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特開2024-124643回転電機保護リングおよびその製造方法並びに回転電機
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  • 特開-回転電機保護リングおよびその製造方法並びに回転電機 図1
  • 特開-回転電機保護リングおよびその製造方法並びに回転電機 図2
  • 特開-回転電機保護リングおよびその製造方法並びに回転電機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124643
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】回転電機保護リングおよびその製造方法並びに回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240906BHJP
   B29C 70/32 20060101ALI20240906BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240906BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02K1/278
B29C70/32
H02K15/03 Z
H02K15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032462
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細川 直史
(72)【発明者】
【氏名】高岩 玲生
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐典
(72)【発明者】
【氏名】末永 和真
(72)【発明者】
【氏名】松谷 浩明
【テーマコード(参考)】
4F205
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
4F205AA28
4F205AA29
4F205AA32
4F205AA34
4F205AA40
4F205AC03
4F205AD16
4F205AD18
4F205AG13
4F205AH33
4F205HA02
4F205HA23
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HF05
4F205HL02
4F205HM13
4F205HT22
4F205HT26
5H615BB14
5H615PP02
5H615RR02
5H615SS11
5H615SS13
5H615SS18
5H615TT23
5H615TT32
5H615TT39
5H622CA02
5H622CA07
5H622PP03
5H622PP18
(57)【要約】
【課題】
本発明は、回転電機における回転子の外側に巻き回し成形される繊維強化複合材料から構成される回転電機保護リングについて、成形中における強化繊維の応力緩和を防ぐことで、回転電気の動作時に生じる回転電機保護リングの変位を抑制し、ひいては回転電機の出力密度の向上を可能にする、回転電機保護リングおよび、かかる回転電機保護リングの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、環状に複数回巻き回されつつ、少なくとも一部の領域の層間が溶着され、円筒状の積層体として成形されてなる、回転電機保護リングであって、
少なくとも前記積層体の最外層における巻き終わり端部が、反応性硬化樹脂によって被覆されている、回転電機保護リング。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、環状に複数回巻き回されつつ、少なくとも一部の領域の層間が溶着され、円筒状の積層体として成形されてなる、回転電機保護リングであって、
少なくとも前記積層体の最外層における巻き終わり端部が、反応性硬化樹脂によって被覆されている、回転電機保護リング。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状の材料である、請求項1に記載の回転電機保護リング。
【請求項3】
前記積層体の最外層の実質的に全域が、前記反応性硬化樹脂によって被覆されている、請求項1に記載の回転電機保護リング。
【請求項4】
前記反応性硬化樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が130℃以上であって300℃以下である、請求項1に記載の回転電機保護リング。
【請求項5】
前記反応性硬化樹脂に短繊維が含まれる、請求項1に記載の回転電機保護リング。
【請求項6】
熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料を、環状に複数回巻き回しつつ、少なくとも一部の領域の層間を溶着し、円筒状積層体とする、回転電機保護リングの製造方法であって、
