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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124622
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20240906BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20240906BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/54
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032420
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA03
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA02
5F142CB12
5F142CB15
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD17
5F142CD44
5F142CD47
5F142CE03
5F142CE16
5F142CG05
5F142CG14
5F142CG26
5F142DA12
5F142DA22
5F142DA34
5F142DA73
5F142FA28
(57)【要約】
【課題】 発光効率の低下を抑制する発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 基板10と、基板の上面に実装された1以上の発光素子11と、発光素子の上面の少なくとも一部を覆う波長変換部材12と、波長変換部材の表面の少なくとも一部を覆う透明層14と、基板の上面、発光素子、波長変換部材及び透明層を覆う封止材15を備える発光装置である。この発光装置の封止材は、第2透明樹脂33を含み、透明層の屈折率は第2透明樹脂の屈折率より低い。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面に実装された1以上の発光素子と、
前記発光素子の上面の少なくとも一部を覆う波長変換部材と、
前記波長変換部材の表面の少なくとも一部を覆う透明層と、
前記基板の上面、前記発光素子、前記波長変換部材及び前記透明層を覆う封止材を備え、
前記封止材は、第2透明樹脂を含み、
前記透明層の屈折率は前記第2透明樹脂の屈折率より低い発光装置。
【請求項2】
前記基板の上面には、前記封止材を囲うように配置される反射枠体を備える請求項1に記載の発光装置
【請求項3】
前記波長変換部材の表面は、前記波長変換部材の厚さが、前記発光素子の外縁から内側に向けて連続的に厚くなるような形状を有する請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記波長変換部材の表面は、ドーム状の曲面形状を有する請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記波長変換部材は、第1透明樹脂と第1蛍光体を含み、
前記封止材は、第2蛍光体を更に含む請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1蛍光体が発光する光の主波長は、前記第2蛍光体が発光する光の主波長より大きい請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子の上面より高さ位置が低い領域の前記封止材に含まれる前記第2蛍光体の含有量は、前記発光素子の上面より高さ位置が高い領域の前記封止材に含まれる前記第2蛍光体の含有量より多い請求項5に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置において、効率よく光を取り出す技術が知られている。例えば、特許文献1には、発光素子の上方に配置された第1蛍光体と、発光素子の上方よりも側方に多く分布するように配置された第2蛍光体を備える発光装置が記載される。