(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124636
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ロール状製品梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/672 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
B65D85/672
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032448
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕司
(72)【発明者】
【氏名】組沢 至
(72)【発明者】
【氏名】山川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西上原 誠
【テーマコード(参考)】
3E037
【Fターム(参考)】
3E037AA04
3E037BA05
3E037BA09
3E037BB09
3E037BC01
3E037CA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロール状製品を運搬、保管等する際に、高い防湿性および防傷性を有するロール状製品梱包体を提供する
【解決手段】ロール状製品2の外周面および端面を外側から覆う防湿性フィルム3と、ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板5b、および保護板の中心部に配置され、巻き芯1の中空部に嵌合可能な挿し込み部を有する側方保護部材5と、を有するロール状製品梱包体であって、防湿性フィルムで覆われたロール状製品の両端面には、2枚の側方保護部材が、挿し込み部5aが巻き芯の中空部に、防湿性フィルムと共にそれぞれ嵌合されることにより配置されており、挿し込み部の外径と、中空部の内径との差が、0.07m以上2.2mm以下である、ロール状製品梱包体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の巻き芯、および前記巻き芯に巻き取られたシート状の製品を有するロール状製品と、
前記ロール状製品の外周面および端面を外側から覆う防湿性フィルムと、
前記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板、および前記保護板の中心部に配置され、前記巻き芯の中空部に嵌合可能な挿し込み部を有する側方保護部材と、
を有するロール状製品梱包体であって、
前記防湿性フィルムで覆われたロール状製品の両端面には、2枚の前記側方保護部材が、前記挿し込み部が前記巻き芯の中空部に、前記防湿性フィルムと共にそれぞれ嵌合されることにより配置されており、
前記挿し込み部の外径と、前記中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下である、ロール状製品梱包体。
【請求項2】
前記挿し込み部の前記保護板から突出する長さが、30mm以上である、請求項1に記載のロール状製品梱包体。
【請求項3】
前記防湿性フィルムの幅は、以下のWで示される長さ以上の長さを有する、請求項2に記載のロール状製品梱包体。
W=(前記ロール状製品の幅)+(前記ロール状製品外周から前記巻き芯の内周までの距離+30mm)×2
【請求項4】
前記防湿性フィルムの透湿度は、1.0g/m2/day以下である、請求項1に記載のロール状製品梱包体。
【請求項5】
前記2枚の側方保護部材は、製品結束用バンドにより、ロール状製品の両端面に押圧されて固定されている、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のロール状製品梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐傷性および高防湿性を有するロール状製品梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状製品表面への傷を防止する方法としては、ロール状製品幅より幅広の芯上へ製品を巻き付け、幅方向にはみ出た芯部を特定の架台にて受けて搬送する方法や、特許文献1に示すような製品の芯部に対してはめ込む形で装着可能な製品保護具を付け、製品保護具を設置する方法があり、これによりロール状製品表面が接地しない状態で輸送する方法が知られている。
【0003】
また、ロール状製品に対して防湿性を要求される場合における、防湿性を確保する方法としては、特許文献2に示すように、ロール状製品より幅広の芯材に製品を巻き付けた後、ロール状製品全体に防湿フィルムを巻き付け、幅方向へはみ出した芯部にフィルム端をゴムや固定具にて固定することで密封する方法や、ロール状製品全体に対し、防湿特性を持つ袋にて覆う方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-118110号公報
