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特開2024-124658車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124658
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20240906BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240906BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032482
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤城 遼
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BA49
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB07Z
3D241DB32Z
3D241DC28Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC39Z
3D241DD12Z
3D241DD13Z
(57)【要約】
【課題】導流レーンマーク等の車線の幅を狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている道路を自車両が走行しているときに自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置10は、自車両100が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより自車両を車線内で走行させる車線維持制御を実行する。車両制御装置は、自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、目標位置を物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定する。又、車両制御装置は、車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、所定量を小さくする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行する制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定するように構成されている、
車両制御装置において、
前記制御装置は、前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくするように構成されている、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記車線の幅が狭いほど前記所定量を小さくするように構成されている、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記自車両の走行速度が速いほど前記所定量を小さくするように構成されている、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記自車両の走行速度に対する前記車線の幅の比が小さいほど前記所定量を小さくするように構成されている、
車両制御装置。
【請求項5】
自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行する車両制御方法であって、
前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定する工程を具備する車両制御方法において、
前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくする工程を具備する車両制御方法。
【請求項6】
自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行する車両制御プログラムであって、
前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定するように構成されている車両制御プログラムにおいて、
前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくするように構成されている車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が車線の中央を走行するように自車両を自動で操舵する車線維持制御を実行する車両制御装置が知られている。又、自車両の横を並走するトラック等の車両がある場合、自車両がその車両から離れた位置を走行するように車線維持制御を実行する車両制御装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-80220号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、車両の円滑な走行を促すための導流レーンマークが設けられている道路がある。導流レーンマークは、左右の白線等の区画線の内側の路面にペイントされている。導流レーンマークが設けられていると、運転者には、車線の幅が狭くなったように感じされる。従って、導流レーンマークが設けられている場合において、自車両の横を並走する車両があって、自車両がその車両から離れた位置を走行するように車線維持制御が実行されると、運転者は、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように感じてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、導流レーンマーク等の車線の幅を狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている道路を自車両が走行しているときに自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラムを提供することにある。
【0006】
