(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124618
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ロボット連携建物システム、ロボット、ロボットの走行経路管理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240906BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 P
G01C21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032412
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
【テーマコード(参考)】
2F129
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129DD53
2F129FF02
2F129FF20
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH18
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG17
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK10
5H301LL06
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】ロボットが走行することによって生じる床への損傷や汚損を低減する。
【解決手段】ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を記憶する車輪軌跡情報記憶部と、前記車輪軌跡情報記憶部に記憶された前記轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する走行ルート計画部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を記憶する車輪軌跡情報記憶部と、
前記車輪軌跡情報記憶部に記憶された前記轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する走行ルート計画部と、
を有するロボット連携建物システム。
【請求項2】
前記ロボットが走行した経路を表す走行ログを当該ロボットから受信する走行ログ受信部と、
前記受信した走行ログに基づいて、前記車輪軌跡情報記憶部に記憶される轍情報を更新する車輪軌跡情報管理部と、
を有する請求項1に記載のロボット連携建物システム。
【請求項3】
前記車輪軌跡情報管理部は、障害物または進入禁止エリアに応じて設定される指標が、前記ロボットが走行した度合いに応じた指標よりも大きくなるように、前記ロボットが走行した度合いに応じた指標を更新する
請求項2に記載のロボット連携建物システム。
【請求項4】
前記ロボットが走行した走行ルートの指標の総和に応じて当該ロボットの利用料を算出する利用料算出部と、
を有する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のロボット連携建物システム。
【請求項5】
ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する走行ルート計画部と、
前記計画された走行ルートに応じて前記ロボットを走行させる走行制御部と、
を有するロボット。
【請求項6】
ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する、
ロボットの走行経路管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット連携建物システム、ロボット、ロボットの走行経路管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内を走行する自律走行型のロボットの利用が進みつつある。このようなロボットとして、複数の車輪(例えば3つ、4つ等)が取り付けられており、モータ等の駆動装置に車輪を連結して回転させることで走行するロボットがある。
