幅方向に沿った複数位置(複数のリップ間隔調整機構31に対応する複数位置)で測定する。この測定されたリップ間隔(隙間データ)は、制御部80に転送される。
【0047】
次に、ステップS11で測定されたリップ間隔(複数)が均一でない場合(ステップS12:No)、例えば、少なくとも1つの位置で測定されたリップ間隔が許容範囲外である場合、制御部80は、制御解析を行い(ステップS13)、許容範囲外のリップ間隔が測定された位置に対応するリップ間隔調整機構31のアクチュエータ311を制御する(ステップS14)。
【0048】
具体的には、制御部80は、ステップS11で測定されたリップ間隔(隙間データ)に基づいて、リップ間隔が均一となるように(例えば、許容範囲外のリップ間隔が許容範囲内に収まるように)、許容範囲外のリップ間隔が測定された位置に対応するリップ間隔調整機構31のアクチュエータ311(出力軸311bの回転方向及び回転量)を制御することにより、リップ間隔を局所的に調整する。
【0049】
次に、再度、リップ間隔測定部71は、リップ間隔(リップギャップ)を測定する(ステップS11)。
【0050】
以後、ステップS11で測定されたリップ間隔(複数)が均一となるまで、上記ステップS13、S14、S11の処理を繰り返し実行する(ステップS12:No)。
【0051】
一方、ステップS11で測定されたリップ間隔(複数)が均一となった場合(ステップS12:Yes)、すなわち、複数位置それぞれで測定された全てのリップ間隔が許容範囲内となった場合、成形が開始される(ステップS15)。
【0052】
<リップ間隔調整装置の動作例(成形開始後)>
次に、上記構成のリップ間隔調整装置30の動作例(成形開始後)について説明する。
【0053】
図6は、リップ間隔調整装置30の動作例(成形開始後)のフローチャートである。
【0054】
以下の処理は、制御部80(プロセッサ)がハードディスク装置等の記憶装置(図示せず)からRAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)に読み込まれたプログラムを実行することで実現される。
【0055】
成形開始後(ステップS20)、すなわち、リップ間隔Sからフィルム状の溶融樹脂が押し出されている最中、厚みセンサ70は、Tダイ20(リップ間隔S)から押し出される溶融樹脂により形成されるフィルムの厚みを測定する(ステップS21)。具体的には、厚みセンサ70は、フィルムの厚みを、Tダイ20の幅方向に沿った複数位置(複数のリップ間隔調整機構31に対応する複数位置)でリアルタイムに測定する。この測定されたフィルムの厚み(厚みデータ)は、制御部80に転送される。
【0056】
次に、ステップS21で測定されたフィルムの厚み(複数)が均一でない場合(ステップS22:No)、例えば、少なくとも1つの位置で測定されたフィルムの厚みが許容範囲外である場合、制御部80は、制御解析を行い(ステップS23)、許容範囲外のフィルムの厚みが測定された位置に対応するリップ間隔調整機構31のアクチュエータ311を制御する(ステップS24)。
【0057】
具体的には、制御部80は、ステップS21で測定されたフィルムの厚み(厚みデータ)に基づいて、フィルムの厚みが均一となるように(例えば、許容範囲外のフィルムの厚みが許容範囲内に収まるように)、許容範囲外のフィルムの厚みが測定された位置に対応するリップ間隔調整機構31のアクチュエータ311(出力軸311bの回転方向及び回転量)を制御することにより、リップ間隔を局所的に調整する。
【0058】
次に、再度、厚みセンサ70は、Tダイ20(リップ間隔)から押し出される溶融樹脂により形成されるフィルムの厚みを測定する(ステップS21)。
【0059】
以後、ステップS21で測定されたフィルムの厚み(複数)が均一となるまで、上記ステップS23、S24、S21の処理を繰り返し実行する(ステップS22:No)。
【0060】
一方、ステップS21で測定されたフィルムの厚み(複数)が均一となった場合(ステップS22:Yes)、すなわち、複数位置それぞれで測定された全てのフィルムの厚みが許容範囲内となった場合、調整が完了する(ステップS25)。以上のようにして、厚みが均一なフィルムを製造することができる。
【0061】
<リップの変位量>
次に、上記構成のリップ間隔調整装置30によりリップ間隔Sを調整する場合の時間と可動リップ21cの変位量との関係について説明する。
【0062】
図7は、リップ間隔調整装置30によりリップ間隔Sを調整する場合の時間と可動リップ21cの変位量との関係を表すグラフである。
【0063】
図7を参照すると、リップ間隔調整装置30によりリップ間隔Sを調整した場合、2秒未満で可動リップ21cの変位量(固定リップ22cに対する可動リップ21cの変位量)が安定すること、すなわち、2秒未満でリップ間隔Sを調整できることが分かる。
【0064】
<比較例>
次に、比較例について説明する。
【0065】
図8Aは、比較例のリップ間隔調整装置130である。
【0066】
