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特開2024-124623故障復旧支援システム及び故障復旧支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124623
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】故障復旧支援システム及び故障復旧支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240906BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20240906BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20240906BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
G06Q10/20
F25B47/02 570Z
B66B5/00 G
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032421
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 泰
【テーマコード(参考)】
3C223
3F304
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA21
3C223AA23
3C223BA01
3C223CC01
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF35
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH29
3F304BA26
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】複数の調査対象が存在しても、漏れなく高効率に故障復旧に対応することができる故障復旧支援システムを提供する。
【解決手段】設備の故障原因を調査する故障復旧支援システム1は、設備の故障情報に基づいて、故障原因となり得る故障部品を推定する故障部品推定部30と、予め登録された、故障情報に紐付けられる対応フロー、及び、故障部品推定部により推定された故障部品に基づいて、対応フローにおける調査開始位置を設定する開始位置設定部60と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の故障原因を調査する故障復旧支援システムであって、
前記設備の故障情報に基づいて、前記故障原因となり得る故障部品を推定する故障部品推定部と、
予め登録された、前記故障情報に紐付けられる対応フロー、及び、前記故障部品推定部により推定された前記故障部品に基づいて、前記対応フローにおける調査開始位置を設定する開始位置設定部と、を備える
故障復旧支援システム。
【請求項2】
前記故障部品推定部は、推定した前記故障部品が前記故障原因である確率を表す確信度を算出する
請求項1に記載の故障復旧支援システム。
【請求項3】
前記開始位置設定部は、最も高い前記確信度から、降順に前記確信度を一個ずつ累積し、累積する度に、前記確信度の累積結果である累積確信度と所定閾値とを比較し、前記累積確信度が前記所定閾値を超えた場合、または、全ての前記故障部品の前記確信度を累積した場合、累積した前記確信度のそれぞれに対応する前記故障部品を調査対象とする
請求項2に記載の故障復旧支援システム。
【請求項4】
前記開始位置設定部は、前記対応フローにおける、前記調査対象のそれぞれから前記対応フローの起点までのルートを遡って、遡った全ての前記ルートが重なっている部分の最下位を、前記調査開始位置として設定する
請求項3に記載の故障復旧支援システム。
【請求項5】
前記故障情報は、エラーコード、警告コード、及び前記設備の故障状態に関する情報のうち、少なくとも一つを含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の故障復旧支援システム。
【請求項6】
前記対応フロー及び前記調査開始位置を示すための表示用情報を出力する表示用情報出力部を備える
請求項1~4のいずれか一項に記載の故障復旧支援システム。
【請求項7】
設備の故障原因を調査する故障復旧支援方法であって、
前記設備の故障情報に基づいて、前記故障原因となり得る故障部品を推定するステップと、
予め登録された、前記故障情報に紐付けられる対応フロー、及び、推定された前記故障部品に基づいて、前記対応フローにおける調査開始位置を設定するステップと、を含む