特許文献1には、建物内の地図を生成し、生成された地図に基づいて、現在地から目的地までの走行ルートを決定し、走行するロボットが開示されている。このような自律走行型のロボットは、建物内において存在する障害物を避けつつ、設定した走行ルートに沿って走行することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自律走行型のロボットが建物内を走行するシステムでは、一定のアルゴリズムで走行を繰り返した場合、同一の走行ルートを繰り返し走行することがある。このような場合、床の同じ場所を走行することがあり、車輪の軌跡に該当する建物の床の部分の損傷や汚損が進み易くなる。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、ロボットが走行することによって生じる床への損傷や汚損を低減することができるロボット連携建物システム、ロボット、ロボットの走行経路管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を記憶する車輪軌跡情報記憶部と、前記車輪軌跡情報記憶部に記憶された前記轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する走行ルート計画部と、を有するロボット連携建物システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する走行ルート計画部と、前記計画された走行ルートに応じて前記ロボットを走行させる走行制御部と、を有するロボットである。
【0008】
本発明の一態様にかかるロボットは、ロボットが走行する際に接触した履歴に応じた指標が領域ごとに割り当てられた轍情報を参照し、前記ロボットが出発地から目的地まで走行する経路において前記ロボットが接触する位置に対応する前記指標の総和を求め、当該総和が小さくなるような走行ルートを計画する、ロボットの走行経路管理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロボットが走行することによって生じる床への損傷や汚損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ロボット連携建物システム1の概要を示すブロック図である。
【
図2】建物システム20の構成を示す概略機能ブロック図である。
【
図3】ロボット10の概略の機能を表す機能ブロック図である。
【
図4】ロボット10が床面を走行する場合について示す説明図である。
【
図5】建物50内の通路の一部の領域においてロボット10aが走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
【
図6】建物50内の通路の一部の領域においてロボット10bが走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
【
図7】建物50内の通路の一部の領域において複数のロボット10が走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
【
図8】ロボット10における自律走行ルートの生成処理について説明するフローチャートである。
【
図9】建物50内の通路の一部の領域において複数のロボット10が走行ルートについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるロボット連携建物システム1の概要を示すブロック図である。ロボット連携建物システム1は、複数のロボット10a、10b、10c(以下、特に識別しない場合には単に「ロボット10」と称する場合がある)と、建物内センサ15、建物システム20とがネットワークNWを介して接続される。この実施形態においてロボット10は3台である場合を一例として説明するが、1台、2台、4台以上のいずれであってもよい。
また、ロボット10は、車輪を駆動させることで走行するロボットであってもよく、脚によって歩行するロボットであってもよい。この実施形態では、ロボットは、車輪を駆動させることで走行する場合について説明する。
【0012】
ロボット10は、建物50内を走行する自律走行型のロボットである。ロボット10は、建物50内の地図情報を生成し、生成された地図情報を用いて、建物50内を自律走行する。また、ロボット10a、10b、10cは、通信機能を有しており、ネットワークNWを介して、建物システム20とデータ通信可能である。
ロボット10は、生成した地図情報を建物システム20に送信する。また、ロボット10は、建物50内を走行した車輪の軌跡を表す走行ログを建物システム20に送信する。
このようなロボット10は、例えば、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)であってもよい。ロボット10が自律走行搬送ロボットである場合には、人が荷物をロボット10に積み込み、ロボット10が建物内の目的地まで荷物を搬送し、目的地において人が荷物を取り出す等のように、荷物の搬送業務をロボット10に行わせることができる。このような搬送業務では、荷物の積み込み場所や目的地によっては、ロボット10が同じ走行ルートを繰り返し走行する場合がある。