図8Aに示すように、比較例のリップ間隔調整装置130においては、リップ間隔調整機構31として、アクチュエータ311及びロッド部材32に代えて、先端部が可動リップ21cに連結(固定)され、基端部がダイブロック21に設けられた保持部21fに連結(固定)されたヒートボルト33が配置されている。ヒートボルト33は、ヒータ(図示せず)の加熱温度を上昇させることにより熱膨張してその軸方向の長さが増加し、一方、ヒータの加熱温度を低下させることにより収縮してその軸方向の長さが減少する。比較例のリップ間隔調整装置130においては、ヒータの加熱温度を制御し、ヒートボルト33をその軸方向に伸縮させることにより、リップ間隔が調整される。
【0067】
図8Bは比較例のリップ間隔調整装置130(ヒートボルト33)によりリップ間隔Sを調整する場合の時間と可動リップ21cの変位量との関係を表すグラフである。
【0068】
図8Bを参照すると、リップ間隔調整装置130(ヒートボルト33)によりリップ間隔Sを調整した場合、可動リップ21cの変位量(固定リップ22cに対する可動リップ21cの変位量)が安定するまで1600秒程度を要することが分かる。
【0069】
以上のように、リップ間隔調整装置30(アクチュエータ311及びロッド部材32)によりリップ間隔Sを調整する場合、リップ間隔調整装置130(ヒートボルト33)によりリップ間隔Sを調整する場合と比べ、狙いの値まで変位させる時間が圧倒的に短いこと(極めて迅速にリップ間隔Sを調整することができること)が分かる。
【0070】
以上説明したように、参考例1によれば、リップ間隔の調整に要する時間を短縮できる。
【0071】
これは、リップ間隔調整機構31として、ヒートボルトではなく、アクチュエータ311、及びロッド部材32を用い、アクチュエータ311がロッド部材32を回転させ当該ロッド部材32の可動リップ21cに対する螺合量を変化させることにより、リップ間隔Sを調整するようにしたことによるものである。
【0072】
また、参考例1によれば、連結部材312(ロッド部材又は調整ボルト)一本一本にアクチュエータ311を取り付けることで、粗調整の段階(成形開始前)で全ての連結部材312(ロッド部材又は調整ボルト)を同時に押し引き可能であり、微調整の段階(成形開始後)では、狙いの変位量になるまでの時間がヒートボルトよりも圧倒的に短いため、フィルムの厚み制御にかかる時間を短縮することができる。
【0073】
また、参考例1によれば、ボルト締付けによるリップ間隔の調整(粗調整)を手動で行なった場合、無理な締付けにより、ヒートボルトが曲がる等、破損に繋がる恐れがあるが、アクチュエータ311のみでリップ間隔を調整することにより、無理な締付けによる連結部材312(ロッド部材又は調整ボルト)の破損の恐れがないという利点もある。
【0074】
また、参考例1によれば、アクチュエータ311で制御することで手動調整レスとなるため、高温物であるTダイ20と回転体であるロール(冷却ロール40等)に成形中に近づいて作業する必要がなくなるという利点もある(安全性向上)。
【0075】
次に、変形例について説明する。
【0076】
(変形例1)
上記参考例1では、アクチュエータ311の出力軸311bと可動リップ21cとを連結する連結部材312として、ロッド部材32を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0077】
例えば、図9に示すように、アクチュエータ311の出力軸311bと可動リップ21cとを連結する連結部材312として、先端部が可動リップ21cに連結(固定)され、基端部がアクチュエータ311の出力軸311bに連結(固定)された差動ねじ(以下、差動ねじ34と呼ぶ)を用いてもよい。図9は、リップ間隔調整装置30(変形例1)が取り付けられたTダイ20の断面図である。
【0078】
差動ねじ34は、外ねじ341のピッチと内ねじ342のピッチが異なる(外ねじ341のピッチ>内ねじ342のピッチ)差動ねじである。
【0079】
差動ねじ34の外ねじ341は、ダイブロック21に設けられた保持部21jに螺合している。差動ねじ34の内ねじ342には、ロッド343が螺合している。差動ねじ34(ロッド343)の先端部は、可動リップ21cに連結(固定)されている。なお、アクチュエータ311の出力軸311bの中心軸AX311b(回転軸)と差動ねじ34の中心軸AX34(回転軸)とは一致(略一致)している。
【0080】
変形例1によっても、リップ間隔の調整に要する時間を短縮できる等、参考例1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
これは、リップ間隔調整機構31として、ヒートボルトではなく、アクチュエータ311、及び差動ねじ34を用い、アクチュエータ311が差動ねじ34を回転させることにより、リップ間隔Sを調整するようにしたことによるものである。
【0082】
(変形例2)
上記参考例1では、アクチュエータ本体311a、及び回転軸である出力軸311bを含むアクチュエータ311を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0083】
