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特開2024-124649不良要因特定装置、不良要因特定方法、及び不良要因特定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124649
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】不良要因特定装置、不良要因特定方法、及び不良要因特定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240906BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240906BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06N20/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032473
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】大木 麻里衣
(72)【発明者】
【氏名】椛島 基嵩
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA27
3C100AA56
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB11
3C100BB19
3C100BB27
(57)【要約】
【課題】製品の生産における傾向が判明した不良要因を除外して潜在的な不良要因を抽出可能な不良要因特定装置、不良要因特定方法、及び不良要因特定プログラムを提供する。
【解決手段】不良要因特定装置20は、生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割部21と、第一データ群を用いて学習した分類モデル20mによって第二データ群の良否を予測する予測部22と、分類モデル20mの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出部23と、第一データ群及び第二データ群と同じ次元を持つ寄与度と、良否判定とを含む第一データ群及び第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮部24と、次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリング部25と、クラスタリング部によって得られた各クラスタにおいて、寄与度が最大の項目を各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出部26とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割部と、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測部と、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出部と、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮部と、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリング部と、
前記クラスタリング部によって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出部と
を備える、不良要因特定装置。
【請求項2】
前記抽出部によって抽出された前記不良要因に関する不良データを前記第一データ群及び前記第二データ群から除外する除外部をさらに備え、
前記圧縮部は、前記除外部によって前記不良データが除外された前記第一データ群及び前記第二データ群に対して再び次元圧縮を行い、
前記クラスタリング部は、前記圧縮部によって再び次元圧縮された前記圧縮データに再度のクラスタリングを行い、
前記抽出部は、前記再度のクラスタリングによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの前記不良要因としてそれぞれ再び抽出する、請求項1に記載の不良要因特定装置。
【請求項3】
前記除外部によって除外される前記不良データが全不良データに対して予め定められた所定割合以下となるまで、
前記除外部による除外、前記算出部による算出、前記圧縮部による次元圧縮、前記クラスタリング部によるクラスタリング、及び前記抽出部による抽出を繰り返す、請求項2に記載の不良要因特定装置。
【請求項4】
前記算出部によって前記寄与度が最初に算出されてから予め定められた所定時間が経過するまで、
前記除外部による除外、前記圧縮部による次元圧縮、前記クラスタリング部によるクラスタリング、及び前記抽出部による抽出を繰り返す、請求項2又は請求項3に記載の不良要因特定装置。
【請求項5】
前記第一データ群は訓練データであり、前記第二データ群はテストデータである、請求項2又は請求項3に記載の不良要因特定装置。
【請求項6】
前記生産工程情報は、生産装置の駆動情報、製品の検査情報、前記製品の製造時に計測した寸法、前記製品の組立に使用した装置、部品、若しくは治具の識別子、前記装置の稼働設定、稼働率、若しくは状態を含む製造関連データ、組立時間、又は作業者識別情報の少なくとも1つを含む、請求項2又は請求項3に記載の不良要因特定装置。
【請求項7】
不良要因特定をコンピュータに実行させる不良要因特定プログラムであって、
生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、
前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップと
を含む、不良要因特定プログラム。
【請求項8】
生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、
前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップと
を含む、不良要因特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製品の生産における不良要因特定装置などに関し、特に、傾向が判明した不良要因を除外して潜在的な不良要因を抽出可能な不良要因特定装置、不良要因特定方法、及び不良要因特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の不良要因の分析表示装置では、演算装置は、製品の生産データと検査データを製品毎に集計した代表値を元に不良発生の不良要因の分析を行う。表示装置は、分析結果から抽出されたデータ項目について、代表値のもとになった生産データ及び検査データを、分析対象となった複数の代表値の中から、統計手法による演算を用いて選択し、表示する。
【0003】
特許文献2に記載の不良要因抽出方法では、検査工程の検査結果を表す品質情報と各製造工程の製造パラメータである加工情報とを関連付けて紐付けデータとする。所定の分析を行って、複数の加工情報に不良要因として推定される順位を付ける。次に、順位付けの結果を表示画面に表示する。排除すべき加工情報が指定されたとき、指定された加工情報を排除して残りの紐付けデータを得る。次に、残りの紐付けデータを用いて、再び上記分析を行って、残りの複数の加工情報に不良要因として推定される順位を付ける。次に、その再順位付けの結果を表示画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4739447号公報
【特許文献2】特許第5008525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の不良解析手法は、突発不良であるか傾向不良であるかを確認することができなかった。また、傾向不良の規模が小さい不良について抽出することが困難であった。したがって、歩留まりを向上させる目的に対して都度の不良改善が主要な方法として挙げられていた。しかし、歩留まりが高い場合は個々の不良規模が小さい。そのため規模が大きくならないように不良予防を行う必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の不良要因の分析表示装置では、生産プロセス全体の詳細データの計算が膨大であることから、データセットを製品ごとに統計的処理を行った代表値を演算して情報量を落としている。詳細データとは、製造プロセスから検査プロセスまでの各種センサーによる計測値を短いサンプリング間隔で記録したデータセットである。各製造プロセスの数値は一定の尺度によって成り立っていない。したがって、製品ごとの代表値は各値の尺度を打ち消しており、本来の情報量を保持できていない。
【0007】
特許文献2に記載の不良要因抽出方法では、不良要因として推定されるプロセスデータを排除して再解析を行うにあたり、全体に対するプロセスデータの分布が把握できていない。重回帰分析の影響度が高い項目が、分布上良品と不良品で区別できる場合は排除しても問題ない。しかし、不良品が良品に近しい場合においては全体の分布を確認した上で、排除を行うか決定する必要がある。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製品の生産における傾向が判明した不良要因を除外して潜在的な不良要因を抽出可能な不良要因特定装置、不良要因特定方法、及び不良要因特定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の例示的な不良要因特定装置は、生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割部と、前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測部と、前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出部と、前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮部と、次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリング部と、前記クラスタリング部によって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出部とを備える。
【0010】
本開示の例示的な不良要因特定プログラムは、不良要因特定をコンピュータに実行させる不良要因特定プログラムであって、生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップとを含む。
【0011】
本開示の例示的な不良要因特定方法は、生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
例示的な本開示によれば、製品の生産における傾向が判明した不良要因を除外して潜在的な不良要因を抽出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る不良要因特定システム100の概略構成を示すブロック図である。
図2】不良要因特定システム100による主要処理を示すフローチャートである。
図3】不良要因特定システム100による不良要因の特定例を示す説明図である。
図4】寄与度が最大の項目が治具番号である場合を例示する説明表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0015】
1.1 不良要因特定システム100の構成
図1は本開示の一実施形態に係る不良要因特定システム100の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
この図1に示すように、不良要因特定システム100は、製品の生産を行うための様々な工程を含む生産工程10と、この生産工程10からの入力を目的変数及び説明変数とする分類モデル20mを有する不良要因特定装置20とを備えている。分類モデル20mは、生産工程10から入力される目的変数及び説明変数によって機械学習を行う。
【0017】