なお、ロボット10は、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)であってもよい。
【0013】
建物内センサ15は、建物50内を走行するロボット10の位置を検出し、ネットワークNWを介して、その検出結果を建物システム20に送信する。建物内センサ15は、例えば、建物50内を撮像するカメラであり、撮像結果である画像データに基づいて、ロボット10が走行した位置を検出する。
【0014】
建物システム20は、ネットワークNWを介して、ロボット10とデータ通信可能である。
【0015】
建物50は、ロボット10が走行可能な床を備えた建物である。建物50は、例えば、オフィスビル、工場、公共施設等のいずれであってもよい。
【0016】
図2は、建物システム20の構成を示す概略機能ブロック図である。建物システム20は、1つのコンピュータ(例えば、サーバ装置)によって構成されてもよいし、複数のコンピュータに機能が分散して搭載されていてもよい。
【0017】
建物システム20は、通信部201、記憶部202、建物内センサ情報管理部203、車輪軌跡情報管理部204を有する。
通信部201は、ロボット10と通信をする。
通信部201は、例えば、ロボットが走行した経路を表す走行ログを当該ロボットから受信する走行ログ受信部としての機能を有する。
【0018】
記憶部202は、各種データを記憶する。記憶部202は、車輪軌跡情報記憶部2021と、走行ログ記憶部2022とを有する。
【0019】
車輪軌跡情報記憶部2021は、ロボットが建物50内を走行する際に、ロボットが接触した地図上の位置に対して、ロボットが接触した履歴に基づいた指標が割り当てられた轍情報(デジタル轍)を記憶する。轍情報は、建物50内において1台または複数のロボット10が走行した際の車輪が通った地図上の位置(あるいは脚によって歩行した際に接触した位置)に対して、当該1台または複数のロボット10の車輪が通ったことに応じて付与される値を累積することで求められる値が付与されたデータである。言い換えると、轍情報は、地図上の位置毎に劣化の程度などを示す指標が付帯された地図データである。
ここでは、位置毎における走行した回数を累積することで累積値を求めるようにしてもよいし、走行した回数に対しロボットの車輪や脚の形状や重量等に応じて重み付けをした値を累積することで累積値を求めるようにしてもよい。
また、轍情報は、車輪の跡に応じて生成されるが、ロボット10が脚によって歩行される場合には、脚で床に接触した跡に応じて生成されるようにしてもよい。すなわち、轍情報は、車輪の跡に限られるものではなく、脚が接触(着地)した跡を含むことができる。
【0020】
走行ログ記憶部2022は、ロボットが走行した経路を表す走行ログを記憶する。走行ログ記憶部2022は、ロボット10から送信される走行ログが通信部201によって受信されると、この受信された走行ログを記憶する。走行ログについては後述する。
【0021】
建物内センサ情報管理部203は、建物内センサ15から検出結果を取得する。
【0022】
車輪軌跡情報管理部204は、受信した走行ログに基づいて、車輪軌跡情報記憶部2021に記憶される轍情報を更新する。例えば車輪軌跡情報管理部204は、各ロボット10から受信した走行ログに基づく車輪軌跡が示す床面における位置毎に、轍情報が示す値(後述する第2指標)を累積し、位置と累積値とを車輪軌跡情報記憶部に記憶させる。
【0023】
建物内センサ情報管理部203、車輪軌跡情報管理部204は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてもよい。
【0024】
図3は、ロボット10の概略の機能を表す機能ブロック図である。
ロボット10は、通信部101、記憶部102、LiDAR103、センサ群104、地図情報生成部105、走行ルート計画部106、駆動部107、走行ログ送信部108を有する。
通信部101は、ネットワークNWを介して建物システム20と通信を行う。
例えば、通信部101は、建物システム20から送信される、車輪軌跡情報記憶部2021に記憶された轍情報を受信する。
【0025】
記憶部102は、各種データを記憶する。
記憶部102は、例えば、車輪軌跡情報記憶部1021、地図情報記憶部1022を有する。
【0026】
車輪軌跡情報記憶部1021は、建物システム20から送信される、車輪軌跡情報記憶部2021に記憶された轍情報を記憶する。
【0027】
地図情報記憶部1022は、建物50内における地図である地図情報を記憶する。この地図情報は、地図情報生成部105によって生成された地図情報である。
また、この地図情報は、地図の床面に相当する領域が格子状(例えば、縦方向と横方向)に分割されており、建物システム20から受信した轍情報に基づいた指標が各領域に設定されたデータである。