例えば、図10に示すように、アクチュエータ311に代えて、アクチュエータ本体313a、及びアクチュエータ本体313aに対して押し出し又は引き込まれる出力軸313bを含むアクチュエータ313(リニアアクチュエータ)を用いてもよい。図10は、リップ間隔調整装置30(変形例2)が取り付けられたTダイ20の断面図である。この場合、アクチュエータ313の出力軸313bと可動リップ21cとを連結する連結部材312として、一端部が可動リップ21cに連結され、他端部がアクチュエータ313の出力軸313bに連結されたロッド部材35が用いられる。なお、アクチュエータ313の出力軸313bの中心軸AX313b(回転軸)とロッド部材35の中心軸AX35(回転軸)とは一致(略一致)している。
【0084】
変形例2によっても、リップ間隔の調整に要する時間を短縮できる等、参考例1と同様の効果を奏することができる。
【0085】
これは、リップ間隔調整機構31として、ヒートボルトではなく、アクチュエータ313、及びロッド部材35を用い、アクチュエータ313が出力軸313bを押し出し又は引き込むことにより、リップ間隔Sを調整するようにしたことによるものである。
【0086】
(変形例3)
図11はリップ間隔調整装置30(変形例3)が取り付けられたTダイ20の斜視図、図12図11中の矢印A2方向から見た矢視図、図13図12のXIII-XIII断面図である。
【0087】
図11図13に示すように、リップ間隔調整装置30A(変形例3)は、第1リップ間隔調整機構31A、及び第2リップ間隔調整機構31Bを含む。第1リップ間隔調整機構31A、及び第2リップ間隔調整機構31Bは、Tダイ20の幅方向に交互に配置されている。
【0088】
第1リップ間隔調整機構31Aは、アクチュエータ311(以下、第1アクチュエータ311Aと呼ぶ)と、第1アクチュエータ311Aの出力軸311bと可動リップ21cとを連結する連結部材312(以下、第1連結部材312Aと呼ぶ)と、を備えている。
【0089】
第2リップ間隔調整機構31Bは、アクチュエータ311(以下、第2アクチュエータ311Bと呼ぶ)と、第2アクチュエータ311Bの出力軸311bと可動リップ21cとを連結する連結部材312(以下、第2連結部材312Bと呼ぶ)と、を備えている。
【0090】
第1アクチュエータ311Aは、可動リップ21cの近くに配置されている。第1アクチュエータ311Aの出力軸311bと可動リップ21cとを連結する第1連結部材312Aの軸方向長さはL1である。
【0091】
一方、第2アクチュエータ311Bは、第1アクチュエータ311Aに干渉しないように可動リップ21cから遠くに配置されている。第2アクチュエータ311Bの出力軸311bと可動リップ21cとを連結する第2連結部材312Bの軸方向長さはL2より長いL2である。
【0092】
変形例3によっても、リップ間隔の調整に要する時間を短縮できる等、参考例1と同様の効果を奏することができる。また、変形例3によれば、上記参考例1と比べ、連結部材312の配置間隔L3を狭くすることができる(図12に示す配置間隔L3<図3に示す配置間隔L4)。
【0093】
(変形例4)
上記参考例1では、押出成形用ダイとして、可動リップ21cを含むダイブロック21、固定リップ22cを含むダイブロック22を備えたTダイ20を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0094】
例えば、図14に示すように、可動リップ21Acを含むダイブロック21A、可動リップ21Bcを含むダイブロック21Bを備えたTダイ20を用いてもよい。可動リップ21Bcが本発明の相手リップの一例である。図14は、可動リップ21Acを含む第1ダイブロック21A、可動リップ21Bcを含む第2ダイブロック21Bを備えたTダイ20(変形例4)の断面図である。
【0095】
第1ダイブロック21Aは、当該第1ダイブロック21Aの幅方向(図14中、紙面に直交する方向)に複数配置され、各々の配置箇所でリップ間隔Sを調整する第3リップ間隔調整機構31Aを備えている。同様に、第2ダイブロック21Bは、当該第2ダイブロック21Bの幅方向(図14中、紙面に直交する方向)に複数配置され、各々の配置箇所でリップ間隔Sを調整する第4リップ間隔調整機構31Bを備えている。
【0096】
変形例4によっても、参考例1と同様の効果を奏することができる。
【0097】
なお、変形例1のTダイ20(図9参照)、変形例2のTダイ20(図10参照)、及び変形例3のTダイ20(図11図13参照)においても、本変形例4と同様、可動リップ21Acを含む第1ダイブロック21A、可動リップ21Bcを含む第2ダイブロック21Bを備えたTダイ20を用いてもよい。
【0098】
<実施形態>
次に、本実施形態の押出成形装置1Aについて説明する。
【0099】
本実施形態の押出成形装置1Aは、上記参考例1の押出成形装置1と比べ、Tダイ20A、Tダイ20Aの可動リップ21cと固定リップ22cとの間のリップ間隔Sを調整する、アクチュエータ311を含むリップ間隔調整機構31C、リップ間隔調整機構31Cを保持するリテーナ200、断熱部材(第1断熱部材100a、第2断熱部材100b)、及び軸受け(ブッシュ400a、400b)を備える点が相違する。それ以外、本実施形態の押出成形装置1Aは、上記参考例1の押出成形装置1と同様の構成である。以下、参考例1との相違点を中心に説明し、参考例1と同様の構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0100】
