(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124666
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電子回路基板の構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H05K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032498
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北出 誠
【テーマコード(参考)】
5E336
【Fターム(参考)】
5E336AA01
5E336CC23
5E336EE01
5E336GG14
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】硬化型の液体組成物を用いることなく、組み付け作業中の電子部品の姿勢を安定化させ、回路基板への実装後の電子部品の耐振性を確保する。
【解決手段】回路基板は、電子部品の位置決め孔を2つ有する。前記電子部品は、底部と、端子列と、2つの側壁部と、2つの係合爪部とを備える。前記底部は、前記回路基板の表面に対向する底面を有する。前記2つの側壁部は、前記端子列の配列方向における前記底部の両側に設けられ、前記回路基板の表面に当接する当接面をそれぞれ有すると共に、前記底面の面方向における前記配列方向と直交する方向において前記底部の幅よりも広い幅をそれぞれ有する。前記2つの係合爪部は、前記当接面のそれぞれから前記回路基板の表面と直交する方向に延びて前記位置決め孔にそれぞれ挿入され、前記回路基板の裏面において前記位置決め孔の周縁部にそれぞれ係合される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に電子部品が組み合わされた電子回路基板の構造であって、
前記回路基板は、前記電子部品の位置決め孔を2つ有し、
前記電子部品は、
前記回路基板の表面に対向する底面を有する底部と、
前記底面から前記回路基板の表面と直交する方向に突出する端子列と、
前記端子列の配列方向における前記底部の両側に設けられ、前記回路基板の表面に当接する当接面をそれぞれ有すると共に、前記底面の面方向における前記配列方向と直交する方向において前記底部の幅よりも広い幅をそれぞれ有する2つの側壁部と、
前記当接面のそれぞれから前記回路基板の表面と直交する方向に延びて前記位置決め孔にそれぞれ挿入され、前記回路基板の裏面において前記位置決め孔の各周縁部にそれぞれ係合される2つの係合爪部と、
を備えることを特徴とする電子回路基板の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板に電子部品が組み合わされた電子回路基板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5264189号公報は、インバータ装置の製造方法を開示する。この従来の製造方法では、コンデンサ、トランス、電圧検出器、電源制御装置といったインバータ装置の主要な電子部品を回路基板上に仮置きする。回路基板には複数の貫通孔が形成されており、主要な電子部品の仮置きに際しては、これらの部品の端子列が複数の貫通孔にそれぞれ挿入される。端子列の挿入後、回路基板の裏面から突出する端子列の突出部がはんだ付けされる。これにより、回路基板に電子部品が実装された電子回路基板が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板の表面と向かい合う電子部品の対向面積が大きい場合は、はんだ付け等の組み付け作業中の電子部品の姿勢が安定する。そうでない場合は、組み付け作業中に電子部品が倒れやすく、このことは電子回路基板の生産効率を低下させる。また、回路基板への実装後の電子部品の耐振性も低い。この問題は、その頂点から回路基板の表面までの距離が離れている電子部品、つまり、背の高い電子部品を回路基板に実装する場合にも起こる。
【0005】
このような問題への従来の対策は、電子部品の仮置き後、硬化型の液体組成物を電子部品及び回路基板に架け渡すように塗布し、これを硬化させるものであった。液体組成物が硬化すれば、組み付け作業中の電子部品の姿勢が安定化し、回路基板への実装後の電子部品の耐振性も確保される。しかしながら、この場合は、液体組成物の塗布態様のばらつきが発生しうること、液体組成物が硬化するまでに時間を要すること、液体組成物に含まれる揮発性物質がはんだ付け部位を腐食させること等といった別の問題が発生しうる。
【0006】
本開示の1つの目的は、硬化型の液体組成物を用いることなく、組み付け作業中の電子部品の姿勢を安定化させ、回路基板への実装後の電子部品の耐振性を確保することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、回路基板に電子部品が組み合わされた電子回路基板の構造であり、次の特徴を有する。
前記回路基板は、前記電子部品の位置決め孔を2つ有する。
前記電子部品は、底部と、端子列と、2つの側壁部と、2つの係合爪部とを備える。
前記底部は、前記回路基板の表面に対向する底面を有する。
前記端子列は、前記底面から前記回路基板の表面と直交する方向に突出する。
