(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124637
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】畝成形播種機
(51)【国際特許分類】
A01B 13/02 20060101AFI20240906BHJP
A01C 7/08 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
A01B13/02 A
A01C7/08 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032451
(22)【出願日】2023-03-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業機械技術クラスター事業 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】521081115
【氏名又は名称】株式会社エース
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】淺野 和人
(72)【発明者】
【氏名】西村 修
【テーマコード(参考)】
2B032
2B054
【Fターム(参考)】
2B032AA07
2B032CA04
2B032CA06
2B032CB06
2B032CB13
2B032CB14
2B032CB28
2B032GA06
2B032GA15
2B054BB01
2B054CA04
2B054CB01
2B054CB02
2B054CB03
2B054CB15
2B054DA07
2B054DC06
2B054DD22
2B054DD26
2B054DE02
2B054DE06
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造により、播種畝を成形するとともに、播種作業を行うことのできる畝成形播種機を提供する。
【解決手段】
本実施形態の畝成形播種機(100)は、播種畝を成形し、その播種畝に播種する畝成形播種機である。畝成形播種機の畝成形部(30)は、進行方向に直交する駆動軸を中心に回転して、播種畝の両側面を成形する側面成形部(32)と、播種畝の天面を成形する天面成形部(34)と、を有する。そして、側面成形部(32)は一対の多角錐台の形状のディスクであり、天面成形部(34)は円柱の形状である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後方に装着され、圃場を進行方向に走行しながら台形断面形状の播種畝を成形する畝成形部を備え、その播種畝に播種する畝成形播種機であって、
前記畝成形部は、前記進行方向に直交する駆動軸を中心に回転して、前記播種畝の両側面を成形する側面成形部と、前記播種畝の天面を成形する天面成形部と、を有し、
前記側面成形部は一対の多角錐台の形状のディスクであり、
前記天面成形部は円柱の形状である、畝成形播種機。
【請求項2】
前記ディスクは、10角錐台から30角錐台の形状のディスクである請求項1に記載の畝成形播種機。
【請求項3】
隣り合う一対の前記ディスクの間には、円柱のスペーサ部が設けられる請求項1または請求項2に記載の畝成形播種機。
【請求項4】
前記畝成形部の前記進行方向の前方に前記走行機体の車輪痕を均す反転ディスクを有する請求項1に記載の畝成形播種機。
【請求項5】
前記反転ディスクは、前記反転ディスクを支持する第1調整体と、前記第1調整体に取り付けられる第2調整体とを有し、
前記第1調整体及び前記第2調整体はそれぞれ、高さ方向と位相方向とが異なった取付部を有しており、前記反転ディスクの圃場からの高さと前記反転ディスクの角度が調整される請求項4に記載の畝成形播種機。
【請求項6】
前記畝成形部の前記進行方向の後方に前記播種畝の天面に播種畝の天面に溝を成形する溝成形部と、さらにその溝に播種を行う播種部とを有する請求項1に記載の畝成形播種機。
【請求項7】
前記溝成形部は、外周面が平面である円盤状のディスクであり、
該円盤状のディスクの側方で、且つ前記円盤状の円盤状のディスクの外周を該ディスクの下端から進行方向後方で所定角度覆うスクレーパを含む、請求項6に記載の畝成形播種機。
【請求項8】
前記スクレーパは、取り外し及び交換可能に取り付けられている、請求項7に記載の畝成形播種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種畝を成形する畝成形、及びその成形された畝に播種する畝成形播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