<Tダイの構成>
次に、図15図16を参照して、Tダイ20Aの構成について説明する。
【0101】
図15は、リップ間隔調整機構31Cが取り付けられたTダイ20Aの斜視図である。図16は、Tダイ20Aの中央断面図である。
【0102】
Tダイ20Aは、上記参考例1のTダイ20と同様の構成である。すなわち、Tダイ20Aは、一対のダイブロック21、22を備えている。一方のダイブロック21は、先端(可動リップ21c)に向かって傾斜したテーパ面21bを含む先端部を備えている。同様に、他方のダイブロック22は、先端(固定リップ22c)に向かって傾斜したテーパ面22bを含む先端部を備えている。
【0103】
<リップ間隔調整機構の構成>
図17は、図15から抜き出したリップ間隔調整機構31Cの斜視図である。
【0104】
図15に示すように、リップ間隔調整機構31Cは、Tダイ20Aの幅方向(図15中矢印A3参照)に複数配置され、各々の配置箇所でリップ間隔Sを調整する。
【0105】
リップ間隔調整機構31Cは、Tダイ20Aの可動リップ21cと固定リップ22cとの間のリップ間隔Sを調整する機構で、図16図17に示すように、アクチュエータ保持部220と、アクチュエータ311と、アクチュエータ311の出力軸311bと可動リップ21cとを連結するロッド部材32(又は調整ボルト)と、を備えている。
【0106】
アクチュエータ保持部220は、ベース部221、ベース部221の両側からベース部221に対して直角の方向に延びる延長部222、223を含む金属製部材である。アクチュエータ本体311aは、当該アクチュエータ本体311aが固定(例えば、ねじ固定)された金属製プレート230をアクチュエータ保持部220の延長部222、223に固定(例えば、ねじ固定)することにより、アクチュエータ保持部220に保持されている。図16に示すように、アクチュエータ311の出力軸311bには、ナット部600が固定されている。ナット部600の一部(雌ねじ部)は、アクチュエータ保持部220のベース部221に形成された貫通穴H221に挿入されている。
【0107】
ロッド部材32の基端部32b(雄ねじ部)は、貫通穴H221に挿入されたナット部600(雌ねじ部)に螺合している。その際、アクチュエータ311の出力軸311bの中心軸AX311b(回転軸)、ナット部600の中心軸AX600(回転軸)、及びロッド部材32の中心軸AX32(回転軸)は一致(略一致)している。なお、逆に、ロッド部材32の基端部32bを雌ねじ部とし、ナット部600の一部を雄ねじ部としてもよい。
【0108】
図16に示すように、上記構成のリップ間隔調整機構31Cは、リテーナ200に保持されている。具体的には、リップ間隔調整機構31Cは、ロッド部材32がリテーナ200(板状部210)に形成された貫通穴H210に挿入され、かつ、アクチュエータ保持部220とリテーナ200(断面U字部212)との間に第2断熱部材100bを挟んだ状態でリテーナ200の断面U字部212に固定(例えば、ボルト固定)されている。このように、本実施形態では、アクチュエータ311をTダイ20A(熱源)から可能な限り遠くに配置するため、リテーナ200(板状部210)に形成された貫通穴H210にロッド部材32を挿入する構造を採用している。
【0109】
一方、ロッド部材32の先端部32aは、断面U字状の連結部材500により可動リップ21cに固定(剛接続)されている。
【0110】
具体的には、まず、連結部材500の一方の凸部501をロッド部材32の先端部32aに形成された溝に挿入し、かつ、連結部材500の他方の凸部502を可動リップ21cに形成された溝に挿入する。
【0111】
次に、連結部材500に形成された貫通穴に挿入されたねじN1を可動リップ21cにねじ止めする。
【0112】
その際、連結部材500の一方の凸部501の形状が先細りの楔形であるため、ねじN1を可動リップ21cにねじ込むことにより、この楔形の一方の凸部501がロッド部材32の先端部32aを可動リップ21cに押し付ける。これにより、ロッド部材32の先端部32a(先端面)及び可動リップ21cは、両者間に隙間なく密着した状態で互いに強固に固定(剛接続)される。
【0113】
以上のように、ロッド部材32の先端部32aは、断面U字状の連結部材500により可動リップ21cに固定(剛接続)されている。これにより、ロッド部材32が可動リップ21cを反可動リップ21c側(アクチュエータ311側)に引く際、バックラッシュが発生することなく、可動リップ21cを反可動リップ21c側に引くことができる。
【0114】
上記構成のリップ間隔調整機構31Cの動作例は、上記参考例1で説明したリップ間隔調整装置30の動作例(図5図6参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
<リテーナの構成>
図18は、リテーナ200の斜視図である。
【0116】
