(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124634
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/00 J
E02F9/00 K
E02F9/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032445
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 喜久
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA01
2D015CA03
(57)【要約】
【課題】作業機械におけるハーネス等の配索部材の配索に適した技術を提供する。
【解決手段】例示的な作業機械は、作業機械の機関室から外部に延びる配索部材が通る開口を覆うカバー部と、前記カバー部と互いに間隔をあけて対向し、前記機関室の外装の一部を構成するオーバーラップ部と、を備える。前記配索部材が、前記カバー部と前記オーバーラップ部との間で配索される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の機関室から外部に延びる配索部材が通る開口を覆うカバー部と、
前記カバー部と互いに間隔をあけて対向し、前記機関室の外装の一部を構成するオーバーラップ部と、
を備え、
前記配索部材が、前記カバー部と前記オーバーラップ部との間で配索される、作業機械。
【請求項2】
前記オーバーラップ部は、水平面と平行な方向から見て前記カバー部と重なる部分である、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記機関室には、内外の前記配索部材を接続する接続部が配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記接続部は、前記オーバーラップ部、又は、前記オーバーラップ部の近傍に配置される、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記機関室の外装は、
前記カバー部を構成する第1部材と、
前記オーバーラップ部を構成する第2部材と、
を有する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記第1部材は、前記機関室の上側に配置され、
前記第2部材は、前記機関室の前側に配置される、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記カバー部と前記オーバーラップ部との間の間隙には、当該間隙の一部を塞ぐ閉塞壁が配置され、
前記配索部材は、前記間隙の他の一部に配索される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記オーバーラップ部を構成する部材の一部に前記開口が設けられる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項9】
前記機関室の外装には、前記機関室の外部に配置される前記配索部材を支持する支持部が設けられる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項10】
前記配索部材は、前記カバー部の前方に回動支持された作業装置に配索されており、
前記作業装置が最大後方位置で、前記作業装置と前記オーバーラップ部との間に前記カバー部がある、請求項1から9のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧アクチュータに圧油を供給する油圧ホースと、電機機器に電力を給電するハーネスとを備えた油圧ショベル等の建設機械が知られる(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示される建設機械においては、作業装置が取り付けられる左右の縦板の前側部位を連結する前板に設けられる挿通孔を利用して、油圧ホースやハーネスが旋回体の内部から外部へ引き出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハーネスや油圧ホース等の配索部材を、収容部の内部から外部へと引き出するために単純に開口を設ける構成では、例えば収容部の内部への雨水の浸入が問題となったり、音漏れが問題となったりすることがある。例えば、開口部分にゴム製のブッシュ等を取り付けることにより雨水の浸入の防止等を図ることができる。しかし、開口部分にブッシュを配置すると、配索部材の取付時の作業性の低下が懸念される。