前記2つの側壁部は、前記端子列の配列方向における前記底部の両側に設けられる。前記2つの側壁部は、また、前記回路基板の表面に当接する当接面をそれぞれ有する。前記2つの側壁部は、更に、前記底面の面方向における前記配列方向と直交する方向において前記底部の幅よりも広い幅をそれぞれ有する。
前記2つの係合爪部は、前記当接面のそれぞれから前記回路基板の表面と直交する方向に延びて前記位置決め孔にそれぞれ挿入される。前記2つの係合爪部は、また、前記回路基板の裏面において前記位置決め孔の各周縁部にそれぞれ係合される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、底部の幅よりも広い幅を有する2つの側壁部によって電子部品が支えられる。また、電子部品が有する2つの係合爪部が回路基板の2つの位置決め孔にそれぞれ挿入され、回路基板の裏面においてこれらの係合爪部がこれらの位置決め孔の各周縁部にそれぞれ係合される。従って、硬化型の液体組成物を用いることなく、組み付け作業中の電子部品の姿勢を安定化させ、回路基板への実装後の電子部品の耐振性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電子回路基板の構成例を示す図である。
【
図2】電子回路基板を構成する電子部品の底部周辺の第1構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示した電子部品が組み付けられた回路基板を側面から見た図である。
【
図4】電子回路基板を構成する電子部品の底部周辺の第2構成例を示す図である。
【
図5】
図4に示した電子部品が組み付けられた回路基板を側面から見た図である。
【
図6】参考例に係る電子部品の底部周辺の構成例を示す図である。
【
図7】
図6に示した電子部品が組み付けられた回路基板を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。尚、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0011】
1.電子回路基板の構成例
図1は、実施形態に係る電子回路基板の構成例を示す図である。
図1には、電子部品1と、回路基板2とが描かれている。実施形態に係る電子回路基板の構造は、回路基板2に電子部品1が組み合わされたものである。実施形態に係る電子回路基板は、例えば、車両の駆動源として搭載されるモータに供給する電力を制御するための基板である。
【0012】
電子部品1は、回路基板2に実装される高背部品である。本開示における高背部品とは、高さ方向(Z方向)の長さと幅方向(X又はY方向)のそれの比(アスペクト比)がk:1(k≧2)であることをいう。このアスペクト比の計算において、高さ方向の長さは、この高さ方向において電子部品1の最も長い部位を計測した値である。幅方向の長さは、この幅方向において電子部品1の最も短い部位を計測した値である。電子部品1は、回路基板2に複数設けられる。ただし、説明の都合上、
図1には電子部品1が1つだけ描かれている。電子部品1の種類は特に限定されない。
【0013】
回路基板2の表面21には、この表面21から裏面に貫通する孔22a及び22bが形成されている。孔22a及び22bは、回路基板2における電子部品1の設置位置に対応して形成される位置決め孔である。位置決め孔22a及び22bには、電子部品1が有する係合爪部(後述される)が挿入される。そのため、位置決め孔22a及び22bのサイズ及び形状は、係合爪部を挿入できるサイズ及び形状として事前に設計されている。
【0014】
2.電子部品の構成例
2-1.第1構成例
図2は、電子部品1の底部周辺の第1構成例を示す図である。この第1構成例では、電子部品1が、底部11と、側壁部12a及び12bとを備えている。底部11、側壁部12a及び12bは、例えば樹脂から構成される。側壁部12a及び12bは、底部11の左右に設けられている。側壁部12a及び12bは、底部11と一体的に形成されていてもよいし、側壁部12a及び12bのうちの底部11の構成面よりも外側に位置する部位(コの字部位)が別体で形成されていてもよい。
【0015】
底部11は底面13を有している。底面13からは、端子列17が突出している。端子列17は、電子部品1の電極に相当する構成である。
図1で説明した回路基板2にはんだ等を用いて端子列17が組み付けられると、電子部品1と回路基板2が電気的に接続される。回路基板2に電子部品1が組み付けられた際、底面13は、回路基板2の表面21と対向する。
【0016】
側壁部12aは底面14を有し、側壁部12bは底面15を有している。回路基板2に電子部品1が組み付けられた際、側壁部12a及び12bは、回路基板2の表面21に当接する。底面14及び15は、この当接面に該当する。端子列17の配列方向(X方向)に対して直交する方向(つまり、Y方向)における底面14及び15の幅は、底面13のそれよりも大きい。つまり、側壁部12a及び12bのY方向の幅は、底部11のそれよりも大きい。
【0017】
底面14には、係合爪部16aが形成されている。係合爪部16aは側壁部12aと一体的に形成されている。底面15には、係合爪部16bが形成されている。係合爪部16bは側壁部12bと一体的に形成されている。係合爪部16a及び16bは、本体部と、この本体部の先端において外側に突出する抜け止め部とから構成される。