リテーナ200は、リップ間隔調整機構31Cを保持する金属製部材で、図16図18に示すように、板状部210、断面U字部212を含む。リテーナ200は、Tダイ20Aの幅方向(図15中矢印A3参照)に延びている。
【0117】
図16に示すように、板状部210は、Tダイ20A(テーパ面21b)が対向する一方の主面211a、その反対側の他方の主面211bを含む。板状部210には、ロッド部材32が挿入される貫通穴H210が形成されている。貫通穴H210は、板状部210の一方の端面211cと他方の端面211dとを貫通している。貫通穴H210は、Tダイ20Aの幅方向(図15中矢印A3参照)に複数形成されている。貫通穴H210には、ブッシュ400a、400bが圧入固定(嵌合)されている。具体的には、ブッシュ400a、400bは、ロッド部材32が挿入された状態で貫通穴H210に圧入固定されている。ブッシュ400a、400bが本開示の軸受けの一例である。ブッシュ400a、400bは、例えば、耐熱性ブッシュ(無給油ブッシュ)である。なお、ブッシュ400a、400bの内径は、貫通穴H210の直径より小さい。
【0118】
上記構成のリテーナ200は、当該リテーナ200(一方の主面211a)とTダイ20A(テーパ面21b)との間に第1断熱部材100aを挟んだ状態でTダイ20A(テーパ面21b)に固定(例えば、ボルト固定)されている。その際、リテーナ200の凸部211がTダイ20A(テーパ面21b)に形成された凹部21g(キー溝)に挿入された状態(位置決めされた状態)で固定されている。凹部21g(キー溝)及び凸部211は、Tダイ20Aの幅方向(図15中矢印A3参照)に延びている。
【0119】
<第1断熱部材の構成>
図16図18に示すように、第1断熱部材100aは、ダイブロック21(テーパ面21b)とリテーナ200(一方の主面211a)との間に配置される板状の断熱部材である。第1断熱部材100aは、リテーナ200の凸部211の両側に配置されている。
【0120】
第1断熱部材100aは、ダイブロック21(テーパ面21b)及びリテーナ200(一方の主面211a)に対して面接触(密着)した状態で、リテーナ200とTダイ20Aとの間に配置されている。第1断熱部材100aは、当該断熱部材100aに形成された貫通穴に挿入されたねじN2(図16参照)をダイブロック21(テーパ面21b)にねじ止めすることによりTダイ20A(テーパ面21b)に固定されている。なお、逆に、第1断熱部材100aは、リテーナ200(一方の主面211a)に固定されていてもよい。
【0121】
以上のように、リテーナ200を、Tダイ20Aのテーパ面21bに固定することにより、次の利点がある。すなわち、後述のようにロッド部材32の先端部32aが固定(剛接続)された可動リップ21cが固定リップ22cに対して変位し(押し引きされ)、リップ曲げ荷重(図21中矢印A11参照)が発生しても、リテーナ200とTダイ20Aとの間に配置された第1断熱部材100aが変形(例えば、厚み変形)しにくいため、Tダイ20Aとリテーナ200との相対的な位置関係を維持しやすいという利点がある。
【0122】
なお、第1断熱部材100aをさらに変形しにくくするため、第1断熱部材100aとしてより剛性の高い断熱部材を採用してもよい。なお、第1断熱部材100aと第2断熱部材100bは、同種の断熱部材であってもよいし、異種の断熱部材であってもよい。例えば、第1断熱部材100aとして第2断熱部材100bより剛性の高い断熱部材を採用し、第2断熱部材100bとして第1断熱部材100aより断熱性能の高い断熱部材を採用してもよい。また、第1断熱部材100aの厚みと第2断熱部材100bの厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0123】
<第2断熱部材の構成>
図16図18に示すように、第2断熱部材100bは、リテーナ200(断面U字部212)とアクチュエータ保持部220(ベース部221)との間に配置される角柱状の断熱部材100b1、及び薄板状の断熱部材100b2を含む。
【0124】
角柱状の断熱部材100b1は、アクチュエータ保持部220(ベース部221)及び薄板状の断熱部材100b2に対して面接触(密着)した状態で、アクチュエータ保持部220(ベース部221)と薄板状の断熱部材100b2との間に配置されている。角柱状の断熱部材100b1は、ロッド部材32の両側に配置されている(図16参照)。
【0125】
一方、薄板状の断熱部材100b2は、角柱状の断熱部材100b1及びリテーナ200(断面U字部212)に対して面接触(密着)した状態で、角柱状の断熱部材100b1とリテーナ200(断面U字部212)との間に配置されている(図16参照)。なお、薄板状の断熱部材100b2には、ロッド部材32が挿入された貫通穴(図示せず)が形成されている。この貫通穴は、ロッド部材32(複数)に対応してTダイ20Aの幅方向(図15中矢印A3参照)に複数形成されている。
【0126】