【0005】
以上の点に鑑みて、本発明は、作業機械におけるハーネス等の配索部材の配索に適した技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な作業機械は、作業機械の機関室から外部に延びる配索部材が通る開口を覆うカバー部と、前記カバー部と互いに間隔をあけて対向し、前記機関室の外装の一部を構成するオーバーラップ部と、を備える。前記配索部材が、前記カバー部と前記オーバーラップ部との間で配索される。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、作業機械におけるハーネス等の配索部材の配索に適した技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ワイヤーハーネスの配索構造を説明するための図
【
図5】ワイヤーハーネスの配索構造の概略の構成を示す側面図
【
図6】第1変形例に係る、ワイヤーハーネスの配索構造を模式的に示す側面図
【
図7】第2変形例に係る、ワイヤーハーネスの配索構造を模式的に示す側面図
【
図8】第2変形例のオーバーラップ部の周辺を、
図7における白抜き矢印で示す方向に沿って見た概略平面図
【
図9】第3変形例に係る、ワイヤーハーネスの配索構造を模式的に示す側面図
【
図10】第3変形例のオーバーラップ部の周辺を、
図9における白抜き矢印で示す方向に沿って見た概略平面図
【
図11】第4変形例に係る、ワイヤーハーネスの配索構造を模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、特に説明の必要がない場合には、その説明を繰り返さない。
【0010】
<1.作業機械の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械100の概略の構成を示す斜視図である。詳細には、作業機械100は油圧ショベルである。ただし、本発明が適用される作業機械100は、油圧ショベルに限定されず、例えばホイルローダ等の他の作業機械であってもよい。
図1に示すように、本実施形態の作業機械100は、走行体1と、旋回体2と、作業装置3とを備える。
【0011】
ここで、本明細書における方向を、以下のように定義する。まず、走行体1が直進する方向を前後方向とし、そのうちの一方側を「前」とし、他方側を「後」とする。本明細書では、クローラ11に対してブレード12がある側を「前」とする。また、前後方向に垂直な横方向を左右方向とする。本明細書では、後方から前方を向かって左となる側を「左」とし、右となる側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。また、本明細書では、上下方向と平行な面を鉛直面と表現することがある。上下方向と直交する面を水平面として、水平面に平行な方向を水平方向と表現することがある。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0012】
走行体1は、作業機械100を自走可能とする。詳細には、走行体1は、左右一対のクローラ11を有する。各クローラ11は、油圧モータで構成される走行モータ13により駆動される。走行体1は、左右一対のクローラ11が同時に同方向に駆動されると、前方または後方に直進する。前方か後方かは、走行モータ13の回転方向により決まる。走行体1は、左右一対のクローラ11が独立して駆動されることにより、左旋回または右旋回を行う。
【0013】
なお、本実施形態の走行体1はクローラ式であるが、走行体は、クローラ式に限らず、ホイール式等であってもよい。また、本実施形態では、走行体1の前部には、油圧シリンダで構成されるブレードシリンダ14の伸縮によって上下動可能に設けられるブレード12が設けられる。ブレード12を用いることによって、作業機械100は整地作業を行うことができる。
【0014】
旋回体2は、走行体1上に旋回可能に搭載される。旋回体2は、油圧モータで構成される不図示の旋回モータにより駆動され、上下方向に延びる中心軸を中心として旋回する。旋回体2は、左旋回と右旋回とを可能に設けられる。なお、本明細書では、旋回体2が
図1に示す前方を向いた状態であることを前提として、方向の表現を行う。旋回体2が前方を向いた状態では、旋回体2上に設けられる運転座席に座るオペレータは前方を向く。
【0015】