格子状に分割された領域の分割数は任意であるが、ロボット10が走行する際に接触した位置を把握可能な程度に十分な分解能を有するように設定される。
なおロボットが走行した度合い、ひいては劣化の程度に加え、障害物や進入禁止エリアも同様に指標化し、評価することができる。つまり、本実施例の指標は、障害物や進入禁止エリアに応じた第1指標と、ロボットが走行した度合い、ひいては劣化の程度に応じた第2指標と、がある。各領域には、第1指標と第2指標との少なくともいずれか一方の指標が設定される。ここで、第1指標は、第2指標よりも十分に大きな値となるように設定される。第2指標は、ロボット10が繰り返し走行されるほど、大きな値が設定される。
【0028】
LiDAR103は、ロボット10の周辺にある物体の形状や距離を測定する。例えば、LiDAR103は、レーザ光を照射する照射部と、反射されたレーザ光を受光する受光部とを備える。照射部がパルス状のレーザ光を周囲に照射してから、受光部がその反射光を受光するまでの時間に基づいて距離を計測することにより、周囲環境の形状を示す周囲環境データを生成し、周囲に存在する障害物の検知や、自己位置を推定することができる。
【0029】
センサ群104は、ロボット10の周辺にある物体を撮像するイメージセンサ、ロボット10の車輪の回転量を検出する回転センサ、ロボット10の方向を検出する三軸加速度センサ、ロボット10の進む向きを検出するジャイロセンサ等を含む。
ここでは、センサ群104に、ロボット10の位置を測位する測位センサ(例えばGPS(Global Positioning System))を含むようにし、このGPSの機能によって自己位置を推定するようにしてもよい。
【0030】
地図情報生成部105は、LiDAR103によって測定された測定結果に基づいて、周囲の壁、床、障害物等の検出した結果や自己位置を推定した結果等を用い、周囲の地図を表す地図情報を生成する。地図の生成には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術により、ロボット10の自己位置を推定しながら、周辺の地図を生成する方法を用いることができる。
地図情報生成部105は、生成された地図情報の床面に相当する領域を格子状に複数の領域に分割する。
また、地図情報生成部105は、生成された地図情報が示す床面を格子状に分割し、分割された各領域に対して、建物システム20から受信した轍情報に基づいた指標を設定する。
ここでは、轍情報は、建物システム20において予め準備された建物50内の地図の床面を表す位置に対して、車輪軌跡、つまり車輪の通過履歴を表すデータが付与されている。地図情報生成部105は、建物システム20から受信した轍情報が示す地図と、地図情報生成部105が生成した地図との同じ位置が重なるように突合させ、轍情報が示す車輪軌跡に対応する地図情報生成部105が生成した地図の領域に対して、轍情報に基づいた指標を設定する。
【0031】
走行ルート計画部106は、ロボットが出発地から目的地まで走行する経路に至るまでにロボットが接触する位置に対応する指標の総和、つまり指標の累積値を求め、指標の総和、指標の累積値が小さくなるような走行ルートを計画する。
また、走行ルート計画部106は、指標のみではなく、走行距離も考慮して走行ルートを計画してもよい。例えば、走行ルート計画部106は、出発地から到着地までの走行距離に基づく評価値と、出発地から到着地までにロボットが接触する領域(位置)に対応する指標の総和に基づく評価値と、に基づいて、ロボット10が走行する経路を計画する。ここでは第1指標は第2指標に比べて十分に大きくなるように設定されている。すなわち、障害物や進入禁止エリアに付与される第1指標は、第2指標よりも十分大きな値とされる。そのため、第1指標が設定された位置(障害物や進入禁止エリア)を含む経路については、障害物や進入禁止エリアを通過しない経路に比べて指標の総和が十分に大きくなり、これにより、障害物や進入禁止エリアについては、走行ルートに含まれないように除外され、経路上における指標の総和がなるべく小さくなるように走行ルートが計画される。
【0032】
また、ロボット10が走行を開始する前の段階では、出発地から到着地まで走行する経路においてロボットが接触する位置に対応する指標の総和を求める。しかしながら、ロボット10が走行を開始した後については、現在地を出発地として用いて到着地まで走行する経路においてロボットが接触する位置に対応する指標の総和を求め、経路を計画する。走行中に行われる経路の計画は、一定時間毎に行う。これにより、走行中においてLiDAR103によって障害物が検知された場合には、その障害物を回避するような経路を生成する。これにより、障害物を迂回するようにして走行することができる。