機械学習は「教師あり学習」、「教師なし学習」、及び「強化学習」の3種類に分類されるが、これらのうち「教師あり学習」は、過去のデータを教師としてデータの分析を行う。つまり、正解が予め判明している過去データを分析して正解を導き出すモデルを作成し、そのモデルを使って予測を行うのである。本実施形態の分類モデル20mでは「教師あり学習」を行う。
【0018】
目的変数とは分析の結果として導き出したいデータであり、説明変数とは目的変数に影響を与えるであろうデータである。本実施形態の分類モデル20mに入力される生産工程情報の具体例としては、生産装置の駆動情報、製品の検査情報、前記製品の製造時に計測した寸法、前記製品の組立に使用した装置、部品、若しくは治具の識別子、前記装置の稼働設定、稼働率、若しくは状態を含む製造関連データ、組立時間、又は作業者識別情報が挙げられるが、これらに限らない。例えば寸法を不良と紐付けることで、不良への寄与度が高い項目に絞り込むことが可能となる。
【0019】
また、不良要因特定装置20は、分割部21と、予測部22と、算出部23と、次元圧縮部24と、クラスタリング部25と、抽出部26と、除外部27とを備えている。この不良要因特定装置20は、例えば不良要因特定プログラムをコンピュータに実行させることで具現化してもよい。
【0020】
分割部21は、生産工程10から入力される生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する。具体的には、第一データ群は訓練データであり、第二データ群はテストデータである。このように、訓練データを用いて学習した分類モデル20mによってテストデータの良否を予測することによって、予測部22による予測がより的確になる。
【0021】
予測部22は、第一データ群(訓練データ)を用いて学習した分類モデル20mによって第二データ群(テストデータ)の良否を予測する。学習の方法としては、ロジスティック回帰分析(Logistic Regression Analysis)、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、ランダムフォレスト(Random Forest)、勾配ブースティング木(GBDT:Gradient Boosting Decision Tree)、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0022】
算出部23は、分類モデル20mの予測において重要視された項目の寄与度を算出する。この算出に用いる方法としては、相関係数、シャプ(SHAP:SHapley Additive exPlanations)解析、平均正解率減少量(MDA:Mean Decrease Accuracy)、平均減少ジニ(MDG:Mean Decrease Gini)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0023】
次元圧縮部24は、第一データ群及び第二データ群と同じ次元を持つ寄与度と、良否判定とを含む第一データ群及び第二データ群に対して、次元圧縮を行う。この次元圧縮の方法としては、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)、独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)、t分布型確率的近傍埋め込み(t-SNE:t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)、均一多様体近似と射影(UMAP:Uniform Manifold Approximation and Projection)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0024】
クラスタリング部25は、次元圧縮部24によって次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行う。このクラスタリングの方法としては、k平均法(k-means clustering)、密度準拠クラスタリング(DBSCAN:Density-Based Spatial clustering of applications with Noise)、階層的DBSCAN、平均シフト(Mean shift)、混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0025】
抽出部26は、クラスタリング部25によって得られた各クラスタにおいて、寄与度が最大の項目を各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する。このように、分類モデル20mへの寄与度で尺度を統一して次元圧縮を行うことで、より確率の高い不良要因抽出を実現できる。
【0026】
除外部27は、抽出部26によって抽出された不良要因に関する不良データを第一データ群及び第二データ群から除外する。このように、抽出部26によって抽出された不良要因に関する不良データが除外部27によって除外された第一データ群及び第二データ群が、算出部23に戻される。これにより、算出部23及びそれ以降の各部による処理が繰り返される。すなわち、算出部23による算出後、次元圧縮部24によって再び次元圧縮が行われる。次元圧縮部24によって再び次元圧縮された圧縮データは、クラスタリング部25によって再度のクラスタリングが行われる。この再度のクラスタリングによって得られた各クラスタにおいて、寄与度が最大の項目が各クラスタの不良要因として抽出部26によって再びそれぞれ抽出される。
【0027】
このように、主要な不良要因に係る不良品データを除外することで、小規模の不良要因を発掘可能となる。これにより、次に起こり得る不良の予防措置を行えるので、最終的に歩留まり及び製品の品質を向上させることができる。
【0028】
1.2 不良要因特定システム100による主要処理
図2は不良要因特定システム100による主要処理を示すフローチャートである。
【0029】
