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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124685
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20240906BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20240906BHJP
   B65H 29/64 20060101ALI20240906BHJP
   H01M 8/1069 20160101ALI20240906BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240906BHJP
【FI】
H01M8/1004
B65H41/00 B
B65H29/64
H01M8/1069
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032544
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】森川 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】厨子 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 千丈
(72)【発明者】
【氏名】高木 善則
【テーマコード(参考)】
3F053
3F108
5H126
【Fターム(参考)】
3F053FA01
3F053FA07
3F053LA15
3F053LB08
3F053LB10
3F108JA02
5H126AA05
5H126BB06
5H126JJ03
5H126JJ09
(57)【要約】
【課題】粘着力が大きい支持体であっても、当該支持体を電解質膜から良好に剥離することができる技術を提供する。
【解決手段】貼合物10は、第1面201に触媒層22が形成された電解質膜20、および、電解質膜20の第2面202に貼合された支持フィルム30を有する。貼合物10は、電解質膜20の第1面201がステージ90の吸着面91に向けられ、且つ支持フィルム30の第1方向の両端が吸着面91における吸着力が発生する吸着領域93内に配置された状態で、ステージ90の吸着面91に吸着される。貼合物10の支持フィルム30における第2方向D2の一方側の端部が、第2方向D2の他方側へ引かれる。これにより、貼合物10における支持フィルム30が、電解質膜20から剥離される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離方法であって、
a) 貼合物であって、第1面に触媒層が形成された電解質膜、および、前記電解質膜の第2面に貼合された支持体、を有する貼合物を準備する準備工程と、
b) 前記電解質膜の前記第1面がステージの吸着面に向けられ、且つ前記支持体の第1方向の両端が前記吸着面における吸着力が発生する吸着領域内に配置された状態で、前記貼合物を前記ステージの前記吸着面に吸着させる吸着工程と、
c) 前記貼合物の前記支持体における前記第1方向に交差する第2方向の一方側の端部を、前記第2方向の他方側へ引いて、前記貼合物における前記支持体を前記電解質膜から剥離する剥離工程と、
を含む、剥離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離方法であって、
前記貼合物において、前記第1方向における前記電解質膜の寸法は、前記第1方向における前記支持体の寸法以上である、剥離方法。
【請求項3】
請求項2に記載の剥離方法であって、
前記第1方向において、前記支持体の外縁は、前記電解質膜の外縁より内側に位置する、剥離方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の剥離方法であって、
前記貼合物において、前記第2方向における前記電解質膜の寸法は、前記第2方向における前記支持体の寸法以上である、剥離方法。
【請求項5】
請求項4に記載の剥離方法であって、
前記第2方向において、前記支持体の外縁は、前記電解質膜の外縁より内側に位置する、剥離方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の剥離方法であって、
前記工程b)において、前記ステージの前記吸着面に吸着されている前記電解質膜に対して、前記支持体の前記一端を引っ張る方向が成す鈍角側の剥離角度が、150°以上且つ180°以下である、剥離方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の剥離方法であって、
前記工程b)において、前記ステージの前記吸着力は、-30kPa以下且つ-100kPa以上である、剥離方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の剥離方法であって、