また、走行ルート計画部106は、第2指標に基づいて走行ルートを生成することにより、地図情報の格子に対して第2指標が大きな値を通過しないように走行ルートが生成されるため、第2指標が大きな値が設定された位置については半障害物のように取り扱うことができ、以前にロボット10が走行した位置に対してなるべく重複しないように(避けるように)して自律走行させることができる。以前にロボットが走行した位置については、その位置を走行したとしても衝突するものではないため、走行ルートに含まれるように計画されてもよいが、なるべく避けるように計画することで、床に対する摩耗や汚損を低減することができる。
【0033】
駆動部107は、駆動軸を介して車輪に連結される。車輪は、駆動部に107に連結される駆動輪と、駆動部107には連結されない従動輪とがある。駆動部107は、走行ルート計画部106によって生成された走行ルートに基づいて、車輪を駆動させることでロボット10を走行させる。
【0034】
走行ログ送信部108は、ロボット10が走行した経路を示す走行ログを建物システム20に対して通信部101によって送信する。走行ログは、ロボットが走行した経路を表すデータであり、より具体的には、走行した際に車輪が接触(通過)した地図上における位置の軌跡を表すデータである。車輪が接触した位置は、走行ルート計画部106によって決定された走行ルートに沿ってロボット10が走行した際に車輪がいずれの位置を通過するかを計算によって求めるようにしてもよい。例えば、ロボット10の車輪の位置は仕様によって定められているため、計画された走行ルートとロボット10の車輪の位置との相対的な位置関係を計算によって求めることができる。また、走行ログ送信部108が送信する轍情報(指標)には、ロボット10の重量に基に重み付けした値が含まれていてもよい。例えば、重量が重いロボット10であるほど、重みの値を大きくすることで、轍情報における指標を大きくするようにしてもよい。このように、走行ログ送信部108は、走行ルート計画部106によって生成された走行ルートに基づいてロボット10が走行した軌跡を基にした走行ログを生成し、建物システム20に送信する。このように、1台のロボット10によって生成される轍情報での指標(第2指標)は、それぞれの轍をつけたロボットの車輪や脚の形状や重量などに応じて個別に設定される。
【0035】
地図情報生成部105、走行ルート計画部106、走行ログ送信部108は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてもよい。
【0036】
この他、ロボット10から取得された轍情報をもとに、過去の走行ログに基づく車輪軌跡を回避した回避率を根拠として、ロボット連携建物システム1を利用するための利用料を算出してもよい。
例えば、ロボットが走行した走行ルートに対応する位置に割り当てられた指標の総和を求め、当該指標の総和に応じて当該ロボットの利用料を算出する。ロボットの利用料は、例えば、ロボット連携建物システム1を利用するための利用料である。ロボットの車輪軌跡での指標の総和、つまり累積値が小さいほど、利用料が安くなり、ロボットの車輪軌跡での指標の総和が大きいほど、利用料が高くなるように求めてもよい。例えば、指標の総和が大きいほど、床の損耗や汚損がしやすい経路を利用していると推定することができる。このような利用料は、床の補修費用や床の清掃費用に基づいて算出するようにしてもよい。また、指標が高い位置を回避するように走行するロボット(回避率が良いロボット)について、利用料を割り引くようにしてもよい。このように、ロボットの車輪軌跡に対応した位置の指標は、利用料を算出する根拠として用いることができる。
【0037】
図4は、ロボット10が床面を走行する場合について示す説明図である。
図4において、床面のうち、壁や進入禁止エリア以外の領域に対して走行可能領域DRが設定されている。ロボット10は、この走行可能領域DR内において走行ルートを設定し、走行する。ロボット10は、走行ルートに沿って走行している際に、進行方向に障害物OBが存在することをLiDAR103によって検出した場合には、その障害物OBを迂回するように走行ルートTRを計画し、走行する。
【0038】
図5は、建物50内の通路の一部の領域においてロボット10aが走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
ロボット10aは、ある区間における出発地から到着地までの走行ルートにおいて左折する場合、弧を描くような経路で走行する。この図では、車輪軌跡として、車輪軌跡TRaと車輪軌跡TRbとが示されている。また、ここでは、ロボット10aの車輪が4つであるが、説明を簡単にするために