【特許文献2】国際公開第2012/060142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状では、湿度の影響を受けやすいことから、高い防湿性が要求されるロール状製品に対し、その表面に傷等が生じないように運搬や保管等を行うことが可能な梱包方法であって、これらの防湿性および防傷性を高いレベルで達成できる梱包方法が存在しないといった問題があった。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、ロール状製品を運搬、保管等する際に、高い防湿性および防傷性を有するロール状製品梱包体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、中空円筒状の巻き芯、および上記巻き芯に巻き取られたシート状の製品を有するロール状製品と、上記ロール状製品の外周面および端面を外側から覆う防湿性フィルムと、上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板、および上記保護板の中心部に配置され、上記巻き芯の中空部に嵌合可能な挿し込み部を有する側方保護部材と、を有するロール状製品梱包体であって、上記防湿性フィルムで覆われたロール状製品の両端面には、2枚の上記側方保護部材が、上記挿し込み部が上記巻き芯の中空部に、上記防湿性フィルムと共にそれぞれ嵌合されることにより配置されており、上記挿し込み部の外径と、上記中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下である、ロール状製品梱包体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、湿度に耐性の無いロール状製品であっても、ロール状製品の品質を低下させることなく、運搬、保管等が可能な、高い防湿性および防傷性を有するロール状製品梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のロール状製品梱包体の各部材の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】本開示のロール状製品梱包体の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】本開示における挿し込み部の一例を示す断面図および概略斜視図である。
【
図4】本開示における挿し込み部の一例を示す断面図および概略斜視図である。
【
図5】本開示における挿し込み部の一例を示す断面図および概略斜視図である。
【
図6】本開示における挿し込み部の一例を示す概略斜視図である。
【
図7】本開示のロール状製品梱包体の各部材の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
以下、本開示のロール状製品梱包体について説明する。
図1は、本開示のロール状製品梱包体の各部材の一例を示すものである。
図1に示すように、本開示のロール状製品梱包体は、中空円筒状の巻き芯1に、シート状の製品2aが巻き取られたロール状製品2と、上記ロール状製品の外周面および端面を外側から覆うための防湿性フィルム3と、上記ロール状製品2の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板5b、および上記保護板の中心部に配置され、上記巻き芯の中空部に嵌合可能な挿し込み部5aを有する2枚の側方保護部材5と、を有する。
【0013】
図2は、上記ロール状製品梱包体の製造方法の一例を示すものである。上記
図1に示すように、防湿性フィルム3の一端を、初端テープ4によりロール状製品2に固定する。次に、
図2(a)に示すように、上記防湿性フィルム3をロール状製品2の外周面に巻き付けた後、終端テープ6により固定する。
【0014】
次いで、
図2(b)に示すように、ロール状製品2の外側にはみ出た防湿性フィルム3を、中空円筒状の巻き芯1内に押し込むことにより、ロール状製品2の両端面を防湿性フィルム3により被覆する。その後、
図2(c)に示すように、挿し込み部5aを巻き芯1の中空部に、防湿性フィルム3を介して嵌合させることにより、2枚の側方保護部材5を、ロール状製品2に固定する。最後に、製品結束用バンド7により、2枚の側方保護部材5をロール状製品2の両端面に押し付けるように固定することにより、ロール状製品梱包体の一例を得ることができる。
【0015】
このようなロール状製品梱包体の防湿性が不十分であるとの課題を解決すべく検討した結果、本開示の発明者等は、防湿性フィルム3により覆われたロール状製品2に水分が侵入する主たる経路としては、上記巻き芯1の中空部からであると推定され、上記挿し込み部5aの外径と上記巻き芯1の中空部の内径との差を所定の範囲内とすることにより、水分の主たる侵入経路を遮断することが可能となることを見出したものである。
【0016】
すなわち、本開示は、上記挿し込み部の外径と、上記巻き芯の中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下とすることにより、梱包後のロール状製品梱包体内部に水分が侵入することによる製品への影響を防止することができるという効果を奏するものである。
【0017】
また、本開示のロール状製品梱包体は、上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板を有することにより、運搬もしくは保管時において、ロール状製品が直接接地すること等がないことから、防傷性に優れたものとすることができる。