特許文献1に記載される発光装置は、発光素子の側方で第2蛍光体によって波長変換した光が、第1蛍光体に吸収されるのを抑制するため、効率よく光を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-15371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される発光装置は、発光素子の側面から出射される光の一部又は発光素子の側方で第2蛍光体によって波長変換した光の一部が、第1蛍光体に吸収され、発光装置の発光効率が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、発光素子の側面から出射される光の一部又は発光素子の側方で第2蛍光体によって波長変換した光の一部が、発光素子の上面を覆う波長変換部材に吸収されることを低減し、発光効率の低下を抑制する発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、基板と、基板の上面に実装された1以上の発光素子と、発光素子の上面の少なくとも一部を覆う波長変換部材と、波長変換部材の表面の少なくとも一部を覆う透明層と、基板の上面、発光素子、波長変換部材及び透明層を覆う封止材を備え、前記封止材は、第2透明樹脂を含み、前記透明層の屈折率は前記第2透明樹脂の屈折率より低い。
【0007】
さらに、本発明に係る発光装置は、基板の上面には、封止材を囲うように配置される反射枠体を備えることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る発光装置は、波長変換部材の表面は、波長変換部材の厚さが、発光素子の外縁から内側に向けて連続的に厚くなるような形状を有することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る発光装置は、波長変換部材の表面は、ドーム状の曲面形状を有することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る発光装置は、封止材は、第2蛍光体を更に含むことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る発光装置は、第1蛍光体が発光する光の主波長は、第2蛍光体が発光する光の主波長より大きいことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る発光装置は、発光素子の上面より高さ位置が低い領域の封止材に含まれる第2蛍光体の含有重量は、発光素子の上面より高さ位置が高い領域の前記封止材に含まれる第2蛍光体の含有重量より多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発光装置によれば、波長変換部材の表面の少なくとも一部を覆う透明層の屈折率を、前記波長変換部材及び透明層を覆う封止材に含まれる第2透明樹脂の屈折率より低いものとしたので、発光素子の側面から出射される光の一部又は発光素子の側方で第2蛍光体によって波長変換した光の一部が、発光素子の上面を覆う波長変換部材に吸収されることを低減し、発光効率の低下を抑制することが実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図2】(a)は図1に示す発光装置の平面図であり、(b)は図2(a)に示すA-A’線に沿う断面図である。
図3】発光装置の製造工程を示す図である。(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程を示し、(e)は第5工程を示し、(f)は第6工程を示す。図3(a)~(f)に示す図は、図1に示すA-A’線に沿う断面に対応する断面図である。
図4】発光装置の動作を説明するための模式図である。
図5】本実施形態の変形例に係る発光装置の断面図であり、図2(a)に示すA-A’線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る発光装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、図面は、発光装置及び発光装置の構成部材、第1蛍光体及び第2蛍光体を模式的に表したものであり、これらの実寸の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置1の斜視図であり、図2(a)は図1に示す発光装置1の平面図であり、図2(b)は図2(a)に示すA-A’線に沿う断面図である。図2(a)において第1蛍光体32及び第2蛍光体34は省略される。図2(b)においてボンディングワイヤ16は省略される。
【0017】
発光装置1は、基板10と、基板10の上面に配置される複数の発光素子11と、各発光素子11の上面に配置された波長変換部材12と、波長変換部材12を被覆する透明層14と、基板10の上面周縁を囲う反射枠体13と、反射枠体13内に充填される封止材15と、を有する。