旋回体2は、詳細には、ベースとなる旋回フレーム21を有する。旋回フレーム21上には、キャビン22が設けられる。キャビン22内には、不図示の運転座席および操作レバー等が配置される。本実施形態では、キャビン22は、旋回フレーム21の左寄りに配置される。キャビン22の右側には、例えば側溝掘り作業等に利用される作業装置3が配置される。
【0016】
その他、旋回フレーム21には、いずれも
図1において不図示の原動機、バッテリ、油圧ポンプ、制御弁装置、カウンターウエイト等が搭載される。原動機は、作業機械100に搭載された油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプを駆動する。油圧アクチュエータには、各種の油圧モータおよび油圧シリンダが含まれる。なお、本実施形態では、原動機は、ディーゼルエンジンである。ただし、原動機は、例えばガソリンエンジン等の他の内燃機関や、電動モータ等であってもよい。
【0017】
作業装置3は、ブーム31と、アーム32と、作業具33と、ブームシリンダ34と、アームシリンダ35と、作業具シリンダ36とを備える。
【0018】
ブーム31は、側面視(左右方向からの平面視)において湾曲したV字状であり、その一端部が旋回フレーム21の右側前寄りに取り付けられる。詳細には、ブーム31は、その一端部が前後方向に揺動可能に旋回フレーム21に取り付けられる。ブーム31と旋回フレーム21とは、回動可能にピン結合される。
【0019】
ブームシリンダ34は、そのシリンダ部が旋回フレーム21に取り付けられ、ロッド部がブーム31に取り付けられる。ブームシリンダ34のシリンダ部およびロッド部は、各部21、31に対して、左右方向に延びる軸を中心とした回動を可能にピン結合される。ブーム31は、ブームシリンダ34の伸縮により、前後方向に揺動可能に設けられる。
【0020】
アーム32は、側面視において真っすぐに延びる形状であり、その一端部がブーム31の他端部に取り付けられる。詳細には、アーム32は、その一端部が前後方向および上下方向と平行な鉛直面内で回動可能にブーム31に取り付けられる。アーム32は、ブーム31にピン結合される。
【0021】
アームシリンダ35は、そのシリンダ部がブーム31に取り付けられ、ロッド部がアーム32に取り付けられる。アームシリンダ35のシリンダ部およびロッド部は、各部31、32に対して、左右方向に延びる軸を中心とした回動を可能にピン結合される。アーム32は、アームシリンダ35の伸縮により、前後方向および上下方向と平行な鉛直面内で回動する。
【0022】
作業具33は、詳細にはバケットである。ただし、作業具33は、バケット以外であってもよく、例えばブレーカやクラッシャ等であってもよい。作業具33は、アーム32の他端部に取り付けられる。詳細には、作業具33は、前後方向および上下方向と平行な鉛直面内で回動可能にアーム32に取り付けられる。作業具33は、アーム32にピン結合される。
【0023】
作業具シリンダ36は、そのシリンダ部がアーム32に回動可能に取り付けられ、ロッド部が作業具33に回動可能に取り付けられる。作業具シリンダ36のシリンダ部およびロッド部は、各部32、33に対して、左右方向に延びる軸を中心とした回動を可能にピン結合される。作業具33は、作業具シリンダ36の伸縮により、前後方向および上下方向と平行な鉛直面内で回動する。
【0024】
作業装置3におけるブーム31、アーム32、および、作業具33の少なくとも2つを同時に動かしたり、或いは、それらを独立して動かしたりすることで土砂等の掘削作業を行うことができる。なお、
図1は、非作業時の状態を示す。作業装置3は、最大後方位置に配置される。
【0025】
本実施形態では、
図1に示すように、作業装置3を構成するブーム31等に沿って、複数の電線が束となったワイヤーハーネス4が配索される。ワイヤーハーネス4は、例えば、作業装置3に配置される不図示のセンサと、旋回体2に配置される不図示のコントローラとを接続する電線を含む。センサは、例えば角度センサや圧力センサである。コントローラは、プロセッサを含むコンピュータ装置である。本実施形態の作業機械100においては、ワイヤーハーネス4の配索構造に特徴を有する。この特徴について、以下説明する。
【0026】
なお、ワイヤーハーネス4は、本発明の配索部材の一例である。すなわち、作業機械100は配索部材を備える。以下では、配索部材がワイヤーハーネス4である場合を例に、本発明について説明する。ただし、本発明の配索部材は、ワイヤーハーネス以外であってもよい。配索部材は、ワイヤーハーネスとは別の可撓性を有する長尺部材であってよい。配索部材は、例えば、ケーブル、コード、ホース等であってもよい。すなわち、以下に説明するワイヤーハーネス4の配索構造は、例えば、ケーブル、コード、ホース等の配索部材にも適宜適用することができる。