【0018】
図3は、
図2に示した電子部品1が回路基板2に組み付けられた後の電子回路基板を側面から見た図である。
図3Aは、
図2に示した矢印3Aの方向から見た図に相当し、
図3Bは、
図2に示した矢印3Bの方向から見た図に相当する。
図3Aから理解されるように、回路基板2に電子部品1が組み付けられると、側壁部12a及び12bが、底部11とともに電子部品1を支持する。また、係合爪部16bの一部が回路基板2の裏面23よりも下方に突出する。また、
図3Bから理解されるように、係合爪部16a及び16bは、これらが挿入された孔(
図1に示した位置決め孔21a及び21b)の周縁部にそれぞれ係合される。尚、
図3Bにおいては、端子列17の各先端部が回路基板2に形成された端子孔(図示せず)にそれぞれ挿入され、裏面23においてはんだSDによって接合されている。
【0019】
このように、第1構成例によれば、底部11の幅よりも大きい幅を有する側壁部12a及び12bによって電子部品1が支えられる。また、係合爪部16a及び16bにより電子部品1が回路基板2に固定される。従って、はんだ付け作業中の電子部品1の姿勢を安定化させることが可能となる。加えて、回路基板2への実装後の電子部品1の耐振性を確保することも可能となる。
【0020】
2-2.第2構成例
図4は、電子部品1の底部周辺の第2構成例を示す図である。この第2構成例では、底面14に係合爪部18aが形成されている。係合爪部18aは側壁部12aと一体的に形成されている。底面15には、係合爪部18bが形成されている。係合爪部18bは側壁部12bと一体的に形成されている。係合爪部18a及び18bは、中央部分がくり抜かれた本体部と、この中央部分に設けられた抜け止め部とから構成される。係合爪部18a及び18b以外の構成は、第1構成例と同じである。
【0021】
図5は、
図4に示した電子部品1が回路基板2に組み付けられた後の電子回路基板を側面から見た図である。
図5は、
図4に示した矢印4の方向から見た図に相当する。
図4から理解されるように、係合爪部18a及び18bは、これらが挿入された孔(
図1に示した位置決め孔21a及び21b)の周縁部にそれぞれ係合される。
【0022】
このように、第2構成例によれば、第1構成例による効果と同一の効果が得られる。
【0023】
3.電子部品の参考例
図6は、本発明者により考案された参考例に係る電子部品の底部周辺の構成例を示す図である。この参考例では、電子部品3が、底部31と、側壁部32a及び32bとを備えている。側壁部32a及び32bは、底部31の左右に設けられている。側壁部32a及び32bは、底部31と一体的に形成されていてもよいし、側壁部32a及び32bのうちの底部31の構成面よりも外側に位置する部位が別体で形成されていてもよい。
【0024】
底部31は底面33を有している。底面33からは、端子列37が突出している。端子列37は、電子部品1の電極に相当する構成である。
図1で説明した回路基板2にはんだ等を用いて端子列37が組み付けられると、電子部品1と回路基板2が電気的に接続される。回路基板2に電子部品1が組み付けられた際、底面33は、回路基板2の表面21と対向する。
【0025】
側壁部32aは底面34を有し、側壁部32bは底面35を有している。回路基板2に電子部品1が組み付けられた際、側壁部32a及び32bは、回路基板2の表面21に当接する。底面34及び35は、この当接面に該当する。端子列37の配列方向(X方向)に対して直交する方向(つまり、Y方向)における底面34及び35の幅は、底面33のそれよりも大きい。つまり、側壁部32a及び32bのY方向の幅は、底部31のそれよりも大きい。
【0026】
側壁部32aには、電子部品1の高さ方向(Z方向)に沿ってボルト孔36aが形成されている。側壁部32bには、ボルト孔36a同様にボルト孔36bが形成されている。ボルト孔36a及び36bは、回路基板2に形成された2つのボルト孔(図示しない)と連通する。ボルト孔36aとこれに連通する回路基板2のボルト孔には、ボルトが嵌め合わされる。ボルト孔36bとこれに連通する回路基板2のボルト孔にも、ボルトが嵌め合わされる。
【0027】
図7は、
図6に示した電子部品1が回路基板2に組み付けられた後の電子回路基板を側面から見た図である。
図7は、
図6に示した矢印7の方向から見た図に相当する。
図7から理解されるように、回路基板2に電子部品1が組み付けられると、側壁部32a及び32bが、底部31とともに電子部品1を支持する。また、ボルトBTの先端が回路基板2の裏面23よりも下方に突出する。
【0028】
このように、参考例によれば、底部31の幅よりも大きい幅を有する側壁部32a及び32bによって電子部品1が支えられる。また、ボルトBTにより、電子部品1が回路基板2に固定される。従って、第1構成例による効果と同一の効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
1 電子部品、 2 回路基板、11 底部、12a,12b 側壁部、13,14,15 底面、16a,16b,18a,18b 係合爪部 17 端子列 21 表面 22a,22b 孔 23 裏面 SD はんだ