IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両前部構造 図1
  • 特開-車両前部構造 図2
  • 特開-車両前部構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124617
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240906BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B62D25/08 C
B60K1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032410
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 和彦
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BA17
3D203BB16
3D203BB17
3D203BB33
3D203BB34
3D203BB35
3D203BB43
3D203BB44
3D203BB45
3D203BC14
3D203CA04
3D203CA08
3D203CA23
3D203CB03
3D203CB07
3D203CB09
3D203DB07
3D203DB10
3D235AA01
3D235BB25
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD02
3D235DD12
3D235DD17
3D235EE18
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF17
(57)【要約】
【課題】電力供給ユニット搭載用のフレームの支持剛性を向上可能とする車両前部構造の提供。
【解決手段】車両前部構造は、車両のフロントコンパートメント1内で車両左右方向の中間に配置される駆動力発生用のモータ2と、このモータ2に電力を供給する電力供給ユニット3と、この電力供給ユニット3が搭載されかつ左右のサイドメンバ6にそれぞれ固定される左右の取付片55,56を有するフレーム5と、を備え、左右のフロントサスタワー7の各上端間に掛け渡されるタワーバー8と、このタワーバー8に上端が固定されかつフレーム5の後部に下端が固定される結合部材9と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントコンパートメント内で車両左右方向の中間に配置される駆動力発生用のモータと、このモータに電力を供給する電力供給ユニットと、この電力供給ユニットが搭載されかつ左右のサイドメンバにそれぞれ固定される左右の取付片を有するフレームと、を備える車両前部構造であって、
左右のフロントサスタワーの各上端間に掛け渡されるタワーバーと、このタワーバーに上端が固定されかつ前記フレームの後部に下端が固定される結合部材と、を備えていることを特徴とする車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、「例えば車両のフロントコンパートメント16内においてボディ10には部品搭載フレーム30が固定され、この部品搭載フレーム30上には回路ケース50が固定され、この回路ケース50内には走行用モータに交流電力を供給するインバータ回路が収容されている」ということが記載されている。
【0003】
また、前記特許文献1には、「部品搭載フレーム30の前方クロスメンバ32の右端部は、ブラケット42を介して右エプロンアッパメンバ14Rに接続されている。前方クロスメンバ32の左端部は、ブラケット44を介して左エプロンアッパメンバ14Lに接続されている。部品搭載フレーム30の後方クロスメンバ34の右端部は、ブラケット46を介して右フロントサイドメンバ22Rに接続されている。後方クロスメンバ34の左端部は、ブラケット48を介して左フロントサイドメンバ22Lに接続されている。」ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7221844号(特開2021-66340号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、「車両がその前部で衝突した場合には、ボディ10が変形することによって回路ケース50が部品搭載フレーム30と共に、後部ボディ構成部材(ダッシュパネル20等)側に向かって押し出され、回路ケース50が前記後部ボディ構成部材に衝突するよりも先に後方クロスメンバ34が前記後部ボディ構成部材に衝突し易いので、回路ケース50に加わる荷重が軽減され易い。」ということや、「車両がその前部で衝突した場合には、前部ボディ構成部材(コアサポート18等)が回路ケース50側に向かって押し出され、前記前部ボディ構成部材が回路ケース50に衝突するよりも先に前方クロスメンバ32に衝突し易いので、回路ケース50に加わる荷重が軽減され易い。」ということが記載されているものの、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、電力供給ユニット搭載用のフレームの支持剛性を向上可能とする車両前部構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両のフロントコンパートメント内で車両左右方向の中間に配置される駆動力発生用のモータと、このモータに電力を供給する電力供給ユニットと、この電力供給ユニットが搭載されかつ左右のサイドメンバにそれぞれ固定される左右の取付片を有するフレームと、を備える車両前部構造であって、左右のフロントサスタワーの各上端間に掛け渡されるタワーバーと、このタワーバーに上端が固定されかつ前記フレームの後部に下端が固定される結合部材と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
この構成では、前記フレームの左右の取付片を介して前記左右のサイドメンバに支持されているとともに、前記フレームが前記タワーバーおよび前記結合部材を介して前記フロントサスタワーに支持されているから、前記フレームの支持剛性が向上する。そのため、前記フレーム上に搭載される前記電力供給ユニットの姿勢安定化、姿勢保持強度などを向上することが可能になる。
【0009】
しかも、上記構成では、例えば車両の前面衝突時における衝突荷重が前記フレームに入力された場合でも、当該衝突荷重が前記フレームの左右の取付片を介して前記左右のサイドメンバで受け止められるとともに、前記タワーバーおよび前記結合部材を介して前記フロントサスタワーで受け止められるようになるから、前記サイドメンバの変形モードが安定するようになる。
【0010】