前記工程c)において、ガイド部材によって前記支持体を前記吸着面へ押しつけつつ、前記支持体における前記電解質膜から剥離された部分を、前記ガイド部材における第2方向の一方の外表面に倣って曲げる工程を含む、剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池又は水素製造用の膜・触媒層接合体(CCM:Catalyst-Coated Membrane)の製造においては、水およびアルコールを溶媒とした触媒インクが電解質膜に塗布される場合がある。このとき、電解質膜はインクの溶媒を吸収して膨潤変形する。例えば、70μmを超える厚みを持つ電解質膜は特に変形力が強く、変形によるシワ等の発生を抑えつつ塗工や乾燥を行うのが困難である。電解質膜の変形を回避するため、粘着層付きのフィルムなどの支持体が貼合された電解質膜に、触媒インクの塗工が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-001123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、インクの塗工量が多くなるほど、あるいは、乾燥温度が高くなるほど、電解質膜の変形力が大きくなる。このような電解質膜の変形は、支持体の粘着力を大きくすることによって回避し得る。しかしながら、支持体の粘着力が大きくなると、CCM作製後に電解質膜から支持体を剥がす工程において、電解質膜に過度のストレス(引張力)が掛かることにより、電解質膜が変形するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、粘着力が大きい支持体であっても、当該支持体を電解質膜から良好に剥離することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1態様は、剥離方法であって、a)貼合物であって、第1面に触媒層が形成された電解質膜、および、前記電解質膜の第2面に貼合された支持体、を有する貼合物を準備する準備工程と、b)前記電解質膜の前記第1面がステージの吸着面に向けられ、且つ前記支持体の第1方向の両端が前記吸着面における吸着力が発生する吸着領域内に配置された状態で、前記貼合物を前記ステージの前記吸着面に吸着させる吸着工程と、c)前記貼合物の前記支持体における前記第1方向に交差する第2方向の一方側の端部を、前記第2方向の他方側へ引いて、前記貼合物における前記支持体を前記電解質膜から剥離する剥離工程とを含む。
【0007】
第2態様は、第1態様の剥離方法であって、前記貼合物において、前記第1方向における前記電解質膜の寸法は、前記第1方向における前記支持体の寸法以上である。
【0008】
第3態様は、第2態様の剥離方法であって、前記第1方向において、前記支持体の外縁は、前記電解質膜の外縁より内側に位置する。
【0009】
第4態様は、第1態様または第2態様の剥離方法であって、前記貼合物において、前記第2方向における前記電解質膜の寸法は、前記第2方向における前記支持体の寸法以上である。
【0010】
第5態様は、第4態様の剥離方法であって、前記第2方向において、前記支持体の外縁は、前記電解質膜の外縁より内側に位置する。
【0011】
第6態様は、第1態様または第2態様の剥離方法であって、前記工程b)において、前記ステージの前記吸着面に吸着されている前記電解質膜に対して、前記支持体の前記一端を引っ張る方向が成す鈍角側の剥離角度が、150°以上且つ180°以下である。
【0012】
第7態様は、第1態様または第2態様の剥離方法であって、前記工程b)において、前記ステージの前記吸着力は、-30kPa以下且つ-100kPa以上である。
【0013】
第8態様は、第1態様または第2態様の剥離方法であって、前記工程c)において、ガイド部材によって前記支持体を前記吸着面へ押しつけつつ、前記支持体における前記電解質膜から剥離された部分を、前記ガイド部材における第2方向の一方の外表面に倣って曲げる工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
第1態様から第8態様の剥離方法によれば、粘着力が比較的強い支持体であっても、支持体を電解質膜から適切に剥離できる。
【0015】
第2態様の剥離方法によれば、支持体を剥離する過程で、第1方向における電解質膜の端部にかかる力を軽減できるため、吸着を良好に維持できる。
【0016】
第3態様の剥離方法によれば、支持体を剥離する過程で、第1方向における電解質膜の両端部にかかる引張力を低減できるため、吸着を良好に維持できる。
【0017】
第4態様の剥離方法によれば、支持体を剥離する過程で、第2向における電解質膜の端部にかかる引張力を低減できるため、吸着を良好に維持できる。
【0018】
第5態様の剥離方法によれば、支持体を剥離する過程で、第2方向における電解質膜の両端部にかかる引張力を低減できるため、吸着を良好に維持できる。
【0019】
第6態様の剥離方法によれば、粘着層の粘着力により電解質膜が変形することを低減できる。
【0020】
第7態様の剥離方法によれば、電解質膜における皺の発生を低減しつつ、電解質膜がステージから離れることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ステージに配置された貼合物を示す上面図である。
図2図1に示されるII-II線位置における貼合物およびステージの断面を示す図である。