本発明に係る車両制御装置は、自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行する制御装置を備えている。前記制御装置は、前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定するように構成されている。更に、前記制御装置は、前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくするように構成されている。
【0007】
車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合において、自車両の横に物標が存在するときに、自車両がその物標から離れた位置を走行するように車線維持制御が実行されると、運転者は、自車両が車線の片側に寄って走行しているように感じてしまう可能性がある。
【0008】
本発明に係る車両制御装置によれば、車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、所定量を小さくする。このため、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる。
【0009】
尚、本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記車線の幅が狭いほど前記所定量を小さくするように構成され得る。
【0010】
本発明に係る車両制御装置によれば、車線の幅を考慮して所定量が小さくされる。このため、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることをより確実に抑制することができる。
【0011】
又、本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記自車両の走行速度が速いほど前記所定量を小さくするように構成され得る。
【0012】
本発明に係る車両制御装置によれば、自車両の走行速度を考慮して所定量が小さくされる。このため、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることをより確実に抑制することができる。
【0013】
本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記車線に前記路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記自車両の走行速度に対する前記車線の幅の比が小さいほど前記所定量を小さくするように構成され得る。
【0014】
本発明に係る車両制御装置によれば、車線の幅及び自車両の走行速度を考慮して所定量が小さくされる。このため、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることをより確実に抑制することができる。
【0015】
本発明に係る車両制御方法は、自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行する方法である。本発明に係る車両制御方法は、前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定する工程を具備している。更に、本発明に係る車両制御方法は、前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくする工程を具備している。
【0016】
本発明に係る車両制御方法によれば、先に述べた理由と同じ理由で、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる。
【0017】
又、本発明に係る車両制御プログラムは、自車両が車線内の幅方向における目標位置を維持して走行するように当該自車両に対する操舵を自動で制御することにより前記自車両を前記車線内で走行させる車線維持制御を実行するプログラムである。本発明に係る車両制御プログラムは、前記自車両の横に物標が存在する場合、当該物標が存在しない場合に比べ、前記目標位置を前記物標から所定量、離れた位置にオフセットさせた位置に設定するように構成されている。更に、本発明に係る車両制御プログラムは、前記車線に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイントが設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、前記所定量を小さくするように構成されている。
【0018】
本発明に係る車両制御プログラムによれば、先に述べた理由と同じ理由で、自車両が車線の片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる。
【0019】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置を示した図である。
図2図2は、自車両が車線維持制御により走行されている場面を示した図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図4図4は、壁が設けられている道路を自車両が車線維持制御により走行されている場面を示した図である。
図5図5は、壁及び導流レーンマークが設けられている道路を自車両が車線維持制御により走行されている場面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両制御装置、車両制御方法及び車両制御プログラムについて説明する。図1に、車両制御装置10が示されている。車両制御装置10は、自車両100に搭載される。
【0022】
図1に示したように、車両制御装置10は、制御装置としてのECU(電子制御装置)90を備えている。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及び不揮発性メモリ等の記憶媒体、並びに、インターフェース等を含む。CPUは、記憶媒体に格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。特に、本例において、車両制御装置10は、当該車両制御装置10が実行する各種制御を実現するプログラムを記憶媒体に記憶している。
【0023】