さらに、上記構成では、例えば車両の前面衝突時に、前記フレームおよび前記電力供給ユニットのいわゆるピッチング(車体の左右を軸にした回転運動)を低減することが可能になるから、当該電力供給ユニットがダッシュパネルに直接干渉することを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力供給ユニット搭載用のフレームの支持剛性を向上可能な車両前部構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る車両前部構造の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
図2】車両前部構造の概略構成を示す平面図である。
図3】(a)は図2の(3a)-(3a)線断面図、(b)は図2の(3b)-(3b)線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1から図3に本発明の一実施形態を示している。この実施形態で示す車両は、BEV(Battery Electric Vehicle)と呼ばれる電気自動車であって、そのフロントコンパートメント1内において車両左右方向の中間には、モータ2、電力供給ユニット(ESU:Electricity Supply Unit)3、補機バッテリ4などが搭載されている。
【0015】
モータ2は、車両の走行用駆動力を発生する車両駆動源である。電力供給ユニット3は、車載充電器、DC-DCコンバータならびに制御基板などを一体化することによりモータ2に電力を供給する構成であって、フレーム5上に搭載されている。補機バッテリ4は、電力供給ユニット3の左側に隣り合うように配置されている。なお、モータ2は、フレーム5の下方に配置されている。
【0016】
フレーム5は、車両の前後左右の帯状板51~54からなる本体(符号省略)と、車両の左右の取付片55,56とを組み合わせて連結することによって形成されている。
【0017】
前後左右の帯状板51~54は、平面視で車両の前側から後側へ向けて幅狭となる向きの台形形状の本体を作るように組み合わされて固定されている。
【0018】
左右の取付片55,56は、左右の帯状板51,52の前寄り位置から車両左右方向に沿って延出するように固定されている。
【0019】
このフレーム5は、左右の取付片55,56の外端が下記する左右のサイドメンバ6にそれぞれ固定されることによってフロントコンパートメント1内において車両左右方向の中間に配置されるようになっている。
【0020】
そして、フレーム5の前後左右の帯状板51~54ならびに左右の取付片55,56は、例えば金属(鉄系金属、強化アルミニウム合金など)や、繊維(ガラス繊維や炭素繊維など)で強化されたプラスチックなどで形成することができる。また、前後左右の帯状板51~54の固定や左右の取付片55,56の左右のサイドメンバ6への固定は、例えば接合(溶接、溶剤接着など)や、ボルト締結、あるいはそれら両方を併用することにより行われている。
【0021】
この実施形態の車両前部構造は、左右のサイドメンバ6、左右のフロントサスタワー7、単一のタワーバー8、2つの結合部材9、などを備えている。
【0022】
左右のサイドメンバ6は、図示していない車室の前方で左側と右側とに車両前後方向に沿うように設けられている。左右のサイドメンバ6の各前端には、図示していないフロントクロスメンバが架け渡されるように取り付けられている。
【0023】
左右のフロントサスタワー7は、左右のサイドメンバ6の各上面に取り付けられている。なお、左右のフロントサスタワー7は、詳細に図示していない左右のフロントインサイドパネルに設けられている。
【0024】
左右のフロントサスタワー7の各前端および各上端には、フロントラジエータコアサポート10およびサイドラジエータコアサポート11が固定されている。フロントラジエータコアサポート10は、縦柱12を介して前記不図示のフロントクロスメンバに固定されている。
【0025】
タワーバー8は、左右のフロントサスタワー7の各上端間に掛け渡されるように固定されており、車両左右方向のねじりに対する剛性を高める。
【0026】
結合部材9は、上端がタワーバー8に固定されており、また、下端がフレーム5の左右の帯状板51,52の後部に固定されている。
【0027】
そして、フレーム5、タワーバー8ならびに結合部材9は、例えば金属(鉄系金属、強化アルミニウム合金など)や、繊維(ガラス繊維や炭素繊維など)で強化されたプラスチックなどで形成することができる。また、結合部材9とフレーム5およびタワーバー8との固定は、例えば接合(溶接、溶剤接着など)や、ボルト締結、あるいはそれら両方を併用することにより行われている。
【0028】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る車両前部構造では、フレーム5の左右の取付片55,56が左右のサイドメンバ6に支持されているとともに、フレーム5の本体(特に左右の帯状板51,52の後部)がタワーバー8および結合部材9を介してフロントサスタワー7に支持されているから、フレーム5の本体(特に左右の帯状板51,52の後部)をタワーバー8および結合部材9を介してフロントサスタワー7に支持しない場合に比べると、フレーム5の支持剛性が向上することが可能になる。そのため、フレーム5上に搭載される電力供給ユニット3の姿勢安定化、姿勢保持強度などが向上する。
【0029】
しかも、例えば車両の前面衝突時における衝突荷重がフレーム5に入力された場合でも、当該衝突荷重がフレーム5の左右の取付片55,56が左右のサイドメンバ6で受け止められるとともに、タワーバー8および結合部材9を介してフロントサスタワー7で受け止められるようになるから、サイドメンバ6の変形モードが安定するようになる。
【0030】
さらに、例えば車両の前面衝突時に、フレーム5および電力供給ユニット3のいわゆるピッチングを低減することが可能になるから、電力供給ユニット3がダッシュパネル13に直接干渉することを防止できる。
【0031】
特に、この実施形態では、フレーム5の本体を前後左右の帯状板51~54を組み合わせた構成にしているから、フレーム5の軽量化が可能になるとともに、フレーム5上に搭載される電力供給ユニット3の通気性が良好になる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0033】
上記実施形態では、フレーム5を前後左右の帯状板51~54ならびに左右の取付片55,56を組み合わせた構成とした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではない。例えばフレーム5は、図示していないが、1枚の平板からなる本体の左右に取付片を設けた構成などとすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両前部構造に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 フロントコンパートメント
2 モータ
3 電力供給ユニット
4 補機バッテリ
5 フレーム
51~54 帯状板
55 左の取付片
56 右の取付片
6 サイドメンバ
7 フロントサスタワー
8 タワーバー
9 結合部材
13 ダッシュパネル
図1
図2
図3