(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124605
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】領域特定プログラム、領域特定装置、及び領域特定方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240906BHJP
G06T 7/136 20170101ALI20240906BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G7/00 601A
G06T7/136
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032389
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】柏川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩一
【テーマコード(参考)】
2B022
5L096
【Fターム(参考)】
2B022DA05
2B022DA08
5L096BA18
5L096DA01
5L096EA43
5L096FA02
5L096FA77
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】観測領域に含まれる植物の生育領域を特定する。
【解決手段】コンピュータは、観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、反射光の特定波長領域における反射強度を画素値として含む観測領域の反射強度画像から、所定の植物に対応する領域を抽出する。コンピュータは、特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて、反射強度画像を2値化することで、反射強度画像から所定の植物に対応する領域を抽出する。コンピュータは、複数の波長領域それぞれにおける反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、所定の植物の生育領域を特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する、
処理をコンピュータに実行させるための領域特定プログラム。
【請求項2】
前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記反射強度画像を2値化することで、第1の2値画像を生成する処理と、
前記第1の2値画像を用いて生成された第2の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第2の2値画像は前記第1の2値画像と類似しており、かつ、前記第2の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第2の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第1の2値画像から前記第2の2値画像が生成されることを特徴とする請求項1記載の領域特定プログラム。
【請求項3】
前記領域特定プログラムは、前記複数の波長領域のうち隣接する2つの波長領域それぞれにおける反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む前記観測領域の指標画像を、前記2つの波長領域それぞれにおける前記所定の植物の反射強度の間の関係から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理を、前記コンピュータにさらに実行させ、
前記所定の植物の生育領域を特定する処理は、前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分と、前記指標画像から抽出された領域とに基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する処理を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の領域特定プログラム。
【請求項4】
前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記指標画像を2値化することで、第3の2値画像を生成する処理と、
前記第3の2値画像を用いて生成された第4の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第4の2値画像は前記第3の2値画像と類似しており、かつ、前記第4の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第4の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第3の2値画像から前記第4の2値画像が生成されることを特徴とする請求項3記載の領域特定プログラム。
【請求項5】
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する抽出部と、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する特定部と、
を備えることを特徴とする領域特定装置。
【請求項6】
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする領域特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、領域特定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの圃場を管理する農業協同組合等において、連作の抑制、作物の伝染病の拡大防止等を可能にするため、圃場毎にどんな作物が植えられているかを把握することが有益である。従来、農業協同組合等においては、農業従事者からの報告に基づいて植え付け作物の種類を管理していることが多い。
【0003】
圃場の管理に関して、簡易な構成で生育診断を短時間に行うことができる移動体搭載用の生育度測定装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。圃場単位で、生育指数の取得のための観測装置を設置しなくても、農作業の判断基準となる情報を算出、視覚的に表示し、農作業を支援するシステムも知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