【0027】
<2.配索部材の配索構造>
図2は、本発明の実施形態に係る作業機械100が備えるワイヤーハーネス4の配索構造を説明するための図である。
図2は、作業機械100における、ワイヤーハーネス4の配索構造に関わる要素を抽出して示す概略斜視図である。
図2に示すように、作業機械100は、外装5と、外装5に設けられるオーバーラップ部6とを備える。
【0028】
外装5は、部材を収容する収容空間200を覆う。本実施形態では、外装5は、ブーム31の後方に配置される(
図1も参照)。外装5は、原動機7(後述の
図5参照)を収容する収容空間200を覆う。収容空間200は機関室である。外装5は、いわゆるボンネットである。本実施形態において、機関室200に収容される部材には、原動機7を構成する部材の他、配索部材であるワイヤーハーネス4も含まれる。なお、機関室200は、詳細には、外装5以外の部材によっても覆われており、外装5は、機関室200の一部を覆う。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に係る作業機械100が備える外装5の概略の構成を示す斜視図である。
図4は、本発明の実施形態に係る作業機械100が備える外装5の概略の構成を示す側面図である。外装5は、例えば板金を加工して形成することができる。外装5は、単一部材で構成されてもよいが、本実施形態では複数部材で構成される。外装5は、2つの部材を用いて構成される。
【0030】
詳細には、外装5は、上側部材51と前側部材52とで構成される。上側部材51は、水平方向に広がる上面部511を含み、機関室200の上側を覆う。前側部材52は、上面部511の前端から前方斜め下方に延びる傾斜部521を含み、機関室200の前側を覆う。傾斜部521の中央部には、前後方向に貫通する前側部材開口522が設けられる。本実施形態では、前側部材開口522は矩形状であるが、円形状等の他の形状であってもよい。上側部材51と前側部材52とは、例えば螺子等の留め具を用いて締結される。
【0031】
傾斜部521の前面521aには、屋根部材53が配置される。屋根部材53は、取付部531と、突片部532とを有する。取付部531は、板状であり、傾斜部521の前面521aに溶接や螺子止め等により固設される。突片部532は、板状部材を折り曲げた形状であり、側面視V字状である。突片部532は、取付部531から前方斜め下方に突出し、その前側の部分は傾斜部521と平行である。なお、本実施形態では、屋根部材53は、前側部材開口522を覆う。屋根部材53は、機関室200から外部に延びるワイヤーハーネス4が通る前側部材開口522を覆う。すなわち、作業機械100は、機関室200から外部に延びる配索部材4が通る開口522を覆うカバー部53を備える。
【0032】
オーバーラップ部6は、機関室200の外装5の一部を構成し、屋根部材53(カバー部)と互いに間隔をあけて対向する。屋根部材53とオーバーラップ部6との間には間隙61が形成される。
【0033】
好ましくは、オーバーラップ部6は、水平面と平行な方向から見て屋根部材53(カバー部)と重なる部分である。詳細には、オーバーラップ部6は、水平面と平行な所定方向から見て屋根部材53と重なる部分である。本実施形態では、所定方向は前後方向である。このような構成とすると、例えば洗浄のために水平面と平行な方向から水を作業機械100に噴射する場合に、間隙61を介して水が機関室200内に入ることを抑制できる。
【0034】
図5は、ワイヤーハーネス4の配索構造の概略の構成を示す側面図である。
図5において、破線で示す部材は、原動機7である。すなわち、機関室200には原動機7が配置される。
図2および
図5に示されるように、ワイヤーハーネス4(配索部材)は、屋根部材53とオーバーラップ部6との間で配索される。別の言い方をすると、ワイヤーハーネス4は、間隙61を介して機関室200の外部に引き出されている。
【0035】
ワイヤーハーネス4が屋根部材53とオーバーラップ部6との間で配索されることにより、機関室200を外部に露出しない状態でワイヤーハーネス4を機関室200から外部に引き出すことができる。このために、機関室200内に雨水が入ることを防止することができる。また、このような構成とすることにより、機関室200を外部に露出しない状態とできるために、機関室200内の音が外部に漏れることを抑制することができる。