稲作もしくは麦作の生産コストの低減、効率化を実現するため、田植ではなく籾を直接播く手法が広がっている。
【0003】
特許文献1は、播種畝を成形する機構と、播種作業を行う播種機構とを備えた畝成形播種機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された畝成形播種機では、畝立て用のディスクが進行方向の前後に一対配置される構造であるため、必然的に大きな畝成形播種機となり、狭い圃場では取り扱いにくい問題があった。さらに播種畝が比較的柔らかいと雑草が生えやすく、稲作もしくは麦作、大豆、蕎麦等の生育の妨げになりやすかった。さらに播種畝が比較的柔らかいと漏水により水量の減少が発生し、生育不良の原因となりやすい問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構造により、丈夫な播種畝を成形するとともに、播種作業を行うことのできる畝成形播種機を提供する。
【0007】
本実施形態の畝成形播種機は、トラクタの後方に装着され、圃場を進行方向に走行しながら台形断面形状の播種畝を成形する畝成形部を備え、その播種畝に播種する畝成形播種機である。畝成形播種機の畝成形部は、進行方向に直交する駆動軸を中心に回転して、播種畝の両側面を成形する側面成形部と、播種畝の天面を成形する天面成形部と、を有する。そして、側面成形部は一対の多角錐台の形状のディスクであり、天面成形部は円柱の形状である。
【0008】
ディスクは、10角錐台から30角錐台の形状のディスクであることが好ましい。隣り合う一対のディスクの間には、円柱のスペーサ部が設けられても良い。また畝成形部の進行方向の前方に走行機体の車輪痕を均す反転ディスクを有しても良い。
【0009】
畝成形播種機の反転ディスクは、反転ディスクを支持する第1調整体と、第1調整体に取り付けられる第2調整体とを有する。第1調整体及び第2調整体はそれぞれ、高さ方向と位相方向とが異なった取付部を有しており、反転ディスクの圃場からの高さと反転ディスクの角度が調整される。
【0010】
畝成形播種機の畝成形部の進行方向の後方に播種畝の天面に播種畝の天面に溝を成形する溝成形部と、さらにその溝に播種を行う播種部とを有する。その溝成形部は、外周面が平面である円盤状のディスクであり、該円盤状のディスクの側方で、且つ円盤状の円盤状のディスクの外周を該ディスクの下端から進行方向後方で所定角度覆うスクレーパを含むことが好ましい。スクレーパは取り外し及び交換可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の畝成形播種機は、簡易な構造により、低水分状態の土壌から高水分状態の土壌でも播種畝を成形するとともに、播種作業を容易に行うことのできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る畝成形播種機の全体構成を示した側面図である。
【
図2】実施形態に係る畝成形播種機の全体構成を示した平面図である。第1例の畝成形部30が取り付けられている。
【
図3】(A)は第2例の畝成形部30Aの全体を示した平面図である。(B)は第1例の畝成形部30で成形される播種畝RIの断面図であり、(C)は第2例の畝成形部30Aで成形される播種畝RIの断面図である。(D)は、第1例の畝成形部30で成形された播種畝RIの斜視図である。
【
図4】(A)は多角錐台の形状のディスク32の斜視図であり、(B)は18角錐台32Aの正面図であり、(C)は12角錐台32Bの正面図である。
【
図5】(A)は18角錐台のディスクを製造する前の2部品であり、(B)は12角錐台のディスク32Bを製造する前の6部品である。
【
図6】(A)は反転ディスク20の周辺を示した斜視図である。(B)は第1調整体22を示した図面であり、(C)は第2調整体24を示した図面である。(D)は第1調整体22と第2調整体24とを組み合わせて、調整ピンPIで留めた概念斜視図である。
【
図7】(A)は、溝成形部40と播種部50の一部を示した側面図である。(B)は、溝成形部40を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を、図を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また各図面では部材を強調するため実際の寸法通りに描かれていない。