植物により反射された太陽光の反射強度を示すスペクトルデータを用いて、植物の種類を精度良く判定する植物判定装置も知られている(例えば、特許文献3を参照)。撮像画像信号から特定色の色信号を抽出し、抽出された色信号を2値化し、認識対象果実のみに対応した2値化画像情報を得る果実認識装置も知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-314215号公報
【特許文献2】特開2007-310463号公報
【特許文献3】特開2015-77113号公報
【特許文献4】特開昭62-295190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
農業従事者に対して支払われる補助金及び保険金は、植え付け作物の種類に応じて異なるため、農業従事者からの報告に基づいて作物の種類を管理する方法では、必ずしも正確な作物の種類が報告されるとは限らない。
【0007】
正確な作物の種類を取得するためには、人手により圃場を踏査する方法が有効である。しかしながら、この方法では、多くの圃場の作物の種類を効率良く取得することが困難である。
【0008】
特許文献3の技術によれば、人工衛星又は航空機からのリモートセンシングにより取得されたスペクトルデータを用いて、作物の種類を判定することができる。しかしながら、この技術では、複数種類の作物が栽培されている農地から特定の作物の圃場を効率良く抽出することが困難である。
【0009】
なお、かかる問題は、圃場で栽培されている作物を管理する場合に限らず、様々な場所で生育している植物を管理する場合において生ずるものである。
【0010】
1つの側面において、本発明は、観測領域に含まれる植物の生育領域を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの案では、領域特定プログラムは、以下の処理をコンピュータに実行させる。
【0012】
コンピュータは、観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、反射光の特定波長領域における反射強度を画素値として含む観測領域の反射強度画像から、所定の植物に対応する領域を抽出する。コンピュータは、特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて、反射強度画像を2値化することで、反射強度画像から所定の植物に対応する領域を抽出する。
【0013】
コンピュータは、複数の波長領域それぞれにおける反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、所定の植物の生育領域を特定する。
【発明の効果】
【0014】
1つの側面によれば、観測領域に含まれる植物の生育領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の領域特定装置の機能的構成図である。
【
図2】第1の領域特定処理のフローチャートである。
【
図4】領域特定システムに含まれる領域特定装置の機能的構成図である。
【
図5】小麦の基準スペクトルデータを示す図である。
【
図6】シミュレーテッドアニーリングにおけるエネルギーの推移を示す図である。
【
図8】反射強度画像から生成された2値画像を示す図である。
【
図9】反射強度画像から生成された2値画像を最適化した2値画像を示す図である。
【
図10】指標画像から生成された2値画像を示す図である。
【
図11】指標画像から生成された2値画像を最適化した2値画像を示す図である。
【
図12】第2の領域特定処理のフローチャートである。
【
図13】情報処理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、実施形態の領域特定装置の機能的構成例を示している。
図1の領域特定装置101は、抽出部111及び特定部112を含む。
【0018】
図2は、
図1の領域特定装置101が行う第1の領域特定処理の例を示すフローチャートである。
【0019】
まず、抽出部111は、観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、反射光の特定波長領域における反射強度を画素値として含む観測領域の反射強度画像から、所定の植物に対応する領域を抽出する(ステップ201)。ステップ201において、抽出部111は、特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて、反射強度画像を2値化することで、反射強度画像から所定の植物に対応する領域を抽出する。
【0020】
次に、特定部112は、複数の波長領域それぞれにおける反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、所定の植物の生育領域を特定する(ステップ202)。
【0021】
図1の領域特定装置101によれば、観測領域に含まれる植物の生育領域を特定することができる。
【0022】
図3は、
図1の領域特定装置101を含む領域特定システムの構成例を示している。
図3の領域特定システムは、領域特定装置301及びアニーリング装置302を含む。領域特定装置301は、
図1の領域特定装置101に対応する。
【0023】
領域特定装置301は、通信ネットワーク303を介して、アニーリング装置302と通信する。領域特定装置301は、人工衛星又は航空機からのリモートセンシングにより取得された観測領域のマルチスペクトル画像から、観測領域の2値画像を生成し、生成された2値画像の画像情報をアニーリング装置302へ送信する。
【0024】
アニーリング装置302は、領域特定装置301から受信した画像情報が示す2値画像を、シミュレーテッドアニーリングを用いて最適化し、最適化された2値画像の画像情報を領域特定装置301へ送信する。
【0025】
領域特定装置301は、アニーリング装置302から受信した2値画像の画像情報を用いて、観測領域に含まれる所定の植物の生育領域を特定し、特定された生育領域を示す画像を出力する。
【0026】
図4は、
図3の領域特定装置301の機能的構成例を示している。
図4の領域特定装置301は、取得部411、生成部412、抽出部413、特定部414、通信部415、及び記憶部416を含む。抽出部413及び特定部414は、
図1の抽出部111及び特定部112にそれぞれ対応する。
【0027】
通信部415は、通信ネットワーク303を介して、アニーリング装置302と通信する。通信ネットワーク303は、WAN(Wide Area Network)又はLAN(Local Area Network)である。
【0028】
取得部411は、通信部415を介して、不図示のデータベース等から観測領域のマルチスペクトル画像421を取得し、記憶部416に格納する。観測領域は、例えば、複数種類の作物が栽培されている農地であり、複数の圃場を含む。複数種類の作物は、例えば、小麦、ばれいしょ、甜菜、スイートコーン、牧草、かぼちゃ等の作物である。
【0029】
