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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124626
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】車両制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240906BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240906BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032425
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BA33
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE05
3D241DA54Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC35Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC24
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】衝突可能性を低減するための第1制御と、車両が境界により定められる走行領域から逸脱することを抑制するように転舵角を制御する第2制御と、を同時に実行するか、第1制御のみを実行するかを、衝突対象に応じて適切に選択することにより、衝突可能性を低減できる車両制御装置を提供することにある。
【解決手段】車両制御装置は、車両と物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合に第1制御を実行し、第2制御を実行可能である。車両制御装置は、衝突条件を満たした物標である衝突対象が所定の禁止条件を満たしたか否かを判定し、衝突対象が禁止条件を満たした場合、第2制御の実行を禁止し、衝突対象が禁止条件を満たしていない場合、第2制御の実行を許可する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合に前記衝突可能性を低減するための第1制御を実行し、前記車両が境界により定められる走行領域から逸脱することを抑制するように前記車両の転舵角を制御する第2制御を実行可能な車両制御装置において、
前記車両制御装置は、
前記衝突条件を満たした物標である衝突対象が所定の禁止条件を満たしたか否かを判定し、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たした場合、前記第2制御の実行を禁止し、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たしていない場合、前記第2制御の実行を許可する、
ように構成された、車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両制御装置は、前記衝突対象が移動可能な特定の物標である場合、前記衝突対象が前記禁止条件を満たしたと判定するように構成された、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記車両制御装置は、前記特定の物標として、歩行者又は二輪車を予め設定するように構成された、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項2及び請求項3の何れか一つに記載の車両制御装置において、
前記車両制御装置は、前記衝突対象が前記特定の物標であり且つ前記衝突対象が前記境界の外に位置する場合、前記衝突対象が前記禁止条件を満たしたと判定するように構成された、
車両制御装置。
【請求項5】
車両と物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合に前記衝突可能性を低減するための第1制御を前記車両に搭載されたコンピュータに実行させ、前記車両が境界により定められる走行領域から逸脱することを抑制するように前記車両の転舵角を制御する第2制御を前記コンピュータに実行させることが可能なプログラムにおいて、
前記プログラムは、