【0018】
基板10は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で形成された矩形状の平面形状を有する基材20と、基材20の上面に配置されたアノード配線21及びカソード配線22と、基材20の裏面に配置されたアノード端子23及びカソード端子24と、からなるプリント基板である。アノード配線21、カソード配線22、アノード端子23及びカソード端子24は、銅等の導電性薄膜により形成される配線パターンである。また、アノード配線21とアノード端子23との間、及びカソード配線22とカソード端子24との間は、不図示のスルーホールを介して接続される。本実施形態においては、基板10は一辺が4.2mmの正方形の平面形状を有し、厚さは0.3mmである。
【0019】
発光素子11は、上面、下面及び側面を有し、矩形の平面形状を有する青色LEDダイである。発光素子11はアノード電極とカソード電極を有し、発光素子11のアノード電極とカソード電極との間に順方向電圧が印加されることに応じて、発光素子11の上面及び側面から青色光を出射する。発光素子11から出射される青色光の主波長は、445nmと495nmとの間の範囲内である。発光素子11は、透明な基板であるサファイヤ基板上に窒化ガリウム層により形成されるPN接合層を積層して形成される。本実施形態において、発光素子11のアノード電極及びカソード電極の両電極は、発光素子11の上面に配置される。また、発光素子11は、厚さが0.2mm、一辺が0.7mmの正方形の平面形状を有し、発光素子11から出射される青色光の主波長は450nmである。
【0020】
基板10の上面には4個の発光素子11が配置される。4個の発光素子11は、アノード配線21とカソード配線22の間にボンディングワイヤ16によって順方向に直列接続される。直列接続された一端の発光素子11aのアノード電極はアノード配線21と接続され、直列接続された他端の発光素子11bのカソード電極はカソード配線22に接続される。そして、4個の発光素子11は、アノード配線21及びカソード配線22を介して接続されるアノード端子23とカソード端子24との間に順方向電圧が印加されることに応じて青色光を出射する。
【0021】
ボンディングワイヤ16は、金又は銅等の導電体により形成されたワイヤであり、一の発光素子11のカソード電極と他の発光素子11のアノード電極との間、直列接続された一端の発光素子11aのアノード端子とアノード配線21との間、及び直列接続された他端の発光素子11のカソード端子とカソード配線22との間を電気的に接続する。
【0022】
本実施形態においては、4個の発光素子11が配置されているが、本発明に係る発光装置においては、配置される発光素子の個数は1~3個でも良く、5個以上でも良い。また、本実施形態においては、複数の発光素子が直列接続されているが、本発明に係る発光装置においては、並列接続でも良いし、直列接続と並列接続の併用であっても良い。
【0023】
また、本実施形態においては、発光素子11のアノード電極及びカソード電極の両電極は発光素子11の上面に配置されるが、本発明に係る発光装置においては、アノード電極及びカソード電極の両電極の一方若しくは両方が発光素子の下面に配置されても良い。
【0024】
また、本実施形態においては、発光素子11は、ボンディングワイヤ16によって電気的に接続されるが、本発明に係る発光装置においては、発光素子は、基板上に配置された銅等の導電性薄膜により形成される配線パターンによって接続されても良い。
【0025】
波長変換部材12は、母材としての第1透明樹脂31の中に第1蛍光体32を含有させた合成樹脂材であり、発光素子11の上面を覆うように配置される。平面視において、正方形の発光素子11の上面に内接する様に略円形の波長変換部材12が配置される。平面視において、正方形の発光素子11の上面に内接する様に略円形の波長変換部材12が配置されるので、発光素子11の上面の四隅には波長変換部材12は配置されず、波長変換部材12は発光素子11の上面の一部にのみ配置される。本実施形態においては、波長変換部材12は発光素子11の上面の一部にのみ配置されているが、本発明に係る発光装置においては、波長変換部材は発光素子の上面を全体に亘って覆っても良い。このように、波長変換部材は発光素子の上面の少なくとも一部を覆うように配置されていればよい。
【0026】
第1透明樹脂31は、ジメチルを含有したシリコーン樹脂等の透明な樹脂である。第1透明樹脂31の屈折率は1.40以上1.60未満である。本実施形態において、第1透明樹脂31の屈折率は1.41である。