前記積層体の最外層における巻き終わり端部を、反応性硬化樹脂によって被覆した後、前記反応性硬化樹脂を硬化させる、回転電機保護リングの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状の材料である、請求項6に記載の回転電機保護リングの製造方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の回転電機保護リングを用いた回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機や電動機等の回転電機の回転子の保護に使用可能な、回転電機保護リングに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回転電機の性能向上のために、回転電機の高速回転化が求められている。回転電機には、回転子の外周側に永久磁石を配置したSPM(Surface Permanent Magnet)型、回転子に永久磁石を埋没させて配置したIPM(Internal Permanent Magnet)型が挙げられるが、かかる回転電機を高速回転させた場合、遠心力により、外周に配置された永久磁石が回転子から脱落したり、回転子自体が破損したりする可能性がある。このような高速回転に伴う回転電機の破壊を抑制するために、特許文献1には、SPM型の回転電機において、回転部材の外周側に配置される永久磁石の、さらに外周面側を覆って装着されるリング状材料を形成するため、一方向に配列した複数の糸状の繊維が、樹脂により平らに束ねられるテープ状繊維束を、被覆筒として形成する技術に関し、上記樹脂は実質的には熱硬化性樹脂または常温硬化性樹脂であって、その巻き終わり端部を金属によって被覆することで、巻き終わり端部の剥離を抑制する、という手法が記載されている。
【0003】
上記リング状材料として、強度が高く、軽量である等の理由から、繊維強化複合材料が用いられており、特に、強化繊維として炭素繊維を用いた材料が好ましい素材として記載されている。
【0004】
特許文献2には、回転電機の回転子の回転軸の外周を樹脂と強化繊維からなる保持部材で補強する技術に関し、上記樹脂は実質的には熱硬化性樹脂であって、上記保持部材におけるテープ状繊維束の巻き終わり端部を反応性硬化樹脂で終端処理することにより、巻終端の剥離を抑制する、という手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/216257号公報
【特許文献2】特開2016-082773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明では、金属による端部被覆により巻き終わり端部の剥離を抑制するが、樹脂として、実質的には熱硬化性樹脂または常温硬化性樹脂を用いるため、未硬化樹脂の低い粘度を原因として強化繊維が応力緩和し、応力設計が実現できず、ひいては回転数が抑制されるという問題が生じる。
【0007】
特許文献2に記載の発明においては、金属による端部被覆により巻き終わり端部の剥離を抑制するが、実質的に熱硬化性樹脂を用いるため、加熱硬化時の樹脂粘度低下により、強化繊維が応力緩和し、応力設計が実現できず、ひいては回転数が抑制されるという問題が生じる。
【0008】
ここで、本発明では、かかる回転子の保護に用いられ得るリング状材料を、回転電機保護リングとする。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、回転電機における回転子の外側に巻き回し成形される繊維強化複合材料から構成される回転電機保護リングについて、動作時に生じる変位を抑制し、ひいては回転電機の出力密度の向上を可能にする、回転電機保護リングおよび、かかる回転電機保護リングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成からなる回転電機保護リングを見出し、本発明を完成させるに至った。
1.熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、環状に複数回巻き回されつつ、少なくとも一部の領域が溶着され、円筒状の積層体として成形されてなる、回転電機保護リングであって、
少なくとも前記積層体の最外層における巻き終わり端部が、反応性硬化樹脂によって被覆されている、回転電機保護リング。
2.前記熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状の材料である、上記1に記載の回転電機保護リング。
3.前記積層体の最外層の実質的に全域が、前記反応性硬化樹脂によって被覆されている、上記1または2に記載の回転電機保護リング。
4.前記反応性硬化樹脂は、Tgが130℃以上であって300℃以下である、上記1~3のいずれかに記載の回転電機保護リング。
5.前記反応性硬化樹脂に短繊維が含まれる、上記1~4のいずれかに記載の回転電機保護リング。
【0011】
また、本発明の回転電機保護リングの製造方法は、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料を、環状に複数回巻き回しつつ、少なくとも一部の領域の層間を溶着し、円筒状の積層体とする回転電機保護リングの製造方法であって、
前記積層体の最外層における巻き終わり端部を、反応性硬化樹脂によって被覆した後、前記反応性硬化樹脂を硬化させる、製造方法である。熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料としては、熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状の材料が好ましい。
【0012】
また、本発明の回転電機は、上記1~5のいずれかに記載の回転電機保護リングを用いたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転電機保護リングは、回転電機動作時のリングの変位が抑制されることから、回転電機の出力密度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る回転電機保護リングの斜視図