【0014】
本実施形態の畝成形播種機100は、低水分状態の土壌から高水分状態の土壌において、播種畝の成形や播種する装置である。ここで高水分状態の土壌とは、粘性土が半固体から塑性状態に変化する境界の含水比(これを塑性限界という。)を超える土壌を意味する。半固体状の粘性土が塑性限界を超えると塑性状態になる。半固体状の粘性土はボロボロしているが、塑性状態の土は粘りがある粘性土になり、装置にこびりつくことにより、播種畝の成形や播種の妨げとなるため、多くの播種機は降雨の後などで水分量の多い圃場では播種ができないことが多い。
【0015】
<<畝成形播種機100の概要>>
図1は本実施形態の畝成形播種機100の使用状態を示した一例である。
図2はその畝成形播種機の平面図である。畝成形播種機は、トラクタTRの後方に装着され、圃場を矢印で示した進行方向に進行しながら播種畝の成形と播種を同時工程で行う。トラクタTRは、一般に3点リンク機構を備え、3点リンク機構に連結するトップリンク連結枠16及びロアリンク連結枠17を備えている。
【0016】
畝成形播種機100は、トラクタTRの動力が入力される入力軸10、入力軸10に入力された動力を駆動軸14に伝動する伝動部11,伝動軸12及び伝動ケース13を備えている。
【0017】
この畝成形播種機100は、伝動軸12から伝動ケース13を介して伝達される入力軸10の動力で駆動する駆動軸14を備える。駆動軸14は、トラクタTRの進行する進行方向(矢印方向)に直交するように配置されており、駆動軸14には、畝成形部30が装備されている。
【0018】
車輪式のトラクタTRの場合、畝成形部30の前方にトラクタTRの車輪痕を均す反転ディスク20を設けることが望ましい。反転ディスク20は、トラクタTRの車輪に対応する位置に配置され、その反転ディスク20の高さ及び進行方向に対する角度は調整される。反転ディスク20は支持枠15または播種機本体に、第1調整体22及び第2調整体24を介して装着される。
【0019】
また、畝成形播種機100は、畝成形部30の後方に配備される溝成形部40を有する。溝成形部40は、畝成形部30を支持する支持枠15に支持され、畝成形部30が成形した播種畝RI(
図3(B)(C)を参照)の天面に溝GVを成形する。
【0020】
また、畝成形播種機100は、播種部50を備えている。播種部50は、図示のように溝成形部40の後方に配備して、播種畝RIの天面の溝GVに播種する。
【0021】
播種部50は、複数列設けられる畝成形部30の天面成形部34に対応する位置に配置される。そして溝成形部40が開けた溝内に種を播く播種口52とを備える。図示されていないが、播種と同時に施肥を行う場合には、播種口52の後方又は阻止部44(
図7を参照)付近に施肥口を設けてもよい。播種口52は、種子容器53の底部から下に伸びる播種管51の下端に形成される。
【0022】
また、畝成形播種機100は、覆土鎮圧器60を備えても良い。覆土鎮圧器60は、図示のように播種口52の後方に配備して、土を加圧して溝に播種された種と土を密接させるとともに、溝の開口部を塞ぐ。覆土鎮圧器60は、例えば鎮圧ローラやヘラ型の鎮圧片などである。
【0023】
<<畝成形部30の概要>>
図2では、第1例の畝成形部30の全体が示され、
図3(A)では、第2例の畝成形部30Aの全体が示されている。第1例の畝成形部30は、台形断面形状の播種畝RIの側面を成形する側面成形部32と播種畝の天面を成形する天面成形部34を備えている。第2例の畝成形部30Aは、側面成形部32と天面成形部34と播種畝RIと播種畝RIとの間の底面を成形する底面形成部36を備えている。
【0024】
第1例の畝成形部30は、
図3(B)の5つの播種畝RIを形成することができる。第2例の畝成形部30Aは、
図3(C)の5つの播種畝RIを形成することができる。
図2及び
図3(A)において、左側の側面成形部32L及び右側の側面成形部32Rの一対で1つの播種畝RIの両側面が成形される。播種畝RIと播種畝RIとの間の底面は、播種畝RIの高さが必要な場合などに、成形することが好ましい。また、ディスク32は角度β(
図4を参照)を変える(天面を広くしたり、狭くする)ことで少ない土量でも畝の成形が可能となる。例えばトラクタTRの車輪痕が付く領域のみディスク32の形状を変えることで、効果的な畝成形が可能となる。
【0025】
畝成形部30及び畝成形部30Aは、鉄、ステンレス、アルミニウム合金、プラスチック樹脂等で形成されることが好ましく、側面成形部32と天面成形部34と底面形成部36との材料が異なっていても良い。また駆動軸14は、天面成形部34とは別の部材ではなく、天面成形部34と一体型にしてもよい。