前記衝突条件を満たした物標である衝突対象が所定の禁止条件を満たしたか否かを判定するステップと、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たした場合、前記第2制御の実行を禁止するステップと、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たしていない場合、前記第2制御の実行を許可するステップと、前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合に衝突可能性を低減するため第1制御を実行し、車両が走行領域から逸脱することを抑制するように車両の転舵角を制御する第2制御を実行可能な車両制御装置、及び、車両に搭載されたコンピュータに減速制御と逸脱抑制制御とを実行させることが可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1制御として「衝突可能性を低減するために車両を減速させる減速制御」を実行し、第2制御としての逸脱抑制制御を実行可能な車両制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の車両制御装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、衝突条件が成立した場合に減速制御(第1制御)を実行し、逸脱条件が成立した場合に逸脱抑制制御(第2制御)を実行する。衝突条件は、車両と物標とが衝突する可能性が高い場合に成立する。逸脱条件は、車両が走行領域から逸脱する可能性が高い場合又は車両が走行領域から逸脱した場合に成立する。
【0003】
従来装置は、衝突条件が成立した場合、逸脱抑制制御による転舵角の転舵方向が、衝突条件を満たした物標(以下、「衝突対象」と称呼する。)との衝突を回避する衝突回避方向と同一であるか否かを判定する。従来装置は、転舵方向と衝突回避方向とが異なっている場合には逸脱抑制制御の実行を停止して減速制御を実行し、転舵方向と衝突回避方向とが同一である場合には逸脱抑制制御及び減速制御を同時に実行する。
【0004】
転舵方向と衝突回避方向とが異なっている場合に逸脱抑制制御の実行を停止するのは、車両が衝突対象と衝突する方向に進行することを防止するためである。これにより、逸脱抑制制御に起因して衝突回避効果が低下する事態の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-94955号公報
【発明の概要】
【0006】
衝突対象が「走行領域の境界の外に位置し且つ自律して移動可能な物標(例えば、歩行者及び二輪車等)」である場合、その衝突対象は、車両との衝突を回避しようとして、走行領域の内側へと移動する可能性がある。従来装置は、このような場合に転舵方向と衝突回避方向とが同一であると判定してしまい、逸脱抑制制御と減速制御とを同時に実行してしまう可能性がある。このような場合に逸脱抑制制御が実行されると、車両も衝突対象も同じ方向(つまり、走行領域の内側)へ移動することになるので、衝突可能性が高まる可能性がある。
【0007】
一方では、ガードレールのような移動しない物標に対しては逸脱抑制制御と減速制御とを同時に実行した方が衝突可能性を低減できる。
【0008】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、衝突対象に応じて減速制御(第1制御)と逸脱抑制制御(第2制御)とを同時に実行するか減速制御(第1制御)のみを実行するかを適切に選択することにより、衝突可能性を低減できる車両制御装置を提供することにある。
【0009】
本発明の車両制御装置(以下、「本発明装置」とも呼称する。)は、
車両と物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合に(ステップ320「Yes」)前記衝突可能性を低減するための第1制御を実行し(ステップ325)、前記車両が境界により定められる走行領域から逸脱することを抑制するように前記車両の転舵角を制御する第2制御を実行可能な(ステップ450)車両制御装置において、
前記車両制御装置は、
前記衝突条件を満たした物標である衝突対象が所定の禁止条件を満たしたか否かを判定し(ステップ330)、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たした場合(ステップ330「Yes」)、前記第2制御の実行を禁止し(ステップ335、ステップ435、ステップ445)、
前記衝突対象が前記禁止条件を満たしていない場合(ステップ330「No」)、前記第2制御の実行を許可する(ステップ340、ステップ435、ステップ445)、
ように構成されている。
【0010】
第2制御(逸脱抑制制御)が実行されると衝突可能性が高めてしまうのか、第2制御が実行された方が衝突可能性を低減できるのかは、衝突対象に応じて定まる。本発明装置によれば、衝突対象が禁止条件を満たす場合には、第2制御の実行を禁止して第1制御(減速制御)のみを実行し、衝突対象が禁止条件を満たさない場合には、第1制御及び第2制御の同時実行が可能となる。これにより、衝突物標に応じて第1制御と第2制御とを同時に実行するか第1制御のみを実行するかを適切に選択でき、第2制御の実行により衝突可能性を高めてしまう可能性を低減でき且つ第2制御の実行により衝突可能性を低減できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の概略システム構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両制御装置の作動の概要の説明図である。