図2】本発明の実施形態に係る、回転電気保護リングの概略図であり、(a)(b)ともに、反応性硬化樹脂により最外層の一領域または全領域が被覆された状態の概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る、反応性硬化樹脂により最外層の全領域が被覆された回転電機保護リングの製造方法を、(a)、(b)および(c)のステップ順に模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、上記した本発明の回転電機保護リングの構成、および、回転電機保護リングの製造方法について説明する。
(回転電機保護リングの構成)
本発明の回転電機保護リングは、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、環状に複数回巻き回されて、円筒状の積層体として成形されたものである。熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料は、樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状の材料であってもよい。テープ状もしくはシート状の材料は、巻き始めから巻き終わりまで連続して巻き回されてもよく、複数回に分けて断続的に巻き回されてもよい。なお、本発明において、積層体とは、巻き回されて積み重ねられた材料が成形された後の態様を表すこともあり、材料を巻き回して積み重ね、成形する前の製造過程における態様を表すこともある。
【0016】
上記繊維強化複合材料に用いられる強化繊維は、特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが使用できる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる観点から、炭素繊維を用いることが好ましい。
【0017】
上記繊維強化複合材料に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂といった樹脂も用いることができる。これらの樹脂を2種類以上混合して用いても構わない。また、その質量の50%未満であれば、熱硬化性樹脂を含んでいてもよく、質量の50%超が熱可塑性樹脂であればよい。かかる熱硬化性樹脂の例としては、下記する被覆に用いられる熱硬化性樹脂と同じものが挙げられる。
【0018】
本発明における回転電機保護リングは、樹脂が強化繊維に含浸してなるテープ状もしくはシート状材料が、環状に複数回巻き回されてなる積層体によって構成されていることが好ましい。
【0019】
かかるテープ状もしくはシート状材料には、あらかじめ強化繊維に樹脂を含浸させたトウプレグやプリプレグ、スリットテープを用いても良い。
【0020】
テープ状もしくはシート状材料の幅は特に限定されないが、幅1mm~100mmのものを用いた場合、巻き回して積層体を構成することが容易となるため好ましい。
【0021】
本発明において、最外層における巻き終わり端部とは、テープ状もしくはシート状材料が巻き回されて構成された積層体における最外層の終端を指す。
【0022】
本発明の回転電機保護リングでは、積層体の巻き終わり端部が反応性硬化樹脂により被覆されており、巻き終わり端部の剥離が抑制される。かかる反応性硬化樹脂のうち、代表的なものは熱硬化性樹脂であるが、その樹脂種類は特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂といった樹脂が例示できる。これらの樹脂を2種類以上混合して用いても構わない。また、反応性硬化樹脂のガラス転移温度(Tg)は130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、一方で、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。これらの範囲のTgを下に外れる場合、回転電機の運用温度の設定に支障がでる可能性があり、上に外れる場合、成形温度が高くなり、磁石が減磁する可能性がある。反応性硬化樹脂は、その硬化剤と共に用いてもよい。また、硬化剤による硬化反応を促進する硬化促進剤と共に用いることも可能である。また、反応性硬化樹脂に、短繊維を混合して用いても構わない。このときの短繊維は特に限定されるものではなく、回転電機保護リングに用いる強化繊維と同じ種類であっても異なる種類であってもよく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが使用できる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる観点から、炭素繊維を用いることが好ましい。
【0023】
反応性硬化樹脂による被覆は、図2(a)に示されるように巻き終わり端部を含む領域が被覆されていれば良く、最外層の90%以上の領域が被覆されていても良く、図2(b)に示されるように最外層の実質的に全域が被覆されていても良い。巻き終わり端部の耐環境性(薬品、クリープ、等)が補強される範囲において、被覆厚みは薄い方が好ましい。
【0024】