【0036】
間隙61を介して配索を行う構成とすると、開口にグロメット等のゴム製の部材を配置してワイヤーハーネス4を外部に引き出す場合に比べて作業の自由度が上がるために、配索作業の作業性を向上することができる。本実施形態では、ワイヤーハーネス4は、機関室200の外部において、作業装置3に配索されている。このような構成では、機関室200の近くに作業装置3が存在するために、機関室200の内外に配置されるワイヤーハーネス4の配索時に、作業スペースが狭くなり易い。特に、作業装置3が、
図1に示すような最大後方位置である場合に、作業スペースが狭くなり易い。この点、本実施形態のようにオーバーラップ部6を利用して配索を行う構成とすると作業の自由動が上がるために、狭い作業スペースでも配索作業を効率良く行うことができる。なお、本実施形態では、作業装置3が最大後方位置で、作業装置3とオーバーラップ部6との間に屋根部材53(カバー部)がある(
図5も参照)構成となる。
【0037】
詳細には、機関室200には、内外のワイヤーハーネス4を接続する接続部8が配置される(
図2参照)。機関室200の内部に配索されるワイヤーハーネスである内部配索部材4aと、機関室200の外部に配索されるワイヤーハーネスである外部配索部材4bとは、接続部8により電気的に接続される。接続部8が設けられることにより、機関室200の内外にワイヤーハーネス4を配索する作業の作業性を向上することができる。接続部8が機関室200内に配置されているために、接続部8が雨水の影響を受ける可能性を低くすることができる。
【0038】
図2および
図5に示すように、接続部8に接続されたワイヤーハーネス4のうち、機関室200の外部へ引き出されるワイヤーハーネス4bは、前側部材開口522、および、間隙61(
図4参照)を通って機関室200の外部へと引き出される。前側部材開口522は、オーバーラップ部6を構成する部材である前側部材52に設けられる。すなわち、本実施形態においては、オーバーラップ部6を構成する部材52の一部に開口522が設けられる。
【0039】
機関室200の外部へと引き出されたワイヤーハーネス4は、作業装置3のブーム31等に沿って取り付けられる。詳細には、機関室200の外部へと引き出されたワイヤーハーネス4は、ブーム31に取り付けられる手前に弛みを有する。弛みを有する状態とすることで、作業装置3が動作を行った場合にワイヤーハーネス4において断線が生じるといった事態の発生を防止できる。
【0040】
<3.変形例>
[3-1.第1変形例]
図6は、第1変形例に係る、ワイヤーハーネス4Aの配索構造を模式的に示す側面図である。第1変形例においても、ワイヤーハーネス4A(配索部材)は、カバー部CP1とオーバーラップ部6Aとの間で配索される。ただし、第1変形例のカバー部CP1およびオーバーラップ部6Aは、上述の実施形態とは異なる構成を有する。
【0041】
本変形例においては、機関室200Aの外装5Aは、第1部材54と、第1部材54とは別部材である第2部材55とを有する。第1部材54は、機関室200Aの上側に配置される。第2部材55は、機関室200Aの前側に配置される。第1部材54は、上述の実施形態における上側部材51に似た部材であり、第2部材55は、上述の実施形態における前側部材52に似た部材である。ただし、本変形例では、第1部材54がカバー部CP1を構成し、第2部材55がオーバーラップ部6を構成する。すなわち、機関室200Aの壁面を構成する部材を利用してカバー部CP1が形成される点が、上述の実施形態と異なる。このような構成とすると、上述の実施形態の構成に比べて部材点数を減らすことができ、オーバーラップ部6Aの形成を容易とすることができる。
【0042】
詳細には、第1部材54は、水平方向に広がる上壁部541と、上壁部541の前端から下方に延伸する延伸部542とを有する。すなわち、第1部材54の前端に下方に延びる延伸部542が設けられる。延伸部542が、ワイヤーハーネス4Aが通る開口AP1を覆うカバー部CP1を構成する。延伸部542は、詳細には、前方斜め下方に延びる。上壁部541と延伸部542とを有する第1部材54は、例えば板金を加工することにより形成することができる。第2部材55は、機関室200Aの前面壁を構成する、平板状の前壁部551を含む。前壁部551は、下方に向かうにつれて前方に位置するように傾けて配置される。
【0043】