図3図1に示した車両制御ECUのCPUが実行する減速制御ルーチンを示したフローチャートである。
図4図1に示した車両制御ECUのCPUが実行する逸脱抑制制御ルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示したように、本実施形態に係る車両制御装置(以下、「本装置10」と称呼する。)は、車両VAに適用され、図1に示した構成要素を備える。
【0013】
車両制御ECU20は、減速制御及び逸脱抑制制御を実行可能なECUであり、以下、「ECU20」と表記する。
【0014】
減速制御は、車両VAと物標との衝突可能性が所定の衝突条件を満たした場合、運転者のブレーキ操作とは無関係に衝突可能性を低減するために車両VAを減速する制御である。逸脱抑制制御は、車両VAが走行領域TA(図2を参照。)から逸脱することを抑制するように車両VAの転舵角θを制御する制御である。なお、減速制御を「第1制御」と称呼し、逸脱抑制制御を「第2制御」と称呼する場合もある。
【0015】
本明細書において、「ECU」はマイクロコンピュータを主要部として備える電子式制御装置である。ECUはコントローラ又はコンピュータとも称呼される。マイクロコンピュータは、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。ECU20が実現する少なくとも一つの機能は、複数のECUにより実現されてもよい。
【0016】
カメラ22は、車両VAの前方の風景を撮影することにより画像データを取得する。カメラ22は、画像データに基いてカメラ物標情報及び境界情報を取得する。カメラ物標情報は、車両VAの前方に位置する物標の車両VAに対する位置を含む。境界情報は、走行領域TAを定める境界BLの車両VAに対する位置を含む。境界BLの例としては、道路上の白線、ガードレール、縁石及び壁等がある。カメラ22は、画像データ、カメラ物標情報及び白線情報をECU20に送信する。
【0017】
ミリ波レーダ24は、車両VAの前方へミリ波を送信し、送信したミリ波が物標によって反射された反射波を受信することにより、「その物標の車両VAに対する位置」及び「その物標の車両VAに対する相対速度Vr」を含むレーダ物標情報を取得する。ミリ波レーダ24は、レーダ物標情報をECU20に送信する。
【0018】
車速センサ26は、車両VAの速度を表す車速Vsを検出する。加速度センサ28は、車両VAの前後軸方向の加速度Gを検出する。本実施形態では、加速度Gは、車両VAが加速する場合に正の値となり、車両VAが減速する場合に負の値となる。転舵角センサ29は、車両VAの転舵輪の転舵角θを検出する。ヨーレートセンサ30は、車両VAのヨーレートYrを検出する。ECU20は、これらのセンサ26乃至30の検出値を取得する。
【0019】
パワートレーンアクチュエータ32は、車両VAの駆動装置(例えば、内燃機関及び/又は電動機)が発生する駆動力を変更する。ブレーキアクチュエータ34は、車両VAの車輪に付与される制動力を制御する。操舵モータ36は操舵機構38に組み込まれている。操舵機構38は、ステアリングホイールの操作に応じて転舵輪を転舵するための機構である。操舵モータ36は、ECU20からの指示に応じて、ステアリングホイールの操作をアシストするためのアシストトルクを操舵機構38に発生させ、転舵輪の転舵角θを変化させるための自動操舵トルクを操舵機構38に発生させる。
【0020】
(減速制御)
ECU20は、車両VAが物標と衝突するまでにかかる時間を表すTTC(Time To Collision)を「衝突可能性を表す衝突指標値」として取得する。詳細には、ECU20は、車両VAと物標との間の距離Dを相対速度Vrで除算することによりTTCを取得する。TTCが小さいほど衝突可能性は高くなる。
【0021】
ECU20は、最小のTTCが閾値時間Tth以下である場合、衝突条件が成立したと判定し、最小のTTCを有する物標である衝突対象との衝突を回避又は抑制するための減速制御を実行する。減速制御においては、ECU20は、加速度Gが所定の負の値に予め設定された目標加速度Gtgtと一致するようにパワートレーンアクチュエータ32及びブレーキアクチュエータ34を制御することにより、車両VAを減速させる。
【0022】
(逸脱抑制制御)
ECU20は、境界情報に基いて、車両VAが走行する走行領域TAの右端を定める右境界RBL(図2を参照。)及び走行領域TLの左端を定める左境界LBL(図2を参照。)を特定する。右境界RBL及び左境界LBLは、これらを区別する必要がない場合、「境界BL」と称呼される。
【0023】
ECU20は、境界BLと直交する方向において境界BLから予め定められた距離だけ離れた位置に開始基準線Lsth(右開始基準線RLsth及び左開始基準線LLsth)を設定する(図2を参照。)。図2に示した例では、開始基準線Lsthは、境界BLの内側に設定されているが、境界BLの外側に設定されてもよい。なお、ECU20は、それぞれの開始基準線Lsthよりも内側に終了基準線Leth(不図示)を設定する。
【0024】