【0027】
第1蛍光体32は、例えば、Y3(Al、Ga)5O12:Ce3+若しくはLU3Al5012:Ce3+等のセリウムで賦活されたガーネット系蛍光体、CaAlSiN3:Eu2+若しくは(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+等のユーロピウムで賦活された窒化物系蛍光体、K2SiF6:Mn4+等のマンガンで賦活されたフッ化物系蛍光体、又はこれらの混合物であり、発光素子11が発する青色光を吸収して、赤色、緑色、黄色等に波長変換した光を出射する。本実施形態において、第1蛍光体32は、SCASNとも称される(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+であり、発光素子11が発する青色光を吸収して、主波長640nmの赤色に波長変換した光を出射する。
【0028】
反射枠体13は、酸化チタン等の白色の粒子が含有されたシリコーン樹脂などの合成樹脂で形成され、80%以上の光反射率を有し、基板10の上面において、発光素子11を囲むように配置される。反射枠体13は、封止材15の流出を防止する。
【0029】
透明層14は、アクリル樹脂、フッ素化合物及びシリコーン樹脂を含有した透明な合成樹脂から成る層である。ドーム状の曲面形状からなる波長変換部材12の表面を、波長変換部材12の表面形状に沿いながら薄い膜で覆う様に配置される。透明層14がこのように配置されることで、波長変換部材12を構成する第1透明樹脂31及び第1蛍光体32を、封止材15とは隔離して配置することができ、波長変換部材12の表面において、第1透明樹脂31に覆われずに露出する様に配置された第1蛍光体32も封止材15とは隔離して配置することができる。透明層14の屈折率は、1.40以上1.50未満であり、第2透明樹脂33の屈折率は1.50以上1.60未満である。したがって、透明層14の屈折率は、第2透明樹脂33の屈折率より低い。また、波長変換部材12の表面形状に沿いながら覆う様に配置される透明層14の厚さは、1μm以上2μm以下である。なお、透明層14は、発光素子11の側面を覆うように配置されても良いし、アノード配線21及びカソード配線22を覆うように基板10の上面に配置されても良い。本実施形態においては、透明層14の屈折率は1.41である。
【0030】
封止材15は、母材としての第2透明樹脂33の中に第2蛍光体34を含有させた合成樹脂材である。封止材15は、反射枠体13に囲まれる領域において、基板10の上面、発光素子11、波長変換部材12、透明層14及びボンディングワイヤ16を覆う様に配置される。
【0031】
第2透明樹脂33は、フェニルを含有したシリコーン樹脂等の透明な樹脂である。前述したように、第2透明樹脂33の屈折率は1.50以上1.60未満である。本実施形態において、第2透明樹脂33の屈折率は1.54である。
【0032】
第2蛍光体34は、例えば、Y3(Al、Ga)5O12:Ce3+若しくはLU3Al5012:Ce3+等のセリウムで賦活されたガーネット系蛍光体、CaAlSiN3:Eu2+若しくは(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+等のユーロピウムで賦活された窒化物系蛍光体、K2SiF6:Mn4+等のマンガンで賦活されたフッ化物系蛍光体、又はこれらの混合物であり、発光素子11が発する青色光を吸収して、赤色、緑色、黄色等に波長変換した光を出射する。第2蛍光体34が発光素子11の発する青色光を吸収して出射する波長変換された光の主波長は、第1蛍光体32が発光素子11の発する青色光を吸収して出射する波長変換された光の主波長とは異なる。本実施形態においては、第2蛍光体34は、YAGとも称されるY3(Al、Ga)5012:Ce3+であり、発光素子11が発する青色光を吸収して、主波長540nmの緑色に波長変換した光を出射する。第2蛍光体34が出射する光の主波長は、第1蛍光体32が出射する光の主波長よりも短いことが好ましい。なお、図に示した第1蛍光体、第2蛍光体の形状は便宜上のものであって、実際の形状とは異なる。
【0033】
発光装置1は、発光素子11の上面から出射される青色光と、発光素子11の上面から出射された青色光が第1蛍光体32により波長変換された光と、発光素子11の側面から出射される青色光と、発光素子11の側面から出射された青色光が第2蛍光体34により波長変換された光との合成光を光出射面17から出射する。
【0034】