図3】ステージに吸着された貼合物から支持フィルムが剥離される様子を示す図である。
図4】剥離ガイド部材を示す側面図である。
図5】互いに異なる複数の剥離角度の条件下で剥離した場合の実験結果を示す図である。
図6】互いに異なる複数の吸着力の条件下で剥離した場合の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0023】
<貼合物>
図1は、ステージ90に配置された貼合物10を示す上面図である。図2は、図1に示されるII-II線位置における貼合物10およびステージ90の断面を示す図である。貼合物10は、電解質膜20と、支持フィルム30とを有する。支持フィルム30は、「支持体」の一例である。
【0024】
電解質膜20は、イオン伝導性を有するイオン交換膜(プロトン交換膜)である。電解質膜20の材料には、例えば、フッ素系または炭化水素系の高分子電解質樹脂であって、具体的には、パーフルオロカーボンスルホン酸を含む高分子電解質樹脂が用いられる。
【0025】
電解質膜20は、固体高分子形燃料電池用のCCMを製造するためのものであってもよく、あるいは、固体高分子形水電解用のCCMを製造するためのものであってもよい。また、電解質膜20は、例えば、トルエンなどの芳香族化合物を水素化することにより、有機ハイドライド(例えば、トルエン-メチルシクロヘキサン)を製造するLОHC(Liquid Organic Hydrogen Carrier)プロセスに使用されるCCMを製造するためのものであってもよい。
【0026】
電解質膜20は、第1面201と、第1面201とは反対側(裏側)の第2面202とを有する。第1面201には、触媒層22が形成されている。触媒層22は、例えば、触媒インクが塗工されることによって形成される。触媒インクは、例えば、白金(Pt)等の粒子を含む触媒材料を、水およびアルコールなどからなる溶媒中に分散させたスラリー(電極ペースト)である。
【0027】
電解質膜20は、補強繊維を有していてもよい。補強繊維は、電解質膜20を構成する電解質樹脂よりも機械的強度が高い繊維であって、網目状または多孔質状の繊維である。補強繊維には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる。繊維樹脂を含む電解質膜20は、繊維樹脂に電解質樹脂を含浸させることにより形成される。このため、電解質膜20の表面は、補強繊維の形状に沿った微細な凹凸を有する場合がある。電解質膜20の表面粗さを示す最大高さ(ISO 25178により規定される最大高さSz)は、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0028】
支持フィルム30は、電解質膜20の第2面202に貼合されている。支持フィルム30は、ベースフィルム31と、粘着層32とを有する。ベースフィルム31は、電解質膜20よりも機械的強度が高く、形状保持機能に優れた樹脂製のフィルムである。ベースフィルム31の材料には、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、延伸ナイロン、延伸硬質ポリ塩化ビニル、または、OPP(オリエンテッドポリプロピレン)が用いられる。ベースフィルム31の厚みは、例えば、50μm~300μmである。
【0029】
粘着層32は、ベースフィルム31の一方の表面を覆う粘着剤の層である。電解質膜20の第2面202は、支持フィルム30の粘着層32に貼り付けられている。粘着層32の粘着剤は、熱可塑性であって、好ましくは、エポキシ系、アクリル系、シリコーンゴム系の無機溶剤系粘着剤が用いられる。
【0030】
図1に示されるように、貼合物10は、上面視において長方形状である。以下では、貼合物10の短辺に沿う方向を「第1方向D1」と称し、貼合物10の長辺に沿う方向を「第2方向D2」と称する。なお、貼合物10は、上面視において正方形状であってもよい。
【0031】
電解質膜20の第1方向D1の寸法L11は、支持フィルム30の第1方向D1の寸法L21より大きい。第1方向D1において、電解質膜20の両端部は、支持フィルム30より外側へはみ出している。すなわち、第1方向D1において、支持フィルム30の外縁は、電解質膜20の外縁より内側に位置する。なお、電解質膜20の第1方向D1の寸法L11は、支持フィルム30の第1方向D1の寸法L21と同じであってもよい。
【0032】
電解質膜20の第2方向D2の寸法L12は、支持フィルム30の第2方向D2の寸法L22より大きい。第2方向D2において、電解質膜20の両端部は、支持フィルム30より外側へはみ出している。すなわち、第2方向D2において、支持フィルム30の外縁は、電解質膜20の外縁より内側に位置する。なお、電解質膜20の第2方向D2の寸法L12は、支持フィルム30の第2方向D2の寸法L22と同じであってもよい。
【0033】
電解質膜20の外形は、貼合物10の外形に相当する。すなわち、電解質膜20における第1方向D1の寸法L11および第2方向D2の寸法L12は、それぞれ貼合物10における第1方向D1の寸法および第2方向D2の寸法に相当する。
【0034】
<支持フィルムの剥離>
貼合物10における電解質膜20から支持フィルム30を剥離する場合、図1および図2に示されるように、まず、貼合物10がステージ90に載置され、貼合物10がステージ90に吸着される。