故障復旧支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障復旧支援システム及び故障復旧支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調やエレベーターなどの各種の設備の故障復旧に対応する故障復旧支援システムでは、発生した故障のエラーコード、不具合状態等の故障情報に応じて、故障原因を確定する復旧作業用の手順を示す対応フローが作成される。作業員が、作成済みの対応フローに従って復旧作業を進めることが一般的である。そこで、復旧作業を効率的に進めるため、例えば、特許文献1に記載された、重要度の最も高い部品を故障部品として特定し、当該故障部品が起点となる調査手順を選択する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、故障箇所特定支援システムにおいて、「調査手順の起点となる部品を決定する。ここでは接続関係の最上位の部品を選択する。」、「故障知識データ記憶部のノードテーブルのスコアとリンクテーブルのスコア、及びノードテーブルの作業時間を用いて、合計のスコアが最大になるように、調査作業手順を検索する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-95582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の故障復旧支援システムでは、重要度の最も高い故障部品を故障原因として特定し、特定した故障部品が起点となる調査手順、すなわち、対応フローの中、当該故障部品が開始位置となる対応フローの部分を選択する。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、重要度が同じである複数の調査対象、すなわち、複数の故障部品が特定された場合、複数の故障部品のそれぞれに応じて選択された対応フローの部分が互いに重なる部分が存在する可能性がある。このような場合、複数の故障部品を調査する際、重なる対応フローに対応する調査作業を複数回に繰り返して行われて、復旧作業の効率が低下する問題がある。また、重要度の最も高い故障部品以外の部品が故障原因である可能性もあるため、重要度の最も高い故障部品のみを故障原因として特定する技術には、故障原因が漏れる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、複数の調査対象が存在しても、漏れなく高効率に故障復旧に対応する故障復旧支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の故障復旧支援システムは、設備の故障情報に基づいて、故障原因となり得る故障部品を推定する故障部品推定部と、予め登録された、故障情報に紐付けられる対応フロー、及び、故障部品推定部により推定された故障部品に基づいて、対応フローにおける調査開始位置を設定する開始位置設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明によれば、複数の調査対象が存在しても、漏れなく高効率に故障復旧に対応する故障復旧支援システムを提供する。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムにおける故障復旧支援処理の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムの開始位置設定部における調査開始位置設定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムにおいて、調査対象から対応フローの起点までのルートを遡る処理を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムにおける、故障復旧支援処理の処理結果の表示例1を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システムにおける、故障復旧支援処理の処理結果の表示例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
<一実施形態>
[故障復旧支援システムの構成例]
まず、本発明の一実施形態に係る故障復旧支援システム1の構成について説明する。故障復旧支援システム1は、例えば、空調やエレベーターなどの設備の故障原因を調査する故障復旧支援システムである。図1は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1の構成例を示すブロック図である。故障復旧支援システム1は、図1に示すように、故障情報発信部10と、エラーコード入力部20と、故障部品推定部30と、対応フローDB(Data Base)40と、対応フロー決定部50と、開始位置設定部60と、表示用情報出力部70とを備える。
【0012】