本実施形態に係る発光装置においては、封止材15には第2蛍光体34が含有されるが、必ずしも封止材15には第2蛍光体34が含有されなくても良い。封止材15に第2蛍光体34が含有されない発光装置では、発光素子11の上面から出射される青色光と、発光素子11の上面から出射された青色光が第1蛍光体により波長変換された光と、発光素子11の側面から出射される青色光との合成光が光出射面17から出射される。
【0035】
図3は、本実施形態に係る発光装置1の製造工程を示す図である。図3(a)は第1工程を示し、図3(b)は第2工程を示し、図3(c)は第3工程を示し、図3(d)は第4工程を示し、図3(e)は第5工程を示し、図3(f)は第6工程を示す。図3(a)~(f)に示す図は、図1のA-A’線に沿う断面に対応する断面図である。図3(b)~(f)においてボンディングワイヤ16は省略される。
【0036】
まず、第1工程において、基板10が準備される。
【0037】
次に、第2工程において、基板10の上面に4個の発光素子11が配置されると共に、発光素子11とアノード配線21との間、発光素子11とカソード配線との間、及び、発光素子11同士の間がボンディングワイヤ16によって接続される。
【0038】
次に、第3工程において、発光素子11の上面に波長変換部材12が配置される。波長変換部材12は、発光素子11の上面において表面張力により保持された状態で加熱等により固化されて配置される。本実施形態においては、波長変換部材12は、発光素子11の上面において表面張力によりドーム形状に保持された状態で固化されて配置されるが、本発明に係る発光装置においては、波長変換部材は、正面形状が矩形であって、上面が平坦なシート状の固形物であって、発光素子の上面に接着されて配置されても良い。
【0039】
次に、第4工程において、基板10の外縁に沿って4個の発光素子11を囲むように反射枠体13が配置される。
【0040】
次に、第5工程において、波長変換部材12の表面全体を覆うようにして透明層14が形成される。
【0041】
次に、第6工程において、反射枠体13の内側に封止材15が充填及び固化されて発光装置1の製造工程は終了する。本発明に係る発光装置においては、反射枠体13は除去されても良い。
【0042】
図4は、本実施形態に係る発光装置1の動作を説明するための模式図である。
【0043】
図4において、矢印L1は発光素子11の側面から出射される光の一部の光路を示している。L1に示す通り、発光素子11の側面から出射される光の一部は、封止材15に入射し、第2透明樹脂33を透過する一方、第2透明樹脂33を透過した光の一部が第2蛍光体34に吸収され、主波長540nmの緑色に波長変換された光を出射する。さらに、第2蛍光体34から波長変換部材12の方向に進んだ光は透明層14に到達する。透明層14の屈折率が第2透明樹脂33の屈折率より低いので、透明層14に到達した光のうち、透明層14に対して臨界角θcより大きい入射角θ1で透明層14に到達した光は、透明層14の表面で全反射され、波長変換部材12に入射しない。そのため、第1蛍光体32で波長変換されることなく、効率よく光出射面17から光を出射する。
【0044】
図4において、矢印L2は発光素子11の側面から出射される光の一部の光路を示している。L2に示す通り、発光素子11の側面から出射される光の一部は、封止材15に入射し、第2透明樹脂33を透過する。第2透明樹脂33を透過した光の一部は、第2蛍光体34に到達することなく、反射枠体13に到達して反射する。反射枠体13で反射した光の一部は、波長変換部材12の方向に進んで透明層14に到達する。透明層14の屈折率が第2透明樹脂33の屈折率より低いので、透明層14に到達した光のうち、透明層14に対して臨界角θcより大きい入射角θ2で透明層14に到達した光は、透明層14の表面で全反射され、波長変換部材12に入射しない。波長変換部材12に入射しないので、そのため、第1蛍光体32で波長変換されることなく、効率よく光出射面17から光を出射する。
【0045】
図4において、矢印L3は発光素子11の側面から出射される光の一部の光路を示している。L3に示す通り、発光素子11の側面から出射される光の一部は、封止材15に入射し、第2透明樹脂33を透過する。第2透明樹脂33を透過した光の一部は、他方の発光素子11の上面に配置された波長変換部材12の方向に進んで他方の透明層14に到達する。透明層14の屈折率が第2透明樹脂33の屈折率より低いので、透明層14に到達した光のうち、透明層14に対して臨界角θcより大きい入射角θ3で透明層14に到達した光は、透明層14の表面で全反射され、波長変換部材12に入射しない。そのため、第1蛍光体32で波長変換されることなく、効率よく光出射面17から光を出射する。