本変形例では、上述のように、第2部材55により、オーバーラップ部6Aが構成される。詳細には、オーバーラップ部6Aは、第2部材55のうち、延伸部542と間隔をあけて対向する部分である。より詳細には、オーバーラップ部6Aは、第2部材55のうち、水平面と平行な方向(詳細には前後方向)から見て延伸部542と重なる部分である。上壁部541に降り注いだ雨水は、延伸部542の前面をつたって下方に落ちる。そして、オーバーラップ部6Aは、延伸部542の下端よりも上方に位置する。このために、ワイヤーハーネス4Aが延伸部542とオーバーラップ部6Aとの間の間隙61Aを介して機関室200Aの内外に配索される構成としたにもかかわらず、間隙61Aを介して雨水が機関室200A内に入り込むことを防止できる。
【0044】
本変形例では、延伸部542と前壁部551とは平行に配置される。上述のように、互いに平行配置される延伸部542と前壁部551との間に、間隙61Aが形成される。ワイヤーハーネス4Aは、間隙61Aを通る。上述の実施形態と同様に、本変形例でも、オーバーラップ部6Aは、好ましい形態として、水平面と平行な方向(詳細には前後方向)から見てカバー部CP1と重なる部分である。
【0045】
なお、本変形例では、内外のワイヤーハーネス4Aを接続する接続部8Aは、オーバーラップ部6Aに配置される。接続部8Aがオーバーラップ部6Aに配置される構成とすると、内外のワイヤーハーネス4Aの接続する作業が容易となり、ワイヤーハーネス4Aの配索作業の作業性を向上することができる。より詳細には、接続部8Aは、前壁部551の上端に取り付けられる。ただし、接続部8Aは、延伸部542に取り付けられてもよい。
【0046】
また、本変形例では、外装の外面には、機関室200Aの外部に配置されるワイヤーハーネス4Aを支持する支持部9が設けられる。このような支持部9が設けられることにより、弛みをもたせた状態で配置されるワイヤーハーネス4Aに対して、弛みの近くに動きの起点を設けることができる。これにより、ブーム31Aの動作に起因してワイヤーハーネス4Aが過度に撓むことを抑制することができる。
【0047】
なお、本変形例では、詳細には、支持部9は、前壁部551の前面551aに配置される。支持部9は、オーバーラップ部6Aよりも下方に配置される。
【0048】
[3-2.第2変形例]
図7は、第2変形例に係る、ワイヤーハーネス4Bの配索構造を模式的に示す側面図である。第2変形例に係る、ワイヤーハーネス4Bの配索構造は、第1変形例と概ね同様である。第2変形例においても、第1部材54Bがカバー部CP2を構成し、第2部材55Bがオーバーラップ部6Bを構成する。延伸部542Bが、ワイヤーハーネス4Bが通る開口AP2を覆うカバー部CP2を構成する。オーバーラップ部6Bは、第2部材55Bのうち、延伸部542Bと間隔をあけて対向する部分である。
【0049】
ただし、第2変形例では、第1変形例と異なり、延伸部542Bが、下方に延びる長さが長く、延伸部542Bが機関室200Bの前面壁の大部分を構成している。また、前壁部551Bは、機関室200Bの前面壁の下方の僅かな部分を構成する。本変形例では、オーバーラップ部6Bを、ブーム31Bの根元側(下方側)に近い位置に設けることができる。
【0050】
接続部8Bをオーバーラップ部6B、又は、その近傍に配置することで、ワイヤーハーネス4Bの弛みをもたせる部分に近い位置で、内外のワイヤーハーネス4Bの接続を行うことができる。このような構成では、第1変形例において配置された支持部9を無くすことができる。このために、本変形例では、外装5Bには、支持部9が配置されていない。
【0051】
なお、本変形例では、接続部8Bは、オーバーラップ部6Bの近傍に配置される。この場合も、内外のワイヤーハーネス4Bの接続を容易とできる。そして、本変形例の構成によれば、接続部8Bをオーバーラップ部6Bに配置する場合よりも、水に濡れ難い位置に配置することができる。ただし、本変形例でも、接続部8Bは、オーバーラップ部6Bに配置されてもよい。逆に、第1変形例でも、接続部8Aは、オーバーラップ部6Aの近傍に配置されてもよい。
【0052】
図8は、第2変形例のオーバーラップ部6Bの周辺を、
図7における白抜き矢印ALで示す方向に沿って見た概略平面図である。なお、白抜き矢印ALで示す方向は、オーバーラップ部6Bを構成する面551aBと平行な方向である。
図8に示すように、カバー部CP2とオーバーラップ部6Bとの間の間隙61Bには、当該間隙61Bの一部を塞ぐ閉塞壁10が配置される。ワイヤーハーネス4Bは、間隙61Bの他の一部(閉塞壁10が配置される一部とは異なる部分)に配索される。閉塞壁10が設けられることにより、例えば雨水を機関室200Bへより入り難くすることができる。