図5においては、車輪軌跡TRaと車輪軌跡TRbとの2本の軌跡が図示されている。
このロボット10aは、経路上における区間SCaにおいて障害物が検知された場合には、少しずつ操舵角を変更することで緩やかな軌跡を描くようにして障害物を迂回し、元の走行ルートに戻るように走行する傾向がある。
【0039】
図6は、建物50内の通路の一部の領域においてロボット10bが走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
ロボット10bは、ある区間における出発地から到着地までの走行ルートにおいて左折する場合、直進し、左折する地点に到達すると、進行方向を90度変更し、進行方向の変更が完了してから直進する経路で走行する。この図では、車輪軌跡として、車輪軌跡TRcと車輪軌跡TRdとが示されている。また、ここでは、ロボット10bの車輪が4つであるが、説明を簡単にするために
図6においては、車輪軌跡TRcと車輪軌跡TRdとの2本の軌跡が図示されている。
このロボット10bは、経路上における区間SCbにおいて障害物が検知された場合には、障害物との距離がある程度近づいた位置において一旦停止し、進行方向を斜め方向に変更して直進した後、元の車輪軌跡と平行方向に直進し、障害物を通り過ぎた後、元の走行ルートに直線状に戻るように走行する傾向がある。
【0040】
図7は、建物50内の通路の一部の領域において複数のロボット10が走行した場合の車輪軌跡を示す図である。
ここでは、走行する傾向が異なるロボット10の車輪軌跡が示されている。
建物システム20の車輪軌跡情報管理部204は、このように各ロボット10の車輪軌跡として走行ログとして収集し、それぞれの走行ログに含まれる車輪の軌跡が示す床面の位置毎に第2指標の値を累積合成することで、車輪軌跡情報記憶部2021に記憶された轍情報を更新する。そして車輪軌跡情報管理部204は、轍情報を各ロボット10に送信する。これにより、各ロボット10において、轍情報を共有することができる。
【0041】
図8は、ロボット10における自律走行ルートの生成処理について説明するフローチャートである。
(ステップS1)ロボット10の地図情報生成部105は、LiDAR103によって測定された測定結果に基づいて、自己位置を推定するとともに、周囲の地図を表す地図情報を生成する。
【0042】
(ステップS2)通信部101は、建物システム20から轍情報を受信する。
【0043】
(ステップS3)地図情報生成部105は、地図情報生成部105によって生成された地図情報に対して、轍情報に応じた領域を設定する。例えば、地図情報生成部105は、生成された地図情報を、轍情報において用いられている地図情報と同じ大きさのサイズになるように加工し、その加工された地図情報に対して、轍情報において用いられている領域の分割数や分割位置が同じになるようにして領域を設定する。
【0044】
(ステップS4)地図情報生成部105は、地図情報が示す床面の各領域に対して、轍情報、つまり車輪等の通過履歴に応じた指標を設定する。これにより、ロボット10において生成された地図情報に対して、轍情報が反映される。
【0045】
(ステップS5)走行ルート計画部106は、出発地と到着地との間を走行する走行ルートの候補を生成し、生成された走行ルートの候補について、出発地から到着地までの走行距離に応じた評価値を生成する。ここでは走行距離が長くなるほど、評価値が大きくなる。また、走行ルート計画部106は、指標に応じた評価値を求める。すなわち、走行ルート計画部106は、候補である走行ルートに沿った各領域に対応する指標の総和を求める。そして走行ルート計画部106は、走行距離に応じた評価値と、指標の総和と、を合算した値を求める。
走行ルート計画部106は、走行ルートの候補を複数生成し、その複数候補のそれぞれについて、走行距離に応じた評価値と、指標の総和と、を合算した値を求め、この値が最小となるような走行ルートを選択することで、走行ルートを決定する。
【0046】
図9は、建物50内の通路の一部の領域において複数のロボット10が走行ルートについて説明する図である。
ここでは、過去の車輪軌跡TRa、車輪軌跡TRbを含む複数の車輪軌跡が示されている。そして、上述したようにロボット10において走行ルートが計画された場合には、ロボット10は、例えば、車輪軌跡TRe、車輪軌跡TRfに示すように、他の車輪軌跡になるべく重ならないようにして走行することができる。
【0047】
図10は、
図9の破線Aに対応する位置における領域に対応する指標の一例を示すグラフである。
図10の上のグラフ(符号A)は、第1の時点におけるこの領域に対応する指標を表しており、
図10の下のグラフ(符号B)は、符号Aに示す第1の時点よりも後の時点である第2の時点におけるこの領域に対応する指標を表している。