尚、車両制御装置10は、記録媒体に記憶してあるプログラムを外部の装置との無線通信(例えば、インターネット通信)により更新(アップデート)することができるように構成されていてもよい。
【0024】
自車両100には、操舵装置20及び方向指示装置30が搭載されている。
【0025】
操舵装置20は、自車両100を操舵するための装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置20は、ECU90に電気的に接続されている。従って、車両制御装置10は、操舵装置20の作動を制御することにより、自車両100を操舵することができる。
【0026】
方向指示装置30は、自車両100の進行方向を自車両100の外の人に知らせるための装置であり、本例においては、左方向指示器としての左ウインカー31及び右方向指示器としての右ウインカー32を備えている。左ウインカー31は、自車両100が左方向に進行することを自車両100の外の人に知らせるための機器であり、作動されると点滅する。右ウインカー32は、自車両100が右方向に進行することを自車両100の外の人に知らせるための機器であり、作動されると点滅する。左ウインカー31及び右ウインカー32は、ECU90に電気的に接続されている。従って、車両制御装置10は、左ウインカー31及び右ウインカー32の作動を制御することができる。
【0027】
更に、自車両100には、方向指示操作器としてのウインカーレバー41及び方向指示操作検出器としてのウインカーレバーセンサ42が搭載されている。
【0028】
ウインカーレバー41は、運転者により操作される機器である。ウインカーレバーセンサ42は、運転者によりウインカーレバー41に加えられた操作を検出するための機器である。ウインカーレバーセンサ42は、ウインカーレバー41に電気的に接続されているとともに、ECU90に電気的に接続されている。
【0029】
車両制御装置10は、ウインカーレバーセンサ42を介してウインカーレバー41に左ウインカー31を作動させる操作が加えられたか否か、及び、ウインカーレバー41に右ウインカー32を作動させる操作が加えられたか否かを判断することができる。車両制御装置10は、ウインカーレバー41に左ウインカー31を作動させる操作が加えられた場合、左ウインカー31を作動させる。一方、車両制御装置10は、ウインカーレバー41に右ウインカー32を作動させる操作が加えられた場合、右ウインカー32を作動させる。
【0030】
更に、自車両100には、車線維持要求操作器50が搭載されている。車線維持要求操作器50は、運転者により操作される機器であり、例えば、スイッチやボタンである。運転者は、車線維持要求操作器50を操作することにより、後述する車線維持制御の実行を要求したり、車線維持制御の実行の終了を要求したりすることができる。車線維持要求操作器50は、ECU90に電気的に接続されている。車両制御装置10は、車線維持要求操作器50に車線維持制御の実行を要求する操作が加えられた場合、車線維持制御の実行が要求されたと判断する。一方、車線維持要求操作器50に車線維持制御の実行の終了を要求する操作が加えられた場合、車両制御装置10は、車線維持制御の実行の終了が要求されたと判断する。
【0031】
更に、自車両100には、車速検出装置60が搭載されている。車速検出装置60は、自車両100の走行速度を検出する装置であり、例えば、車輪速センサである。車速検出装置60は、ECU90に電気的に接続されている。車両制御装置10は、車速検出装置60により自車両100の走行速度を自車速Vとして取得する。
【0032】
更に、自車両100には、周辺情報検出装置70が搭載されている。周辺情報検出装置70は、自車両100の周辺の情報を周辺検出情報ISとして取得する装置である。本例において、周辺情報検出装置70は、画像センサ71及び電磁波センサ72を備えている。
【0033】
画像センサ71は、自車両100の前方を含む自車両100の周辺を撮像し、自車両100の周辺の画像を取得する機器であり、例えば、カメラセンサである。画像センサ71は、ECU90に電気的に接続されている。車両制御装置10は、画像センサ71から自車両100の前方を含む自車両100の周辺の画像に関する情報を画像情報IC又は画像データとして取得する。尚、画像情報ICは、周辺検出情報ISの一部である。
【0034】
電磁波センサ72は、自車両100の前方を含む自車両100の周辺に電磁波を発信し、自車両100の前方を含む自車両100の周辺に存在する物標により反射された電磁波を受信する。電磁波センサ72は、ECU90に電磁的に接続されている。車両制御装置10は、電磁波センサ72が発信した電磁波(発信波)に関する情報(発信波データ)及び電磁波センサ72が受信した電磁波(反射波)に関する情報(反射波データ)を取得し、これら発信波データ及び反射波データに基づいて自車両100の周辺に存在する物標に関する情報を物標情報IO又は物標データとして取得することができる。尚、物標情報IOは、周辺検出情報ISの一部である。
【0035】
次に、車両制御装置10の作動について説明する。
【0036】
車両制御装置10は、図2に示したように、自車両100が車線(自車走行車線LN)内の幅方向における目標位置Ptgtを維持して走行するように当該自車両100に対する操舵を自動で制御することにより自車両100を車線(自車走行車線LN)内で走行させる車線維持制御を実行することができるように構成されている。図2に示したように、自車走行車線LNは、自車両100が走行している車線であり、自車両100の左側の白線等の区画線(左区画線LM_L)と自車両100の右側の白線等の区画線(右区画線LM_R)とにより画定される。尚、図2に示した例において、右区画線LM_Rは、いわゆるセンターラインCLである。
【0037】
尚、車線維持制御は、自車両100を自動で運転する自動運転制御の1つである。
【0038】
より具体的には、車両制御装置10は、図3に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、車両制御装置10は、図3に示したルーチンのステップS300から処理を開始し、その処理をステップS305に進め、車線維持制御実行フラグXlkaの値が「1」であるか否かを判定する。
【0039】
車線維持制御実行フラグXlkaの値は、車線維持制御を実行する条件(車線維持制御実行条件)が成立したときに「1」に設定され、車線維持制御実行条件が不成立となったときに「0」に設定される。