【0018】
以下、本開示におけるロール状製品梱包体の各構について、詳細に説明する。
【0019】
1.側方保護部材
本開示のロール状製品梱包体は、2枚の側方保護部材を有し、上記側方保護部材は、上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板、および上記保護板の中心部に配置され、上記巻き芯の中空部に嵌合可能な挿し込み部を有する。
【0020】
(1)挿し込み部
図3(a)は、上記挿し込み部5aが、中空円筒状の巻き芯1内に嵌合された状態の一例を示す断面図である。なお、実際のロール状製品梱包体では、挿し込み部5aと巻き芯1との間に防湿性フィルムが介在するが、説明の分かりやすさのため省略する。また、
図3(b)は、上記挿し込み部5aを有する側方保護部材5を示す概略斜視図である。
【0021】
本開示においては、上述した通り、挿し込み部の外径と上記巻き芯の中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下とするものであり、したがって、
図3(a)で示される間隙5rは、0.04mm以上、1.1mm以下となる。
【0022】
上記間隙5rが、上記範囲より広い場合は、この間隙を通じて水分(水蒸気)が侵入しやすくなり、挿し込み部における水分侵入の遮断効果を十分に発揮することが難しくなる。一方、上記範囲より狭い場合は、防湿性フィルムが介在する状態での巻き芯の中空部に対する挿し込み部の嵌入が難しくなる。
【0023】
本開示においては、上記挿し込み部の外径と上記巻き芯の中空部の内径との差の上限値は、2.2mm以下であればよいが、好ましくは、2.1mm以下であり、特に2.0mm以下であることが好ましい。一方、下限値としては、0.07mm以上である。
【0024】
ここで、本開示に用いられる挿し込み部の外径は、特に限定されるものではないが、下限値が7.38cm以上、好ましくは7.40cm以上のもの、上限値は、7.55cm以下、好ましくは7.45cm以下のものが、本開示のロール状製品梱包体としては好ましい。
【0025】
また、
図3(b)に示します通り、上記挿し込み部の上記保護板から突出する長さ5Lの下限値は、30mm以上であることが好ましく、40mm以上であることがより好ましく、特に70mm以上であることが好ましい。一方、上限値としては、150mm以下であることが好ましい。
【0026】
上記範囲より小さい場合は、挿し込み部における水分侵入の遮断効果を十分に発揮することが難しくなる可能性があり、上記範囲を超える場合は、挿し込み部の抜き差しが煩雑になる可能性がある。
【0027】
さらに、
図3(a)における例では、5tで示される挿し込み部の厚みの下限値は、3mm以上であることが好ましく、特に4mm以上であることが好ましい。一方、上限値は、芯部の内部へラムフォークを挿してロールを運搬することを踏まえ、15mm以下であることが望ましく、特に10mm以下であることが望ましい。
上記範囲より薄い場合は、強度面で問題が生じる可能性がある。なお、挿し込み部にリブ構造等の補強構造が形成されている場合は、上記範囲より薄い場合でも対応可能な場合がある。
【0028】
本開示に用いられ挿し込み部は、上述したように、補強構造が設けられていてもよい。このような補強構造としては、例えば
図4(a)のリブ構造R、
図5(a)の花形の突起形状D等を挙げることができる。
【0029】
図4および
図5に示すような補強構造を有する挿し込み部51aおよび52aの場合の、巻き芯1の内径との間隙としては、間隙が狭い51a r1および52a r1が、上記挿し込み部の外径と上記巻き芯の中空部の内径との差の下限値以上であればよく、間隙が広い51a r2および52a r2が、上記挿し込み部の外径と上記巻き芯の中空部の内径との差の上限値以下であればよい。
【0030】
また、上記挿し込み部は、
図6に示すように挿し込み部5aの先端部にテーパー形状部Tが設けられたものであってもよい。このようなテーパー形状部Tを有することにより、上記巻き芯の中空部への挿し込み部の嵌合が容易となる。なお、このようなテーパー形状部Tを有する場合でも、上記挿し込み部の上記保護板から突出する長さ5Lの下限値は、上述したものと同様の範囲とすることが好ましい。
【0031】
上記挿し込み部は、上記保護板と一体に形成されたものであってもよく、例えば、
図7に示すように、別体に形成され、上記保護板と組み合わせて用いるものであってもよい。
図7は、側方保護部材の他の例を示すものであり、上記保護板5の中心部に孔Hが形成されており、この孔Hに対し、上記保護板5とは別体に形成された挿し込み部5aを嵌め込むことにより、側方保護部材としたものである。
【0032】
本開示における挿し込み部を形成する材料としては、強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属および樹脂等を挙げることができ、通常は樹脂により形成されたものが用いられる。
【0033】
また、上記挿し込み部の形状は、断面の外周が円形であれば特に限定されるものではなく、中空の形状であっても、中実材であってもよい。本開示においては、ロール状製品梱包体とした場合に、運搬用の棒状の部材を巻き芯および挿し込み部に貫通させて運搬させることが可能となることから、中空であることが好ましい。