ECU20は、以下の条件1及び条件2の何れかが成立した場合、逸脱条件が成立したと判定し、逸脱抑制制御を実行する。
条件1:車両VAの予測進路PRが開始基準線Lsthと交差し、且つ、予測進路PRが交差する開始基準線Lsthと車両VAとの間の距離Dが閾値距離Dth以下であること。
条件2:車両VAが開始基準線Lsthを逸脱したこと。
なお、ECU20は、車速Vs及びヨーレートYrに基いて、車両VAの現在位置から所定距離先までの予測進路PRを特定する。
【0025】
逸脱抑制制御では、ECU20は、転舵角θが「車両VAが走行領域TRを逸脱することを抑制するための目標転舵角θtgt」と一致するように操舵モータ36を制御する。
【0026】
ECU20は、車両VAが終了基準線Lethよりも内側に位置するようになったとの終了条件が成立した場合、逸脱抑制制御を終了する。
【0027】
(作動の概要)
本装置10のECU20の作動の概要を説明する。
ECU20は、衝突条件を満たした衝突対象が禁止条件を満たすか否かを判定する。ECU20は、衝突対象が禁止条件を満たす場合には逸脱抑制制御の実行を禁止し、衝突対象が禁止条件を満たさない場合には逸脱抑制制御の実行を許可する。
【0028】
ECU20は、衝突対象が境界BLの外に位置し且つ衝突対象が移動可能な特定の物標である場合、衝突対象が禁止条件を満たすと判定する。なお、歩行者PD(図2を参照。)及び二輪車等が特定の物標として予め設定されている。
【0029】
衝突対象が境界BLの外に位置し且つ衝突対象が移動可能な物標である場合、図2に示したように、衝突対象が車両VAとの衝突を回避するために境界BLの内側へ移動する可能性がある。このような場合に逸脱抑制制御が実行されると車両VAも衝突対象も同じ方向へ移動することになるので、衝突可能性が高まる可能性がある。衝突対象が境界BLの外に位置し且つ衝突対象が移動可能な物標である場合には禁止条件が成立するので、ECU20は、逸脱抑制制御の実行を禁止する。
【0030】
一方、衝突対象が移動できない物標(例えば、ガードレール及び壁等)である場合、逸脱抑制制御が実行された方が、逸脱抑制制御が実行されない場合よりも、衝突可能性が低下する。衝突対象が移動できない物標である場合には禁止条件が成立しないので、ECU20は、逸脱抑制制御の実行を許可する。
【0031】
本実施形態によれば、衝突物標に応じて逸脱抑制制御と減速制御とを同時に実行するか減速制御のみを実行するかを適切に選択でき、逸脱抑制制御の実行により衝突可能性を高めてしまう可能性を低減でき且つ逸脱抑制制御の実行により衝突可能性を低減できる可能性を高めることができる。
【0032】
(具体的作動)
<減速制御ルーチン>
ECU20のCPUは、図3にフローチャートにより示した減速制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0033】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図3のステップ300から処理を開始し、ステップ305及びステップ310を実行する。
【0034】
ステップ305:CPUは、カメラ22からカメラ物標情報を取得し、ミリ波レーダ24からレーダ物標情報を取得する。
ステップ310:CPUは、車両VAと衝突する可能性がある物標が存在するか否かを車両VAの予測進路PRに基いて判定する。
【0035】
車両VAと衝突する可能性がある物標が存在する場合、CPUは、ステップ310にて「Yes」と判定し、ステップ315及びステップ320を実行する。
【0036】
ステップ315:CPUは、車両VAと衝突する可能性がある物標のTTCを取得する。
ステップ320:CPUは、最小のTTCが閾値時間Tth以下であるか否かを判定する。
【0037】
最小のTTCが閾値時間Tth以下である場合、CPUは、衝突条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ320にて「Yes」と判定し、ステップ325及びステップ330を実行する。
【0038】
ステップ325:CPUは、減速制御を実行する。即ち、CPUは、加速度Gが目標加速度Gtgtと一致するようにパワートレーンアクチュエータ32及びブレーキアクチュエータ34を制御する。
ステップ330:CPUは、衝突条件を満たした衝突対象が境界BLの外に位置し且つ移動可能な物標であるか否かを判定する。
CPUは、境界情報に基いて境界BLの車両VAに対する位置を特定し、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて特定される衝突対象の位置が境界BLの外であるか否かを判定する。
更に、一例として、CPUは、画像データに基いて衝突対象が特定の物標であるか否かを判定する。詳細には、「特定の物標」の画像がテンプレート画像として図示しない記憶装置に予め記憶されており、CPUは、衝突対象の画像とテンプレート画像とを比較することにより、衝突対象が特定の物標であるか否かを判定する。
他の例として、CPUは、ミリ波レーダ24の反射波の反射強度に基いて衝突対象が特定の物標であるか否かを判定する。反射強度は物標の種類毎に異なるためである。