以上のように、リテーナ200とTダイ20Aとの間に第1断熱部材100aを配置し、かつ、アクチュエータ保持部220とリテーナ200との間に第2断熱部材100bを配置することにより、Tダイ20A(熱源)からの熱(図19中矢印A6参照)がリテーナ200を介してアクチュエータ311に伝熱されるのを抑制(すなわち、断熱。図19中矢印A8参照)できるため、アクチュエータ311が高温となるのを抑制することができる。その結果、アクチュエータ311の動作不良が発生するのを抑制することができる。図19は、Tダイ20A(熱源)からの熱の移動を表す図である。
【0127】
また、リテーナ200とTダイ20Aとの間に第1断熱部材100aを配置し、かつ、アクチュエータ保持部220とリテーナ200との間に第2断熱部材100bを配置することにより、リテーナ200(例えば、他方の主面211b側)を、Tダイ20A(熱源)からの熱(図19中矢印A6、A7参照)を放熱する放熱手段(放熱面)として機能させることができるため、冷却構造を簡素化することができる。
【0128】
なお、第1断熱部材100aとして断熱性能の高い断熱部材を用いる場合や後述のように放熱促進手段700を用いる場合、第2断熱部材100bは省略してもよい。
【0129】
図20は、放熱促進手段700を適用した押出成形装置1Aの例である。図20に示すように、放熱促進手段170を設けてもよい。
【0130】
放熱促進手段700は、Tダイ20Aとアクチュエータ311との間の伝熱経路の少なくとも一部の放熱を促進する手段であればどのような構成であってもよい。例えば、放熱促進手段700は、リテーナ200(例えば、他方の主面211b側)に設けられた放熱フィンであってもよいし、リテーナ200を冷却する冷却装置であってもよい。冷却装置は、リテーナ200に取り付けられていてもよいし、リテーナ200(例えば、他方の主面211b側)近傍に配置されていてもよい。冷却装置は、リテーナ200にエアを吹き付けることにより放熱を促進する(当該リテーナ200を強制冷却する)冷却装置であってもよいし、自然冷却する冷却装置であってもよい。また、冷却装置は、水冷による冷却装置であってもよいし、空冷による冷却装置であってもよいし、ペルチェ素子、ファン、ブロア等のような制御装置により制御可能な冷却装置であってもよいし、その他の冷却装置であってもよい。また、リテーナ200の放熱を促進するため、リテーナ200の全部又は一部(例えば、他方の主面211b側)を熱伝導率の高い金属(例えば、銅)で製造してもよい。
【0131】
図25図26は、放熱促進手段700の他の一例である。
【0132】
図25に示すように、放熱促進手段700は、アクチュエータ311(アクチュエータ本体311a)にエアを吹き付けることにより放熱を促進する(当該アクチュエータ311(アクチュエータ本体311a)を強制冷却する)冷却装置であってもよい。図25中の符号A9が示す矢印は、この冷却装置から、アクチュエータ311(アクチュエータ本体311a)に吹き付けられるエア(強制エア)を表す。
【0133】
また、図26に示すように、放熱促進手段700は、リテーナ200の溝部(断面U字部212と薄板状の断熱部材100b2とで囲まれた空間)にエアを吹き込むことにより放熱を促進する(当該リテーナ200を強制冷却する)冷却装置であってもよい。図26中の符号A10が示す矢印は、この冷却装置から、リテーナ200の溝部(断面U字部212と薄板状の断熱部材100b2とで囲まれた空間)に吹き込まれるエア(強制エア)を表す。なお、リテーナ200の溝部(断面U字部212と薄板状の断熱部材100b2とで囲まれた空間)は、Tダイ20Aの幅方向(図26中矢印A11参照)に延びている(貫通している)。
【0134】
次に、上記構成の押出成形装置1Aの動作例について簡単に説明する。
【0135】
アクチュエータ311の出力軸311b(及びナット部600)は、制御部(例えば、制御部80)からの制御に従い回転(正回転又は逆回転)する。これにより、ロッド部材32(基端部32b)のナット部600に対する螺合量が変化するため、ロッド部材32はその軸AX32方向(図16中矢印A4参照)に進退する。これにより、ロッド部材32の先端部32aが固定(剛接続)された可動リップ21cが固定リップ22cに対して変位し(押し引きされ)、リップ間隔Sが調整される。
【0136】
その際、ロッド部材32の先端部32aが可動リップ21cに固定(剛接続)されているため、例えば、ロッド部材32が図21中矢印A10方向に移動し可動リップ21cを固定リップ22c側に押すと、リップ曲げ荷重(図21中矢印A11参照)が発生し、ロッド部材32は、貫通穴H210内においてロッド部材32の先端部32aと可動リップ21cとの接合部P1を支点として径方向(図21中矢印A12参照)に移動しようとする。ロッド部材32が図21中矢印A10と逆方向に移動し可動リップ21cを引く場合も同様である。図21は、ブッシュ400a、400bを設けたことの効果について説明する図である。
【0137】
しかしながら、貫通穴H210内において径方向(図21中矢印A12参照)に移動しようとするロッド部材32は、ブッシュ400a、400bに当接するため、それ以上の径方向の移動が規制される。これにより、ロッド部材32に直接曲げ荷重が作用することが防止され、その結果、ロッド部材32の基端部32b(雄ねじ部)がナット部600(雌ねじ部)に押し付けられることが防止される。その結果、アクチュエータ311の出力軸311bのスムーズな回転が可能となる。この機能を発揮できる限り、ブッシュの個数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