マルチスペクトル画像421は、観測領域において作物により反射された太陽光を観測することで生成される。マルチスペクトル画像421の各画素は、反射光の複数の波長帯各々の反射強度を含む。各波長帯は、波長領域に対応し、複数の波長を含む。
【0030】
複数の波長帯としては、例えば、波長帯G、波長帯R、波長帯NIR、及び波長帯SWIRが用いられる。波長帯Gは、緑成分の波長帯であり、例えば、500~590nmの波長を含む。波長帯Rは、赤成分の波長帯であり、例えば、610~680nmの波長を含む。波長帯NIRは、近赤外成分の波長帯であり、例えば、780~890nmの波長を含む。波長帯SWIRは、短波長赤外成分の波長帯であり、例えば、1580~1750nmの波長を含む。
【0031】
マルチスペクトル画像421の各画素に含まれる各波長帯の反射強度は、その波長帯に含まれる複数の波長の反射強度を代表する代表値である。代表値としては、例えば、複数の波長の反射強度の積分値、平均値、重み付き平均値、最大値、又は最小値を用いることができる。
【0032】
生成部412は、例えば、観測領域に含まれる複数の圃場のうち、作物の種類が既知である圃場に対応する複数の画素の反射強度を用いて、その作物の基準スペクトルデータ422を生成し、記憶部416に格納する。基準スペクトルデータ422の生成に用いる圃場の作物の種類は、人手により踏査する方法等によって取得される。
【0033】
図5は、小麦の基準スペクトルデータ422の例を示している。
図5の横軸は、波長帯G、波長帯R、波長帯NIR、及び波長帯SWIRを表し、縦軸は、各波長帯における反射強度を表す。
【0034】
折れ線501は、観測領域に含まれる何れかの圃場の小麦の基準スペクトルデータ422を表す。折れ線501が示す各波長帯の反射強度は、その圃場に対応する複数の画素それぞれの反射強度の統計値を表す。統計値は、中央値、平均値、最大値、又は最小値であってもよい。基準スペクトルデータ422を表す折れ線の形状は、作物の種類によって異なる。
【0035】
生成部412は、マルチスペクトル画像421を用いて、各波長帯における反射強度を画素値として含む、観測領域の反射強度画像423を生成し、記憶部416に格納する。したがって、波長帯の個数と同じ個数の反射強度画像423が生成される。
【0036】
抽出部413は、基準スペクトルデータ422の各波長帯における反射強度から、基準スペクトルデータ422が示す作物に対応する閾値を求める。したがって、波長帯毎に異なる閾値が求められる。そして、抽出部413は、各波長帯の閾値を用いて、その波長帯の反射強度画像423を2値化することで、各波長帯の反射強度画像423から2値画像424を生成する。
【0037】
基準スペクトルデータ422が示す作物は、所定の植物に対応する。以下では、基準スペクトルデータ422が示す作物を、基準作物と記載することがある。
【0038】
2値化処理において、抽出部413は、例えば、基準スペクトルデータ422の各波長帯を特定波長帯として用いて、基準スペクトルデータ422の特定波長帯における反射強度に所定値Δ1を加算することで、上限値U1を求める。さらに、抽出部413は、特定波長帯における反射強度から所定値Δ1を減算することで、下限値L1を求める。所定値Δ1は、基準スペクトルデータ422の特定波長帯における反射強度の10%~30%の範囲の値であってもよい。
【0039】
次に、抽出部413は、特定波長帯の反射強度画像423から、下限値L1以上、かつ、上限値U1以下の画素値を抽出し、抽出された画素値の統計値を、閾値T1として求める。統計値は、中央値、平均値、最大値、又は最小値であってもよい。上限値U1、下限値L1、及び閾値T1は、基準作物に対応する閾値である。
【0040】
次に、抽出部413は、抽出された画素値のうち、閾値T1よりも大きな画素値を0に変換し、閾値T1以下の画素値を1に変換する。さらに、抽出部413は、特定波長帯の反射強度画像423に含まれる画素値のうち、下限値L1未満の画素値と上限値U1よりも大きな画素値とを1に変換する。したがって、2値画像424の画素値は、0又は1である。
【0041】
次に、抽出部413は、2値画像424の画素値0を1に変換し、画素値1を-1に変換することで、各画素の変換後の画素値と2次元座標(x,y)とを含む、2値画像424の画像情報を生成する。したがって、2値画像424の画像情報に含まれる各画素の画素値は、1又は-1である。そして、抽出部413は、通信部415を介して、2値画像424の画像情報をアニーリング装置302へ送信する。
【0042】
アニーリング装置302は、領域特定装置301から受信した2値画像424の画像情報を、シミュレーテッドアニーリングを用いて最適化することで、最適化された2値画像の画像情報を生成する。そして、アニーリング装置302は、最適化された2値画像の画像情報を領域特定装置301へ送信する。2値画像424は、第1の2値画像の一例であり、最適化された2値画像は、第2の2値画像の一例である。
【0043】
シミュレーテッドアニーリングは、イジング型のエネルギー関数を用いて多変数の最適化問題を解くアルゴリズムであり、疑似焼き鈍し法と呼ばれることもある。マルチスペクトル画像421は多数の画素を含んでいるため、マルチスペクトル画像421と同じ個数の画素を含む2値画像424を最適化する処理は、多変数の最適化問題を解く処理になる。シミュレーテッドアニーリングを用いて最適化を行うイジング装置は、ボルツマンマシンと呼ばれることもある。
【0044】
図6は、シミュレーテッドアニーリングにおけるエネルギーの推移の例を示している。
図6(a)は、熱ノイズの幅が最大値である場合の推移の例を示している。横軸は、計算ステップqを表し、縦軸は、最適化対象のエネルギーEを表す。シミュレーテッドアニーリングの目的は、エネルギーEを最小化する解を求めることである。点601は、エネルギーEの最小値に対応する最適解を示し、点602~点605は、エネルギーEの極小値に対応する局所解を示す。
【0045】
一般的な最急降下法等の場合、シミュレーテッドアニーリングとは異なり、一旦局所解に陥ると、そこから抜け出すことはできない。シミュレーテッドアニーリングの場合、熱ノイズを加えることで、破線の矢印が示すように、局所解又は最適解からエネルギーEがある程度高くなる方へ移動することも可能になる。
【0046】
図6(b)は、熱ノイズの幅が中間値である場合の推移の例を示しており、
図6(c)は、熱ノイズの幅が最小値である場合の推移の例を示している。熱ノイズの幅を徐々に小さくしていくことで、最適解から抜け出しにくくなり、最終的には最適解に収束する。
【0047】
シミュレーテッドアニーリングを用いて2値画像424を最適化することで、2値画像424に含まれる画素値のノイズを高速に除去して、2値画像424を補正することができる。アニーリング装置302は、例えば、次のような条件を用いて2値画像424を最適化する。