この図2に示すように、まずステップS1では、分割部21によって、生産工程10から入力される生産工程情報に基づく多次元データの欠損値処理を行って、第一データ群(訓練データ)と第二データ群(テストデータ)とに分割する。なお、このステップS1が本開示の「分割ステップ」に対応する。
【0030】
ステップS2では、第一データ群を用いて分類モデル20mの学習を行う。
【0031】
ステップS3では、第一データ群を用いて学習した分類モデル20mによって第二データ群の良否を予測部22によって予測する。なお、このステップS3が本開示の「予測ステップ」に対応する。
【0032】
ステップS4では、ステップS5以降のループ処理開始からの経過時間を測定するためのタイマーをスタートさせる。
【0033】
ステップS5では、分類モデル20mの予測において重要視された項目の寄与度を算出部23によって算出する。なお、このステップS5が本開示の「算出ステップ」に対応する。
【0034】
ステップS6では、第一データ群及び第二データ群と同じ次元を持つ寄与度と、良否判定とを含む第一データ群及び第二データ群に対して、次元圧縮部24によって次元圧縮を行う。なお、このステップS6が本開示の「圧縮ステップ」に対応する。
【0035】
ステップS7では、次元圧縮部24によって次元圧縮された圧縮データに対して、クラスタリング部25によってクラスタリングを行う。なお、このステップS7が本開示の「クラスタリングステップ」に対応する。
【0036】
ステップS8では、ステップS7によって得られた各クラスタにおいて、寄与度が最大の項目を各クラスタの不良要因として抽出部26によってそれぞれ抽出して確認する。なお、このステップS8が本開示の「抽出ステップ」に対応する。
【0037】
ステップS9では、ステップS8で確認した寄与度が最大の項目に該当する不良データの全不良データに対する割合が、予め定められた所定割合以下、具体的には例えば5%以下かどうかを判定する。所定割合以下であれば一連の処理を終了し、そうでなければステップS10へ進む。このように、主要な不良要因に係る不良品データの除外のための繰り返し処理に、全不良データに対する割合による終了条件を設定することで、現実的に有効な不良予防措置を行うことができる。
【0038】
ステップS10では、ステップS4でスタートさせたタイマーの計時値を確認し、算出部23によって寄与度が最初に算出されてから予め定められた所定時間、具体的には例えば24時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が既に経過していれば一連の処理を終了し、そうでなければステップS11へ進む。このように、主要な不良要因に係る不良品データの除外のための繰り返し処理に、経過時間による終了条件を設定することで、現実的に有効な不良予防措置を行うことができる。
【0039】
ステップS11では、抽出部26によって抽出された寄与度が最大の項目の不良要因に関する不良データを第一データ群及び第二データ群から除外した後、ステップS5へ戻ってこのステップ以降の処理を繰り返す。
【0040】
1.3 不良要因特定システム100による不良要因の特定例
図3は不良要因特定システム100による不良要因の特定例を示す説明図である。図4は寄与度が最大の項目が治具番号である場合を例示する説明表である。
【0041】
この図3の左側に示すように、最初は不良要因特定の対象は全不良データである。ここで、円グラフは良品(OK品)及び不良品(NG品)それぞれの割合を示しており、その右の積み上げグラフは不良要因を寄与度の高い項目ほど上になるように積み上げている。
【0042】
不良要因特定システム100によって寄与度が最大の項目を除外すると、図3の中央に示すようなグラフになる。さらに、寄与度が2番目に大きい項目も除外すると、図3の右側に示すようなグラフになる。
【0043】
このように、例えば寄与度が大きい順に2項目の不良要因を除外することで、寄与度が3番目以下の項目だけが残るので、潜在的な不良要因の抽出が可能となる。なお、除外する項目数は2項目とは限らない。
【0044】
1.4 品質管理に関する4M情報に基づく具体例
不良要因として、4M情報に基づく具体例について記載する。4M情報とは、品質管理に関連する情報であり、次の4項目を含む。
・Man(人)
・Machine(機械)
・Method(方法)
・Material(材料)
【0045】
例えば、本実施形態では、作業者が不良要因の場合は、Man(人)の情報に該当する。製造装置や治具などの装置系が不良要因の場合は、Machineの情報に該当する。部品など組み立てが不良要因の場合は、Methodの情報に該当する。製品の部材などが不良要因の場合は、Materialの情報に該当する。
【0046】
1.4.1 Machineの一例
例えば、寄与率が最大の要因が治具の場合、最も不良品と紐づいている治具を探索し、その治具が使われている不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。図中では治具番号2が不良品と最も紐づいているため、治具番号2かつ不良品のデータ(シリアルナンバー02A,03A)を除外して2回目の寄与度が算出される。ただし、不良要因は1つとは限らず、複合要因もあり得る。例えば、治具番号が2で特性検査結果が3以下のデータ(シリアルナンバー03A)を除外して2回目の寄与度を算出してもよい。
【0047】
製造装置のステーション(製造ライン毎に同じものが配置されているときは「号機」で識別)のうち1台に問題がある場合(例:1号機の寄与率が最大の場合)、問題のある1台に関する不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。
【0048】
1.4.2 Material及びMethodの一例
製品寸法を分布で見たときに閾値以上(又は閾値以下)を不良とし、その不良が最大の寄与率の場合、閾値以上(又は閾値以下)の不良に関する不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。
【0049】
1.4.3 Materialの一例