【0035】
ステージ90は、吸着面91を有する。上面視において、ステージ90の吸着面91は、貼合物10より大きい。すなわち、吸着面91における第1方向D1の寸法および第2方向D2の寸法は、それぞれ貼合物10における第1方向D1の寸法(L11)および第2方向D2の寸法(L12)より大きい。ステージ90の吸着面91には、複数の吸着孔92が形成されている。複数の吸着孔92は、長方形状の吸着領域93内に分散して配置されている。
【0036】
複数の吸着孔92は、ステージ90に設けられた流路を介して、吸引管94と接続されている。吸引管94には、吸引ポンプ95が設けられている。吸引ポンプ95は、ステージ90内に形成された流路および吸引管94から、空気を排出する。これにより、複数の吸着孔92の圧力が、大気圧より低い負圧となる。吸着面91の吸着領域93には、複数の吸着孔92に発生する負圧の作用によって、吸着力が発生する。ステージ90の吸着面91に載置された貼合物10は、吸着領域93の吸着力により、吸着面91に保持される。
【0037】
貼合物10をステージ90に吸着させる場合、貼合物10における電解質膜20の第1面201は、ステージ90の吸着面91に向けられる。また、貼合物10における支持フィルム30の第1方向D1の両端は、吸着領域93の内側に配置される。この状態で、吸引ポンプ95が駆動されることによって、貼合物10がステージ90に吸着される。
【0038】
図2に示されるように、ステージ90と貼合物10との間に、合紙96が挟まれていてもよい。合紙96は、上面視において、長方形状である。上面視において、合紙96は、触媒層22より大きく、上面視において、触媒層22は、合紙96の内側に配置される。上面視において、合紙96は、電解質膜20および吸着領域93より小さい。上面視において、合紙96は電解質膜20および吸着領域93の内側に配置される。
【0039】
吸引ポンプ95を駆動させた際、電解質膜20における合紙96から外側にはみ出た部分が吸着領域93に吸着される。合紙96がステージ90と貼合物10との間に配置されることにより、触媒層22がステージ90の吸着面91と直に接触しないため、触媒層22の損傷を低減できる。
【0040】
図3は、ステージ90に吸着された貼合物10から支持フィルム30が剥離される様子を示す図である。図3に示されるように、貼合物10の支持フィルム30における第2方向D2の一方側の端部301が、第2方向D2の他方側へ引かれる。図3に示される例では、支持フィルム30の端部301が、剥離用リードフィルム97の先端部971にテープなどを介して接合されている。剥離用リードフィルム97は、剥離角度調整ローラ98に掛け渡されており、巻取ローラ99に巻き取られる。剥離角度調整ローラ98および巻取ローラ99の回転軸は、第1方向D1と平行に配置されている。剥離角度調整ローラ98および巻取ローラ99は、ステージ90に吸着された貼合物10から第2方向D2の他方に離れて位置する。巻取ローラ99は、剥離角度調整ローラ98よりも下方に位置する。巻取ローラ99の回転速度は、例えば、300mm/minである。
【0041】
巻取ローラ99が剥離用リードフィルム97を巻き取ると、支持フィルム30の端部301が剥離角度調整ローラ98に向かって引っ張られる。支持フィルム30の端部301が引っ張られる引張方向DT1は、剥離用リードフィルム97における先端部971から剥離角度調整ローラ98に接する部分までの、剥離用リードフィルム97が延びる方向に相当する。剥離角度調整ローラ98を電解質膜20に対して上側へ移動させることにより、剥離角度θは90°へ近づく。なお、剥離角度θは、吸着面91に吸着されている電解質膜20に沿う第2方向D2に対して、引張方向DT1が成す鈍角側の角度である。
【0042】
図3に示される剥離方法では、電解質膜20の第1面201がステージの吸着面91に向けられ、且つ支持フィルム30の第1方向D1の両端が吸着面における吸着力が発生する吸着領域93内に配置された状態で、貼合物10をステージ90の吸着面91に吸着させる。そして、貼合物10の支持フィルム30における第2方向D2の一方側の端部301を、第2方向D2の他方側へ引くことにより、貼合物10における支持フィルム30が電解質膜20から剥離される
【0043】
このように支持フィルム30を剥離することによって、電解質膜20がステージ90の上方へ引っ張られる力が低減されるため、電解質膜20の吸着が破壊されることを抑制できる。したがって、粘着力が比較的強い支持フィルム30であっても、支持フィルム30を電解質膜20から適切に剥離できる。
【0044】
また、貼合物10において、第1方向D1における電解質膜20の寸法L11は、第1方向D1における支持フィルム30の寸法L21以上である。この場合、支持フィルム30を剥離する過程で、第1方向D1における電解質膜20の端部にかかる力を、支持フィルム30の寸法L21が電解質膜20の寸法L11より大きいときよりも、軽減できる。このため、電解質膜20の吸着を良好に維持できる。
【0045】
また、第1方向D1において、支持フィルム30の外縁は、電解質膜20の外縁より内側に位置する。このため、支持フィルム30を剥離する過程で、第1方向D1における電解質膜20の両端部にかかる力を軽減できる。このため、電解質膜20の吸着をより良好に維持できる。