【0053】
なお、本変形例では、閉塞壁10は、カバー部CP2とオーバーラップ部6Bとの間を接続する矩形状であるが、その形状およびサイズ等は適宜変更されてよい。また、カバー部とオーバーラップ部との間の間隙の一部を塞ぐ閉塞壁が設けられる構成は、上述の実施形態や第1変形例にも適用可能である。
【0054】
[3-3.第3変形例]
図9は、第3変形例に係る、ワイヤーハーネス4Cの配索構造を模式的に示す側面図である。第3変形例においても、ワイヤーハーネス4C(配索部材)は、カバー部CP3とオーバーラップ部6Cとの間で配索される。ただし、第3変形例のカバー部CP3およびオーバーラップ部6Cは、第1変形例や第2変形例の場合と異なり、単一部材を用いて形成される。
【0055】
本変形例においては、機関室200Cの外装5Cは、単一部材で構成され、機関室200Cの少なくとも上側および前側を覆う。外装5Cは、例えば板金の折り曲げ加工により得られる。外装5Cは、上面部56および前面部57を有する。なお、上面部56と前面部57とは、別部材であってもよい。
【0056】
上面部56は、水平方向に広がり、外装200Cの上面を覆う。前面部57は、上面部56の前端から前方斜め下方に延びる。前面部57は、途中に、折返し部57aと、第1屈曲部57bと、第2屈曲部57cとを含む。折返し部57a、第1屈曲部57b、および、第2屈曲部57cが設けられることにより、カバー部CP3が構成される。
【0057】
折返し部57aは、前方斜め下方に延びる状態を、折返しにより後方斜め上方に延びる状態とする部分である。第1屈曲部57bは、折返し部57aにより折り返された部分(以下、折返し片部57dという)を略90°折り曲げて後方斜め下方に延びる状態とする部分である。第2屈曲部57cは、屈曲により後方斜め下方に延びる部分(以下、第1屈曲片部57e)を、更に略90°折り曲げて前方斜め下方に延びる状態とする部分である。屈曲により前方斜め下方に延びる部分(以下、第2屈曲片部57f)と、折返し片部57dとは、互いに平行である。折返し片部57dと第2屈曲片部57fとの間には、間隙61Cが形成される。オーバーラップ部6Cは、第2屈曲片部57fのうち、カバー部CP3を構成する折返し片部57dと間隔をあけて対向する部分である。オーバーラップ部6Cは、好ましい形態として、水平面と平行な方向(詳細には前後方向)から見て、カバー部CP3と重なる部分である。
【0058】
図10は、第3変形例のオーバーラップ部6Cの周辺を、
図9における白抜き矢印ALで示す方向に沿って見た概略平面図である。
図10に示すように、第1屈曲片部57eには、ワイヤーハーネス4Cを通すための開口57gが設けられている。本例では、開口57gの形状を矩形状としているが、開口の形状は適宜変更されてよく、例えば円形状や楕円形状等であってもよい。
【0059】
本変形例では、機関室200Cの内部に配置されるワイヤーハーネス4Cと、機関室200Cの外部に配置されるワイヤーハーネス4Cとは、オーバーラップ部6Cの近傍に配置される接続部8Cにより接続される。機関室200Cの外部に配置される(ブーム31Cに沿って配置される)ワイヤーハーネス4Cの一端は、間隙61Cおよび開口57gを介して機関室200C内に入れられ、接続部8Cに接続される。すなわち、本変形例においては、オーバーラップ部6Cを構成する部材5Cの一部に開口57gが設けられる。
【0060】
なお、本変形例においても、接続部8Cは、オーバーラップ部6C(間隙61C)に配置されもよい。
【0061】
[3-4.第4変形例]
図11は、第4変形例に係る、ワイヤーハーネス4Dの配索構造を模式的に示す側面図である。第4変形例においても、ワイヤーハーネス4D(配索部材)は、カバー部CP4とオーバーラップ部6Dとの間で配索される。そして、第4変形例のカバー部CP4およびオーバーラップ部6Dは、第3変形例と同様に、単一部材を用いて形成される。しかし、これらの構成は、第3変形例の構成とは異なる。
【0062】
本変形例においては、機関室200Dの外装5Dは、単一部材で構成され、機関室200Dの少なくとも上側および前側を覆う。外装5Dは、例えば板金の折り曲げ加工により得られる。外装5Dは、上面部58および前面部59を有する。なお、上面部58と前面部59とは別部材であってもよい。
【0063】
上面部58は、水平方向に広がり、機関室200Dの上面を覆う。前面部59は、上面部58の前端から前方斜め下方に延びる。前面部59は、途中に、第3屈曲部59aと、第4屈曲部59bとを含む。第3屈曲部59a、および、第4屈曲部59bが設けられることにより、カバー部CP4およびオーバーラップ部6Dが構成される。