【0039】
衝突対象が境界BLの外に位置且つ移動可能な物標である場合、CPUは、衝突対象が禁止条件を満たしたと判定する。この場合、CPUは、ステップ330にて「Yes」と判定し、ステップ335に進む。ステップ335にて、CPUは、禁止フラグXknsの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0040】
禁止フラグXknsの値は、逸脱抑制制御の実行を禁止する場合に「1」に設定され、逸脱抑制制御の実行を許可する場合に「0」に設定される。なお、禁止フラグXknsの値は、イニシャルルーチンにて「0」に設定される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更された場合にCPUによって実行される。
【0041】
CPUがステップ310に進んだときに衝突する可能性がある物標が存在しない場合、CPUは、ステップ310にて「No」と判定し、ステップ340に進む。ステップ340にて、CPUは、禁止フラグXknsの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0042】
CPUがステップ320に進んだときに最小のTTCが閾値時間Tthよりも大きい場合、CPUは、ステップ320にて「No」と判定し、ステップ340に進む。CPUがステップ330に進んだときに衝突対象が禁止条件を満たさない場合、CPUは、ステップ330にて「No」と判定し、ステップ340に進む。
【0043】
<逸脱抑制制御ルーチン>
CPUは、図4にフローチャートにより示した逸脱抑制制御ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0044】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405乃至ステップ420を実行する。
【0045】
ステップ405:CPUは、カメラ22から境界情報を取得する。
ステップ410:CPUは、境界情報に基いて境界BLを特定する。
ステップ415:CPUは、開始基準線Lsth及び終了基準線Lethを設定する。
ステップ420:CPUは、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0046】
実行フラグXexeの値は、逸脱抑制制御が開始する場合に「1」に設定され、逸脱抑制制御が終了する場合に「0」に設定される。なお、実行フラグXexeの値は、イニシャルルーチンにて「0」に設定される。
【0047】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ425に進む。ステップ425にて、CPUは、予測進路PRが開始基準線Lsthと交差し且つ上記距離Dが閾値距離Dth以下であるとの条件(条件1)が成立するか否かを判定する。
【0048】
上記条件(条件1)が成立しない場合、CPUは、ステップ425にて「No」と判定し、ステップ430に進む。ステップ430にて、CPUは、車両VAが開始基準線Lsthを逸脱したか否かを判定する。
【0049】
車両VAが開始基準線Lsthを逸脱してない場合、CPUは、ステップ430にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
CPUがステップ425に進んだときに上記条件(条件1)が成立する場合、CPUは、ステップ425にて「Yes」と判定し、ステップ435に進む。ステップ435にて、CPUは、禁止フラグXknsの値が「0」であるか否かを判定する。
【0051】
禁止フラグXknsの値が「0」である場合、CPUは、ステップ435にて「Yes」と判定し、ステップ440に進む。ステップ440にて、CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0052】
一方、禁止フラグXknsの値が「1」である場合、CPUは、ステップ435にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、逸脱条件が成立したものの、衝突対象が禁止条件を満たしているため禁止フラグXknsの値が「1」に設定されているので、実行フラグXexeの値は「1」に設定されない。
【0053】
CPUがステップ430に進んだときに車両VAが基準線Lthを逸脱している場合、CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定し、ステップ435に進む。
【0054】
CPUがステップ420に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ445に進む。ステップ445にて、CPUは、禁止フラグXknsの値が「0」であるか否かを判定する。
【0055】
禁止フラグXknsの値が「0」である場合、CPUは、ステップ445にて「Yes」と判定し、ステップ450及びステップ455に進む。