【0048】
(C1)最適化された2値画像は、2値画像424と類似している。
(C2)最適化された2値画像における特定の画素の画素値は、特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向がある。
【0049】
この場合、エネルギーEに相当する目的関数Hは、次式により表される。
【0050】
【0051】
i及びjは、2値画像424又は最適化された2値画像の画素を示すインデックスである。2値画像424がP個(Pは2以上の整数)の画素を含む場合、i及びjは、1~Pの範囲の値である。各画素の位置は、2値画像424の画像情報に含まれる2次元座標(x,y)により表される。
【0052】
式(3)のg(i)は、2値画像424の画像情報に含まれるi番目の画素の画素値を表し、s(i)は、最適化された2値画像の画像情報に含まれるi番目の画素の画素値を表す。g(i)及びs(i)は、1又は-1である。式(3)の右辺の総和記号は、i=1~Pに関する総和を表す。
【0053】
式(2)のs(i)としては、i番目の画素に隣接する8個の画素の画素値の論理和が用いられ、s(j)としては、j番目の画素に隣接する8個の画素の画素値の論理和が用いられる。s(i)及びs(j)は、1又は-1である。式(2)の右辺の総和記号は、i番目の画素とj番目の画素が隣接しているようなiとjの組み合わせについてのみ、s(i)s(j)を加算することを表す。Jは、正の定数である。
【0054】
式(1)が示すように、目的関数Hは、関数H1と関数H2の和で表される。式(2)の関数H1は、条件(C2)を表し、式(3)の関数H2は、条件(C1)を表す。
【0055】
図7は、2つの画素値の組み合わせの例を示している。
図7(a)は、式(3)に含まれるg(i)とs(i)の組み合わせの例を示している。g(i)とs(i)が同じ値である場合、-g(i)s(i)は-1となり、g(i)とs(i)が異なる値である場合、-g(i)s(i)は1となる。
【0056】
したがって、式(3)の関数H2の値は、g(i)とs(i)が同じ値である場合に減少し、異なる値である場合に増加する。すべてのiについてg(i)とs(i)が同じ値である場合、関数H2の値は最小値-Pになる。このため、関数H2のみを最小化する最適化処理を行うと、最適化された2値画像が2値画像424と同じになる可能性が高くなる。しかしながら、2値画像424には画素値のノイズが含まれているため、最適化された2値画像が2値画像424と同じになることは好ましくない。
【0057】
図7(b)は、式(2)に含まれるs(i)とs(j)の組み合わせの例を示している。s(i)とs(j)が同じ値である場合、-s(i)s(j)は-1となり、s(i)とs(j)が異なる値である場合、-s(i)s(j)は1となる。
【0058】
したがって、式(2)の関数H1の値は、s(i)とs(j)が同じ値である場合に減少し、異なる値である場合に増加する。i番目の画素とj番目の画素が隣接しており、かつ、s(i)とs(j)が同じ値であるようなiとjの組み合わせが多いほど、関数H1の値は小さくなる。
【0059】
関数H1と関数H2の和である目的関数Hを最小化するs(1)~s(P)を求めることで、条件(C1)及び条件(C2)を満たす2値画像を生成することができる。Jの大きさは、例えば、シミュレーション又は実験によって適切に調整される。
【0060】
抽出部413は、通信部415を介して、アニーリング装置302によって最適化された2値画像の画像情報を受信する。次に、抽出部413は、最適化された2値画像の画像情報の画素値1を0に変換し、画素値-1を1に変換することで、最適化された2値画像を生成する。そして、抽出部413は、最適化された2値画像から、画素値0を有する画素の集合を、基準作物に対応する領域として抽出し、抽出された領域を示す領域情報425を記憶部416に格納する。
【0061】
図8は、基準作物が小麦である場合に反射強度画像423から生成された2値画像424の例を示している。
図8(a)は、波長帯Gの反射強度画像423から生成された2値画像424の例を示している。黒画素は、画素値0を有する画素を表し、白画素は、画素値1を有する画素を表す。
【0062】
図8(b)は、波長帯Rの反射強度画像423から生成された2値画像424の例を示している。
図8(c)は、波長帯NIRの反射強度画像423から生成された2値画像424の例を示している。
図8(d)は、波長帯SWIRの反射強度画像423から生成された2値画像424の例を示している。
【0063】
図9は、
図8の2値画像424をアニーリング装置302が最適化することで生成された2値画像の例を示している。
図9(a)は、波長帯Gの最適化された2値画像の例を示している。
図9(b)は、波長帯Rの最適化された2値画像の例を示している。
図9(c)は、波長帯NIRの最適化された2値画像の例を示している。
図9(d)は、波長帯SWIRの最適化された2値画像の例を示している。
【0064】
特定部414は、複数の波長帯それぞれの最適化された2値画像から抽出された領域を示す領域情報425を用いて、それらの領域の重複部分を求め、重複部分を基準作物の生育領域として特定する。そして、特定部414は、特定された生育領域を示す画像を出力する。
【0065】
例えば、領域情報425が
図9(a)~
図9(d)の4個の2値画像に含まれる黒画素領域を示している場合、それらの4個の2値画像に含まれる黒画素領域の間で重複している重複部分が、小麦の生育領域として特定される。
【0066】
図9の最適化された2値画像では、
図8の2値画像424に含まれている画素値のノイズが除去されて、黒画素領域と白画素領域の境界がより明確になっていることが分かる。したがって、最適化された2値画像を用いて基準作物の生育領域を特定することで、生育領域の特定精度が向上する。
【0067】
なお、領域特定装置301は、最適化された2値画像の代わりに2値画像424を用いて、基準作物の生育領域を特定してもよい。この場合、抽出部413は、2値画像424から画素値0を有する領域を抽出し、特定部414は、複数の波長帯それぞれの2値画像424から抽出された領域の重複部分を、基準作物の生育領域として特定する。
【0068】
ところで、基準作物の生育領域を特定するために、各波長帯の反射強度画像423に加えて、隣接する2つの波長帯それぞれにおける反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む指標画像を用いることもできる。
【0069】
この場合、生成部412は、マルチスペクトル画像421の隣接する2つの波長帯のすべての組み合わせについて、反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む観測領域の指標画像426を生成し、記憶部416に格納する。隣接する2つの波長帯の組み合わせの個数は、波長帯の個数よりも1つ少ないため、波長帯の個数よりも1つ少ない個数の指標画像426が生成される。