【0040】
本例において、車線維持制御実行条件は、車線維持要求操作器50に車線維持制御の実行を要求する操作が加えられ且つウインカーレバー41に左ウインカー31又は右ウインカー32を作動させるための操作が加えられていない場合に成立する。
【0041】
車両制御装置10は、ステップS305にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS310に進め、側方物標フラグXobjの値が「0」であるか否かを判定する。
【0042】
側方物標フラグXobjの値は、自車両100の左横又は右横に所定の条件を満たす物標(制御対象物標OBJtgt)が存在する場合、「1」に設定され、そうした物標(制御対象物標OBJtgt)が存在しない場合、「0」に設定される。
【0043】
本例において、制御対象物標OBJtgtは、自車両100の左側又は右側で当該自車両100に近接して存在する壁、道路標識若しくはポール等の道路構造物又は自車両100の左側又は右側の隣接車線を自車両100に近接して並走するトラック、バス、乗用車若しくは自動二輪車等の周辺車両等の物体である。
【0044】
言い方を換えると、自車両100の左側又は右側で当該自車両100から所定の距離(所定近接距離Wth)以内の位置に存在する物体が所定の条件を満たす物標である。尚、図4に示した例において、制御対象物標OBJtgtは、自車両100の左側に当該自車両100に近接して存在する壁である。
【0045】
車両制御装置10は、画像情報IC及び/又は物標情報IOに基づいて制御対象物標OBJtgtを検出する。
【0046】
車両制御装置10は、ステップS310にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS315に進め、基準位置Pbaseを目標位置Ptgtとして設定する(Ptgt=Pbase)。尚、図2に示した例においては、基準位置Pbaseが目標位置Ptgtに設定されている。
【0047】
基準位置Pbaseは、自車走行車線LNの幅方向における中央の位置である。先に述べたように、自車走行車線LNは、自車両100の左側の白線等の区画線(左区画線LM_L)と自車両100の右側の白線等の区画線(右区画線LM_R)とにより画定される。従って、基準位置Pbaseは、自車走行車線LNの幅方向において左区画線LM_Lからの距離と右区画線LM_Rからの距離とが等しい位置である。
【0048】
車両制御装置10は、画像情報ICに基づいて基準位置Pbaseを取得する。
【0049】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS335に進め、ステップS315にて設定した目標位置Ptgtと自車両100の現在位置との幅方向における距離を位置差ΔDとして取得する。
【0050】
車両制御装置10は、画像情報ICに基づいて自車両100の現在位置を取得し、又、位置差ΔDを取得する。
【0051】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS340に進め、ステップS335にて取得した位置差ΔDに応じた操舵制御を実行する。操舵制御は、位置差ΔDがゼロに近づくように自車両100を操舵する制御であり、当該操舵制御によれば、自車両100は、概して、位置差ΔDが大きいほど大きく操舵される。
【0052】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0053】
一方、車両制御装置10は、ステップS310にて「No」と判定した場合、処理をステップS320に進め、導流フラグXlmの値が「0」であるか否かを判定する。
【0054】
導流フラグXlmの値は、図5に示したように、自車走行車線LNに導流レーンマークLM_Dが設けられている場合、「1」に設定され、自車走行車線LNに導流レーンマークLM_Dが設けられていない場合、「0」に設定される。
【0055】
導流レーンマークLM_Dは、車両の円滑な走行を促すために道路の路面にペイントされる路面ペイントであって、車線を区画する左右の白線等の区画線のそれぞれ内側であって区画線に隣接して路面に設けられる路面ペイントである。
【0056】
図5に示した例においては、路面ペイントである導流レーンマークLM_Dは、左区画線LM_L及びセンターラインCLのそれぞれ内側であって左区画線LM_L及びセンターラインCLにそれぞれ隣接して路面に設けられており、又、右区画線LM_R及びセンターラインCLのそれぞれ内側であって右区画線LM_R及びセンターラインCLにそれぞれ隣接して路面に設けられている。
【0057】
車両制御装置10は、画像情報ICに基づいて自車走行車線LNに導流レーンマークLM_Dが設けられているか否かを判定する。
【0058】
車両制御装置10は、ステップS320にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS325に進め、所定の値(物標補正値Kobj)を目標位置補正値Kとして設定し(K=Kobj)、基準位置Pbaseに当該目標位置補正値Kを加えた値を目標位置Ptgtとして設定する(Ptgt=Pbase+K)。
【0059】
尚、物標補正値Kobjは、制御対象物標OBJtgtが自車両100の左側に存在する場合、目標位置Ptgtを基準位置Pbaseよりも右側の位置とする値である。一方、制御対象物標OBJtgtが自車両100の右側に存在する場合、物標補正値Kobjは、目標位置Ptgtを基準位置Pbaseよりも左側の位置とする値である。
【0060】
尚、物標補正値Kobjは、一定の値とされてもよいが、制御対象物標OBJtgtと自車走行車線LNとの間の距離に応じた値とされてもよく、例えば、制御対象物標OBJtgtと自車走行車線LNとの間の距離が短いほど大きい値とされてもよい。
【0061】
又、物標補正値Kobjは、制御対象物標OBJtgtの高さに応じた値とされてもよく、例えば、制御対象物標OBJtgtの高さが高いほど大きい値とされてもよい。
【0062】
車両制御装置10は、制御対象物標OBJtgtと自車走行車線LNとの間の距離を画像情報ICに基づいて取得し、制御対象物標OBJtgtの高さを画像情報IC及び/又は物標情報IOに基づいて取得する。