【0034】
(2)保護板
本開示に用いられる側方保護部材は、上記挿し込み部を支持する保護板を有する。上記保護板は、平板状であり、上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する。
【0035】
ここで、上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有するとは、たとえば保護板が多角形状である場合は、少なくとも対向する一組の辺、もしくは対向する一組の辺および頂点の距離が、上記ロール状製品の端面の直径より大きいことを意味し、保護板が円形状である場合は、保護板の直径が、上記ロール状製品の端面の直径より大きいことを意味する。
【0036】
上記保護板の中心部に、上述した挿し込み部が配置されるが、上記中心部とは、上記保護板が多角形状の場合は、対向する頂点を結ぶ対角線が交わる領域を示し、円形状の場合は、円形の中心部の領域を示す。
【0037】
上記保護板の形状は、矩形状、特に正方形のものが、作業性の観点から好ましい。また、ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有するとは、床等に載置した際に、ロール状製品が床等に接触しない程度に大きい幅であれば特に限定されるものではないが、通常は、1cm以上10cm以下の範囲内で大きい幅とされる。
【0038】
本開示のロール状製品梱包体は、後述する通り、例えば150kg以上のロール状製品が梱包されたものとなることが好ましい態様であることから、上記保護板も、上記ロール状製品を支持可能な大きさおよび強度を有する必要がある。
【0039】
このような保護板を構成する材料としては、所定の強度を有するものであれば、特に限定されないが、通常は金属および樹脂等が用いられ、特に樹脂が好ましい。
【0040】
上記保護板の形状としては、例えば正方形の保護板の場合、対向する辺の距離が
0.45m以上0.6m以下程度である。
また、保護板の厚みは、材質により異なるものであるが、樹脂製の場合は、通常は3cm以上5cm以下の範囲内のものが用いられる。
【0041】
2.防湿性フィルム
本開示においては、上記ロール状製品の外周面および端面を外側から覆う防湿性フィルムが用いられる。
本開示に用いられる防湿性フィルムは、防湿性を有するフィルムであれば特に限定されるものではないが、透湿度が1.0g/m2/day以下のものが好ましく、特に好ましくは、0.9g/m2/day以下のもの、中でも0.1g/m2/day以下のものが好ましい。
【0042】
このような防湿性フィルムとしては、例えば基材表面に金属が蒸着されて形成されたフィルムや、基材表面に酸化ケイ素や酸化アルミニウムが蒸着されたフィルム等を用いることができるが、本開示においては、表面にアルミニウムが蒸着されたフィルムが好適に用いられる。
【0043】
上記防湿性フィルムは、後述するロール状製品の外周を一周し、さらにロール状製品の外周で、1.0cm以上、好ましくは2.0cm以上重複する領域を有する長さを有することが好ましい。なお、重複する領域は、通常200cm以下とされる。
【0044】
また、上記防湿フィルムの幅は、梱包後にロール状製品の両端面を覆うことができる長さであればよいが、以下の式(1)において、Wで示される長さ以上の長さであることが好ましい。
【0045】
W=(上記ロール状製品の幅)+(上記ロール状製品外周から上記巻き芯の内周までの距離+30mm)×2 (1)
【0046】
上記Wは、防湿フィルムで上記ロール状製品を梱包した場合、ロール状製品の外周および両端面を覆った後に、上記巻き芯の中空部に防湿フィルムの余剰部を押し込むとした場合、両端面側にそれぞれ30mmの上記余剰部が生じる幅となる。したがって、上記防湿フィルムの余剰部をWで示される長さ以上の長さとすることにより、上記余剰部を、上記巻き芯の中空部に押し込み、上記側方保護部材の挿し込み部を用いて上記巻き芯の中空部に嵌合した際に、上記挿し込み部の突出長さが30mm以上であれば、30mm以上の領域で防湿フィルムを、上記巻き芯の内径と上記挿し込み部の外径との間で固定することが可能となる。これにより、この防湿フィルムの固定領域から水分が梱包後のロール状製品梱包体内部に侵入することを防止することができる。
【0047】
上記ロール状製品は、防湿フィルムで全体を覆われていることから、ロール状製品梱包体内に侵入する水分のほとんどが上記防湿フィルムの固定部分から侵入するものであると推定される。したがって、上記防湿フィルムの幅を上記W以上の幅とすることにより、極めて防湿性の高いロール状製品梱包体とすることが可能となる。
【0048】
上記防湿フィルムの長さとしては、具体的には、通常1.4m以上3.0m以下であり、上記防湿フィルムの幅は、通常0.7m以上1.1m以下である。
【0049】
3.ロール状製品
本開示のロール状製品梱包体は、ロール状製品を防湿フィルムにより梱包し、側方保護部材により固定されたものである。
本開示においては、上記ロール状製品が、150kgを超える重量を有するものであることが好ましい。このような重量を有するロール状製品を、防湿性および防傷性を保ちつつ運搬および保管を行うことは難しく、本開示のロール状製品梱包体が効果的であるからである。