【0026】
天面成形部34及び底面形成部36は、円柱形状もしくは中空円柱(円筒)であり、その外周面で、土壌の圃場で播種畝RIの天面もしくは底面を硬く成形する。左側の側面成形部32L又は右側の側面成形部32Rは、多角錐台の形状のディスクである。
【0027】
<多角錐台の形状のディスク>
図4(A)は、多角錐台の形状のディスク32の斜視図である。(B)は18角錐台のディスク32Aの正面図であり、(C)は12角錐台のディスク32Bの正面図である。多角錐台の形状のディスク32は、複数の台形片321から構成され、それぞれの台形片は上底323と下底325を有している。多角錐台の形状のディスク32の大きさは、求められる播種畝RIの形状によって適宜変更される。例えば、
図4(A)に示された多角錐台の形状のディスク32は、高さHIが60―160mm、角度βが15度-55度で、外径ΦLが300―420mmで製造される。多角錐台の形状のディスク32の内径は、円柱形状もしくは中空円柱の天面成形部34に合わせて製造される。なお、本実施形態では台形片321という名称を使用しているが、上底323と下底325とは円形に切り欠く曲線であってもよい。
【0028】
多角錐台の形状のディスク32は、10角錐台のディスクから30角錐台のディスクであることが好ましい。
図3(D)は、8角錐台の形状のディスクから18角錐台の形状のディスク及び円錐台のディスクで、高水分状態の土壌の圃場で播種畝を成形した例を示した写真である。この写真で使用された畝成形部は、底面形成部36の無い第1例の畝成形部30である。
【0029】
図3(D)において、左から12角錐台の形状のディスクで成形された播種畝、18角錐台の形状のディスクで成形された播種畝、16角錐台の形状のディスクで成形された播種畝、円錐台のディスクで成形された播種畝、8角錐台の形状のディスクで成形された播種畝である。
【0030】
図3(D)から理解されるように、円錐台のディスクでは、播種畝が成形できず、崩れた畝になっている。その原因は、高水分状態の土壌では、円錐台のディスクに粘性土が付いて、その粘性土がディスクから剥がれないためであると考えられる。また8角錐台の形状のディスクでは、播種畝が成形できず、崩れた畝になっている。その原因は、8角錐台の形状のディスクでは粘性土を押し固めることができないからと考えられる。なお、本件では図又は写真を示さないが、円錐台のディスクは、低水分状態の土壌で播種畝を成形することができる。
【0031】
一方、12角錐台、16角錐台、及び18角錐台の形状のディスクでは、高水分状態の土壌であっても播種畝が形状されている。これは12角錐台以上の形状であると、粘性土がディスクに付きにくく、且つ各面が播種畝の側面を繰り返し圧迫して、側面を固める機能を有すると考えられる。なお、40角錐台以上のあまりにも多い角数の多角錐台のディスクでは、製造コストが高くなる。このため多角錐台の形状のディスク32は、10角錐台のディスクから30角錐台のディスクであることが好ましい。
【0032】
10角錐台のディスクから30角錐台のディスクは、容易に製造することができる。
図5(A)は18角錐台のディスク32Aを製造する前の2部品を示す。
図5(B)は12角錐台のディスク32Bを製造する前の6部品を示す。
【0033】
18角錐台のディスク32Aは、部品32A1と部品32A2とからなる。これら部品32A1及び32A2は、ステンレスもしくはアルミニウム合金等を金型でプレスして形成され、その両方を溶接して製造される。また12角錐台のディスク32Bは、部品32B1から部品32B6の6部品からなる。これら部品32B1から32B6は、ステンレス等を金型でプレスして形成され、それぞれを溶接して製造される。なお、18角錐台のディスク32Aが一回の金型プレスで製造されてもよい。
【0034】
<反転ディスクの角度及び高さ調整>
図6(A)は、反転ディスク20を支持枠15から調整する第1調整体22及び第2調整体24を示した斜視図である。反転ディスク20は、第1調整体22及び第2調整体24で、圃場へ入れる深さと進行方向に対する角度とが調整される。反転ディスク20は、トラクタTRの車輪に対応する位置に配置され、トラクタTRの車輪痕を土寄せして均す機能を有する。
【0035】