故障情報発信部10と、エラーコード入力部20と、故障部品推定部30とは、この順で接続される。また、故障情報発信部10は、故障部品推定部30にも接続される。対応フローDB40と、対応フロー決定部50と、開始位置設定部60とは、この順で接続される。また、エラーコード入力部20は、対応フロー決定部50に接続され、故障部品推定部30は、開始位置設定部60に接続される。また、対応フロー決定部50及び開始位置設定部60は、それぞれ、表示用情報出力部70にも接続される。
【0013】
故障情報発信部10は、設備の運行状態を監視する遠隔監視装置や遠隔監視センターなどから設備の故障情報を受信し、受信した設備の故障情報をエラーコード入力部20及び故障部品推定部30に出力(発信)する。ここで、故障情報は、故障した設備により出力されたエラーコード、警告コード、及び設備の故障状態に関する情報のうち、少なくとも一つを含む。また、故障情報には、設備の動作を制御する各制御部の制御信号、設備の運行情報等、他の故障に関連する情報を含ませてもよい。設備の運行情報としては、設備のOn/Off情報、設備の各構成部の温度情報等、設備の運行状態に関連する状態情報である。以下の説明では、故障状態に関する情報を、「故障状態情報」と略称する。
【0014】
エラーコード入力部20は、故障情報発信部10から設備の故障情報を入力し、故障情報に含まれる、エラーコード、警告コード、故障状態情報を抽出して確定する。また、エラーコード入力部20は、確定したエラーコード、警告コード、故障状態情報を、故障部品推定部30及び対応フロー決定部50のそれぞれに送信する。以下では、エラーコードと警告コードとを区別しないため、「エラーコード」と総称する。
【0015】
故障部品推定部30は、故障情報発信部10から設備の故障情報を入力し、エラーコード入力部20から確定されたエラーコード及び故障状態情報を入力する。また、故障部品推定部30は、設備の故障情報に基づいて、故障原因となり得る故障部品を推定する。ここで、過去に、設備が同じ故障になった際に故障原因として確定された部品の情報が、当該故障の故障情報に紐付けられて、後述の図2に示す記憶装置106に記憶されることを想定する。故障部品推定部30は、後述の図2に示す記憶装置106から、故障情報に紐付けられている全ての部品を抽出して故障部品として推定する。なお、過去に、設備の故障原因として確定された部品の情報と故障情報との紐付けられたデータは、後述の図2の示す記憶装置106でなく、専用の記憶装置、サーバー、クラウド上等に記憶されてもよい。この場合、故障復旧支援システム1は、専用の記憶装置、サーバー、クラウド上等と情報データの送受信ができるように接続する。また、故障部品推定部30は、推定した故障部品が故障原因である確率を表す確信度を算出する。
【0016】
確信度としては、例えば、故障情報に基づいて推定された故障部品が故障原因として確定された回数が、当該故障情報に関連する故障の合計発生回数に対する比率である。なお、確信度の算出方法は、上述した方法に限定されず、推定された故障部品が故障原因である確率を表す数値を算出できる方法であれば、任意の算出方法を適用してもよい。また、本実施形態では、確信度は、0~1の数値を想定し、数値の大きさが確信度の高さに対応する。また、故障部品推定部30は、推定した故障部品の情報と、算出した各故障部品の確信度とを紐付けて開始位置設定部60に出力する。
【0017】
対応フローDB40は、設備の故障復旧に利用される各種対応フローを記憶する記憶装置である。対応フローDB40では、対応フローが故障情報に紐付けて記憶される。なお、対応フローDB40は、対応フローのみを記憶する専用の記憶装置として設けられてもよいし、後述の図2に示す記憶装置106であってもよい。また、対応フローDB40は、記憶装置であることに限定されず、ウェブサーバーやクラウドなどであってもよい。この場合、故障復旧支援システム1は、ウェブサーバーやクラウドなどと情報データの送受信ができるように接続する。
【0018】
対応フロー決定部50は、エラーコード入力部20から確定されたエラーコード、故障状態情報、すなわち故障情報を入力し、対応フローDB40から当該故障情報に紐付けられている対応フローを抽出し、故障復旧に使用する対応フローとして決定する。また、対応フロー決定部50は、決定した対応フローを開始位置設定部60及び表示用情報出力部70のそれぞれに出力する。
【0019】
開始位置設定部60は、故障部品推定部30から推定された各故障部品の情報及びそれらの確信度を入力し、対応フロー決定部50から決定された対応フローを入力する。また、開始位置設定部60は、対応フローDB40に予め登録された、故障情報に紐付けられる対応フロー、及び、故障部品推定部により推定された故障部品に基づいて、対応フローにおける調査開始位置を設定する。
【0020】