【0063】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS335に進め、ステップS325にて設定した目標位置Ptgtと自車両100の現在位置との幅方向における距離を位置差ΔDとして取得する。
【0064】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS340に進め、ステップS335にて取得した位置差ΔDに応じた操舵制御を実行する。
【0065】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0066】
このように、車両制御装置10は、自車両100の横に物標(制御対象物標OBJtgt)が存在する場合、当該物標(制御対象物標OBJtgt)が存在しない場合に比べ、目標位置Ptgtを物標(制御対象物標OBJtgt)から所定量(目標位置補正値K)、離れた位置にオフセットさせた位置に設定するように構成されている。
【0067】
一方、車両制御装置10は、ステップS320にて「No」と判定した場合、処理をステップS330に進め、物標補正値Kobjから所定の値(導流補正値Klm)を減じた値を目標位置補正値Kとして設定し(K=Kobj-Klm)、基準位置Pbaseに目標位置補正値Kを加えた値を目標位置Ptgtとして設定する(Ptgt=Pbase+K)。
【0068】
即ち、車両制御装置10は、車線(自車走行車線LN)に当該車線の幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある路面ペイント(導流レーンマークLM_D)が設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、所定量(目標位置補正値K)を小さくする。
【0069】
尚、車両制御装置10は、車線(自車走行車線LN)に路面ペイント(導流レーンマークLM_D)が設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、車線の幅(自車走行車線幅W)が狭いほど所定量(目標位置補正値K)を小さくするように構成されてもよい。尚、自車走行車線幅Wは、図2に示したように、自車走行車線LNを画定する左区画線LM_Lと右区画線LM_Rとの間の距離である。
【0070】
或いは、車両制御装置10は、車線(自車走行車線LN)に路面ペイント(導流レーンマークLM_D)が設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、自車両100の走行速度(自車速V)が速いほど所定量(目標位置補正値K)を小さくするように構成されてもよい。
【0071】
或いは、車両制御装置10は、車線(自車走行車線LN)に路面ペイント(導流レーンマークLM_D)が設けられている場合、当該路面ペイントが設けられていない場合に比べ、自車両100の走行速度(自車速V)に対する車線の幅(自車走行車線幅W)の比が小さいほど所定量(目標位置補正値K)を小さくするように構成されてもよい。尚、自車両100の走行速度(自車速V)に対する車線の幅(自車走行車線幅W)の比Rは、自車走行車線幅Wを自車速Vにより除した値である(R=W/V)。
【0072】
尚、導流補正値Klmは、制御対象物標OBJtgtが自車両100の左側に存在する場合、目標位置Ptgtが基準位置Pbaseから物標補正値Kobjを減じた位置よりも左側の位置となるが基準位置Pbaseよりも左側の位置とはならない値である。一方、制御対象物標OBJtgtが自車両100の右側に存在する場合、導流補正値Klmは、目標位置Ptgtが基準位置Pbaseから物標補正値Kobjを減じた位置よりも右側の位置となるが基準位置Pbaseよりも右側の位置とはならない値である。
【0073】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS335に進め、ステップS330にて設定した目標位置Ptgtと自車両100の現在位置との幅方向における距離を位置差ΔDとして取得する。
【0074】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS340に進め、ステップS335にて取得した位置差ΔDに応じた操舵制御を実行する。
【0075】
次いで、車両制御装置10は、処理をステップS395に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0076】
尚、車両制御装置10は、ステップS305にて「No」と判定した場合、処理をステップS395に直接進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0077】
自車走行車線LNの幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある導流レーンマークLM_Dが設けられている場合において、自車両100の横に制御対象物標OBJtgtが存在するときに、自車両100がその制御対象物標OBJtgtから離れた位置を走行するように車線維持制御が実行されると、運転者は、自車両100が自車走行車線LNの片側に寄って走行しているように感じてしまう可能性がある。
【0078】
車両制御装置10によれば、自車走行車線LNに当該自車走行車線LNの幅を実際の幅よりも狭く見せる効果のある導流レーンマークLM_Dが設けられている場合、導流レーンマークLM_Dが設けられていない場合に比べ、目標位置補正値Kを小さくする。このため、自車両100が自車走行車線LNの片側に過剰に寄って走行しているように運転者に感じさせることなく車線維持制御を実行することができる。
【0079】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10…車両制御装置、20…操舵装置、50…車線維持要求操作器、60…車速検出装置、70…周辺情報検出装置、71…画像センサ、90…ECU、100…自車両、K…目標位置補正値、Klm…導流補正値、Kobj…物標補正値、LM_D…導流レーンマーク(路面ペイント)、OBJtgt…制御対象物標、Pbase…基準位置、Ptgt…目標位置

図1
図2
図3
図4
図5