図6(B)は、第1調整体22の平面図と正面図である。第1調整体22は中空円柱(円筒)である。第1調整体22は、その中空円柱の伸びる方向(Z軸方向)から見て、A貫通孔22r(22r1、22r2、22r3)、B貫通孔22p(22p1、22p2、22p3)、C貫通孔22q(22q1、22q2、22q3)が角度α1毎に形成されている。角度α1は、例えば25度、30度等である。さらにA貫通孔22rとB貫通孔22pとは高さ方向にピッチP1で形成され、B貫通孔22pとC貫通孔22qとは高さ方向にピッチP1で形成され、A貫通孔22rとC貫通孔22qとは高さ方向にピッチP1で形成されている。ピッチP1は例えば10mmから20mmである。またA貫通孔22rとB貫通孔22pとC貫通孔22qとのそれぞれの孔径は同じである。なお、各貫通孔はそれぞれ3種類用意された例であるが、2種類、4種類、5種類等であっても良い。
【0036】
図6(C)は、第2調整体24の平面図と正面図である。第2調整体24は円柱又は中空円柱である。第2調整体24は、その円柱もしくは中空円柱の伸びる方向(Z軸方向)から見て、D貫通孔24s(24s1、24s2、24s3)、E貫通孔24t(24t1、24t2、24t3)、F貫通孔24u(24u1、24u2、24u3)が角度α2毎に形成されている。角度α2は、例えば35度、40度等である。角度α1と角度α2とは互いに角度が異なっていればよく、角度の大小は関係ない。さらD貫通孔24sとE貫通孔24tとは高さ方向にピッチP1で形成され、E貫通孔24tとF貫通孔24uとは高さ方向にピッチP1で形成され、D貫通孔24sとF貫通孔24uとは高さ方向にピッチP1で形成されている。またD貫通孔24sとE貫通孔24tとF貫通孔24uとのそれぞれの孔径は同じである。なお、各貫通孔はそれぞれ3種類用意された例であるが、2種類、4種類、5種類等であっても良い。
【0037】
図6(D)は、第1調整体22と第2調整体24とを調整ピンPIで留めた状態を示した図であり、第1調整体22を点線で、第2調整体24を一点鎖線で示している。A貫通孔22r、B貫通孔22p又はC貫通孔22qのいずれかと、D貫通孔24s、E貫通孔24t又はF貫通孔24uのいずれかとが、調整ピンPIで留められる。調整ピンPIの抜き差しで、特別な工具を用いることなく、反転ディスクの角度及び高さを容易に調整できる。
【0038】
ここで貫通孔の組み合わせについて説明する。以下の説明では、角度α1が例えば30度で、角度α2が例えば40度の場合で、
図6(B)及び(C)に示された通り、第1調整体22にA貫通孔22rとB貫通孔22pとC貫通孔22qとが用意され、D貫通孔24sとE貫通孔24tとF貫通孔24uとが用意されている例である。そして各貫通孔は高さ方向に異なる貫通孔が3つ用意されている。
【0039】
Z軸方向から見て、A貫通孔22rとD貫通孔24sとにピンPIが入っている場合の第1調整体22と第2調整体24との回転角を0度とする。この回転角0度で高さを変更する場合、A貫通孔22r(22r1、22r2、22r3)とD貫通孔24s(24s1、24s2、24s3)とで、5つの高さを調整することができる。
【0040】
B貫通孔22pとD貫通孔24sとにピンPIが入っている場合、第1調整体22と第2調整体24との回転角30度となり、B貫通孔22p(22p1、22p2、22p3)とD貫通孔24s(24s1、24s2、24s3)とで、5つの高さを調整することができる。
【0041】
同様に、C貫通孔22qとD貫通孔24sとにピンPIが入っている場合、第1調整体22と第2調整体24との回転角60度となり、C貫通孔22q(22q1、22q2、22q3)とD貫通孔24s(24s1、24s2、24s3)とで、5つの高さを調整することができる。
【0042】
A貫通孔22rとE貫通孔24tとにピンPIが入っている場合は、第1調整体22と第2調整体24との回転角40度となり、5つの高さを調整できる。他の組み合わせは説明を割愛するが、第1調整体22と第2調整体24との回転角を9種類用意でき、高さ方向の組み合わせが、5種類用意できる。
【0043】
以上、反転ディスク20は、第1調整体22及び第2調整体24で、高さと角度を多段的に調整されるため、トラクタTRの車輪痕を土寄せして均すことができる。
【0044】
<溝成形部の作物残渣及び粘性土の除去>
図7(A)は、溝成形部40と播種部50の一部を示した側面図であり、
図7(B)は、溝成形部40の一部を示した正面図である。溝成形部40は、例えば、作溝ディスク41、スクレーパ43、阻止部44、ドラム部47及びホルダ48とを備える。
【0045】