具体的には、開始位置設定部60は、最も高い確信度から、降順に確信度を一個ずつ累積し、累積する度に、確信度の累積結果である累積確信度と所定閾値とを比較し、累積確信度が所定閾値を超えた場合、または、全ての故障部品の確信度を累積した場合、累積した確信度のそれぞれに対応する故障部品を調査対象とする。また、開始位置設定部は、対応フローにおける、調査対象のそれぞれから対応フローの起点までのルートを遡って、遡った全てのルートが重なっている部分の最下位を、調査開始位置として設定する。なお、遡った全てのルートが重なっていない場合、開始位置設定部60は、対応フローの起点を調査開始位置として設定する。また、開始位置設定部60は、設定した対応フローにおける調査開始位置の情報を表示用情報出力部70に出力する。
【0021】
表示用情報出力部70は、対応フロー決定部50から対応フローを入力し、開始位置設定部60から対応フローにおける調査開始位置の情報を入力する。また、表示用情報出力部70は、対応フロー及び調査開始位置を示すための表示用情報、例えば、画面表示用の画面構成情報を生成して自装置の表示装置(後述の図2に示す表示装置104)、又は、表示機能を有する外部端末に出力する。ここで、表示機能を有する外部端末は、例えば、故障復旧作業を行う作業員が保持するノートパソコン、タブレット、スマートフォン等である(図6,7参照)。なお、表示用情報出力部70は、表示用情報を生成せず、対応フロー及び調査開始位置の情報をそのまま出力してもよい。
【0022】
[故障復旧支援システムのハードウェア構成例]
次に、故障復旧支援システム1のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0023】
故障復旧支援システム1は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、及びRAM(Random Access Memory)103を備える情報処理装置である。さらに、故障復旧支援システム1は、表示装置104、入力装置105、記憶装置106及び通信インターフェース107を備える。CPU101、ROM102、RAM103、表示装置104、入力装置105、記憶装置106及び通信インターフェース107は、バス108により、互いに情報データの送受信ができるように接続される。
【0024】
CPU101は、故障復旧支援システム1に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムをROM102から読み出してRAM103にロードして実行する。CPU101は、図1に示す、故障情報発信部10、エラーコード入力部20、故障部品推定部30、対応フロー決定部50、開始位置設定部60、及び表示用情報出力部70を制御して、後述の図3に示す故障復旧支援処理を実行させる。なお、CPU101に代えてGPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよく、CPU101とGPU(Graphics Processing Unit)を併用してもよい。
【0025】
ROM102は、例えば不揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU101が実行及び参照するプログラムやデータ等を記憶する。
【0026】
RAM103は、例えば揮発性メモリ等の記憶媒体で構成され、CPU101が行う各処理に必要な情報(データ)を一時的に記憶する。
【0027】
表示装置104は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-luminescence)ディスプレイなどの表示デバイスであり、故障復旧支援システム1で行われる処理の結果等を表示する。入力装置105は、例えば、キーボード、マウス等により構成される。入力装置105は、入力された操作内容を表す操作信号を生成し、該操作信号をCPU101に供給する。また、表示装置104は、CPU101から供給される表示信号に基づいて、操作内容や設定情報等を表示する。なお、表示装置104及び入力装置105は、例えばタッチパネルとして一体に形成されることも可能である。
【0028】
記憶装置106は、コンピューター読取可能な非一過性の記録媒体で構成され、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置で構成される。記憶装置106は、CPU101によって実行されるプログラム、OS(Operating System)、コントローラー等のプログラム、データを記憶する。また、記憶装置106は、設備の故障復旧に利用される各種対応フローを記憶する対応フローDB40として利用されてもよい。また、記憶装置106は、過去に、設備が故障になった際に故障原因として確定された部品の情報と、当該故障の故障情報とを紐付けて記憶する。