上記ロール状製品は、中空円筒状の巻き芯と、上記巻き芯に巻き取られたシート状の製品と、を有する。
【0050】
(1)巻き芯
本開示に用いられる巻き芯の形状は、上述した挿し込み部が、所定の空隙で嵌合可能な中空領域を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は中空円筒形である。
【0051】
上記巻き芯の内径は、上述した挿し込み部が嵌合した際に所定の空隙を有するものであれば特に限定されないが、通常は7.60cm以上7.67cm以下とされる。
【0052】
上記巻き芯の長さは、巻き取られる製品の幅と同程度であることが好ましいが、製品の幅より、±0.1cmの範囲内である。
【0053】
巻き芯を構成する材料は、所定の強度を有し、水分を遮断できる材料であれば特に限定されるものではないが、通常、金属もしくは樹脂等を挙げることができる。本開示においては、樹脂で形成されたものが好ましい。
【0054】
(2)シート状の製品
本開示のロール状製品梱包体で梱包されるシート状の製品としては、特に限定されるものではないが、本開示の利点を有効に利用する観点から、吸湿が影響を及ぼす可能性のある製品であることが好ましい。
【0055】
このような製品としては、例えば電池の外装材を挙げることができる。
【0056】
4.その他
本開示のロール状製品梱包体は、製品結束用バンドにより、上記2枚の側方保護部材がロール状製品の両端面に押圧されて固定されていることが好ましい。
図2(d)は、製品結束用バンド7により、2枚の側方保護部材5、5がロール状製品の両端面に押圧されて固定されている状態を示すものである。
【0057】
このように製品結束用バンドにより、側方保護部材が固定されることにより、例えばロール状製品梱包体を搬送する際に振動等が生じた場合、上記側方保護部材の挿し込み部を用いて上記巻き芯の中空部に嵌合した部分において、上記挿し込み部が振動により動きが生じ、上記挿し込み部の動きにより嵌合部分において固定された上記防湿性フィルムの隙間から水分が侵入してしまうといった不具合を防止することが可能となる。
【0058】
製品結束バンド7の結束位置は、上記
図2(d)の位置に限定されるものではなく、例えば中空円筒状の巻き芯の中空部分を用いて結束したものであってもよい。製品結束バンドの材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン等が用いられる。
【0059】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0060】
防湿性フィルム(透湿度1.0g/m
2/day、膜厚12μm)、並びに、汎用フィルムとして、ポリエチレンフィルムA(透湿度13g/m
2/day、膜厚30μm)、およびポリエチレンフィルムB(透湿度13g/m
2/day 膜厚50μm)を用いて、挿し込み部の外径と、上記中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下の範囲内である、ロール状製品梱包体をそれぞれ作成した。
得られた3種類のロール状製品梱包体を、温度60℃、相対湿度90%の環境下において、ロール状製品梱包体内の湿度を経時的に測定した結果を、
図8に示す。
【0061】
ポリエチレンフィルムA(膜厚30μm)は約1時間、ポリエチレンフィルムB(膜厚50μm)は約2時間で周辺環境と同程度の相対湿度90%に至っているが、防湿性フィルム(12μm)は12時間以上たっても90%には到達しなかった。
以上より、本開示のロール状製品梱包体において、防湿性フィルム端部を側方保護部材の挿し込み部で密閉させることで、高い防湿性が得られるとの結果を得た。
【0062】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0063】
[1]
中空円筒状の巻き芯、および上記巻き芯に巻き取られたシート状の製品を有するロール状製品と、
上記ロール状製品の外周面および端面を外側から覆う防湿性フィルムと、
上記ロール状製品の端面の直径より大きい幅を有する平板状の保護板、および上記保護板の中心部に配置され、上記巻き芯の中空部に嵌合可能な挿し込み部を有する側方保護部材と、
を有するロール状製品梱包体であって、
上記防湿性フィルムで覆われたロール状製品の両端面には、2枚の上記側方保護部材が、上記挿し込み部が上記巻き芯の中空部に、上記防湿性フィルムと共にそれぞれ嵌合されることにより配置されており、
上記挿し込み部の外径と、上記中空部の内径との差が、0.07mm以上2.2mm以下である、ロール状製品梱包体。
[2]
上記挿し込み部の上記保護板から突出する長さが、30mm以上である、[1]に記載のロール状製品梱包体。
[3]
上記防湿性フィルムの幅は、以下のWで示される長さ以上の長さを有する、[2]に記載のロール状製品梱包体。
W=(上記ロール状製品の幅)+(上記ロール状製品外周から上記巻き芯の内周までの距離+30mm)×2
[4]
上記防湿性フィルムの透湿度は、1.0g/m2/day以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載のロール状製品梱包体。
[5]
上記2枚の側方保護部材は、製品結束用バンドにより、ロール状製品の両端面に押圧されて固定されている、[1]から[4]までのいずれかに記載のロール状製品梱包体。