寸法、液体の粘度、サプライヤ、母材など部品ロットによって異なる状態で、これらの要因が最大の寄与率の場合は、部品ロットに関する不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。なお、「寸法」などの単位で寄与率が算出されている場合は、こちらでもよい。
【0050】
1.4.4 Methodの一例
作業手順書が更新された場合、更新日時を境に生産工程情報が変化することがあり得る。そのため、特定の時間帯が不良の要因として寄与率が最も高い場合、その時間帯の不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。
【0051】
作業手順書の変更の例としては、レーザ溶接が「1点溶接」から「3点溶接」に変更されるなどが考えられる。
【0052】
1.4.5 Manの一例
作業者の習熟度、性格などがパラメータ化されていれば、そのパラメータに基づく寄与率を算出することが可能である。例えば、作業者の習熟度の不良要因が最も大きい場合は、作業者の習熟度に関する不良データを除外して2回目の寄与度が算出される。
【0053】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明した。ただし、上記実施形態は、本開示の例示にすぎず、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。実施形態の構成は、本開示の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、実施形態は、可能な範囲で組み合わせて実施されてもよい。
【0054】
なお、本開示は、以下のような構成を採用することも可能である。
【0055】
(1)生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割部と、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測部と、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出部と、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮部と、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリング部と、
前記クラスタリング部によって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出部と
を備える、不良要因特定装置。
【0056】
(2)前記抽出部によって抽出された前記不良要因に関する不良データを前記第一データ群及び前記第二データ群から除外する除外部をさらに備え、
前記圧縮部は、前記除外部によって前記不良データが除外された前記第一データ群及び前記第二データ群に対して再び次元圧縮を行い、
前記クラスタリング部は、前記圧縮部によって再び次元圧縮された前記圧縮データに再度のクラスタリングを行い、
前記抽出部は、前記再度のクラスタリングによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの前記不良要因としてそれぞれ再び抽出する、(1)に記載の不良要因特定装置。
【0057】
(3)前記除外部によって除外される前記不良データが全不良データに対して予め定められた所定割合以下となるまで、
前記除外部による除外、前記算出部による算出、前記圧縮部による次元圧縮、前記クラスタリング部によるクラスタリング、及び前記抽出部による抽出を繰り返す、(2)に記載の不良要因特定装置。
【0058】
(4)前記算出部によって前記寄与度が最初に算出されてから予め定められた所定時間が経過するまで、
前記除外部による除外、前記圧縮部による次元圧縮、前記クラスタリング部によるクラスタリング、及び前記抽出部による抽出を繰り返す、(2)又は(3)に記載の不良要因特定装置。
【0059】
(5)前記第一データ群は訓練データであり、前記第二データ群はテストデータである、(2)~(4)のいずれか1つに記載の不良要因特定装置。
【0060】
(6)前記生産工程情報は、生産装置の駆動情報、製品の検査情報、前記製品の製造時に計測した寸法、前記製品の組立に使用した装置、部品、若しくは治具の識別子、前記装置の稼働設定、稼働率、若しくは状態を含む製造関連データ、組立時間、又は作業者識別情報の少なくとも1つを含む、(2)~(5)のいずれか1つに記載の不良要因特定装置。
【0061】
(7)不良要因特定をコンピュータに実行させる不良要因特定プログラムであって、
生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、
前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップと
を含む、不良要因特定プログラム。
【0062】
(8)生産工程情報に基づく多次元データを第一データ群と第二データ群とに分割する分割ステップと、
前記第一データ群を用いて学習した分類モデルによって前記第二データ群の良否を予測する予測ステップと、
前記分類モデルの予測で重要視された項目の寄与度を算出する算出ステップと、
前記第一データ群及び前記第二データ群と同じ次元を持つ前記寄与度と、良否判定とを含む前記第一データ群及び前記第二データ群に対して、次元圧縮を行う圧縮ステップと、
次元圧縮された圧縮データのクラスタリングを行うクラスタリングステップと、
前記クラスタリングステップによって得られた各クラスタにおいて、前記寄与度が最大の項目を前記各クラスタの不良要因としてそれぞれ抽出する抽出ステップと
を含む、不良要因特定方法。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、製品の生産などにおける様々な不良要因分析を行うシステムや装置などに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 不良要因特定システム
10 生産工程
20 不良要因特定装置
20m 分類モデル
21 分割部
22 予測部
23 算出部
24 次元圧縮部
25 クラスタリング部
26 抽出部
27 除外部
図1
図2
図3
図4