【0029】
なお、記憶装置106に記憶されるプログラム、データの一部は、ROM102に記憶されてもよい。また、CPU101によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体は、HDDに限定されず、例えば、SSD(Solid State Drive)、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0030】
通信インターフェース107には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを外部端末、例えば、復旧作業を行う作業員が保持するパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末との間で送受信することが可能である。
【0031】
[故障復旧支援処理の手順]
次に、故障復旧支援システム1における故障復旧支援処理について説明する。図3は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1における故障復旧支援処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理は、故障情報発信部10が、例えば、外部の設備の遠隔監視装置から故障情報を受信すると開始する。
【0032】
まず、故障情報発信部10は、遠隔監視装置から受信した故障情報をエラーコード入力部20及び故障部品推定部30に発信する(ステップS11)。
【0033】
次いで、エラーコード入力部20は、故障情報発信部10から入力した故障情報に含まれるエラーコード、故障状態情報を確定し、確定したエラーコード及び故障状態情報を故障部品推定部30及び対応フロー決定部50に出力する(ステップS12)。
【0034】
次いで、故障部品推定部30は、故障情報に基づいて、故障部品を推定し、推定した故障部品が故障原因である確率を表す確信度を算出する(ステップS13)。また、この処理において、対応フロー決定部50は、故障情報を用いて、対応フローDB40から当該故障情報に紐付ける対応フローを抽出し、故障復旧作業に使用する対応フローとして決定する。また、この処理において、故障部品推定部30は、推定した各故障部品の情報及びそれらの確信度を開始位置設定部60に出力し、対応フロー決定部50は、決定した対応フローを開始位置設定部60及び表示用情報出力部70に出力する。
【0035】
次いで、開始位置設定部60は、故障部品推定部30から入力した故障部品の情報及びそれの確信度、並びに、対応フロー決定部50から入力した対応フローを用いて、調査開始位置設定処理を行う(ステップS14)。また、この処理において、開始位置設定部60は、設定した調査開始位置の情報を表示用情報出力部70に出力する。なお、調査開始位置設定処理について、後述の図4で詳述する。
【0036】
次いで、表示用情報出力部70は、対応フロー決定部50から入力した対応フロー、及び、開始位置設定部60から入力した調査開始位置の情報を示すための表示用情報を生成して出力する(ステップS15)。この処理において、表示用情報出力部70は、表示用情報を自装置の表示装置104に出力してもよいし、表示機能を有する外部端末、例えば、図6及び図7に示す外部端末41に出力してもよい。ステップS15の処理後、故障復旧支援処理は終了する。
【0037】
[調査開始位置設定処理の手順]
次に、故障復旧支援システム1の開始位置設定部60における調査開始位置設定処理について説明する。図4は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1の開始位置設定部60における調査開始位置設定処理の手順を示すフローチャートである。以下に説明する処理は、図3に示す故障復旧支援処理のステップS14において、サブルーチンとして呼び出されて実行される。
【0038】
まず、開始位置設定部60は、確信度の累積結果である累積確信度を「0」にセットして初期化する(ステップS141)。
【0039】
次いで、開始位置設定部60は、故障部品推定部30から入力した各故障部品の情報及びそれらの確信度を基に、未処理の故障部品の中から、確信度が最も高い故障部品を選択する(ステップS142)。ここで、未処理の故障部品とは、ステップS142の処理において選択されていない故障部品である。
【0040】
次いで、開始位置設定部60は、選択した故障部品の確信度を累積確信度に加算する(ステップS143)。
【0041】
次いで、開始位置設定部60は、累積確信度が所定閾値を超えているか否か、及び、故障部品推定部30から入力した全ての故障部品に対して処理完了したか否かを判定する(ステップS144)。
【0042】