【0070】
例えば、波長帯G、波長帯R、波長帯NIR、及び波長帯SWIRにおける反射強度を、それぞれ、I(G)、I(R)、I(NIR)、及びI(SWIR)とすると、次式により、反射強度間の関係を示す3種類の指標を求めることができる。
【0071】
R(G,R)=I(G)/I(R) (11)
R(R,NIR)=I(R)/I(NIR) (12)
R(NIR,SWIR)=I(NIR)/I(SWIR) (13)
【0072】
式(11)のR(G,R)は、反射強度I(G)と反射強度I(R)との比率を表す。式(12)のR(R,NIR)は、反射強度I(R)と反射強度I(NIR)との比率を表す。式(13)のR(NIR,SWIR)は、反射強度I(NIR)と反射強度I(SWIR)との比率を表す。
【0073】
抽出部413は、生成部412と同様にして、基準スペクトルデータ422から、隣接する2つの波長帯のすべての組み合わせについて、反射強度間の関係を示す指標を求める。次に、抽出部413は、求められた各指標から、基準作物に対応する閾値を求める。したがって、指標毎に異なる閾値が求められる。そして、抽出部413は、各指標の閾値を用いて、その指標の指標画像426を2値化することで、各指標の指標画像426から2値画像427を生成する。
【0074】
2値化処理において、抽出部413は、例えば、基準スペクトルデータ422から求められた各指標に所定値Δ2を加算することで、上限値U2を求める。さらに、抽出部413は、各指標から所定値Δ2を減算することで、下限値L2を求める。所定値Δ2は、基準スペクトルデータ422から求められた各指標の10%~30%の範囲の値であってもよい。
【0075】
次に、抽出部413は、各指標の指標画像426から、下限値L2以上、かつ、上限値U2以下の画素値を抽出し、抽出された画素値の統計値を、閾値T2として求める。統計値は、中央値、平均値、最大値、又は最小値であってもよい。上限値U2、下限値L2、及び閾値T2は、基準作物に対応する閾値である。
【0076】
次に、抽出部413は、抽出された画素値のうち、閾値T2よりも大きな画素値を0に変換し、閾値T2以下の画素値を1に変換する。さらに、抽出部413は、各指標の指標画像426に含まれる画素値のうち、下限値L2未満の画素値と上限値U2よりも大きな画素値とを1に変換する。したがって、2値画像427の画素値は、0又は1である。
【0077】
次に、抽出部413は、2値画像427の画素値0を1に変換し、画素値1を-1に変換することで、各画素の変換後の画素値と2次元座標(x,y)とを含む、2値画像427の画像情報を生成する。そして、抽出部413は、通信部415を介して、2値画像427の画像情報をアニーリング装置302へ送信する。
【0078】
アニーリング装置302は、領域特定装置301から受信した2値画像427の画像情報を、2値画像424の画像情報と同様にして、シミュレーテッドアニーリングを用いて最適化することで、最適化された2値画像の画像情報を生成する。そして、アニーリング装置302は、最適化された2値画像の画像情報を領域特定装置301へ送信する。2値画像427は、第3の2値画像の一例であり、最適化された2値画像は、第4の2値画像の一例である。
【0079】
抽出部413は、通信部415を介して、アニーリング装置302によって最適化された2値画像の画像情報を受信する。次に、抽出部413は、最適化された2値画像の画像情報の画素値1を0に変換し、画素値-1を1に変換することで、最適化された2値画像を生成する。そして、抽出部413は、最適化された2値画像から、画素値0を有する画素の集合を、基準作物に対応する領域として抽出し、抽出された領域を示す領域情報428を記憶部416に格納する。
【0080】
図10は、基準作物が小麦である場合に指標画像426から生成された2値画像427の例を示している。
図10(a)は、R(G,R)の指標画像426から生成された2値画像427の例を示している。黒画素は、画素値0を有する画素を表し、白画素は、画素値1を有する画素を表す。
【0081】
図10(b)は、R(R,NIR)の指標画像426から生成された2値画像427の例を示している。
図10(c)は、R(NIR,SWIR)の指標画像426から生成された2値画像427の例を示している。
図10(a)~
図10(c)の2値画像427は、
図8の2値画像424を生成する際に用いたマルチスペクトル画像421から生成されている。
【0082】
図11は、
図10の2値画像427をアニーリング装置302が最適化することで生成された2値画像の例を示している。
図11(a)は、R(G,R)の最適化された2値画像の例を示している。
図11(b)は、R(R,NIR)の最適化された2値画像の例を示している。
図11(c)は、R(NIR,SWIR)の最適化された2値画像の例を示している。
【0083】
特定部414は、複数の波長帯それぞれの領域情報425と、複数の指標それぞれの領域情報428とを用いて、領域情報425が示す複数の領域と領域情報428が示す複数の領域の重複部分を求め、重複部分を基準作物の生育領域として特定する。そして、特定部414は、特定された生育領域を示す画像を出力する。
【0084】
一例として、領域情報425が
図9(a)~
図9(d)の4個の2値画像に含まれる黒画素領域を示しており、領域情報428が
図11(a)~
図11(c)の3個の2値画像に含まれる黒画素領域を示している場合を想定する。この場合、
図9(a)~
図9(d)の4個の2値画像に含まれる黒画素領域と、
図11(a)~
図11(c)の3個の2値画像に含まれる黒画素領域との間で重複している重複部分が、小麦の生育領域として特定される。
【0085】
図11の最適化された2値画像では、
図10の2値画像427に含まれている画素値のノイズが除去されて、黒画素領域と白画素領域の境界がより明確になっていることが分かる。したがって、最適化された2値画像を用いて基準作物の生育領域を特定することで、生育領域の特定精度が向上する。
【0086】
なお、領域特定装置301は、最適化された2値画像の代わりに2値画像424及び2値画像427を用いて、基準作物の生育領域を特定してもよい。この場合、抽出部413は、2値画像424及び2値画像427から画素値0を有する領域を抽出する。そして、特定部414は、複数の波長帯それぞれの2値画像424と複数の指標それぞれの2値画像427から抽出された領域の重複部分を、基準作物の生育領域として特定する。
【0087】
反射強度画像423に加えて指標画像426も用いることで、基準スペクトルデータ422と異なる反射強度間の関係を有する別の作物の生育領域が除外されるため、基準作物の生育領域をより高い精度で特定することができる。