【0046】
上記臨界角θcは、透明層14の屈折率をn1、第2透明樹脂33の屈折率をn2とすると、θc=sin-1(n1/n2)で示される角である。
【0047】
上記入射角θ1は、第2蛍光体34aで波長変換された光が透明層14に到達したときの光の進行方向と、光が到達した地点における透明層14の法線方向N1がなす角である。
【0048】
上記入射角θ2は、反射枠体13で反射した光が透明層14に到達したときの光の進行方向と、光が到達した地点における透明層14の法線方向N2がなす角である。
【0049】
上記入射角θ3は、発光素子11の側面から出射した光が透明層14に到達したときの光の進行方向と、光が到達した地点における透明層14の法線方向N3がなす角である。
【0050】
本実施形態においては、透明層14は波長変換部材12の表面を全体に亘って覆っているが、本発明の発光装置においては、透明層は波長変換部材の表面の一部を覆っていてもよい。透明層が波長変換部材の表面の一部を覆っていれば、波長変換部材の表面の一部を覆っている透明層の屈折率は、波長変換部材及び透明層を覆う封止材に含まれる第2透明層の屈折率より低いものとしたので、透明層において全反射される光が増え、波長変換部材に入射する光が減り、第1蛍光体で波長変換される光が低減され、効率よく光出射面から光を出射することができる。よって、透明層は、波長変換部材の表面の少なくとも一部を覆えばよい。
【0051】
波長変換部材12の表面は、波長変換部材12の厚さが発光素子11の外縁から内側に向けて連続的に厚くなるような形状を有することが好ましい。波長変換部材12の表面が、波長変換部材12の厚さが発光素子11の外縁から内側に向けて連続的に厚くなるような形状を有すると、波長変換部材12の表面形状に沿いながら覆う様に配置される透明層14の光出射面17側の面へ入射する光の入射角が臨界角より大きくなり易くなるため、全反射される光が増える。全反射される光が増えることにより、波長変換部材12に入射する光が減り、第1蛍光体32で波長変換される光が低減され、効率よく光出射面17から光を出射する。
【0052】
さらに、波長変換部材12の表面は、ドーム状の曲面形状を有することが好ましい。波長変換部材12の表面形状に沿いながら覆う様に配置される透明層14の波長変換部材12と接する側の面で、発光素子11の上面から出射される光の入射角が臨界角より小さくなり易くなるため、全反射される光が減るからである。全反射される光が減ることにより、透明層14を透過する光が増え、効率よく光出射面17から光を出射する。
【0053】
さらに、第1蛍光体32が出射する光の主波長は、第2蛍光体34が出射する光の主波長より大きいことが好ましい。第1蛍光体32から出射した光が、第2蛍光体34で波長変換されることが低減され、効率よく光出射面17から光を出射するからである。
【0054】
図5は、本実施形態の変形例に係る発光装置の断面図であり、図2(a)に示すA-A’線に沿う断面図である。図5においてボンディングワイヤ16は省略される。
【0055】
発光装置1aは、封止材15に含まれる第2蛍光体34の配置の分布のみが発光装置1と相違する。
【0056】
発光装置1aにおいて、発光素子11の上面より高さ位置が低い領域の封止材15に含まれる第2蛍光体34の含有重量は、発光素子11の上面より高さ位置が高い領域の封止材15に含まれる第2蛍光体34の含有重量より多い。発光素子11の上面を境にして第2蛍光体34の含有量を変えることで、第2蛍光体34から出射される光のうち、透明層14の表面で全反射される光が増えて波長変換部材12に入射する光が減る。そのため、第1蛍光体32で波長変換される光が低減され、光出射面17から効率よく光を出射することができる。
【0057】
発光素子11の上面より低い領域の封止材15に含まれる第2蛍光体34の含有重量を、発光素子11の上面より高い領域の封止材15に含まれる第2蛍光体34の含有重量より多くするには、本実施形態の第6工程において、反射枠体13の内側に充填された封止材15の固化を、第2蛍光体34を沈降させてから行うようにすれば良い。
【符号の説明】
【0058】
1、1a 発光装置
10 基板
11 発光素子
13 反射枠体
12 波長変換部材
14 透明層
15 封止材
16 ボンディングワイヤ
17 光出射面
20 基材
21 アノード配線
22 カソード配線
23 アノード端子
24 カソード端子
31 第1透明樹脂
32 第1蛍光体
33 第2透明樹脂
34 第2蛍光体

図1
図2
図3
図4
図5