ステップS144の処理において、開始位置設定部60は、累積確信度が所定閾値を超えていない、かつ、全ての故障部品に対して処理完了していないと判定した場合(ステップS144がNo判定の場合)、ステップS142の処理に戻す。また、開始位置設定部60は、ステップS142~ステップS144の処理を繰り返して実行する。
【0043】
一方、ステップS144の処理において、開始位置設定部60は、累積確信度が所定閾値を超えている、又は、全ての調査対象に対して処理完了したと判定した場合(ステップS144がYes判定の場合)、ステップS145の処理を行う。
【0044】
ステップS145の処理において、開始位置設定部60は、累積された確信度のそれぞれに対応する故障部品の全てを調査対象とし、対応フローにおいて、全てを調査対象の位置から、対応フローの起点(最上位)までのルートを遡る。
【0045】
次いで、開始位置設定部60は、遡った全てのルートを用いて、全てのルートが重なっている部分の最下位を、対応フローにおける調査開始位置として設定する(ステップS146)。また、遡った全てのルートが重なっていない場合、開始位置設定部60は、対応フローの起点を調査開始位置として設定する。ここで、調査開始位置は、対応フローに従って故障原因を調査する際の調査開始位置である。ステップS146の処理後、開始位置設定処理は終了する。
【0046】
なお、ステップS145における、調査対象の位置から対応フローの起点までのルートを遡る処理、及び、ステップS146における、遡った全てのルートが重なっている対応フローの部分の最下位を調査開始位置とする処理について、図5を用いて説明する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1の開始位置設定部60において、調査対象から対応フローの起点までのルートを遡る処理を説明するための図である。以下の説明では、空調用の吸収式冷凍機を設備の一例として説明するが、本発明はこれに限定されない。故障復旧支援システム1は、エレベーター等の他のビル設備、ビル設備以外の工場やプラントなどの他の設備等にも適用可能である。
【0048】
吸収式冷凍機は、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器を備え、水を冷媒とした環境に負荷をかけない空調システムである。
蒸発器は、冷媒の水を蒸発して熱を奪い、蒸発した水を吸収器へ送る。
吸収器は、蒸発器から送られてきた水蒸気を冷却水と熱交換して冷却水に熱を与える。水蒸気は再生器から送られてきた臭化リチウムの吸収液(濃溶液)に吸収されて薄められた吸収液(稀溶液)になる。また、吸収器は、薄められた吸収液(稀溶液)を再生器へ送る。
再生器は、薄められた吸収液を加熱して、吸収液と水を分離する。再生器は、水蒸気になった水を凝縮器へ送って、加熱により吸収液が濃溶液になり、この濃溶液を再び吸収器へ送る。
凝縮器は、再生器から送られてきた水蒸気を冷却水と熱交換して液化させて、液体に戻った水を再び蒸発器へ送る。熱を帯びた冷却水は冷却塔で熱を放出した後、再び吸収器へ送られる。
以上の蒸発、吸収、再生、凝縮の繰り返しが吸収式冷凍機の冷凍サイクルである。なお、吸収式冷凍機は、空調システムにおいてよく使われる設備であるため、図示及び詳細説明を省略する。
【0049】
ここで、吸収式冷凍機において、所定の故障が発生した際、図5に示す対応フローが、対応フロー決定部50により対応フローDB40から抽出して決定されることを想定する。なお、図5に示す対応フローは、吸収式冷凍機の所定の故障の原因を調査する際に利用される対応フローである。
【0050】
まず、図5に示す対応フローの全体の流れを説明する。
吸収式冷凍機の所定の故障の原因を調査する際、作業員は、まず、吸収器側の冷却水の入口温度を確認する(ステップS201)。
【0051】
ステップS201の処理において、作業員は、冷却水の入口温度が32℃を超えたと確認した場合、冷却塔の動作確認を行う(ステップS202)。
【0052】
一方、ステップS201の処理において、作業員は、冷却水の入口温度が32℃以下であると確認した場合、吸収器の起動前の抽気量を確認する(ステップS203)。
【0053】
ステップS203の処理において、作業員は、起動前の抽気量が規定値未満であると確認した場合、起動前の吸収器の液面高さを確認する(ステップS204)。
【0054】
ステップS204の処理において、作業員は、起動前の吸収器の液面高さが閾値以上であると確認した場合、燃焼装置81が故障原因であると判定する。
【0055】
一方、ステップS204の処理において、作業員は、起動前の吸収器の液面高さが閾値未満であると確認した場合、吸収器の自動抽気装置82が故障原因であると判定する。
【0056】
ここで、ステップS203の処理に戻して説明する。ステップS203の処理において、作業員は、起動前の抽気量が規定値以上であると確認した場合、吸収器の抽気ガスが水素反応したか否かを確認する(ステップS205)。