【0088】
例えば、小麦、ばれいしょ、甜菜、スイートコーン、牧草、かぼちゃ等の圃場が観測領域に含まれている場合、各作物を基準作物として用いてその生育領域を特定することで、それらの作物の圃場を正確に分類することができる。
【0089】
反射強度間の関係を示す指標として、隣接する2つの波長帯における反射強度の比率の代わりに、他の指標を用いることも可能である。例えば、式(11)~式(13)の右辺の分母と分子を入れ替えた比率を用いてもよく、2つの波長帯における反射強度の差分を用いてもよい。2つの波長帯における反射強度の差分を用いた場合、次式により、反射強度間の関係を示す3種類の指標を求めることができる。
【0090】
R(G,R)=I(G)-I(R) (14)
R(R,NIR)=I(R)-I(NIR) (15)
R(NIR,SWIR)=I(NIR)-I(SWIR) (16)
【0091】
式(14)のR(G,R)は、反射強度I(G)と反射強度I(R)との差分を表す。式(15)のR(R,NIR)は、反射強度I(R)と反射強度I(NIR)との差分を表す。式(16)のR(NIR,SWIR)は、反射強度I(NIR)と反射強度I(SWIR)との差分を表す。
【0092】
図12は、
図4の領域特定装置301が行う第2の領域特定処理の例を示すフローチャートである。まず、取得部411は、通信部415を介して、データベース等から観測領域のマルチスペクトル画像421を取得する(ステップ1201)。
【0093】
次に、生成部412は、マルチスペクトル画像421に含まれる、基準作物の圃場に対応する反射強度を用いて、基準作物の基準スペクトルデータ422を生成する(ステップ1202)。
【0094】
次に、生成部412は、マルチスペクトル画像421を用いて、各波長帯の反射強度画像423と、隣接する2つの波長帯の反射強度間の関係を示す各指標の指標画像426とを生成する(ステップ1203)。
【0095】
次に、抽出部413は、各波長帯の反射強度画像423を2値化することで2値画像424を生成し、各指標の指標画像426を2値化することで2値画像427を生成する(ステップ1204)。そして、抽出部413は、通信部415を介して、各波長帯の2値画像424の画像情報及び各指標の2値画像427の画像情報を、アニーリング装置302へ送信する(ステップ1205)。
【0096】
次に、抽出部413は、通信部415を介して、アニーリング装置302から、各波長帯の2値画像424を最適化した2値画像の画像情報と、各指標の2値画像427を最適化した2値画像の画像情報とを受信する(ステップ1206)。そして、抽出部413は、各波長帯の最適化された2値画像及び各指標の最適化された2値画像から、基準作物に対応する領域を抽出し、領域情報425及び領域情報428を生成する(ステップ1207)。
【0097】
次に、特定部414は、各波長帯の領域情報425が示す領域と各指標の領域情報428が示す領域の重複部分を、基準作物の生育領域として特定し(ステップ1208)、基準作物の生育領域を示す画像を出力する(ステップ1209)。
【0098】
図1の領域特定装置101の構成は一例に過ぎず、領域特定装置101の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0099】
図3の領域特定システムの構成は一例に過ぎず、領域特定システムの用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、領域特定装置101の外部にアニーリング装置302を設ける代わりに、領域特定装置101がアニーリング装置302を含んでいてもよい。
【0100】
図4の領域特定装置301の構成は一例に過ぎず、領域特定システムの用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。
【0101】
図2及び
図12のフローチャートは一例に過ぎず、領域特定装置101又は領域特定システムの構成又は条件に応じて、一部の処理を省略又は変更してもよい。
【0102】
例えば、
図12の領域特定処理において指標画像426を用いない場合、ステップ1203において、生成部412は、各波長帯の反射強度画像423を生成する。ステップ1204において、抽出部413は、各波長帯の反射強度画像423を2値化することで2値画像424を生成する。ステップ1205において、抽出部413は、各波長帯の2値画像424の画像情報をアニーリング装置302へ送信する。
【0103】
ステップ1206において、抽出部413は、アニーリング装置302から、各波長帯の2値画像424を最適化した2値画像の画像情報を受信する。ステップ1207において、抽出部413は、各波長帯の最適化された2値画像から、基準作物に対応する領域を抽出し、領域情報425を生成する。ステップ1208において、特定部414は、各波長帯の領域情報425が示す領域の重複部分を、基準作物の生育領域として特定する。
【0104】
図5に示した小麦の基準スペクトルデータ422は一例に過ぎず、基準スペクトルデータ422は、圃場及び日時に応じて変化する。4つの波長帯は一例に過ぎず、領域特定システムの用途又は条件に応じて、各波長帯の波長範囲又は波長帯の個数を変更してもよい。
【0105】
図6に示したエネルギーの推移は一例に過ぎず、シミュレーテッドアニーリングにおけるエネルギーの推移は、最適化問題に応じて変化する。
図7に示した画素値は一例に過ぎず、別の画素値を用いて最適化問題を定式化してもよい。
図8~
図11に示した2値画像は一例に過ぎず、2値画像は、観測領域のマルチスペクトル画像421及び基準スペクトルデータ422に応じて変化する。
【0106】
式(1)~式(3)及び式(11)~式(16)は一例に過ぎず、領域特定装置301は、別の計算式を用いて領域特定処理を行ってもよい。
【0107】
図13は、
図1の領域特定装置101及び
図4の領域特定装置301として用いられる情報処理装置(コンピュータ)のハードウェア構成例を示している。
図13の情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)1301、メモリ1302、入力装置1303、出力装置1304、補助記憶装置1305、媒体駆動装置1306、及びネットワーク接続装置1307を含む。これらの構成要素はハードウェアであり、バス1308により互いに接続されている。
【0108】
メモリ1302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリであり、処理に用いられるプログラム及びデータを記憶する。メモリ1302は、
図4の記憶部416として動作してもよい。
【0109】
CPU1301(プロセッサ)は、例えば、メモリ1302を利用してプログラムを実行することにより、