図7(B)に示されるように、作溝ディスク41は、外周面41Pが平面となったディスクである。溝成形部40がトラクタTRによって圃場をけん引されると、作溝ディスク41は、播種畝RIとの間の摩擦力で回転する。広く使用されている作溝ディスクは、外周面が刃状に尖っているが、摩擦力で回転しやすいように本実施形態の作溝ディスク41は、外周面41Pが平面である。作溝ディスク41は、回転しながら進行方向に移動し、播種畝RIの土を切り開いて播種畝RIの天面に播種溝GVを成形する(
図3(B)(C)を参照)。作溝ディスク41は、例えば鋼鉄、ステンレス等で構成されている。
【0046】
スクレーパ43は、阻止部44に交換可能なようにボルトで取り付けられ、作溝ディスク41の側面に近接して配置される。スクレーパ43は、例えば鋼鉄、ステンレスなどの金属で構成されている。スクレーパ43は、特に高水分状態の土壌の粘性土及び作物残渣が作溝ディスク41に付着した場合に、作溝ディスク41からと粘性土及び作物残渣等の進入を防止する。粘性土及び作物残渣によって、スクレーパ43が曲がらないように高剛性の材料で構成されることが好ましい。
【0047】
スクレーパ43の先端部43Fは、作溝ディスク41の外周側の側面に近接して設けられている。作溝ディスク41の側面に近接した位置とは、例えば、作溝ディスク41からの距離がわずかな隙間(例えば0.1mm)から7mm以内の位置である。また
図7(A)で示されるように、スクレーパ43の先端部43F(グレー領域)は、作溝ディスク41の下端(0度とする)から進行方向後方にγ角度(例えば約20-35度)の位置からε角度(例えば40度から70度)までを覆うように配置されることが好ましい。ディスクに土が付くことで、ディスクの回転は悪くなるが、スクレーパをディスクの後部かつ外周部に設置することにより、土から得られる回転力の減少を防ぎながら、粘性土及び作物残渣を取り除き、再び作溝ディスク41に付着しないようにするためである。本実施形態のスクレーパ43は、作溝ディスク41の一側面のみに設けられているが、作溝ディスク41の両側面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0048】
阻止部44は、播種管51の底面に設けられ、播種管51に対する土の進入を阻止する。阻止部44は、播種管51を挟むように2枚の平板が並べられて配置されている。種子は、種子容器53から伸びる播種管51の下端種子容器53の底部から播種管51を通り播種口52から排出され、播種畝RIの天面に播種溝GVに落ちる。
【0049】
ドラム部47は、作溝ディスク41の左右両側方において、作溝ディスク41と同軸に設けられている。ドラム部47は、作溝ディスク41の側方に延出して作溝ディスク41の作溝深さを決定付ける円柱状の部材である。溝成形部40によって種子を直播する際に、ドラム部47は、畝Rの天面上を走行する。このため、作溝ディスク41の作溝深さは、作溝ディスク41の径とドラム部47の径の差、及び作溝ディスクを押し付けるバネ(図示されていない)の強さに基づいて変動する。
【0050】
ホルダ48は、作溝ディスク41及びドラム部47の回転軸の後方に配置されている。ホルダ48は、前方が開口するコ字形状をなす。ホルダ48の開口部分にドラム部47が挟み込まれている。
【0051】
覆土鎮圧器60は、播種管51の後方に配置される。覆土鎮圧器60は、作溝ディスク41が成形した播種溝GVに対して、播種畝RIの天面を鎮圧する。覆土鎮圧器60が播種溝GV内にある種子を土に密接させるとともに、土を加圧して播種溝GVの開口の幅を縮めさせる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上、本発明を実施するための畝成形播種機を説明したが、本発明はこれら実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0053】
100…畝成形播種機
10…入力軸、 11…伝動部、 12…伝動軸、 13…伝動ケース 14…駆動軸
20…反転ディスク、 22…第1調整体杭部、 24…第2調整体
30…畝成形部、 32(32A、32B)…多角錐台の形状のディスク、
321…台形片 323…上底、 325…下底
34…天面成形部、 36…底面形成部
40…溝成形部、 41…作溝ディスク、 41P…作溝ディスクの外周面
43…スクライバー、 43F…スクライバー先端部
44…阻止部、 47…ドラム部、 48…ホルダ
50…播種部、 51…播種管、 52…播種、 53…種子容器
PI…調整ピン、 TR…トラクタ RI…播種畝、GV…播種溝