【0046】
また、貼合物10において、第2方向D2における電解質膜20の寸法L12は、第2方向D2における支持フィルム30の寸法L22以上である。この場合、支持フィルム30を剥離する過程で、第2方向D2における電解質膜20の端部にかかる力を、支持フィルム30の寸法L22が電解質膜20の寸法L12より大きいときよりも、軽減できる。このため、電解質膜20の吸着を良好に維持できる。
【0047】
また、第2方向D2において、支持フィルム30の外縁は、電解質膜20の外縁より内側に位置する。このため、支持フィルム30を剥離する過程で、第2方向D2における電解質膜20の両端部にかかる力を軽減できる。このため、電解質膜20の吸着をより良好に維持できる。
【0048】
図4は、剥離ガイド部材100を示す側面図である。支持フィルム30を電解質膜20から剥離する場合、図4に示される剥離ガイド部材100が用いられてもよい。
【0049】
剥離ガイド部材100は、第1方向D1に延びる棒状の部材である。剥離ガイド部材100の第1方向D1の寸法は、支持フィルム30における第1方向D1の寸法よりも大きい。剥離ガイド部材100は、平坦な下面を有する。また、図4に示されるように、第1方向に沿って見た側面視において、第2方向D2の一方を向く外表面100Sは、下側から上側に向かって、第2方向D2の他方へ傾斜する部分を有する。
【0050】
図4に示されるように、剥離ガイド部材100の下面により、支持フィルム30がステージ90の吸着面91に押しつけられる。そして、電解質膜20から剥離された支持フィルム30の部分は、剥離ガイド部材100の外表面100Sに倣って曲げられる。そして、剥離ガイド部材100を第2方向D2の他方へ移動させながら、支持フィルム30の端部301を第2方向D2の他方へ引張することにより、支持フィルム30が電解質膜20から徐々に剥離される。
【0051】
剥離ガイド部材100を用いることによって、支持フィルム30が電解質膜20から剥離する部分の位置(剥離位置)を調整することができる。したがって、剥離速度を適切にコントロールすることができる。
【0052】
<実験例>
以下、実施形態に係る剥離方法の実験例について、図5および図6を参照しつつ説明する。剥離方法の実験では、図3に示される方法、すなわち、ステージ90の吸着面91に吸着させた状態で、電解質膜20に粘着している支持フィルム30の端部301を引張方向DT1に引っ張ることによって、支持フィルム30を電解質膜20から剥離した。
【0053】
図5は、互いに異なる複数の剥離角度θの条件下で剥離した場合の実験結果を示す図である。図6は、互いに異なる複数の吸着力の条件下で剥離した場合の実験結果を示す図である。図5および図6に示されるように、実験では、膜ストレスを評価した。膜ストレスは、具体的には、支持フィルム30を電解質膜20から剥離する過程において、ステージ90に対する電解質膜20の吸着保持を維持できたか否かで評価した。吸着保持を維持できた場合は「○」とし、吸着保持を維持できなかった場合は「×」としている。
【0054】
また、実験には、支持フィルム30における第1方向D1および第2方向D2の寸法がともに80mm、電解質膜20における第1方向D1および第2方向D2の寸法がともに120mmの貼合物10を用いた。支持フィルム30における粘着層32の電解質膜20に対する粘着力は、JIS Z 0237:2009の試験方法において、9N/15mmである。
【0055】
図5に示されるように、実施例1~4では、剥離角度θをそれぞれ180°、170°、160°、150°とした。また、比較例1では、剥離角度θを90°とした。図5に示される実施例1~4および比較例1では、ステージ90の吸着力を-70kPaとした。
【0056】
図5に示されるように、実施例1~4では、電解質膜20の吸着保持を維持できた。これに対し、比較例1では、電解質膜20の吸着保持を維持できなかった。これらの結果から、好ましい剥離角度θは、90°より大きい角度であり、より好ましい剥離角度θは、150°以上且つ180°以下である。
【0057】
図6に示されるように、実施例5,6では、吸着力をそれぞれ-50kPa、-30kPaとした。また、比較例2では、吸着力を-10kPaとした。図6に示されるように、実施例1,5,6では、電解質膜20の吸着保持を維持できたが、比較例2では、電解質膜20の吸着保持を維持できなかった。これらの結果から、好ましいステージ90の吸着力は、-30kPa以下であることが明らかである。なお、ステージ90の吸着力が強過ぎると、電解質膜20に変化が生じるおそれがあるため、ステージ90の吸着力は、好ましくは、-100kPa以上である。
【0058】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 貼合物
20 電解質膜
22 触媒層
30 支持フィルム
90 ステージ
91 吸着面
93 吸着領域
100 剥離ガイド部材
100S 外表面
201 第1面
202 第2面
301 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6