図1の抽出部111及び特定部112として動作する。CPU1301は、メモリ1302を利用してプログラムを実行することにより、
図4の取得部411、生成部412、抽出部413、及び特定部414としても動作する。
【0110】
入力装置1303は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、ユーザ又はオペレータからの指示又は情報の入力に用いられる。出力装置1304は、例えば、表示装置、プリンタ等であり、ユーザ又はオペレータへの問い合わせ又は指示、及び処理結果の出力に用いられる。処理結果は、基準作物の生育領域を示す画像であってもよい。
【0111】
補助記憶装置1305は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、テープ装置等である。補助記憶装置1305は、ハードディスクドライブ又はSSD(Solid State Drive)であってもよい。情報処理装置は、補助記憶装置1305にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1302にロードして使用することができる。補助記憶装置1305は、
図4の記憶部416として動作してもよい。
【0112】
媒体駆動装置1306は、可搬型記録媒体1309を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬型記録媒体1309は、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。可搬型記録媒体1309は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。ユーザ又はオペレータは、可搬型記録媒体1309にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1302にロードして使用することができる。
【0113】
このように、処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、メモリ1302、補助記憶装置1305、又は可搬型記録媒体1309のような、物理的な(非一時的な)記録媒体である。
【0114】
ネットワーク接続装置1307は、通信ネットワーク303に接続され、通信に伴うデータ変換を行う通信インタフェース回路である。情報処理装置は、プログラム及びデータを外部の装置からネットワーク接続装置1307を介して受信し、それらをメモリ1302にロードして使用することができる。ネットワーク接続装置1307は、
図4の通信部415として動作してもよい。
【0115】
なお、情報処理装置が
図13のすべての構成要素を含む必要はなく、情報処理装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、ユーザ又はオペレータとのインタフェースが不要な場合は、入力装置1303及び出力装置1304を省略することができる。可搬型記録媒体1309を使用しない場合は、媒体駆動装置1306を省略することができる。
【0116】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【0117】
図1乃至
図13を参照しながら説明した実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する、
処理をコンピュータに実行させるための領域特定プログラム。
(付記2)
前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記反射強度画像を2値化することで、第1の2値画像を生成する処理と、
前記第1の2値画像を用いて生成された第2の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第2の2値画像は前記第1の2値画像と類似しており、かつ、前記第2の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第2の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第1の2値画像から前記第2の2値画像が生成されることを特徴とする付記1記載の領域特定プログラム。
(付記3)
前記第2の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第1の2値画像から生成されることを特徴とする付記2記載の領域特定プログラム。
(付記4)
前記領域特定プログラムは、前記複数の波長領域のうち隣接する2つの波長領域それぞれにおける反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む前記観測領域の指標画像を、前記2つの波長領域それぞれにおける前記所定の植物の反射強度の間の関係から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理を、前記コンピュータにさらに実行させ、
前記所定の植物の生育領域を特定する処理は、前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分と、前記指標画像から抽出された領域とに基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する処理を含むことを特徴とする付記1乃至3の何れか1項に記載の領域特定プログラム。
(付記5)
前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記指標画像を2値化することで、第3の2値画像を生成する処理と、
前記第3の2値画像を用いて生成された第4の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第4の2値画像は前記第3の2値画像と類似しており、かつ、前記第4の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第4の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第3の2値画像から前記第4の2値画像が生成されることを特徴とする付記4記載の領域特定プログラム。
(付記6)
前記第4の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第3の2値画像から生成されることを特徴とする付記5記載の領域特定プログラム。
(付記7)
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する抽出部と、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する特定部と、