【0138】
図27Aは1つのブッシュ400bを用いる場合のはめあいの例、図27Bは2つのブッシュ400a、400bを用いる場合のはめいあいの例である。
【0139】
図27Aに示すように、1つのブッシュ400bを用いる場合、ロッド部材32と当該ブッシュ400bとのはめあいは、精密摺動はめあい(例えば、H7g6)となり、ロッド部材32と当該ブッシュ400bとの間のクリアランスC1は最大30μ程度となる。これに対して、図27Bに示すように、2つのブッシュ400a、400bを用いる場合、ロッド部材32と当該ブッシュ400a、400bとのはめあいは、通常スキマはめあいとなり、ロッド部材32と当該ブッシュ400a、400bとの間のクリアランスC2は最大100μ程度となる。このように、2つ(又は複数)のブッシュ400a、400bを用いる場合、ズレ角δ(ブッシュの中心軸AX400に対するロッド部材32の中心軸AX32の角度)を同一に保ちつつ、ロッド部材32とブッシュ400a、400bとの間のクリアランスを広げることが可能となる。このように、1つのブッシュを用いる場合、精密摺動はめあい(公差)が望ましいが、2つ(又は複数)のブッシュを用いる場合、その公差を0.1mm程度まで緩和することができる。
【0140】
また、この機能を発揮できる限り、貫通穴H210に対するブッシュ400a、400bの圧入固定箇所は図16の箇所に限定されず、また、ブッシュ400a、400bの軸方向サイズも図16のサイズに限定されない。
【0141】
なお、貫通穴H210内において径方向(図21中矢印A12参照)に移動しようとするロッド部材32がブッシュ400a、400bに当接すると、曲げ荷重反力(図21中矢印A13、A14参照)が発生するが、ブッシュ400a、400bが軸受けとして機能するため、貫通穴H210内において径方向(図21中矢印A12参照)に移動しようとするロッド部材32がブッシュ400a、400bに当接しても、当該ロッド部材32はその軸AX32方向にスムーズに移動することができる。
【0142】
以上のように、ブッシュ400a、400bが、本開示のガイド部、すなわち、貫通穴H210内におけるロッド部材32の径方向(図16中矢印A5参照)の移動を規制しつつ、貫通穴H210内におけるロッド部材32の軸AX32方向(図16中矢印A4参照)の移動を許容可能なガイド部として機能する。この機能が適切に発揮されるように、ロッド部材32が挿入されるブッシュ400a、400bの内径は、ロッド部材32の直径より若干大きく設定されている。
【0143】
上記ブッシュ400a、400bを設けたことの効果について比較例と比較しつつさらに説明する。
【0144】
図22は、比較例の押出成形装置の部分拡大図(簡略図)である。
【0145】
比較例の押出成形装置は、図16に示す押出成形装置1Aと比べ、ブッシュ400a、400bが省略されている点以外、図16に示す押出成形装置1Aと同様の構成である。
【0146】
比較例の押出成形装置においても、上記実施形態の押出成形装置1Aと同様、ロッド部材32の先端部32aが可動リップ21cに固定(剛接続)されている。そのため、ロッド部材32の先端部32aが固定(剛接続)された可動リップ21cが固定リップ22cに対して変位し(押し引きされ)、リップ間隔Sが調整される際、例えば、ロッド部材32が図22中矢印A15方向に移動し可動リップ21cを固定リップ22c側に押すと、リップ曲げ荷重(図22中矢印A16参照)が発生し、ロッド部材32は、貫通穴H210内においてロッド部材32の先端部32aと可動リップ21cとの接合部P1を支点として径方向(図22中矢印A17参照)に移動しようとする。ロッド部材32が図22中矢印A15と逆方向に移動し可動リップ21cを引く場合も同様である。
【0147】
比較例の押出成形装置においては、ブッシュ400a、400bが省略されているため、ロッド部材32は、貫通穴H210内において径方向(図22中矢印A17参照)の移動が規制されることなく径方向に移動しロッド部材32の基端部32bがナット部600に押し付けられ曲げ荷重反力(図22中矢印A18参照)が発生し、ロッド部材32の基端部32bとナット部600との間に摩擦が発生する。その結果、アクチュエータ311の出力軸311bのスムーズな回転が難しくなるという問題がある。
【0148】
これに対して、本実施形態によれば、貫通穴H210内においてロッド部材32の先端部32aと可動リップ21cとの接合部P1を支点として径方向(図21中矢印A12参照)に移動しようとするロッド部材32は、ブッシュ400a、400bに当接するため、それ以上の径方向の移動が規制される。これにより、ロッド部材32に直接曲げ荷重が作用することが防止され、その結果、ロッド部材32の基端部32b(雄ねじ部)がナット部600(雌ねじ部)に押し付けられることが防止される。その結果、ロッド部材32の基端部32bとナット部600との間に摩擦が発生せず(ほとんど発生せず)、アクチュエータ311の出力軸311bのスムーズな回転が可能となる。