図10の符号A及び符号Bに示すグラフにおいて、縦軸は指標を示し、横軸は床面の位置を示す。
ここでは第1の時点では、区間SC2、区間SC4、区間SC6は、隣接する区間SC1、区間SC3、区間SC5よりも高い値である。そして第2の時点では、指標が低い位置を通るように走行ルートが計画されることで、区間SC2、区間SC4、区間SC6に含まれる位置をなるべく避け、区間SC1、区間SC3、区間SC5に含まれる位置を通るような走行ルートが計画される。これにより、指標は、各区間において平準化されていく。
なお、障害物OBが置かれた区間SC7については、走行されないため、第1の時点から第2の時点まで経過しても指標は増加していない。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、走行距離に応じた評価値と、指標の総和と、を合算した値が最小となる走行ルートを選択することで、出発地から到着地までの距離と、車輪(駆動輪・受動輪問わず)または脚の接触などに応じた指標と、の両方に基づいた走行ルートが計画されるため、距離が長くなりすぎないようにしつつ、過去の車輪軌跡とはなるべく重ならないような走行ルートを計画することができる。
ここでは、轍情報、ひいては過去の車輪軌跡をどの程度回避するかについては、距離が長くなることとのトレードオフを考慮して走行ルートを計画するようにしてもよい。この場合、過去の車輪軌跡をどの程度回避するかを指定するパラメータをロボット10に入力することで、このパラメータに応じて、過去の車輪軌跡を回避することを優先したり、距離がなるべく長くならないことを優先することもできる。この場合、パラメータの入力は、ロボット10に対して外部から接続される端末装置やサーバ装置から入力するようにしてもよい。端末装置としては、例えば、スマートフォン、PC、タブレット等のうちいずれであってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態においては、各ロボット10a、10b、10cは、地図情報と車輪軌跡情報を建物システム20に送信することで、建物システム20が、各ロボット10から得られた車輪軌跡情報を累積合成し、その累積合成された轍情報を各ロボット10に送信することで、各ロボット10において地図情報と車輪軌跡情報を共有することができる。これにより、他のロボット10の車輪軌跡も考慮して、車輪軌跡が重ならない走行ルートを計画することができる。
また、上述した実施形態では、各ロボット10は、走行ルートを計画する際に、障害物や進入禁止エリアの部分だけでなく、過去の車輪軌跡がある位置に対する走行が抑制されるように、走行ルートを計画する。これにより、複数のロボット10が建物内を走行する場合であっても、走行ルートを分散させることができるため、走行ルートが床の同じ位置に集中して繰り返し走行されることによる建物の床への損傷や汚損を抑制することができる。
【0050】
以上説明した実施形態において、建物システム20は、ロボット10から送信される走行ログを収集するようにしたが、建物内センサ情報管理部203が、建物内センサ15によって検出されたロボット10が走行する位置を収集し、その収集された位置に基づいて車輪の軌跡(あるいは脚による接触位置)を推定し、走行ログを生成するようにしてもよい。この場合、走行ログを送信する機能が搭載されていないロボット10についても、走行ログを収集することができる。
【0051】
上述した実施形態において、建物システム20に備えられた一部の機能をロボット10に搭載するようにしてもよい。
また、ロボット10に搭載された一部の機能をロボット10に搭載するようにしてもよい。例えば、ロボット10の走行ルート計画部106の機能を建物システム20に設けるようにし、建物システム20においてロボット10の走行ルートを生成し、生成された走行ルートをロボット10に送信し、ロボット10を走行させるようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態におけるロボット連携建物システム1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…ロボット連携建物システム、10,10a,10b,10c…ロボット、15…建物内センサ、20…建物システム、50…建物、101…通信部、102…記憶部、103…LiDAR、104…センサ群、105…地図情報生成部、106…走行ルート計画部、107…駆動部、108…走行ログ送信部、201…通信部、202…記憶部、203…建物内センサ情報管理部、204…車輪軌跡情報管理部、1021…車輪軌跡情報記憶部、1022…地図情報記憶部、2021…車輪軌跡情報記憶部、2022…走行ログ記憶部、NW…ネットワーク