【0057】
ステップS205の処理において、作業員は、吸収器の抽気ガが水素反応したと確認した場合、吸収器内のインヒビター濃度83が故障原因であると判定する。なお、インヒビターは、鉄さびの除去された後の鉄の表面に選択的に吸着して、酸液との接触を断ち、鉄の溶解を抑制して水素の発生を防ぐ防食剤である。
【0058】
一方、ステップS205の処理において、作業員は、吸収器の抽気ガスが水素反応していないと確認した場合、吸収器の空気漏れ84が故障原因であると判定する。
【0059】
次に、故障復旧支援システム1の開始位置設定部60が、調査対象の位置から対応フローの起点までのルートを遡る処理、及び、遡った全てのルートが重なっている対応フローの部分の最下位の確定について説明する。
【0060】
ここで、故障復旧支援システム1の故障部品推定部30は、吸収式冷凍機の故障情報に基づいて、図5に示す対応フローの最下位である、吸収器の自動抽気装置82、吸収器内のインヒビター濃度83及び吸収器の空気漏れ84を故障部品として推定したことを想定する。そして、故障部品推定部30により算出された自動抽気装置82、インヒビター濃度83及び空気漏れ84の確信度は、それぞれ、0.31、0.33及び0.35であることを想定する。また、累積確信度に対して設けられた所定閾値を「0.65」であると想定する。なお、累積確信度に対する所定閾値は「0.65」に限定されず、状況に応じて適当の数値に変更可能である。
【0061】
開始位置設定部60は、まず、初期値が「0」である累積確信度に、最も高い確信度を有する空気漏れ84の確信度(「0.35」)を加算する。その結果、累積確信度が「0.35」に更新され、所定閾値「0.65」を超えていないため、開始位置設定部60は、累積確信度(「0.35」)に、次の最も高い確信度を有するインヒビター濃度83の確信度(「0.33」)を加算する。その結果、累積確信度が「0.68」に更新され、所定閾値「0.65」を超えている。このため、開始位置設定部60は、次に、確信度が累積されたインヒビター濃度83及び空気漏れ84を調査対象とし、インヒビター濃度83及び空気漏れ84のそれぞれから対応フローの起点までのルートを遡る。
【0062】
開始位置設定部60は、例えば、インヒビター濃度83から対応フローの起点までのルートを遡る際、図5に示すように、インヒビター濃度83、ステップS205の処理は抽気ガスが水素反応したと確定された場合、ステップS203の処理は起動前の抽気量が規定値以上であると確定された場合、ステップS201の処理は、冷却水の入口温度が32℃以下であると確定された場合の順で、対応フローの起点まで遡る。そして、開始位置設定部60は、破線で描画されたルートR1を、インヒビター濃度83から対応フローの起点までのルートとして確定する。同様の手法により、開始位置設定部60は、破線で描画されたルートR2を、空気漏れ84から対応フローの起点までのルートとして確定する。
【0063】
開始位置設定部60は、次に、全ての遡ったルート、すなわち、ルートR1及びルートR2が重なっている部分の最下位を開始位置として設定する。ルートR1及びルートR2の重なっている部分の最下位は、図5に示すように、ステップS205の抽気ガスが水素反応したか否かの判定処理である。それゆえ、開始位置設定部60は、ステップS205の処理を、対応フローを実行する際の調査開始位置として設定する。
【0064】
[故障復旧支援処理の処理結果の表示例]
次に、故障復旧支援システム1における、故障復旧支援処理の処理結果の表示例について説明する。ここで、故障復旧支援処理の処理結果が、故障復旧支援システム1の外部端末において表示される例を説明する。なお、本発明は、これに限定されず、故障復旧支援処理の処理結果は、故障復旧支援システム1が有する表示装置104に表示されてもよいし、表示装置104に表示されるとともに、外部端末に表示されてもよい。
【0065】
故障復旧支援処理の処理結果を故障復旧支援システム1の外部端末に表示させる場合、表示用情報出力部70は、表示用情報を生成して外部端末41に出力する。
【0066】
図6は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1における、故障復旧支援処理の処理結果の表示例1を示す図である。図6には、故障復旧支援処理の処理結果が、故障復旧支援システム1の外部端末41、例えば、作業員が保持するタブレット、スマートフォン等において表示される表示例が示されている。図6に示す表示例は、図5で説明した、吸収式冷凍機の所定の故障に対応する対応フロー、及び、開始位置設定部60により設定された調査開始位置を表示する例である。
【0067】