【0149】
次に、ブッシュ400a、400bの変形例について説明する。上記実施形態では、ブッシュ400a、400bを貫通穴H210に圧入固定する例について説明したが、これに限らない。例えば、図示しないが、ブッシュ400a、400をロッド部材32に固定してもよい。具体的には、ブッシュ400a、400bは、ロッド部材32が挿入された状態で当該ロッド部材32に固定され、ロッド部材32と共に貫通穴H210に挿入されていてもよい。
【0150】
図23は、ブッシュ400a、400bの変形例である。
【0151】
図23に示すように、ブッシュ400a、400bに代えて、貫通穴H210(リテーナ200の板状部210)の一部に設けられた小径部213を用いてもよい。その際、小径部213の断面形状は、直線形状としてもよいし(図23中左側参照)、小径部213とロッド部材32との間の摩擦をより少なくするため、曲線形状(凸曲線形状)としてもよい(図23中右側参照)。
図24は、ブッシュ400a、400bの他の変形例である。
【0152】
図24に示すように、ブッシュ400a、400bに代えて、ロッド部材32の一部に設けられた大径部32cを用いてもよい。その際、大径部32cの断面形状は、直線形状としてもよいし(図24中左側参照)、大径部32cと貫通穴H210(リテーナ200の板状部210)との間の摩擦をより少なくするため、曲線形状(凸曲線形状)としてもよい(図24中右側参照。)
以上説明したように、本実施形態によれば、Tダイ20A(熱源)からの熱がリテーナ200を介してアクチュエータ311に伝熱されるのを抑制できるため、アクチュエータ311が高温となるのを抑制することができる。これは、リテーナ200とTダイ20Aとの間に第1断熱部材100aを配置し、かつ、アクチュエータ保持部220とリテーナ200との間に第2断熱部材100bを配置したことによるものである。その結果、アクチュエータ311の動作不良が発生するのを抑制することができる。
【0153】
また、本実施形態によれば、リテーナ200をTダイ20A(熱源)からの熱を放熱する放熱手段として機能させることができるため、冷却構造を簡素化することができる。これも、リテーナ200とTダイ20Aとの間に第1断熱部材100aを配置し、かつ、アクチュエータ保持部220とリテーナ200との間に第2断熱部材100bを配置したことによるものである。
【0154】
なお、本実施形態の断熱部材(第1断熱部材100a、第2断熱部材100b)は、上記実施形態の押出成形装置1Aに限らず、上記参考例1の押出成形装置1等、他の押出成形装置にも同様に適用することができる。
【0155】
また、本実施形態によれば、ロッド部材32(先端部32a)が固定(剛接続)された可動リップ21cを固定リップ22cに対して変位させる(押し引きする)場合であっても、アクチュエータ311の出力軸311bのスムーズな動作(例えば、回転)が可能となる。
【0156】
これは、貫通穴H210内におけるロッド部材32の径方向の移動を規制しつつ、貫通穴H210内におけるロッド部材32の軸AX32方向の移動を許容可能なガイド部として機能するブッシュ400a、400bを設けたことによるものである。
【0157】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施形態の押出成形装置1Aに対して上記参考例で説明した変形例1~4を適用してもよい。
【符号の説明】
【0158】
1…押出成形装置
10…押出機
11…溶融樹脂出口
20、20A…Tダイ(押出成形用ダイ)
20a…先端部
20b…基端部
21…ダイブロック
21b…テーパ面
21c…可動リップ
21d…凹部
21e…保持部
21f…保持部
21j…保持部
22…ダイブロック
22b…テーパ面
22c…固定リップ
23c…スリット
30…リップ間隔調整装置
31…リップ間隔調整機構
31A…第1リップ間隔調整機構
31B…第2リップ間隔調整機構
32…ロッド部材
32a…先端部
32b…基端部
33…ヒートボルト
34…差動ねじ
35…ロッド部材
40…冷却ロール
50…搬送ロール群
51-58…搬送ロール
60…巻取機
70…厚みセンサ
71…リップ間隔測定部
80…制御部
92a…溶融樹脂
93…フィルム
100a…第1断熱部材
100b…第2断熱部材
200…リテーナ
220…アクチュエータ保持部
311…アクチュエータ
311A…第1アクチュエータ
311B…第2アクチュエータ
311a…アクチュエータ本体
311b…出力軸
312…連結部材
312A…第1連結部材
312B…第2連結部材
313…アクチュエータ
313a…アクチュエータ本体
313b…出力軸
341…外ねじ
342…内ねじ
343…ロッド
400a、400b…ブッシュ
500…連結部材
600…ナット部
700…放熱促進手段
S…リップ間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
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図25
図26
図27A
図27B