を備えることを特徴とする領域特定装置。
(付記8)
前記抽出部は、前記反射強度画像を2値化することで、第1の2値画像を生成し、前記第1の2値画像を用いて生成された第2の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記第2の2値画像は前記第1の2値画像と類似しており、かつ、前記第2の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第2の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第1の2値画像から前記第2の2値画像が生成されることを特徴とする付記7記載の領域特定装置。
(付記9)
前記第2の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第1の2値画像から生成されることを特徴とする付記8記載の領域特定装置。
(付記10)
前記抽出部は、前記複数の波長領域のうち隣接する2つの波長領域それぞれにおける反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む前記観測領域の指標画像を、前記2つの波長領域それぞれにおける前記所定の植物の反射強度の間の関係から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記特定部は、前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分と、前記指標画像から抽出された領域とに基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定することを特徴とする付記7乃至9の何れか1項に記載の領域特定装置。
(付記11)
前記抽出部は、前記指標画像を2値化することで、第3の2値画像を生成し、前記第3の2値画像を用いて生成された第4の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記第4の2値画像は前記第3の2値画像と類似しており、かつ、前記第4の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第4の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第3の2値画像から前記第4の2値画像が生成されることを特徴とする付記10記載の領域特定装置。
(付記12)
前記第4の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第3の2値画像から生成されることを特徴とする付記11記載の領域特定装置。
(付記13)
観測領域において観測される反射光の複数の波長領域各々を特定波長領域として用いて、前記反射光の前記特定波長領域における反射強度を画素値として含む前記観測領域の反射強度画像を、前記特定波長領域における所定の植物の反射強度から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出し、
前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分に基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする領域特定方法。
(付記14)
前記反射強度画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記反射強度画像を2値化することで、第1の2値画像を生成する処理と、
前記第1の2値画像を用いて生成された第2の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第2の2値画像は前記第1の2値画像と類似しており、かつ、前記第2の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第2の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第1の2値画像から前記第2の2値画像が生成されることを特徴とする付記13記載の領域特定方法。
(付記15)
前記第2の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第1の2値画像から生成されることを特徴とする付記14記載の領域特定方法。
(付記16)
前記複数の波長領域のうち隣接する2つの波長領域それぞれにおける反射強度の間の関係を示す指標を画素値として含む前記観測領域の指標画像を、前記2つの波長領域それぞれにおける前記所定の植物の反射強度の間の関係から求められた閾値に基づいて2値化することで、前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理を、前記コンピュータがさらに実行し、
前記所定の植物の生育領域を特定する処理は、前記複数の波長領域それぞれにおける前記反射強度画像から抽出された領域の重複部分と、前記指標画像から抽出された領域とに基づいて、前記所定の植物の生育領域を特定する処理を含むことを特徴とする付記13乃至15の何れか1項に記載の領域特定方法。
(付記17)
前記指標画像から前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理は、
前記指標画像を2値化することで、第3の2値画像を生成する処理と、
前記第3の2値画像を用いて生成された第4の2値画像から、前記所定の植物に対応する領域を抽出する処理と、
を含み、
前記第4の2値画像は前記第3の2値画像と類似しており、かつ、前記第4の2値画像における特定の画素の画素値は、前記第4の2値画像における特定の画素に隣接する画素の画素値と一致する傾向があることを示す条件を用いて、前記第3の2値画像から前記第4の2値画像が生成されることを特徴とする付記16記載の領域特定方法。
(付記18)
前記第4の2値画像は、シミュレーテッドアニーリングを用いて、前記第3の2値画像から生成されることを特徴とする付記17記載の領域特定方法。
【符号の説明】
【0118】
101、301 領域特定装置
111、413 抽出部
112、414 特定部
302 アニーリング装置
303 通信ネットワーク
411 取得部
412 生成部
415 通信部
416 記憶部
421 マルチスペクトル画像
422 基準スペクトルデータ
423 反射強度画像
424、427 2値画像
425、428 領域情報
426 指標画像
501 折れ線
601~605 点
1301 CPU
1302 メモリ
1303 入力装置
1304 出力装置
1305 補助記憶装置
1306 媒体駆動装置
1307 ネットワーク接続装置
1308 バス
1309 可搬型記録媒体