【0064】
第3屈曲部59aは、前方斜め下方に延びる状態を、略90°折り曲げて後方斜め下方に延びる状態とする部分である。第4屈曲部59bは、屈曲により後方斜め下方に延びる部分(以下、第3屈曲片部59c)を、更に略90°折り曲げて前方斜め下方に延びる状態とする部分である。屈曲により前方斜め下方に延びる平板状の部分(以下、第4屈曲片部59d)は、上面部58の前端から前方斜め下方に延びる平板状の部分と平行である。
【0065】
本変形例では、カバー部CP4は、前面部59の下端部(第3屈曲部59aが設けられる部分)である。オーバーラップ部6Dは、第4屈曲片部59dの上端部(第4屈曲部59bが設けられる部分)である。
【0066】
本変形例では、第3屈曲片部59cには、開口59eが設けられる。機関室200Dの内部に配置されるワイヤーハーネス4Dと、機関室200Dの外部に配置されるワイヤーハーネス4Dとは、オーバーラップ部6D(第3屈曲片部59c)の近傍に配置される接続部8Dにより接続される。機関室200Dの外部に配置される(ブーム31Dに沿って配置される)ワイヤーハーネス4Dの一端は、開口59eを介して機関室200D内に入れられ、接続部8Dに接続される。
【0067】
<4.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0068】
<5.付記>
例示的な本発明の作業機械は、作業機械の機関室から外部に延びる配索部材が通る開口を覆うカバー部と、前記カバー部と互いに間隔をあけて対向し、前記機関室の外装の一部を構成するオーバーラップ部と、を備え、前記配索部材が、前記カバー部と前記オーバーラップ部との間で配索される構成(第1の構成)であってよい。
【0069】
上記第1の構成の作業機械において、前記オーバーラップ部は、水平面と平行な方向から見て前記カバー部と重なる部分である構成(第2の構成)であってよい。
【0070】
上記第1又は第2の構成の作業機械において、前記機関室には、内外の前記配索部材を接続する接続部が配置される構成(第3の構成)であってよい。
【0071】
上記第3の構成の作業機械において、前記接続部は、前記オーバーラップ部、又は、前記オーバーラップ部の近傍に配置される構成(第4の構成)であってよい。
【0072】
上記第1から第4のいずれかの構成の作業機械において、前記機関室の外装は、前記カバー部を構成する第1部材と、前記オーバーラップ部を構成する第2部材とを有する構成(第5の構成)であってよい。
【0073】
上記第5の構成の作業機械において、前記第1部材は、前記機関室の上側に配置され、前記第2部材は、前記機関室の前側に配置される構成(第6の構成)であってよい。
【0074】
上記第1から第6のいずれかの構成の作業機械において、前記カバー部と前記オーバーラップ部との間の間隙には、当該間隙の一部を塞ぐ閉塞壁が配置され、前記配索部材は、前記間隙の他の一部に配索される構成(第7の構成)であってよい。
【0075】
上記第1から第7のいずれかの構成の作業機械において、前記オーバーラップ部を構成する部材の一部に前記開口が設けられる構成(第8の構成)であってよい。
【0076】
上記第1から第8のいずれかの構成の作業機械において、前記機関室の外装には、前記機関室の外部に配置される前記配索部材を支持する支持部が設けられる構成(第9の構成)であってよい。
【0077】
上記第1から第9のいずれかの構成の作業機械において、前記配索部材は、前記カバー部の前方に回動支持された作業装置に配索されており、前記作業装置が最大後方位置で、前記作業装置と前記オーバーラップ部との間に前記カバー部がある構成(第10の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0078】
3・・・作業装置
4、4A、4B、4C、4D・・・ワイヤーハーネス(配索部材)
5、5A、5B、5C、5D・・・外装
6、6A、6B、6C、6D・・・オーバーラップ部
7・・・原動機
8、8A、8B、8C、8D・・・接続部
9・・・支持部
10・・・閉塞壁
53・・・屋根部材(カバー部)
54、54B・・・第1部材
55、55B・・・第2部材
57g・・・開口
61、61A、61B、61C・・・間隙
100・・・作業機械
200、200A、200B、200C、200D・・・機関室
522・・・前側部材開口(開口)
AP1、AP2・・・開口
CP1、CP2、CP3、CP4・・・カバー部