図6では、外部端末41に表示されている対応フローは、図5に示す、吸収式冷凍機の所定の故障に対応する対応フローと同じであるため、重複説明を省略する。図6に示すように、対応フローにおいて、開始位置設定部60により設定された調査開始位置である「抽気ガスは水素反応したか否かの処理」から、調査対象であるインヒビター濃度及び空気漏れのそれぞれまでのルートL1及びL2が破線で示されている。
【0068】
なお、対応フローにおいて、対応フローを実行する際の調査開始位置から調査対象までのルートを示す表示態様は、図6に示す表示態様に限定されない。例えば、調査開始位置から調査対象までのルートを枠で囲むようにしてもよい。また、調査開始位置から調査対象までのルートを示すことでなく、調査開始位置、調査対象を枠で囲む等、調査開始位置を明確に表示できる態様であれば、任意の表示態様を適用可能である。
【0069】
作業員は、図6に示す、外部端末41に表示される故障復旧支援処理の処理結果を確認することにより、ルートL1及びL2に対応する処理のみを実行して、インヒビター濃度及び空気漏れ(複数の調査対象)に対して故障原因を調査することが出来る。すなわち、故障復旧支援システム1によれば、複数の調査対象を漏れずに調査でき、対応フローの起点から調査開始位置(「抽気ガスは水素反応したか否かの処理」)までの処理を重複して実行することを避けることもできる。
【0070】
図7は、本実施形態に係る故障復旧支援システム1における、故障復旧支援処理の処理結果の表示例2を示す図である。図7に示す表示例も、図5で説明した、吸収式冷凍機の所定の故障に対応する対応フロー、及び、開始位置設定部60により設定された調査開始位置を表示する例である。
【0071】
図7に示す表示例2では、外部端末41において、対応フローが表示されず、「対応フロー」のテキスト411、及び、調査開始位置の情報を示すテキスト412が表示されている。調査開始位置の情報を示すテキスト412として、「抽気ガスは、水素反応したか?」、「・水素反応した:Yes」、及び「・水素反応していない:No」が、「対応フロー」のテキスト411の下方に、上から順に表示されている。また、開始位置の情報を示すテキスト412の下方に、[Yes]ボタン413及び[No]ボタン414が上から順に表示されている。例えば、作業員が開始位置の情報を示すテキスト412を見て、吸収器の抽気ガスが水素反応したか否かを確認し、反応した場合に[Yes]ボタン413をクリックし、反応していない場合に[No]ボタン414をクリックする。そして、作業員による設備の故障原因の調査結果、すなわち、抽気ガスが水素反応したか否かの確認結果は、設備の故障情報を管理するデータベース等に送信される。
【0072】
図7に示す表示例2により、作業員が、故障復旧支援システム1の開始位置設定部60により設定された調査開始位置から、調査手順の重複なく調査を行うことができるとともに、調査結果を設備の故障情報を管理するデータベース等に送信することもできる。
【0073】
[効果]
上述したように、本実施形態に係る故障復旧支援システム1は、設備の故障情報に基づいて故障部品を推定し、故障部品の確信度に基づいて調査対象を確定する。また、故障復旧支援システム1は、調査対象から対応フローの起点までのルートを遡る。故障復旧支援システム1は、複数の調査対象が存在する場合、複数の調査対象のそれぞれから対応フローの起点までのルートを用いて、全てのルートが重なっている部分の最下位を、対応フローにおける調査開始位置として設定する。このため、複数の調査対象が存在しても、故障復旧支援システム1は、複数の調査対象を調査するための対応フローの重複がないように、調査開始位置を設定するので、漏れなく高効率に故障復旧に対応することができる。また、本実施形態に係る故障復旧支援システム1により、複数の調査対象に応じて、それぞれ、予め調査開始位置を設定する必要がなくなるため、故障復旧作業の事前準備の効率を向上することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために故障復旧支援システムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0075】
上記実施形態では、故障復旧支援システム1を情報処理装置とする例を説明したが、本発明はこれに限定されない。故障復旧支援システム1は、例えば、クラウド上に設けられてもよい。この場合、クラウド上の故障復旧支援システム1は、設備の状態を監視する遠隔監視装置から、設備の故障情報を受信できるように接続される。
【符号の説明】
【0076】
1…故障復旧支援システム、10…故障情報発信部、20…エラーコード入力部、30…故障部品推定部、40…対応フローDB、41…外部端末、50…対応フロー決定部、60…開始位置設定部、70…表示用情報出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7