本発明に係る回転電機保護リングにおいては、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料が、環状に複数回巻き回されつつ、少なくとも一部の領域が層間で溶着され、好ましくは全部の領域が層間で溶着され、円筒状の積層体が形成されており、張力を加えることなく溶着してもよいが、好ましくは張力を加えたまま溶着することで、成形中における強化繊維の応力緩和が抑制され、応力設計が実現される。また、反応性硬化樹脂が巻き終わり端部を被覆して保護することから、耐環境性が補強される(図1)。反応性硬化樹脂を被覆させる方法については、後述の通りである。さらに、上記積層体の最外層の実質的に全域に、反応性硬化樹脂による被覆が形成される態様においては、反応性硬化樹脂が巻き終わり端部を含む最外層を保護することから、耐環境性が補強される(図2)。
【0025】
本発明の回転電機保護リングは、内径が1cm~25cmであることが剥離抑制効果を一層向上できるため好ましい。また、リングの厚みが0.1mm~5.0mmであることが剥離抑制効果を一層向上できるため好ましい。回転電機保護リングの内径と厚みが上記範囲であった場合、回転電機保護リングの変位抑制効果が高まり、回転電機の出力密度をより一層向上させることができる。
(回転電機保護リングの成形法)
本発明において、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料による積層体の形成は、円柱状材料に巻き回して行われる。
【0026】
前記円柱状材料としては、マンドレルのような芯材を用いても良いし、回転電機の回転子など、最終的に締め付けを行う部材を用いても良い。
【0027】
前記積層体の形成は、熱可塑性樹脂と強化繊維を含む材料を、円柱状材料の周方向を基準として、0°方向に巻き回す、つまりは円柱状材料の同一高さ位置にて重ねて巻き回して行っても良いし、上記基準方向から角度を変えてらせん状に巻き回して行っても良い。
【0028】
本発明では、積層体を構成する材料として熱可塑性樹脂を用いるが、この場合、前記積層時に、巻き回すと同時にレーザーなどで熱を加え溶着させていくことで、積層体の構成と同時に回転電機保護リングを得ることができる。
【0029】
積層体の巻き終わり端部を反応性硬化樹脂により被覆する方法として、自動式のスプレーガンやディスペンサーを用いて、液状の樹脂を巻き終わり端部に対し覆うように塗布することも可能であり、自動式の貼付機を用いて、フィルム状の樹脂を巻き終わり端部に対し覆うように付着させることも可能である。被覆した樹脂は、加熱や電磁波照射などのエネルギー付与や、空気中の水分などとの化学反応を用いることで、硬化させることが出来る。
【0030】
積層体の最外層の実質的に全域を反応性硬化樹脂により被覆する手法として、図3(a)に示されるように、一回り大きな型に積層体を入れて、図3(b)に示すとおり液状の樹脂を注入して、図3(c)に示す回転電機保護リングとして得ることも可能であり、フィルム状の樹脂を最外層に対し覆うように巻き回して付着させることも可能である。被覆した樹脂は、加熱や電磁波照射などのエネルギー付与や、空気中の水分などとの化学反応を用いることで、硬化させることが出来る。積層体の内部のコアが磁性体の場合、前記型は非磁性体が好ましい。
【実施例0031】
以下に本発明の回転電機保護リングの具体的な成形法の実施例を説明する。
【0032】
積層体を形成するための円柱状材料として、直径15cm、高さ20mmの金属製マンドレルを用いた。また、積層体を構成するテープ状材料として、炭素繊維を目付が145g/mとなるように一方向に引き揃えられた強化繊維となし、これに低融点ポリアリールエーテルケトン樹脂を含浸して、樹脂含有率が34質量%であるシート状の一方向プリプレグ(Toray Advanced Composites製、TC1225)として、幅方向に7mm幅でカットしてテープ状にしたものを用意した。
【0033】
前記マンドレル上に、カットしたテープ状プリプレグを、繊維の長手方向がマンドレルの軸方向と直交する向きに貼り付けた後、張力をかけながら厚みが1mmになるまでらせん状に巻き回しつつ溶着させて積層体を構成した。
【0034】
構成した積層体の最外層における巻き終わり端部に、エポキシ樹脂組成物を塗布した。塗布領域は、図1で示されるように、リング周方向においては巻き終わり端部の外縁を原点に巻き回し方向を正とし±1cm以上、リング軸方向においては巻き終わり端部の外縁を原点にリングの外縁方向を正とし+1cm以上、であった。塗布により巻き終わり端部をエポキシ樹脂組成物にて被覆した後に、積層体をバッギングフイルムで覆い、オートクレーブを用いて加圧、加熱硬化することで、回転電機保護リングを成形した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の回転電機保護リングは、発電機や電動機等の回転電機の回転子の外側に装着し、磁石が含まれる回転子を、回転電機が動作する際の遠心力による破壊から保護する目的に使用可能である。本発明により、かかる回転電機保護リングおよび回転子から構成される回転電機をも提供可能である。また、エネルギー貯蔵を目的としたフライホイールに対しても同様に、遠心力による破壊から保護する目的に使用可能である。
【0036】
例えば、上記したSPM型の電動機に好ましく適用することができ、動作時に遠心力による永久磁石の回転子からの脱落が抑制されるため、回転電機を高速で回転させることが可能となる。また、上記したIPM型の電動機や電磁石を用いる巻線式、磁気抵抗を用いるリラクタンス式、磁石を用いない誘導式の電動機などに好ましく適用することもでき、動作時に遠心力による電磁鋼板などの破壊が抑制されるため、回転電機を高速で回転させることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 積層体
2 巻き終わり端部
3 巻き回し方向
4 反応性硬化樹脂による被覆
5 コア
6 型
7 キャビティ
図1
図2
図3