【0056】
ステップ450:CPUは、逸脱抑制制御を実行する。即ち、CPUは、転舵角θが目標転舵角θtgtと一致するように操舵モータ36を制御する。
ステップ455:CPUは、車両VAが終了基準線Lethよりも内側に位置するか否かを判定する。
【0057】
車両VAが終了基準線Lethよりも外側に位置する場合、CPUは、終了条件が成立しないと判定する。この場合、CPUは、ステップ455にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
CPUがステップ445に進んだときに禁止フラグXknsの値が「1」である場合、CPUは、ステップ445にて「No」と判定し、ステップ460に進む。ステップ460にて、CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、逸脱条件の成立時には衝突対象が禁止条件を満たしていなかったので一旦逸脱抑制制御が開始されたが、その後に衝突対象が禁止条件を満たしたため、逸脱抑制制御が中止される。
【0059】
CPUがステップ455に進んだときに車両VAが終了基準線Lethよりも内側に位置する場合、CPUは、終了条件が成立したと判定する。この場合、CPUは、ステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ460にて実行フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0060】
以上説明したように、衝突対象が禁止条件を満たした場合には逸脱抑制制御の実行を禁止し、衝突対象が禁止条件を満たさない場合には逸脱抑制制御の実行を許可する。これにより、衝突物標に応じて逸脱抑制制御と減速制御とを同時に実行するか減速制御のみを実行するかを適切に選択でき、逸脱抑制制御の実行により衝突可能性を高めてしまう可能性を低減でき且つ逸脱抑制制御の実行により衝突可能性を低減できる可能性を高めることができる。
【0061】
本発明は前述した実施形態に限定されることはなく、本発明の種々の変形例を採用することができる。上記実施形態では、ECU20は、衝突対象が境界BLの外に位置するか否かにかかわらず、衝突対象が移動可能な特定の物標である場合に禁止条件が成立したと判定してもよい。これによっても、衝突物標に応じて逸脱抑制制御と減速制御とを同時に実行するか減速制御のみを実行するかを適切に選択できる。
【0062】
上記実施形態のように衝突対象が境界BLの外に位置し且つ衝突対象が移動可能な物標である場合に禁止条件が成立したと判定した方が、衝突対象が、車両VAとの衝突を回避するために逸脱抑制制御による転舵方向と同一の方向(走行領域TRの内側)に移動する可能性が高くなる。このため、逸脱抑制制御の実行を誤って禁止してしまう可能性を低減できる。
【0063】
なお、ECU20は、衝突対象が開始基準線Lsthの外に位置し且つ衝突対象が移動可能な物標である場合に禁止条件が成立したと判定してもよい。
【0064】
上記実施形態では、ECU20は、衝突条件が成立した場合に衝突可能性を低減するための第1制御として減速制御を実行したが、これに限定されない。一例として、ECU20は、衝突条件が成立した場合に衝突可能性を低減するために警報制御を第1制御として実行してもよい。警報制御は、運転者に衝突対象と衝突する可能性が高い旨を報知するための制御である。例えば、ECU20は、車両VAに搭載されたディスプレイに運転者に衝突対象と衝突する可能性が高い旨を表す警報画面を表示してもよいし、車両VAに搭載されたスピーカから所定の警報音を発音してもよい。
【0065】
更に、ECU20は、減速制御及び警報制御を第1制御として実行してもよい。
【0066】
上記実施形態では、ECU20は、TTCを「衝突可能性を表す衝突指標値」として用いたが、車両VAと物標との間の距離を衝突指標値として用いてもよい。
【0067】
カメラ22は、ステレオカメラであってもよいし単眼カメラであってもよい。ミリ波レーダ24は、ミリ波以外の無線媒体を送信し、反射された無線媒体を受信することによって物体を検出できるリモートセンシング装置であってもよい。更に、カメラ物体情報に基いて物体の車両VAに対する位置を正確に特定できれば、本装置10はミリ波レーダ24を備えなくてもよい。
【0068】
本装置10は、エンジン自動車、ハイブリッド車、プラグインハブリッド車、燃料電池車及び電気自動車等の車両に適用可能である。更に、本装置10は、自動運転車両にも適用可能である。更に、本発明は、本装置10の機能を実現するためのプログラムが記憶され且つコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体として捉えることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
10…運転支援装置、20…車両制御ECU、22…カメラ、24…ミリ波レーダ、32…パワートレーンアクチュエータ、34…ブレーキアクチュエータ、36…操舵モータ。
図1
図2
図3
図4